【実施例】
【0105】
本発明を以下の実施例により更に詳細に説明するが、本発明の範囲はそれらに限定されるものではない。
【0106】
なお、実施例中の略称は以下の通りである。
bpy;2,2’−ビピリジン
dnbpy;4,4’−ジノニル−2,2’−ビピリジン
H
2dcbpy;2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸
Etcbpy;2,2’−ビピリジン−4,4’−ジカルボン酸ジエチルエステル
BiBzImH
2,BiBzIm;2,2’−ビベンズイミダゾール
BiHeBiTbpy;4,4’−ビス(5’−ヘキシル−[2,2’−ビチオフェン]−5−イル)−2,2’−ビピリジン
BiHexoStbpy;4,4’−ビス(4−(ヘキシロキシ)スチリル)−2,2’−ビピリジン
phen;1,10−フェナントロリン
OTf:トリフルオロメタンスルホン酸イオン
cod;1,5−シクロオクタジエン
【0107】
<二核ルテニウム錯体色素(A)>
実施例A1(二核ルテニウム錯体色素(1a)の合成)
アルゴン雰囲気下、200mLの三口フラスコにジクロロ−p−シメンルテニウムダイマー(0.100g,0.163mmol)、BiHeBiTbpy(0.214g,0.328mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド50mLを加えて脱気した。その後、60℃で4時間反応させた。
【0108】
反応液を放冷後、H
2dcbpy(0.08g,0.328mmol)を加え、再び脱気した後、140℃で21.5時間反応させた。反応液を放冷後、水酸化ナトリウム0.030g、[Ru(dnbpy)
2(BiBzIm)](0.330g,0.294mmol)を加え、140℃で6.5時間反応させた。
【0109】
得られた反応液を濾過し、濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物にアセトン30mL及びpH2.4ヘキサフルオロリン酸水溶液90mLを加え、室温で1時間攪拌した後、濾過し、アセトン:pH2.4ヘキサフルオロリン酸水溶液=1:3で洗浄し、二核ルテニウム錯体色素(1a)0.610gを得た。
【0110】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(1a)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0111】
【化37】
【0112】
実施例A2(二核ルテニウム錯体色素(2a)の合成)
実施例A2−A(単核ルテニウム錯体(M−1);[Ru(Etcbpy)
2(H
2O)
2](OTf)
2の合成)
窒素雰囲気下、500mLの三口フラスコに市販のH
2dcbpy(5.44g,22.3mmol)、濃硫酸(10mL)及びエタノール130mLを加え、一晩還流し、反応させた。反応液を放冷後、中和し、濾過した。濾物を熱水で洗浄し、エタノール/水(95:5)で再結晶を行った。結晶を濾過し、真空乾燥し、Etcbpy4.92gを得た。
【0113】
次に、アルゴン雰囲気下、1000mLの三口フラスコに市販の塩化ルテニウム(1.18g,4.51mmol)、Etcbpy(2.64g,8.79mmol)及びエタノール500mLを加え、7時間還流し、反応させた。反応液を放冷後、濾過し、真空乾燥して、[Ru(Etcbpy)
2Cl
2]1.64gを得た。また、濾液を減圧濃縮し、濃縮物に2mol/L塩酸300mLを加え、5分室温で攪拌後、濾過した。濾物を水で洗浄し、エタノール/ジクロロメタン(10:3)で再結晶を行い、濾過し、真空乾燥して、[Ru(Etcbpy)
2Cl
2]1.34gを得、計2.98gを得た。
【0114】
続いて、200mLの三口フラスコに[Ru(Etcbpy)
2Cl
2](1.37g,1.77mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸銀(1.09g,4.25mmol)及びジクロロメタン140mLを加え、室温で1時間攪拌した。反応液を一晩静置した後、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物にジエチルエーテルを加え、5分間室温で攪拌した後、濾過した。濾物をジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、[Ru(Etcbpy)
2(H
2O)
2](OTf)
21.62gを得た。
【0115】
実施例A2−B(単核ルテニウム錯体(M−2)[(BiBzIm)Ru(BiHeBiTbpy)
2]の合成)
200mLの三口フラスコにBiHeBiTbpy(0.375g,0.574mmol)、[Ru(cod)Cl
2]
n(0.096g,0.344mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド36mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら24分間還流させた。反応液を放冷後、吸引濾過によって濾物を回収し、N,N−ジメチルアセトアミドで洗浄、真空乾燥し、[Ru(BiHeBiTbpy)
2Cl
2]0.371gを得た。
【0116】
次に、アルゴン雰囲気下、100mLの三口フラスコにRu(BiHeBiTbpy)
2Cl
2(0.357g,0.242mmol)、BiBzImH
2(0.062g,0.266mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド25mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら断続的に98分間還流させた。反応液を放冷後、濾過した。得られた濾液に水12mLを加え、1mLの水に溶解させたヘキサフルオロリン酸アンモニウム(0.158g,0.097mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。攪拌した懸濁液を濾過し、濾物をN,N−ジメチルアセトアミド:水=20:12で洗浄後、真空乾燥し、[Ru(BiHeBiTbpy)
2BiBzImH
2](PF
6)
20.166gを得た。
【0117】
続いて、100mLの三口フラスコに[Ru(BiHeBiTbpy)
2BiBzImH
2](PF
6)
2(0.149g,0.077mmol)、メタノール5mL及び28%ナトリウムメトキシド メタノール溶液0.15mL(0.77mmol)を加えて脱気した。その後、2時間還流させた。反応液を放冷後、濾過した。濾物を反応溶液と同じ濃度のナトリウムメトキシド メタノール溶液で洗浄し、真空乾燥し、単核ルテニウム錯体(M−2)[Ru(BiHeBiTbpy)
2(BiBzIm)]0.133gを得た。
【0118】
実施例A2−C(二核ルテニウム錯体色素(2a)の合成)
アルゴン雰囲気下、20mLのシュレンクに単核ルテニウム錯体(M−1)(0.038g,0.038mmol)、単核ルテニウム錯体(M−2)(0.059g,0.036mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド12.5mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら24分間還流させた。得られた反応液を濾過し、その濾液を減圧下で濃縮し、濃縮物に0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液16.3mLを加え、100℃で2時間加熱した。反応液を放冷後、濾過した。濾物にメタノール7.5mL、水7.5mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.02mLを加え、超音波攪拌を15分行った後、0.72mol/Lヘキサフルオロリン酸水溶液を用いて溶液のpHを3.8に調整し、一晩静置した。その後、濾過し、濾物をpH3.8ヘキサフルオロリン酸水溶液、アセトン:ジエチルエーテル=1:8の溶液で洗浄し、真空乾燥後、メタノール12mL、水12mL、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.02mLを加え、超音波攪拌を15分行った後、0.72mol/Lヘキサフルオロリン酸水溶液を用いて溶液のpHを2.8に調整し、一晩静置した。その後、濾過し、濾物をpH2.8ヘキサフルオロリン酸水溶液で洗浄し、二核ルテニウム錯体色素(2a)0.034gを得た。
【0119】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(2a)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0120】
【化38】
【0121】
参考例A1(既存の二核ルテニウム錯体色素(3)の合成)
既知の方法で二核ルテニウム錯体色素(3)を合成した。
【0122】
【化39】
【0123】
実施例A3−1(多孔質チタニア電極の作製)
触媒化成製のチタニアペーストPST−18NRを透明層に、PST−400Cを拡散層に用い、旭硝子株式会社製透明導電性ガラス電極上にスクリーン印刷機を用いて塗布した。得られた膜を25℃、相対湿度60%の雰囲気下で5分間エージングし、このエージングした膜を450℃で30分間焼成した。冷却した膜に対し、同じ作業を所定の厚みになるまで繰り返し、16mm
2の多孔質チタニア電極を作製した。
【0124】
実施例A3−2(色素を吸着した多孔質チタニア電極の作製)
二核ルテニウム錯体色素の0.2mmol/l色素溶液(溶媒:t−ブタノール/アセトニトリルの1:1混合溶媒)に多孔質チタニア電極を30℃で所定の時間浸漬し、乾燥して色素吸着多孔質チタニア電極を得た。
【0125】
実施例A3−3(光化学電池の作製)
以上のようにして得られた色素吸着多孔質チタニア電極と白金板(対極)を重ね合わせた。次に、電解質溶液(3−メトキシプロピオニトリルにヨウ化リチウム、ヨウ素、4−t−ブチルピリジン及び1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムアイオダイドをそれぞれ0.1mol/l、0.05mol/l、0.5mol/l、0.6mol/lとなるように溶解したもの)を両電極の隙間に毛細管現象を利用して染み込ませることにより光化学電池を作製した。
【0126】
実施例A4(紫外可視吸収スペクトル測定)
以下の錯体それぞれについて3×10
−5mol/Lエタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(1)本発明の二核ルテニウム錯体(1a;実施例A1で合成)
(2)本発明の二核ルテニウム錯体(2a;実施例A2で合成)
(3)既存の二核ルテニウム錯体(3;参考例A1で合成)
二核ルテニウム錯体(1a)と二核ルテニウム錯体(3)の紫外可視吸収スペクトルを
図1に、二核ルテニウム錯体(2a)と二核ルテニウム錯体(3)の紫外可視吸収スペクトルを
図2に示す。
【0127】
本発明の錯体(二核ルテニウム錯体色素)、即ち、2,2’−ビピリジン環の4位及び4’位に[2,2’−ビチオフェン]−5−イル基を導入した錯体(1a)は、公知の4位及び4’位が無置換の二核ルテニウム錯体(3)と比べて吸収波長域が約40nm長波長化し、且つ最も長波長側のピークにおける同濃度条件下での吸光度が1.3倍増加していた。本発明の錯体(2a)は、公知の4位及び4’位が無置換の二核ルテニウム錯体(3)と比べて光の吸収波長域が約58nm長波長側へシフトしており、且つ350〜450nm付近の吸光度が大幅に向上した。このことにより、本発明の錯体は、高い性能の光化学電池を製造するための色素となり得ることが判明した。
【0128】
<二核ルテニウム錯体色素(B)>
参考例B1(BiHexoStbpyの合成)
Journal Of American Chemical Society,2006年,128巻,4146−4154頁を参考に合成した。
【0129】
実施例B1(二核ルテニウム錯体色素(1b)〔Ar=4−(ヘキシロキシ)フェニル〕の合成)
実施例B1−A(単核ルテニウム錯体(M−1);[Ru(Etcbpy)
2(H
2O)
2](OTf)
2の合成)
実施例A2−Aと同様にして、[Ru(Etcbpy)
2(H
2O)
2](OTf)
2を合成した。
【0130】
実施例B1−B(単核ルテニウム錯体(M−3);[(BiBzIm)Ru(BiHexoStbpy)
2]〔Ar=4−(ヘキシロキシ)フェニル〕の合成)
200mLの三口フラスコにBiHexoStbpy(1.106g,1.973mmol)、[Ru(cod)Cl
2]
n(0.268g,0.957mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド100mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら34分間還流させた。反応液を放冷後、吸引濾過によって濾物を回収し、N,N−ジメチルホルムアミドで洗浄、真空乾燥し、[Ru(BiHexoStbpy)
2Cl
2]0.779gを得た。
【0131】
次に、アルゴン雰囲気下、100mLの三口フラスコにRu(BiHexoStbpy)
2Cl
2(0.769g,0.595mmol)、BiBzImH
2(0.153g,0.654mmol)及びエチレングリコール25mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら21分間還流させた。反応液を放冷後、アセトン70mL、水30mLを加え、室温で1時間攪拌した。その後、反応液を濾過した。濾液に2mLの水に溶解させたヘキサフルオロリン酸アンモニウム(0.388g,2.380mmol)を加え、室温で30分攪拌した。濾物を水で洗浄後、真空乾燥し、[Ru(BiHexoStbpy)
2BiBzImH
2](PF
6)
20.789gを得た。
【0132】
続いて、100mLの三口フラスコに[Ru(BiHexoStbpy)
2BiBzImH
2](PF
6)
2(0.751g,0.430mmol)、メタノール11mL及び10%リチウムメトキシド メタノール溶液1.63mL(4.30mmol)を加えて脱気した。その後、1時間還流させた。反応液を放冷後、濾過した。濾物を0.39mol/L(反応溶液と同じ濃度)リチウムメトキシド メタノール溶液で洗浄し、真空乾燥し、単核ルテニウム錯体(M−3)[Ru(BiHexoStbpy)
2(BiBzIm)]0.626gを得た。
【0133】
実施例B1−C(二核ルテニウム錯体色素(1b)〔Ar=4−(ヘキシロキシ)フェニル〕の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三口フラスコに単核ルテニウム錯体(M−1)(0.141g,0.139mmol)、単核ルテニウム錯体(M−3)(0.202g,0.139mmol)及びN,N−ジメチルアセトアミド25mLを加えて脱気した。その後、2.45GHzのマイクロ波照射下にて攪拌しながら22分間還流させた。得られた反応液を放冷後、減圧下で濃縮し、濃縮物に0.2mol/L水酸化ナトリウム水溶液36mLを加え、100℃で2時間加熱した。反応液を放冷後、濾過した。濾物をアセトン:ジエチルエーテル=1:8の溶液で洗浄した。その後、濾物を水50mLに懸濁させ、0.72mol/Lヘキサフルオロリン酸水溶液を用いて溶液のpHを3.5に調整し、一晩静置した。その後、濾過し、濾物をpH3.5ヘキサフルオロリン酸水溶液、アセトン:ジエチルエーテル=1:8の溶液、及びジエチルエーテルで洗浄し、真空乾燥し、二核ルテニウム錯体色素(1b)0.125gを得た。
【0134】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(1b)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0135】
【化40】
【0136】
参考例B2(二核ルテニウム錯体色素(5)〔実施例B1において4−(ヘキシロキシ)スチリル基を無置換にしたもの〕の合成)
既知の方法で二核ルテニウム錯体色素(5)を合成した。
【0137】
【化41】
【0138】
実施例B2(光化学電池の作製)
実施例A3−1〜A3−3と同様にして、色素吸着多孔質チタニア電極を作製し、光化学電池を作製した。
【0139】
実施例B3(紫外可視吸収スペクトル測定)
以下の錯体それぞれについて3×10
−5mol/Lエタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(1)本発明の二核ルテニウム錯体(1b;実施例B1で合成)
(2)既存の二核ルテニウム錯体(5;参考例B2で合成)
二核ルテニウム錯体(1b)と既存の二核ルテニウム錯体(5)の紫外可視吸収スペクトルを
図3に示す。
【0140】
本発明の錯体(二核ルテニウム錯体色素)、即ち、2,2’−ビピリジン環の4位及び4’位にスチリル基を導入した錯体(1b)は、公知の4位及び4’位が無置換の二核ルテニウム錯体(5)と比べて光の吸収波長域が約40nm長波長側へシフトしており、且つ最も長波長側のピークにおける同濃度条件下での吸光度が1.1倍増加していた。このことにより、本発明の錯体は、高い性能の光化学電池を製造するための色素となり得ることが判明した。
【0141】
実施例B4(二核ルテニウム錯体色素(2b)〔Ar=4−(ヘキシロキシ)フェニル、R
1=水素原子、R
2同士が互いに結合してベンゼン環を形成〕の合成)
アルゴン雰囲気下、300mLの三口フラスコにジクロロ−p−シメンルテニウムダイマー(0.200g,0.326mmol)、BiHexoStbpy(0.366g,0.653mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド100mLを加えて脱気した。その後、60℃で3.5時間反応させた。
【0142】
反応液を放冷後、H
2dcbpy(0.160g,0.655mmol)を加え、再び脱気した後、140℃で8.5時間反応させた。反応液を放冷後、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1.32mL、[Ru(phen)
2(BiBzIm)](0.408g,0.588mmol)を加え、3時間還流しながら反応させた。
【0143】
得られた反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物にメタノール30mL及び2mol/L塩酸0.1mLを加え、濾過した。濾物をメタノールに溶解し、液体クロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール(0.2容量%のギ酸を含有);水(0.2容量%のギ酸を含有)=88:12(容量比))で分取して、目的物を含有するフラクションを得た。得られたフラクションを減圧下で濃縮し、濃縮物をメタノール、アセトン及び0.4mol/Lヘキサフルオロリン酸水溶液(pH2)に懸濁させた後、一晩放置した。得られた固体を濾過し、二核ルテニウム錯体色素(2b)0.116gを得た。
【0144】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(2b)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0145】
【化42】
【0146】
参考例B3(既存の二核ルテニウム錯体色素(6)の合成)
既知の方法で二核ルテニウム錯体色素(6)を合成した。
【0147】
【化43】
【0148】
実施例B5(光化学電池の作製)
実施例A3−1〜A3−3と同様にして、色素吸着多孔質チタニア電極を作製し、光化学電池を作製した。
【0149】
実施例B6(紫外可視吸収スペクトル測定)
以下の錯体それぞれについて3×10
−5mol/Lエタノール溶液を調製し、紫外可視吸収スペクトルを測定した。
(1)本発明の二核ルテニウム錯体(2b;実施例B4で合成)
(2)既存の二核ルテニウム錯体(6;参考例B3で合成)
二核ルテニウム錯体(2b)と既存の二核ルテニウム錯体(6)の紫外可視吸収スペクトルを
図4に示す。
【0150】
実施例B7(光電変換効率の測定)
本発明の二核ルテニウム錯体(2b)と既存の二核ルテニウム錯体(6)について、得られた光化学電池の光電変換効率を、英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。その結果を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
本発明の錯体(二核ルテニウム錯体色素)、即ち、2,2’−ビピリジン環の4位及び4’位にスチリル基を導入した錯体(2b)は、公知の4位及び4’位にジカルボン酸を持つ二核ルテニウム錯体(6)と比べて光の吸収波長域が約40nm長波長側へシフトしており、且つ最も長波長側のピークにおける吸光係数が1.1倍増加していた。更に、相対的に高い光電変換効率を示していた。これらのことにより、本発明の錯体は、高い性能の光化学電池を製造するための色素となり得ることが判明した。
【0153】
<二核ルテニウム錯体色素(C)>
実施例C1(二核ルテニウム錯体色素(C2)〔左側のRuの配位子:R
1=ノニル基、R
2=水素原子;右側のRuの配位子:R
2同士が互いに結合してベンゼン環を形成〕の合成)
アルゴン雰囲気下、100mLの三口フラスコにジクロロ−p−シメンルテニウムダイマー(0.100g,0.164mmol)、dnbpy(0.139g,0.329mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド50mLを加えて脱気した。その後、60℃で4時間反応させた。
【0154】
反応液を放冷後、H
2dcbpy(0.080g,0.328mmol)を加え、再び脱気した後、160℃で4時間反応させた。反応液を放冷後、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液0.67mL、[Ru(phen)
2(BiBzIm)](0.207g,0.298mmol)を加え、5.5時間還流しながら反応させた。
【0155】
得られた反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物をメタノール30mLに溶解させた後、pH2のヘキサフルオロリン酸水溶液8mLを加え、析出した固体を濾過した。
【0156】
次いで、濾液にpH2のヘキサフルオロリン酸水溶液16.5mLを加え、析出した固体を濾過した。濾物を乾燥させた後、メタノールに溶解し、液体クロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール(0.2容量%のギ酸を含有))で分取して、目的物を含有するフラクションを得た。得られたフラクションを減圧下で濃縮し、濃縮物をメタノール10mLに溶解させた。その後、pH2のヘキサフルオロリン酸水溶液10mLを加えた。析出した固体を濾過し、二核ルテニウム錯体色素(C2)0.104gを得た。
【0157】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(C2)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0158】
【化44】
【0159】
実施例C2(二核ルテニウム錯体色素(C3)〔R
1=ノニル基、R
2=水素原子〕の合成)
アルゴン雰囲気下、200mLの三口フラスコにジクロロ−p−シメンルテニウムダイマー(0.200g,0.327mmol)、dnbpy(0.277g,0.657mmol)及びN,N−ジメチルホルムアミド100mLを加えて脱気した。その後、60℃で4時間反応させた。
【0160】
反応液を放冷後、H
2dcbpy(0.160g,0.656mmol)を加え、再び脱気した後、160℃で4時間反応させた。反応液を放冷後、1mol/L水酸化ナトリウム水溶液1.34mL、[Ru(dnbpy)
2(BiBzIm)](0.678g,0.589mmol)を加え、2時間還流しながら反応させた。
【0161】
得られた反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物をメタノールに溶解し、液体クロマトグラフィー(展開溶媒;メタノール(0.2容量%のギ酸を含有))で分取して、目的物を含有するフラクションを得た。得られたフラクションを減圧下で濃縮し、濃縮物をメタノール2.5mLに溶解させた。その後、pH2のヘキサフルオロリン酸水溶液2.5mLを加えた。析出した固体を濾過し、二核ルテニウム錯体色素(C3)0.096gを得た。
【0162】
この二核ルテニウム錯体色素の代表構造を式(C3)に示す。当該錯体色素は、カルボキシル基の1又は複数のプロトンが解離しているものもある。
【0163】
【化45】
【0164】
参考例C1(二核ルテニウム錯体色素(C4)〔左側のRuの配位子:R
1=COOH、R
2=水素原子;右側のRuの配位子:R
2同士が互いに結合してベンゼン環を形成〕の合成)
既知の方法で二核ルテニウム錯体色素(C4)を合成した。
【0165】
【化46】
【0166】
参考例C2(二核ルテニウム錯体色素(C5)〔左側のRuの配位子:R
1=COOH、R
2=水素原子;右側のRuの配位子:R
1=ノニル基、R
2=水素原子〕の合成)
既知の方法で二核ルテニウム錯体色素(C5)を合成した。
【0167】
【化47】
【0168】
実施例C3(光化学電池の作製)
実施例A3−1〜A3−3と同様にして、色素吸着多孔質チタニア電極を作製し、光化学電池を作製した。
【0169】
実施例C4(耐久性評価)
得られた光化学電池を60℃暗所で所定の時間静置した後、室温に戻し、光電変換効率(η)を英弘精機株式会社製のソーラーシュミレーターを用い、100mW/cm
2の擬似太陽光を照射し測定した。各々の錯体色素の60℃暗所放置1日後の光電変換効率を100%とした場合の5日後の光電変換効率の維持率を表2に示す。
【0170】
【表2】
【0171】
以上の結果より、本発明の錯体色素を用いると、R
1にカルボキシル基を有する錯体と比べて、光電変換効率の維持率(即ち、耐久性)が向上することが判明した。