(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る化学蓄熱装置の実施の形態を説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
本実施の形態では、本発明に係る化学蓄熱装置を、車両のエンジンの排気系に設けられる排気浄化システムに備えられる化学蓄熱装置に適用する。本実施の形態に係る排気浄化システムは、エンジン(特に、ディーゼルエンジン)から排出される排気ガス中に含まれる有害物質(環境汚染物質)を浄化するシステムである。本実施の形態に係る排気浄化システムは、触媒のDOC[Diesel Oxidation Catalyst]、SCR[SelectiveCatalytic Reduction]とASC[Ammonia Slip Catalyst]及びフィルタのDPF[Diesel Particulate Filter]を備えている。また、本実施の形態に係る排気ガス浄化システムは、触媒(DOC)を暖機するための化学蓄熱装置も備えている。本実施の形態には、化学蓄熱装置の反応器内の空間を形成するための構造が異なる5つの実施形態がある。
【0014】
図1を参照して、第1〜第5の実施の形態で共通する排気浄化システム1の全体構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る排気浄化システムの概略構成図である。
【0015】
排気浄化システム1は、エンジン2の排気側に接続された排気管3の上流側から下流側に向けて、ディーゼル酸化触媒(DOC)4、ディーゼル排気微粒子除去フィルタ(DPF)5、選択還元触媒(SCR)6、アンモニアスリップ触媒(ASC)7を有している。なお、本実施の形態では、排気管3が特許請求の範囲に記載する配管に相当する。
【0016】
DOC4は、排気ガス中に含まれるHCやCO等を酸化する触媒である。DPF5は、排気ガス中に含まれるPMを捕集して取り除くフィルタである。SCR6は、インジェクタ6aによって排気管3内の上流側にアンモニア(NH
3)あるいは尿素水(加水分解してアンモニアになる)が供給されると、アンモニアと排気ガス中に含まれるNOxとを化学反応させることによって、NOxを還元して浄化する触媒である。ASC7は、SCR6をすり抜けて下流側に流れたアンモニアを酸化する触媒である。
【0017】
各触媒4,6,7には、環境汚染物質に対する浄化能力を発揮できる温度領域(すなわち、活性温度)が存在する。例えば、DOC4の活性温度の下限は150℃程度である。しかし、エンジン2の始動直後などは、エンジン2から排出された直後の排気ガスの温度は100℃程度と比較的低温である。そこで、エンジン2の始動直後などでも、各触媒4,6,7で浄化能力を発揮させるために、各触媒4,6,7での温度を迅速に活性温度にする必要がある。そのために、排気浄化システム1は、触媒の暖機を行う化学蓄熱装置8も有している。なお、排気浄化システム1には、エンジン2から排出された排気ガスの温度(あるいは、触媒の温度)を検出する温度センサが設けられている。
【0018】
化学蓄熱装置8は、外部エネルギレスで触媒を暖機する化学蓄熱装置である。つまり、化学蓄熱装置8は、通常は排気ガスの熱(排熱)を蓄えておき、必要なときにその熱を使用して触媒を暖機する。特に、化学蓄熱装置8は、排気管3における上流に位置する触媒であるDOC4を外周部から暖機(加熱)する。上流で暖機することによって、暖機で昇温した排気ガスが下流の触媒(SCR6、ASC7)に流れる。化学蓄熱装置8は、反応器9、吸着器10、接続管11、開閉弁12等を備えている。なお、本実施の形態では、DOC4が特許請求の範囲に記載する加熱対象に相当する。
【0019】
反応器9は、排気管3におけるDOC4の配設される箇所の外周面の全周に設けられ、断面形状が排気管3を囲むドーナツ形状である。この断面ドーナツ形状の断面は、反応器9を排気ガスの流れる方向に対して垂直に切った流路断面である。
図2等に示すように、反応器9は、アンモニア(反応媒体)と化学反応する多数個の反応材9aを有している。反応器9では、アンモニアと各反応材9aとが化学反応して化学吸着(配位結合)し、熱を発生させる。また、反応器9では、所定温度以上になると各反応材9aとアンモニアとが分離して、アンモニアを放出し始め、それより高い所定温度になるとアンモニアを殆ど放出する。これらの各温度は、反応材9aとアンモニアとの組み合わせによって変わる。
【0020】
反応材9aは、タブレット状に固められた固体状である。多数個の反応材9aは、排気管3の外周面の排気ガスの流れる方向に沿って複数個並べられて配設され、排気管3の外周面の周方向に沿って複数個並べられて配設される。したがって、各反応材9aの側断面形状は
図2(b)等に示すように長方形状であり、正断面形状は
図2(a)等に示すように分割されたドーナツ形状(所定の厚さを有する円弧形状)である。この排気ガスの流れる方向及び周方向に沿って配設された多数個の反応材9aによって、DOC4が配設される箇所の排気管3の外周面の全周に反応材が配設され、断面形状が排気管3を囲むドーナツ形状となっている。複数個並べられて配設された反応材9a,・・・の列の排気ガスの流れる方向の長さは、DOC4の全体を覆う長さを有している。したがって、排気管3の外周面に直接配設された反応材9a,・・・は、薄い排気管3を介してDOC4全体を直接暖機できる。反応材9aとしては、アンモニアと化学反応して発熱し、触媒の活性温度以上に昇温できる材料を用い、例えば、2価の塩化物(MCl
2)、2価の臭化物(MBr
2)、2価のヨウ化物(MI
2)であり、MはMg、Ni、Co、Fe、Mn、Ca、Sr、Ba、Cu、Cr等が適している。
【0021】
さらに、
図2等に示すように、反応器9は、断熱材9bを有している。断熱材9bは、反応材9a,・・・の外周側の全面を覆うように配設され、断面形状がドーナツ形状である。また、反応器9は、反応材9a,・・・及び断熱材9bを収納するケーシング9cを有している。ケーシング9cは、断熱材9bの外周側の全面及び反応器9の上流端部と下流端部の全面を覆うように配設され、排気管3との間で密閉された空間を形成し、その中に反応材9a,・・・及び断熱材9bを封入している。このように、反応材9a,・・・は密閉空間内に封入されているので、アンモニアと繰り返し化学反応できる。
【0022】
特に、反応器9は、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間(断面形状がドーナツ形状の反応材9a,・・・の外周面の全周に沿って)に空間9dが形成されている。空間9dは、断面形状が反応材9a,・・・を囲むドーナツ形状であり、内径が反応材9a,・・・のドーナツ形状の外径になり、外径が断熱材9bのドーナツ形状の内径になる。この空間9dは、供給されたアンモニアを反応材9a,・・・全体に伝えるための通路となる。空間9dには、接続管11の一端が開口されている。接続管11から空間9d内にアンモニアが供給されると、アンモニアが空間9d内(反応材9a,・・・の外周側)を自由に移動できる。なお、この空間9dを形成するための構造については、以下の第1〜第5の実施の形態で説明する。
【0023】
吸着器10は、アンモニアと物理吸着する吸着材としての活性炭が内蔵されている。吸着器10では、アンモニアを活性炭と物理吸着させた状態で貯蔵して、排気ガスの排熱(温まったアンモニア)を蓄えるとともに、アンモニアを活性炭から分離させてアンモニアを放出して、アンモニアを反応器9に供給する。
【0024】
接続管11は、反応器9と吸着器10とを接続し、反応器9と吸着器10との間でアンモニアを移動させる管路である。接続管11の一端は、
図2等に示すように、反応器9のケーシング9c及び断熱材9bを貫通して、空間9dに開口されている。ちなみに、部品点数を削減してコストを低減するために、本実施の形態では接続管11は1本だけであり、空間9dへの開口箇所も1箇所である。したがって、空間9d内には、1箇所だけ(1本の接続管11の開口部)からアンモニアが供給されることになる。開閉弁12は、接続管11の途中に配設される。開閉弁12が開弁されると、接続管11を介して反応器9と吸着器10との間でアンモニアの移動が可能となる。なお、この開閉弁12の開閉制御は、エンジン2を制御するECU[Electronic Control Unit](図示せず)等で行われる。
【0025】
以上のように構成した排気浄化システム1における化学蓄熱装置8(特に、反応器9)の動作を説明する。車両停止中(エンジン2が停止中)は、開閉弁12は閉じられている。したがって、吸着器10において活性炭からアンモニアが分離していても、接続管11を介してアンモニアが反応器9に供給されない。
【0026】
エンジンが始動後に、エンジンから排出された排気ガスの温度が所定温度(触媒の活性温度に基づいて設定された温度)より低いときには(エンジンの始動直後など)、ECUによる制御によって開閉弁12が開かれ、接続管11を介してアンモニアが反応器9に供給される。このとき、吸着器10の圧力が反応器9の圧力よりも高く、アンモニアが反応器9側に移動する。特に、接続管11を介して供給されたアンモニアは、接続管11の開口部から空間9d内に入り、空間9dを通路として移動する。これによって、アンモニアを接続管11の開口部(アンモニアの供給箇所)から離れている箇所(特に、周方向に沿って180°離れている箇所)に配置される反応材9aまで伝えることができ、アンモニアが反応材9a,・・・全体に伝わる。反応器9では、供給されたアンモニアと各反応材9aとが化学反応して化学吸着し、熱を発生する。この熱は、排気管3に伝わり、排気管3からDOC4に伝わる。これによって、DOC4が加熱され、温度がDOC4の活性温度以上になると、DOC4で排気ガスを浄化できる。
【0027】
エンジンから排出された排気ガスの温度が所定温度より高くなると、排気ガスの排熱によって、反応器9では、アンモニアと各反応材9aとが分離し、アンモニアが発生する。この分離したアンモニアは、開閉弁12が開かれているので、反応器9から接続管11を介して吸着器10に戻る。このとき、反応器9の圧力が吸着器10の圧力よりも高く、アンモニアが吸着器10側に移動する。吸着器10では、吸着材がアンモニアを物理吸着して貯蔵する。吸着器10に設けられている圧力センサの圧力値がアンモニアの満貯蔵状態を示す圧力値になった場合、ECUでは開閉弁12を閉じる。
【0028】
この化学蓄熱装置8によれば、反応器9の反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成して空間9d内にアンモニアを供給することにより、アンモニアの供給箇所が1箇所であるが、アンモニアが反応材9a,・・・全体に(特に、アンモニアの供給箇所から離れている箇所まで)伝わり易く、反応材9a,・・・全体で化学反応を促進できる。その結果、化学蓄熱装置8による加熱対象への加熱効率が向上し、DOC4を迅速に昇温できる。さらに、化学蓄熱装置8によれば、空間9dの外周部(ひいては、反応材9a,・・・の外周部)に断熱材9bを設けることにより、反応材9a,・・・の熱が外部に放出されるのを防止でき、DOC4への加熱効率が更に向上する。
【0029】
なお、化学蓄熱装置8の加熱対象であるDOC4は、
図2等に示すように、断面環状の薄い排気管3内に配設された円柱形状のハニカム基材4aに触媒が担持された構造である。このハニカム基材4aの材料は、例えば、コーディライト、メタルである。また、排気管3の材料は、例えば、ステンレス(SUS)である。
【0030】
まず、
図2を参照して、第1の実施の形態に係る反応器9の空間9dを形成するための構造について説明する。
図2は、第1の実施の形態に係る反応器周辺の拡大図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるA−A線に沿った側断面図である。なお、
図2〜
図7に示す例では、反応材9aは排気管3の外周面の周方向に沿って4個並べられて配置されているものとする。
【0031】
第1の実施の形態に係る構造では、空間9dを形成するために、多数個の支持体9eが設けられている。支持体9eは、少なくとも各反応材9aに対応してそれぞれ設けられる。支持体9eは、各反応材9aを排気管3側に支持しかつ断熱材9bをケーシング9c側に支持する機能を有するとともに、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成する機能を有している。第1の実施の形態では、多数個の支持体9e,・・・が特許請求の範囲に記載する支持体に相当する。なお、支持体9eは、各反応材9aに対してそれぞれ設けるのでなく、隣接する反応材9a,9aの間にそれぞれ設けてもよい。
【0032】
支持体9eは、反応材9aの中央部に配置されて、排気管3と断熱材9bとの間に設けられる。支持体9eは、
図2(a)に示すように、径方向に沿って延びる柱部材9e
1と、柱部材9e
1から周方向(又は排気ガスの流れる方向)に沿って延びる2個の梁部材9e
2,9e
3からなる。柱部材9e
1は、一端が排気管3の外周面に接続され、反応材9aの中央部を貫通して他端部が断熱材9bの内周面まで延びる部材である。したがって、反応材9aの中央部には、この柱部材9e
1が貫通するための孔があけられている。柱部材9e
1の長さは、反応材9aの径方向の長さ分と空間9dの径方向の長さ分の長さである。空間9dの径方向の長さは、アンモニアが自由に移動できれば、適宜設定してよい。内周側の梁部材9e
2は、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持(固定)するために、柱部材9e
1の中間部から横方向の両側に反応材9aの外周面に沿って延びる部材である。梁部材9e
2の長さは、反応材9aを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。外周側の梁部材9e
3は、断熱材9bをケーシング9cに対して
押え付けて支持するために、柱部材9e
1の他端部から横方向の両側に断熱材9bの内周面に沿って延びる部材である。梁部材9e
3の長さは、断熱材9bを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。この梁部材9e
2と梁部材9e
3との間隔によって、空間9dの径方向の長さを設定できる。なお、梁部材は、柱部材の横方向の両側に延びる部材ではなく、柱部材を中心にして円状等に広がる部材としてもよい。また、梁部材の横方向の両側に延びる方向としては、周方向に延びてもよいし、排気ガスの流れる方向に延びてもよい。
【0033】
この第1の実施の形態に係る構造によれば、排気管3に接続される支持体9eの梁部材9e
2によって、反応材9aを排気管3側に確実に支持できる。また、断熱材9bまで延びる支持体9eの梁部材9e
3によって、断熱材9bをケーシング9c側に確実に支持できる。さらに、支持体9eの所定間隔をあけた梁部材9e
2と梁部材9e
3とによって、反応材9aと断熱材9bとの間に空間9dを形成できる。
【0034】
なお、最上流及び最下流に配置される支持体のバリエーションについて、
図3を参照して説明する。
図3は、第1の実施の形態に係る最上下流の支持体のバリエーションを示す側断面図であり、(a)が支持体の一端が反応材を貫通して排気管に接続される場合であり、(b)が支持体が反応器のケーシングに接続される場合である。
図3(a)に示す支持体9fの場合、上記の支持体9eと同様に、柱部材9f
1と梁部材9f
2,9f
3からなる。この支持体9fは、上記の支持体9eと同様に、柱部材9f
1が反応材9aを貫通して排気管3に接続される。一方、
図3(b)に示す支持体9gの場合、2個の梁部材9g
1,9g
2からなる。内周側の梁部材9g
1は、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持するために、一端がケーシング9cの上流側又は下流側の側壁に接続され、ケーシング9cの側壁から排気ガスの流れ方向に反応材9aの外周面に沿って延びる部材である。外周側の梁部材9g
2は、断熱材9bをケーシング9cに対して
押え付けて支持するために、一端がケーシング9cの上流側又は下流側の側壁に接続され、ケーシング9cの側壁から排気ガスの流れ方向に断熱材9bの内周面に沿って延びる部材である。この梁部材9g
1と梁部材9g
2との間隔によって、空間9dの径方向の長さを設定できる。このように、最上流及び最下流の支持体については、上記のいずれの支持体でもよい。
【0035】
図4を参照して、第2の実施の形態に係る反応器9の空間9dを形成するための構造について説明する。
図4は、第2の実施の形態に係る反応器周辺の拡大図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるB−B線に沿った側断面図である。
【0036】
第2の実施の形態に係る構造では、空間9dを形成するために、4個のスペーサ9hが設けられている。スペーサ9hは、周方向に沿って配置される4つの反応材9aの各列に対応してそれぞれ設けられる。スペーサ9hは、各列の反応材9aを排気管3側に支持しかつ断熱材9bをケーシング9c側に支持する機能を有するとともに、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成する機能を有している。第2の実施の形態では、4個のスペーサ9h,・・・が特許請求の範囲に記載する支持体に相当する。なお、以下で説明するスペーサ9hは、各列の反応材9a,・・・の全域に設けるものであるが、全域に設けるのではなく、各列において所定の間隔で所定の長さのスペーサを複数個設けてもよい。また、スペーサ9hは、各列の反応材9a,・・・に設けるのではなく、隣接する反応材9a,・・・の列と列との間の全域または所定の間隔で設けてもよいし、個々の反応材9aあるいは個々の隣接する反応材9a,9aの間にそれぞれ設けてもよい。
【0037】
スペーサ9hは、反応材9a,・・・の列の周方向の中央部に配置されて、反応材9a,・・・の列と断熱材9bとの間において反応器9の排気ガスの流れる方向の全域に設けられる。スペーサ9hは、反応器9の排気ガスの流れる方向の全域に設けられるので、接続管11の開口部を塞がないように、
図4(a)に示すように、接続管11の開口部からずらした位置に配置される。スペーサ9hを全域に設けない場合、スペーサ9hを接続管11の開口部からずらした位置に配置しなくてよい。スペーサ9hの排気ガスが流れる方向の長さは、排気ガスの流れる方向に沿って並べられた複数個の反応材9a,・・・からなる列の長さや断熱材9bの長さと同じ長さである。スペーサ9hは、
図4(a)に示すように、径方向に沿って延びる柱部材9h
1と、周方向に沿って延びる2個の梁部材9h
2,9h
3からなる。柱部材9h
1は、反応材9aの外周面と断熱材9bの内周面との間に全域で延びる部材である。したがって、柱部材9h
1は、空間9dの径方向の長さ分の長さを有している。内周側の梁部材9h
2は、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持するために、柱部材9h
1の一端部から周方向の両側に反応材9aの外周面に沿って全域で延びる部材である。梁部材9h
2の長さは、反応材9aを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。外周側の梁部材9h
3は、断熱材9bをケーシング9cに対して
押え付けて支持するために、柱部材9h
1の他端部から周方向の両側に断熱材9bの内周面に沿って全域で延びる部材である。梁部材9h
3の長さは、断熱材9bを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。この梁部材9h
2と梁部材9h
3との間隔(柱部材9h
1の長さ)によって、空間9dの径方向の長さを設定できる。なお、スペーサ9hに貫通孔を設けて、アンモニアが通り易くするようにしてもよい。
【0038】
この第2の実施の形態に係る構造によれば、反応材9aと断熱材9bとの間にスペーサ9hを配置させることによって、反応材9aを排気管3側に支持できるとともに、断熱材9bをケーシング9c側に支持できる。さらに、このスペーサ9hによって、反応材9aと断熱材9bとの間に空間9dを形成できる。特に、この構造の場合、排気管3やケーシング9c等に部材を接続する必要がなく、支持体の組み付け工数を低減できる。
【0039】
図5を参照して、第3の実施の形態に係る反応器9の空間9dを形成するための構造について説明する。
図5は、第3の実施の形態に係る反応器周辺の拡大図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるC−C線に沿った側断面図である。
【0040】
第3の実施の形態に係る構造では、空間9dを形成するために、多数個の支持体9iが設けられている。支持体9iは、少なくとも各反応材9aに対応してそれぞれ設けられる。支持体9iは、各反応材9aを排気管3側に支持しかつ断熱材9bをケーシング9c側に支持する機能を有するとともに、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成する機能を有している。第3の実施の形態では、多数個の支持体9i,・・・が特許請求の範囲に記載する支持体に相当する。なお、支持体9iは、各反応材9aに対してそれぞれ設けるのでなく、隣接する反応材9a,9aの間にそれぞれ設けてもよい。
【0041】
支持体9iは、反応材9aの中央部に配置されて、反応材9aとケーシング9cとの間に設けられる。支持体9iは、
図5(a)に示すように、径方向に沿って延びる柱部材9i
1と、柱部材9i
1から周方向(又は排気ガスの流れる方向)に沿って延びる2個の梁部材9i
2,9i
3からなる。柱部材9i
1は、一端がケーシング9cの内周面に接続され、断熱材9bを貫通して他端部が反応材9aの外周面まで延びる部材である。したがって、断熱材9bには、この柱部材9i
1が貫通するための孔があけられている。柱部材9i
1の長さは、断熱材9bの径方向の長さ分と空間9dの径方向の長さ分の長さである。内周側の梁部材9i
2は、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持するために、柱部材9i
1の他端から横方向の両側に反応材9aの外周面に沿って延びる部材である。梁部材9i
2の長さは、反応材9aを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。外周側の梁部材9i
3は、断熱材9bをケーシング9cに対して
押え付けて支持するために、柱部材9i
1の中間部から横方向の両側に断熱材9bの内周面に沿って延びる部材である。梁部材9i
3の長さは、断熱材9bを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。この梁部材9i
2と梁部材9i
3との間隔によって、空間9dの径方向の長さを設定できる。なお、最上流及び最下流の支持体について、第1の実施の形態と同様に、断熱材9bを貫通してケーシング9cの外周壁に接続する支持体でもよいし、あるいは、ケーシング9cの側壁に接続する支持体でもよい。
【0042】
この第3の実施の形態に係る構造によれば、ケーシング9cに接続される支持体9iの梁部材9i
3によって、断熱材9bをケーシング9c側に確実に支持できる。また、反応材9aまで延びる支持体9iの梁部材9i
2によって、反応材9aを排気管3側に確実に支持できる。さらに、支持体9iの所定間隔をあけた梁部材9i
2と梁部材9i
3とによって、反応材9aと断熱材9bとの間に空間9dを形成できる。
【0043】
図6を参照して、第4の実施の形態に係る反応器9の空間9dを形成するための構造について説明する。
図6は、第4の実施の形態に係る反応器周辺の拡大図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるD−D線に沿った側断面図である。
【0044】
第4の実施の形態に係る構造では、空間9dを形成するために、4個の支持体9jと多数個のスペーサ9kが設けられている。支持体9jは、周方向に沿って配置される4つの反応材9aの各列に対応してそれぞれ設けられる。スペーサ9kは、支持体9jの各柱部材9j
1に対応してそれぞれ設けられる。支持体9jは、各反応材9aを排気管3側に支持する機能を有する。スペーサ9kは、支持体9jを土台として、断熱材9bをケーシング9c側に支持する機能を有するとともに、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成する機能を有している。第4の実施の形態では、4個の支持体9jと多数個のスペーサ9k,・・・が特許請求の範囲に記載する支持体に相当する。なお、以下で説明する支持体9jは、各列の反応材9a,・・・の全域に設けるものであるが、全域に設けるのではなく、所定の間隔で所定の長さの支持体を複数個設けてもよい。
【0045】
支持体9jは、反応材9a,・・・の列の周方向の中央部に配置されて、排気管3から反応材9a,・・・の列の外周面側までに設けられる。支持体9jは、
図6に示すように、径方向に沿って延びる複数本の柱部材9j
1と、柱部材9j
1の端部から周方向に沿って延びる梁部材9j
2からなる。柱部材9j
1は、排気ガスの流れる方向において所定の間隔をあけて(例えば、反応材9a毎に)設けられる。柱部材9j
1は、一端が排気管3の外周面に接続され、反応材9aを貫通して他端部が反応材9aの外周面まで延びて、梁部材9j
2の内周面に接続される部材である。したがって、反応材9aには、この柱部材9j
1が貫通するための孔があけられている。柱部材9j
1の長さは、反応材9aの径方向の長さ分の長さである。梁部材9j
2は、反応器9の排気ガスの流れる方向の全域に設けられる。梁部材9j
2は、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持するために、柱部材9j
1の他端部から周方向の両側に反応材9aの外周面に沿って全域で延びる部材である。梁部材9j
2の長さは、反応材9aを支持できる長さであれば、適宜設定してよい。なお、梁部材9j
2を柱部材j
1で支持するのでなく、梁部材9j
2の上流端部と下流端部をケーシング9cの上流側と下流側の各側壁にそれぞれ接続して支持してもよい。
【0046】
スペーサ9kは、支持体9jの柱部材9j
1の位置にそれぞれ配置されて、支持体9jの梁部材9j
2と断熱材9bとの間に設けられる。スペーサ9kは、断熱材9bをケーシング9cに対して
押え付けて支持するとともに空間9dを形成するために、断熱材9bの内周面と支持体9jの梁部材9j
2の外周面との間に挟まった状態で配置される直方体形状(あるいは、立方体形状、円柱形状等)の部材である。スペーサ9kの径方向の長さは、空間9dから支持体9jの梁部材9j
2の厚さ分を引いた長さである。したがって、このスペーサ9kの径方向の長さによって、空間9dの径方向の長さを設定できる。スペーサ9kの断面の大きさや形状は、断熱材9bを支持できる大きさや形状であれば、適宜設定してよい。
【0047】
この第4の実施の形態に係る構造によれば、排気管3に接続される支持体9jの梁部材9j
2によって、反応材9aを排気管3側に確実に支持できる。また、支持体9jの梁部材9j
2と断熱材9bとの間にスペーサ9kを配置させることによって、断熱材9bをケーシング9c側に支持できる。さらに、このスペーサ9kによって、反応材9aと断熱材9bとの間に空間9dを形成できる。
【0048】
図7を参照して、第5の実施の形態に係る反応器9の空間9dを形成するための構造について説明する。
図7は、第5の実施の形態に係る反応器周辺の拡大図であり、(a)が正断面図であり、(b)が正断面図におけるE−E線に沿った側断面図である。
【0049】
第5の実施の形態に係る構造では、空間9dを形成するために、円筒体9lと多数個の柱体9m及びスペーサ9nが設けられている。円筒体9lは、反応材9a,・・・の外周面に沿って設けられる。柱体9mは、排気ガスの流れる方向において所定の間隔をあけて(例えば、反応材9a毎に)、円筒体9lと排気管3との間に設けられる。スペーサ9nは、各柱体9mに対応してそれぞれ設けられる。円筒体9lと柱体9mは、各反応材9aを排気管3に支持する機能を有する。スペーサ9nは、円筒体9lを土台として、断熱材9bをケーシング9cに支持する機能を有するとともに、反応材9a,・・・と断熱材9bとの間に空間9dを形成する機能を有している。第5の実施の形態では、円筒体9lと多数個の柱体9m,・・・及びスペーサ9n,・・・が特許請求の範囲に記載する支持体に相当する。
【0050】
円筒体9lは、反応材9a,・・・の外周面に沿って反応材9a,・・・全体を囲むように設けられる。円筒体9lの内周面には、
図7に示すように、径方向に沿って延びる多数個の柱体9mが接続されている。円筒体9lは、反応材9aを排気管3に対して
押え付けて支持するために、反応器9,・・・の外周面に沿って全域に設けられる部材である。円筒体9lには、空間9dを流れるアンモニアが反応材9aに移動できるために、多数個の孔が設けられる。この多数個の孔は、1箇所に設けられる接続管11の開口部から空間9d内に供給されたアンモニアを反応材9a,・・・全体に出来るだけ均一に伝わるように設けられる。この多数個の孔の設け方としては、例えば、接続管11の開口部の直下については孔を無しとし、この直下以外の部分を接続管11の開口部の箇所から周方向の90°までのA部と周方向の90°〜180°のB部とに分ける。そして、A部については、アンモニアの流速が速く供給量が多いことが予測されるので、孔9l
1の数を少なくする(あるいは、孔の径を小さくする)。B部については、A部よりもアンモニアの流速が遅く供給量が少ないことが予測されるので、孔9l
2の数を多くする(あるいは、孔の径を大きくする)。これ以外にも、接続管11の開口部の箇所から周方向の180°までの間で角度が大きくなるほど孔の数を多くしたり、孔の径を大きくしてもよい。なお、周方向だけでなく、接続管11の開口部の箇所から排気ガスの流れる方向についても、接続管11の開口部から離れているほど孔の数を多くしたり、孔の径を大きくしてもよい。また、円筒体9lを柱体9mで支持するのでなく、円筒体9lの上流端部と下流端部をケーシング9cの上流側と下流側の各側壁にそれぞれ接続して支持してもよい。
【0051】
柱体9mは、排気ガスの流れる方向において所定の間隔をあけて(例えば、反応材9a毎に)設けられる。柱体9mは、一端が排気管3の外周面に接続され、反応材9aを貫通して他端部が円筒体9lの内周面まで延びて、円筒体9lの内周面に接続される部材である。したがって、反応材9aには、この柱体9mが貫通するための孔があけられている。柱体9mの長さは、反応材9aの径方向の長さ分の長さである。
【0052】
スペーサ9nは、柱体9mの位置にそれぞれ配置されて、円筒体9lと断熱材9bとの間に設けられる。スペーサ9nは、第4の実施の形態に係るスペーサ9kと同様の部材であるので、詳細な説明は省略する。
【0053】
この第5の実施の形態に係る構造によれば、柱体9mを介して排気管3に接続される円筒体9lによって、反応材9a,・・・全体を排気管3側に確実に支持できる。また、円筒体9lと断熱材9bとの間にスペーサ9nを配置させることによって、断熱材9bをケーシング9c側に支持できる。さらに、このスペーサ9nによって、反応材9aと断熱材9bとの間に空間9dを形成できる。また、円筒体9lの孔を接続管11の開口部からの位置に応じて孔の数あるいは孔の大きさを変えることにより、空間9dに供給されたアンモニアを反応材9a,・・・全体に出来るかぎり均一に伝えることにできる。これによって、接続管11の開口部から離れている箇所の反応材9aでも化学反応を促進できる。
【0054】
なお、上記の各支持体、各スペーサ、円筒体、柱体の各材料は、反応材9aや断熱材9bを支持できる材料であればよく、例えば、排気管3と同じステンレス(SUS)である。
【0055】
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【0056】
例えば、本実施の形態では触媒としてDOC、SCR及びASC、フィルタとしてDPFを備える排気浄化システムに適用したが、他の様々な構成の排気浄化システムに適用できる。また、車両もディーゼルエンジン車としたが、ガソリンエンジン車等にも適用できる。また、車両以外の排気浄化システムにも適用できる。また、排気浄化システム以外にも適用できる。
【0057】
また、本実施の形態では化学蓄熱装置の加熱対象として触媒のDOCとしたが、加熱対象としては他のものでよく、例えば、SCR等の他の触媒、排気管内を流れる排気ガスがある。また、本実施の形態では化学蓄熱装置の反応器に断熱材を設ける構成としたが、断熱材を設けない構成としてもよい。また、本実施の形態では化学蓄熱装置における化学反応の反応媒体をアンモニアとしたが、二酸化炭素、アルコール、水等の他の媒体でもよい。
【0058】
また、本実施の形態では反応器の空間内にアンモニア(反応媒体)を供給する供給箇所を1箇所としたが、供給箇所を2箇所以上としてもよい。例えば、1本の接続管を分岐させて排気ガスの流れる方向の上流側と下流側の2箇所の供給箇所、1本の接続管を分岐させて周方向において2箇所の供給箇所とする。この場合でも、各供給箇所から離れている反応材があるが、空間によって各供給箇所から離れている反応材までアンモニアが伝わる。
【0059】
また、本実施の形態では化学蓄熱装置の反応器の空間を反応材の外周部の全周に形成する構成としたが、全周の空間でなくてもよく、例えば、接続管の開口部の周方向の反対側の部分については空間とするのではなくて反応材を設ける構成としてもよい。この場合、その反対側の部分については支持体を設ける必要がない。
【0060】
また、本実施の形態では空間を形成するために支持体、スペーサ、支持体+スペーサ、円筒体+柱体+スペーサを用いた各構造を示したが、反応材及び断熱材(断熱材が無い反応器の場合には反応材だけ)を支持して空間を形成できればどのような構造でもよく、例えば、アンモニア等の反応媒体を通過させることができる不繊布や多孔体シート等を反応材と断熱材との間の全域あるいは所定間隔をあけて挿入する構造としてもよい。この不繊布や多孔体シートの材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、チタン、モネル等の耐腐食性を有する金属や合金、セラミックスがある。また、反応材の外周面に沿った円筒体と断熱材の内周面に沿った円筒体とを所定間隔をあけて配置して、その2個の円筒体の間に多数個の柱体を配設して2重管構造としてしてもよい。
【0061】
また、本実施の形態では支持体を形成する材料としてステンレス(SUS)を例に挙げたが、支持体を弾性体で形成し、支持体によって反応材の熱膨張を吸収できるようにしてもよい。特に、第2の実施の形態の支持体(スペーサ)の場合には効果が高い。
【0062】
また、第5の実施の形態ではアンモニアを反応材に均一に伝えるために円筒体において接続管の開口部からの位置に応じて孔の数や大きさを変えることによって空間内に異方性を持たせる構成したが、他の実施の形態でも支持体の形状やスペーサの形状等によって空間にこのような異方性を持たせてもよい。このように異方性を持たせることによって、周方向や排気ガスの流れる方向でアンモニアの流れやすさを変えて、接続管の開口部から離れている箇所までアンモニアを伝わり易くし、反応器に均一にアンモニアが伝わるようにする。