特許第5780260号(P5780260)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5780260織機における緯糸測長貯留装置の支持装置
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  • 特許5780260-織機における緯糸測長貯留装置の支持装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780260
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】織機における緯糸測長貯留装置の支持装置
(51)【国際特許分類】
   D03D 49/02 20060101AFI20150827BHJP
   D03D 47/36 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   D03D49/02
   D03D47/36
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-81688(P2013-81688)
(22)【出願日】2013年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-201863(P2014-201863A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2014年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】林 宣彦
(72)【発明者】
【氏名】上坂 威生
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−126838(JP,A)
【文献】 特表2005−504190(JP,A)
【文献】 実開平03−050080(JP,U)
【文献】 実開昭58−131979(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 29/00 − 51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
織機の側方に、制御部材により電気的に制御される緯糸測長貯留装置の支柱を立設した織機における緯糸測長貯留装置の支持装置において、
前記支柱を、前記支柱の長手方向の面に開口した空間部を有する本体と前記空間部を覆うように前記本体に着脱可能に設けたカバーとで構成し、前記空間部に、前記制御部材を収納したことを特徴とする織機における緯糸測長貯留装置の支持装置。
【請求項2】
前記空間部に、前記制御部材と電源とを接続する電源線の一部及び前記制御部材と前記緯糸測長貯留装置とを接続する配線の一部を収納したことを特徴とする請求項1に記載の織機における緯糸測長貯留装置の支持装置。
【請求項3】
前記本体を断面コの字形の溝型鋼材で形成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の織機における緯糸測長貯留装置の支持装置。
【請求項4】
記空間部を形成する前記本体の壁面に前記制御部材を直接取付けたことを特徴とする請求項3に記載の織機における緯糸測長貯留装置の支持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、織機における緯糸測長貯留装置の支持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ジェットルームにおける緯糸測長貯留装置の支持機構が開示されている。特許文献1の支持機構は、3個の緯糸測長貯留装置を支柱に取付けてある。第1の緯糸測長貯留装置は支柱の上部に取付け金具を介して支持されている。第2の緯糸測長貯留装置は支柱に固定された支持バーの一端部に載置して支持され、第3の緯糸測長貯留装置は支持バーの他端部に載置して支持されている。
【0003】
支柱の横には、制御コンピュータを収容した箱体が設置されている。箱体の上面に形成された傾斜面には、入力操作部及び表示部が設けられている。箱体に収容されている制御コンピュータは、第1〜第3の緯糸測長貯留装置にそれぞれ備えられたモータ、緯糸解舒検出器及び緯糸係止ピンを作動する電磁ソレノイドに配線により接続されている。
【0004】
特許文献2には、マイクロプロセッサを有する電子速度制御器により制御されるモータを内蔵し、モータにより糸の巻付け要素が駆動される織機又は編機の給糸装置が開示されている。電子速度制御器は、給糸装置のハウジングブラケットに設けられ、給糸装置のモータと巻糸を監視する検出器アセンブリとに接続して信号を伝達し、糸の巻付け要素を設定された回転位置に調整するように制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−126838号公報
【特許文献2】特表2005−504190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、箱体内の制御コンピュータと緯糸測長貯留装置に備えられたモータ、緯糸解舒検出器及び緯糸係止ピンを作動する電磁ソレノイドとを接続する配線が長くなり、ノイズの影響を受け易い。このため、ノイズにより制御コンピュータの制御不良を生じ、緯糸測長貯留装置が誤動作する恐れがある。
【0007】
特許文献2のように、給糸装置のハウジングブラケットに設けたマイクロプロセッサを有する電子速度制御器には、給糸装置のモータ及び巻付け要素の回転により生じる振動が直接伝達される。このため、電子速度制御器は、振動の影響を受け、巻付け要素の回転制御における誤動作や、マイクロプロセッサの損傷等を引き起こす恐れがあり、強固な防振対策を施す必要がある。また、給糸装置には、全ての制御部品を設置する余裕が無いため、特許文献1のように、一部の制御部品を収容する独立した制御ボックスを設置する必要がある。この場合には、制御ボックスと給糸装置とを接続する配線が長くなり、特許文献1と同様にノイズの影響を受け易いという問題を生じる。
【0008】
本願発明は、緯糸測長貯留装置の制御部材の耐ノイズ性能及び耐振動性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1は、織機の側方に、制御部材により電気的に制御される緯糸測長貯留装置の支柱を立設した織機における緯糸測長貯留装置の支持装置において、前記支柱を、前記支柱の長手方向の面に開口した空間部を有する本体と前記空間部を覆うように前記本体に着脱可能に設けたカバーとで構成し、前記空間部に、前記制御部材を収納したことを特徴とする。
【0010】
請求項1によれば、制御部材を緯糸測長貯留装置の支柱内部に収納し、緯糸測長貯留装置と制御部材とを繋ぐ配線が短いため、配線におけるノイズの影響を受け難く、緯糸測長貯留装置の制御不良の発生を防止することができる。また、制御部材は緯糸測長貯留装置と分離して設置されるため、緯糸測長貯留装置の作動中における振動の影響を無くすことができ、特別な防振対策を必要としない。
【0011】
請求項2は、前記空間部に、前記制御部材と電源とを接続する電源線の一部及び前記制御部材と前記緯糸測長貯留装置とを接続する配線の一部を収納したことを特徴とする。請求項2によれば、外部に露出し、乱雑な状態になりやすい配線を空間部内に収納することができる。このため、織機の側方における乱雑さが無くなり、外観品質を高めることができる。
【0012】
請求項3は、前記本体を断面コの字形の溝型鋼材で形成したことを特徴とする。請求項3によれば、支柱を構成する本体は市販品を利用して製作することができ、支柱の製作が容易であるとともにコストダウンにも貢献することができる。
【0013】
請求項4は、前記空間部を形成する前記本体の壁面に前記制御部材を直接取付けたことを特徴とする。請求項4によれば、緯糸測長貯留装置の制御部材が発生する熱を鋼材で製作された支柱に放熱することができ、特別な放熱手段を設ける必要が無い。
【発明の効果】
【0014】
本願発明は、緯糸測長貯留装置の制御部材の耐ノイズ性能及び耐振動性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】緯糸測長貯留装置の支持装置を示す正面図である。
図2】支持装置を構成する本体の内部を示す正面図である。
図3】(a)は図2に示した本体の側面図、(b)は(a)のA−A線断面図である。
図4】本体のカバーを示し、(a)はカバーの正面図、(b)はカバーの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本願発明の実施形態を図1図4に基づいて説明する。図1において、エアジェット織機1の側方の床面2上には、支持装置3が配置されている。支持装置3は、床面2上に置かれた設置台4に立設した支柱5を有する。支柱5は、床面2側から上方に延びる長尺の本体6と本体6の前面に複数の螺子7により着脱可能に設けたカバー8から構成されている。支柱5の下端はブラケット9に固定され、ブラケット9が設置台4上にボルト10で固定されることにより、支柱5が立設されている。
【0017】
支柱5の上端側の両側面には、それぞれ2個の取付けアーム11、12、13、14がボルトにより固定され、各取付けアーム11、12、13、14に緯糸測長貯留装置15、16、17、18がボルトにより固定され、支持されている。各緯糸測長貯留装置15、16、17、18は、それぞれモータ19、20、21、22、緯糸解除センサー23、24、25、26及び緯糸係止ピン(図示せず)を作動する電磁ソレノイド27、28、29、30を備えている。
【0018】
支柱5の本体6は、図2及び図3に示すように、支柱5の前面に、上下の長手方向に開口した空間部31を形成するように、断面コの字形の溝型鋼材で形成されている。本体6の両側面42、46には、空間部31の開口側に近い位置に、複数の貫通した孔51が穿設されている。本体6の空間部31には、緯糸測長貯留装置15、16、17、18を電気的に制御する制御部材32、33が収納され、制御部材32、33は空間部31を形成する壁面の1つである奥壁面34に螺子35により直接取付けられている。なお、空間部31内には、制御部材32、33の取付け位置よりも離れた2箇所の位置に、位置決め部材50、50が設けられている。位置決め部材50、50は、空間部31の開口側にあたる本体6の端面との間に、カバー8の厚みに相当する隙間を空けて本体6に固定されている(図3(a)参照)。
【0019】
また、本体6の空間部31内には、制御部材32、33と電源(図示せず)とを接続する電源線36の一部及び制御部材32、33と緯糸測長貯留装置15、16、17、18とを接続する配線37、38、39、40の一部が収納されている。また、制御部材32、33間を接続する配線41群が収納されている。
【0020】
電源線36は、本体6の下端側の側面42に穿設された貫通孔43を通して空間部31内に挿通されている。緯糸測長貯留装置15、17と接続する配線37、39は、緯糸測長貯留装置15、17に近い位置で、本体6の側面42に穿設された貫通孔44、45を通して空間部31内に引き通されている。また、緯糸測長貯留装置16、18と接続する配線38、40は、緯糸測長貯留装置16、18に近い位置で、本体6の反対側の側面46に穿設された貫通孔47、48を通して空間部31内にそれぞれ引き通されている。
【0021】
本体6の空間部31の開口を覆うカバー8は、図4に示すように、鉤型に屈曲された頭部49を有する平板材で形成されている。カバー8の長さは、本体6の上下の長手方向と同じ寸法で形成され、カバー8の幅は、本体6の空間部31に挿入可能な寸法で形成されている。カバー8は、本体6の空間部31に挿入された時、空間部31内の上下2箇所に設けられた位置決め部材50、50(図3参照)と接触して位置決めされ、カバー8の頭部49は本体6の上端を覆うことができる。また、カバー8の両側面には、それぞれ4箇所に螺子孔52が穿設されている。
【0022】
本実施形態では、立設された支柱5のカバー8を外し、本体6の空間部31に制御部材32、33を固定し、電源線36を貫通孔43から空間部31内に挿通し、制御部材32、33に接続する。制御部材32、33に接続する空間部31内の配線37、38、39、40をそれぞれ貫通孔44、45、47、48から外部に引き出す。本体6の空間部31に、制御部材32、33及び制御部材32、33間を接続する配線41群を収納した後、カバー8が空間部31に挿入され、位置決め部材50、50に当接した状態で、複数の螺子7を本体6の複数の孔51及びカバー8の複数の螺子孔52にそれぞれ通して締付け、カバー8を本体6に固定する。
【0023】
本体6にカバー8を固定することにより支柱5が完成し、図1に示すように、支柱5に固定された取付けアーム11、12、13、14にそれぞれ緯糸測長貯留装置15、16、17、18を載置し、ボルトにより固定する。続いて、支柱5から引き出してある配線37、38、39、40を、それぞれモータ19、20、21、22、緯糸解除センサー23、24、25、26及び電磁ソレノイド27、28、29、30に接続し、緯糸測長貯留装置15、16、17、18の設置が完了する。
【0024】
制御部材32、33、配線37、38、39、40及び配線41群は本体6の空間部31に収納された構成であるため、支柱5の下方に制御ボックスを設けてそこから配線する場合に比べて、制御部材32、33、配線37、38、39、40及び配線41群を緯糸測長貯留装置15、16、17、18により近付けることができる。このため、本実施形態では、外部空間に露出している配線がより短くなり、ノイズの影響を受け難くすることができる。また、制御部材32、33を緯糸測長貯留装置15、16、17、18から分離して設けているため、緯糸測長貯留装置15、16、17、18による振動の影響を無くすことができる。しかも、支柱5と緯糸測長貯留装置15、16、17、18との距離が短いため、配線37、38、39、40を短くすることができ、コストダウンにも効果がある。
【0025】
また、制御部材32、33を収容するための専用の制御ボックスが不要となり、制御ボックスから緯糸測長貯留装置15、16、17、18に接続するために外部に露出し、乱雑な状態になりやすい配線を空間部31内に収納することができる。このため、エアジェット織機1の側方における乱雑さが無くなり、外観品質を高めることができる。
【0026】
本願発明は、前記した実施形態の構成に限定されるものではなく、本願発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、次のように実施することができる。
【0027】
(1)支柱5の空間部31を形成する本体6は、断面コの字形に限らず、弧状、台形状あるいは多角形状であっても構わない。また、空間部31の開口方向は、実施形態のように、エアジェット織機1の反対側に限らず、支柱5の長手方向の面であればどの方向であってもよい。
(2)支柱5の本体6は、溝型鋼材のような金属性材料に限らず、樹脂製材料により構成しても良い。なお、本体6を樹脂製材料により構成した場合、本体6の空間部31に金属製の取付け部材を設け、制御部材32、33は取付け部材に固定することにより、放熱効果を得ることができる。
(3)本願発明は、エアジェット織機1に限らず、ウォータジェット織機、レピア織機あるいはグリッパー織機等、他の織機において実施することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 エアジェット織機
2 床面
3 支持装置
4 設置台
5 支柱
6 本体
8 カバー
11〜14 取付けアーム
15〜18 緯糸測長貯留装置
19〜22 モータ
23〜26 緯糸解除センサー
28〜30 電磁ソレノイド
31 空間部
32、33 制御部材
36 電源線
37〜41 配線
43〜45、47、48 貫通孔
49 頭部
50 位置決め板
図1
図2
図3
図4