(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態の排熱回収装置1は、工場炉100からの排熱を回収するとともに、加熱した空気を工場炉100に供給するものである。
【0016】
工場炉100は、エネルギ源としての燃料と酸化剤とが供給され、燃料と酸化剤との酸化発熱を利用してエネルギ変換するエネルギ変換手段であるとともに、このエネルギ変換に伴い熱を排出する排熱手段である。燃料としては、天然ガス、都市ガス、重油、灯油等が用いられる。具体的には、工場炉100は、燃料と空気の燃焼により、燃料を約500℃の熱エネルギに変換し、約155℃付近の燃焼ガスを排出する。
【0017】
排熱回収装置1は、反応部としての2つの反応器(第1、第2反応器2、3)と、蒸発部としての蒸発器4と、凝縮部としての凝縮器5とを備えている。
【0018】
第1、第2反応器2、3は、図示しないが、どちらも、化学蓄熱材と、化学蓄熱材が充填された熱交換器と、この熱交換器を収容するケースとを備えている。
【0019】
化学蓄熱材は、反応媒体と反応して発熱するとともに、吸熱して反応媒体を再生するものである。本実施形態では、化学蓄熱材としてイオン結晶物であるCaBr
2を用い、反応媒体としてH
2Oを用いている。下記の反応式(1)に示すように、CaBr
2(固体)は、H
2O(気体)と反応(水和)して発熱(放熱)するとともに、下記の反応式(2)に示すように、水和物の状態であるCaBr
2・H
2O(固体)のときに吸熱してH
2O(気体)を再生(放出)する。CaBr
2は、工場炉100から排出される燃焼ガスの温度で、H
2Oの再生が可能なものである。
【0021】
【化2】
第1、第2反応器2、3は、どちらも、燃焼ガス入口側が、燃焼ガス流路を構成する燃焼ガス用配管11を介して、工場炉100の燃焼ガス出口側と接続されている。燃焼ガス用配管11は、分岐点を有し、分岐点から第1反応器2に向かう流路と、分岐点から第2反応器3に向かう流路とを有している。燃焼ガス用配管11の分岐点には3方弁12が設けられている。この3方弁12は、第1反応器2へ燃焼ガスを供給する状態(第1反応器2への燃焼ガス供給状態)と、第2反応器3へ燃焼ガスを供給する状態(第2反応器3への燃焼ガス供給状態)とを切り替える切替手段であり、特許請求の範囲に記載の第1切替手段に対応する。
【0022】
第1、第2反応器2、3は、どちらも、燃焼ガス出口側に、燃焼ガスの排出口13に連通する燃焼ガス用配管14が接続されている。
【0023】
また、第1、第2反応器2、3は、どちらも、空気入口側に空気流路を構成する空気用配管21が接続されており、空気流入口22と連通している。空気用配管21は、分岐点を有し、分岐点から第1反応器2に向かう流路と、分岐点から第2反応器3に向かう流路とを有している。空気用配管21の分岐点には3方弁23が設けられている。この3方弁23は、第1反応器2へ空気を供給する状態(第1反応器2への空気供給状態)と、第2反応器3へ空気を供給する状態(第2反応器3への空気供給状態)とを切り替える切替手段である。この3方弁23によって、空気が第1反応器2を通過して工場炉100に供給される場合と、空気が第2反応器3を通過して工場炉100に供給される場合とが切り替えられる。この3方弁23が特許請求の範囲に記載の第3切替手段に対応する。
【0024】
第1、第2反応器2、3は、どちらも、空気出口側が、空気流路を構成する空気用配管24を介して、工場炉100の空気入口側と接続されている。なお、第1、第2反応器2、3に接続された空気用配管24は、途中で合流して、工場炉100に接続されているが、2つの空気用配管24が工場炉100に直接接続されていても良い。
【0025】
第1、第2反応器2、3が備える熱交換器は、工場炉100に供給される空気が熱交換器を通過する場合では、空気と化学蓄熱材とを熱交換させ、工場炉100から排出された燃焼ガスが熱交換器を通過する場合では、燃焼ガスと化学蓄熱材とを熱交換させる。なお、 本実施形態では、第1、第2反応器2、3の熱交換器内部において、燃焼ガスと化学蓄熱材とを熱交換させるときの燃焼ガスの温度が155℃となるように調整されている。
【0026】
蒸発器4は、反応媒体を液体から気体に変換するものである。この蒸発器4は、反応媒体と工場炉100から排出された燃焼ガスとを熱交換させる熱交換器であり、工場炉100からの排熱を回収し、回収した排熱によって反応媒体を加熱するようになっている。
【0027】
蒸発器4の燃焼ガス入口側は、燃焼ガス流路を構成する燃焼ガス用配管15を介して、工場炉100の燃焼ガス出口側と接続されている。なお、
図1では、燃焼ガス用配管15は、燃焼ガス用配管11から分岐しているが、工場炉100の燃焼ガス出口側に直接接続されていても良い。蒸発器4の燃焼ガス出口側は、燃焼ガスの排出口13に連通する燃焼ガス用配管16が接続されている。
【0028】
本実施形態では、蒸発器4の内部において反応媒体と熱交換するときの燃焼ガスの温度が100℃になるように調整されている。例えば、蒸発器4の熱交換面積を調整したり、蒸発器4と工場炉100との間の燃焼ガス用配管15の長さを調整したりしている。
【0029】
蒸発器4は、第1、第2反応器2、3のぞれぞれと連通して、第1、第2反応器2、3に反応媒体を供給可能に構成されている。具体的には、蒸発器4は、第1反応媒体流路を構成する反応媒体用配管31を介して、第1反応器2と接続されている。この反応媒体用配管には第1開閉弁32が設けられており、第1開閉弁32が開くことにより、蒸発器4は第1反応器2と連通状態となり、第1反応器2への反応媒体の供給が可能となる。同様に、蒸発器4は、第2反応媒体流路を構成する反応媒体用配管33を介して、第2反応器3と接続されている。この反応媒体用配管33には第2開閉弁34が設けられており、第2開閉弁34が開くことにより、蒸発器4は第2反応器3と連通状態となり、第2反応器3への反応媒体の供給が可能となる。
【0030】
第1、第2開閉弁32、34の一方が開き、他方が閉じることにより、第1反応器2と蒸発器4との連通状態と、第2反応器3と蒸発器4との連通状態とが切り替えられる。したがって、第1、第2開閉弁32、34が、特許請求の範囲に記載の「2つの反応器のうちの一方と蒸発部との連通状態と、2つの反応器のうちの他方と蒸発部との連通状態とを切り替える第2切替手段」を構成している。
【0031】
凝縮器5は、反応媒体を気体から液体に変換するものであり、反応媒体と外気とを熱交換させることにより、反応媒体を冷却して凝縮させる熱交換器である。
【0032】
凝縮器5は、第1、第2反応器2、3のぞれぞれと連通して、第1、第2反応器2、3で再生された反応媒体を受け入れ可能に構成されている。具体的には、凝縮器5は、第3反応媒体流路を構成する反応媒体用配管35を介して、第1反応器2と接続されている。この反応媒体用配管には第3開閉弁36が設けられており、第3開閉弁36が開くことにより、凝縮器5は第1反応器2と連通状態となり、第1反応器2からの反応媒体の受け入れが可能となる。同様に、凝縮器5は、第4反応媒体流路を構成する反応媒体用配管37を介して、第2反応器3と接続されている。この反応媒体用配管には第4開閉弁38が設けられており、第4開閉弁38が開くことにより、凝縮器5は第2反応器3と連通状態となり、第2反応器3からの反応媒体の受け入れが可能となる。
【0033】
第3、第4開閉弁36、38の一方が開き、他方が閉じることにより、第1反応器2と凝縮器5との連通状態と、第2反応器3と凝縮器5との連通状態とが切り替えられる。したがって、第3、第4開閉弁36、38が、特許請求の範囲に記載の「2つの反応器のうちの一方と凝縮部との連通状態と、2つの反応器のうちの他方と凝縮部との連通状態とを切り替える第4切替手段」を構成している。
【0034】
蒸発器4と凝縮器5とは、第5反応媒体流路を構成する反応媒体用配管39によって接続されている。この反応媒体用配管39に設けられた第5開閉弁40が開くことにより、凝縮器5で凝縮された反応媒体が蒸発器4へ供給される。
【0035】
また、排熱回収装置1は、制御手段としての電子制御装置50を備えている。この電子制御装置50は、燃焼ガス用配管11に設けられた3方弁12や、空気用配管21に設けられた3方弁23の切り替えを制御するとともに、第1開閉弁32、第2開閉弁34、第3開閉弁36、第4開閉弁38、第5開閉弁40の開閉を制御する。
【0036】
次に、上記した構成の排熱回収装置1の作動について、
図2、3を用いて説明する。
【0037】
図2に示すように、電子制御装置50は、第1、第2開閉弁32、34を制御して、第1開閉弁32を開くとともに、第2開閉弁34を閉じることで、第1反応器2と蒸発器4とを連通させる。さらに、電子制御装置50は、空気用配管21に設けられた3方弁23を制御して、空気が第1反応器2を通過して工場炉100に供給される状態とする。
【0038】
また、電子制御装置50は、第3、第4開閉弁36、38を制御して、第3開閉弁36を閉じるとともに、第4開閉弁38が開くことで、第2反応器3と凝縮器5とを連通させる。さらに、電子制御装置50は、燃焼ガス用配管に設けられた3方弁12を制御して、第2反応器3へ燃焼ガスが供給される状態とする。
【0039】
蒸発器4に対しては、特に、弁を制御しなくても、燃焼ガスが供給される状態となっている。蒸発器4では100℃の温度でH
2O(液体)が加熱される。
【0040】
これにより、第1反応器2においては、上記反応式(1)に示すように、蒸発器4から供給されたH
2OとCaBr
2とが反応し、この反応に伴う熱によって工場炉100に供給される空気を加熱する第1機能が実行される。
【0041】
このとき、第1反応器2と蒸発器4とは連通状態であるので、上記反応式(1)は、蒸発器4の内部圧力に相当する圧力下で進む。本実施形態では、工業的に設計が容易である大気圧を内部圧力の上限とした蒸発器4を用いているため、蒸発器4でのH
2Oの蒸発温度を100℃としている。そして、
図4に示すように、100℃のときの水蒸気圧は101.3kPaであり、この水蒸気圧に相当する蒸気圧でのCaBr
2・H
2Oの温度である246℃が、上記反応式(1)における放熱温度である。したがって、工場炉に供給される空気を246℃で予熱することができる。
【0042】
一方、第2反応器3においては、燃焼ガスが供給されることにより、燃焼ガスの熱の入力を受けて、上記反応式(2)に示すように、CaBr
2に反応したH
2Oを再生させる第2機能が実行される。さらに、第2反応器3が凝縮器5に連通することにより、再生されたH
2Oが凝縮器5に流入し、凝縮器5でH
2Oが気体から液体に変換される。
【0043】
このとき、第2反応器3と凝縮器5とは連通状態であるので、上記反応式(2)とH
2Oの凝縮とは同じ圧力下で進む。本実施形態では、155℃の温度で上記反応式(2)が進むようにしており、
図4に示すように、155℃のとき、CaBr
2・H
2Oの蒸気圧は2.4kPaであり、20℃相当の水蒸気圧となるので、凝縮器5では、20℃の温度でH
2Oを凝縮させることができる。
【0044】
なお、電子制御装置50は、第5開閉弁40を開くことで、凝縮器5で凝縮されたH
2Oを蒸発器4に流入させる。
【0045】
そして、第1反応器2での第1機能の実施と、第2反応器3での第2機能の実施とが完了すると、電子制御装置50は、第1機能と第2機能とが2つの反応器で切り替えて実施されるように、第1、第2、第3および第4開閉弁32、34、36、38を制御する。
【0046】
具体的には、
図3に示すように、電子制御装置50は、第1、第2開閉弁32、34を制御して、第1開閉弁32を閉じるとともに、第2開閉弁34を開くことで、第2反応器3と蒸発器4とを連通させる。さらに、電子制御装置50は、空気用配管21に設けられた3方弁23を制御して、空気が第2反応器3を通過して工場炉100に供給される状態とする。
【0047】
また、電子制御装置50は、第3、第4開閉弁36、38を制御して、第3開閉弁36を開くとともに、第4開閉弁38を閉じることで、第1反応器2と凝縮器5とを連通させる。さらに、電子制御装置50は、燃焼ガス用配管に設けられた3方弁12を制御して、第1反応器2へ燃焼ガスが供給される状態とする。
【0048】
このときにおいても、蒸発器4に対しては燃焼ガスが供給される状態となっており、蒸発器4では100℃の温度でH
2O(液体)が加熱される。
【0049】
これにより、第2反応器3においては、上記反応式(1)に示すように、蒸発器4から供給されたH
2OとCaBr
2とが反応し、この反応に伴う熱によって工場炉100に供給される空気を加熱する第1機能が実行される。
【0050】
一方、第1反応器2においては、燃焼ガスが供給されることにより、燃焼ガスの熱の入力を受けて、上記反応式(2)に示すように、CaBr
2に反応したH
2Oを再生させる第2機能が実行される。さらに、第1反応器2が凝縮器5に連通することにより、再生されたH
2Oが凝縮器5に流入し、凝縮器5でH
2Oが気体から液体に変換される。
【0051】
このように、本実施形態の蓄熱装置1は、155℃の排熱を246℃の高温熱に昇温させる上記反応式(1)、(2)による気固吸収式ケミカルヒートポンプを構成している。
【0052】
以上の説明の通り、本実施形態では、第1、第2反応器2、3の一方において、工場炉100の排熱を回収し、回収した熱を利用してCaBr
2に反応したH
2Oを再生させるとともに、第1、第2反応器2、3の他方において、蒸発器4から供給されたH
2OとCaBr
2とを反応させ、この反応に伴う熱によって空気を加熱して工場炉100に供給するように、第1、第2反応器2、3が構成されている。
【0053】
そして、蒸発器4は、工場炉100から排出された排熱を利用してH
2Oを加熱して、H
2Oを液体から気体に変換するように構成されている。
【0054】
ここで、CaBr
2とH
2Oの反応時における放熱温度は、第1、第2反応器2、3の内部圧力に応じた温度となる。第1、第2反応器2、3は、蒸発器4と連通した状態であるので、第1、第2反応器2、3の内部圧力は蒸発器4の内部圧力と同じである。このため、本実施形態と異なり、蒸発器4での蒸発を常温で行うと、その温度での水蒸気圧に相当する蒸気圧に応じた放熱温度となる。例えば、蒸発器4での蒸発温度が20℃(常温)のとき、
図4に示すように、そのときの水蒸気圧は2.4kPaであり、その圧力に応じた蒸気圧でのCaBr
2・H
2Oの温度は155であるため、その圧力に応じた蒸気圧でのCaBr
2とH
2Oの反応時における放熱温度は155℃である。
【0055】
これに対して、本実施形態では、工場炉100から排出された排熱を利用して、蒸発器4での蒸発温度を100℃としているため、上述の通り、CaBr
2とH
2Oの反応時における放熱温度は246℃である。
【0056】
このように、本実施形態によれば、工場炉100から回収した排熱を利用して、蒸発器4でのH
2Oの蒸発を常温よりも工場炉100の温度(500℃)に近い温度(100℃)で行うので、H
2Oの蒸発を常温で行う場合と比較して、工場炉100に還流させる熱の温度を工場炉100の温度側にシフトさせることができる。
【0057】
この結果、本実施形態によれば、H
2Oの蒸発を常温で行う場合と比較して、工場炉100に対して適切な温度の熱を還流させることができ、工場炉100から回収した排熱を有効利用できる。
【0058】
なお、本実施形態では、蒸発器4での蒸発温度を100℃としたが、排熱を利用できる温度範囲内であって、常温よりも高い温度であれば、蒸発温度を他の温度としても良い。例えば、100℃での水蒸気圧よりも高い圧力に耐えられる蒸発器を使用した場合であれば、蒸発温度を100℃よりも高くすることができ、CaBr
2の発熱温度を246℃よりも高くできる。また、蒸発温度を100℃と20℃の間の温度に設定することで、CaBr
2の発熱温度を246℃と155℃の間の温度とすることができる。
【0059】
また、本実施形態では、155℃の温度でCaBr
2に反応したH
2Oを再生させていたが、155℃以外の温度でCaBr
2に反応したH
2Oを再生させることもできる。
【0060】
また、本実施形態では、第1、第2反応器2、3のうちの一方において、蒸発器4と連通し、空気が供給されることにより、蒸発器4から供給されたH
2OとCaBr
2とを反応させ、この反応に伴う熱によって空気を加熱する第1機能が実施され、第1、第2反応器2、3のうちの他方において、工場炉100からの排熱が供給されることにより、CaBr
2に反応したH
2Oを再生させる第2機能が、第1機能と同時に実施されるように、電子制御装置50が第1、第2、第3および第4開閉弁32、34、36、38を制御するようになっている。さらに、第1機能と第2機能とが、第1、第2反応器2、3の一方と他方で切り替えて実施されるように、電子制御装置50が第1、第2、第3および第4開閉弁32、34、36、38を制御するようになっている。
【0061】
これにより、排熱回収装置1の連続運転が可能となり、工場炉100への供給空気の予熱を連続して行うことができる。
【0062】
(他の実施形態)
(1)第1実施形態では、工場炉100に熱を還流させる際の熱媒体を、工場炉100に供給される空気としたが、空気の代わりに、工場炉100に供給される燃料としても良く、燃料と空気の両方としても良い。
【0063】
(2)第1実施形態では、排熱回収装置1が、反応部として第1、第2反応器2、3の2つを有していたが、反応器は3つ以上であっても良く、反応器は1つであっても良い。反応部として少なくとも2つの反応器を有する場合では、第1実施形態と同様に、2つの反応器の一方で第1機能が実施され、2つの反応器の他方で第2機能が同時に実施されるとともに、第1機能と第2機能とが、2つの反応器の一方と他方で切り替えて実施されるようにする。また、反応器が1つの場合では、第1機能と第2機能とが切り替えて実施されるようにする。
【0064】
(3)第1実施形態では、排熱回収装置1は凝縮器5を備えており、再生された反応媒体(H
2O)を凝縮器5で凝縮して、蒸発器4に戻していたが、凝縮器4を省略して、再生された反応媒体を排熱回収装置1の外部に放出するようにしても良い。この場合、蒸発器4に反応媒体が補充される構成を採用する。
【0065】
(4)第1実施形態では、エネルギ変換手段が工場炉100である場合を説明したが、他のエネルギ変換手段に対しても本発明の排熱回収装置の適用が可能である。エネルギ変換手段としては、車両等に搭載されるエンジン等のように、燃料と酸化剤との酸化発熱を利用して、機械的エネルギを出力するものや、燃料電池等のように、燃料と酸化剤との電気化学反応により、電気エネルギを出力するものが挙げられる。
【0066】
(5)第1実施形態では、155℃の燃焼ガスを排出する工場炉100に対して、すなわち、温熱を排出する排熱手段(エネルギ変換手段)に対して、本発明の排熱回収装置を適用したが、冷熱を排出する排熱手段(エネルギ変換手段)に対して、本発明の排熱回収装置を適用することも可能である。
【0067】
冷熱を排出する排熱手段としては、例えば、−100℃の冷熱を生成し、その冷熱を使用した後に−10℃の排熱を排出する冷凍装置が挙げられる。この場合、第1実施形態において、工場炉100をこの冷凍装置に変更し、工場炉100からの燃焼ガスを−10℃の排熱を伝達する熱媒体に変更し、第1、第2反応器2、3に供給される空気を熱媒体に変更する。このとき、化学蓄熱材としては、冷凍装置の排熱温度(−10℃)で吸熱して反応媒体を再生するものを採用する。
【0068】
ここで、反応媒体との反応時に化学蓄熱材が放出する熱の温度(発熱温度)は、第1、第2反応器2、3に連通した蒸発器4での反応媒体の蒸発温度に応じた圧力によって定まり、
図4に示すように、反応媒体の蒸発温度が高ければ、化学蓄熱材の発熱温度は高く、反応媒体の蒸発温度が低ければ、化学蓄熱材の発熱温度は低くなる。
【0069】
この場合においても、−10℃の排熱を利用して、蒸発器4での反応媒体の蒸発を常温よりも冷凍装置の温度(−100℃)に近い温度で行うので、反応媒体の蒸発を常温で行う場合と比較して、冷凍装置に還流させる冷熱の温度を冷凍装置の温度側にシフトさせることができる。
【0070】
この結果、この場合においても、反応媒体の蒸発を常温で行う場合と比較して、冷凍装置に対して適切な温度の熱を還流させることができ、冷凍装置から回収した排熱(冷熱)を有効利用できる。
【0071】
(6)第1実施形態では、反応媒体としてH
2Oを採用したが、H
2Oの代わりに、NH
3を採用しても良い。NH
3はH
2Oと同様に、水素結合が発現するものであり、上記反応式と同様の反応が起きるからである。
【0072】
また、第1実施形態では、化学蓄熱材としてCaイオンとBrイオンとを組み合わせたイオン結晶物を採用したが、他のイオン結晶物を採用しても良い。ただし、アルカリ土類に属するCa、Mg、Sr、Baの陽イオンのうちの少なくとも1つと、O、F、Cl、Br、Iの陰イオンのうちの少なくとも1つと、を組み合わせたイオン結晶物を採用することが好ましい。CaBr2と同様の可逆反応が起きるからである。
【0073】
また、上記したイオン結晶物に限らず、ゼオライト等の他の化学蓄熱材を採用しても良い。ゼオライトの水の吸着反応も、特許請求の範囲に記載の反応に該当する。本発明の排熱回収装置に用いられる化学蓄熱材は、
図4に示すような蒸気圧特性を有する化学蓄熱材であれば良い。すなわち、反応媒体の蒸発時の温度を常温からシフトさせることで反応媒体の再生時の発熱温度を、反応媒体を常温で蒸発させる場合での発熱温度からシフトさせることができるものであれば良い。