(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779712
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】溶鋼注入設備
(51)【国際特許分類】
B22D 7/06 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
B22D7/06 R
B22D7/06 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-513899(P2014-513899)
(86)(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公表番号】特表2014-515991(P2014-515991A)
(43)【公表日】2014年7月7日
(86)【国際出願番号】CN2012076806
(87)【国際公開番号】WO2012174991
(87)【国際公開日】20121227
【審査請求日】2013年12月9日
(31)【優先権主張番号】201110165964.8
(32)【優先日】2011年6月20日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】513310852
【氏名又は名称】南陽漢冶特鋼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124811
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 資博
(74)【代理人】
【識別番号】100088959
【弁理士】
【氏名又は名称】境 廣巳
(72)【発明者】
【氏名】朱 書成
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭60−257964(JP,A)
【文献】
特開昭49−041223(JP,A)
【文献】
実開昭62−025035(JP,U)
【文献】
特開昭62−230456(JP,A)
【文献】
特開昭56−144848(JP,A)
【文献】
実開昭53−065817(JP,U)
【文献】
実公昭49−016676(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インゴットモールドを備える溶鋼注入設備であり、
前記インゴットモールドの上部に保温キャップを備え、
前記インゴットモールドは、インゴットモールドベースプレート上に配置されており、
前記インゴットモールドベースプレートに、溶鋼用通路が設けられており、
前記溶鋼用通路は、前記インゴットモールドの側方に配置された中注管と連通すると共に、前記インゴットモールドの底部に設けられた注入口と連通しており、
前記注入口が、前記インゴットモールドの外壁に近く、当該インゴットモールドの矩形である底部の角部の位置のみに形成されている、
溶鋼注入設備。
【請求項2】
インゴットモールドを備える溶鋼注入設備であり、
前記インゴットモールドの上部に保温キャップを備え、
前記インゴットモールドは、インゴットモールドベースプレート上に配置されており、
前記インゴットモールドベースプレートに、溶鋼用通路が設けられており、
前記溶鋼用通路は、前記インゴットモールドの側方に配置された中注管と連通すると共に、前記インゴットモールドの底部に設けられた注入口と連通しており、
前記注入口が、前記インゴットモールドの外壁に近く、当該インゴットモールドの矩形である底部の側縁の位置のみに形成されている、
溶鋼注入設備。
【請求項3】
インゴットモールドを備える溶鋼注入設備であり、
前記インゴットモールドの上部に保温キャップを備え、
前記インゴットモールドは、インゴットモールドベースプレート上に配置されており、
前記インゴットモールドベースプレートに、溶鋼用通路が設けられており、
前記溶鋼用通路は、前記インゴットモールドの側方に配置された中注管と連通すると共に、前記インゴットモールドの底部に設けられた注入口と連通しており、
前記注入口が、前記インゴットモールドの外壁に近く、当該インゴットモールドの矩形である底部の隣り合った2つの側縁の位置のみに形成されている、
溶鋼注入設備。
【請求項4】
インゴットモールドを備える溶鋼注入設備であり、
前記インゴットモールドの上部に保温キャップを備え、
前記インゴットモールドは、インゴットモールドベースプレート上に配置されており、
前記インゴットモールドベースプレートに、溶鋼用通路が設けられており、
前記溶鋼用通路は、前記インゴットモールドの側方に配置された中注管と連通すると共に、前記インゴットモールドの底部に設けられた注入口と連通しており、
前記注入口が、前記インゴットモールドの外壁に近く、当該インゴットモールドの矩形である底部の相互に対向する2つの側縁の位置のみに形成されている、
溶鋼注入設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精錬用生産設備の技術分野に属し、具体的に、溶鋼注入設備に関する。
【背景技術】
【0002】
経済の成長につれて、原子力発電用鋼、ボイラー及び圧力容器用鋼、風力発電フランジ用鋼、橋、高層ビルなどの構造用鋼において、鋼板の内部品質に対する要求は厳格になっている。鋼板の内部品質を確保するために、一般に鍛造、ESR及び方向性凝固などの技術でそのような鋼板を生産するが、長い生産周期や高い製造コストにより、生産コストの削減が制約されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のインゴットに用いられるインゴットモールドは、注入口がインゴットモールドの中央にある。冶金移動の原理によると、注入口の垂直方向にある溶鋼は相対温度が高いので、インゴット内部に重大な偏析や中心多孔質を引き起こしやすい。インゴットの中央における重大な偏析及び多孔質は、次の工程での除去や軽減が難しい。このため、圧延鋼板、特に200mm以上の厚鋼板は、内部に常に微小欠陥があり、検査不適合の原因となる。
【0004】
本発明は、インゴット内部の中心偏析や多孔質化を改善できる溶鋼注入設備を提供することを目的にする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明における設備及注入方法では、鋳造・鍛造部品検査規格JB/T5000.15-2007 Φ2級に適合する200mm以上の鋼板を生産することができる。
【0006】
本発明の一形態である溶鋼注入設備は、インゴットモールドを備える。インゴットモールドの上部には保温キャップを備える。インゴットモールドは、インゴットモールドベースプレート上に配置されている。インゴットモールドベースプレートには、溶鋼用通路が設けられている。溶鋼用通路は、インゴットモールドの側方に配置された中注管と連通すると共に、インゴットモールドの底部に設けられた注入口と連通している。少なくとも1つの注入口が、インゴットモールドの底部の中心からずれた位置に形成されている。
【0007】
注入口は、インゴットモールドの角部に位置して形成されている。
【0008】
注入口は、インゴットモールドの縁部に位置して形成されている。
【0009】
インゴットモールドの底部が、インゴットモールドの底部の中心からずれており、
1つ又は複数の注入口が、インゴットモールドの隣り合った2つの側部付近に位置して形成されている。
【0010】
インゴットモールドの底部が、インゴットモールドの底部の中心からずれており、
1つ又は複数の注入口が、インゴットモールドの相互に対向する2つの側部付近に位置して形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、インゴットモールドの底部の注入口の位置と数量を変えたり、インゴットモールドの底部の中心から注入口の位置をずらしたり、注入口の数を追加したりすることによって、溶鋼注入中又は注入完了後におけるインゴットモールド内部溶鋼の流れを改善することができる。従って、溶鋼の注入中におけるスラグ巻込みを軽減することができる。
【0012】
さらに、溶鋼の注入中及び注入完了からある期間においては、モールドの断面から観察すると、注入口の上部付近の溶鋼の温度が他所の溶鋼の温度より高いにも関わらず、良好な溶鋼通路により、絶えず底部の注入口から流出した高温溶鋼がインゴットモールドに入った後におけるインゴット内部の温度分布を改善できる。角部又は縁部にある注入口は、インゴットモールドの外壁に近いので、速く冷却しやすい。このため、注入口上部の溶鋼の温度が低くなり、インゴットの凝固に次々に影響しうる。
【0013】
注入口の位置の移動によって、ある程度は偏析の位置を変えることができる。従って、偏析を中心からずらしてインゴットの表面に近づけることで、高圧下での圧延中又はその後の熱処理中における偏析の分散及び改善に導く。
【0014】
本発明における設備は、安全検査及び性能の要求を満たすことができる厚鋼板の生産を実現できる。さらに、この設備では、簡単な方法で製造することができ、操作が容易であるため、量産に適している。
以下、図面を参照して、本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明の実施例1におけるインゴットモールドベースプレートに設けられた注入口の位置分布図である。
【
図3】本発明の実施例2におけるインゴットモールドベースプレートに設けられた注入口の位置分布図である。
【
図4】本発明の実施例3におけるインゴットモールドベースプレートに設けられた注入口の位置分布図である。
【
図5】本発明の実施例4におけるインゴットモールドベースプレートに設けられた注入口の位置分布図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施例1
図1,2に示すように、溶鋼注入設備はインゴットモールド2を含む。インゴットモールド2の上部には、保温キャップ6が備えられている。インゴットモールド2は、インゴットモールドベースプレート3上に配置されている。インゴットモールドベースプレート3には溶鋼用通路5が設けられている。溶鋼用通路5は、インゴットモールド2の側方に配置された中注管1と連通しており、インゴットモールド2の底部にある注入口4と連通している。1つの注入口4が、インゴットモールド2の底部の中心からずれていて、インゴットモールド2の底部の角部付近の位置に形成されている。
【0017】
3つのインゴットモールドのそれぞれに、33tの溶鋼を注入できる。この設備及び適当なプロセスにより、鍛造検査規格Φ2を満たす280mmの低合金鋼板Q345Bを生産できる。生産した18個のインゴットである厚さ200〜300mmの鋼板は、検査Φ2の合格率が95%、検査Φ5の合格率が100%であった。
【0018】
実施例2
図1,3に示すように、溶鋼注入設備はインゴットモールド2を含む。インゴットモールド2の上部には、保温キャップ6が備えられている。インゴットモールド2は、インゴットモールドベースプレート3上に配置されている。インゴットモールドベースプレート3には溶鋼用通路5が設けられている。溶鋼用通路5は、インゴットモールド2の側方に配置された中注管1と連通しており、インゴットモールド2の側縁に位置する3つの注入口4と連通している。注入口4は、インゴットモールド2の底部の中心からずれている。中注管は直径が80mm、注入口は直径が60mmである。
【0019】
2つのインゴットモールドのそれぞれに、43tの溶鋼を注入できる。この設備及び適当なプロセスにより、鍛造検査規格Φ2を満たす250mmの低合金鋼板Q345Dを生産できる。生産した12個のインゴットである厚さ200〜290mmの鋼板は、検査Φ2の合格率が92%、検査Φ5の合格率が100%であった。
【0020】
実施例3
図1,4に示すように、溶鋼注入設備はインゴットモールド2を含む。インゴットモールド2の上部には、保温キャップ6が備えられている。インゴットモールド2は、インゴットモールドベースプレート3上に配置されている。インゴットモールドベースプレート3には溶鋼用通路5が設けられている。溶鋼用通路5は、インゴットモールド2の側方に配置された中注管1と連通しており、インゴットモールド2の底部にある注入口4と連通している。1つの注入口4は、インゴットモールド2の底部の中心からずれており、インゴットモールドの底部の幅方向における中心線の1/4の長さだけ、中心から離れた位置に配置されている。中注管は直径が80mm、注入口は直径が60mmである。2つのインゴットモールドには、それぞれ溶鋼を48t注入できる。
【0021】
この設備及び適当なプロセスにより、鍛造検査規格Φ2を満たす240mmの低合金鋼板Q345Bを生産できる。生産した10個のインゴットである厚さ200〜270mmの鋼板は、検査Φ2の合格率が90%、検査Φ5の合格率が100%であった。
【0022】
実施例4
図1,5に示すように、溶鋼注入設備はインゴットモールド2を含む。インゴットモールド2の上部には、保温キャップ6が備えられている。インゴットモールド2は、インゴットモールドベースプレート3上に配置されている。インゴットモールドベースプレート3には溶鋼用通路5が設けられている。溶鋼用通路5は、インゴットモールド2の側方に配置された中注管1と連通しており、インゴットモールド2の底部にある注入口4と連通している。1つ又は複数の注入口4が、インゴットモールド2の底部の中心からずれて、当該インゴットモールドの底部の任意の位置に形成されている。
【0023】
この設備及び適当なプロセスにより、鍛造検査規格Φ2を満たす230mmの低合金鋼板Q345Dを生産できる。生産した13個のインゴットである厚さ200〜270mmの鋼板は、検査Φ2の合格率が85%、検査Φ5の合格率が92%であった。
【0024】
この設備で成形鋳塊を生産する場合、成形注入温度を1530〜1580℃、中注管の直径を50〜200mm、注入口の個数をインゴットごとに1〜6ヶ所、各注入口の直径を30〜200mmとする。複数の注入口を用いる場合、注入口の直径は同じでもよく、それぞれが異なっていてもよい。注入口は、
図5に示すように、複数の位置のもののうち、いずれか1つ又は複数の位置のものを同時に使用してもよい。注入口の中心からインゴットモールドの縁部までの距離を、0〜1000mmにする。
【0025】
インゴットモールドは、従来のインゴットモールドでも水冷インゴットモールドでもよい。注入する溶鋼は、いかなる溶鋼であってもよい。
【0026】
上記の実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、本発明の実施は、上記の実施例に限定されない。上記の方法は、本発明に関する説明に過ぎず、本発明の考え方及び範囲に対する限定ではなく、本発明の考え方を逸しない前提で、本発明に対する本分野の普通の技術者によるさまざまな変形及び改良の全てが、本発明の権利範囲にある。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明における設備及注入方法では、鋳造・鍛造部品検査規格JB/T5000.15-2007 Φ2級に適合する200mm以上の鋼板を生産することができる。