(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の通信部は、前記省電力モードにおいて、前記第1の通信部によって応答可能な前記要求パケットを受信した場合、前記応答パケットを返信し、前記第1の通信部によって応答不可能な前記要求パケットを受信した場合、前記電力モードを前記待機モードに復帰させる復帰指示を出力し、
前記電力制御部は、前記第1の通信部によって出力された復帰指示に従って、前記電力モードを前記待機モードに復帰させ、
前記第2の通信部は、復帰後、前記第1の通信部によって前記省電力モードにおいて受信された要求パケットに対する前記応答パケットを返信することを特徴とする請求項1又は2に記載の通信装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の画像形成装置では、待機モードから省電力モードへ移行する際に、メイン制御部に対する通電が停止される。このため、メイン通信部では、通電が停止される前に、各ファイルを閉じて、揮発性メモリに記憶されたデータをストレージに書き込む等、次回の起動を正常に、また、素早く行うためのシャットダウン処理を含む移行処理が行われる。この移行処理は、メイン通信部の構成によって異なるが、一般的に、1,2秒から1,2分程度の時間がかかる。
【0006】
この移行処理の実行中に、パケットが外部機器から自機に送信される可能性がある。例えば、ジョブの要求又は情報の要求等、何らかの要求を行うパケットが送信された場合、これらのパケットに対しては応答を行う必要がある。しかしながら、移行処理の実行中は、メイン通信部が応答を行うことができない場合がある。また、移行処理の実行中は、未だ省電力モードへの移行が完了していないので、サブ通信部によって代理応答を行うこともできない。喩え、移行処理を実行中に、サブ応答部が代理応答を行うように構成したとしても、サブ応答部が代理応答の不可能なパケットについては、当然ながら応答することはできない。このため、移行処理が実行されている間に、外部機器からパケットが送信された場合、そのパケットに対して応答できず、パケットがロスする虞がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであり、省電力モードへの移行処理の実行中に外部機器から送信されたパケットのロスを防止することが可能な通信装置及び該通信装置を備える画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る通信装置は、待機モード及び該待機モードより消費電力量が小さい省電力モードを含む電力モードの移行制御を行う電力制御部と、外部機器から要求パケットを受信する第1の通信部と、待機モードにおいて、第1の通信部によって受信された要求パケットに対して応答パケットを返信し、省電力モードにおいて、少なくとも一部に対する通電が電力制御部によって停止されることにより、応答パケットの返信が不可能となる第2の通信部とを備え、第1の通信部は、第2の通信部において待機モードから省電力モードへの移行処理が実行されている最中に、要求パケットを受信した場合、該要求パケットを保持し、待機モードに復帰した後、保持していた要求パケットを第2の通信部へ出力し、第2の通信部は、第1の通信部によって出力された要求パケットに対する応答パケットを返信することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る通信装置によれば、待機モードにおいて、外部機器から要求パケットが受信された場合、応答パケットが第2の通信部によって返信される。省電力モードでは、第2の通信部の少なくとも一部に対する通電が停止されることにより、省電力化を図ることができる。一方、第2の通信部が待機モードから省電力モードへの移行処理を実行中に、外部機器から自機に送信された要求パケットが受信された場合、要求パケットが、第1の通信部によって保持される。そして、自機が待機モードに復帰した後、保持されていた要求パケットが、第1の通信部から第2の通信部へ出力される。そして、出力された要求パケットに対する応答パケットが、第2の通信部によって返信される。これにより、移行処理の実行中に受信された要求パケットに対する応答パケットを返信することができる。従って、省電力モードへの移行処理の実行中に外部機器から送信されるパケットのロスを防止することが可能となる。
【0010】
本発明に係る通信装置では、第1の通信部が、要求パケットを保持した状態で、第2の通信部による移行処理が完了した場合、電力モードを待機モードに復帰させる復帰指示を出力し、電力制御部が、第1の通信部によって出力された復帰指示に従って、電力モードを待機モードに復帰させ、第2の通信部が、復帰後、第1の通信部によって出力された要求パケットに対する応答パケットを返信することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、要求パケットが保持された状態で、移行処理が完了した場合、復帰指示が出力される。これにより、移行処理が完了して省電力モードに移行した際に、復帰指示が出力され、自機が省電力モードから待機モードに復帰する。そして、保持されていた要求パケットが、第1の通信部から第2の通信部へ出力され、出力された要求パケットに対する応答パケットが、第2の通信部によって返信される。これにより、移行処理の実行中に要求パケットが受信された場合、移行処理の完了後に自機を待機モードに復帰させ、直ちに、要求パケットに対して応答することが可能となる。
【0012】
本発明に係る通信装置では、第1の通信部は、第2の通信部において移行処理が実行されている最中に、第1の通信部によって応答可能な要求パケットを受信した場合、応答パケットを返信し、第1の通信部によって応答不可能な要求パケットを受信した場合、該要求パケットを保持することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、移行処理の実行中に、第1の通信部によって応答可能な要求パケットが受信された場合は、応答パケットが返信される。これにより、第1の通信部によって応答可能な要求パケットに対しては、移行処理の実行中であっても応答することができる。一方、第1の通信部によって応答不可能な要求パケットが受信された場合は、要求パケットが保持される。これにより、復帰した際に応答することができるので、パケットロスを防止することができる。
【0014】
本発明に係る通信装置では、第1の通信部は、省電力モードにおいて、第1の通信部によって応答可能な要求パケットを受信した場合、応答パケットを返信し、第1の通信部によって応答不可能な要求パケットを受信した場合、電力モードを待機モードに復帰させる復帰指示を出力し、電力制御部は、第1の通信部によって出力された復帰指示に従って、電力モードを待機モードに復帰させ、第2の通信部は、復帰後、第1の通信部によって省電力モードにおいて受信された要求パケットに対する応答パケットを返信することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、省電力モードにおいて、第1の通信部によって応答可能な要求パケットが受信された場合は、応答パケットが返信される。これにより、第1の通信部によって応答可能な要求パケットに対しては、省電力モードであっても第2の通信部を復帰させずに応答することができる。一方、第1の通信部によって応答不可能な要求パケットが受信された場合は、復帰指示が出力され、自機を待機モードに復帰させる。これにより、省電力モードにおいて第1の通信部によって応答不可能な要求パケットが受信された場合であっても、第2の通信部を起動させて応答パケットを返信することができる。
【0016】
本発明に係る通信装置では、第2の通信部は、移行処理を開始する際に、第1の通信部の通信制御モードを移行制御モードに切り替えさせる切替指示を第1の通信部へ出力し、移行処理が完了した際に、第1の通信部の通信制御モードを通常制御モードに切り替えさせる切替指示を第1の通信部へ出力し、第1の通信部は、第2の通信部から移行制御モードに切り替えさせる切替指示が出力された場合、通信制御モードを移行制御モードに切り替え、通常制御モードに切り替えさせる切替指示が出力された場合、通信制御モードを通常制御モードへ切り替え、移行制御モードにおいて、要求パケットを受信した場合、該要求パケットを保持し、通常制御モードに切り替えた際に要求パケットを保持している場合、復帰指示を第2の通信部へ出力することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、第1の通信部の通信制御モードは、第2の通信部による移行処理が開始される際に出力される切替指示によって移行制御モードに切り替えられ、移行制御モードにおいて受信された要求パケットが第1の通信部によって保持される。すなわち、第2の通信部が移行処理を実行中に、第1の通信部の通信制御モードが移行制御モードとなり、受信された要求パケットが第1の通信部によって保持される。また、第1の通信部の通信制御モードは、第2の通信部による移行処理が完了した後に出力される切替指示によって、通常制御モードに切り替えられる。すなわち、第2の通信部による移行処理が完了した後、自機が省電力モードに移行すると共に、第1の通信部の通信制御モードが通常制御モードに切り替えられる。そして、該通常制御モードに切り替えられた際に、要求パケットが第1の通信部に保持されている場合、復帰指示が第2の通信部へ出力され、自機が待機モードに復帰する。従って、移行処理中に要求パケットが受信された場合、自機が省電力モードに移行するタイミングを見計らって、復帰指示を出力し、自機を待機モードに復帰させることができる。言いかえれば、移行処理が開始される際に切替指示が出力されてから、移行処理が完了した後に切替指示が出力されるまでの間に受信された要求パケットを保持し、移行処理完了後の切替指示が出力された後、直ぐに、復帰指示を出力することが可能となる。
【0018】
本発明に係る画像処理装置は、上記の通信装置と、画像処理を行う処理部とを備え、第1の通信部は、外部機器から画像処理の要求を行う要求パケットを受信し、処理部は、要求パケットに応じて画像処理を行うことを特徴とする。
【0019】
本発明に係る画像処理装置によれば、待機モードにおいて、外部機器から画像処理を要求する要求パケットが受信された場合、応答パケットが返信され、画像処理が行われる。一方、第2の通信部が移行処理を実行中に、要求パケットが受信された場合、該要求パケットが、第1の通信部によって保持される。そして、待機モードに復帰した後、保持されていた要求パケットが、第1の通信部から第2の通信部へ出力され、出力された要求パケットに対する応答パケットが、第2の通信部によって返信される。これにより、移行処理の実行中に受信された要求パケットに対する応答パケットを返信することができる。従って、省電力モードへの移行処理の実行中に外部機器から送信されるパケットのロスを防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、省電力モードへの移行処理の実行中に外部機器から送信されたパケットのロスを防止することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。まず、
図1を参照して、本実施形態に係る画像処理装置の一例として、MFP(Multifunction Peripheral)1について説明する。このMFP1には、本実施形態にかかる通信装置が搭載されている。
図1は、MFP1の構成を示すブロック図である。
【0023】
MFP1は、プリント、スキャン、FAX(ファクシミリ)、及び、IFAX(インターネットFAX)を含む画像処理を実行する複合機である。また、MFP1は、LAN(ローカルエリアネットワーク)90を介してパーソナルコンピュータ(PC)3から送信されるジョブ要求を受信し、上記の画像処理を実行するネットワーク複合機である。
【0024】
このMFP1は、省電力化のために、自機の電力モードを移行する機能を有し、ジョブ要求が所定時間なかった場合に、電力モードを画像処理が可能な待機モードから省電力モードへ移行する。省電力モードでは、画像処理を行う各処理部と、NIC14の一部に対する通電が停止される。この省電力モードでは、NIC14の一部に対する通電が停止されているので、MFP1は、ジョブ要求等のパケットを受信した場合は応答が不可能であるため、待機モードに復帰して応答を行う。
【0025】
続いて、MFP1を構成する各構成要素について説明する。MFP1は、上記の画像処理を実行するために、プリンタ10、スキャナ11、NCU(Network Control Unit)12、モデム13、NIC(Network Interface Card)14を備えている。
【0026】
プリンタ10は、本実施形態では、電子写真方式により印刷を行うプリンタである。スキャナ11は、CCD等によって構成され、原稿を光学的に読み取って画像データを生成する。また、スキャナ11によって読み取られた原稿の画像データが、プリンタ10によってプリントされることにより、コピーが行われる。NCU12は、モデム13と接続され、モデム13と公衆電話回線(PSTN)91との接続を制御する。MFP1では、このNCU12及びモデム13によって、FAXの送受信が行われる。
【0027】
NIC14は、LAN90を介して行われるデータの送受信を制御する。また、NIC14は、画像データが添付された電子メールをLAN90に接続されたインターネット経由で送信する。これにより、I−FAXの送信が行われる。I−FAXの受信は、NIC14が受信した電子メールから画像データを取得することにより行われる。取得された画像データは、プリンタ10により印刷してもよいし、パーソナルコンピュータ(PC)3等のディスプレイに表示するようにしてもよい。
【0028】
上記の各構成要素が画像処理を実行するために、MFP1は、コーディック15及び画像記憶部16を有している。コーディック15は、スキャナ11によって生成された画像データを符号化圧縮し、符号化圧縮されている画像データを復号化する。画像記憶部16は、コーディック15によって符号化圧縮された画像データ、FAXデータ、I−FAXデータ、PC3から送信されたプリントデータ等を記憶する。
【0029】
また、MFP1は、ユーザから操作を受け付けるための操作部17と、ユーザがPC3を利用して操作を行うためのWebサーバ18とを備えている。操作部17は、ユーザから操作を受け付ける各種のキーと、各種の情報を表示するディスプレイとを含んで構成されている。Webサーバ18は、PC3にインストールされたWebブラウザの要求に応じてTHHPタスクを実行する。これにより、各種の操作を行うためのWebページが、PC3のディスプレイに表示される。そして、ユーザからPC3を介して入力された操作が、NIC14を介してWebサーバ18によって受け付けられる。従って、ユーザは、PC3を利用して、ジョブ要求及び各種設定等の操作を行うことができる。このPC3は、特許請求の範囲に記載の外部機器に相当する。
【0030】
ユーザからPC3を介してジョブ要求及び各種設定等の操作を受け付けるために、NIC14は、PC3との間で各種パケットの送受信を行う。このNIC14は、バックエンド部21及びフロントエンド部22を有している。フロントエンド部22は、パケットの送受信のためのPHY回路を有し、受信したパケットをバックエンド部21へ出力する。バックエンド部21は、MAC回路を含んで構成され、待機モードでは、バックエンド部21がNIC14としての応答機能を有する。省電力モードでは、バックエンド部21に対する通電が停止され、バックエンド部21によるネットワーク応答が不可能になる。本実施形態では、バックエンド部21が特許請求の範囲に記載の第2の通信部として機能し、フロントエンド部22が第1の通信部として機能する。
【0031】
バックエンド部21は、物理的には、演算を行うCPU、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。バックエンド部21は、待機モードにおいて、フロントエンド部22によって受信されたパケットを入力し、入力されたパケットを解析する。
【0032】
PC3は、MFP1に対して各種の要求を行う要求パケットを送信する。要求パケットには、ジョブ要求を行う要求パケットが含まれる。このジョブ要求を行う要求パケットは、ユーザがPC3を介して、プリントジョブ、スキャンジョブ、FAXジョブ、I−FAXジョブ等のジョブをMFP1に対して要求する場合に送信される。ここでは、プリントジョブの要求が行われる場合を例にして説明する。このジョブ要求を、PCから行うプリントの要求という意味で、PCプリント要求という。
【0033】
PC3は、プリントデータ及び印刷設定データ等のデータパケットをMFP1へ送信するのに先立って、PCプリント要求をMFP1に送信する。このPCプリント要求は、プリントデータを受信する9100番ポートを指定するSYNパケットである。SYNパケットは、TCP/IPにおいてデータを送信するために、セッションの確立を要求するパケットである。すなわち、9100番ポートを指定するSYNパケットは、セッションの確立及びプリントデータの送信の許可を要求するパケットであり、要求パケットとして機能する。
【0034】
バックエンド部21は、入力したPCプリント要求を解析し、セッションの確立を許可するSYN/ACKパケットを返信する。バックエンド部21は、返信するSYN/ACKパケットのウインドウサイズを所定以上の値にすることにより、プリントデータの送信を許可する。このウインドウサイズが所定以上の値に設定されたSYN/ACKパケットは、PC3から送信されたPCプリント要求(要求パケット)の要求を満たすパケットであり、応答パケットとして機能する。
【0035】
バックエンド部21が、応答パケットをフロントエンド部22へ出力し、フロントエンド部22が応答パケットをPC3に返信する。応答パケットが返信された後、ACKパケットがPC3からMFP1へ送信され、MFP1とPC3との間でセッションが確立される。すなわち、TCP/IPのスリー・ウェイ・ハンドシェイクにより、MFP1とPC3との間でセッションが確立される。セッションが確立された後、プリントデータ及び印刷設定データを含むデータパケットがMFP1へ送信される。このデータパケットに基づいて、プリンタ10がプリントジョブを実行する。このため、プリンタ10は、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0036】
スキャンジョブ、FAXジョブ、I−FAXジョブの要求が行われる場合もプリントジョブと同様に、PCスキャン要求、PC−FAX要求、又はPC−IFAX要求として、それぞれ定められたポートを指定したSYNパケットが、PC3からMFP1に送信される。そして、バックエンド部21がこの要求パケットに対して応答パケットを返信した後、セッションが確立され、データパケットが、PC3からMFP1へ送信される。
【0037】
そして、このデータパケットに基づいて、スキャンジョブ、FAXジョブ、又はI−FAXジョブが、スキャナ11、NCU12、モデム13、NIC14によって実行される。スキャナ11は、スキャンジョブを行うので、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。NCU12及びモデム13が、FAXジョブを行うので、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。また、NIC14が、I−FAXジョブを行うので、特許請求の範囲に記載の処理部として機能する。
【0038】
また、要求パケットには、上記のジョブを要求する要求パケットの他、SNMPパケット、ICMPパケット、ARPパケット等がある。SNMPパケットは、SNMP(Simple Network Management Protocol)によって、MFP1のステータス情報を要求するパケットである。ステータス情報は、ジョブの蓄積状況、用紙カセット内の用紙の有無、トナーの有無等を含む情報である。バックエンド部21は、SNMPパケットが入力された場合、応答パケットとして、要求されたステータス情報を含むパケットを返信する。
【0039】
ICMPパケットは、ICMP(Internet Control Message Protocol)によって、接続状況を確認するために相手からの応答を要求するパケットである。バックエンド部21は、ICMPパケットが入力された場合、応答パケットとして、要求された接続情報を含むパケットを返信する。
【0040】
ARPパケットは、ARP(Address Resolution Protocol)によって、MACアドレスを問い合わせるために応答を要求するパケットである。バックエンド部21は、ARPパケットが入力された場合、応答パケットとして、自機のAMCアドレスを含むパケットを返信する。
【0041】
上述したネットワーク応答を行うバックエンド部21は、省電力モードにおいては、通電が停止される。これにより、省電力化を図ることができる。その一方、バックエンド部21は、ネットワーク応答を行うことができない状態となるため、省電力モードでは、フロントエンド部22が機能する。
【0042】
フロントエンド部22は、物理的には、演算を行うCPU、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。このフロントエンド部22は、省電力化を実現するために、省電力モードにおけるバックエンド部21の代理として機能するので、消費電力及びコストを抑えるために、比較的スペックの低いCPU、ROM、RAMを利用している。
【0043】
このため、フロントエンド部22の通信機能は、バックエンド部21より制限されており、フロントエンド部22は、一部の要求パケットに対して代理応答することができない。本実施形態のフロントエンド部22による代理応答が可能な要求パケットは、SNMPパケット、ICMPパケット、及びARPパケット等である。代理応答が不可能な要求パケットは、ジョブ要求等である。
【0044】
本実施形態のフロントエンド部22は、要求パケットに対して代理応答するために、判断部221及び代理応答部222を備える。判断部221は、代理応答が可能か否か、すなわち、応答パケットの返信が可能か否かを判断する。代理応答部222は、判断部221によって代理応答が可能と判断された場合に、応答パケットを返信する。
【0045】
本実施形態では、代理応答部222は、予め、待機モードにおいて、バックエンド部21によって生成された応答パケットを要求パケットと対応付けて、代理応答情報として記憶する。代理応答情報として記憶されるパケットには、SNMPパケット、ICMPパケット、及びARPパケット等が含まれる。判断部221は、省電力モードに移行した後に、パケットを受信した場合、代理応答情報に基づいて、代理応答可能か否かを判断する。
【0046】
具体的には、判断部221は、受信したパケットが代理応答情報として記憶されたいずれかの要求パケットと一致する場合は、応答可能と判断する。一方、判断部221は、受信したパケットが代理応答情報として記憶されたいずれの要求パケットとも一致しない場合は、応答不可能と判断する。例えば、判断部221は、要求パケットのCRC(Cyclic Redundancy Check)値を演算し、代理応答情報として記憶された各要求パケットのCRC値と比較する。これにより、判断部221は、受信したパケットが代理応答情報として記憶されたいずれかの要求パケットと一致するか否かを判断する。
【0047】
判断部221が応答可能と判断した場合、代理応答部222は、受信したパケットと一致した要求パケットに対応付けられた応答パケットを返信する。判断部221が応答不可能と判断した場合、フロントエンド部22が備える復帰指示出力部223は、待機モードへ自機を復帰させるための復帰指示を出力する。これにより、バックエンド部21を含む各構成要素へ通電が開始され、自機が待機モードに復帰する。フロントエンド部22は、バックエンド部21が待機モードに復帰、すなわち起動した後、受信した要求パケットをバックエンド部21へ出力する。復帰したバックエンド部21は、フロントエンド部22から出力された要求パケットに対する応答パケットを生成し、返信する。
【0048】
フロントエンド部22は、PCプリント要求等のジョブ要求を代理応答情報として記憶しないので、省電力モードにおいて、ジョブ要求を受信した場合は、応答不可能と判断する。このため、ジョブ要求が受信された場合は、復帰指示が出力され、自機が待機モードに復帰する。そして、ジョブが実行される。
【0049】
MFP1は、各構成要素を統合的に制御するための制御部19を備える。制御部19は、物理的には、演算を行うCPU、CPUに各処理を実行させるためのプログラム等を記憶するROM、演算結果などの各種データを一時的に記憶するRAM等により構成されている。この制御部19は、機能的な構成要素として、電力制御部20を備える。
【0050】
電力制御部20は、MFP1の構成要素に対する通電を制御することにより、自機の電力モードを移行させる。この電力制御部20は、特許請求の範囲に記載の電力制御部として機能する。MFP1に電源が投入されると、電力制御部20は、電力モードを待機モードとし、MFP1の全ての構成要素に対して電力を供給する。待機モードは、全てのジョブが実行可能な状態である。
【0051】
利用が所定時間なされなかった場合、電力制御部20は、電力モードを省電力モードに移行し、NCU12の一部及びフロントエンド部22を除く各構成要素に対する通電を停止する。NCU12の一部に電力を供給するのは、FAXの発呼を検出するためである。NCU12は、省電力モードにおいて、FAXの発呼を検出した場合、復帰指示を出力する。また、上述したように、フロントエンド部22は、省電力モードにおいて、応答不可能な要求パケットを受信した場合、復帰指示を出力する。電力制御部20は、省電力モードにおいて、NCU12又はフロントエンド部22から復帰指示が出力された場合に、全ての構成要素に通電を開始して、電力モードを待機モードに復帰させる。
【0052】
待機モードでは、再び、利用が所定時間(例えば15分間)なされなかった場合、電力モードが再び省電力モードに移行する。このように、通常、MFP1は、一日のうちに、待機モードから省電力モードへの移行を何度か行う。本実施形態では、待機モードから省電力モードへ移行する際に、バックエンド部21が有するバックアップ用のDRAMを除いてバックエンド部21の通電が停止される。バックアップ用のDRAMには、セルフリフレッシュを行うために電力が供給されるが、消費電力量は、比較的小さく、省電力化を実現することができる。
【0053】
バックエンド部21は、通電が停止される前に、待機モードから省電力モードへの移行処理を行う必要がある。移行処理にはシャットダウン処理が含まれる。このシャットダウン処理は、省電力モードに移行した後、次に待機モードへ復帰する際に、その復帰を正常かつ素早く行うための処理である。本実施形態にかかるバックエンド部21が行うシャットダウン処理には、ファイルを閉じて、データをバックアップ用のDRAMに書き込む等の処理が含まれる。本実施形態では、バックアップ用のDRAMは、DDRメモリであり、データの転送速度が比較的早いので、移行処理にかかる時間は、1秒〜2秒程度である。
【0054】
バックエンド部21は、この移行処理の実行中には、ネットワーク応答を行うことができない。そこで、移行処理の実行中にPC3から要求パケットが送信された場合に対応するため、バックエンド部21は、移行処理の実行中に、フロントエンド部22を機能させる。
【0055】
ここでは、上述した省電力モードにおけるフロントエンド部22の制御モードを通常制御モードと言い、移行処理の実行中における制御モードを移行制御モードという。バックエンド部21は、移行処理を開始する際に、フロントエンド部22の通信制御モードを移行制御モードへ切り替えさせるための切替指示を行う。フロントエンド部22は、移行制御モードへ切り替えさせるための切替指示がバックエンド部21から出力された場合、通信制御モードを移行制御モードに切り替える。これにより、フロントエンド部22は、移行処理の実行中に、移行制御モードで通信制御を行う。
【0056】
フロントエンド部22の判断部221は、移行制御モードにおいて、すなわち、バックエンド21による移行処理の実行中に、パケットを検出した場合、フロントエンド部22において応答可能か否かを判断する。この応答可能か否かの判断は、省電力モードにおける上述した判断と同様であり、フロントエンド部22は、受信したパケットと一致する要求パケットが代理応答情報に記憶されていれば、応答可能と判断し、記憶されていなければ、応答不可能と判断する。
【0057】
判断部221が応答可能と判断した場合、代理応答部222は、省電力モードの場合と同様な方法で応答パケットを返信する。すなわち、代理応答情報として記憶された応答パケットを返信する。判断部221が応答不可能と判断した場合、移行処理を実行中のバックエンド部21を復帰させることはできないため、フロントエンド部22が有するパケット保持224が、要求パケットを保持する。すなわち、パケット保持部224が要求パケットを記憶する。代理応答部222は、ジョブ要求を代理応答情報として記憶しないので、ジョブ要求を受信した場合は、応答不可能と判断され、パケット保持部224が、ジョブ要求を保持する。
【0058】
バックエンド部21は、移行処理が完了した後、フロントエンド部22の通信制御を移行制御モードから通常制御モードへ切り換えるための切替指示を行う。フロントエンド部22は、通常制御モードへ切り替えさせるための切替指示がバックエンド部21から出力された場合、通信制御モードを通常制御モードに切り替える。これにより、省電力モードでは、フロントエンド部22の通信制御モードが通常制御モードとなる。パケット保持部224によって要求パケットが保持された状態で移行処理が完了した場合、フロントエンド部22の復帰指示部223は、復帰指示を出力する。この復帰指示により、MFP1が待機モードへ復帰する。待機モードへの復帰は、数100msec程度と比較的早く行うことができる。
【0059】
待機モードに復帰後、パケット保持部224は、保持している要求パケットがある場合、バックエンド部21へ出力する。そして、復帰したバックエンド部21が、出力された要求パケットに対する応答パケットを返信し、その後、ジョブが実行される。
【0060】
引き続いて、MFP1の動作について説明する。
図2を参照して、バックエンド部21による移行処理について説明する。
図2は、バックエンド部21による移行処理を示すフロー図である。この移行処理は、バックエンド部21が、制御部19から省電力モードへの移行指示を入力した際に行われる。
【0061】
まず、ステップS101では、フロントエンド部22の通信制御モードを移行制御モードに切り替えるように指示する切替指示が、バックエンド部21からフロントエンド部22へ出力される。続くステップS102では、省電力モードへ移行可能か否かが判断される。例えば、バックエンド部21において、通信処理、又は、データのバックアップ処理等が実行されている場合は、省電力モードへの移行が不可能と判断される。この場合、ステップS103において、省電力モードへの移行処理が中止され、移行処理が終了する。
【0062】
一方、省電力モードへの移行が可能と判断された場合、次に、ステップS104の処理が行われる。ステップS104では、バックエンド部21のシャットダウン処理が行われる。ステップS105では、シャットダウン処理が完了したか否かの判断が、シャットダウン処理が完了するまで行われる。シャットダウン処理が完了した後、ステップS106の処理が行われる。
【0063】
ステップS106では、フロントエンド部22の通信制御モードを通常制御モードに切り替えるように指示する切替指示が、バックエンド部21からフロントエンド部22へ出力される。その後、ステップS107では、バックエンド部21への通電が停止され、省電力モードへの移行が完了する。以上の処理を行うことにより、バックエンド部21による移行処理の実行中は、フロントエンド部22の通信制御モードを移行制御モードに切り替えることができる。
【0064】
引き続いて、MFP1による電力モードに応じた応答処理の処理手順について説明する。まず、
図3を参照して、移行処理の実行中にフロントエンド部22が応答不可能な要求パケットを受信した場合の応答処理について説明する。
図3は、移行処理の実行中にフロントエンド部が応答不可能な要求パケットを受信した場合の応答処理を示すシーケンス図である。
【0065】
まず、ステップS111では、省電力モードへの移行指示が、バックエンド部21へ入力される。これにより、バックエンド部21の移行処理が開始される。ステップS112では、移行制御モードへの切替指示が、バックエンド部21からフロントエンド部22へ出力される。続く、ステップS113では、了解した旨の応答が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。これにより、フロントエンド部22の通信制御モードが、移行制御モードに切り替えられる。その後、ステップS114では、バックエンド部21において、シャットダウン処理が行われる。
【0066】
移行処理の実行中に、SNMPパケットがPC3からMFP1へ送信された場合(S115)、フロントエンド部22において、受信した要求パケット(SNMPパケット)が応答可能な要求パケットか否かが判断される。SNMPパケットは応答可能なパケットであるため、続くステップS116では、応答パケットが、フロントエンド部22からPC3へ返信される。すなわち、代理応答が実行される。
【0067】
また、移行処理の実行中に、PCプリント要求が、PC3からMFP1へ送信された場合(S117)、フロントエンド部22において、受信された要求パケット(PCプリント要求)が応答可能な要求パケットか否かが判断される。PCプリント要求は応答不可能なパケットであるため、続くステップS118では、受信した要求パケット(PCプリント要求)が、保持される。
【0068】
一方、バックエンド部21のシャットダウン処理が完了した後、ステップS119では、通常制御モードへの切替指示が、バックエンド部21からフロントエンド部22へ出力される。続く、ステップS120では、了解した旨の応答が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。これにより、フロントエンド部22の通信制御モードが、通常制御モードに切り替えられる。そして、ステップS121では、省電力モードへの移行が完了する。
【0069】
一方、S122において、フロントエンド部22では、要求パケットを保持した状態で移行処理が完了したと判断される。この場合、続くステップS123では、復帰指示が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。そして、ステップS124では、バックエンド部21に通電が開始され、自機が待機モードに復帰する。そして、ステップS125では、保持されていたPCプリント要求が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。続いて、ステップS126では、出力されたPCプリント要求に対する応答パケットが、バックエンド部21によって返信される。その後、プリントデータがMFP1に送信され、プリントジョブが実行される。
【0070】
次に、
図4を参照して、省電力モードにおいてフロントエンド部22が応答不可能な要求パケットを受信した場合の応答処理について説明する。
図4は、省電力モードにおいてフロントエンド部が応答不可能な要求パケットを受信した場合の応答処理を示すシーケンス図である。
【0071】
ステップS131〜ステップS136では、上述したステップS111〜116と同様な処理が行われるので、説明を省略する。このシーケンスでは、移行処理の実行中には、応答不可能な要求パケットが受信されず、保持された要求パケットがない状態で、移行処理が完了する。そして、ステップS137では、通常制御モードへの切替指示が、バックエンド部21からフロントエンド部22へ出力される。続く、ステップS138では、了解した旨の応答が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。これにより、フロントエンド部22の通信制御モードが、通常制御モードに切り替えられる。そして、ステップS139では、省電力モードへの移行が完了する。
【0072】
省電力モードへ移行した後、SNMPパケット等の代理可能なパケットがPC3からMFP1へ送信された場合(S140)、続くステップS141では、応答パケットが、フロントエンド部22からPC3へ返信される。すなわち、代理応答が実行される。次に、代理不可能なパケットが受信された場合(S142)、続くステップS143では、復帰指示が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。
【0073】
そして、ステップS144では、バックエンド部21に通電が開始され、自機が待機モードに復帰する。そして、ステップS145では、保持されていたPCプリント要求が、フロントエンド部22からバックエンド部21へ出力される。続いて、ステップS146では、出力されたPCプリント要求に対する応答パケットが、バックエンド部21によって返信される。その後、プリントデータがMFP1に送信され、プリントジョブが実行される。
【0074】
以上説明した本実施形態に係るMFP1によれば、移行処理の実行中に、応答不可能な要求パケットが受信された場合、受信された要求パケットがフロントエンド部22によって保持される。そして、待機モードに復帰した後、保持されていた要求パケットが、バックエンド部21へ出力される。そして、出力された要求パケットに対する応答パケットが、バックエンド部21によって返信される。これにより、移行処理の実行中に受信された要求パケットに対する応答パケットを返信することができる。従って、省電力モードへの移行処理の実行中に外部機器から送信されるパケットのロスを防止することが可能となる。
【0075】
また、要求パケットが保持された状態で、移行処理が完了した場合、移行処理完了後の省電力モードにおいて復帰指示が出力され、自機が省電力モードから待機モードに復帰する。これにより、移行処理の実行中に要求パケットが受信された場合、移行処理の完了後、直ちに自機を待機モードに復帰させ、要求パケットに対して応答することが可能となる。
【0076】
一方、移行処理の実行中に、フロントエンド部22によって応答可能な要求パケットが受信された場合、応答パケットが返信される。これにより、フロントエンド部22によって応答可能な要求パケットに対しては、移行処理の実行中であっても応答することができる。
【0077】
また、省電力モードでは、フロントエンド部22によって応答可能な要求パケットが受信された場合は、応答パケットが返信される。これにより、フロントエンド部22によって応答可能な要求パケットに対しては、省電力モードであってもバックエンド部21を復帰させずに応答することができる。一方、フロントエンド部22によって応答不可能な要求パケットが受信された場合は、復帰指示が出力され、自機を待機モードに復帰させる。これにより、省電力モードにおいて、フロントエンド部22によって応答不可能な要求パケットが受信された場合であっても、バックエンド部21を起動させて応答パケットを返信することができる。
【0078】
更に、本実施形態では、バックエンド部21が移行処理を開始する際に出力する切替指示により、フロントエンド部22の通信制御モードが移行制御モードに切り替えられ、移行処理中に受信された要求パケットがフロントエンド部22によって保持される。そして、バックエンド部21が移行処理の完了後に出力する切替指示により、フロントエンド部22の通信制御モードが通常制御モードに切り替えられ、要求パケットが保持されている場合、復帰指示が出力される。従って、移行処理中に要求パケットが受信された場合、自機が省電力モードに完全に移行するタイミングを見計らって、復帰指示を出力し、自機を待機モードに復帰させることが可能となる。言いかえれば、移行処理が開始される際に切替指示が出力されてから、移行処理完了後の切替指示が出力されるまでの間に受信された要求パケットが保持され、自機が省電力モードに完全に移行した後、直ぐに、復帰指示を出力することが可能となる。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。上記実施形態では、フロントエンド部22が、SNMPパケット、ICMPパケット、ARPパケット等の一部の要求パケットに対して応答可能な構成としたが、これに限られない。フロントエンド部22が、要求パケットに対して応答する機能を有していなくてもよい。この場合、移行制御の実行中に、フロントエンド部22が、要求パケットを受信した際には、全ての要求パケットを保持するように構成してもよい。また、上記実施形態では、本発明に係る通信装置が、MFP1に適用された場合について説明したがこれに限られない。