特許第5779716号(P5779716)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5779716焼結機における焼成完了点を調整する方法及び調整器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779716
(24)【登録日】2015年7月17日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】焼結機における焼成完了点を調整する方法及び調整器
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/20 20060101AFI20150827BHJP
   F27B 21/14 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C22B1/20 W
   F27B21/14 A
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-522043(P2014-522043)
(86)(22)【出願日】2012年7月19日
(65)【公表番号】特表2014-523971(P2014-523971A)
(43)【公表日】2014年9月18日
(86)【国際出願番号】EP2012064205
(87)【国際公開番号】WO2013014063
(87)【国際公開日】20130131
【審査請求日】2014年2月13日
(31)【優先権主張番号】102011108747.1
(32)【優先日】2011年7月28日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507221324
【氏名又は名称】オウトテック オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOTEC OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169225
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 明
(72)【発明者】
【氏名】セミラー、カール
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭53−082602(JP,A)
【文献】 特開2006−307259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−1/26
F27B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼結材料が搬送路(3)上に投入され、点火され、さらに搬送方向(F)に配置されたウインドボックス(6)を通過して材料排出部(5)まで搬送される焼結機において焼成完了点(D)を調整する方法であって、前記搬送路(3)に沿って搬送方向(F)において連続に配置された少なくとも3つの測定点(10)において、温度が測定され、前記焼結機(1)の搬送速度は、前記搬送路上における選択された焼成完了点(D)の位置に対する該測定温度の極大値(D(i))の位置に応じて調整され、連続に配置された3つの測定点(10)の温度プロファイルが比較され、搬送方向(F)において1番目の測定点及び3番目の測定点の温度値が、2番目の測定点の温度値よりも低い場合、温度極大値が推定され、温度極大値が見つからない限り、評価すべき全ての測定点から一連の順に配置された3つの測定点をさらに構成してチェックすることにより、連続に配置された3つの測定点(10)における極大値探索が継続され、全ての測定点(10)における一連の温度値が連続して上昇する場合、温度極大値は推定されず、温度極大値が推定される場合、前記搬送速度は、該温度極大値(D(i))の測定点の位置と前記選択された焼成完了点(D)の位置との差に応じて調整され、温度極大値が推定されない場合、前記搬送速度は、特定の値の分だけ減少されることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項2】
請求項1記載の焼成完了点を調整する方法において、前記1番目、2番目及び3番目の測定点(10)における一連の温度値が連続して減少する場合、前記搬送速度は、特定の値の分だけ増加されることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の焼成完了点を調整する方法において、前記測定点(10)は、前記ウインドボックス(6)に配置されることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項4】
請求項3記載の焼成完了点を調整する方法において、ウインドボックス(6)は、搬送方向(F)において複数の部分に分けられ、該部分のそれぞれに対して、1つの測定点(10)が配置されることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼成完了点を調整する方法において、温度極大値が推定される場合に前記搬送速度を変更する際の変更レベルは、前記温度極大値(D(i))の位置と前記選択された焼成完了点(D)の位置との前記差の値に応じることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の焼成完了点を調整する方法において、プラント固有の焼成レート、材料装入高さ及び前記焼結機(1)の長さから最適搬送速度を決定し、前記搬送速度を変更する際に、現在搬送速度と比較し及び/又は考慮されることを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項7】
請求項6記載の焼成完了点を調整する方法において、前記現在搬送速度と前記最適搬送速度との差を求め、該差が閾値を超えた場合、警告メッセージを発生することを特徴とする焼成完了点を調整する方法。
【請求項8】
焼結機(1)において焼成完了点を調整する調整器であって、前記調整器は、演算ユニットと、各測定点(10)に関連付けられた温度センサが接続される少なくとも3つのポート(11)と、搬送速度を指定する出力とを有し、前記演算ユニットは請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法を実行することを特徴とする調整器。
【請求項9】
請求項8記載の調整器において、前記調整器(12)は、前記焼結機の制御部(13)と組み合わせられ、前記焼結機の前記搬送路の前記搬送速度を指定し、前記搬送速度を指定する前記調整器の前記出力は前記制御部の制御入力に接続されることを特徴とする調整器。
【請求項10】
請求項8又は9記載の調整器において、前記調整器(12)の前記ポート(11)には、温度センサが接続され、前記温度センサは、前記焼結機(1)の前記搬送路(3)に沿って搬送方向(F)に配列されたウインドボックス(6)に設けられ、各温度センサは1つの測定点(10)を構成することを特徴とする調整器。
【請求項11】
請求項10記載の調整器において、前記温度センサは前記ウインドボックス(6)の吸引手段(9)に配置されることを特徴とする調整器。
【請求項12】
請求項11記載の調整器において、前記吸引手段(9)は搬送方向(F)において分割され、前記吸引手段(9)の複数の分割部分には、温度センサが配置されることを特徴とする調整器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機における焼成完了点を調整する方法及び調整器に関する。焼結機では、例えば鉱石を含む被焼結材料は、例えば移動火格子(traveling grate)又は火格子搬送台(grate carriage)のような搬送路に装入され、点火され、搬送方向に配置され吸引方向に動作するウインドボックスを通過し、材料排出部まで移送される。焼結機において移送される間に、被焼結材料は燃焼されて焼結ケーキが形成され、焼結機端部における材料排出部近傍で、例えば掻き出す(raking off)ことによって、排出され、次の工程に供給される。焼成完了点の調整方法において、被焼結材料の温度によって決まる温度が、搬送路に沿って順に配置された少なくとも3箇所の測定点において測定される。焼結機の搬送速度は、搬送路上において予め選択された焼成完了点の位置に対する最大測定温度の位置に応じて調整される。
【背景技術】
【0002】
焼結において、粒状又は粉末状材料の大部分は、加熱されることによって互いに結合される。加熱は、材料装入後、焼結機において材料表面を点火することによって行われる。点火された材料は、焼結機上を搬送され、被焼結材料の高さ全体にわたって焼成される。焼結ベッド全体が垂直方向において焼成完了する焼成完了点においては、該ウインドボックスの近傍で測定される温度は極大値である。続いて、焼結された材料は、焼結機上をさらに搬送され、その間に冷める。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、焼結は、焼結機の端部又は端部直前において完了することが望まれる。しかしながら、如何なる場合においても、材料を排出する際に焼結工程が完了せずに、次の冷却ステーションにおいて焼結工程が進む状況(この場合、焼結中に発生した熱によって冷却ステーションがダメージを受ける可能性がある)は避けられるべきである。さらに、焼成完了点の到達が早すぎる状況(この場合、生産量が少なくなる)も避けられるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
これを回避するため、焼成完了点の調整では、ウインドボックスにおける温度、特に焼結機の後方4分の1の部分のウインドボックスの温度が考慮されて、焼成完了点が決定される。この工程において、温度極大値は測定温度から決定され、焼成完了温度は該温度極大値から決定される。比較によって、どのウインドボックスに温度極大値が存在するかが決定される。この決定された位置と、所望の焼成完了点のために予め選択された位置が比較される。
【0005】
測定温度極大値のウインドボックスが、所望の焼成完了点のために選択された位置よりも前に位置している場合、焼結機の搬送速度を、固定値として設定した係数によって上昇させる。測定温度極大値のウインドボックスが、焼成完了点のために選択された位置よりも後に位置している場合、焼結機の速度を、同様に、固定値として設定した係数によって減少させる。
【0006】
米国特許第3,211,441号明細書により、焼結機の搬送速度を調整する方法及び装置が知られている。この目的のため、ドワイトロイド焼結機の連続して配置された複数のウインドボックスのうちの一つにおいて、排出空気の温度及び圧力が測定され、これら測定された値が所望の範囲にあるかどうかがチェックされる。これによって、焼結工程が、所望の時間枠内で又は焼結機の所望の位置で完了するであろうことがわかる。焼結工程では、連続配置されたウインドボックスにおいて測定された温度の温度プロファイルによって、焼結ベッドの焼成完了点における極大値がわかる。焼結ベッドを通じて吸い込まれて排出されたガスの測定圧力は、焼成完了点に到達するまでは略一定であり、焼成完了点到達後は明確に減少する。焼結機及び実行される工程に対して適切に選択された排出空気の温度範囲と圧力範囲とを最適に組み合わせることによって、選択されたウインドボックスにおいて、該選択されたウインドボックスにおける工程が焼成完了点の近傍にあるかどうかを決定することができる。2つの測定値の関係に応じて、焼結機の搬送速度を増加又は減少させ、焼成完了点を選択されたウインドボックスの領域に移動させる。
【0007】
しかしながら、この調整は、焼成完了点を確実に決定するためには、2つの異なる測定値を考慮する必要があるため、比較的コストがかかる。また、例えば火格子搬送台車にかかる焼結機の負荷に依存して、測定圧力の絶対値が変動する可能性がある。従って、この測定値は、ある限られた範囲においてのみ、焼結機の搬送速度の調整に適している。
【0008】
同様の焼結機において、米国特許第4,065,295号明細書は、ウインドボックスの収集部において測定される温度測定に基づいて搬送速度を調整する方法を開示している。この調整における調整変数は、焼結機において順に配置された全ウインドボックスからの全排出ガスの温度である。該温度は、吸引ブロワの直前に位置する収集ラインにおいて測定される。他の調整変数として、全排出ガスの平均温度の偏差が用いられる。これら排出ガスによりウインドボックスは100°Cを超える。この変数は、収集ラインにおいて収集された全排出ガスの温度よりも速い応答を示す。
【0009】
この方法もまた、ウインドボックスにおいて温度極大を検出できない場合に、又は、外的影響によって局所的に影響を受けた温度極大のみしか検出できない場合に適用することができる。さらに、直列制御(cascaded regulation)における第2の調整変数として、現在焼成完了点に対応する、連続配置されたウインドボックスにおける温度極大を決定することが提案されている。収集ラインにおける排出ガスの温度に基づいて、所望の焼成完了点が決定される。このように、極大温度の決定における不正確さは、例えば、最後のウインドボックスにおいて相殺されるべきである。しかしながら、この調整も、2つの調整変数を決定する必要があり、コストがかかる。また、上記の焼成完了点の調整は、温度分布において極大値が存在する場合だけにしか適用できない。例えば、被焼結材料が材料排出部に到達するまでに焼結が終わっていない場合には適用できない。
【0010】
米国特許第3,399,053号明細書では、焼結機の搬送速度を調整する方法及び装置が開示されている。この方法では、焼結機の搬送路の一端部及び中間部の各位置に3つずつ配置されたウインドボックスにおいて温度が測定されることで、搬送速度が連続調整され、所望の焼成完了点が調節される。搬送路の一端部における3つの温度測定から、放物線を適用することによって、搬送路に沿った温度分布における現在極大値が決定される。この現在極大値が、極大値の所望位置及び焼成完了点とそれぞれ比較され、差に応じて、焼結機の搬送速度の変更が行われる。
【0011】
搬送路中間部における温度測定から、温度極大の位置の変化率の予測が行われる。
【0012】
焼結機の搬送速度は、現在温度極大値及び予測変化率に応じて変更される。予測変化率を考慮することにより、例えば、連続装入される材料の焼結特性の変更を迅速に考慮することができる。しかしながら、この方法は大きな不確実性要素から影響を受けやすい。何故なら、個々の温度測定には比較的大きな誤差が含まれており、系統的影響に加えて、正確に予測できない焼結ケーキの組成によっても影響を受けるからである。そのような誤差を含む変数に基づく放物線の適応では、その適応自体が欠陥のあるものとなり、温度分布の極大値は、実際の極大値から大きくずれて決定される可能性がある。変化率の予測に関しても同様であり、全体として、不安定な制御となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、焼結機の搬送速度を調整するための簡単で確実に実行可能な方法及び手段を提案することにある。
【0014】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に係る方法及び請求項8に係る調整器によって実現される。
【0015】
上述の方法において、順に配置された3つの、特に丁度3つの、測定点の温度のプロファイルが比較される。これら測定点は、直接連続して配列してもよいし、及び/又は、他の測定点を間に入れて順に配列してもよい。3つの測定点の比較において、搬送方向における1番目及び3番目の測定点の温度値が2番目の測定点の温度値よりも低い場合、温度極大値が推定される。本発明は、厳密に3つの測定点の評価に対して特に好適に行われるが、測定点が3つよりも多い場合にも評価可能である。この場合、例えば、極大値が決定可能であるためには、1番目及び最後の測定点の温度値がそれらの間に位置するいくつかの又は全ての測定点における温度値よりも低くなければならない。本発明によれば、極大値を決定するため、一連の温度値の連続する上昇が連続する下降に変化する変化点が探索される。そして、この変化点が温度曲線の極大値として推定される。
【0016】
しかしながら、全ての測定点、すなわち関連する評価範囲において選択された全ての測定点、における一連の温度値が連続して上昇する場合、温度極大値は推定されない。その結果、連続配置された3つ又はそれより多くの測定点において、極大値が存在しないと判断される。極大値が推定可能かどうかの判断後、温度極大値が推定される場合、温度極大値の測定点の位置と選択された焼成完了点の位置との差に応じて、搬送速度が調整される。一方、温度極大値が推定されない場合、焼結機の搬送速度は特定の値の分だけ減少される。
【0017】
本発明では、被焼結材料の焼成完了点が焼結機上に位置しているかどうかを支障なく決定することができないという上述の極大値判断の問題が解決される。焼結機の搬送速度が高すぎると、焼結が完了する前に、被焼結材料が焼結機から排出されて、焼成完了点に達していないということがしばしば起こる。本発明に係る焼成完了点の認識方法によって、複数の測定点において温度極大値が判断されるだけでなく、連続配置された評価すべき測定点のプロファイルの解析も行われる。具体的には、ある測定点の測定温度とその前後の測定点の測定温度とを比較することで判断・解析が行われる。前後の測定点の温度値が、前後の測定点の間にある1つ又は複数の測定点の温度よりも小さい場合のみ、焼成完了点が実際に決定される。そうでない場合、本発明の調整方法によれば、一連の温度値が連続して最後の測定点まで上昇する場合、焼結機の搬送速度は下げられる。これにより、被焼結材料の温度極大値は搬送路の領域内に移動される。
【0018】
さらに、本発明に係る調整方法の好ましい態様において、1番目、2番目及び3番目の測定点の温度値が連続して減少する場合、搬送速度を特定の値の分だけ増加させてもよい。これは、被焼結材料が、1番目の測定点に到達する前に、焼成完了点にすでに到達しているという状況を示す。従って、この場合も、極大値は推定されない。
【0019】
上述のように、本発明は、温度プロファイルにおける極大値を認識するための判断基準を提示するが、本発明によれば、少なくとも3つ、好ましくはそれよりも多い測定点において、3つの一連の測定値が探索される。本発明において、極大値が認識された場合、極大値探索は停止されてもよい。或いは、探索を継続し、例えば、2つの極大値があるかどうかを見出すため、測定値を継続してチェックしてもよい。2つの極大値がある場合、調整器はエラーメッセージを発生し、焼結プロセスを、例えば、他のパラメータによってチェックする。上記判断基準によって極大値が見つからなかった場合、連続配置された3つの測定点における極大値探索が継続される。そして、評価すべき全ての測定点から、一連の順に配置された3つの測定点を構成してチェックする。すなわち、すでに述べたように、厳密に3つの測定点を評価する代わりに、それより多くの評価点、例えば、4又は5個の測定点を評価してもよい。従って、極大値の探索は3個の測定点に限定されない。しかしながら、比較は常に3つの連続した測定に対して行われる。
【0020】
本発明によれば、測定点は、搬送路に沿って直接順々に配置されてもよい。また、評価されるべき測定点として、チェックする一連の測定点を決めておくこともできる。また、搬送路において、評価されない測定点を、搬送方向で順に配置された評価される測定点の間に置くようにしてもよい。
【0021】
上述の従来技術と比較して、本発明に係る方法の利点は、搬送路に沿った温度プロファイルが、唯一の調整変数として評価されることである。これにより、各測定点に対して、単一のセンサ、すなわち1つの温度センサを設ければよい。焼結プラントのような産業プラントで使用されるセンサは頑強である必要があり、そうでなければすぐに損傷してしまうため、これは非常に有利である。各測定点に複数の異なるセンサを設けることは、調整におけるコスト増大となる。
【0022】
通常の焼結機では、所望の選択された焼成完了点は焼結機の搬送路の端部の直前に位置することが好ましいので、測定点もまた、材料排出部より前の搬送路端部、例えば焼結機の後方4分の1の領域に配置することが好ましい。
【0023】
本発明では、3より大きい個数の測定点を設けることが好ましい。これにより、搬送路の大部分にわたった温度分布における極大値を決定することができる。通常の焼結プラントにおいて、本発明によれば、4〜6個の測定点を設けることが特に好ましい。このような個数の測定点は一般に、焼結機の搬送路に対して十分な長さをカバーする。通常、焼結機は、同一形状のセクションに分割される。建設の観点から、分割部分の幅は3mが好適であることがわかった。各分割部分は1つのウインドボックスを有し、最後の4つのウインドボックスは、焼成完了点をより正確に決定するため、半分に分割される。
【0024】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、測定点は、ウインドボックスに、好ましくは直接順々に配置されたウインドボックスに配置される。焼結機の各ウインドボックス又は少なくとも関心領域内における各ウインドボックスに、1つの測定点を配置する場合、温度分布における極大値に対する最小判別距離は、搬送方向におけるウインドボックスの直径又は延在範囲に対応する。測定点は、被焼結材料を通ってウインドボックス後方の吸引ブロワによって吸引される排ガスが収集されるウインドボックスの吸引開口部の近傍に設けることが好ましい。排ガスの温度は、被焼結材料の温度によって直接決まり、該排ガスの温度プロファイルは、特に搬送路に沿った被焼結材料の温度に従う。
【0025】
直接順々に配列された測定点を評価する代わりに、順々に配列された複数の測定点から3つの測定点を選択してもよい。この場合、搬送方向において、1番目、2番目及び3番目の測定点を順番に配置し、推定しない測定点を推定する測定点の間に配置する。これにより、測定曲線の異なる幅を考慮することができる。
【0026】
これは、ウインドボックスが、搬送方向において複数、すなわち2以上、の部分に分割され、各分割部分に1つの測定点が配置される場合に特に推奨される。この場合、分割されたウインドボックスによって与えられる判別距離で、搬送路がスキャンされるため、判別距離がより短い状態で、測定を行うことができる。分割部分は論理的に構成され、ウインドボックスの各領域には温度センサがそれぞれ配置される。分割部分の分離は、例えば吸引開口部における適当なバッフル板又は通風筒(funnel)によって行うことができる。本発明によれば、選択された焼成完了点が主に設定される焼結機の後方3分の1又は4分の1部分に、複数の分割部分を配置することは特に好適である。
【0027】
好ましい実施形態において、温度極大値が推定される場合に搬送速度を変更する際の調整レベルは推定温度極大値の位置と選択された焼成完了点の位置との差の値に応じるようにしてもよい。所望の焼成完了点から実際の焼成完了点までの差に応じて、所望の又は選択された焼成完了点の方向における調整が促進される。変更レベルの調整は、例えば、使用している調整器、P−調整器、PI−調整器、PID−調整器、又はその他の調整器の調整パラメータを介して行うことができる。或いは、前記差の種々の範囲に対してテーブルを規定して、該テーブルから搬送速度の変更の調整レベルを読み込んでもよい。
【0028】
測定点評価において極大値が見つからない場合、調整レベルを設定してもよい。すなわち、搬送速度をある設定値分だけ変更するようにしてもよい。この変更の目的は、焼成完了点を焼結機上に移動させること、又は焼結機上の測定点の領域に移動させることである。これにより、極大値が見つけられる。極大値が見つかれば、実際の焼成完了点を選択された焼成完了点に移動させる上述のプロセスを行うことができる。
【0029】
本発明の他の形態では、プラント固有の焼成レート、被焼結材料の組成、材料装入高さ及び焼結機の長さから、最適搬送速度を決定してもよい。焼結機の長さは、被焼結材料の点火点と選択された焼成完了点との長さであることが好ましい。この論理的に決定された最適搬送速度は、搬送速度を変更する際に、現在搬送速度と比較され及び/又は考慮されてもよい。最適搬送速度と現在搬送速度との比較は、プロセスに適した搬送速度をより迅速に見つけるために適用することができる。これにより、搬送速度が迅速に調整される。また、この比較は、温度極大値が見出される場合、プラント固有の焼成レートの最適化に補足的又は代替的に適用することができる。焼成レートは大抵の場合、プラントに対する理論的な考察から導かれ、現在の操業状態における測定値によって特定することが可能である。また、調整における初期値として搬送速度概算値を特定するために、該焼成レートを用いてもよい。これにより、調整の際に起きる可能性のある逸脱を抑え、小信号挙動とすることで、迅速な修正が可能となる。
【0030】
本発明において、実際の現在搬送速度と最適搬送速度との差を求め、該差が閾値を超える場合、警告メッセージを発生するようにしてもよい。測定点のチェックの際に極大値が推定できないか又は見出せない場合、該警告メッセージは、搬送速度の調整への注意指示を含むことが好ましい。
【0031】
本発明はまた、焼結機における焼成完了点を調整する調整器に関する。該調整器は、演算ユニットと、各測定点に関連付けられた温度センサと接続する少なくとも3つのポートと、搬送速度を指定する出力とを有する。測定点の個数がポートの個数と最適に対応した状態で、より多くの温度センサが調整器に接続されることが好ましい。本発明において、該演算ユニットは、例えば適当なソフトウェアによって、上述した方法又は該方法の一部を実行する。
【0032】
本発明において、調整器は、焼結機の制御手段と組み合わせられ、焼結機の搬送路の搬送速度を指定する。この目的のため、該制御手段によって、搬送路の、具体的には循環コンベヤベルト又は台車(trolley)の、好適な駆動ユニットを動作させる。具体的には、駆動ユニットは電動モータ又は液圧駆動によって動作する。本発明において、搬送速度を指定するための調整器の出力は制御部の制御入力に接続される。調整器及び制御部が共通のマイクロプロセッサにおいて実現される場合、上述のポートは、認識可能な出力及び制御入力を設けることなく、集積演算ユニットにおいて実現することができる。
【0033】
調整器の全ポート又は少なくとも3つのポートには、温度センサが接続され、該温度センサは、焼結機の搬送路に沿って搬送方向に順に配列されたウインドボックスに設けられ、好ましくは吸引方向に動作するウインドボックスに設けられ、各温度センサは1つの測定点を構成することが好ましい。
【0034】
温度センサが、ウインドボックスの吸引手段、例えばテーパ形状スロット又は漏斗形状開口部、に配置される場合、温度測定を確実に行うことができる。その結果、被焼結材料を通じて吸引される排ガスは、ある特定の焼成程度に達した状態の、正確に確定された領域から吸引される。
【0035】
温度測定における位置分別能力をさらに良くするため、少なくとも1つの吸引手段、可能であれば複数又は全ての吸引手段は、搬送方向において分割形成される。この場合、吸引手段の複数又は全ての分割部分には、測定点として、温度センサがそれぞれ配置される。
【0036】
本発明の他の効果、特徴及び可能な用途が、実施形態に対する以下の説明及び添付の図面から理解できよう。ここに記載及び/又は示す全ての特徴は、それらが請求項又は背景文献に含まれているかどうかにかかわらず、それ自体或いはそれらを組み合わせることで本発明の主題を構成する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1図1は、焼結機の制御部及び測定点に接続された本発明に係る調整器の概略図である。
図2図2は、本発明に係る方法の工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、焼結機1の概略図である。焼結機1において、粒状又は粉末状物質、例えば鉱石、は加熱されることによって互いに結合される。材料装入部2において、被加熱材料が、例えば回転火格子として形成された搬送路3に装入される。搬送路3は、矢印Fで示された搬送方向に移動する。被焼結材料は最初に、点火部4の下を通過し、該被焼結材料の表面が点火される。
【0039】
搬送路3に沿って搬送されながら、表面点火された被焼結材料は、ベッド高さにおいて焼成された後、搬送路3から材料排出部5を通じて焼結体として排出され、例えば、次工程へ供給される。被焼結材料が高さにおいて焼成完了すると、焼結工程は終了となる。該工程では、所望の焼成完了点Dが選択される。通常、焼成完了点Dは、搬送路3の端部の直前且つ搬送方向Fにおける排出部5の直前に位置するように選択される。
【0040】
被焼結材料の焼成を促進するため、ウインドボックス6が搬送路3の下に設けられる。ウインドボックス6は、吸引ライン7を介して吸引方向に動作するブロワ8に接続される。ウインドボックス6は、長手方向スロットとして形成された吸引手段9を有する。吸引手段9は、搬送路3に対向する面に最大開口部を有し、ブロワ8の負圧によって、被焼結材料の焼成中に発生する排ガスを吸引する。各ウインドボックス6は、吸引手段9を互いに近接させた状態で搬送路3の下に配置される。明確にするため、図1では、全てのウインドボックス6は図示されていない。さらに、より明確にするため、図示されている吸引手段9を有するウインドボックスの全てに対しては参照符号を付与していない。
【0041】
搬送方向において材料排出部5の前に順に並べて配置されたウインドボックス6には、より正確には吸引手段9には、測定点10がそれぞれ配置される。明確にするため、全ての測定点には参照符号を付与していない。
【0042】
各測定点10には、ウインドボックス6の吸引手段9に配置された温度センサが設けられる。温度センサは、吸引手段9の上に配置された領域における搬送ベッド上にある被焼結材料から吸い込まれた排ガスの温度を測定する。
【0043】
各測定点について言及できるようにするため、各測定点をM1〜M5で示す。しかしながら、本発明は、5つの測定点10を設けることに限定されるものではない。当業者であれば、焼結機1の状況に応じて測定点の数を変更できることは理解できよう。特に、搬送路3における後半3分の1〜4分の1の領域を適当な数の測定点10によってカバーして、焼結機1のこの領域における焼成完了点を検出してもよい。
【0044】
測定点M1〜M5は、それぞれのポート11を介して、以下で説明する方法が行われる調整器12に接続される。調整器12を有する構造ユニットには、制御部13が設けられる。制御部13は、搬送速度を指定するための出力14を有する。この出力14は、搬送路3の駆動ユニット15に接続され、制御部13によって指定された搬送速度で搬送方向に搬送路3を駆動する。調整器12及び制御部13はそれぞれ、演算ユニット、可能であれば共通の演算ユニット、を有し、以下で記載する方法を実行して、搬送路3を動作させる。
【0045】
本発明に係る焼結機1の焼成完了点Dを調整する方法では、排ガスの温度は、測定点M1〜M5においてそれぞれ測定される。焼結機における排ガスの典型的な温度プロファイルでは、搬送方向に連続して配置された測定点10において、温度値は焼成完了点Dに到達するまで上昇する。焼成完了点Dに到達後、焼結体は再び冷めて、排ガス温度は減少する。このように、焼成完了点Dでは、温度は極大値に達する。本発明では、測定点M1〜M5の測定で得られた温度プロファイルが、以下において図2を参照して説明されるように、解析される。
【0046】
以下の方法では、連続して配置された測定点M1〜Mnの全体を評価すると仮定する。この目的のため、測定点M(i−1)、M(i)、M(i+1)の測定温度値が互いに比較される。まず、搬送方向における第2測定点M(i=2)から始める。第1スキャンでは、測定点M(i−1)の温度値が測定点M(i)の温度値よりも小さいかどうかがチェックされる。小さい場合、次に、測定点M(i)と測定点M(i+1)との比較が行われる。ここで、測定点M(i)の温度値が測定点M(i+1)の温度値よりも大きい場合、位置iが極大であることが認識される。この場合、測定点M(i)の位置が、現在焼成完了点D(i)として定義され、選択された焼成完了点Dに対する差が求められる。この差のレベルに応じて、調整器12又は制御部13において搬送速度が調整される。この調整は、例えば、調整パラメータの適切なパラメータ化に基づいて行われる。
【0047】
第1スキャンにおいて、測定点M(i)の温度値が、測定点M(i−1)の温度値以下である場合、手順は次の測定点M(i+1)に進み、最後の測定点に達するまでチェックが繰り返される。最後の測定点における値M(i)が測定値M(i−1)よりも小さい場合、搬送速度は、定数K1分だけ増加される。一連の測定値によって、焼成完了点は、搬送路3上において第1測定点M1よりも前にあることがわかるからである。
【0048】
しかしながら、(次のチェックステップにおける)測定点チェックにおいて、次に位置する測定点M(i+1)の温度値が、測定点M(i)の温度値よりも大きい場合、全ての測定点が処理されるまで、手順は次の測定点へ進む。最後の測定点においても、この条件が満たされている場合、一連の測定温度値は上昇していることになり、焼成完了点は、搬送路の後方に存在することがわかる。この場合、搬送速度は、一定値K2分だけ減少される。
【0049】
搬送速度を調整することにより、制御差D(i)−Dが存在しなくなり、現時点で決定される焼成完了点D(i)が選択された焼成完了点Dに一致するまで、実際の焼成完了点D(i)は、選択された焼成完了点Dの方向にずらされる。
【0050】
以下では、この手順が、図1に示される構成に対して具体例を参照して説明される。
【0051】
第1例では、測定点M1〜M5において以下の温度が測定される。
M1:240°C
M2:250°C
M3:260°C
M4:270°C
M5:280°C
【0052】
この場合、一連の温度は上昇しており、各温度は測定値から次の測定値へ上昇し続けるため、温度分布における極大値を推定することはできない。この場合、焼結機1の搬送速度は高すぎであり、焼成完了点は搬送路3の後方に存在すると推定しなくてはならない。この場合、手順は、図2に示される方法の右分岐に進む。
【0053】
第2例では、測定点M1〜M5において、以下の温度分布を示す。
M1:250°C
M2:260°C
M3:270°C
M4:260°C
M5:250°C
【0054】
この場合、測定点M2及びM4においては、測定点M3よりも低い温度が測定される。従って、現在の焼成完了点D(i)は、測定点M3に存在すると推定できる。値i=3に対して、手順は、図2のフローチャートにおける中間の分岐を進み、測定点M3において温度の極大値を決定した後、測定点の評価処理が停止する。
【0055】
また、現在の焼成完了点D(i)と選択された焼成完了点Dとの差が制御差として求められる。制御差を構成するこの差の大きさ及び符号に応じて、焼結機1の搬送速度の修正が行われる。これは、実際の焼成完了点D(i)が選択された焼成完了点から離れているほど、修正量が大きくなることを意味する。
【0056】
上述の第2例では、選択された焼成完了点Dは、図1で示す測定点M4に位置するべきであるとする。しかしながら、現在の焼成完了点D(i)は、測定点M3に位置する。従って、搬送速度をわずかに増加させて、実際の焼成完了点D(i)を測定点M4の位置にずらす。
【0057】
実際の焼成完了点D(i)が測定点M1の領域に位置する場合、この修正は、より大きくなるであろう。
【0058】
搬送方向において、現在の焼成完了点D(i)が選択された焼成完了点Dの後方に位置する場合、搬送速度はそれに対応して減少されるであろう。
【0059】
搬送速度の決定に関連して、焼結機の搬送速度は、焼成レートを決定することによって最適化されてもよい。材料組成に応じて、焼結機1毎に特定の焼成レートが得られる。この焼成レートは、焼結ベッドを垂直方向に焼成する際のレートである。焼成レートが既知又は決定されている場合、装入された材料の現在の材料高さ及び焼結機の長さ、具体的には、搬送路における被焼結材料の点火点から選択された焼成完了点までの距離、から、理論的な最適搬送速度を、以下の関係に従って計算することができる。
【0060】
【数1】
【0061】
一例において、プラントに対して決定された焼成レートが15mm/分、装入材料高さが700mmである場合、被焼結材料の点火点から選択された焼成完了点までの焼結機の相対長さから、最適搬送速度は4.28m/分と得られる。しかしながら、この例で用いられた値は説明のためのものにすぎず、焼結機、動作モード、材料組成に応じて、変更されなければならない。
【0062】
この理論的に決定された最適搬送速度は、所与の調整、例えば調整器による調整、と関連して搬送速度を決定する際に使用することができる。これにより、安定した調整が行え、焼結機の構成及び次工程における焼結体の要求量に応じて行われるプラントの所望の動作モードに合わせて、実際の搬送速度をできる限り迅速に調節することができる。これらパラメータを考慮することで、プラントオペレータは、最初に、適切な搬送速度を選択することができる。選択された搬送速度で、被焼結材料は、材料装入部2から材料排出部5まで搬送され、焼結ベッドの表面が点火部4において点火され、焼結ベッドの点火された層はウインドボックス6によって引き下ろされる。
【0063】
焼成完了点Dを選択することにより、プラントオペレータは、焼結ベッドをどの位置で焼成完了させるべきかを決定する。ここで提案された調整により、測定された又は実際の焼成完了点D(i)の予め選択された焼成完了点Dの位置へのシフトが迅速且つ正確に行われる。現在焼成完了点Dが焼結機1の測定点M1〜M5の領域内に位置していないため、現在焼成完了点D(i)を決定できない場合も、予め選択された位置に到達する。この場合、最初に、焼成完了点を、正確な調整を行えるようになるまで、図1で示される測定点M1〜M5の方向にシフトする。これは、搬送速度を固定設定値によって調整することにより実現される。
【0064】
該調整と関連して、また進行を促進するため、現時点で決定された焼成完了点D(i)と選択された焼成完了点Dとの差の大きさが、ある閾値を超える場合、例えば、最適化された搬送速度をプラントオペレータに対して提示するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…焼結機
2…材料装入部
3…搬送路
4…点火部
5…材料排出部
6…ウインドボックス
7…吸引ライン
8…ブロワ
9…吸引手段
10…測定点
11…ポート
12…調整器
13…制御部
14…出力
15…搬送路駆動ユニット
F…搬送方向
D…焼成完了点
D(i)…推定焼成完了点、測定温度極大位置
M1〜M5…測定点
図1
図2