【課題を解決するための手段】
【0004】
これを回避するため、焼成完了点の調整では、ウインドボックスにおける温度、特に焼結機の後方4分の1の部分のウインドボックスの温度が考慮されて、焼成完了点が決定される。この工程において、温度極大値は測定温度から決定され、焼成完了温度は該温度極大値から決定される。比較によって、どのウインドボックスに温度極大値が存在するかが決定される。この決定された位置と、所望の焼成完了点のために予め選択された位置が比較される。
【0005】
測定温度極大値のウインドボックスが、所望の焼成完了点のために選択された位置よりも前に位置している場合、焼結機の搬送速度を、固定値として設定した係数によって上昇させる。測定温度極大値のウインドボックスが、焼成完了点のために選択された位置よりも後に位置している場合、焼結機の速度を、同様に、固定値として設定した係数によって減少させる。
【0006】
米国特許第3,211,441号明細書により、焼結機の搬送速度を調整する方法及び装置が知られている。この目的のため、ドワイトロイド焼結機の連続して配置された複数のウインドボックスのうちの一つにおいて、排出空気の温度及び圧力が測定され、これら測定された値が所望の範囲にあるかどうかがチェックされる。これによって、焼結工程が、所望の時間枠内で又は焼結機の所望の位置で完了するであろうことがわかる。焼結工程では、連続配置されたウインドボックスにおいて測定された温度の温度プロファイルによって、焼結ベッドの焼成完了点における極大値がわかる。焼結ベッドを通じて吸い込まれて排出されたガスの測定圧力は、焼成完了点に到達するまでは略一定であり、焼成完了点到達後は明確に減少する。焼結機及び実行される工程に対して適切に選択された排出空気の温度範囲と圧力範囲とを最適に組み合わせることによって、選択されたウインドボックスにおいて、該選択されたウインドボックスにおける工程が焼成完了点の近傍にあるかどうかを決定することができる。2つの測定値の関係に応じて、焼結機の搬送速度を増加又は減少させ、焼成完了点を選択されたウインドボックスの領域に移動させる。
【0007】
しかしながら、この調整は、焼成完了点を確実に決定するためには、2つの異なる測定値を考慮する必要があるため、比較的コストがかかる。また、例えば火格子搬送台車にかかる焼結機の負荷に依存して、測定圧力の絶対値が変動する可能性がある。従って、この測定値は、ある限られた範囲においてのみ、焼結機の搬送速度の調整に適している。
【0008】
同様の焼結機において、米国特許第4,065,295号明細書は、ウインドボックスの収集部において測定される温度測定に基づいて搬送速度を調整する方法を開示している。この調整における調整変数は、焼結機において順に配置された全ウインドボックスからの全排出ガスの温度である。該温度は、吸引ブロワの直前に位置する収集ラインにおいて測定される。他の調整変数として、全排出ガスの平均温度の偏差が用いられる。これら排出ガスによりウインドボックスは100°Cを超える。この変数は、収集ラインにおいて収集された全排出ガスの温度よりも速い応答を示す。
【0009】
この方法もまた、ウインドボックスにおいて温度極大を検出できない場合に、又は、外的影響によって局所的に影響を受けた温度極大のみしか検出できない場合に適用することができる。さらに、直列制御(cascaded regulation)における第2の調整変数として、現在焼成完了点に対応する、連続配置されたウインドボックスにおける温度極大を決定することが提案されている。収集ラインにおける排出ガスの温度に基づいて、所望の焼成完了点が決定される。このように、極大温度の決定における不正確さは、例えば、最後のウインドボックスにおいて相殺されるべきである。しかしながら、この調整も、2つの調整変数を決定する必要があり、コストがかかる。また、上記の焼成完了点の調整は、温度分布において極大値が存在する場合だけにしか適用できない。例えば、被焼結材料が材料排出部に到達するまでに焼結が終わっていない場合には適用できない。
【0010】
米国特許第3,399,053号明細書では、焼結機の搬送速度を調整する方法及び装置が開示されている。この方法では、焼結機の搬送路の一端部及び中間部の各位置に3つずつ配置されたウインドボックスにおいて温度が測定されることで、搬送速度が連続調整され、所望の焼成完了点が調節される。搬送路の一端部における3つの温度測定から、放物線を適用することによって、搬送路に沿った温度分布における現在極大値が決定される。この現在極大値が、極大値の所望位置及び焼成完了点とそれぞれ比較され、差に応じて、焼結機の搬送速度の変更が行われる。
【0011】
搬送路中間部における温度測定から、温度極大の位置の変化率の予測が行われる。
【0012】
焼結機の搬送速度は、現在温度極大値及び予測変化率に応じて変更される。予測変化率を考慮することにより、例えば、連続装入される材料の焼結特性の変更を迅速に考慮することができる。しかしながら、この方法は大きな不確実性要素から影響を受けやすい。何故なら、個々の温度測定には比較的大きな誤差が含まれており、系統的影響に加えて、正確に予測できない焼結ケーキの組成によっても影響を受けるからである。そのような誤差を含む変数に基づく放物線の適応では、その適応自体が欠陥のあるものとなり、温度分布の極大値は、実際の極大値から大きくずれて決定される可能性がある。変化率の予測に関しても同様であり、全体として、不安定な制御となる。
【0013】
従って、本発明の目的は、焼結機の搬送速度を調整するための簡単で確実に実行可能な方法及び手段を提案することにある。
【0014】
本発明によれば、上記目的は、請求項1に係る方法及び請求項8に係る調整器によって実現される。
【0015】
上述の方法において、順に配置された3つの、特に丁度3つの、測定点の温度のプロファイルが比較される。これら測定点は、直接連続して配列してもよいし、及び/又は、他の測定点を間に入れて順に配列してもよい。3つの測定点の比較において、搬送方向における1番目及び3番目の測定点の温度値が2番目の測定点の温度値よりも低い場合、温度極大値が推定される。本発明は、厳密に3つの測定点の評価に対して特に好適に行われるが、測定点が3つよりも多い場合にも評価可能である。この場合、例えば、極大値が決定可能であるためには、1番目及び最後の測定点の温度値がそれらの間に位置するいくつかの又は全ての測定点における温度値よりも低くなければならない。本発明によれば、極大値を決定するため、一連の温度値の連続する上昇が連続する下降に変化する変化点が探索される。そして、この変化点が温度曲線の極大値として推定される。
【0016】
しかしながら、全ての測定点、すなわち関連する評価範囲において選択された全ての測定点、における一連の温度値が連続して上昇する場合、温度極大値は推定されない。その結果、連続配置された3つ又はそれより多くの測定点において、極大値が存在しないと判断される。極大値が推定可能かどうかの判断後、温度極大値が推定される場合、温度極大値の測定点の位置と選択された焼成完了点の位置との差に応じて、搬送速度が調整される。一方、温度極大値が推定されない場合、焼結機の搬送速度は特定の値の分だけ減少される。
【0017】
本発明では、被焼結材料の焼成完了点が焼結機上に位置しているかどうかを支障なく決定することができないという上述の極大値判断の問題が解決される。焼結機の搬送速度が高すぎると、焼結が完了する前に、被焼結材料が焼結機から排出されて、焼成完了点に達していないということがしばしば起こる。本発明に係る焼成完了点の認識方法によって、複数の測定点において温度極大値が判断されるだけでなく、連続配置された評価すべき測定点のプロファイルの解析も行われる。具体的には、ある測定点の測定温度とその前後の測定点の測定温度とを比較することで判断・解析が行われる。前後の測定点の温度値が、前後の測定点の間にある1つ又は複数の測定点の温度よりも小さい場合のみ、焼成完了点が実際に決定される。そうでない場合、本発明の調整方法によれば、一連の温度値が連続して最後の測定点まで上昇する場合、焼結機の搬送速度は下げられる。これにより、被焼結材料の温度極大値は搬送路の領域内に移動される。
【0018】
さらに、本発明に係る調整方法の好ましい態様において、1番目、2番目及び3番目の測定点の温度値が連続して減少する場合、搬送速度を特定の値の分だけ増加させてもよい。これは、被焼結材料が、1番目の測定点に到達する前に、焼成完了点にすでに到達しているという状況を示す。従って、この場合も、極大値は推定されない。
【0019】
上述のように、本発明は、温度プロファイルにおける極大値を認識するための判断基準を提示するが、本発明によれば、少なくとも3つ、好ましくはそれよりも多い測定点において、3つの一連の測定値が探索される。本発明において、極大値が認識された場合、極大値探索は停止されてもよい。或いは、探索を継続し、例えば、2つの極大値があるかどうかを見出すため、測定値を継続してチェックしてもよい。2つの極大値がある場合、調整器はエラーメッセージを発生し、焼結プロセスを、例えば、他のパラメータによってチェックする。上記判断基準によって極大値が見つからなかった場合、連続配置された3つの測定点における極大値探索が継続される。そして、評価すべき全ての測定点から、一連の順に配置された3つの測定点を構成してチェックする。すなわち、すでに述べたように、厳密に3つの測定点を評価する代わりに、それより多くの評価点、例えば、4又は5個の測定点を評価してもよい。従って、極大値の探索は3個の測定点に限定されない。しかしながら、比較は常に3つの連続した測定に対して行われる。
【0020】
本発明によれば、測定点は、搬送路に沿って直接順々に配置されてもよい。また、評価されるべき測定点として、チェックする一連の測定点を決めておくこともできる。また、搬送路において、評価されない測定点を、搬送方向で順に配置された評価される測定点の間に置くようにしてもよい。
【0021】
上述の従来技術と比較して、本発明に係る方法の利点は、搬送路に沿った温度プロファイルが、唯一の調整変数として評価されることである。これにより、各測定点に対して、単一のセンサ、すなわち1つの温度センサを設ければよい。焼結プラントのような産業プラントで使用されるセンサは頑強である必要があり、そうでなければすぐに損傷してしまうため、これは非常に有利である。各測定点に複数の異なるセンサを設けることは、調整におけるコスト増大となる。
【0022】
通常の焼結機では、所望の選択された焼成完了点は焼結機の搬送路の端部の直前に位置することが好ましいので、測定点もまた、材料排出部より前の搬送路端部、例えば焼結機の後方4分の1の領域に配置することが好ましい。
【0023】
本発明では、3より大きい個数の測定点を設けることが好ましい。これにより、搬送路の大部分にわたった温度分布における極大値を決定することができる。通常の焼結プラントにおいて、本発明によれば、4〜6個の測定点を設けることが特に好ましい。このような個数の測定点は一般に、焼結機の搬送路に対して十分な長さをカバーする。通常、焼結機は、同一形状のセクションに分割される。建設の観点から、分割部分の幅は3mが好適であることがわかった。各分割部分は1つのウインドボックスを有し、最後の4つのウインドボックスは、焼成完了点をより正確に決定するため、半分に分割される。
【0024】
本発明に係る方法の好ましい実施形態において、測定点は、ウインドボックスに、好ましくは直接順々に配置されたウインドボックスに配置される。焼結機の各ウインドボックス又は少なくとも関心領域内における各ウインドボックスに、1つの測定点を配置する場合、温度分布における極大値に対する最小判別距離は、搬送方向におけるウインドボックスの直径又は延在範囲に対応する。測定点は、被焼結材料を通ってウインドボックス後方の吸引ブロワによって吸引される排ガスが収集されるウインドボックスの吸引開口部の近傍に設けることが好ましい。排ガスの温度は、被焼結材料の温度によって直接決まり、該排ガスの温度プロファイルは、特に搬送路に沿った被焼結材料の温度に従う。
【0025】
直接順々に配列された測定点を評価する代わりに、順々に配列された複数の測定点から3つの測定点を選択してもよい。この場合、搬送方向において、1番目、2番目及び3番目の測定点を順番に配置し、推定しない測定点を推定する測定点の間に配置する。これにより、測定曲線の異なる幅を考慮することができる。
【0026】
これは、ウインドボックスが、搬送方向において複数、すなわち2以上、の部分に分割され、各分割部分に1つの測定点が配置される場合に特に推奨される。この場合、分割されたウインドボックスによって与えられる判別距離で、搬送路がスキャンされるため、判別距離がより短い状態で、測定を行うことができる。分割部分は論理的に構成され、ウインドボックスの各領域には温度センサがそれぞれ配置される。分割部分の分離は、例えば吸引開口部における適当なバッフル板又は通風筒(funnel)によって行うことができる。本発明によれば、選択された焼成完了点が主に設定される焼結機の後方3分の1又は4分の1部分に、複数の分割部分を配置することは特に好適である。
【0027】
好ましい実施形態において、温度極大値が推定される場合に搬送速度を変更する際の調整レベルは推定温度極大値の位置と選択された焼成完了点の位置との差の値に応じるようにしてもよい。所望の焼成完了点から実際の焼成完了点までの差に応じて、所望の又は選択された焼成完了点の方向における調整が促進される。変更レベルの調整は、例えば、使用している調整器、P−調整器、PI−調整器、PID−調整器、又はその他の調整器の調整パラメータを介して行うことができる。或いは、前記差の種々の範囲に対してテーブルを規定して、該テーブルから搬送速度の変更の調整レベルを読み込んでもよい。
【0028】
測定点評価において極大値が見つからない場合、調整レベルを設定してもよい。すなわち、搬送速度をある設定値分だけ変更するようにしてもよい。この変更の目的は、焼成完了点を焼結機上に移動させること、又は焼結機上の測定点の領域に移動させることである。これにより、極大値が見つけられる。極大値が見つかれば、実際の焼成完了点を選択された焼成完了点に移動させる上述のプロセスを行うことができる。
【0029】
本発明の他の形態では、プラント固有の焼成レート、被焼結材料の組成、材料装入高さ及び焼結機の長さから、最適搬送速度を決定してもよい。焼結機の長さは、被焼結材料の点火点と選択された焼成完了点との長さであることが好ましい。この論理的に決定された最適搬送速度は、搬送速度を変更する際に、現在搬送速度と比較され及び/又は考慮されてもよい。最適搬送速度と現在搬送速度との比較は、プロセスに適した搬送速度をより迅速に見つけるために適用することができる。これにより、搬送速度が迅速に調整される。また、この比較は、温度極大値が見出される場合、プラント固有の焼成レートの最適化に補足的又は代替的に適用することができる。焼成レートは大抵の場合、プラントに対する理論的な考察から導かれ、現在の操業状態における測定値によって特定することが可能である。また、調整における初期値として搬送速度概算値を特定するために、該焼成レートを用いてもよい。これにより、調整の際に起きる可能性のある逸脱を抑え、小信号挙動とすることで、迅速な修正が可能となる。
【0030】
本発明において、実際の現在搬送速度と最適搬送速度との差を求め、該差が閾値を超える場合、警告メッセージを発生するようにしてもよい。測定点のチェックの際に極大値が推定できないか又は見出せない場合、該警告メッセージは、搬送速度の調整への注意指示を含むことが好ましい。
【0031】
本発明はまた、焼結機における焼成完了点を調整する調整器に関する。該調整器は、演算ユニットと、各測定点に関連付けられた温度センサと接続する少なくとも3つのポートと、搬送速度を指定する出力とを有する。測定点の個数がポートの個数と最適に対応した状態で、より多くの温度センサが調整器に接続されることが好ましい。本発明において、該演算ユニットは、例えば適当なソフトウェアによって、上述した方法又は該方法の一部を実行する。
【0032】
本発明において、調整器は、焼結機の制御手段と組み合わせられ、焼結機の搬送路の搬送速度を指定する。この目的のため、該制御手段によって、搬送路の、具体的には循環コンベヤベルト又は台車(trolley)の、好適な駆動ユニットを動作させる。具体的には、駆動ユニットは電動モータ又は液圧駆動によって動作する。本発明において、搬送速度を指定するための調整器の出力は制御部の制御入力に接続される。調整器及び制御部が共通のマイクロプロセッサにおいて実現される場合、上述のポートは、認識可能な出力及び制御入力を設けることなく、集積演算ユニットにおいて実現することができる。
【0033】
調整器の全ポート又は少なくとも3つのポートには、温度センサが接続され、該温度センサは、焼結機の搬送路に沿って搬送方向に順に配列されたウインドボックスに設けられ、好ましくは吸引方向に動作するウインドボックスに設けられ、各温度センサは1つの測定点を構成することが好ましい。
【0034】
温度センサが、ウインドボックスの吸引手段、例えばテーパ形状スロット又は漏斗形状開口部、に配置される場合、温度測定を確実に行うことができる。その結果、被焼結材料を通じて吸引される排ガスは、ある特定の焼成程度に達した状態の、正確に確定された領域から吸引される。
【0035】
温度測定における位置分別能力をさらに良くするため、少なくとも1つの吸引手段、可能であれば複数又は全ての吸引手段は、搬送方向において分割形成される。この場合、吸引手段の複数又は全ての分割部分には、測定点として、温度センサがそれぞれ配置される。
【0036】
本発明の他の効果、特徴及び可能な用途が、実施形態に対する以下の説明及び添付の図面から理解できよう。ここに記載及び/又は示す全ての特徴は、それらが請求項又は背景文献に含まれているかどうかにかかわらず、それ自体或いはそれらを組み合わせることで本発明の主題を構成する。