【実施例】
【0033】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
「実施例1」
本実施例1では、カーボンナノチューブインク組成物1を以下の手順で調製した。
まず、ガラス製の容器(ガラス容器)に、Hipco(High Pressure Carbon monooxide)法により作製したシングルウォールカーボンナノチューブを10mg秤量し、さらに、このガラス容器に下記の化学式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)という。)を5mg加えた。
次いで、ガラス容器に水を10g加え、超音波装置を用いて、1時間超音波処理を行い、カーボンナノチューブの分散液(カーボンナノチューブインク組成物1)を調製した。
超音波処理直後のカーボンナノチューブインク組成物1は均一な黒色形態を示し、残留物、沈殿物は見られなかった。
また、このカーボンナノチューブインク組成物1を放置して、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後に観察したところ、超音波処理直後と同様に、残留物、沈殿物は見られなかった。
この評価結果を表1に示す。
なお、カーボンナノチューブインク組成物1の分散状態を下記の3段階で評価した。
◎:残留物、沈殿物なし
△:残留物、沈殿物あり
×:全て沈殿
【0035】
【化3】
【0036】
また、このカーボンナノチューブインク組成物1をコニカミノルタ社製のインクジェットヘッド装置に充填し、インクジェットヘッド装置からこのインク組成物を吐出させて、その吐出状態を観察した。
その結果、カーボンナノチューブインク組成物1を充填したインクジェットヘッド装置を動作させたところ、いずれの場合も、このインク組成物を安定して吐出させることができるのが確認された。
この評価結果を表1に示す。
なお、カーボンナノチューブインク組成物1の吐出状態を下記の3段階で評価した。
◎:安定して吐出できた
△:吐出することができるものの、安定して吐出できなかった
×:全く吐出できなかった
【0037】
「比較例1」
化合物(2)を用いない以外は実施例1と全く同様にして、カーボンナノチューブインク組成物101を調製した。
実施例1と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物101について、超音波処理直後、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後における分散状態を評価した。
その結果、超音波処理直後のカーボンナノチューブインク組成物101は、ある程度分散が見られ、若干の残留物が見られただけであった。このインク組成物を10日後、30日後に観察したところ、全てのカーボンナノチューブが沈殿していることが確認された。
また、実施例1と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物101について、インクジェットヘッド装置からの吐出状態を評価した。
その結果、インクジェットヘッド装置からのインク吐出性が悪く、安定したインク液滴を形成することができなかった。
これらの結果を表1に示す。
【0038】
「実施例2〜10」
表1に示すカーボンナノチューブ(A)、アセチレングリコール化合物(B)および溶媒(C)を用いた以外は実施例1と全く同様にして、カーボンナノチューブインク組成物2〜10を調製した。
実施例1と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物2〜10について、超音波処理直後、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後における分散状態、並びに、インクジェットヘッド装置からの吐出状態を評価した。
これらの結果を表1に示す。
また、アセチレングリコール化合物(B)の置換基を表2に示す。
【0039】
「比較例2〜5」
表1に示すカーボンナノチューブ(A)および溶媒(C)を用いた以外は比較例1と全く同様にして、カーボンナノチューブインク組成物102〜105を調製した。
実施例1と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物102〜105について、超音波処理直後、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後における分散状態、並びに、インクジェットヘッド装置からの吐出状態を評価した。
これらの結果を表1に示す。
【0040】
「実施例11」
本実施例11では、カーボンナノチューブインク組成物11を以下の手順で調製した。
まず、ガラス製の容器(ガラス容器)に、Hipco法により作製したシングルウォールカーボンナノチューブを100mg秤量し、さらに、このガラス容器に化合物(2)を50mg加えた。
さらに、このガラス容器に、末端にラウリルアルコキシ基(C
18H
37O−)を導入したポリエチレングリコール(分子量1000)を1g加えた。
次いで、ガラス容器に水を10g加え、超音波装置を用いて、1時間超音波処理を行い、カーボンナノチューブインク組成物11を調製した。
超音波処理直後のカーボンナノチューブインク組成物11は均一な黒色形態を示し、残留物、沈殿物は見られなかった。
また、このカーボンナノチューブインク組成物11を放置して、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後に観察したところ、超音波処理直後と同様に、残留物、沈殿物は見られなかった。
この評価結果を表1に示す。
また、このカーボンナノチューブインク組成物11をコニカミノルタ社製のインクジェットヘッド装置に充填し、インクジェットヘッド装置からこのインク組成物を吐出させて、このインク組成物の吐出状態を観察した。
その結果、カーボンナノチューブインク組成物11を充填したインクジェットヘッド装置を動作させたところ、このインク組成物を安定して吐出させることができるのが確認された。
これらの評価結果を表1に示す。
【0041】
「比較例6」
化合物(2)を用いない以外は、実施例11と全く同様にして、カーボンナノチューブインク組成物106を調製した。
実施例11と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物106について、超音波処理直後、超音波処理から10日後および超音波処理から30日後における分散状態を評価した。
その結果、超音波処理直後のカーボンナノチューブインク組成物106は、均一に分散していた。しかし、このインク組成物は、10日後および30日後には沈殿が一部生じて、安定した分散性が得られなかった。
また、実施例11と同様にして、得られたカーボンナノチューブインク組成物106について、インクジェットヘッド装置からの吐出状態を評価した。
その結果、インクジェットヘッド装置からのインク吐出性が悪く、安定したインク液滴を形成することができなかった。
これらの結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明に係るカーボンナノチューブインク組成物は、上述の実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上述の実施形態の構成から種々の修正および変更を施したカーボンナノチューブインク組成物も、本発明の範囲に含まれる。