特許第5779849号(P5779849)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779849
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】メタン発酵処理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20150827BHJP
   C02F 11/04 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B09B3/00 CZAB
   B09B3/00 D
   C02F11/04 A
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-172981(P2010-172981)
(22)【出願日】2010年7月30日
(65)【公開番号】特開2012-30188(P2012-30188A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年6月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】山本 縁
(72)【発明者】
【氏名】千野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】溝田 陽子
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭57−065392(JP,A)
【文献】 特開2005−193146(JP,A)
【文献】 特開2003−024912(JP,A)
【文献】 特開2008−212860(JP,A)
【文献】 特開2006−075735(JP,A)
【文献】 特開2004−290921(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 1/00−5/00
C02F 11/02−11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理物を嫌気性条件下でメタン発酵処理し、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガスを生成させるメタン発酵処理方法であって、
前記被処理物は、乾燥質量として生ごみ100質量部に対して紙ごみ50〜500質量部を含むものであり、
1日当たりメタン発酵消化液1Lに対して、生ごみと紙ごみに基づく有機物負荷量としての強熱減量(VS)を5〜15g添加する投入を含み、
同じ有機物負荷量の前記被処理物を、複数日、連続して投入と、前記有機物負荷量を増加させた前記被処理物の投入とを繰り返し、
前記有機物負荷量を増加させた後は、増加させた有機物負荷量の被処理物を、複数日、連続して投入することを特徴とするメタン発酵処理方法。
【請求項2】
前記メタン発酵処理時に形成される消化液中における固形分濃度は10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項3】
前記メタン発酵処理時に形成される消化液のpHは6.5〜8.5であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項4】
前記メタン発酵処理時に形成される消化液中のアンモニア性窒素濃度は、7000mg/L以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【請求項5】
前記メタン発酵処理時に形成される消化液中の有機酸の濃度は、8000mg/L以下であることを特徴とする請求項1から請求項のいずれか1項に記載のメタン発酵処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭や食品工場などから排出される生ごみと、オフィスなどから排出される紙ごみとを含む有機被処理物をメタン発酵処理し、メタン及び炭酸ガスを含むバイオガスを取得するためのメタン発酵処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止対策の推進、バイオマスの積極的利用が環境保全のための課題となっている現在、廃棄物系バイオマスを対象とした嫌気発酵技術によるエネルギー回収が種々提案されている。これらの中でもメタン発酵技術は、生ごみ、下水汚泥、食品廃棄物等の多種類の廃棄物系バイオマスをメタンガスに変換し、エネルギーとして利用できることから、実用化が進んでいる。しかし、生ごみ等の廃棄物は窒素含有量が高いため、メタン発酵の途中でアンモニアが発生し、そのアンモニアが発酵阻害を引き起こすという問題があった。
【0003】
そこで、生ごみに窒素含有量の少ない紙ごみを配合した被処理物をメタン発酵処理する方法が提案されている(特許文献1を参照)。すなわち、この生ごみと紙ごみの処理方法は、可溶化水素発酵槽とメタン発酵槽を具備し、可溶化水素発酵処理とメタン発酵処理を組合せて消化を行うものである。この処理方法は、具体的には加水分解微生物群と水素発酵微生物群を含有する可溶化水素発酵槽で可溶化と水素発酵を行う第1工程と、該第1工程で得られた発酵液をメタン発酵微生物の存在下でメタン発酵槽においてメタン生成を行う第2工程と、この第2工程で得られた消化液を前記第1工程に返送する第3の工程とより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−255537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に記載されている生ごみと紙ごみの処理方法では、生ごみに対する紙ごみの割合が具体的には生ごみ100質量部に対して紙ごみが30質量部以下であることから、生ごみの割合が相対的に高い。このため、メタン発酵時において生ごみ中に含まれる蛋白質の分解に基づくアンモニアの発生を十分に抑えることができない。その結果、メタン発酵反応がアンモニアによって阻害される傾向が強く、所望とするバイオガス量を得ることはできなかった。
【0006】
そこで本発明の目的とするところは、メタン発酵における発酵阻害を抑え、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガス量を増大させることができるメタン発酵処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明のメタン発酵処理方法は、有機物を含む被処理物を嫌気性条件下でメタン発酵処理し、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガスを生成させるメタン発酵処理方法であって、前記被処理物は、乾燥質量として生ごみ100質量部に対して紙ごみ50〜500質量部を含むものであり、1日当たりメタン発酵消化液1Lに対して、生ごみと紙ごみに基づく有機物負荷量としての強熱減量(VS)を5〜15g添加する投入を含み、同じ有機物負荷量の前記被処理物を、複数日、連続して投入と、前記有機物負荷量を増加させた前記被処理物の投入とを繰り返し、前記有機物負荷量を増加させた後は、増加させた有機物負荷量の被処理物を、複数日、連続して投入することを特徴とする。
【0009】
請求項に記載の発明のメタン発酵処理方法は、請求項1に係る発明において、前記メタン発酵処理時に形成される消化液中における固形分濃度は10質量%以下であることを特徴とする。
【0010】
請求項に記載の発明のメタン発酵処理方法は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記メタン発酵処理時に形成される消化液のpHは6.5〜8.5であることを特徴とする。
【0011】
請求項に記載の発明のメタン発酵処理方法は、請求項1から請求項のいずれか1項に係る発明において、前記メタン発酵処理時に形成される消化液中のアンモニア性窒素濃度は、7000mg/L以下であることを特徴とする。
【0012】
請求項に記載の発明のメタン発酵処理方法は、請求項1から請求項のいずれか1項に係る発明において、前記メタン発酵処理時に形成される消化液中の有機酸の濃度は、8000mg/L以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載のメタン発酵処理方法では、有機物を含む被処理物を嫌気性条件下でメタン発酵処理し、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガスを生成させる。この場合、被処理物が乾燥質量として生ごみ100質量部に対して紙ごみを50〜500質量部含むように設定される。更に、1日当たりメタン発酵消化液1Lに対して、生ごみと紙ごみに基づく有機物負荷量としての強熱減量(VS)を5〜15g添加する投入を含み、同じ有機物負荷量の前記被処理物を、複数日、連続して投入と、前記有機物負荷量を増加させた前記被処理物の投入とを繰り返し、前記有機物負荷量を増加させた後は、増加させた有機物負荷量の被処理物を、複数日、連続して投入する。このように、生ごみ量に対する紙ごみ量が適切に設定されていることから、メタン発酵処理時においてメタン発酵の阻害が抑えられ、メタン発酵が円滑に進行し、バイオガスが定量的に発生する。
【0014】
従って、本発明のメタン発酵処理方法によれば、メタン発酵における発酵阻害を抑え、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガス量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1及び2における経過日数とバイオガス発生率及び有機物負荷量との関係を示すグラフ。
図2】実施例1及び2における経過日数とメタンガス濃度との関係を示すグラフ。
図3】実施例1及び2における経過日数とpHとの関係を示すグラフ。
図4】実施例1及び2における経過日数と窒素濃度との関係を示すグラフ。
図5】乾燥質量として、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合における経過日数と有機酸濃度との関係を示すグラフ。
図6】乾燥質量として、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合における経過日数と有機酸濃度との関係を示すグラフ。
図7】実施例1及び2における経過日数と固形分濃度との関係を示すグラフ。
図8】生ごみと紙ごみとの質量比率と有機物負荷量との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明におけるメタン発酵処理方法の実施形態について詳細に説明する。
本実施形態におけるメタン発酵処理方法は、有機物を含む被処理物(基質)を嫌気性条件下でメタン発酵処理(嫌気性消化処理)し、メタンガス(CHガス)及び炭酸ガス(COガス)を含むバイオガスを生成させるものである。このバイオガスは通常メタンガス60vol%と炭酸ガス40vol%の混合物であり、その発熱量は5000〜6000kcal/kgに達する。
【0017】
このメタン発酵処理は、メタン発酵微生物(メタン生成菌)の作用に基づいて、酸素が遮断された嫌気性条件下で行われる。メタン発酵微生物としては、メタノバクテリウム属、メタノサルシナ属、メタノサエタ属、メタノサーモバクタ属等に属する微生物が挙げられる。メタン発酵処理は通常20〜70℃の温度範囲で行われ、高温発酵の場合には45〜65℃で行われる。温度が20℃を下回るときには微生物の活性が低く、十分な発酵処理を行うことができず、70℃を上回るときには微生物が失活し、発酵作用が低下する。
【0018】
前記被処理物は、メタン発酵処理を阻害しないように、生ごみとその生ごみに対して適量の紙ごみを含有する。すなわち、生ごみは蛋白質等に基づく窒素含有量が高いためメタン発酵時にアンモニアが発生してメタン発酵処理を阻害する一方、紙ごみは窒素含有量が低いためメタン発酵処理を阻害し難いが、炭素含有量が高いため炭酸ガスの発生量が増えてメタン発酵処理を阻害する傾向がある。従って、生ごみに適量の紙ごみを配合し、全体としてメタン発酵処理の円滑な進行を図る。
【0019】
具体的には、被処理物は乾燥質量(乾燥重量)として生ごみ100質量部に対して紙ごみを50〜500質量部含有する。乾燥質量として紙ごみの含有量が50質量部より少ない場合には、相対的に生ごみの含有量が多くなり、メタン発酵処理時に生ごみ中の蛋白質から生ずるアンモニアの生成量が増大してメタン発酵が阻害され、メタンガスの発生量が不足する。その一方、紙ごみの含有量が500質量部より多い場合には、発酵液の粘度が高くなって均一性が低下し、メタン発酵の進行が妨げられる結果を招く。
【0020】
また、被処理物は、生ごみと紙ごみに基づく有機物負荷量が乾燥有機物質量(VS)につき5〜15g・VS/L/日となるように設定されることが好ましく、5〜12g・VS/L/日となるように設定されることがさらに好ましく、5〜10g・VS/L/日となるように設定されることが最も好ましい。この有機物負荷量が5g・VS/L/日より少ない場合には、メタン発酵処理の処理量が少なく、処理効率が悪化する。その一方、有機物負荷量が15g・VS/L/日より多い場合には、アンモニア等の窒素量の増大や有機酸の増大などによって発酵阻害が生じる傾向を示す。
【0021】
前記メタン発酵処理時に形成される液体(消化液)は、その固形分濃度、pH、窒素濃度、有機酸濃度などが所定範囲に維持された状態で、メタン発酵処理が継続される。
消化液中における固形分濃度は10質量%以下に保持されることが望ましい。この固形分濃度が10質量%を超える場合には、消化液を均一に撹拌することが難しくなり、メタン発酵処理が円滑に進行しなくなる。該固形分濃度は、通常2〜10質量%の範囲に設定される。
【0022】
前記消化液のpHは6.5〜8.5に維持されることが好ましく、6.7〜8.5に維持されることがさらに好ましく、7.0〜8.5に維持されることが特に好ましい。このpHが6.5を下回ると、紙ごみ由来の有機物が多くなって炭酸ガスの濃度が高くなり、メタン発酵に支障を来たすおそれがある。一方、pHが8.5を上回ると、消化液中にアンモニア等が増加し、発酵阻害を引き起こす結果を招く。
【0023】
前記消化液中のアンモニア性窒素濃度は経時的に増大するが、7000mg/L以下であることが好ましく、6500mg/L以下であることがさらに好ましく、6000mg/L以下であることが一層好ましい。該アンモニア性窒素濃度が7000mg/Lを超える場合、消化液中にはアンモニアが蓄積し、発酵阻害が顕著に見られるようになって好ましくない。このアンモニア性窒素濃度は、メタン発酵処理時には通常1000〜6000mg/L程度の範囲で進行する。
【0024】
前記消化液中の有機酸の濃度は、8000mg/L以下であることが好ましく、5000mg/L以下であることがさらに好ましく、3000mg/L以下であることが特に好ましい。有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸等が挙げられる。有機酸の濃度が8000mg/Lを超える場合には、消化液のpHが低下し、メタン発酵に支障を来たしてガス発生量が減少する。消化液中の有機酸は、メタン発酵が良好に進行している間は蓄積されない。
【0025】
さて、生ごみと紙ごみとよりなる被処理物をメタン発酵処理する場合には、メタン発酵微生物を含む消化液が収容されたメタン発酵処理槽に生ごみ及び紙ごみを投入する。このとき、乾燥質量として紙ごみは生ごみ100質量部に対して50〜500質量部の範囲で投入される。そのため、消化液の粘性が適正に維持されるとともに、アンモニアの発生も抑制される。従って、メタン発酵が進行途中において阻害されることなく、速やかに進行し、その結果メタンガスが十分に、しかも連続的に発生する。そして、発酵残渣は塩分濃度が低く、有機肥料として使用することができる一方、消化液は発酵が進んだ処理の容易な液体となる。
【0026】
以上説明したメタン発酵処理方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態のメタン発酵処理方法において、被処理物は乾燥質量として生ごみ100質量部に対して紙ごみ50〜500質量部に設定されている。このように、生ごみ量に対する紙ごみ量が従来よりも多く、適切な範囲に設定されていることから、メタン発酵処理時においてメタン発酵の阻害が抑えられ、メタン発酵が円滑に進行し、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガスが定量的に発生する。
【0027】
従って、本実施形態のメタン発酵処理方法によれば、メタン発酵における発酵阻害を効果的に抑制することができるとともに、メタンガス及び炭酸ガスを含むバイオガス量の増大を図ることができる。
(2)被処理物は、生ごみと紙ごみに基づく有機物負荷量が乾燥有機物質量(VS)につき5〜15g・VS/L/日に設定されている。このため、被処理物が生ごみのみの場合に比べて有機物の処理量を格段に増大させることができるとともに、バイオガスの発生量を一層増加させることができる。
(3)消化液中における固形分濃度は10質量%以下に抑えられる。従って、消化液の高粘性化を抑制することができ、消化液を均一に撹拌することができるとともに、発酵阻害を防止することができる。
(4)消化液のpHは6.5〜8.5に設定されている。そのため、炭酸ガス濃度の上昇を抑制することができ、メタン発酵処理に支障を来たすことを防止することができる。
(5)消化液中のアンモニア性窒素濃度は7000mg/L以下に設定される。従って、消化液中にアンモニア等の窒素成分の蓄積を抑えることができ、発酵阻害を防止しつつメタン発酵処理を継続することができる。
(6)消化液中における酢酸、プロピオン酸等の有機酸の濃度は8000mg/L以下に抑えられる。このため、消化液中の有機酸の蓄積を抑え、メタン発酵を良好に進行させることができる。
【実施例】
【0028】
以下に、実施例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明する。
(実施例1及び2)
有機物を含む被処理物として、下記の表1に示す組成の模擬生ごみと、シュレッダー紙を用いた紙ごみとを用い、消化液(初期)として京都エコエネルギー研究センター(KEEP)より入手したメタノバクテリウム等のメタン発酵微生物を含むものを用意した。実施例1では生ごみと紙ごみとの乾燥質量(TS)当たりの質量比率を1:4とし、実施例2ではその質量比率を1:1とした。前記模擬生ごみの炭素(C)/窒素(N)比は10.6であった。また、模擬生ごみ、紙ごみ及び消化液(初期値)の性状を表2に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
次に、2Lの消化液が投入されたメタン発酵槽に、実施例1及び2の生ごみ及び紙ごみを含む被処理物を、それぞれ1日に1回の割合で2.9g・VS/L/日(消化液1日、1L当たりの乾燥質量、負荷量)加え、嫌気性条件下で55℃(高温発酵)にてメタン発酵処理を12日間行った。その後、13日目〜53日目までは、生ごみ及び紙ごみの投入量を3.7g・VS/L/日に変更してメタン発酵処理を行った。さらに、54日目〜67日目までは、生ごみ及び紙ごみの投入量を4.7g・VS/L/日、68日目〜95日目までは5.5g・VS/L/日、96日目〜126日目までは6.6g・VS/L/日、127日目〜153日目までは7.5g・VS/L/日、154日目〜200日目までは8.6g・VS/L/日に変更した。加えて、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合には、201日目〜214日目までは9.6g・VS/L/日に変更した。
【0031】
そして、バイオガス発生率(L/g- VS)、メタンガス濃度(vol%)、消化液のpH、窒素濃度(mg/L)、有機酸濃度(mg/L)、乾燥質量(TS、質量%)、乾燥有機物質量(VS、質量%)及び有機物負荷量(g・VS/L/日)を測定し、図1〜8に示した。なお、窒素濃度は、全窒素(TN)及びアンモニア由来の窒素(NH−N)を求めた。図1における△は、実施例1及び2の有機物負荷量を示す。
【0032】
図1に示すように、バイオガス発生率は、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4及び1:1のいずれの場合にも安定していた。そして、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合にはバイオガス発生率が0.7〜0.8L/g-VS、1:1の場合にはバイオガス発生率が0.6〜0.7L/g-VSであり、前者の方が0.1L/g-VS程度多い結果が得られた。
【0033】
図2に示すように、バイオガス中に含まれるメタンガス濃度は、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合及び1:1の場合とも50〜60vol%であり、後者の方が若干多い結果を示した。図3に示すように、消化液のpHは、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合にはpHが7.2〜7.4であり、生ごみのみの場合のpHが7.8であるのに比べて低い値を示した。これは、紙ごみ由来の有機物が多いため、二酸化炭素(CO)濃度が高くなったことに基づくものと考えられる。
【0034】
一方、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合には、初期に7.6であり、その後徐々にpHが高くなって7.8〜8.3に到った。特に、45日目あたりからpHが急に上昇した。
【0035】
図4に示すように、消化液中の窒素濃度は、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4及び1:1のいずれの場合にも経時的に窒素及びアンモニアの濃度が次第に高くなる傾向を示した。また、この窒素濃度は、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合の方が1:4の場合に比較して明らかに高い値を示した。これは、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合の方が1:4の場合よりも生ごみ由来の有機物の含有量が多いためと考えられる。
【0036】
図5に示すように、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合には、160日目までは殆ど有機酸の蓄積は見られず良好にメタン発酵していたが、164日目に酢酸濃度が急激に増加し、6000mg/Lを超えた。一方、図6に示すように、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合には、196日目に酢酸及びプロピオン酸が3000mg/Lを超え、210日目には4500mg/Lを超えるに到った。このように、有機酸の増加時期とpH及びガス発生量の低下時期は一致しており、この時期に発酵阻害の要因があったと考えられる。
【0037】
図7に示すように、消化液中の乾燥質量(固形分)の濃度は、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:1の場合には196日を経過すると固形分が10質量%を超え、その後急激に固形分が増大した。このため、消化液を均一に撹拌することができなくなり、pHが低下するとともに、ガス発生量が低下した。また、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4の場合には、151日目に固形分が10質量%を超え、その後急激に固形分が増大した。そのため、消化液を均一に撹拌することが困難になり、酸敗し、メタン発酵処理が停止した。これらの結果から、消化液中の固形分濃度は10質量%以下にすべきであることが判明した。
【0038】
図8に示すように、前記の実施例1及び2に示した結果より、生ごみと紙ごみとの質量比率が1:4のとき有機物負荷量が7.4g・VS/L/日に達し、1:1のときには8.6g・VS/L/日まで達した。これは、本発明者らが既に確認した模擬生ごみの有機物含有量(VS)当たりの有機物負荷量が2.6g・VS/L/日であるのに比べて、有機物負荷量を著しく増大させることができ、バイオガス発生量も増加し、メタン発酵処理の効率を向上させることができた。
【0039】
また、紙ごみの割合を増大させると、アンモニアによるメタン発酵阻害が起こる前に消化液の均一な撹拌が難しくなることにより、メタン発酵阻害が起きる傾向が明らかになった。さらに、消化液中の固形分が10質量%以上になると、消化液の撹拌が困難になり、メタン発酵阻害が起きることが判明した。
【0040】
なお、前記実施形態を以下のように変更して実施することも可能である。
・ 実施例1、2における生ごみとして、肉類や魚類を増量したり、穀物類を増量したりして、その炭素(C)/窒素(N)比を適宜変更することができる。
【0041】
・ 生ごみに対する紙ごみの割合の範囲を、炭素(C)/窒素(N)比に基づいて設定することも可能である。
・ 実施例1、2における紙ごみとして、和紙、板紙或いは古紙などを使用することも可能である。
【0042】
・ メタン発酵処理の進行を、pH値、消化液の撹拌速度、アンモニアガス量などに基づいて監視することもできる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8