特許第5779995号(P5779995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5779995
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】苗移植機
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   A01C11/02 313Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-122318(P2011-122318)
(22)【出願日】2011年5月31日
(65)【公開番号】特開2012-249535(P2012-249535A)
(43)【公開日】2012年12月20日
【審査請求日】2014年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山崎 仁史
(72)【発明者】
【氏名】名本 学
(72)【発明者】
【氏名】石井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】奥平 雄右
【審査官】 木村 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−289399(JP,A)
【文献】 特開2003−310009(JP,A)
【文献】 特開2005−143374(JP,A)
【文献】 特開平07−322732(JP,A)
【文献】 特開平09−172826(JP,A)
【文献】 特開2000−312508(JP,A)
【文献】 特開2005−022529(JP,A)
【文献】 特開平10−006805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(40)の前部にミッションケース(2)を設け、該車体(40)の後部に苗を積載する苗載せ部材(28)を設け、該苗載せ部材(28)に積載した苗を圃場に植え付ける植付装置(30)を設け、該植付装置(30)の苗を植え付ける間隔を調節する株間調節機構(S)を設けた苗移植機において、
株間調節機構(S)は、前記ミッションケース(2)に門型の支持部材(3)を設け、該門型の支持部材(3)の左右方向略中央部で且つ上部に調節回動軸(8)を介して株間操作部材(7)を設け、該株間操作部材(7)の前側端部にフック部(13)を形成し、該フック部(13)にアーム軸(15)と共に回動する回動部材(14)を係合させて設け、前記株間操作部材(7)を操作して回動部材(14)とアーム軸(15)を回動させると前記植付装置(30)への伝動速を切り替える切替連動部材(16)が回動する構成とし、
該回動部材(14)を調節回動軸(8)よりも機体前側に設け、前記調節回動軸(8)よりも機体後側に前記株間操作部材(7)の操作部を形成すると共に、前記支持部材(3)の調節回動軸(8)よりも後部に延設部(4)を形成したことを特徴とする苗移植機。
【請求項2】
前記車体(40)の走行速度の副変速機構を路上走行速または植付作業速に切り替える作業操作部材(10)を設け、前記延設部(4)の上部に作業者が機体上で足を乗せるステップ部(5)を設け、該作業操作部材(10)に繋がる作業変更部材(12)を前記延設部(4)の下部を通過させて配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機。
【請求項3】
前記調節回動軸(8)よりも後側位置に向けて前記株間操作部材(7)を屈曲させると共に、該株間操作部材(7)の操作部を後上り傾斜姿勢としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機。
【請求項4】
前記株間操作部材(7)で切り替える株間を変更する補助株間操作部材(9)を設け、該補助株間操作部材(9)の操作方向を前記株間操作部材(7)の操作方向と同じ方向となる構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、苗移植機が圃場に植え付ける苗の前後間隔、即ち株間の変更操作機構に関するものであり、作業条件に合致する株間を作業者が容易に調節できるものである。
【背景技術】
【0002】
苗移植機の伝動装置を構成するミッションケースや、このミッションケースから後側の植付装置に向けて取り出されるPTO軸等の伝動機構部に、変速ギヤ及び切替ギヤを設けて、機体の走行伝動速に比べて植付装置に対する伝動速を高速または低速に切り替え、苗の植付条に沿った前後方向の株間の間隔を「広」、または「狭」に切替選択する技術が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−246409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現行の苗移植機の株間調節機構は、回動操作ピンの上部にツマミを設け、この回動操作ピンを直接回転させて株間を変更する構成となっているため、この回動操作ピンの操作には大きい操作力を必要とするため、作業者に大きな労力を費やさせる問題がある。
【0005】
また、この回動操作ピンがボンネット内に配置されているため、回動操作ピンの操作位置の際には周辺に配置された多くの部材を避けて操作せねばならないため、操作性が悪くなる問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、車体(40)の前部にミッションケース(2)を設け、該車体(40)の後部に苗を積載する苗載せ部材(28)を設け、該苗載せ部材(28)に積載した苗を圃場に植え付ける植付装置(30)を設け、該植付装置(30)の苗を植え付ける間隔を調節する株間調節機構(S)を設けた苗移植機において、 該株間調節機構(S)は、前記ミッションケース(2)に門型の支持部材(3)を設け、該門型の支持部材(3)の左右方向略中央部で且つ上部に調節回動軸(8)を介して株間操作部材(7)を設け、該株間操作部材(7)の前側端部にフック部(13)を形成し、該フック部(13)にアーム軸(15)と共に回動する回動部材(14)を係合させて設け、前記株間操作部材(7)を操作して回動部材(14)とアーム軸(15)を回動させると前記植付装置(30)への伝動速を切り替える切替連動部材(16)が回動する構成とし、該回動部材(14)を調節回動軸(8)よりも機体前側に設け、前記調節回動軸(8)よりも機体後側に前記株間操作部材(7)の操作部を形成すると共に、前記支持部材(3)の調節回動軸(8)よりも後部に延設部(4)を形成したことを特徴とする苗移植機とする。
【0008】
苗を植え付ける際の株間を設定及び変更する株間操作部材(7)や補助株間操作部材(9)は操作頻度の少ないものであるため、作業者の運転操作の邪魔になりにくいステップ部(5)の前端部に配置している。
【0009】
そして、該株間操作部材(7)を調節回動軸(8)を回動支点として回動させると株間操作部材(7)の前端部のフック部(13)に係合する回動部材(14)とアーム軸(15)が回動し、植付装置(30)への伝動速を切り替える切替連動部材(16)を操作する構成としている。この変更操作は、植付苗の前後間隔を複数段階に亘って切替可能に構成している。
さらに、前記株間調節部材(7)は、支持部材(3)の上側に調節回動軸(8)を介して支持されているので、該調節回動軸(8)を回動支点として株間調節部材(7)を左右方向に回動操作すると、植付部(6)への伝動機構が切り替えられる。この支持部材(3)はミッションケース(2)の上側に左右方向に門形状で配置されるものとすることにより、作業者の足元の操作の邪魔にならない配置とすることができる。
また、支持部材(3)の調節回動軸(8)よりも後部に延設部(4)を形成したことにより、支持部材(3)の剛性が向上するので、株間調節部材(7)の操作荷重が軽減される。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記車体(40)の副変速機構を路上走行速または植付作業速に切り替える作業操作部材(10)を設け、前記延設部(4)の上部に作業者が機体上で足を乗せるステップ部(5)を設け、該作業操作部材(10)に繋がる作業変更部材(12)を前記延設部(4)の下部を通過させて配置したことを特徴とする請求項1記載の苗移植機とする。
【0011】
上記構成により、作業操作部材(10)を操作することによって、前記ミッションケース(2)内の走行伝動系の機構を路上走行速または植付作業速に変速操作することができるので、路上等を高速走行する際は高速域に変速し、植付部(6)を土壌面に滑走させ植付作業を行う際は低速域に変速するように切替操作することができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、前記調節回動軸(8)よりも後側位置に向けて前記株間操作部材(7)を屈曲させると共に、該株間操作部材(7)の操作部を後上り傾斜姿勢としたことを特徴とする請求項1または2記載の苗移植機とする。
【0013】
【0014】
請求項4に記載の発明は、前記株間操作部材(7)で切り替える株間を変更する補助株間操作部材(9)を設け、該補助株間操作部材(9)の操作方向を前記株間操作部材(7)の操作方向と同じ方向となる構成としたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の苗移植機とする。
【0015】
上記構成により、植付苗の前後間隔がいっそう長く、植付作業一工程当たりの苗の消費数が減少する植付作業、所謂「疎植」作業を行う際には、株間操作部材(7)の横側近傍位置に配置する補助株間操作部材(9)を操作することにより、株間が疎植作業に対応した間隔で切換可能となる。
【0016】
また、株間調節部材(7)と補助株間調節部材(9)を左右方向に配置することにより、株間の変更調節操作の際に互いに干渉し合わない位置に配置されるため、切替操作が行い易くなる。
【0017】
(削除)
【0018】
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、植付装置(30)への伝動速を切り替える切替アクチュエータ(16)を回動させる回動部材(14)とアーム軸(15)を操作する株間調節部材(7)を前後方向に長く形成したことにより、株間調節部材(7)の操作側を他の部材に干渉せず操作しやすい位置に配置することができるので、株間調節部材(7)の操作性が向上する。
また、株間調節部材(7)の調節回動軸(8)を支持部材(3)の左右方向略中央部に配置し、回動部材(14)を調節回動軸(8)よりも機体前側に設けると共に、株間調節部材(7)の操作部を調節回動軸(8)よりも機体後側に形成することによって、操作部から株間操作部材(7)までの距離を長く取ることができるので、株間操作部材(7)の操作に要する力が軽減されるため、株間の調節に要する労力が軽減される。
また、支持部材(3)を門型に形成し、調節回動軸(8)よりも後部に延設部(4)を形成したことにより、支持部材(3)の剛性が向上するので、株間調節部材(7)の操作荷重が軽減され、株間調節機構(S)の操作性が向上する。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加えて、支持部材(3)及び延設部(4)の上部にステップ分(5)を配置したことにより、作業者がステップ部(5)に乗る際の荷重への耐久性が向上するので、荷重によりステップ(5)が動くことが防止され、機体上での作業性が向上する。
【0021】
また、作業操作部材(10)に繋がる作業変更部材(12)を、延設部(4)の下部を通過させて配置したことにより、作業操作部材(10)の操作に連動した作業変更部材(12)の上下動を延設部(4)が規制するため、作業変更部材(12)がステップ部(5)の下面に接触することを防止できるので、ステップ部(5)及び作業操作部材(10)が接触時の摩擦で消耗・破損することが防止され、耐久性が向上する。
さらに、作業操作部材(10)とステップ部(5)の接触が防止されることにより、接触時に生じる異音の発生を防止することができるので、作業者が不快さを感じることが防止され、作業者の労力が軽減される。
【0022】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、調節回動軸(8)よりも後位置に向けて株間操作部材(7)を屈曲させ、株間操作部材(7)の操作部を後上り傾斜姿勢としたことにより、株間操作部材(7)の操作部側の下方に空間部を形成することができるので、ステップ部(5)の着脱が容易になり、メンテナンス性が向上する。
【0023】
【0024】
【0025】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、株間操作部材(7)の操作方向と補助株間操作部材(9)の操作方向を同じ方向としたことにより、株間の切替操作を行なう際に株間操作部材(7)と補助株間操作部材(9)が干渉することを防止できるので、株間調節機構(S)の操作性が向上する。
また、操作方向が同じであることにより、株間の調節を行なう際の操作手順が簡単になるので、作業能率が向上する。
【0026】
(削除)
【0027】
【0028】
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】株間変更レバー部の側面図
図2】株間変更レバー部の平面図
図3】運転フロア部の側面図
図4】苗移植機の側面図
図5】苗移植機の平面図
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1図5で示すとおり、本件構成の苗移植機は、車体40の前部左右に、ステアリングポスト1上に設けたステアリングハンドル18の操舵によって操向するフロントアスルハウジング19,19をそれぞれ設け、該フロントアクスルハウジング19,19にそれぞれ前輪41を駆動回転可能に装着する。
【0031】
そして、車体40の後部の左右両側にリヤアクスルハウジング20,20をそれぞれ設け、リヤアクスルハウジング20,20の車軸にそれぞれ後輪42,42を装着する。
また、前記車体40の上部中央位置に、作業者が着座する運転シート43を設け、該運転シート43の下側に走行や植付作業を行う駆動力を発生させるエンジン44を搭載し、苗移植機を走行する乗用四輪走行形態とする。
【0032】
該車体40の後方には、平行リンク21を介して多条植形態(本件の図5では4条の苗移植機を開示しているが、4条以外の条数にも対応可能とする。)の植付部6を連結して、前記車体40側からPTO軸22を経て伝動して植付作動する構成としている。
【0033】
そして、前記エンジン44の上側部を覆うシートカバー46は、前側の運転フロア5及び左右両側のサイドフロア45から上方へ高く膨出形成されるものとし、該シートカバー46上面に、前記運転シート43を設けている。前記サイドフロア45の前部は、ステアリングポスト1の両側部に亘って形成し、外側部に補助苗受台23を配置し、後部は運転シート43の後側部のリヤステップ24に連結して、運転者が上記運転フロア5の上側を前後に移動し易く形成している。
【0034】
前記植付部6は、苗植伝動ケースからなる苗植フレーム25の下側にセンタフロート26と左右のサイドフロート27,27を配置して、後部には後下り傾斜の苗タンク28を左右往復移動するように設け、後側下部には各苗タンク28の苗取口29から進入し、該苗タンク29から苗を分離保持して圃場に植え付ける植付装置30を配置する。上記のセンタフロート26、及びサイドフロート27,27は左右一定間隔の苗植付位置の土壌面を滑走均平するものであり、各均平跡の土壌面に植付装置30による一定の植付軌跡線Dの作動で苗を植え付ける多条植形態に構成している。
【0035】
また、前記車体40のリヤフレーム31に連結される平行リンク21は、昇降シリンダ32によって昇降制御されており、前記センタフロート26及びサイドフロート27,27が略一定の圧力で土壌面を滑走均平するように構成している。前記リヤフレーム31上に施肥装置33を設けて、該施肥装置33から繰り出される肥料を各条毎に供給ホース34を介して植付装置30の苗植付位置の周囲近傍に供給する。
【0036】
そして、前記センタフロート26及びサイドフロート27,27の前側には、均平前の土壌面を予め代掻する整地センタロータ35及び左右のサイドロータ36,36を設け、前記リヤアクスルハウジング20,20の伝動機構から連動軸37,37を介してそれぞれ伝動回転する構成とする。
【0037】
前記シートカバー46下のエンジンルーム47の底部にはエンジン44を配置し、該エンジン44の前方の油圧無段変速装置48の入力軸49との間にベルト50を無端状に巻回して伝動する。該油圧無段変速装置48はミッションケース2の上側に設けられ、該ミッションケース2の入力軸により伝動するものである。
【0038】
さらに、前記ミッションケース2の横側から、前記フロントアクスルハウジング19,19の伝動機構を介して前輪41,41を伝動回転し、後側の伝動軸51,51を介してリヤアクスルハウジング20,20の後輪42,42を伝動すると共に、PTO連動軸52を介して前記PTO軸22を回転させる構成とする。
【0039】
前記ステアリングポスト1は、運転シート43の前側に形成の運転フロア5前部に立設されて、前側面をフロントカバー53で覆い、後側部をステアリングポストカバー17で覆う形態である。該ステアリングポスト1及び運転フロア5の下側にミッションケース2及び油圧無段変速装置48が配置され、前記ミッションケース2の左右両側に突出のフロントアクスルハウジング19,19の側端部に前輪41,41を軸装する操向ケースが、前記ステアリングハンドル18の操作によって操向される構成である。
【0040】
前記ミッションケース2の入力軸部に出力される油圧無段変速装置48は、中立位置から前進変速位置、及び後進高速位置へ無段変速操作できる主変速装置を構成する。そして、この主変速装置の変速操作は、右足操作のアクセルペダル54によってトラニオン軸を連動して無段変速操作できる。前記油圧無段変速装置48の出力軸からミッションケース2の入力軸への伝動は、前輪41、後輪42へ連動の走行伝動系と、PTO連動軸52からPTO22を経て植付部6を伝動する苗植伝動系とに分かれて伝動する形態であり、この走行伝動系に前記副変速レバー10で操作の副変速装置を設けている。
【0041】
また、前記植付部6を伝動する植付伝動系に、前記株間変更レバー7の操作で苗植伝動速を通常速と疎植速に切り替えて、苗を植え付ける株間を変更する構成としている。
そして、この植付伝動系には、株間副変更レバー9の操作で、前記通常速、及び疎植速の各苗植伝動速を更に細かく副変速して伝動させる苗植副変速装置、又は株間副変更装置Bを設けている。これら株間変更機構S、及び株間副変更装置Tを経てPTO連動軸52へ伝動回転される。従って、これら株間変更機構S、又は株間副変更装置Tの変速操作によって、走行車輪41、42による走行速に対する植付部6の苗植伝動速を変更して、苗植付条方向の植付株間隔を粗、密に変更、調節することができる形態である。
【0042】
ここにおいて、ステアリングポスト1の後側下部のミッションケース2上側部に、左右方向にまたぐように門形状の支持ブラケット3を取付けて、この支持ブラケット3の上側面部4を車体の運転フロア5と略同高さに形成し、この支持ブラケット3の上側面部4に、植付部6の伝動速を変更操作して苗植付株間間隔を変更する株間変更レバー7をレバー軸8周りに操作可能に設けた株間変更操作装置Sの構成とする。
【0043】
苗を植えつける株間を設定、変更して植付させるための株間変更レバー7や、株間副変更レバー9等は、苗の植付作業全体において操作頻度が少ない操作具であるため、運転者の足元の、運転操作の邪魔になり難い個所であるステアリングポスト1部の下部で且つ運転フロア5の前端部に位置して配置しており、前記株間変更レバー7をレバー軸8の周りに回動して、ミッションケース2内の植付部6へ伝動する苗植伝動機構を変更操作する。
【0044】
該変更操作は、圃場の一端部から他端部までを直線状に走行して苗を植え付ける作業、即ち一工程の植付作業時に圃場に植えられる苗の株数を、例えば「50株」と「60株」と「70株」といった、複数段階の間隔に切り替えるものである。一方、上記のような間隔の変更でなく、植付間隔を疎植間隔位値と通常植間隔に切替操作するときは、この株間変更レバー7の横側近くに配置の株間副変更レバー9を操作して、ミッションケース2内の植付部6への伝動機構を切替操作することにより、株間変更レバー7の操作による株間の変更量が切り替えられる。
【0045】
なお、疎植間隔位置に株間副変更レバー9を操作した場合、株間変更レバー7の切替操作を行うと、苗の株数は例えば、「37株」と「42株」と「47株」とに切り替えられる。
【0046】
前記株間変更レバー7は、支持ブラケット3の上側面部4上にレバー軸8で支持されていて、このレバー軸8の周りに左右方向へ回動操作することによって、苗植伝動機構を切替える。この支持ブラケット3はミッションケース2の上側に左右方向に門形状にわたって形成されるもので、株間変更レバー7の形態と共に適宜の仕様に設定して、ステアリングポスト1の下部のステアリングポストカバー17の内側に収納され易い形態として、運転者の足元部の邪魔にならないように構成することができる。しかも、このステアリングポスト1の下部に配置することによって、株間変更レバー7の操作を行い易くする。
【0047】
また、前記各間変更レバー7の横側下部近くに、この株間変更レバー7の操作で切替えられた株間変更の伝動速位置を更に副変速して株間間隔を変更する株間副変速レバー9を設ける。
【0048】
前記のように株間変更レバー7と株間副変更レバー9は、ステアリングポスト1の下部において、左右方向に配置されるため、株間の変更調節操作の粗、密調節関連の切替操作を行い易くする。この株間変更レバー7は先端把持部を上側へ屈曲させて運転フロア5の上側へ高く位置させて、運転者の足元の邪魔にならないように形成している。
【0049】
さらに、株間副変更レバー9は運転フロア5のフロア面と略動程度の高さ位置において左右回動操作できるように構成しているため、HSTペダル54や、ブレーキペダル等の踏込み操作等の邪魔になり難くしている。そして、これら株間変更レバー7と株間副変更レバー9は、上下段違いに設定しているため、左右回動操作状態において相互の干渉を防止することができ、左右方向に接近させて配置して、操作性を高めることができる。
【0050】
また、前記支持ブラケット3の下側で、ミッションケース2の上面との間に、走行伝動変速の副変速レバー10によって副変速シフター11を連動する連動ロッド12を位置させて設ける。
【0051】
前記株間変更レバー7は、支持ブラケット3の上側面部4上のレバー軸8周りに左右回動操作される。このステアリングポスト1の一側部に配置の副変速レバー10を操作することによって、前記ミッションケース2内の走行伝動系の副変速機構を変速操作して、路上等を高速走行するように高速域に変速したり、植付部6を土壌面に滑走させて低速域の苗植走行速で走行するように低速域に変速するように切替操作する。このとき、左右一側部の副変速レバー10と、これと反対側の副変速シフター11との間が、前記ミッションケース2の上面と支持ブラケット3の上側面部4との間隔部を横方向に通す連動ロッド12で連結するため、この連動ロッド12の作動されるスペースを正確に維持して、連動ロッド12の作動に抵抗力を与えないようにする。
【0052】
さらに、前記株間変更レバー7の先端部のフックピン13の係合によって左右方向へ回動される回動アーム14を、前後方向に傾斜するアーム軸15の周りに回動可能に支持し、このアーム軸15の下端部には、ミッションケース2の株間変更伝動速を切替連動する切替アクチュエータ16を設ける。
【0053】
前記株間変更するときは、株間変更レバー7を操作することによって、ミッションケース2内の植付部6へ伝動する伝動機構を主変速する。このとき株間変更レバー7をレバー軸8の周りに左右方向へ回動することによって、前端部のフックピン13で回動アーム14の長穴38に係合してアーム軸15周りに左右方向へ回動して、このアーム軸15、及び切替アクチュエータ16を、回動操作することができる。このアーム軸15を前後方向へ傾斜させて、上端側を後側のレバー軸8側へ接近させるようにして傾斜させているため、この株間変更レバー7の先端のフックピン13の回動径を短かくして、回動アーム14に係合させて回動操作することができる。
【0054】
前記植付部6を伝動する苗植伝動系に株間変更装置Sと株間副変更装置Tを配置するものであるから、これらは左右に接近して配置されて、株間変更レバー7によって回動される切替アクチュエータ16と、株間副変更レバー9によって回動される切替アクチュエータ54の関係位置も左右に接近して配置される。従って、これら各レバー7、9を変更回動操作の方向を同調方向に操作できるように設定するか、または、図1のように上下段違いに配置することによって、レバー7、9相互間を接近させても干渉操作を防止することができる。
【0055】
前記ステアリングポスト1の上部には、図3(a)及び図3(b)で示すとおり、ギヤードモータ55を設ける。該ギヤードモータ55は、前記ステアリングハンドル18が所定の操向旋回角回動されたことが検出されると、副変速操作レバー10を植付部6の「下降」位置に駆動力によって移動させ、前記伸縮シリンダ32の油圧回路の昇降制御弁を連動させて、植付部6を作業姿勢から非作業姿勢へ上昇させたり、又は逆に下降させる構成としている。
【0056】
前記図3(a)及び(b)においては、ステアリングハンドル18が、ステアリング軸56の上端部に対して、上下裏返して着替できるように構成し、運転者の操作高さに適合し易くしたものである。このステアリングハンドル18は、傘形状に形成されて、中央部の取付座57を下側にして取付けて、ナット58で締め付けると、ハンドル把持位置は高くなり(H)、この取付座57を上側にして取付けるとハンドル位置は低くなる(L)。59はキャップである。
【符号の説明】
【0057】
2 ミッションケース
3 支持ブラケット(支持部材)
4 上側面部(延設部)
5 運転フロア(ステップ部)
6 植付部
7 株間変更レバー(株間操作部材)
8 レバー軸(調節回動軸)
9 株間副変更レバー(補助株間操作部材)
10 副変速レバー(作業操作部材)
12 連動ロッド(作業変更部材)
13 フックピン(フック部)
14 回動アーム(回動部材)
15 アーム軸
16 切替アクチュエータ(切替連動部材)
28 苗載せ部材
30 植付装置
40 車体
S 株間調節機構
T 株間副調節機構
図1
図2
図3
図4
図5