【実施例】
【0027】
以下に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。また、各例における、屈折率、透過色、全光線透過率は下記に示す方法により測定した。
【0028】
<屈折率(ITO層以外の層)>
(1)波長400nmの光に対する屈折率1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)上に、ディップコーター(杉山元理化学機器株式会社製)により、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nm程度になるように層の厚さを調整して塗布した。
(2)乾燥後、紫外線照射装置(岩崎電気株式会社製)により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化した。硬化後のPETフィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ
4+b/λ
2+c (式1)
(N:屈折率、λ:波長、a、b、c:波長分散定数)
【0029】
<屈折率(ITO層)>
(1)波長400nmの光に対する屈折率1.72のPETフィルム(商品名「A4100」、東洋紡績株式会社製)に、PETフィルム上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、実膜厚20nmの透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)を形成し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニーリングを施し、透明導電性フィルムを作製した。
(2)上記透明導電性フィルム裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計(「FE-3000」、大塚電子株式会社製)により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、上記(式1)を用いて、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
なお、表1に記載の各層の屈折率は、上記屈折率測定用サンプルから求めた屈折率である。
【0030】
<透過色>
色差計(「SQ−2000」、日本電色工業株式会社製)を用いて透明導電性フィルムの透過色、b*を測定した。このb*は、JIS Z 8729に規定されているL*a*b表色系における値である。
【0031】
<全光線透過率>
ヘイズメーター(「NDH2000」、日本電色工業株式会社製)により透明導電性フィルムの全光線透過率(%)を測定した。
【0032】
〔ハードコート層用塗液(HC−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート96質量部、光重合開始剤[商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]4質量部及びイソブチルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−1)を調製した。ハードコート層用塗液(HC−1)を用いて形成されるハードコート層の屈折率は1.52であった。
【0033】
〔ハードコート層用塗液(HC−2)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート96質量部、アクリル微粒子[商品名:MA−150、綜研化学(株)製]5質量部、光重合開始剤[商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製]4質量部及びイソブチルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−2)を調製した。ハードコート層用塗液(HC−2)を用いて形成されるハードコート層の屈折率は1.53であった。
【0034】
〔色調補正層用塗液の調製〕
色調補正層用塗液として次の原料を使用し、各原料を表1に記載した組成で混合して、色調補正層用塗液M−1〜M−5を調製した。尚、表1中の数値はwt%である。得られた色調補正層用塗液M−1〜M−5を用いて形成される色調補正層の屈折率を測定した。その結果を表1に示す。
【0035】
金属酸化物微粒子:平均粒子径が0.02μmの酸化ジルコニウム微粒子
平均粒子径が0.02μmの酸化チタン微粒子
活性エネルギー線硬化型樹脂:6官能ウレタンアクリレート(日本合成化学工業(株)製紫光UV−7600B)
光重合開始剤:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製IRGACURE184(I−184)
溶媒:メチルイソブチルケトン
【表1】
【0036】
(実施例1−1)
厚さ125μmのPETフィルムの一面に、ハードコート層用塗液(HC−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、乾燥硬化後の膜厚が2.5μmのハードコート層(1)を形成した。続いて、PETフィルムの他面にハードコート層用塗液(HC−2)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、乾燥硬化後の膜厚が2.5μmのハードコート層(2)を形成した。
上記ハードコート層(1)上に、色調補正層用塗液(M−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、乾燥硬化後の膜厚が95nmの色調補正層(1)を形成した。続いて、ハードコート層(2)上に、色調補正層用塗液(M−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、乾燥硬化後の膜厚が95nmの色調補正層(2)を形成し、色調補正フィルム(S−1)を作成した。
【0037】
(実施例1−2)
色調補正層(2)の乾燥硬化後の膜厚を65nmにする以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−2)を作製した。
【0038】
(実施例1−3)
色調補正層(2)の乾燥硬化後の膜厚を110nmにする以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−3)を作製した。
【0039】
(実施例1−4)
色調補正層(2)の色調補正層用塗液をM−2とし、乾燥硬化後の膜厚を90nmにする以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−4)を作製した。
【0040】
(実施例1−5)
色調補正層(2)の色調補正層用塗液をM−3とし、乾燥硬化後の膜厚を100nmにする以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−5)を作製した。
【0041】
(実施例1−6)
色調補正層(1)の色調補正層用塗液をM−2とし、乾燥硬化後の膜厚を90nmとし、更に、色調補正層(2)の色調補正層用塗液をM−3とし、乾燥硬化後の膜厚を100nmとした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−6)を作製した。
【0042】
(実施例1−7)
ハードコート層(1)及びハードコート層(2)のハードコート層用塗液を、HC−3[商品名:ルシフラールNAB−2000、日本ペイント(株)製] とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−7)を作製した。なお、ハードコート層用塗液(HC−3)を用いて形成されるハードコート層の屈折率は1.54であった。
【0043】
実施例1−1〜1−7で得られた色調補正フィルムの性質を表2に示す。
【表2】
【0044】
(実施例2−1)
上記色調補正フィルム(S−1)の色調補正層(1)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(ITO層)(1)を形成し、ついで、色調補正層(2)上にインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてのスパッタリングを行うことにより、膜厚が20nmの錫ドープ酸化インジウム層(2)を形成し、150℃、30分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、透過色b*、全光線透過率を前記方法で測定した。その結果を下記表3に示す。
【0045】
(実施例2−2)
色調補正フィルムを(S−2)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0046】
(実施例2−3)
色調補正フィルムを(S−3)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0047】
(実施例2−4)
色調補正フィルムを(S−4)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0048】
(実施例2−5)
色調補正フィルムを(S−5)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0049】
(実施例2−6)
色調補正フィルムを(S−6)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0050】
(実施例2−7)
色調補正フィルムを(S−7)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0051】
(実施例2−8)
錫ドープ酸化インジウム層(1)及び錫ドープ酸化インジウム層(2)の膜厚を30nmとし、アニール処理を150℃、60分とした以外は、実施例2−1と同様にして、色調補正フィルム及び透明導電性フィルムを作製した。
【0052】
(実施例2−9)
アニール処理を100℃、60分とした以外は、実施例2−1と同様にして、色調補正フィルム及び透明導電性フィルムを作製した。
【0053】
【表3】
【0054】
(比較例1−1)
厚さ125μmのPETフィルム上にハードコート層用塗液(HC−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、乾燥硬化後の膜厚が2.5μmのハードコート層を形成した。次に、ハードコート層上に、色調補正層用塗液(M−1)をバーコーターにて塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化することにより、乾燥硬化後の膜厚が95nmの色調補正層を形成し、色調補正フィルムを作製した。次に、色調補正フィルムの色調補正層上に、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い透明導電層としての錫ドープ酸化インジウム層を形成し、150℃、30分のアニール処理を施し、透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルム2枚を、透明性接着剤転写テープ[商品名:8146−2、住友スリーエム(株)製]を介してPETフィルム同士が面するように貼合し、比較例1−1の透明導電性フィルムを作製した。得られた透明導電性フィルムについて、透過色b*、全光線透過率を上記方法で測定した。その結果を表4に示す。
【表4】
【0055】
(比較例2−1)
色調補正層(2)の乾燥硬化後の膜厚を120nmとした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−8)を作製した。
【0056】
(比較例2−2)
色調補正層(2)の乾燥硬化後の膜厚を55nmとした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−9)を作製した。
【0057】
(比較例2−3)
色調補正層(2)の色調補正層用塗液をM−4とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−10)を作製した。
【0058】
(比較例2−4)
色調補正層(2)の色調補正層用塗液をM−5とした以外は、実施例1−1と同様にして、色調補正フィルム(S−11)を作製した。
【0059】
比較例2−1〜2−4で得られた色調補正フィルムの性質を表5に示す。
【表5】
【0060】
(比較例3−1)
色調補正フィルムを(S−8)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0061】
(比較例3−2)
色調補正フィルムを(S−9)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0062】
(比較例3−3)
色調補正フィルムを(S−10)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0063】
(比較例3−4)
色調補正フィルムを(S−11)とした以外は、実施例2−1と同様の方法にて透明導電性フィルムを作製した。
【0064】
(比較例3−5)
ITO層(2)の膜厚を70nmとした以外は、実施例2−1と同様にして透明導電性フィルムを作製した。
【0065】
比較例3−1〜3−4で得られた透明導電性フィルムの透過率b*及び全光線透過率を上記方法で測定した。その結果を表6に示す。
【表6】
【0066】
実施例2−1〜2−9では、ハードコート層及び色調補正層、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率と膜厚が本発明で規定される範囲に設定されていることから、透過色b*の値が小さく、透明導電性フィルムの着色を十分に抑え、更に、優れた全光線透過率を実現することが出来た。
その一方、比較例1−1では、余分な粘着層及び透明基材フィルムを使用しているため、全光線透過率が悪い結果となった。比較例3−1〜3−5は、色調補正層、錫ドープ酸化インジウム層の屈折率、及び膜厚のいずれかが本発明で規定される範囲外に設定されているため、透過色b*の値が大きく、透明導電性フィルムが着色する結果となった。