【実施例】
【0031】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
[実施例1〜11および比較例1〜12]
実施例1〜11および比較例1〜12の導電性塗料を調製するために下記成分を準備した。(以下、実施例および比較例の導電性塗料を単に「塗料」とも称する。)
(A)成分:スチレンと、モノエンおよび/またはジエンとの共重合体である熱可塑性エラストマー
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)直鎖型コポリマー:クレイトンG1650 クレイトンポリマージャパン株式会社製
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)直鎖型コポリマー:クレイトンFG1901X クレイトンポリマージャパン株式会社製
(B)成分:導電性粉体
・フレーク状ニッケル粉:ニッケルフレークHCA−1 ノバメット社製
(C)成分:溶剤
・キシレン:キシロール 三協化学株式会社製
(D)成分:
(d1):有機チタン錯体または有機ジルコニウム錯体
・チタンテトラ−2−エチルヘキソキシド:オルガチックス(登録商標)TA−30 マツモトファインケミカル株式会社製
・チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート):オルガチックス(登録商標)TC−750 マツモトファインケミカル株式会社製
・ジルコニウムトリブトキシモノアセチルアセトネート:オルガチックス(登録商標)ZC−540 マツモトファインケミカル株式会社製
・ジルコニウムモノブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート):オルガチックス(登録商標)ZC−570 マツモトファインケミカル株式会社製
・ジルコニウムジブトキシビス(エチルアセトアセテート):オルガチックス(登録商標)ZC−580 マツモトファインケミカル株式会社製
(d2):アミノ基を有するシラン系カップリング剤および水酸基を有するテルペン樹脂
アミノ基を有するシラン系カップリング剤
・N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM−603 信越化学工業株式会社製
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM−903 信越化学工業株式会社製
水酸基を有するテルペン樹脂
・テルペン・フェノール共重合体:YSポリスターT−145 ヤスハラケミカル株式会社製
・テルペン・フェノール共重合体:マイティエースG−150 ヤスハラケミカル株式会社製
(D’)成分:比較成分
・エチレン−酢酸ビニルゴム:レバプレン(登録商標)800HV LANXESS社製
・イソプロピルトリイソステアロイルチタネート(チタネート系カップリング剤):プレンアクト(登録商標)KRTTS 味の素ファインケミカル株式会社製
・オクチル酸スズ(非チタン系触媒):ネオスタンU−28 日東化成株式会社製
・水酸基を有さないテルペン樹脂:YSレジンPX1250 ヤスハラケミカル株式会社製
・3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(アミノ基を有さないシラン系カップリング剤):KBM−803 信越化学工業株式会社製
・3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(アミノ基を有さないシラン系カップリング剤):KBM−403 信越化学工業株式会社製
塗料の製造方法は次の通りである。(A)成分と(C)成分とを容器に入れて3時間撹拌した。揮発した(C)成分は後から添加して重量補正を行った。次に(d1)成分を添加して追加で30分間撹拌した後、(B)成分を添加してさらに30分間撹拌した。最後に(C)成分を添加して重量補正を行った。(d2)成分を使用する時は、事前に(A)成分と(d2)成分とを(C)成分に添加した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。
【0033】
【表1】
【0034】
[比較例13]
比較例13として溶剤系の導電性エポキシ樹脂を調製するために下記成分を準備した。詳細な調製量は表2に従い、数値は全て質量部で表記する。エポキシ樹脂、溶剤、硬化剤容器に入れて15時間撹拌した。揮発した溶剤は後から添加して重量補正を行った。次にニッケル粉を添加して追加で30分間撹拌した。最後に溶剤で重量補正を行った。
・ビスフェノールA型とF型エポキシ樹脂の混合物:EXA−835LV 大日本インキ化学工業株式会社製
・フェニルグリシジルエーテル:EX−141 ナガセケムテックス株式会社製
・1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7のオクチル酸塩:U−CAT SA102 サンアプロ株式会社製
・キシレン:キシロール 三協化学株式会社製
・フレーク状ニッケル粉:ニッケルフレークHCA−1 ノバメット社製
・3−アミノプロピルトリメトキシシラン:KBM−903 信越化学工業株式会社製
【0035】
【表2】
【0036】
実施例1〜11および比較例1〜13について粘度測定、密着性試験、耐湿性試験、耐ヒートサイクル性試験を実施した。その結果を表3に示す。
【0037】
[粘度測定]
塗料の温度が室温(25℃)であることを確認してから、以下の条件で「粘度(Pa・s)」を測定した。
【0038】
測定条件
粘度計仕様:東機産業株式会社製 TV−33型粘度計(EHD型)
コーンローター:1°34’×R24
回転速度:5.0rpm
測定時間:3分
測定温度:25℃
[密着性試験]
長さ100mm×幅25mm×厚さ1.6mmのアルミ板(A1050P)の上に長さ100mm×幅20mm×厚さ0.1mmのマスキングを行って塗料をスキージした。このとき、塗膜の表面が平坦となるように、塗料には泡が混入しないようにスキージを行う。最後に、マスキングを剥がし、熱風乾燥炉により90℃雰囲気下で1時間加熱して塗料を乾燥させて塗膜を形成した。比較例12の場合は、120℃雰囲気下で1時間加熱した。当該塗膜に縦横に1mm間隔で11ライン切り込みを入れ、1mm角のマス目が100個出来るようにした。その後、切り込みを入れた塗膜にセロハンテープを貼り、それを剥がした際に剥離するマス目の数によって「密着性」を確認し、「密着性」は下記基準にて評価した。密着性の評価が「◎」〜「△」であることが好ましく、「▲」または「×」であるとアルミ板との界面で体積抵抗率が不安定化するおそれがある。その他の測定条件はJIS K 5400に準ずる。
【0039】
評価基準
◎:100個マス目の中で0〜20個未満が剥離した
○:100個マス目の中で20〜40個未満が剥離した
△:100個マス目の中で40〜60個未満が剥離した
▲:100個マス目の中で60〜80個未満が剥離した
×:100個マス目の中で80個以上が剥離した
[耐湿性試験]
寸法2.0mm×100mm×100mmのガラス板の上に、マスキングテープにより幅10mm×長さ90mm×厚さ50μmのマスキングを行い、塗料をスキージした。このとき、塗膜の表面が平坦となるように、塗膜には泡が混入しないように注意した。次にマスキングを剥がし、熱風乾燥炉により90℃雰囲気下で1時間加熱して塗料を乾燥させた。比較例12の場合は、120℃雰囲気下で1時間加熱した。(以下、塗膜を乾燥させたガラス板を「テストピース」と呼ぶ。)テストピースが室温(25℃)であることを確認した上で、電極間距離50mm(L)の時の抵抗値(R)を測定した。また、テストピースの塗膜厚を測定して、電流方向に対する断面積(A)を求めた。これらの測定値から数式1に従い「体積抵抗率(ρ)」を計算した。前記の体積抵抗率を「初期の体積抵抗率」とする。当該テストピースを温度85℃で相対湿度85%雰囲気下に200時間放置した。テストピースが室温(25℃)に戻った後、再び体積抵抗率の測定を行い「試験後の体積抵抗率」とした。「試験後の体積抵抗率」/「初期の体積抵抗率」×100=「体積抵抗率変化(%)」として、以下の評価基準により評価を行った。耐湿性試験および後述の耐ヒートサイクル性試験では、体積抵抗率変化の評価が「○」であることが好ましい。
【0040】
評価基準
○:体積抵抗率変化が5%未満
△:体積抵抗率変化が5%以上50%未満
×:体積抵抗率変化が50%以上
【0041】
【数1】
【0042】
[耐ヒートサイクル性試験]
耐湿性試験と同様に、テストピースを作成し「初期の体積抵抗率」を計算した。−40℃雰囲気下で30分間および85℃で30分間を連続で行う設定を1サイクルとして、当該テストピースを100サイクル放置した。テストピースが室温(25℃)に戻った後、耐湿性試験と同様に「試験後の体積抵抗率」を測定し、「体積抵抗率変化」を上記と同様の評価基準により評価した。
【0043】
【表3】
【0044】
実施例1〜6と比較例3、4とを比較すると、触媒活性を有するチタン錯体またはジルコニウム錯体を含有する実施例1〜6では密着性が良好であったが、触媒活性を有さないチタネート系カップリング剤を含有する比較例3と湿気硬化触媒として使用される有機スズ触媒を含有する比較例4では密着性が向上していなかった。また、実施例7〜11と比較例5〜12とを比較すると、アミノ基を有するシラン系カップリング剤および水酸基を有するテルペン樹脂を同時に含有する実施例7〜11では密着性が良好であったが、どちらか一方のみを使用した場合、または水酸基を有さないテルペン樹脂を使用した場合である比較例5〜12では密着性が向上しなかった。また、比較例6では体積抵抗率変化が良好ではなかった。また、比較例9〜12ではアミノ基を有さないシラン系カップリング剤を含有しているが、密着性は向上しなかった。また、比較例13においてはエポキシ樹脂を用いているため密着性は良好であったが、耐湿性試験において吸湿によるニッケルの酸化が原因と推測される体積抵抗率の変化と、塗膜の硬質化が原因と推測される耐ヒートサイクル性試験での体積抵抗率の変化が発生した。