(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779742
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】座面にカッターおよびポケットを有するねじ
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20150827BHJP
F16B 25/10 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F16B35/00 K
F16B25/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-529071(P2012-529071)
(86)(22)【出願日】2010年6月4日
(65)【公表番号】特表2013-505401(P2013-505401A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】CA2010000838
(87)【国際公開番号】WO2011032259
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年6月4日
(31)【優先権主張番号】12/561,931
(32)【優先日】2009年9月17日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501441865
【氏名又は名称】イリノイ ツール ワークス インク
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ウォルサー、ミルコ
【審査官】
内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−114061(JP,A)
【文献】
特開平08−082316(JP,A)
【文献】
特開2004−060781(JP,A)
【文献】
実開昭62−196917(JP,U)
【文献】
特開平07−217634(JP,A)
【文献】
米国特許第3370631(US,A)
【文献】
特公昭37−17411(JP,B1)
【文献】
特開昭63−145012(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/00
F16B 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじであって、
少なくとも一部分にわたって複数のねじ山を有する細長い胴部であって、当該ねじ山は前記胴部の第1の端部の先端部で終端するものである、前記細長い胴部と、
前記胴部の第2の端部に配置され、実質的に平坦な座面を有する頭部と、
前記頭部の座面上周方向に配置された複数のカッターであって、前記ねじが挿入される繊維状物質の表面から物質を切除することにより、座ぐり加工を促進するようになっているものである、前記カッターと、
前記実質的に平坦な座面の内部に向かって延在する複数のポケットであって、前記実質的に平坦な座面の一部が当該複数のポケットと前記複数のカッターとの間に介在するように前記複数のカッターから径方向内側に離間して配置されるものであり、前記ねじが前記繊維状物質に挿入されるとき前記繊維状物質の少なくとも一部を収容するものである、前記複数のポケットと
を有するねじ。
【請求項2】
請求項1記載のねじにおいて、前記カッターの数は前記ポケットの数より多いいものであるねじ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のねじにおいて、前記カッターは、四辺形くさび形状であるねじ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のねじにおいて、前記カッターは、三角形くさび形状であるねじ。
【請求項5】
1つの繊維状物質にねじを締結させる方法であって、
前記繊維状物質の表面に前記ねじの先端部を位置付ける工程と、
前記ねじに回転力を加えて前記ねじの頭部の実質的に平坦な座面上周方向に配置されたカッターが前記繊維状物質の表面から前記繊維状物質の一部を切除するまで前記ねじをねじ込む工程であって、これにより、前記ねじの頭部の前記繊維状物質の表面に対する座ぐり加工が促進されるものであり、
前記回転力は、前記繊維状物質の一部が前記ねじの頭部の前記実質的に平坦な座面の内部に向かって延在する複数のポケットに進入するまで加えられるものであり、
前記複数のポケットは、前記実質的に平坦な座面の一部が当該複数のポケットと前記複数のカッターとの間に介在するように前記複数のカッターから径方向内側に離間して配置されるものである、
前記回転力を加える工程と
を有する方法。
【請求項6】
ねじ山を有する締結部材であって、
胴部と、
前記胴部の一端部に配置され、実質的に平坦な座面を有する頭部であって、
前記頭部の実質的に平坦な座面上周方向に、繊維状物質の表面に対して当該頭部を座ぐり加工する複数のカッターが突設されているものであり、
前記頭部は、さらに、前記頭部の実質的に平坦な座面の内部に向かって延在する複数のポケットであって、前記実質的に平坦な座面の一部が当該複数のポケットと前記複数のカッターとの間に介在するように前記複数のカッターから径方向内側に離間して配置されるものである、前記複数のポケットを含み、当該複数のポケットは前記締結部材が挿入されるとき、前記繊維状物質の一部を収容するものである、
前記頭部と
を有する締結部材。
【請求項7】
請求項6記載の締結部材において、複数の三角形くさび形状のカッターを有するものである締結部材。
【請求項8】
請求項6記載の締結部材において、複数の四辺形くさび形状のカッターを有するものである締結部材。
【請求項9】
請求項6記載の締結部材において、前記複数のポケットは、前記頭部の実質的に平坦な座面の周方向に等間隔を置いて配置されるものである締結部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はねじ山を有する締結部材に関し、より具体的には、概して皿頭を有するねじに関する。
【背景技術】
【0002】
木材、木材の様な物質、および複合材などの繊維状物質用の自動皿座ぐりねじが、2002年4月16日付けで交付された本出願人(Waltherら)のカナダ特許第2,198,832号に開示されている。この自動皿座ぐりねじは、ねじ回しの先端を収容するようになっている穴部を有する逆円錐形の頭部を含み、且つ、複数の三角陥凹部を有する円錐形座面を有し、当該円錐形座面の各々は鋭利な刃と切りくずを収容するための空間を形成するように内部へ延長した側面とを有する。前記鋭利な刃は、ねじが被加工物を貫入するとき皿穴を形成するように設計されている。この自動皿座ぐりねじは、容易に且つ効率的に挿入することが可能である。
【0003】
木ねじ(またはその他の繊維状物質用のねじ)に関して常に問題となっていたことの1つは、時間の経過に伴って弛緩する傾向があるということである。そのため、自動皿座ぐりするだけでなくより弛緩し難い繊維状物質用の改善されたねじを提供することが非常に望まれている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 米国特許第1527831号明細書
【特許文献2】 米国特許第2112494号明細書
【特許文献3】 米国特許第2833326号明細書
【特許文献4】 米国特許第2959204明細書
【特許文献5】 米国特許第2982166号明細書
【特許文献6】 米国特許第3370631号明細書
【特許文献7】 米国特許第3389734号明細書
【特許文献8】 米国特許第3438417号明細書
【特許文献9】 米国特許第4094352号明細書
【特許文献10】 米国特許第4220188号明細書
【特許文献11】 米国特許第4310272号明細書
【特許文献12】 米国特許第4812095号明細書
【特許文献13】 米国特許第4820235号明細書
【特許文献14】 米国特許第4966512号明細書
【特許文献15】 米国特許第5183359号明細書
【特許文献16】 米国特許第5249882号明細書
【特許文献17】 米国特許第5622464号明細書
【特許文献18】 米国特許第5683217号明細書
【特許文献19】 米国特許第6206737号明細書
【特許文献20】 米国特許第6302629号明細書
【特許文献21】 米国特許第6334748号明細書
【特許文献22】 米国特許第7014406号明細書
【特許文献23】 米国特許出願公開第2007/0024020号明細書
【特許文献24】 英国特許第152885号明細書
【特許文献25】 カナダ国特許第2537525号明細書
【特許文献26】 カナダ国特許第2198832号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】 lnternational Preliminary Report on Patentability for PCT/C42010/000838 dated November 10,2011
【非特許文献2】 Office Action for U.S. Ser. No. 121561,931 dated December 14, 2011
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
広義において、本発明は、ねじ頭部の座面に複数のカッターと1若しくはそれ以上のポケットとを有する新規ねじを提供する。前記ねじが挿入されると、前記カッターは、前記ねじの頭部が当接する被加工物の表面から物質を刮げ取るまたは削り取ることにより、座ぐり加工する。前記1若しくはそれ以上のポケットは、前記ねじが挿入される前記被加工物から物質を収容し、これにより所定位置に前記ねじを固定する。前記ポケットに進入する物質により前記ねじの弛緩が防止される。
従って、本発明の主要な観点は細長い胴部を有するねじであって、当該胴部の少なくとも一部分にわたって複数のねじ山を有し、当該ねじ山は前記胴体の第1の端部の先端部で終端している。前記ねじは前記胴部の第2の端部に配置され、実質的に平坦な座面を有する頭部を有する。複数のカッターが前記頭部の座面に円周方向に配置されている。前記カッターは、前記ねじが挿入される繊維状物質の表面から物質を切除することによって座ぐり加工を促進するようになっている。少なくとも1つのポケットは前記カッターから径方向に離間して配置されており、前記ねじが前記繊維状物質に挿入されるとき、前記繊維状物質の少なくとも一部を収容する。
本発明の別の主要な観点は、1つの繊維状物質にねじを締結する方法である。前記方法は、前記繊維状物質の表面に前記ねじを位置付ける工程と、前記ねじに回転力を加えて、前記ねじの頭部の座面に位置するカッターが前記繊維状物質の表面から前記繊維状物質の一部を切除するまで前記ねじを前記繊維状物質にねじ込む工程であって、これにより前記ねじの頭部の前記繊維状物質の表面に対する座ぐり加工が促進されるものである、前記回転力を加える工程とを含む。前記回転力は、前記繊維状物質の一部が前記ねじの頭部の座面に形成された1若しくはそれ以上のポケットに進入するまで加えられる。
【0007】
本発明のさらに別の観点は、胴部と当該胴部の一端部に配置される頭部とを含むねじ山を有する締結部材である。前記頭部は座面を有し、当該座面には繊維状物質の表面に対して前記頭部を座ぐり加工するための複数のカッターが配置されている。前記頭部はさらに、前記胴部の周囲に配置され、且つ前記カッターから径方向内側に配置される少なくとも1つのポケットを含み、当該ポケットは前記ねじ部品が挿入されると前記繊維状物質の一部を収容するようになっている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本発明の更なる特徴および利点は、添付の図面と併用することにより、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に従った新規ねじの頭部の座面の等角図である。
【
図4】
図4は、横断面4−4から切り取られた
図1のねじの断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施形態に従った新規ねじの頭部の座面の等角図である。
【
図13】
図13は、本発明の第3の実施形態に従った新規ねじの頭部の座面の等角図である。
【0009】
添付の図面全体にわたって、同様の機能は同様の参照番号によって識別されていることに気が付くであろう。さらに、前記図面は必ずしも縮尺ではないことについても留意されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一般に(および導入部として)、本発明は頭部の座面にカッターと、1若しくはそれ以上のポケットとを有する新規ねじを提供する。前記頭部が物質の表面に当接すると、前記カッターは当該表面から物質を刮げ取るまたは削り取ることにより、座ぐり加工を促進する。前記ポケットは、前記ねじが貫入される被加工物からの物質を収容することによって所定位置に前記ねじを固定する、すなわち前記ポケットに進入する前記物質により、前記時間の経過と共にねじが緩むのを阻止、または少なくとも抑制する。
【0011】
図1〜18は、本発明を説明する実施例によって提示する本発明の3つの実施形態を図示する。
図1〜6は、本発明の第1の実施形態を図示しており、前記ねじが四辺形くさび形状の複数のカッターと、前記ねじの胴部の周囲に配置された単一の環状ポケットとを有する。
図7〜12は、本発明の第2の実施形態を図示しており、前記ねじが前記頭部の座面に複数の円形ポケットを有する。
図13〜18は、本発明の第3の実施形態を図示しており、前記カッターは三角形くさび形状である。
【0012】
図1〜6に示すように、一般に参照番号10として指定されているねじは、細長い胴部12を有し、当該胴部の少なくとも一部分にわたって複数のねじ山14を有し、当該ねじ山は前記胴部の第1の端部18の先端部16で終端している。言い換えると、前記胴部(軸部)はねじ山部分と非ねじ山部分とを有する。前記ねじはまた、前記胴部の第2の端部22に頭部20が配置されている。前記頭部は、実質的に平坦な座面24を有する。図に示すように、前記胴部と前記頭部の間にはテーパーの付いた(円錐台)中間(首)部がある。
【0013】
複数のカッター(切歯)26は、前記頭部の座面に円周方向に配置されている。前記カッターは、配向された鋭利な刃先を有し、或いは繊維状物質(例えば、木材、複合材、および同様の物質)の表面に対して回転されるとき、当該繊維状物質を切除する(すなわち、当該物質を刮げ取るまたは削り取る)ようになっている鋭利な刃先を有している。前記カッターは、これにより座ぐり加工を促進する。前記カッターはまた、前記表面に対して回転されるとき付随的に破片または切りくずを発生させる。
【0014】
少なくとも1つのポケット28は前記カッターから径方向に間隔を空けて配置され、前記ねじが前記物質に貫入されるとき、前記繊維状物質の一部を収容する。前記ポケットは、物質を収容する適切な凹部、穴部、または空洞部であってよい。場合によっては、前記繊維状物質の破片、突出部、または他の要素が前記ポケットの中に延長するまたは進入すする。これらは、前記ねじの回転に伴い前記ねじの固定を促進する。他の事例では、前記対象となる繊維状物質の特性にもよるが、前記表面の前記繊維状物質の一部は前記ポケット内に押込まれる。更に、恐らく多少の破片がこれらのポケットに収集されることも考えられる。破片により前記繊維質物質の前記ポケット内への蓄積が助長され、望ましくない緩みに抗して前記ねじがさらに固定される。
【0015】
この第1の実施形態の前記ポケットは、前記胴部(軸部)を取り囲み、且つ前記カッターの径方向内側に配置される環状凹部(環状ポケット)である。
図1〜6に図示する特定の実施形態において、前記カッター26は四辺形くさび形状である。ある特定の実施形態において、前記カッター26の数は14個であるが、当然のことながらその個数は変更可能である。前記ねじはまた、ねじ回しの先端部の形状に対応し、当該ねじ回しが挿入されて前記ねじを回転させる回転力を提供する穴部30を有する。図面においては、前記穴部の1実施形態が図示されているが、あらゆるタイプの穴部が本発明の実施形態で使用され得ることを理解されたい。
【0016】
図7〜12に図示する前記第2の実施形態において、前記ねじ10は、環状凹部(環状ポケット)の代わりに複数の別個のポケット28を有する。前記ポケット28は、この第2の実施形態で図示するように円形である。前記別個のポケットは、繊維状物質を収容するおよび/または偶発的に破片を収集および保持する四辺形、長方形、楕円形、またはその他の適切な形状である。
【0017】
図13〜18に図示する前記第3の実施形態において、前記ねじは三角形くさび形状のカッター26を有しているが、前記円形ポケット28は前記第2の実施形態に示すものと同様である。本明細書で図示する前記四辺形くさび形状および前記三角形くさび形状の代わりに、他のあらゆる適切な刃の形状が使用できる。カッターの機能を保持するように提供されたカッターに適切なあらゆる形状が用いられる。同様に、上述したように、前記ポケットは、前記ねじが被加工物の表面に貫入されるとき、前記物質の一部を収容することができるように提供されるあらゆる適切な形状である。前記物質を前記ポケットの中に収容することによって、前記ねじは時間の経過と共により緩みに難くなる。
【0018】
上述したおよび添付の図で図示した前記ねじは、主に繊維状物質(例えば、木材、複合材、および他のリグノセルロース物質)で使用されるように設計されている。本発明の実施形態は、カッターにより座ぐり加工され、且つ、前記ポケットにより、望ましくない緩みに抗して前記ねじを固定する物質を収容する他のタイプのねじ部品および物質にも適用される可能性がある。従って、本発明はねじ部品であって、胴部(または軸部)と、前記胴部の1つの端部に配置される頭部とを有し、前記頭部は座面を有し、当該座面には座ぐりする複数のカッターと、前記胴部の周囲に配置され、且つ前記カッターから径方向内側に配置される、前記ねじ部品が挿入されとき物質を収容する少なくとも1つのポケットとが配置される。第一義的な意図はこの技術をねじに適用することであるが、他のタイプのねじ部品にも理論的には適用可能である。
【0019】
本発明を、例示的および例証のみを目的とした特定の実施形態、実施例、実施、および構成の観点から説明してきた。この革新的な技術の他の変形、修正、改良、および応用は、本明細書の開示を読むことによって利益を得た当業者にとっては容易に明らかになるであろう。このような変形、修正、改良、および応用は、本発明の範囲および領域内である。従って、本発明に対して本出願者によって求めらる独占権の範囲は、添付の特許請求の範囲およびこれらの法的均等物によってのみ限定されることを目的とする。