(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来の攪拌装置には、たとえば特許文献1に開示されたメカニカルシールを備えたものがある。
図6に一例として示すように、従来の攪拌装置Xは、貫通孔100Aを有する攪拌容器100と、貫通孔100Aに挿通されて軸周りに回転する攪拌軸200と、貫通孔100Aと攪拌軸200との間を封止するメカニカルシールとを備える。攪拌容器100は、攪拌軸200の軸線方向が鉛直方向に沿うように設置される。メカニカルシールは、主要な部品として、固定環300、回転環310、摺動環320、およびスプリング340を有して構成されている。固定環300は、鉛直方向に垂直な環状の端面300Cを有し、攪拌容器100における貫通孔100Aの周縁部に固定される。回転環310は、攪拌軸200に固定され、この攪拌軸200と一体に回転する。摺動環320は、回転環310に対して鉛直方向に変位可能に外嵌され、この回転環310と一体に回転するとともに、固定環300の端面300Cに環状の摺接面320Bを沿わせて摺動する。スプリング340は、回転環310と摺動環320との間に複数設けられており、摺動環320に対して鉛直方向下向きに弾性付勢力を付与し、この摺動環320の摺接面320Bを固定環300の端面300Cに圧接させる働きをもつ。固定環300、回転環310、摺動環320、および攪拌軸200は、貫通孔100Aに連通する空隙部300Aを形成している。空隙部300Aは、貫通孔100Aと攪拌軸200との間を通じて攪拌容器100の内部に連通している。
【0003】
従来の攪拌装置Xにおいて、攪拌容器100の内部に異種の液体あるいは液体と固体粉末といった攪拌すべき原材料を供給し、攪拌軸200を回転させて液状の原材料を攪拌する際、空隙部300Aには、貫通孔100Aと攪拌軸200との間を通じて攪拌中の原材料が侵入する。固定環300の端面300Cと摺動環320の摺接面320Bとが相対的に回転しながら互いに圧接した状態で摺動することにより、空隙部S1は、メカニカルシール300の外部と隔てられるが、これら端面300Cと摺接面320Bとのわずかな隙間には、空隙部S1に侵入した原材料の飛沫や蒸発成分が入り込む可能性がある。また、端面300Cおよび摺接面320Bには、わずかながらも摩耗によるパーティクルが付着しているおそれがある。そのため、端面300Cおよび摺接面320Bについては、定期的に洗浄メンテナンスを行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の攪拌装置Xでは、端面300Cおよび摺接面320Bがスプリング340の弾性付勢力により常に圧接した状態にある。そのため、これらの端面300Cおよび摺接面320Bを洗浄するには、攪拌軸200に対する回転環310の固定状態を緩めてスプリング340の弾性付勢力を弱め、摺接面320Bを端面300Cから離隔させるようにメカニカルシールを分解する必要があった。これでは、メカニカルシールの洗浄メンテナンスが非常に面倒で容易に行うことができない。
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、メカニカルシールの洗浄メンテナンスを容易に行うことができる攪拌装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される攪拌装置は、貫通孔を有する攪拌容器と、上記貫通孔に挿通されて軸周りに回転する攪拌軸と、上記貫通孔と上記攪拌軸との間を封止するメカニカルシールと、を備え、上記メカニカルシールは、環状の端面を有し、上記攪拌容器における上記貫通孔の周縁部に固定される固定環と、上記攪拌軸と一体に回転する回転環と、上記回転環に対して上記攪拌軸の軸線方向に変位可能に支持され、上記端面に対して摺接可能な摺接面を有する摺動環と、上記摺動環を上記摺接面が上記端面に近接する方向に弾性的に付勢する弾性部材と、を有している攪拌装置であって、上記固定環、上記回転環、上記摺動環、および上記攪拌軸は、上記貫通孔に連通する環状の空隙部を形成しており、上記摺動環には、上記空隙部の圧力を少なくとも上記端面に対して上記摺接面を離隔させる方向に受ける受圧面が設けられており、上記
空隙部に対して外部から液体または気体を供給するための供給路が設けられて
おり、上記メカニカルシールの洗浄時、上記攪拌容器の内部が加圧されて上記空隙部の圧力が高まると、その圧力を上記受圧面で受けることにより、上記摺動環が上記弾性部材の弾性付勢力に抗して変位し、上記摺接面が上記端面から離隔するように構成されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記攪拌容器もしくは上記固定環から上記攪拌軸を内包しつつ上記空隙部内を上記軸線方向に延びて上記攪拌軸の外周面との間に上記貫通孔と連通する隙間を形成し、先端が上記端面よりも上記回転環の近くに位置する筒状隔壁が設けられている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記筒状隔壁は、上記攪拌容器における上記貫通孔の周縁部に固定した環状プレートに形成され、上記固定環は、上記環状プレートを介して固定されている。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記摺動環には、上記回転環の外周面に密接し、上記軸線方向に滑り移動する内周面と、上記摺接面から上記内周面へと至る部分に段差を形成し、上記空隙部に臨む段落ち部と、が設けられており、上記受圧面は、上記段落ち部に形成されている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記端面および上記摺接面は、上記軸線方向に垂直な面をなす。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記摺接面の内径は、上記内周面の内径よりも大きい。
【0015】
好ましい実施の形態においては、上記受圧面は、上記軸線方向に垂直な面をなす。
【0016】
好ましい実施の形態においては、上記攪拌容器は、上記軸線方向を鉛直方向として設置される。
【0018】
このような構成では、メカニカルシールの洗浄時、たとえば攪拌容器の内部に洗浄用の液体を充填し、その内部の気圧を加圧して空隙部の圧力を高めると、その圧力を摺動環の受圧面で受けることにより、弾性部材の弾性付勢力に抗して摺動環の摺接面が固定環の端面から離隔するように変位する。そして、攪拌容器の内部に充填された洗浄用の液体は、攪拌軸が回転するのに伴い、この攪拌軸と貫通孔との間から空隙部に進入し、互いに離隔した摺接面と端面との間を通って外部に流出する。これにより、摺接面および端面の洗浄が確実に行われる。したがって、本発明に係る攪拌装置によれば、メカニカルシールを分解することなく洗浄メンテナンスを容易に行うことができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1〜3は、本発明に係る攪拌装置の一実施形態を示している。本実施形態の攪拌装置A1は、たとえば食品、医薬品、化粧品などの原材料を混合攪拌するためのものである。原材料は、たとえば異なる種類の液体と液体、あるいは粉体と液体といった組合せからなる。
図1に示すように、攪拌装置A1は、攪拌容器1、攪拌軸2、メカニカルシール3、および駆動機構4を備えている。
【0023】
図1に示すように、攪拌容器1は、容器本体10および上蓋11からなる。容器本体10の内部には、図示しない供給管により原材料が供給される。容器本体10の上部は、上蓋11により密閉される。
図2に示すように、上蓋11には、攪拌軸2を鉛直方向(同図における上下方向)に貫通させるための貫通孔11Aが設けられている。貫通孔11Aの周縁部には、メカニカルシール3を固定するための環状プレート12が複数のボルトB1およびOリングR1を介して固定されている。
図2では、便宜上、1つのボルトB1のみを図示している。環状プレート12には、攪拌軸2を内包しつつ上方に延びて攪拌軸2の外周面との間に隙間gを形成する筒状隔壁12Aが設けられている。また、環状プレート12には、外部から洗浄用のフラッシング液などを供給するための供給路12Bが設けられている。供給路12Bは、原材料の攪拌時に閉状態とされる一方、後述するメカニカルシール3の洗浄時に開状態とされて使用される。
【0024】
図2に示すように、攪拌軸2は、貫通孔11Aに挿通されて鉛直方向の軸周りに回転可能である。攪拌軸2の下端部には、容器本体10の内部において原材料を攪拌するための回転羽根が設けられている(図示略)。攪拌軸2の上端部は、上蓋11の上方に突出し、ベアリング20を介してケース21に支持されている。ケース21は、メカニカルシール3全体を覆いつつ、環状プレート12の周縁部に対して図示しないボルトおよびOリングR2を介して固定されている。
図1に示すように、ケース21の上部には、駆動機構4が搭載されている。攪拌軸2の上端部は、駆動機構4に設けられた減速器40を介して駆動モータ41に連結されている。この駆動モータ41の作動に伴い、攪拌軸2は、鉛直方向の軸周りに回転する。
【0025】
図2に示すように、メカニカルシール3は、貫通孔11Aと攪拌軸2との間を封止するように構成されている。メカニカルシール3は、固定環30、回転環31、摺動環32、ドライブカラー33、および弾性部材としての複数のスプリング34を有する。固定環30、回転環31、摺動環32、筒状隔壁12A、および攪拌軸2の外周面一部は、環状の空隙部3Aを形成している。空隙部3Aは、筒状隔壁12Aの先端(上端)から隙間gを介して貫通孔11Aに連通している。ケース21の内部には、空隙部3Aとは隔離された空間部3Bが形成される。ケース21の下端部には、空間部3Bから外部に通じるドレン孔21Aが設けられている。なお、
図2では、便宜上、1つのスプリング34のみを図示している。
【0026】
固定環30は、外環部材30aと内環部材30bとからなる。外環部材30aは、内環部材30bに対して外嵌可能な環状の凹溝(符号略)を有する。内環部材30bは、外環部材30aの凹溝に対応した環状の凸部(符号略)を有する。上記凹溝と凸部との間には、2つのOリングR3が挟み込まれる。外環部材30aは、OリングR3を鉛直方向に圧縮変形しながら上記凹溝によって上記凸部を挟持するように、複数のボルトB2を介して環状プレート12の上部に固定されている。これにより、外環部材30aおよび内環部材30bは、OリングR3により気密封止されつつ一体となって環状プレート12に固定される。内環部材30bは、筒状隔壁12Aの外径よりも大きい内径をもち、鉛直方向に対して垂直な環状の端面30Aを有する。端面30Aは、鉛直方向において筒状隔壁12Aの上端(先端)よりも低い位置に設けられる。空隙部3Aは、筒状隔壁12Aの外周面と内環部材30bの内周面との間に形成されている。なお、固定環は、1ピース構造のものであってもよい。
【0027】
回転環31は、攪拌軸2の軸径と略等しい内径をもち、この攪拌軸2に対して外嵌され、セットスクリューP1およびOリングR4を介して攪拌軸2の外周面に固定されている。これにより、回転環31は、OリングR4により気密封止されつつ攪拌軸2と一体になっている。回転環31は、上側の大径部31aと下側の小径部31bとを有する。大径部31aには、攪拌軸2の軸線方向(鉛直方向)に対して垂直にセットスクリューP1をねじ込むためのネジ孔31Aが設けられているとともに、鉛直方向に沿ってドライブピンP2を変位可能に保持するためのピン孔31Bが設けられている。また、図示省略するが、大径部31aには、複数のスプリング34を鉛直方向に沿って伸縮可能に保持するための凹入穴が設けられている。このような回転環31は、小径部31bの下端が筒状隔壁12Aの上端に対して近接するように攪拌軸2に対して固定されており、この攪拌軸2と一体に回転する。
【0028】
摺動環32は、回転環31における小径部31bの外径と略等しい内径をもち、この小径部31bに対して鉛直方向に変位可能とされ、ドライブピンP2およびOリングR5を介して小径部31bの外周面に外嵌されている。これにより、摺動環32は、OリングR5により気密封止されつつ回転環31と一体になっている。摺動環32は、小径部31bの外周面に密接しつつ鉛直方向に滑り移動可能な内周面32Aと、端面30Cに対向しつつこれに沿って摺動可能な環状の摺接面32Bと、摺接面32Bから内周面32Aへと至る部分に段差を形成して空隙部3Aに臨む断面L字状の段落ち部32Cとを有する。摺接面32Bの内径は、内周面32Aの内径よりも大きくなっている。すなわち、摺接面32Bは、攪拌軸2に対して内周面32Aよりも水平方向外寄りに位置する。段落ち部32Cには、鉛直方向に対して垂直な面をなす環状の受圧面32Dが比較的大きな面積をもつように形成されている。
【0029】
ドライブカラー33は、筒状のケースであり、小径部31bに対して鉛直方向に変位可能に外嵌されるとともに、摺動環32の上端部から外周面を覆い、ストッパボルトB3を介して摺動環32に対して相対回転不能に設けられている。ドライブカラー33には、ドライブピンP2の先端部が締結固定される。これにより、回転環31の回転に伴い、ドライブカラー33および摺動環32が一体に回転する。
【0030】
スプリング34は、大径部31aの凹入穴とドライブカラー33との間に自然長より圧縮した状態で嵌装されている。これにより、スプリング34は、ドライブカラー33および摺動環32に対して鉛直方向下向きの弾性付勢力を付与する。その結果、摺接面32Bは、端面30Aに対して圧接させられる。
【0031】
次に、上記攪拌装置A1の動作について説明する。
【0032】
原材料を攪拌する場合、攪拌容器1の内部に原材料が供給され、攪拌軸2が回転させられる。その際、
図2に示すように、摺接面32Bは、スプリング34の弾性付勢力により端面30Aに対して圧接させられ、この端面30Aに沿って摺動する。これにより、端面30Aおよび摺接面32B間が封止され、空隙部3Aは、空間部3Bや外部に対して隔離された空間となる。したがって、貫通孔11A付近の攪拌軸2周りには、空隙部3Aより外側の空間部3Bや外部に原材料が漏れることがなく、原材料の漏れが十分防止される。
【0033】
このとき、供給路12Bが閉状態とされた空隙部3Aには、攪拌軸2と筒状隔壁12Aとの隙間gから攪拌中の原材料の一部が飛沫や蒸発成分となって侵入し、さらにその原材料の一部が端面30Aと摺接面32Bとのわずかな隙間に入り込む可能性がある。また、端面30Aおよび摺接面32Bには、わずかながらも摩耗によるパーティクルが付着しているおそれがある。そのため、端面30Aおよび摺接面32Bについては、定期的に洗浄メンテナンスが行われる。洗浄メンテナンスは、次のようにして行われる。
【0034】
まず、攪拌容器1の内部には、洗浄に適した液体(以下、「洗浄用液」と称する)を供給し、その内部を洗浄用液によって十分満たす。
【0035】
一方、空隙部3Aには、外部から供給路12Bを介して洗浄用のフラッシング液を供給する。このフラッシング液は、端面30Aと摺接面32Bとが互いに面接触する鉛直方向の高さ位置よりも液面高さが上位となるように空隙部3Aに充填される。
【0036】
次に、攪拌容器1の内部には、さらに洗浄用液を供給する。これにより、攪拌容器1の内部が加圧され、それに応じて空隙部3Aの内圧も高まる。なお、攪拌容器1の内部に供給する洗浄用液は、空隙部3Aに充填されるフラッシング液と同一のものとしてもよい。また、空隙部3Aには、供給路12Bから洗浄用液を供給し続けたり、あるいは加圧用の気体や滅菌用の蒸気を供給することにより、その内圧を高めるようにしてもよい。
【0037】
そして、空隙部3Aの内圧が所定値以上になると、
図3に示すように、摺動環32は、スプリング34の弾性付勢力に抗して上方に変位し、摺接面32Bが端面30Aから離隔する。このような状態において空隙部3Aにフラッシング液を供給しながら攪拌軸2を回転させることにより、摺接面32Bと端面30Aとの間を通ってフラッシング液が空間部3Bに流出し、さらに流出したフラッシング液は、ドレン孔21Aを通ってケース21の外部に排出される。これにより、摺接面32Bおよび端面30Aは、その全面にわたってフラッシング液により汚れが洗い流され、確実に洗浄される。
【0038】
このとき、空隙部3Aの内圧P1(単位Pa)、空間部3Bの内圧を大気圧に等しいP0(単位Pa)とし、受圧面32Dの面積をS(単位m)とした場合、受圧面32Dには、(P1−P0)×Sとなる上向きの力F1(単位N)が作用し、この力F1が複数のスプリング34の弾性付勢力F0(単位N)よりも大きくなることにより、摺動環32が上方に変位することとなる。
【0039】
受圧面32Dの面積Sは、内周面32Aの内径をd1(単位m)、摺接面32Bの内径をd2(単位m)とした場合、S=((d2/2)
2−(d1/2)
2)×πとなる。複数のスプリング34の弾性付勢力F0は、スプリング34の個数をn、ばね定数をk(単位N/m)、自然長からの圧縮量をt(単位m)とした場合、F0=k×t×nとなる。これにより、空隙部3Aの内圧P1と等しい攪拌容器1の内部の圧力は、(P1−P0)×((d2/2)
2−(d1/2)
2)×π>k×t×nという式に基づき、P1>(k×t×n)/((d2/2)
2−(d1/2)
2)π+P0となるように圧力調整される。
【0040】
また、摺接面32Bおよび端面30Aについて洗浄とともに滅菌を行う場合は、比較的高温のフラッシング液を空隙部3Aに供給することにより、摺接面32Bや端面30Aを速やかに高温状態とし、滅菌を迅速に行うことができる。
【0041】
したがって、本実施形態の攪拌装置A1によれば、攪拌軸2に対する回転環31の固定状態を緩めてスプリング34の弾性付勢力を弱めずとも、攪拌容器1の内部に洗浄用液を満たしてその内部の圧力を加圧するだけで端面30Cと摺接面32Bとを離隔させることができ、これら端面30Cおよび摺接面32Bの表面全体にわたって洗浄や滅菌を容易に行うことができる。
【0042】
図4および
図5は、本発明に係る攪拌装置の他の実施形態を示している。なお、本実施形態の攪拌装置A2は、先述した実施形態によるものと環状プレート12の構成が異なるだけであり、その他の構成要素については同一の構成からなる。そのため、先述した実施形態によるものと同一の構成要素については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0043】
図4に示すように、環状プレート12は、攪拌軸2の外径よりも若干大きい内径の軸孔12Cを有する。軸孔12Cは、貫通孔11Aと一体になって攪拌軸2が挿通される。軸孔12Cの内周面と攪拌軸2の外周面との間には、隙間gが形成される。このような軸孔12Cの上端は、鉛直方向において端面30Aよりも低い位置に設定される。また、環状プレート12は、ケース21の外部から空隙部3Aに通じる供給路を有していない。
【0044】
このような攪拌装置A2においても、端面30Aおよび摺接面32B間が封止され、空隙部3Aは、空間部3Bや外部に対して隔離された空間となる。したがって、貫通孔11A付近の攪拌軸2周りには、空隙部3Aより外側の空間部3Bや外部に原材料が漏れることがなく、原材料の漏れが十分防止される。
【0045】
一方、原材料の攪拌時、空隙部3Aには、回転する攪拌軸2と軸孔12Cとの隙間gから攪拌中の原材料の一部が飛沫や蒸発成分となって侵入し、その一部が端面30Aと摺接面32Bとのわずかな隙間に入り込む可能性がある。また、端面30Aおよび摺接面32Bには、わずかながらも摩耗によるパーティクルが付着しているおそれがある。そのため、攪拌装置A2における端面30Aおよび摺接面32Bについても、定期的に洗浄メンテナンスが行われる。洗浄メンテナンスは、次のようにして行われる。
【0046】
攪拌容器1の内部には、満水レベルまでフラッシング液を供給し、さらにその内部の圧力が上昇するまでフラッシング液を充填する。これにより、空隙部3Aの内圧が高まる。
【0047】
そして、空隙部3Aの内圧が所定値以上になると、
図5に示すように、摺動環32は、スプリング34の弾性付勢力に抗して上方に変位し、摺接面32Bが端面30Aから離隔する。このような状態において攪拌容器1の内部にフラッシング液を供給しながら攪拌軸2を回転させることにより、空隙部3Aに侵入したフラッシング液が摺接面32Bと端面30Aとの間を通って空間部3Bに流出する。さらに流出したフラッシング液は、ドレン孔21Aを通ってケース21の外部に排出される。これにより、摺接面32Bおよび端面30Aは、フラッシング液により汚れが洗い流され、確実に洗浄される。
【0048】
このような本実施形態の攪拌装置A2においても、攪拌容器1の内部の圧力(空隙部3Aの内圧)は、P1>(k×t×n)/((d2/2)
2−(d1/2)
2)π+P0となるように圧力調整される。
【0049】
また、摺接面32Bおよび端面30Aについて洗浄とともに滅菌を行う場合は、比較的高温のフラッシング液を攪拌容器1に供給することにより、空隙部3Aに高温のフラッシング液を導き、摺接面32Bや端面30Aを速やかに高温状態とし、滅菌を迅速に行うことができる。
【0050】
したがって、本実施形態の攪拌装置A2によっても、攪拌容器1の内部に液体を満たしてその内部の圧力を加圧することにより、端面30Aと摺接面32Bとを離隔させることができ、これら端面30Aおよび摺接面32Bの表面全体にわたって洗浄や滅菌を容易に行うことができる。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0052】
上記実施形態で示した構成は、あくまでも一例にすぎず、各請求項に記載した事項の範囲内における各部の変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0053】
メカニカルシールの洗浄メンテナンスを行う際、攪拌容器の内部は、たとえば蒸気などの気体を充填して加圧するようにしてもよい。この場合、液体に比べて気体の方が軽量であるので、攪拌容器に対する荷重負荷が小さくなり、攪拌容器が設置された床面への負担をより少なくすることができる。また、攪拌容器が比較的大型となる場合、攪拌容器への気体の充填をより迅速に行うことができ、ひいては洗浄メンテナンスを速やかに行うことができる。