特許第5779893号(P5779893)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779893
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】不織布とフィルムとからなる積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20150827BHJP
   B32B 27/12 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B32B27/00 A
   B32B27/12
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-19436(P2011-19436)
(22)【出願日】2011年2月1日
(65)【公開番号】特開2011-173418(P2011-173418A)
(43)【公開日】2011年9月8日
【審査請求日】2014年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2010-19996(P2010-19996)
(32)【優先日】2010年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成子 聡
(72)【発明者】
【氏名】高野 朋子
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開平8−197690(JP,A)
【文献】 特開昭63−237949(JP,A)
【文献】 特開2009−133033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布と合成樹脂製フィルムとを接合した積層体であって、該ポリフェニレンサルファイド繊維の少なくとも一部が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であり、かつ、湿式不織布表面の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維が周辺のポリフェニレンサルファイド繊維と平らな膜状に融着していることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記湿式不織布を構成するポリフェニレンサルファイド繊維の20重量%〜100重量%が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であることを特徴とする請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記合成樹脂製フィルムが、ポリフェニレンサルファイドフィルムまたはポリエチレンテレフタレートフィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
少なくとも一部が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であるポリフェニレンサルファイド繊維を湿式抄紙法でシート化し、しかる後に、加熱・加圧処理によって未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を周辺のポリフェニレンサルファイド繊維と平らな膜状に融着させて湿式不織布とし、しかる後に合成樹脂製フィルムと積層、接合することを特徴とする請求項1記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記湿式不織布または前記合成樹脂製フィルムの表面に接着剤を塗布し、しかる後に該湿式不織布と該合成樹脂製フィルムとを貼り合わせることを特徴とする請求項4に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布と合成樹脂製フィルムを接合した積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気機器の小型化、軽量化、高機能化、高性能化、大容量化に伴い、絶縁システムの信頼性向上が期待されている。そのため、耐熱性、電気特性、機械特性、耐薬品性、作業性などの各特性を兼ね備えた絶縁材料が要求されている。
【0003】
絶縁材料として、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)やポリフェニレンサルファイド(以下、PPSとも記す)といった合成樹脂製フィルムが使用できることが従来から知られている。しかし、PETフィルムは、耐熱性・耐加水分解性に乏しく、使用される範囲が限られている。一方でPPSフィルムは、耐熱性・耐加水分解性には優れるが、耐衝撃性に欠け、例えば成型加工時に穴が空いたり、裂けたり、層剥離を起こしたりし易い。
【0004】
そこで、これらフィルムの弱点を改善する目的でフィルムと繊維シートの積層体が提案されている。例えば、特許文献1、2、3にはPPSフィルムの耐衝撃性を改善する目的でPPSフィルムと繊維シートの積層体が提案されている。しかしながらこれらの積層体は、成型時にフィルム層と繊維シート層の界面が剥がれることがあり、特に複雑・高度な成型を必要とする使用が著しく制限されてしまうという問題があった。また、このような繊維シートを有する絶縁材料を高電圧送電に用いられる場合においては、局所的絶縁破壊を起こしやすいといった問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭63−237949号公報
【特許文献2】特開平8−197689号公報
【特許文献3】特開平8−197690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来技術に鑑み、繊維シートと合成樹脂製フィルムとの積層体であって、耐熱性や耐衝撃性に優れ、剥離が少なくて成型に適し、さらに高電圧での局所的絶縁破壊にも優れた積層体を提供すること、ならびに該積層体の製造方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明の構成は次のような手段を採用する。すなわち、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布と合成樹脂製フィルムとを接合した積層体であって、該ポリフェニレンサルファイド繊維の少なくとも一部が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であり、かつ、湿式不織布表面の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維が周辺のポリフェニレンサルファイド繊維と平らな膜状に融着していることを特徴とするものである。
【0008】
また、かかる積層体の製造方法は、少なくとも一部が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であるポリフェニレンサルファイド繊維を湿式抄紙法でシート化し、しかる後に、加熱・加圧処理によって未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維を周辺のポリフェニレンサルファイド繊維と平らな膜状に融着させて湿式不織布とし、しかる後に合成樹脂製フィルムと積層、接合することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布と合成樹脂製フィルムとを接合した、密着力に優れた積層体を提供することが出来、さらに、電気絶縁用途として重要な、耐熱性、絶縁破壊強さ、ワニス含浸性、耐衝撃性に優れ、かつ、高電圧送電に用いられる際に局所的絶縁破壊を起こす原因となる表面の毛羽が少ない、表面の平滑な積層体を提供することができる。
【0010】
さらにまた本発明によれば、高い引裂き強さを備えた電気機器用の耐熱シートや耐熱チューブ、耐熱クッション材等に好適な積層体を提供できるものである。電気機器においては、特に組み立て工程で他の部材と接触して耐熱シートが破れることがあり、引裂き強さの高い耐熱シートが要望されていた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の湿式不織布の表面写真(300倍)である。
図2】実施例2の湿式不織布の表面写真(300倍)である。
図3】実施例3の湿式不織布の表面写真(300倍)である。
図4】実施例4の湿式不織布の表面写真(300倍)である。
図5】比較例1の湿式不織布の表面写真(300倍)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、フィルムと繊維シートの積層体を成型する際に生じるフィルム層と繊維シート層の界面の剥がれはフィルム層と繊維シート層との密着性が充分ではないことに起因し、両層の密着性を向上させることで改善されること、また、高電圧での局所的絶縁破壊は繊維シート表面の毛羽が一因であり、繊維シートの表面平滑性を向上させることで改善されることを見出し、本発明に到達した。すなわち本発明は、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布と合成樹脂製フィルムとを接合した積層体であって、該ポリフェニレンサルファイド繊維の少なくとも一部が未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維であり、かつ、湿式不織布表面の未延伸ポリフェニレンサルファイド繊維が周辺のポリフェニレンサルファイド繊維と平らな膜状に融着しているものである。
【0013】
このように本発明の積層体は、ポリフェニレンサルファイド繊維からなる湿式不織布の表面を平らな膜状に融着することで初めて、フィルム層と繊維シート層との密着性が向上して一体化し、高い引裂き強さを発現するものである。
【0014】
本発明の湿式不織布を構成するPPS繊維は、耐加水分解性・吸湿寸法安定性に優れたPPS樹脂を溶融紡糸して繊維化したものであり、得られた湿式不織布も同様の特長を有することができる。
【0015】
ここでPPS樹脂とは、繰り返し単位としてp−フェニレンサルファイド単位やm−フェニレンサルファイド単位などのフェニレンサルファイド単位を含有するポリマーである。本発明におけるPPSは、これらのいずれかの単位のホモポリマーでもよいし、両方の単位を有する共重合体でもよい。また、他の芳香族サルファイドとの共重合体であってもよいが、好ましくは繰り返し単位の70モル%以上がp−フェニレンサルファイドからなるものである。
【0016】
また、PPS繊維に用いるPPS樹脂の重量平均分子量としては、40000〜60000が好ましい。40000以上とすることで、PPS繊維として良好な力学的特性を得ることができる。また、60000以下とすることで、溶融紡糸の溶液の粘度を抑えることができ、特殊な高耐圧仕様の紡糸設備を必要とせずに済むので好ましい。
【0017】
本発明の湿式不織布は構成するPPS繊維の少なくとも一部に未延伸PPS繊維を含むことが重要である。未延伸PPS繊維は流動開始温度が低いため、バインダとして使用することができ、未延伸PPS繊維が溶融することで、湿式不織布を構成する周辺のPPS繊維と平らな膜状に融着し、毛羽の少ない平滑な表面の繊維シートとすることができる。
【0018】
ここでいう平らな膜状とは、湿式不織布の表面に存在する未延伸PPS繊維がカレンダー加工や熱プレス加工により加熱及び加圧されて溶融変形し、周辺の繊維との隙間を埋め、周辺の繊維に融着することにより形成された膜形状のものである。表面の未延伸PPS繊維を平らな膜状に融着することで、毛羽の原因となる単繊維の浮きを抑えられる上、湿式不織布と合成樹脂製フィルムとの接合面においては、湿式不織布と合成樹脂製フィルムとの密着面積が多くなるため、アンカー効果を極めて高くすることが出来、両層の密着力の大きな積層体を得ることができる。なお、湿式不織布の表面のみならず、内部に存在する未延伸PPS繊維も融着していてもよい。
【0019】
さらに、表面の未延伸PPS繊維を平らな膜状に融着することにより、絶縁体として成型加工するのに適したものとすることができた。すなわち、本発明の構成とすることにより、従来のPPS不織布とフィルムとの積層体よりも成型加工時に割れ難くいもの、具体的には端裂抵抗値、すなわち引裂き強さが向上した積層体とすることができたのである。
【0020】
前記湿式不織布を構成する全PPS繊維のうち20質量%〜100質量%が未延伸PPS繊維であることが好ましく、より好ましくは25質量%〜100質量%である。目的に応じ、本発明の効果を損じない限り、PPS繊維以外の他の繊維を含むことができる。例えば、セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アラミド、ポリイミド、全芳香族ポリエステル、ポリテトラフロロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの繊維を含むことができる。他の繊維の配合量としては45質量%以下である。
なお本発明に用いる未延伸PPS繊維とは、エクストルダー型紡糸機等で口金を通して溶融紡糸した後、全くもしくは概ね延伸することなく得たPPS繊維のことをいう。
【0021】
本発明の湿式不織布におけるPPS繊維の単繊維繊度としては、0.05dtex以上10dtex以下が好ましい。0.05dtexよりも細いと繊維同士が絡み易くなり均一に分散するのが難しくなる。10dtexよりも太くなると繊維が太く、硬くなり、繊維同士の絡合力が弱くなるので、十分な紙力が得られず、破れ易い湿式不織布になってしまう。全てのPPS繊維が単繊維繊度0.05dtex以上10dtex以下であることが好ましいが、上記効果を損なわない程度に当該範囲外のものを含んでいてもよい。
【0022】
また、本発明の湿式不織布におけるPPS繊維の繊維長としては、1〜20mmの範囲内が好ましい。1mm以上とすることで、繊維同士の絡合により湿式不織布の強度を高くすることができる。また20mm以下とすることで、繊維同士がダマになるなどして湿式不織布にムラ等が生じるのを防ぐことができる。全てのPPS繊維が繊維長1〜20mmの範囲内であることが好ましいが、上記効果を損なわない程度に当該範囲外のものを含んでいてもよい。乾式不織布は製造方法の制約上、繊維長を上記範囲のように短くすることが困難であり、一般的な50mm程度の繊維長を有する乾式不織布を用いると毛羽が多くなって、湿式不織布の場合よりも高電圧での局所的絶縁破壊が起こりやすい。
【0023】
本発明に用いる湿式不織布は一般的な抄造法で得られる紙状物であり、好ましくは5〜200g/mの目付け、5〜500μmの厚みであり、より好ましくは10〜120g/mの目付け、10〜300μmの厚みであるものが絶縁材として好適に用いることができる。
【0024】
本発明の積層体は、湿式不織布と合成樹脂製フィルムとを接合したものである。該湿式不織布は合成樹脂製フィルムと接合して積層することで、湿式不織布単体よりも絶縁破壊強さを飛躍的に向上し、さらに剛性(コシの強さ)を高くすることができる。また、合成樹脂製フィルムは湿式不織布と接合して積層することで、合成樹脂製フィルム単体よりも飛躍的に耐衝撃性(割れやすさ)の向上を図ることができる。
【0025】
中でも特に端裂抵抗、すなわち引裂き性の向上を大きく図ることができ、本発明の積層体は、これまでフィルム単独では達成できなかった高い引裂き性能を有するものである。
【0026】
本発明における合成樹脂製フィルムは、合成樹脂を溶融成形してシート状としたものであり、シート状とした後、延伸してもよいし、未延伸のままでもよい。延伸された合成樹脂製フィルムは機械的強度が高い点で好ましく、未延伸の合成樹脂製フィルムは成型加工性に優れる点で好ましい。該合成樹脂製フィルムの厚みは2〜500μmであるものが絶縁材として好適に用いることができる。
【0027】
本発明では合成樹脂製フィルム全般を使用できるが、特にポリエチレンテレフタレートフィルムか、ポリフェニレンサルファイドフィルムであることが好ましい。PETフィルムは絶縁破壊強さに優れる上、安価であるため絶縁材に好適であり、一方でPPSフィルムはPETフィルムよりも耐熱性、耐薬品性、耐加水分解性などの諸特性に優れ、過酷な使用環境にも耐え得ることから、絶縁材としてより好適に用いることが出来る。
【0028】
上記のPET樹脂は、繰り返し単位としてp−エチレンテレフタレート単位やm−エチレンテレフタレート単位などのエチレンテレフタレート単位を含有するポリマーである。本発明におけるPET樹脂とは、これらのいずれかの単位のホモポリマーでもよいし、両方の単位を有する共重合体でもよい。
【0029】
本発明に好適に用いることが出来るPETフィルムは上記PET樹脂を溶融成形してシート状としたものであり、シート状とした後、延伸してもよいし、未延伸のままでもよく、厚みは2〜500μmであるものが絶縁材として好適に用いることができる。また本発明に好適に用いることができるPPSフィルムは上記PPS樹脂を溶融成形してシート状としたものであり、シート状とした後、延伸してもよいし、未延伸のままでもよく、厚みは2〜500μmであるものが絶縁材として好適に用いることができる。
【0030】
次に、本発明に用いる湿式不織布を製造(抄造)する方法について説明する。
【0031】
上記のとおり、本発明に用いる湿式不織布はPPS繊維からなるものであり、該PPS繊維の一部が未延伸PPS繊維で構成される。該未延伸PPS繊維は、上述のPPS樹脂をエクストルダー型紡糸機等で溶融紡糸し、全くもしくは概ね延伸することなく処理することで得ることができる。また一方で未延伸PPS繊維以外のその他のPPS繊維は延伸されたPPS繊維であり、該延伸されたPPS繊維は未延伸PPS繊維と同様にPPS樹脂をエクストルダー型紡糸機等で溶融紡糸し、3.0倍以上、好ましくは5.5倍以下、さらに好ましくは3.5〜5.0倍の範囲で延伸することにより得ることができる。この延伸は1段で延伸してもよいが、2段以上の多段延伸を行ってもよい。2段延伸を用いる場合の1段目の延伸は総合倍率の70%以上、好ましくは75〜85%とし、残りを2段目の延伸で行なうのが好ましい。得られた未延伸PPS繊維および延伸されたPPS繊維は捲縮を付与せずにカットしてもよいし、捲縮を付与してカットしてもよい。PPS繊維における捲縮の有無については、有するものと有しないものとのそれぞれに利点がある。捲縮を有するPPS繊維は、繊維同士の絡合性が向上して強度の優れた湿式不織布を得るのに適している。一方、捲縮を有しないPPS繊維は、繊維の水への分散性が良好であるので、ムラが小さい均一な湿式不織布を得るのに適している。
【0032】
上記したようなPPS繊維からなる湿式不織布を得る方法の一例を示す。まず、PPS繊維(延伸されたPPS繊維、未延伸PPS繊維)を、水中に分散させ、抄紙スラリーをつくる。
【0033】
抄紙スラリー全体に対するPPS繊維の合計量としては、0.005〜5質量%が好ましい。合計量を0.005質量%以上にすることで、抄紙工程で水を効率よく活用できる。また、5質量%以下にすることで繊維の分散状態が良くなり、均一な湿式不織布を得ることができる。
【0034】
抄紙スラリーは、延伸されたPPS繊維のスラリーと未延伸PPS繊維のスラリーとを予め別々に作ってから両者を抄紙機で混合してもよいし、直接両者を含むスラリーを作ってもよい。それぞれの繊維のスラリーを別々に作ってから両者を混合するのは、それぞれの繊維の形状・特性等に合わせて攪拌時間を別個に制御できる点で好ましく、直接両者を含むスラリーを作るのは工程簡略の点で好ましい。
【0035】
抄紙スラリーには、分散状態を良好にするためにカチオン系、アニオン系、ノニオン系などの界面活性剤などからなる分散剤や油剤、また泡の発生を抑制する消泡剤等を添加してもよい。
【0036】
上記のように準備した抄紙スラリーを、丸網式、長網式、傾斜網式などの抄紙機または手漉き抄紙機を用いて抄紙し、これをヤンキードライヤーやロータリードライヤー等で乾燥し、湿式不織布とすることができる。
【0037】
前記湿式不織布を構成する全PPS繊維の20質量%〜100質量%が未延伸PPS繊維であることが好ましく、より好ましくは25質量%〜100質量%であり、さらに好ましくは25質量%〜75質量%である。未延伸PPS繊維を、湿式不織布を構成する全PPS繊維の20質量%以上とすることで、繊維同士を平らな膜状に融着することができ、毛羽の少ない、表面の平滑な湿式不織布とすることができる上、湿式不織布と合成樹脂製フィルムとの接合面においては、密着面積が多く、密着力が強い積層体を得ることができる。また、未延伸PPS繊維が、湿式不織布を構成する全PPS繊維の25質量%以上では、平らな膜状に融着する面積が増え、湿式不織布表面の毛羽の量はより少なくなり、密着力はより強くなるため、より好適である。さらに、未延伸PPS繊維が、湿式不織布を構成する全PPS繊維の25質量%〜75質量%では、湿式不織布は引裂き強さに優れ、湿式不織布と合成樹脂フィルムの積層体とした場合でも、同様に引裂き強さに優れるため、密着力と引裂き強さの両方の観点からより好ましい。
【0038】
本発明の積層体の製造方法は、PPS繊維を湿式抄紙法でシート化し、しかる後に、加熱・加圧処理によって未延伸PPS繊維をその周辺のPPS繊維と平らな膜状に融着させて湿式不織布とし、しかる後に合成樹脂製フィルムと接合することが重要である。
【0039】
本発明において、湿式不織布とするために加熱・加圧処理する手段としては、いかなる手段でもよいが、例えば、平板等での熱プレス、カレンダーなどを採用することができる。なかでも連続して加工することができるカレンダーが好ましい。カレンダーのロールは、金属−金属ロール、金属−紙ロール、金属−ゴムロール等を使用することができる。加熱・加圧処理の温度条件は、未延伸PPS繊維のガラス転移点以上、融点以下の温度がとするのがよく、好ましくは88〜250℃であり、さらに好ましくは88〜220℃である。
【0040】
処理温度が88℃よりも低いと、表面部分に存在する繊維同士を平らな膜状に融着することができず、表面の平滑な湿式不織布を得ることができない。一方、250℃を超えると、未延伸PPS繊維が軟化しすぎてカレンダーのロールや熱プレスの板等の加熱・加圧装置に貼り付いてしまい、安定して量産加工ができない。また、湿式不織布としても表面の荒れたものができてしまう。加熱・加圧処理としてカレンダー加工を採用した場合の圧力としては、10〜720kgf/cmが好ましい。10kgf/cm以上とすることで繊維同士を平らな膜状に融着できる。一方、720kgf/cm以下とすることで、加熱・加圧処理における湿式不織布の破れ等を防ぎ、安定して処理を施すことができる。カレンダーの工程速度としては、1〜30m/minが好ましく、より好ましくは2〜20m/minである。1m/min以上とすることで、良好な作業効率を得ることができる。一方、30m/min以下とすることで、湿式不織布の内部の繊維にも熱を伝導させ、繊維同士を確実に融着させることができる。
【0041】
次に上記方法により得られたPPS湿度式不織布と合成樹脂製フィルムとの積層方法について説明する。
【0042】
本発明の積層体は、少なくとも上記PPS湿式不織布層と上記合成樹脂製フィルム層からなり、各層を直接又は接着剤を介して接着することで得ることが出来る。
【0043】
接着剤を介して積層体を接合する方法では、接着剤は無溶剤系、溶剤系とも用い得るが、接着剤の耐熱性や接着剤を積層する作業性から考えて硬化型の溶剤系の接着剤が好ましい。硬化型の接着剤としてウレタン系、エポキシ系、アクリル系、シリコーン系、ポリエステル系等が挙げられる。
【0044】
上記の接着剤により接合する方法は、合成樹脂製フィルム(又はPPS湿式不織布)の片面に接着剤を塗布し、乾燥した後加熱ロール又は加熱プレスでPPS湿式不織布(又は合成樹脂製フィルム)を貼り合わせる。さらに積層・接合する場合は、次に上記の合成樹脂製フィルムとPPS湿式不織布の2層体のPPS湿式不織布又は合成樹脂製フィルム(又は更に接合するもう一層の合成樹脂製フィルム又はもう一層のPPS湿式不織布)に同様の接着剤を塗布し、乾燥した後加熱ロール又は加熱プレスでもう一層の合成樹脂製フィルム又は、PPS湿式不織布を貼り合わせることで、3層構造の積層体とすることも可能である。同様にして4層以上の積層体とすることもできる。
【0045】
接着剤を塗布する方法としては、グラビアロール法、リバースロールコータ法等がある。塗布後の溶剤の乾燥は、用いる溶剤の種類により異なり、通常は溶剤の沸点付近の温度で残存溶剤が完全になくなる条件が選ばれる。又貼り合わせの条件は、温度50℃〜250℃、線圧1〜50kgf/cmの範囲で行うのがよい。
【0046】
又必要に応じて接着剤の硬化を行う。接着剤の種類や組成、厚みによって異なるが常温〜200℃で0.5〜100時間の範囲内が好ましい。
【0047】
また、接着剤を用いず、直接積層体を構成する方法は、例えば積層する合成樹脂製フィルム面及びPPS湿式不織布面にコロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を行って表面に−CO、-C=O、−COOHといった適切な官能基を導入することで、合成樹脂製フィルムとPPS湿式不織布とが加熱処理によって接合できる。プラズマ処理は、処理ガスの選択により、ポリマー表面に導入される官能基の種類とその量を制御することができる点から、コロナ処理よりも好適である。プラズマ処理で選択できるガスの一例として、酸素ガス、酸素化合物ガス、アルゴンガス、アンモニアガス、ニトロ化合物ガス、またこれらの混合ガスなどが挙げられ、適宜選択して用いることができる。
【0048】
該加熱処理(加熱ロール又は加熱プレス)として温度120℃〜250℃、線圧1〜1200kgf/cmの範囲で熱融着し、貼り合わせていく。このとき、高圧力であれば低温で貼り合わせることができ、高温であれば低圧力で貼り合わせることができる。
【0049】
なお、プラズマ処理によって貼り合わせる場合、貼り合わせに使用するPPS湿式不織布として、乾燥工程やカレンダー工程などのPPS湿式不織布を製造する上での加熱工程において、PPSの結晶化温度である120℃以上の熱を与えていないものを用いることも好ましい。乾燥温度とカレンダー温度を120℃未満とすることで、PPS湿式不織布を構成するPPS繊維の非晶成分を多く保ったまま接合工程へ移ることができ、その結果、該加熱処理により、合成樹脂製フィルムと接合すると同時にPPS湿式不織布の接着面を平らな膜状に融着させることができる。この方法は融着した平らな膜状の表面が合成樹脂フィルムの表面に沿ってより密着し、よりアンカー効果を高めることができる点からも好ましい。
【0050】
この方法は、接着剤層を設けないため、接着剤の熱劣化が本発明の積層体の耐熱性、機械的強度などの特性に影響することがない利点を持っており、特にPPS湿式不織布とPPSフィルムとの積層においては、PPSの諸特性を損なうことなく積層体を構成できるので好ましい。
【0051】
またプラズマ処理によって貼り合わせる場合、加熱処理を施した後にさらに追加で熱処理を施すことで、PPS湿式不織布と合成樹脂フィルムとの密着力を大きく向上することができる。具体的には、160℃〜200℃の温度で、1分間〜30分間の追加熱処理により密着力が向上し、密着界面を剥離した場合に、フィルムから剥離した湿式不織布が破断するといった基材破壊が生じた。すなわち、密着力が湿式不織布の機械的強度を上回っており、密着力の高いものであった。また、一般的なプラズマ処理による貼り合わせは、加工直後から密着力の低下が進むことが知られているが、追加熱処理を施すことで、加工から1年以上経過後も密着力は維持しており基材破壊に達していた。これら追加熱処理により密着力が向上し、かつ密着力が低下せずに維持される理由は、必ずしも明確化できていないが、追加で熱処理することで繊維シートに含まれる水分子が除去されるに従ってプラズマ処理で導入された官能基が水分子の阻害を受けなくなり、接着に十分寄与できるようになるためと考えられる。
【0052】
以下に実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0053】
[測定・評価方法]
(1)目付
JIS L 1906:2000に準じて、25cm×25cmの試験片を、1枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、1m当たりの質量(g/m)で表した。
【0054】
(2)厚さ
JIS L 1906:2000で準用するJIS L 1096:1999に準じて、試料の異なる10か所について、厚さ測定機を用いて、直径22mmの加圧子による2kPaの加圧下、厚さを落ち着かせるために10秒間待った後に厚さを測定し、平均値を算出した。
【0055】
(3)密着力
JIS K 2111:2002(12.2項:接着力の測定)に準じて測定した。50mm×200mmの試験片を5枚採取し、試験片全幅にわたり、できるだけ層の中心を長さ方向に20mm引裂き、引裂き箇所が直角になるように、引き裂かれていない部分を手で持ちながら、引張り試験機(島津製作所社製AGS−J5kN)を用いて300m/minで引張り、接着力の試験片5個の平均値を算出し、10mm幅に換算した。
【0056】
(4)絶縁破壊強さ
JIS K 6911:1995に準じて測定した。試料の異なる5か所から約10cm×10cmの試験片を採取し、直径25mm、質量250gの円盤状の電極で試験片を挟み、試験媒体には空気を用い、0.25kV/秒で電圧を上昇させながら周波数60Hzの交流電圧をかけ、絶縁破壊したときの電圧を測定した。測定には、絶縁破壊耐電圧試験機(安田精機製作所社製)を使用した。得られた絶縁破壊電圧をあらかじめ測定しておいた中央部の厚さで割り、絶縁破壊強さを算出した。
【0057】
(5)毛羽の有無
100mm×20mmの試験片を1枚採取し、試験片の100mm長の切断面を手前にし、切断面に対して垂直に目視観察を行い、試験片表面の片側に見られる0.5mm以上の長さの毛羽の数を数え、数が0であれば「無」、1以上5未満は「少し有」、5以上は「有」とした。
【0058】
(6)融着の有無
日立ハイテクノロジーズ社製の走査型電子顕微鏡S−3500Nを用いて、試験片を倍率300倍で観察したとき、1画面中に表示できる試験片の面積に相当する0.14mm2内に存在する繊維のうち、隣り合う繊維との境界線が消えて不明確である部分が3箇所以上であれば「有」、3箇所未満であれば「無」とした。なお、試験片は貼りあわせ前の不織布であり、観察したのは貼り合わせ面側である。
(7)引裂き強さ(端裂抵抗)
JIS C 2151:2006の端裂抵抗B法に準じて測定した。測定試料に使用している合成樹脂製フィルムの縦方向を試験片の長手方向とし、幅20mm×長さ200mmの試験片を5枚採取し、引張り試験機(島津製作所社製AGS−J5kN)を用いて200mm/minで引張り、得られた応力曲線の第1ピークをニュートン単位で読み取り、測定値とした。試験片5枚の測定値の平均値を算出し、端裂抵抗値とした。
【0059】
[実施例1〜4、比較例1]
(1)湿式不織布の作製
(延伸されたPPS繊維)
延伸されたPPS繊維として、単繊維繊度1.0dtex、カット長6mmの東レ社製‘トルコン’、品番S301を用いた。
【0060】
(延伸されたPPS繊維の分散液)
上記延伸されたPPS繊維を、表1の構成を基に、仕上がりが100g/mとなるように準備し、延伸されたPPS繊維1gに対し、水1Lをともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌することを繰り返し、分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
【0061】
(未延伸PPS繊維)
未延伸PPS繊維として、単繊維繊度3.0dtex、カット長6mmの東レ社製‘トルコン’、品番S111を用いた。
【0062】
(未延伸PPS繊維の分散液)
上記未延伸PPS繊維を、それぞれ表1記載の質量分の小数第1位を切り上げた数に概ね等分し、1等分ずつをとり、おのおの水1Lとともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌することを繰り返し、分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
【0063】
(抄紙)
各実施例・比較例において使用した繊維の分散液を、底に140メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ40cmの手すき抄紙機(熊谷理機工業社製)に仕上がりが100g/mとなるように投入し、さらに水を追加して抄紙分散液の総量を20Lとし、攪拌器で十分に攪拌した。次に、手すき抄紙機の水を抜き、抄紙網に残った湿紙を濾紙に転写した。
【0064】
(乾燥)
上記湿紙を濾紙ごとロータリー式乾燥機に投入し、温度140℃、工程通過速度0.5m/min、工程長1.25m(処理時間2.5min)にて乾燥する処理を2回繰り返して、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0065】
(加熱・加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布を濾紙から剥離して、金属ロールとペーパーロールとからなるカレンダー加工機(由利ロール社製)に通した。カレンダー条件は、温度160℃、圧力344kgf/cm、ロール回転速度5m/minとし、表裏の2回繰り返して、湿式不織布を得た。得られた湿式不織布について上記判断基準によって融着の有無を判断した結果、実施例1〜4は融着が有り、表面において平らな膜状に融着していた。
【0066】
(2)合成樹脂製フィルム
PPSフィルムとして厚み60μm、片面コロナ処理品の東レ社製‘トレリナ’、品番#60−3A30を用いた。
【0067】
(3)湿式不織布と合成樹脂製フィルムの接合
PPSフィルムの片面に接着剤を15g/mとなるように均一に塗布した後、10秒間時間を置いてから、作製した湿式不織布を重ね、1.3Paで6時間プレスし、貼り合わせた。なお、接着剤には、成分がアクリルゴム10%、有機溶剤54%、イソヘキサンガス36%である、住友スリーエム社製‘スプレーのり55’を用いた。
[実施例5]
(延伸されたPPS繊維)
延伸されたPPS繊維として、単繊維繊度1.0dtex、カット長6mmの東レ社製‘トルコン’、品番S301を用いた。
【0068】
(延伸されたPPS繊維の分散液)
上記延伸されたPPS繊維を、表2の構成を基に、仕上がりが40g/mとなるように準備し、延伸されたPPS繊維1gに対し、水1Lをともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌することを繰り返し、分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
【0069】
(未延伸PPS繊維)
未延伸PPS繊維として、単繊維繊度3.0dtex、カット長6mmの東レ社製‘トルコン’、品番S111を用いた。
【0070】
(未延伸PPS繊維の分散液)
上記未延伸PPS繊維を、それぞれ表2記載の質量分の小数第1位を切り上げた数に概ね等分し、1等分ずつをとり、おのおの水1Lとともに家庭用ジューサーミキサーに投入して攪拌することを繰り返し、分散液とした。攪拌時間としては、繊維同士が絡むのを防ぐために10秒とした。
【0071】
(抄紙)
各実施例・比較例において使用した繊維の分散液を、底に140メッシュの手漉き抄紙網を設置した大きさ25cm×25cm、高さ40cmの手すき抄紙機(熊谷理機工業社製)に仕上がりが40g/mとなるように投入し、さらに水を追加して抄紙分散液の総量を20Lとし、攪拌器で十分に攪拌した。次に、手すき抄紙機の水を抜き、抄紙網に残った湿紙を濾紙に転写した。
【0072】
(乾燥)
上記湿紙を濾紙ごとロータリー式乾燥機に投入し、温度140℃、工程通過速度0.5m/min、工程長1.25m(処理時間2.5min)にて乾燥する処理を2回繰り返して、乾燥処理した湿式不織布を得た。
【0073】
(加熱・加圧処理)
上記乾燥処理した湿式不織布を濾紙から剥離して、金属ロールとペーパーロールとからなるカレンダー加工機(由利ロール社製)に通した。カレンダー条件は、温度160℃、圧力344kgf/cm、ロール回転速度5m/minとし、表裏の2回繰り返して、湿式不織布を得た。得られた湿式不織布について上記判断基準によって融着の有無を判断した結果、実施例1〜4は融着が有り、表面において平らな膜状に融着していた。
【0074】
(2)合成樹脂製フィルム
PPSフィルムとして厚み60μm、片面コロナ処理品の東レ社製‘トレリナ’、品番#60−3A30を用いた。
【0075】
(3)湿式不織布と合成樹脂製フィルムの接合
PPSフィルムの片面と湿式不織布の片面にそれぞれプラズマ処理をプラズマ処理強度650W・min/mで施した後、それぞれの処理面と処理面が密着するように不織布を重ね、金属ロールとペーパーロールとからなるカレンダー加工機(由利ロール社製)に通し、PPSフィルムと湿式不織布とを貼り合わせ、積層体を得た。カレンダー条件は、温度210℃、圧力344kgf/cm、ロール回転速度5m/minとした。
[実施例6]
実施例5と同様の方法で得られた積層体を、槽内温度が200℃の乾燥機中に1分間静置した後、乾燥機から取り出した。
【0076】
【表1】
【0077】
表1から明らかなように、実施例1〜3について、いずれも毛羽は無く、未延伸PPS繊維の割合が多いほど、平らな膜状に融着している面積が広くなり、密着力が高く優れる結果であった。実施例4は、少し毛羽が確認されたが、比較的高い密着力を示した。一方で比較例1は、毛羽が多い上に、融着が無いため、密着力が極めて低かった。
【0078】
このように実施例1〜4において密着力、絶縁破壊強さに強く、表面毛羽の少ない積層体を得ることができた。また、走査型電子顕微鏡を用いて、試験片の繊維シート表面を倍率300倍で観察したところ、実施例1〜4には、未延伸PPS短繊維による融着が有ることが確認できた。
【0079】
さらにまた実施例1〜4は密着力に優れる上、湿式不織布部分の機械的強度が高いことから、複合体としての端裂抵抗、すなわち引裂き強さにも優れている。特に、実施例2〜4が密着力と引裂き強さの両方で優れていた。
【0080】
【表2】
【0081】
表2の通り、追加熱処理を施すことで接着力が大幅に向上し、密着力測定時にフィルムから剥離した湿式不織布が破断するといった基材破壊が生じた。この場合、密着力が湿式不織布の機械的強度を上回っており、密着力の高いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の積層体は、モーター、コンデンサー、変圧器、ケーブル、高電圧伝送トランス等に用いられる電気絶縁紙として利用可能である。
【0083】
さらにまた本発明の積層体は、電気機器用の耐熱シートや耐熱チューブ等に用いられる積層体として利用可能である。
図1
図2
図3
図4
図5