(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
<第1実施形態>
図1はこの発明による音声出力アンプの第1実施形態であるヘッドホンアンプ100と同ヘッドホンアンプにより駆動されるヘッドホン300からなる音響再生システムの構成を示す回路図である。
【0010】
本実施形態によるヘッドホンアンプ100は、Lチャネル用増幅回路100LとRチャネル用増幅回路100Rとを有している。Lチャネル用増幅回路100Lには、Lチャネル用音声入力端子LINを介してLチャネル音声入力信号ALが入力される。また、Rチャネル用増幅回路100Rには、Rチャネル用音声入力端子RINを介してRチャネル音声入力信号ARが入力される。また、Lチャネル用増幅回路100LおよびRチャネル用増幅回路100Rの双方には、基準電圧入力端子REFを介して基準電圧VREFが入力される。
【0011】
ヘッドホンアンプ100は、Lチャネル音声出力端子LOUTと、Rチャネル音声出力端子ROUTと、共通端子COMとを有している。ここで、共通端子COMは、ヘッドホンアンプ100内において接地されている。ヘッドホンアンプ100におけるLチャネル用増幅回路100Lは、Lチャネル音声入力信号ALに基づき、Lチャネル音声出力端子LOUTおよび共通端子COM間に接続された負荷を駆動する。また、ヘッドホンアンプ100におけるRチャネル用増幅回路100Rは、Rチャネル音声入力信号ARに基づき、Rチャネル音声出力端子ROUTおよび共通端子COM間に接続された負荷を駆動する。
【0012】
Lチャネル音声出力端子LOUT、Rチャネル音声出力端子ROUTおよび共通端子COMは、前掲
図4の構成と同様、Lチャネル信号線、Rチャネル信号線、共用のGND配線を介してヘッドホン300に接続される。このヘッドホン300は、電気/音響変換装置たるLチャネル用スピーカSPLおよびRチャネル用スピーカSPRを備えている。そして、Lチャネル音声出力端子LOUTおよび共通端子COM間には、負荷として、抵抗RALと、Lチャネル用スピーカSPLと、抵抗RCOMが直列に接続されている。また、Rチャネル音声出力端子ROUTおよび共通端子COM間には、負荷として、抵抗RARと、Rチャネル用スピーカSPRと、抵抗RCOMが直列に介挿される。ここで、抵抗RCOMは、Lチャネル音声出力端子LOUTおよび共通端子COM間の電流経路とRチャネル音声出力端子ROUTおよび共通端子COM間の電流経路の共通部分であるGND配線の抵抗である。また、抵抗RALは、Lチャネル音声出力端子LOUTおよび共通端子COM間の電流経路の全抵抗から上記共通部分の抵抗RCOMとスピーカSPLの抵抗とを除いた抵抗である。また、抵抗RARは、Rチャネル音声出力端子ROUTおよび共通端子COM間の電流経路の全抵抗から上記共通部分の抵抗RCOMとスピーカSPRの抵抗とを除いた抵抗である。
【0013】
Rチャネル用増幅回路100Rは、第1反転増幅部110と、第2反転増幅部120と、電流制御部130とを有する。以下、第1反転増幅部110、第2反転増幅部120および電流制御部130の構成を説明する。
【0014】
まず、第1反転増幅部110は、オペアンプ111と、抵抗R
11〜R
14とを有する。ここで、抵抗R
11はRチャネル音声入力端子RINとオペアンプ111の反転入力端子(−入力端子)との間に介挿され、抵抗R
12はオペアンプ111の反転入力端子と出力端子との間に介挿されている。そして、オペアンプ111の非反転入力端子(+入力端子)には、基準電圧VREFを抵抗R
13およびR
14により分圧した基準電圧Vr=kVREF(ただし、k=R
14/(R
13+R
14)である。)が与えられる。この第1反転増幅部110では、Rチャネル音声入力信号ARと基準電圧Vrとの差分を反転増幅した第1相の音声信号Vpin=−(R
12/R
11)(AR−Vr)がオペアンプ111により出力される。
【0015】
次に、第2反転増幅部120は、オペアンプ121と、抵抗R
21およびR
22とを有する。ここで、抵抗R
21はオペアンプ111の出力端子とオペアンプ121の反転入力端子との間に介挿され、抵抗R
22はオペアンプ121の反転入力端子と出力端子との間に介挿されている。そして、オペアンプ121の非反転入力端子は接地されている。この第2反転増幅部120では、オペアンプ111が出力する第1相の音声信号Vpinを反転増幅した第2相の音声信号Vnin=−(R
22/R
21)Vpinがオペアンプ121により出力される。
【0016】
本実施形態において、第2反転増幅部120における抵抗R
21およびR
22の抵抗値の比R
22/R
21は1となっている。従って、第1相の音声信号Vpinおよび第2相の音声信号Vninは、Rチャネル音声入力信号ARと基準電圧Vrとの差分に比例した電圧差を持った平衡な差動信号となる。
【0017】
以上説明した第1反転増幅部110および第2反転増幅部120は、Rチャネル音声入力信号ARと基準電圧VREFとに基づいて、第1相の音声信号Vpinおよび第2相の音声信号Vninからなる平衡な差動信号を生成する信号変換部を構成している。
【0018】
次に、電流制御部130は、オペアンプ131と、抵抗R
1〜R
5とを有する。ここで、抵抗R
1はオペアンプ111の出力端子とオペアンプ131の反転入力端子との間に介挿され、抵抗R
2はオペアンプ131の反転入力端子と出力端子との間に介挿されている。また、抵抗R
3はオペアンプ121の出力端子とオペアンプ131の非反転入力端子との間に介挿され、抵抗R
4はオペアンプ131の非反転入力端子とRチャネル音声出力端子ROUTとの間に介挿されている。そして、電流検出抵抗である抵抗R
5がオペアンプ131の出力端子とRチャネル音声出力端子ROUTとの間に介挿されている。
【0019】
電流制御部130において、抵抗R
1およびR
3は、可変抵抗であり、例えば共通の操作子の操作により抵抗値が調整される。その際、抵抗R
1およびR
3は、互いに同じ抵抗値に調整される。また、抵抗R
2およびR
4は、互いに同じ抵抗値を有している。また、本実施形態において、抵抗R
5は、抵抗R
2およびR
4と比較して十分に小さい抵抗値を有している。
【0020】
以上がRチャネル用増幅回路100Rの構成である。Lチャネル用増幅回路100LもこのRチャネル用増幅回路100Rと同様な構成を有している。
【0021】
次に
図2(a)〜(d)を参照し、本実施形態の動作を説明する。なお、
図2(a)および(b)において、RLは、
図1における抵抗RARと、スピーカSPRの抵抗と、抵抗RCOMの総和である。
【0022】
まず、Rチャネル音声信号ARの電圧値が基準電圧Vrよりも低く、第1相の音声信号の電圧Vpinが正、第2相の音声信号の電圧Vninが負になったとする。この場合、
図2(a)に示す各電流が電流制御部130の各部に流れる。また、この場合の電流制御部130の各ノードの電圧Vpin、Vnin、V
1、V
2、VaおよびVoutの関係は
図2(c)に示すものとなる。
【0023】
図2(a)に示すように、電圧Vpinが正である場合には、電圧Vpinの発生するノードから抵抗R
1およびR
2を介してオペアンプ131の出力端子に向けて電流が流れる。この電流をIpinとすると、オペアンプ131の反転入力端子の電圧V
1は電圧Vpinから電圧IpinR
1だけ低下した電圧となり、オペアンプ131の出力電圧Vaはこの電圧V
1からさらに電圧IpinR
2だけ低下した電圧となる。
【0024】
ここで、電圧V
1は、
図2(c)に示すように、電圧VpinおよびVa間を抵抗R
1およびR
2の比により内分した電圧であるので、次のようになる。
V
1=(R
1/(R
1+R
2))(Va−Vpin)+Vpin
=(R
1Va+R
2Vpin)/(R
1+R
2) ……(1)
【0025】
また、電圧Vninが負である場合には、Rチャネル音声出力端子ROUTから抵抗R
4およびR
3を介して電圧Vninの発生するノードに向けて電流が流れる。この電流をIninとすると、オペアンプ131の非反転入力端子の電圧V
2は電圧Vninから電圧IninR
3だけ上昇した電圧となり、Rチャネル音声出力端子ROUTの電圧Voutはこの電圧V
2からさらに電圧IninR
4だけ上昇した電圧となる。
【0026】
ここで、電圧V
2は、
図2(c)に示すように、電圧VninおよびVout間を抵抗R
3およびR
4の比により内分した電圧であるので、次のようになる。
V
2=(R
3/(R
3+R
4))(Vout−Vnin)+Vnin
=(R
3Vout+R
4Vnin)/(R
3+R
4) ……(2)
【0027】
そして、Rチャネル音声出力端子ROUTの電圧Voutとオペアンプ131の出力電圧Vaとの電圧差Vout−Vaに比例した電流Iaが抵抗R
5に流れる。ここで、オペアンプ131は、抵抗R
2を介した負帰還を受けるため、
図2(c)に示すように、反転入力端子に対する電圧V
1を非反転入力端子に対する電圧V
2に一致させるような電圧Vaを出力する。
【0028】
このような電圧Vaは次のようにして算出することができる。まず、式(1)および(2)において、V
1=V
2となるためには次式が成立する必要がある。
(R
1Va+R
2Vpin)/(R
1+R
2)
=(R
3Vout+R
4Vnin)/(R
3+R
4) ……(3)
【0029】
この式(3)において、R
1=R
3=Ra、R
2=R
4=Rbとすると、次式が得られる。
(RaVa+RbVpin)/(Ra+Rb)
=(RaVout+RbVnin)/(Ra+Rb) ……(4)
そして、この式(4)を変形すると、次式が得られる。
Va−Vout=−(Rb/Ra)(Vpin−Vnin) ……(5)
【0030】
このように電流制御部130では、差動信号VpinおよびVnin間の電圧差に比例した電圧差が電圧VaおよびVout間に生じる。従って、次式に示すように、差動信号VpinおよびVnin間の電圧差に比例した電流Iaが抵抗R
5に流れる。
Ia=(Va−Vout)R
5
=−(Rb/(RaR
5))(Vpin−Vnin) ……(6)
【0031】
ここで、抵抗R
5は、抵抗R
2およびR
4と比較して十分に小さい抵抗値を有している。従って、電流Ininは、電流Iaに比べて無視できる程小さな電流値となる。従って、Rチャネル音声出力端子ROUTに接続された負荷RLには、式(6)のIaにほぼ等しい電流Iout≒Iaが流れる。
【0032】
次に、Rチャネル音声信号ARの電圧値が基準電圧Vrよりも高く、電圧Vpinが負、電圧Vninが正である場合には、
図2(b)に示す各電流が電流制御部130の各部に流れる。また、この場合の電流制御部130の各ノードの電圧Vpin、Vnin、V
1、V
2、VaおよびVoutの関係は
図2(d)に示すものとなる。
【0033】
この場合も、電圧Vpinが正、電圧Vninが負である場合と同様であり、差動信号VpinおよびVnin間の電圧差に比例した電流Iaが抵抗R
5に流れ、この電流Iaにほぼ等しい電流IoutがRチャネル音声出力端子ROUTに接続された負荷RLに流れる。
【0034】
このようにRチャネル用増幅回路100Rによれば、Rチャネル音声信号ARと基準電圧Vrとの電圧差に比例した電圧差を持った差動信号VpinおよびVninが発生され、この差動信号VpinおよびVninの電圧差に比例した電流Ioutが電流制御部130からRチャネル音声出力端子ROUTに接続された負荷RLに供給される。
【0035】
以上、Rチャネル用増幅回路100Rを例に動作を説明したが、Lチャネル用増幅回路100Lも同様である。Lチャネル用増幅回路100Lでは、Lチャネル音声信号ALと基準電圧Vrとの電圧差に比例した電圧差を持った差動信号VpinおよびVninが発生され、この差動信号VpinおよびVninの電圧差に比例した電流Ioutが電流制御部130からLチャネル音声出力端子LOUTに接続された負荷に供給される。
【0036】
このように本実施形態によるヘッドホンアンプによれば、Rチャネル音声信号ARに応じた電流がRチャネル音声出力端子ROUTに接続された負荷に供給され、Lチャネル音声信号ALに応じた電流がLチャネル音声出力端子LOUTに接続された負荷に供給される。従って、Rチャネル音声出力端子ROUTと共通端子COMとの間の電流経路とLチャネル音声出力端子LOUTと共通端子COMとの間の電流経路との間に共通インピーダンスが介在する場合であっても、Lチャネル音声信号ALの影響がRチャネルスピーカSPRの再生音に現われるのを防止するとともに、Rチャネル音声信号ARの影響がLチャネルスピーカSPLの再生音に現われるのを防止し、チャネルセパレーションを高めることができる。
【0037】
<第2実施形態>
一般にヘッドホンの出力は、ヘッドホンアンプの出力電圧に依存する。このため、一般的なヘッドホンアンプでは、出力電圧の調整によりヘッドホンの音量調整を行う。しかしながら、上記第1実施形態では、アナログ音声入力信号の電圧値に比例した電流をヘッドホンのスピーカに流すため、ヘッドホンのスピーカのインピーダンスによっては、ヘッドホンアンプの出力電圧が適正音量に対応した電圧から外れる場合がある。そこで、本実施形態では、ヘッドホンアンプの出力電圧が適正音量に対応した電圧となるようにRチャネル用増幅回路100RおよびLチャネル用増幅回路100Lの可変抵抗R
1およびR
3の抵抗値Raを調整する手段をヘッドホンアンプに設ける。
【0038】
図3は本実施形態によるヘッドホンアンプ200の構成を示すブロック図である。本実施形態によるヘッドホンアンプ200は、上記第1実施形態によるヘッドホンアンプ100に対し、接続検知部201、テスト信号発生部202および抵抗調整部203を設けたものである。ここで、接続検知部201は、ヘッドホン300がヘッドホンアンプ200に接続されたことを検知する回路である。テスト信号発生部202は、ヘッドホン300がヘッドホンアンプ200に接続されたことが接続検知部201により検知されたとき、所定時間に亙って可聴帯域外のテスト信号をRチャネル音声入力端子RINまたはLチャネル音声入力端子LINの一方(図示の例ではRチャネル音声入力端子RIN)に与える回路である。抵抗調整部203は、テスト信号発生部202がテスト信号を出力している間、Rチャネル用増幅回路100RまたはLチャネル用増幅回路100Lのうちテスト信号が入力される方の音声出力端子(図示の例ではRチャネル音声出力端子ROUT)の出力電圧を測定し、この出力電圧が適正音量に対応した電圧となるようにRチャネル用増幅回路100RおよびLチャネル用増幅回路100Lの可変抵抗R
1およびR
3の抵抗値Raを調整する回路である。
【0039】
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様の効果が得られる。また、本実施形態によれば、ヘッドホン300によって、ヘッドホン300のスピーカのインピーダンスが異なる状況でも、ヘッドホン300の音量を適正なものに設定することができる。
【0040】
以上、この発明の第1および第2実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0041】
(1)上記各実施形態では、本発明をヘッドホンアンプに適用したが、本発明は、複数の信号線と共用のGND配線を介して複数の電気/音響変換装置を駆動する他の音声出力アンプにも勿論適用可能である。
【0042】
(2)上記各実施形態では、第1相の音声信号Vpinおよび第2相の音声信号Vninとして、0Vを対称軸として正負対称な差動信号を発生したが、第1相および第2相の音声信号はそれらの電圧差がLチャネルまたはRチャネルの音声入力信号の電圧値の基準電圧に対する差分に比例したものであればよい。
【0043】
(3)上記各実施形態では、抵抗R
4と抵抗R
5の共通接続点を音声出力端子に直接接続したが、抵抗R
4と抵抗R
5の共通接続点と音声出力端子との間に抵抗等の素子を介挿してもよい。
【0044】
(4)上記第2実施形態では、テスト信号をRチャネル音声入力端子RINに供給し、その際のRチャネル音声出力端子ROUTの出力電圧に基づいて、Rチャネル用増幅回路100RおよびLチャネル用増幅回路100Lの両方の可変抵抗R
1およびR
3の調整を行った。しかし、そのようにする代わりに、次のようにしてもよい。まず、テスト信号をRチャネル音声入力端子RINに供給し、その際のRチャネル音声出力端子ROUTの出力電圧に基づいて、Rチャネル用増幅回路100Rの可変抵抗R
1およびR
3の調整を行う。次に、テスト信号をLチャネル音声入力端子LINに供給し、その際のLチャネル音声出力端子LOUTの出力電圧に基づいて、Lチャネル用増幅回路100Lの可変抵抗R
1およびR
3の調整を行うのである。この態様によれば、ヘッドホンアンプから見たLチャネルの負荷抵抗とRチャネルの負荷抵抗とが不均衡である場合に、各負荷抵抗に合わせて、Rチャネル用増幅回路100RおよびLチャネル用増幅回路100Lの各々の可変抵抗R
1およびR
3を適切に調整することができるという効果が得られる。