特許第5780251号(P5780251)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5780251アクチュエータおよびこれを備えた精密機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780251
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】アクチュエータおよびこれを備えた精密機械
(51)【国際特許分類】
   F16C 29/06 20060101AFI20150827BHJP
   F16H 19/02 20060101ALI20150827BHJP
   F16C 32/06 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   F16C29/06
   F16H19/02 F
   F16C32/06 A
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-42087(P2013-42087)
(22)【出願日】2013年3月4日
(65)【公開番号】特開2014-169752(P2014-169752A)
(43)【公開日】2014年9月18日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊徳
【審査官】 河端 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−248703(JP,A)
【文献】 特開2008−101642(JP,A)
【文献】 実開昭62−138505(JP,U)
【文献】 特開平05−116002(JP,A)
【文献】 特公昭58−033934(JP,B2)
【文献】 実公昭63−030817(JP,Y2)
【文献】 特開2002−349564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
F16C 32/06
F16H 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動プーリと従動プーリとの間に掛け渡された駆動ベルトと、
前記駆動ベルトと並列に配置されたガイドレールと、
前記ガイドレールとの間に静圧空気軸受を形成する静圧パッドを有し、前記駆動ベルトの駆動により前記ガイドレールに沿って往復運動するスライダと、
ベアリング、案内レール、および転動体を有し、前記ベアリングは、前記案内レールの各側面と対向配置される一対の脚部と、前記一対の脚部を連結する胴部とを有し、前記転動体は、前記ベアリングおよび前記案内レールの互いに対向する面に形成された転動面で形成される軌道内と、前記ベアリングに形成された転動体戻し路内とに配置され、前記ベアリングが前記転動体を介して前記案内レールに対して相対的に直線移動するリニアガイド装置と、
を有し、
前記ガイドレールの長手方向一端は、前記駆動プーリのハウジングの下に固定された駆動側固定板に固定され、
前記駆動側固定板に前記ベアリングを、前記胴部を前記駆動側固定板に向けて固定するとともに、基台に前記案内レールを、前記ベアリング側とは反対側の面を前記基台側に向け、且つ前記ガイドレールと平行に延びるように固定することにより、前記駆動側固定板を前記リニアガイド装置を介して前記基台に対して、前記ガイドレールに沿って直線移動可能に取り付けて使用され、
前記ガイドレールの長手方向他端は、前記従動プーリのハウジングの下に固定された従動側固定板に固定され、前記従動側固定板を、前記基台のベースラインより高く形成された凸部に固定して使用されるアクチュエータ。
【請求項2】
請求項1記載のアクチュエータを直線案内アクチュエータとして備えた精密機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベルト駆動でガイドレールに沿って往復運動するスライダを備えたアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、高精度な製造装置、検査装置、搬送装置等では、回転モータによるベルト駆動で、スライダがガイドレールに沿って往復運動するアクチュエータが使用されている。このアクチュエータを構成するスライダはガイドレールに対する軸受を備えている。 駆動ベルトは駆動プーリと従動プーリとの間に掛け渡されている。このようなアクチュエータの従来例としては、特許文献1および2に記載されたものが挙げられる。
特許文献1および2に記載されたアクチュエータは、別々のガイドレールに沿って移動する主軸受(搭載物を固定するスライダ)とカウンタ軸受(スライダ)を有している。これらの軸受は、各ガイドレールとの間に静圧空気軸受を形成する静圧パッドを有する。
【0003】
このようなアクチュエータは、通常、ガイドレールの長手方向一端が基台の駆動プーリ側にボルトで固定され、他端が従動プーリ側にボルトで固定されて使用される。よって、ガイドレールと基台との材質が異なることで熱膨張係数の差が大きいと、温度変化によりガイドレールと基台との間に伸縮差が生じる。また、ガイドレールと基台との材質が同じであっても、両者に温度差が生じると伸縮差が生じる。そして、ガイドレールと基台との間に伸縮差が生じるとガイドレールに歪みが生じるため、これを防止する対策を施す必要がある。
【0004】
特許文献3には、その対策として、直線案内装置の軌道レールを取り付けるベース(基台)に軌道レールの底部を挿入する溝を設け、この溝に軌道レールの底部を挿入すると共に、軌道レールの少なくとも一側面を溝内側面に向けて押圧する押圧部材を設けることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−248703号公報
【特許文献2】特開2008−101642号公報
【特許文献3】特開2002−349564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献3に記載された対策では、直線案内装置の運動精度が基台に設けた溝の底面および側面の面精度に依存することになり、スライダの直進精度(真直度)が低下する恐れがある。そのため、基台の溝の底面および側面だけでなく、これらの面に接触させるレールの面も高精度に加工する必要があり、加工コストが高くなる。また、基台の材質に応じて専用のレールが必要となる。よって、特許文献3に記載された対策はコスト面で改善の余地がある。
この発明の課題は、ベルト駆動でガイドレールに沿って往復運動するスライダを備えたアクチュエータに関し、基台との間に伸縮差が生じた場合にガイドレールに歪みが生じることを、特許文献3に記載された対策よりもコストが低い対策で防止することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明の一態様のアクチュエータは、(1) 駆動プーリと従動プーリとの間に掛け渡された駆動ベルトと、(2) 前記駆動ベルトと並列に配置されたガイドレールと、(3) 前記ガイドレールとの間に静圧空気軸受を形成する静圧パッドを有し、前記駆動ベルトの駆動により前記ガイドレールに沿って往復運動するスライダと、(4) ベアリング、案内レール、および転動体を有し、前記ベアリングは、前記案内レールの各側面と対向配置される一対の脚部と、前記一対の脚部を連結する胴部とを有し、前記転動体は、前記ベアリングおよび前記案内レールの互いに対向する面に形成された転動面で形成される軌道内と、前記ベアリングに形成された転動体戻し路内とに配置され、前記ベアリングが前記転動体を介して前記案内レールに対して相対的に直線移動するリニアガイド装置と、を有し、(5) 前記ガイドレールの長手方向一端は、前記駆動プーリのハウジングの下に固定された駆動側固定板に固定され、前記駆動側固定板に前記ベアリングを、前記胴部を前記駆動側固定板に向けて固定するとともに、基台に前記案内レールを、前記ベアリング側とは反対側の面を前記基台側に向け、且つ前記ガイドレールと平行に延びるように固定することにより、前記駆動側固定板を前記リニアガイド装置を介して前記基台に対して、前記ガイドレールに沿って直線移動可能に取り付けて使用され、(6) 前記ガイドレールの長手方向他端は、前記従動プーリのハウジングの下に固定された従動側固定板に固定され、前記従動側固定板を、前記基台のベースラインより高く形成された凸部に固定して使用される。
【0008】
この発明の一態様のアクチュエータは、前記構成(1) 〜(3) を有するアクチュエータのガイドレールの長手方向一端である駆動プーリ側(発熱源側)の端部が、リニアガイド装置を介して基台に固定されることで、ガイドレールと基台とに生じた伸縮差が、リニアガイド装置のベアリングが案内レールに対して相対的に直線移動することにより吸収される。よって、ガイドレールと基台とに伸縮差が生じた場合にガイドレールに歪みが生じることが防止される。
【0009】
この発明の一態様のアクチュエータでは、ガイドレールの長手方向一端である駆動プーリ側の端部に、一般的なリニアガイド装置を設置することで、基台との伸縮差によりガイドレールに歪みが生じることを防止する対策を施している。この対策は特許文献3に記載された対策よりも低コストで実現できる。
この発明の一態様のアクチュエータは、精密機械(精密加工機械、精密検査装置、精密スキャン装置、半導体デバイス製造装置、フラットパネルディスプレイ製造装置など)の直線案内アクチュエータとして好適に使用できる。
【発明の効果】
【0010】
この発明のアクチュエータは、特許文献3に記載された対策よりも低コストな対策で、基台との間に伸縮差が生じた場合にガイドレールに歪みが生じることが防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のアクチュエータを示す平面図である。
図2】実施形態のアクチュエータを示す側面図である。
図3図2のA−A断面図である。
図4図2のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明はこの実施形態に限定されるものではない。
この実施形態のアクチュエータは、図1および図2に示すように、駆動ベルト1と、ガイドレール2と、スライダ3と、リニアガイド装置4と、従動プーリ51と、駆動プーリ52と、駆動プーリ52を回転駆動するモータ6とで構成されている。駆動ベルト1は、従動プーリ51と駆動プーリ52に掛け渡されている。ガイドレール2は、上側が開放された凹状の断面形状を有し、対向する二つの側部材21と底板部22とからなる。
【0013】
ガイドレール2の長手方向一端は、駆動プーリ52のハウジング52aが固定された駆動側固定板25に固定されている。ガイドレール2の長手方向他端は、従動プーリ51のハウジング51aが固定された従動側固定板26に固定されている。駆動側固定板25はリニアガイド装置4を介して基台7に取り付けられている。ガイドレール2は、例えば、アルミナなどのセラミックス製または鉄鋼製であり、基台7は、例えば、石製、鉄鋼製、アルミニウム合金製である。
【0014】
図3に示すように、リニアガイド装置4は、案内レール41と、二個のベアリング42と、ボール(転動体)43とからなり、ベアリング42が駆動側固定板25にボルト75で固定されている。案内レール41は基台側固定板71にボルト76で固定されている。基台側固定板71は基台7にボルト77で固定されている。また、図4に示すように、従動側固定板26は、基台7のベースラインLより高く形成された凸部7aにボルト78で固定されている。
【0015】
すなわち、ガイドレール2の長手方向一端である駆動プーリ52側の端部は、駆動側固定板25、リニアガイド装置4、および基台側固定板71を介して基台7に取り付けられている。また、ガイドレール2の長手方向他端である従動プーリ51側の端部は、基台7のベースラインLより高く形成された凸部7aに固定されている。
【0016】
スライダ3は、図3および図4に示すように、ガイドレール2の上側に配置される上板31と、ガイドレール2の底板部22の下側に配置される底板32と、ガイドレール2の各側部材21の外側に配置される一対の側板33,34とで構成されている。そして、上板31の下面の両端側(ガイドレール2の各側部材21の上面と対向する位置)、底板32の上面の両端側(ガイドレール2の各側部材21の上面と対向する位置)、一対の側板33,34の内面の上部及び下部に、それぞれグラファイト多孔質で形成された静圧パッド31a〜34aが配置されている。これらの静圧パッド31a〜34aとガイドレール2の各側部材21との間に、静圧空気軸受が形成される。
【0017】
図2図4に示すように、駆動ベルト1の下側部はガイドレール2の凹部内に配置されている。駆動ベルト1の固定部(下側部のスライダ3内の中央に配置されている部分)10が、取り付け部材8を介して、スライダ3の上板31に固定されている。
図3に示すように、取り付け部材8は、駆動ベルト1の固定部11を上下から挟む上板部材81および下板部材82と板ばね83からなる。駆動ベルト1の固定部10が下板部材82の凹部82aに配置され、上板部材81がボルト91で下板部材82に固定されている。また、板ばね83の一対の裾板83aがボルト92で上板部材81に固定され、板ばね83の頂板83bがスライダ3の上板31にボルト93で固定されている。
【0018】
この実施形態のアクチュエータによれば、材質の違いや温度差に伴ってガイドレール2と基台7とに生じた伸縮差が、リニアガイド装置4のベアリング42が案内レール41に対して相対的に直線移動することにより吸収されるため、ガイドレール2に歪みが生じることが防止される。また、一般的なリニアガイド装置4を設置することで、基台7との伸縮差によりガイドレール2に歪みが生じることを防止する対策を施している。この対策は特許文献3に記載された対策よりも低コストで実現できる。
なお、この実施形態では、リニアガイド装置としてベアリング42を二個有し、転動体がボールであるものを使用しているが、ベアリングの数や転動体の種類はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0019】
1 駆動ベルト
10 駆動ベルトの固定部
2 ガイドレール
21 側部材
22 底板部
25 駆動側固定板
26 従動側固定板
3 スライダ
31 スライダの上板
32 スライダの底板
33,34 スライダの側板
31a〜34a スライダの静圧パッド
4 リニアガイド装置
41 案内レール
42 ベアリング
43 ボール(転動体)
51 従動プーリ
52 駆動プーリ
6 モータ
7 基台
71 基台側固定板
8 取り付け部材
81 上板部材
82 下板部材
82a 下板部材の凹部
83 板ばね
83a 板ばねの裾板
83b 板ばねの頂板
図1
図2
図3
図4