特許第5780047号(P5780047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780047
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】建設機械の配管類通し構造
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/08 20060101AFI20150827BHJP
   E02F 9/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   E02F9/08 Z
   E02F9/00 B
   E02F9/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-174547(P2011-174547)
(22)【出願日】2011年8月10日
(65)【公開番号】特開2013-36264(P2013-36264A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年6月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100109058
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】勝原 進治
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋介
(72)【発明者】
【氏名】西村 耕一
【審査官】 鷲崎 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−069189(JP,A)
【文献】 特開2005−329799(JP,A)
【文献】 特開平08−333772(JP,A)
【文献】 特開2000−008419(JP,A)
【文献】 特開平11−343640(JP,A)
【文献】 特開2006−168449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00−9/18
E02F 9/24−9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の要件(i)〜(vi)のすべてを具備することを特徴とする建設機械の配管類通し構造。
(i) 下部走行体上に上部旋回体を搭載し、この上部旋回体を構成するアッパーフレームは、底板と、車幅方向の中間部で上記底板上に前後方向に設けられた左右一対の縦板と、上記左右の縦板のうちいずれか一方の縦板の車幅方向外側に取付けられたキャビンデッキを有し、上記キャビンデッキにキャビンを搭載すること。
(ii) 上記アッパーフレームの後部にエンジンルームを区画形成するための仕切板を上記キャビンデッキの後方で左右方向に設けたこと。
(iii) 上記エンジンルームの左右のうち上記キャビンデッキが設けられた側にラジエータを、上記エンジンルームを区画形成するための仕切り部材を兼ねるように上記仕切板と気密に接触する状態で設けたこと。
(iv) 上記キャビンデッキは後端に左右方向に延びる後梁を備え、この後梁に、後方に庇状に突出する仕切板受け部を、下方に配管類が通される配索空間が左右方向に形成される状態で設けたこと。
(v) 上記仕切板の下端を上記仕切板受け部の上面に気密に接触させたこと。
(vi) 上記キャビンデッキ側の縦板における上記配索空間に臨む位置に、上記配管類を上記配索空間から導出させる配管類通し穴を設けたこと。
【請求項2】
上記キャビンデッキの後梁は前面、上面、後面の各壁を備え、上記上面壁を後方に延長させて上記仕切板受け部を一体に形成したことを特徴とする請求項1記載の建設機械の配管類通し構造
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油圧ショベル等の建設機械において、アッパーフレームにおけるキャビンデッキの後方に配管類を通す配管類通し構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルを例にとり、図5図7によって背景技術を説明する。
【0003】
油圧ショベルは、図示しないクローラ式の下部走行体上に上部旋回体1が旋回自在に搭載され、この上部旋回体1のベースとなるアッパーフレーム2上に、キャビン3等の各種設備、機器が搭載されるとともに、同フレーム2の前部に作業アタッチメント(図示省略)が装着されて構成される。
【0004】
なお、この明細書においてはキャビン3の位置を左側前部とし、これを基準に「左右」及び「前後」の方向性をいうものとする。
【0005】
また、図及び説明の簡略化のために本発明と直接関係のないアッパーフレーム各部の細かな図示、説明を省略する。
【0006】
アッパーフレーム2は底板4を備え、車幅方向の中間部においてこの底板4上に、補強部材とアタッチメント取付部材を兼ねる左右一対の縦板5,6が前後方向に設けられている。
【0007】
また、左縦板5の左外側にキャビンデッキ7が取付けられ、このキャビンデッキ7上にキャビン3が搭載される。
【0008】
キャビンデッキ7は、後端の後梁8を含む梁材を縦横に組み合わせた大略四角枠状に形成されている。
【0009】
一方、アッパーフレーム底板4の前後方向中間部において左右の縦板5,6間に中央仕切板9、左縦板5の外側に左仕切板10、右縦板6の外側に右仕切板11がそれぞれ縦板5,6と直交しかつ底板4上に垂直に立つ状態で左右方向に取付けられている。
【0010】
これら仕切板9〜11と、図示しないエンジンガード部材及びカウンタウェイト12とにより、アッパーフレーム後部にエンジンルーム13が区画形成され、このエンジンルーム13の中央にエンジン14、このエンジン14の左側にラジエータ15及び冷却ファン16、右側に油圧ポンプ17がそれぞれ設けられる。
【0011】
なお、図6において、機器類のうちラジエータ15のみを実線で示し、他は二点鎖線で示す。
【0012】
また、図例では、ラジエータ15がエンジンルーム13を区画形成するための左側仕切り部材を兼ねる構成がとられている。
【0013】
具体的には、図7に拡大して示すように左仕切板10の左側端部が、ラジエータ15の前側ラジエータ枠15aに気密に面接触する状態で取付けられている。いいかえれば、左仕切板10は、ラジエータ15と左縦板5との間のみに設けられている。
【0014】
上部旋回体に関する以上の構成はたとえば特許文献1,2に示されている。
【0015】
一方、アッパーフレーム2上には、各種の油圧機器類(図6中にコントロールバルブCVと作動油タンクTを例示する)が設置され、油圧機器類同士を結ぶ油圧配管や、キャビン周辺に設置された制御・電気設備と他の機器とを結ぶ電気配線等が配索される。
【0016】
ここで、キャビンデッキ7の後梁8と左仕切板10との間に隙間である配索空間S1が形成され、一部の配管類(以下、単に配管類といい、総括符号「18」を付して示す)がこの配索空間S1の下部を底板上面沿いに通る経路で配索される。
【0017】
なお、図7に示すように、左縦板5における配索空間S1に臨む位置(前後方向中間部の下端部)に配管類通し穴19が設けられ、配索空間S1を通る配管類18が、この配管類通し穴20から外部(左縦板5の右側空間)に導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開平11−303139号公報
【特許文献2】特開2002−146834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
従来、上記配管類18の通し構造に関して次の問題があった。
【0020】
配索空間S1の幅寸法W(図7に示す)は、左仕切板10と後梁8の前後方向位置によって決まる。
【0021】
そして、左仕切板10の前後位置はラジエータ15の前後方向寸法(ラジエータサイズ)によって、また後梁8の前後方向位置はキャビンデッキ7全体の前後方向寸法(キャビンサイズ)によって決まる。
【0022】
従って、キャビンサイズ及びラジエータサイズの少なくとも一方が大きくなると、その分、配索空間S1が小さくなるため、配管類18の配索が困難となっていた。
【0023】
この点の対策として、左仕切板10の下端部(配管類18が通される部分)に左右方向に長い切欠を設けることによって配索空間S1の実質的な幅寸法を広げる手段がとられている。
【0024】
しかし、この手段では、左仕切板10本来のエンジンルーム13の密閉性を確保する必要から、配索空間S1の余剰部分をシール部材で塞がなければならないため、大幅なコストアップ及び組立性の悪化を招くとともに密閉性が低下するという問題があった。
【0025】
そこで本発明は、エンジンルームの密閉性を低下させることなく、必要十分な配索空間を確保することができる建設機械の配管類通し構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記課題を解決する手段として、本発明においては、次の要件(i)〜(vi)のすべてを具備するものである。
【0027】
(i) 下部走行体上に上部旋回体を搭載し、この上部旋回体を構成するアッパーフレームは、底板と、車幅方向の中間部で上記底板上に前後方向に設けられた左右一対の縦板と、上記左右の縦板のうちいずれか一方の縦板の車幅方向外側に取付けられたキャビンデッキを有し、上記キャビンデッキにキャビンを搭載すること。
【0028】
(ii) 上記アッパーフレームの後部にエンジンルームを区画形成するための仕切板を上記キャビンデッキの後方で左右方向に設けたこと。
【0029】
(iii) 上記エンジンルームの左右のうち上記キャビンデッキが設けられた側にラジエータを、上記エンジンルームを区画形成するための仕切り部材を兼ねるように上記仕切板と気密に接触する状態で設けたこと。
【0030】
(iv) 上記キャビンデッキは後端に左右方向に延びる後梁を備え、この後梁に、後方に庇状に突出する仕切板受け部を、下方に配管類が通される配索空間が左右方向に形成される状態で設けたこと。
【0031】
(v) 上記仕切板の下端を上記仕切板受け部の上面に気密に接触させたこと。
【0032】
(vi) 上記キャビンデッキ側の縦板における上記配索空間に臨む位置に、上記配管類を上記配索空間から導出させる配管類通し穴を設けたこと。
【0033】
このように、キャビンデッキの後梁から庇状に突出させた仕切板受け部の下方空間を配索空間とするため、仕切板の前後方向位置にかかわらず配管類の配索に必要十分な幅を持った配索空間を確保することができる。
【0034】
しかも、仕切板の下端をこの仕切板受け部の上面に接触させることによってエンジンルームの密閉性を確保することができる。
【0035】
また、仕切板下端部に切欠を設ける場合のように余剰隙間をシール部材で塞ぐ面倒も、これによってコストアップや組立性の悪化を招いたりする弊害が生じない。
【0036】
さらに、キャビンデッキ側の縦板における上記配索空間に臨む位置に、上記配管類を上記配索空間から導出させる配管類通し穴を設けているため、配管類を配索空間からダイレクトに配索空間外に導出することができる。
【0037】
また本発明においては、上記キャビンデッキの後梁は前面、上面、後面の各壁を備え、上記上面壁を後方に延長させて上記仕切板受け部を一体に形成するのが望ましい(請求項)。
【0038】
こうすれば、後梁に別の板材を溶接やボルト止め等により庇状に取付ける場合と比べて、仕切板受け部を含めた後梁を簡単に低コストで製作することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明によると、エンジンルームの密閉性を低下させることなく、また大幅なコストアップや組立性の悪化を招くことなく必要十分な配索空間を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態に係る配管類通し構造を示すアッパーフレームの概略側断面図である。
図2】同、概略平面図である。
図3図2中の破線丸囲い部分ロの拡大図である。
図4図3のIV−IV線断面図である。
図5】従来の配管類通し構造を示すアッパーフレームの概略側断面図である。
図6】同、概略平面図である。
図7図6中の破線丸囲い部分イの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施形態を図1図4によって説明する。
【0042】
実施形態は、背景技術の説明に合わせて油圧ショベルを適用対象としている。
【0043】
実施形態において、次の点は図5図7に示す従来技術と同じである。
【0044】
(i) 上部旋回体21のアッパーフレーム22は底板24を備え、車幅方向の中間部においてこの底板24上に、補強部材とアタッチメント取付部材を兼ねる左右一対の縦板25,26が前後方向のほぼ全長に亘って取付けられている点。
【0045】
(ii) 左縦板25の左外側に、後梁28を含む梁材を縦横に組み合わせた大略四角枠状のキャビンデッキ27が取付けられ、このキャビンデッキ27上にキャビン23が搭載される点。
【0046】
(iii) アッパーフレーム底板24の前後方向中間部において左右の縦板25,26間に中央仕切板29、左縦板25の外側に左仕切板30、右縦板26の外側に右仕切板31がそれぞれ縦板25,26と直交しかつ底板24上に垂直に立つ状態で左右方向に取付けられている点。
【0047】
(iv) これら仕切板29〜31と、図示しないエンジンガード部材及びカウンタウェイト32とにより、アッパーフレーム後部にエンジンルーム33が区画形成され、このエンジンルーム33の中央にエンジン34、このエンジン34の左側にラジエータ35及び冷却ファン36、右側に油圧ポンプ37がそれぞれ設けられる点。
【0048】
(v) ラジエータ35がエンジンルーム33を区画形成するための左側仕切り部材を兼ねる構成、すなわち、図3に拡大して示すように左仕切板30の左側端部が、ラジエータ15の前側ラジエータ枠15aに気密に面接触する状態で取付けられ、左仕切板30はラジエータ35と左縦板25との間のみに設けられている点。
【0049】
実施形態において、キャビンデッキ27の後梁28は、図3,4に示すように前面、上面、後面の各壁A,B,Cを備え、このうち上面壁Bを後方(左仕切板30側)に水平な庇状に延長させることによって仕切板受け部Dを形成している。
【0050】
そして、左仕切板30を、下端がこの仕切板受け部Dの上面に接触する状態で設けることにより、左仕切板30によるエンジンルーム33の密閉機能を確保しつつ、仕切板受け部Dの下方に配索空間S2を形成し、アッパーフレーム22上に設置された油圧機器類同士を結ぶ油圧配管や、キャビン周辺に設置された制御・電気設備と他の機器とを結ぶ電気配線等の一部(配管類)18を、この配索空間S2をアッパーフレーム底板上面沿いに通る経路で配索する構成をとっている。
【0051】
なお、仕切板受け部Dは、後梁上面壁Bのうち、ラジエータ35と干渉しないほぼ右側半部のみに延設している。
【0052】
上記仕切板受け部D付きの後梁28は、たとえば図示のように水平なベース28a上に、鈎形でかつ水平部分を長めにとった曲げ板28bを取付け、この曲げ板28bの水平部分とベース28aとの間に垂直な平板28cを取付けることによって形成することができる。
【0053】
あるいは、ベース28a上に逆U字形の枠材を取付け、この枠材の上面に水平板材を庇状に突出する状態で溶接またはボルト止めすることによっても形成することができる。
【0054】
なお、左仕切板30の下端は、ラバーシール38(図2,3では図の簡略化のため省略)を介して仕切板受け部Dの上面に気密に接触させている。図4中、39はラバーシール受けである。
【0055】
一方、左縦板25における配索空間S2に臨む位置(前後方向中間部の下端部)に配管類通し穴40を設け、配索空間S2を通る配管類18をこの配管類通し穴40から外部(左縦板25の右側空間)に導出するようにしている。
【0056】
このように、キャビンデッキ27の後梁28から後向きに庇状に突出させた仕切板受け部Dの下方空間を配索空間S2とするため、左仕切板30の前後方向位置にかかわらず配管類の配索に必要十分な幅を持った配索空間S2を確保することができる。
【0057】
しかも、左仕切板30の下端をこの仕切板受け部Dの上面に接触させることによってエンジンルーム33の密閉性を確保することができる。
【0058】
また、仕切板下端部に切欠を設ける場合のように余剰隙間をシール部材で塞ぐ面倒も、これによってコストアップや組立性の悪化を招いたりする弊害が生じない。
【0059】
一方、左縦板25における配索空間S2に臨む位置に配管類通し穴40を設けているため、配管類18を配索空間S2からダイレクトに配索空間外に導出することができる。
【0060】
また、キャビンデッキ後梁28の上面壁Bを後方に延長させて仕切板受け部Dを一体に形成することにより、後梁28に別の板材を溶接やボルト止め等により庇状に取付ける場合と比べて、仕切板受け部Dを含めた後梁28を簡単に低コストで製作することができる。
【0061】
ところで、本発明は油圧ショベルに限らず、キャビンデッキの後梁後方に配管類を通す構造をとる他の建設機械にも上記同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0062】
18 配管類
21 上部旋回体
22 アッパーフレーム
23 キャビン
24 アッパーフレーム底板
25 左縦板
26 右縦板
27 キャビンデッキ
28 キャビンデッキ後梁
B 後梁の上面壁
D 同、仕切板受け部
S2 配索空間
30 仕切板
33 エンジンルーム
40 配管類通し穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7