【実施例】
【0020】
各種の試験ケーブルを作製し、それぞれの複合ケーブルの可撓性、また潰れ特性として耐側圧及び耐R性能を評価した。
【0021】
(A)評価対象の複合ケーブル
試験ケーブルの断面概略図を
図3に示す。
図3に示すように、この試験ケーブル111は、
図1に示した複合ケーブル1と略同様の構成を有しており、同様の部分には同様の参照番号を付して、その説明を省略する。
尚、試験ケーブル111では、ケーブルユニット7には、AWG38の単純線7芯ケーブルユニットA、AWG40の50pF同軸12芯ケーブルユニットB、AWG36のシールド付ツイストペアケーブルCを用いており、その詳細構造を一部拡大して示す。ケーブルユニットAは、同図に拡大して示すように、中心に各芯と略同径のテンションメンバTを配置し、その周囲に7芯の単純線(ケーブル)1〜7を配置したものである。また、ケーブルユニットBは、中心に極細のテンションメンバtを介して3芯の同軸ケーブル1,2,3を配置し、その外周に同軸ケーブル4〜12を配置したものである。更に、シールド付ツイストペアケーブルCは、ツイストペアケーブル1,2を配置し、その片側にドレイン線Dを配置し、これらの外側をALPET120とジャケット122により被覆したものである。
以上の構造の試験ケーブル111において、材質がePTFEから成り、前述した作成方法および表1に示す条件で作成したポーラス構造のチューブを用いたサンプル(実施例)1〜6、材質がFEPから成る充実構造のチューブを用いたサンプル(比較例)7、8、チューブ2の代わりにケーブルを用いた複合ケーブル(比較例)9について、以下の3種類の評価試験を実施した。また、サンプル(実施例)1〜6、サンプル(比較例)7、8は、上述した材質の他に、それぞれチューブのサイズや肉厚を異ならせたものであり、サンプル(比較例)9は、チューブ2の代わりにケーブルを試料としたものである。これらの作成条件を、サンプル(実施例)1〜6は、以下の表1に示し、サンプル(比較例)7、8及び9については、後述する表2に示している。また、サンプル(実施例)1〜6では、それぞれのクレバス幅の平均を、後述する表2に示している。このクレバス幅の平均は、サンプル(実施例)1〜6における
図2に示すような断面写真の任意の位置において、クレバス幅を実測し、その値を算出したものである。
【0022】
(B)評価方法
[1]可撓性評価試験
本評価試験の方法を
図4に示す。
図4(A)に示すように、ケーブル全体を輪にしてクランプ部Cにおけるクランプ距離を65mmとして吊り下げた際、当該輪の内径幅の最大値をD1(200±10mm)とし、
図4(B)に示すように、当該輪に1kgの荷重を加え(加重1kg))前記輪の上端から100mmの位置(測定位置はクランプ部から100mm)における輪の内径幅をD2として計測した場合にD1−D2の長さ(mm)を測定した。このD1−D2の長さ(mm)が大きいほど、ケーブルとしての柔軟性・可撓性が高いものと評価することができる。特に、D1−D2>70mmとなるか否かを重視した。
[2]側圧性能評価試験
本評価試験の方法を
図5に示す。
図5に示すように、ケーブルの試料長を100mmとした試料をプレートの上に乗せ、加重幅を10mm、速度を5mm/minにて加重し、試料の内径より30%押した込んだ際の加重を測定し評価した。この加重が大きいほど、耐側圧性能に優れ、ケーブルとしての潰れ特性が高いものと評価することができる。
[3]耐R性能評価試験
本評価試験の方法を
図6に示す。
図6に示すように、チューブの試料長を200mmとした試料を2枚のプレート間に挟み、プレート間で挟圧していき、挫屈が始まる際のL1(mm)を測定し評価した。このL1(mm)が小さいほど、座屈が始まる曲率が小さいことになるので、耐R性能に優れ、ケーブルとしての耐潰れ特性が高いものと評価することができる。但し、L1(mm)の最小値(上限)を10mmとした。
【0023】
(C)評価結果
以上の3試験の評価結果を表2に示す。
【0024】
【表2】
表2に示すように、可撓性評価試験において、材質がePTFEから成るチューブを用いたサンプル(実施例)1〜6では、何れもD1−D2>70mmとなり、良好な可撓性が得られたが、特に、サンプル2では、D1−D2>90mm、サンプル3では、D1−D2>100mm、サンプル5では、D1−D2>85mm、サンプル6では、D1−D2>90mmとなり、優れた可撓性が得られた。これに対して、材質がFEPから成るチューブを用いたサンプル(比較例)7、8では、それぞれD1−D2>45mm、D1−D2>25mmとなるのが精一杯であり、十分な可撓性が得られなかった。尚、チューブ2の変わりにケーブルを用いた複合ケーブル(比較例)9では、D1−D2>95mmとなり、複合ケーブル全体としての優れた可撓性が得られた。
【0025】
また、側圧評価試験において、材質がePTFEから成るチューブを用いたサンプル(実施例)1〜6のうち、サンプル1では73.0(N)の側圧、サンプル4は72.0(N)の側圧まで耐え、優れた耐側圧性能が得られた。これに対して、材質がFEPから成るチューブを用いたサンプル(比較例)7、8でも、それぞれ68.8(N)、280.0(N)の側圧まで耐えているが、これは、充実構造のチューブであることにより、可撓性は劣るが、耐側圧性能は良好であるという従来例と同様の結果に過ぎないものと評価できる。
【0026】
また、耐R評価試験において、材質がePTFEから成るチューブを用いたサンプル(実施例)1〜6のうち、サンプル2〜6で、L1(mm)の最小値10mmまで座屈に耐えられ、優れた耐R性能が得られた。また、サンプル1でも、L1(mm)15mmまで座屈に耐えられ、良好な耐R性能が得られた。これに対して、材質がFEPから成るチューブを用いたサンプル(比較例)7、8のうち、サンプル(比較例)8は、L1(mm)の最小値10mmまで座屈に耐えられ、優れた耐R性能が得られたが、サンプル(比較例)7は、L1(mm)30mmまでしか座屈に耐えられず、十分な耐R性能が得られなかった。このように、充実構造のチューブを用いたサンプル(比較例)7、8でも、サンプル(比較例)7のように肉厚が薄いと十分な耐R性能が得られないことが導き出された。
【0027】
ここで、上記各評価試験の結果との関連で、
図7乃至
図9を参照しつつ、本発明の複合ケーブルにおいて、チューブ2がePTFEから成り、上述した所定のポーラス構造を有することによる作用効果について説明する。
図7はポーラス構造により可撓性が向上する作用機序(メカニズム)、
図8はポーラス構造により耐側圧性が向上する作用機序(メカニズム)、をそれぞれ説明するための図である。
【0028】
まず、可撓性については、クレバス幅が短ければ悪くなり、長ければ良くなるものと解される。即ち、ケーブルに対し曲げ方向への力が加わった場合には、ケーブルを境に、内側では圧縮が行われ、外側では引張りが行われるため、内外における力の作用が異なる(曲げモーメント)が、可撓性に関しては、特に内側に作用する圧縮による影響が大きい。従来例や上記サンプル(比較例)7、8のように、充実構造のチューブを設けたケーブルにおいては、圧縮エネルギーに対し、チューブ自体の反力が直接的に作用する。一方、本発明の複合ケーブル、つまり、サンプル(実施例)1〜6のようにポーラス構造のチューブ2を設けたケーブルにおいては、前述したクレバス幅に応じた隙間がチューブにできているため、クレバス幅が大きくなるほど、その隙間が埋められるまでの間、
図7に示すように、圧縮エネルギーがクレバス22を潰すことに使われ、チューブの内側に作用する圧縮エネルギーが低減される形となる。このように、クレバスの幅が大きくなるほど、チューブに対する圧縮の自由度が向上するため、可撓性が向上する。
【0029】
次に、側圧については、クレバス幅が短ければ良くなり、長ければ悪くなるものと解される。即ち、ケーブルに対し径方向への力が加わった場合、従来例や上記サンプル(比較例)7、8のように、充実構造のチューブを設けたケーブルにおいては、その押圧力に対する反発がチューブの該当部分の全体で行われる。これに対し、本発明の複合ケーブル、つまり、サンプル(実施例)1〜6のように、ポーラス構造のチューブを設けたケーブルにおいては、
図8に示すように、押圧力によってポーラス構造のノード24の部分が変位するとともにその部分に侵食することで、圧力を緩衝する形になり、反力が弱まる。このため、前述したクレバス幅が大きいほど、反力も減少する。以上を踏まえ、前述したクレバス幅が大きくなるほど、側圧に対する特性は悪くなり、チューブの肉厚や外径に応じたクレバス幅が所定値を越えると、可撓性と側圧との両立が困難になる。この意味から前述したクレバス幅について、どの範囲の値が望ましいか、所定値を導き出す必要がある。
【0030】
更に、耐Rについては、クレバス幅が短ければ悪くなり、長ければ良くなるものと解され、耐R試験に関する作用機序も、上記の可撓性に関する作用機序と同様の考え方ができる。
【0031】
また、従来例や上記サンプル(比較例)7、8のように、充実構造のチューブを用いた場合には、その特性上、一定以上の曲げに対し、樹脂の変形では許容できない範囲が決まっている。これに対し、本発明の複合ケーブル、つまり、サンプル(実施例)1〜6のようにポーラス構造であれば、そのクレバスによって樹脂の変形と合わせて許容量が増える。さらには、クレバス幅が大きくなるほど、その許容量は増える傾向にあるものと解することができる。
【0032】
以上に鑑みて、前述したクレバス幅について、どの範囲の値が望ましいか、所定値を導き出す研究を行った。その結果を、
図9に示す。
図9は、クレバス幅についての好適な範囲を示すグラフである。本発明者の知見によれば、
図9に示すように、チューブの外径(D)、内径(d)とした場合に(D−d)/Dが0.27〜0.75の範囲内のものであり、且つ当該ePTFEにおけるポーラス構造のクレバス幅が、前記(D−d)/Dが0.27の場合に最小値10.0μm、最大値20.0μmとなる2点及び前記(D−d)/Dが0.75の場合に最小値16.0μm、最大値27.0μmとなる2点の4点を結んだ領域内にある所定のポーラス構造を有するものが望ましいことが判明している。
【0033】
以上のように、本実施形態の複合ケーブルによれば、前記チューブは、ePTFEから成るので、例えば、充実構造のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のみから成るチューブを用いた従来の複合ケーブルに比べ、柔軟性・可撓性が向上する。更に、前記チューブは、該チューブの外径(D)、内径(d)とした場合に(D−d)/Dが0.27〜0.75の範囲内のものであり、且つ当該ePTFEにおけるポーラス構造の平均クレバス幅が、前記(D−d)/Dが0.27の場合に最小値10.0μm、最大値20.0μmとなる2点及び前記(D−d)/Dが0.75の場合に最小値16.0μm、最大値27.0μmとなる2点の4点を結んだ領域内にある所定のポーラス構造を有する所定のポーラス構造を有するので、良好な耐潰れ特性も得られる。また、前記複合ケーブルは、被試験ケーブルとして当該複合ケーブル全体を輪にして吊り下げた際、当該輪の内径幅の最大値をD1とし、当該輪に1kgの荷重を加え前記輪の上端から100mmの位置における輪の内径幅をD2として計測した場合にD1−D2>70mm となるものであることから、複合ケーブル全体としての柔軟性・可撓性を確保することができる。
【0034】
また、前記複数本の信号線は、それぞれ内部導体と該内部導体の周囲に設けられた外部導体とを含む信号線から成り、前記内部導体の外径は、それぞれ0.123mm以下とすることが望ましい。かかる構成によれば、複合ケーブル全体としての柔軟性・可撓性を更に向上させることができる。尚、本発明者の知見では、複合ケーブル全体としての硬さが、チューブの硬さのみならず、チューブの周囲の信号線の内部導体の硬さにも依存し、内部導体は外径が大きいほど硬くなるので、これら内部導体の外径を、それぞれ0.123mm以下にすることで、複合ケーブル全体としての柔軟性・可撓性を更に向上させ得ることが判明している。
【0035】
図10は、本発明の第2の実施形態の複合ケーブルの一部拡大断面図である。この第2の実施形態の複合ケーブル200は、例えば、冷却用の流体を往復させるための2本のチューブ201,202を含むものであり、従って、それら2本のチューブ201、202内には、光ファイバ等が挿通されることはなく、中空に保持されている。そして、この第2の実施形態の複合ケーブルでは、2本のチューブ201、202のそれぞれは、上述した第1の実施形態のチューブと同様にePTFEから成り所定のポーラス構造を有する第1のチューブ層201A,202Aと、この第1のチューブ層の内側に設けられた上記所定のポーラス構造とは異なる充実構造から成る第2のチューブ層201B、202Bから成る2層構造のチューブとして構成されている。このように、各チューブは、充実構造から成る第2のチューブ層201B、202Bが内側に構成されているので、チューブ201、202内を流れる液体等が外部に漏出することが無いので、冷却等の用途でチューブ201、202内に液体等を流す場合でも、安全に使用可能であり、高い信頼性が得られるのが大きな特徴である。
【0036】
即ち、本発明の第2の実施形態の複合ケーブルは、
図10に示すように、複合ケーブル200の断面中央部に隣接して配置されたチューブ201、202と、チューブ201、202の両側に配置された単純線ユニット5芯から成るケーブル205とを有する。ケーブル205は、
図10に拡大して示すように、単純線ユニット14の5芯から成り、各単純線ユニット14は、内部導体15と、その周囲の絶縁体16とを有している。
【0037】
各チューブ201,202は、内腔201C、202Cを有しており、これら内腔201C、202C内を冷却用の流体が往復循環するように構成されている。チューブ201,202と、ケーブル205の外周面には、テープ303が巻かれており、このテープ303の外側は、ケーブル収容部300Cとされている。このケーブル収容部300Cには、テープ303の外周に亘って複数本のケーブルユニット308と介在313が配置され、相互に撚り合わされている。撚り合わされたケーブルユニット308等は、その外側を押さえ巻きテープ307により押さえ巻きされ、この押さえ巻きテープ307の外側には、一括シールド層306によりシールドされており、この一括シールド層306の外側に、最外層であるケーブル外被304が設けられている。尚、各ケーブルユニット307は、第1の実施形態のケーブルユニット7と同様のものである。
【0038】
尚、2本のチューブ201、202における内側の第2のチューブ層201B、202Bは、充実構造のものであれば良いが、例えば、末端基がフッ素化されているフッ素樹脂により形成することができ、かかるフッ素樹脂としては、末端基にCF3を有するフッ素化(安定化)されたテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAという)を用いることができる。
このように、チューブ201、202は、前記所定のポーラス構造から成る第1のチューブ層201A,202Aと前記所定のポーラス構造とは異なる充実構造から成る第2のチューブ層201B、202Bとを少なくとも含む多層構造のチューブであるようにしても良い。かかる構成によれば、充実構造から成る第2のチューブ層201B、202Bにより、チューブ201、202内を流れる液体等が外部に漏出することが無いので、冷却等の用途でチューブ内に液体等を流す場合でも、安全に使用可能であり、品質安定性(信頼性)を確保することができる。
【0039】
尚、上述した第1の実施形態では複合ケーブルの中心に1本のチューブ、第2の実施形態では2本のチューブを含むものとしたが、3本以上のチューブを含むものとしても良い。また、上述した第1の実施形態ではチューブを単層構造、第2の実施形態では2層構造のものとしたが、3層以上の多層構造にしても良い。このような多層構造の態様としては、内層又は外層のいずれか一方がポーラス構造で、他方が充実構造の形態や、多層のサンドイッチ構造(中心、中心以外の内側部材と外側部材のいずれか一方がポーラス構造で、他方が充実構造)としても良い。ただし、これらの多層構造のチューブを採用した場合であっても、複合ケーブル全体の可撓性に関しては、前述したD1−D2>70mmを満たす範囲内にあるようにポーラス構造以外の層の厚さを調整する。更に、チューブは、複数のチューブを撚り合わせたものに形成しても良い。