(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光学式センサの投光部には、レーザダイオードやLEDなどの発光素子が設けられ、受光部には、フォトダイオード、CMOS、CCDなどの受光素子が設けられる。また、発光素子および受光素子の前方には、1または複数枚のレンズをレンズホルダにより支持した構成のレンズ部が設けられる。
【0003】
変位センサや安全用途の光電センサなど、高い検出精度が求められる光学式センサを製作する場合には、発光素子や受光素子(以下、これらを「光学素子」と総称する。)とレンズ部との光軸合わせやレンズ部の焦点位置の調整を厳密に行う必要がある。このようなセンサの従来例として、たとえば特許文献1には、発光素子が搭載された基板および投光用のレンズ部と、受光素子が搭載された基板および受光用のレンズ部とを、「ベース」と呼ばれる支持板上に一体に設けることにより光学ユニットを形成し、これをセンサの筐体内に組み込むことが記載されている。また、この特許文献1には、受光用のレンズ部のレンズホルダをL字状にしてベースにねじ止めすると共に、このレンズホルダにクランプ金具を仮止めして両者の間に受光レンズを挿入し、レンズの光軸調整を行なった後にクランプ部材を締め付けることによりレンズを固定することが、記載されている。
【0004】
また、他の従来例として、特許文献2には、発光素子と投光用レンズとを一体にした投光モジュールを組み立てて、これをセンサ内の回路基板に搭載することが記載されている。さらに特許文献2には、投光モジュールの組み立てに関して、筒状のホルダの後端部に発光素子を嵌め込んだ後に、ホルダの前方よりレンズ部を挿入して、特殊な部品(ランナ付きレンズ部品)によりレンズ部を支持しながら、光軸方向(Z軸方向)および光軸方向に直交する平面を構成する2軸(X軸方向およびY軸方向)に対するレンズ部の位置を調整することが記載されている。
【0005】
さらに他の従来例として、特許文献3には、発光素子を透光性を有する樹脂部材に封止し、その樹脂部材の上面にレンズ部を一体に形成することにより、発光素子とレンズ部とが位置合わせされた光学モジュールを作成し、これをセンサに組み込むことが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載された発明では、レンズホルダやクランプ金具をネジにより固定するため、部品点数が多くなり、また作業の工数も多くなる。
【0008】
また、実際の組立処理では、光学素子の位置や光軸を調整する作業と、それに合わせてレンズ部の位置や光軸を調整する作業とを何度も繰り返して、両者の最適な状態を決定して固定するので、作業はより複雑なものとなる。
【0009】
また特許文献2,3に記載された発明では、いずれも、筐体の外で光学素子とレンズ部との光軸調整や固定作業を行った後に、これらが一体化された光学モジュールをセンサの筐体内に組み込んでいるが、センサの検出精度を確実なものとするには、センサの筐体の内部で光学素子やレンズ部を固定するのが望ましい。
【0010】
しかし、センサの筐体や部品は小型であり、また上記のとおり、複雑な作業が必要になるので、筐体の内部で光学素子やレンズ部の位置決めや固定を行うのは困難である。
【0011】
本発明は上記の問題に着目し、簡単な構成を追加することによって、光学素子に対するレンズ部の位置や光軸の関係を調整してレンズ部を固定する作業を、容易に実施できるようにすること、課題とする。また、本発明では、センサの筐体内での作業を容易にすることによって、検出精度を確実に確保できるようにすることや、複数のタイプのセンサでレンズ部の固定に必要な構成を共有できるようにすることも、課題とする。
【0012】
加えて本発明では、光学素子が組み込まれた発光部品を固定する作業を容易かつ精度よく行うことを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明が提示するレンズ部の固定方法は、光学式センサの投光部および受光部の双方のレンズ部に対して実施することができる。この方法では、センサの筐体内部に設けられる支持板の上にレンズ部およびこれと対をなす光学素子をそれぞれの光軸を支持板の板面に合わせて対向する状態で固定することを前提として定めた前記レンズ部の固定場所の前記板面に、レンズ部の幅長さより広い間隔を隔ててレンズ部の光軸を挟んで対向する関係になる一対の柱状体の組を、少なくとも一組立設する。そして、光学素子を支持板の定められた場所に固定した後に、対をなす柱状体を結ぶラインに光軸を交差させた姿勢の前記レンズ部を前記対をなす柱状体の間の空間に挿入して光学素子に対するレンズ部の位置および姿勢を調整する。そしてレンズ部と各柱状体との間の隙間にそれぞれ注入された接着性樹脂を用いて、調整終了後のレンズ部の状態を維持した状態でレンズ部を固定する。
【0014】
各柱状体は、たとえば成型加工により、支持板に一体に設けることができる。本発明では、まず光学素子を、その位置や光軸を調整した上で固定し、その後に、レンズ部を専用の治具などで支持しながら対をなす柱状体の間の空間に挿入し、この段階で、レンズ部と光学素子との光軸が合わせられ、焦点が適切な位置に設定されるように、レンズ部の位置および姿勢を調整する。この調整が終了すると、調整後のレンズの状態を維持したまま、レンズ部と各柱状体との間に接着性樹脂を注入して当該樹脂を固める。これにより、レンズ体は接着性樹脂を介して各柱状体により支持された状態となる。
【0015】
上記の方法では、レンズ部が各柱状体に対してある程度の余裕度を持つように対をなす柱状体の間の間隔がレンズ部より広く設定されるので、レンズ部の位置や姿勢を容易に変更することができる。特に光軸方向に対しては、対をなす柱状体にレンズを対向させることが可能な範囲でレンズ部を大きく動かすことができる。また、光学素子の位置を固定してから、それに合わせてレンズ部のみを動かせば良いので、効率良く作業を進めることができる。また、柱状体とレンズ部との間に接着性樹脂を注入し、この樹脂が固まるまでレンズ部を支持することによってレンズ部を固定することができる。よって、レンズ部を固定する作業も容易になる。
【0016】
本発明の好ましい一実施態様では、少なくとも投光部のレンズ部を、支持板に接触しない状態で対をなす柱状体の間の空間に挿入して、光学素子の光軸の方向(Z軸方向)および光軸に直交する平面上の2方向(X軸方向およびY軸方向)におけるレンズ部の位置を調整する。検出精度を確保するには、特に投光部の光軸や焦点の位置を厳密に調整する必要があるが、上記の実施態様では、レンズ部を支持板よりも上の空間で、X,Y,Zの各軸方向に沿って動かすことができるので、必要な調整を容易に行うことができる。さらに、この調整終了時のレンズ部が支持板に接触しない状態となっても、周囲の柱状部と接着性樹脂とにより、レンズ部の調整された位置を維持して支持することができる。
【0017】
他の好ましい実施態様では、投光部のレンズ部と各柱状体との間の隙間において、当該レンズ部と対をなす光学素子の光軸に対応する位置に接着性樹脂を注入する。この方法によれば、光が通過する位置でレンズ部を安定して維持することができるので、検出用ビームの精度を確保することができる。
【0018】
他の好ましい実施態様では、柱状体のレンズ部が配置される場所に対向する箇所の幅を反対側よりも狭く形成する。また、接着性樹脂として紫外線硬化樹脂を使用すると共に、支持板に向けて紫外線を照射することによりレンズ部と各柱状体との間に注入された当該樹脂を硬化させる。
【0019】
上記の実施態様によれば、柱状体のレンズ部に対向する箇所を反対側よりも幅狭にすることにより、照射された紫外線は、柱状体の面に沿ってレンズ部と柱状体との間の隙間に導かれやすい状態になる。よって、紫外線硬化樹脂を速やかに硬化させて、レンズ部を固定することができる。
【0020】
より好ましい実施態様では、柱状体が立設された支持板をセンサの筐体の内部に導入して固定した後に、前記光学素子およびレンズ部を固定する。本発明では、簡単な作業により光学素子とレンズ部との位置や光軸を精度良く調整して固定することができるので、柱状体が形成された支持板を先にセンサの筐体内に導入して固定し、筐体の内部で光学素子やレンズ部を固定することが容易である。よって、光学素子やレンズ部が筐体内に導入された状態で光軸や焦点の位置合わせ状態を確認しながらレンズ部を固定することができ、センサの検出精度を高い確度で保障することが可能になる。
【0021】
つぎに、本発明が提示する光学センサの発光部品の固定方法では、センサの筐体内部に設けられる支持板の上に基板に搭載された発光部品およびこれと対をなすレンズ部をそれぞれの光軸を支持板の板面に沿わせて対向させた状態で固定することを前提として定めた前記発光部品の固定場所の前記板面に、発光部品の幅長さより広い間隔を隔てて発光部品の光軸を挟んで対向する関係になる一対の柱状体の組を、少なくとも一組立設する。そして、発光部品と対をなすレンズ部を支持板の定められた場所に固定した後に、対をなす柱状体を結ぶラインに光軸を交差させた姿勢の前記発光部品が前記対をなす柱状体の間の空間に挿入されると共に各柱状体の背後の空間に基板が挿入されるように発光部品および基板を配置して、レンズ部に対する発光部品の位置および姿勢が調整されるように基板を動かし、、発光部品と各柱状体との間の隙間にそれぞれ注入された接着性樹脂を用いて、調整終了後の発光部品および基板の状態を維持した状態で前記発光部品および基板を固定する。
【0022】
上記の方法では、先のレンズ部の固定方法とは反対に、レンズ部を固定してから、基板に搭載された状態の発光部品を、支持板に立設された柱状体に接着性樹脂を介して固定する。この場合にも、対をなす柱状体間の空間が発光部品に対して十分な余裕度を持つように各柱状体の配置位置を設定することによって、レンズ部に対する発光部品の位置や姿勢が良好になるように調整することができる。また、その調整を維持した状態で柱状体と発光部品との間に接着性樹脂を注入し、当該樹脂を固めることによって、発光部品およびこれを搭載する基板を容易に固定することができる。
【0023】
上記のレンズ部の固定方法により組み立てられた光学式センサでは、投光部および受光部は、それぞれセンサの筐体内部の支持板に固定された光学素子と当該光学素子に対向配備されるレンズ部とを備えると共に、光学素子およびレンズ部がそれぞれの光軸を前記支持板の板面に沿わせて対向する状態で固定される。また、投光部および受光部の各レンズ部に対し、それぞれ当該レンズ部の幅長さより広い間隔を隔ててレンズ部の光軸を挟んで対向する関係にある一対の柱状体の組が、当該レンズ部との間に隙間を生じるように、少なくとも一組、前記支持板の板面に立設されると共に、レンズ部は、その光軸に関する断面形状が一定である部分を有すると共に、柱状体の軸方向において前記支持板に対して隙間を有し、かつ、その光軸上の前後において他の部材と干渉しないための隙間を有するように構成されており、これらの柱状体に対し、レンズ部が接着性樹脂を介して固定される。
【0024】
また、発光部品の固定方法により組み立てられた光学式センサでは、投光部は、センサの筐体内部の支持板に固定されたレンズ部と、発光部品が搭載された基板とを備えると共に、発光部品およびレンズ部がそれぞれの光軸を前記支持板の板面に沿わせて対向する状態で固定される。また、発光部品に対し、その幅長さより広い間隔を隔てて発光部品の光軸を挟んで対向する関係にある一対の柱状体の組が、当該発光部品との間に隙間を生じるように、少なくとも一組、前記支持板の板面の前記基板より前の箇所に立設されると共に、発光部品は、その光軸に関する断面形状が一定である部分を有すると共に、柱状体の軸方向において前記支持板に対して隙間を有し、かつ、その光軸上の前後において他の部材と干渉しないための隙間を有するように構成されており、これらの柱状体に対し、発光部品が接着性樹脂を介して固定される。
【0025】
上記各構成の光学式センサは、投光部および受光部が同一の筐体に収容された反射型のセンサとして構成される場合もあれば、投光部および受光部がそれぞれ異なる筐体に収容された透過型のセンサとして構成される場合もある。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、筐体の内部に配備される支持板に柱状体という簡易な構成を付加することによって、光学素子を固定した後で、柱状体により囲まれた空間内にレンズ部を挿入して光学素子に対するレンズ部の位置や姿勢を調整し、調整後のレンズ部を、当該レンズ部と柱状体との隙間に注入された接着性樹脂により固定することができるので、作業効率を向上させることができる。またレンズ部の固定のための作業も容易になり、作業者の労力を減らすことができる。また、柱状体による固定が可能な状態でレンズ部を動かすことができる範囲にある程度の余裕度をもたせておけば、レンズ部の大きさや形状が変更された場合でも、固定のための構成を変更する必要がない。また、センサの種別によって検出距離が異なったり、レンズ部に導入されるレンズの種類や数が異なるためにレンズ部の焦点の位置を変更する必要がある場合にも、光軸方向におけるレンズ部の位置を調整することにより容易に対応することができる。
【0027】
また、センサの筐体の内部に光学素子やレンズ部を導入して、位置や姿勢の調整および固定の作業を行うことによって、検出精度を確実に確保することができる。
【0028】
また、本発明によれば、投光部のレンズ部を先に固定した後に、発光部品が搭載された基板を、上記と同様の柱状体および接着性樹脂を用いて容易に固定することができる。また、この場合にも、柱状体の間の空間の発光部品に対する余裕度が十分に確保されるように各柱状体の配置位置を設定することによって、光軸方向および光軸方向に直交する平面上の2方向における発光部品の位置の調整の自由度を確保することができ、精度の良い調整が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明が適用された変位センサの使用状態を示す。
この実施例の変位センサ1は、工場の製造ラインなどに配備されて、検出対象のワークWにレーザビームL1を照射すると共にレーザビームL1に対するワークWからの反射光L2を受光し、その受光状態に基づきワークWの変位量を計測する。この処理のために、センサの筐体100の内部には、投光部および受光部と、CPUを含む処理回路が搭載された制御基板などが配備される。
【0031】
また、この変位センサ1は、図中のケーブル10を介して「アンプ部」と呼ばれる別筐体(図示せず。)に接続される。センサにより検出された変位量は、このアンプ部に設けられた表示部に表示されるほか、アンプ部を介して、PLC、パーソナルコンピュータなどの外部機器(図示せず。)に出力される。
【0032】
図2は、上記センサ1の筐体100を、投受光面106を正面にした状態の斜視図として示す。
図3は、筐体100の一方の側面を正面から見た状態を示す。なお、
図2中のZ軸は、投光部の光軸の方向に相当する。また、X軸およびY軸は、変位量の計測の基準となる仮想平面(センサからの距離がゼロの平面)を表す軸であって、Z軸に直交する。
【0033】
筐体100の投受光面106には、レーザビームL1を出射するための投光窓20と、反射光L2を取り込むための受光窓30とが形成される。また、組立処理の便宜のために、筐体の一方の側板101は大きく開口され、その開口部105に覆い板103が被せられ、ネジ104により固定される。
【0034】
図4は、上記の覆い板103を外して、筐体100の内部の構成を示したものである。このセンサ1の筐体100には、開口部105に応じた形状の収容空間が形成されており、開口部105に対向する側板102(
図1に示す。)の内面に樹脂製の支持板110が組み付けられている。この支持板110は、金属成形加工または樹脂成形加工により形成されたもので、その上面には後記する三角柱121,122や円柱131,132,133,134が一体に形成される。
【0035】
筐体100内の空間の向かって左寄りの位置には電源基板113が、支持板111上に起立した姿勢で配備される。電源基板113より左側の小領域が投光部201となり、右側の大きな領域が受光部301となる。
【0036】
受光部301の後方(センサの使用時には上方となる。)では、ケーブル10から露出したコード線114が、電源基板113に接続された状態で配置される。なお、
図4には示していないが、前述の処理回路が搭載された制御基板は、電源基板113に設けられたコネクタ(図示せず。)に接続され、その面を支持板110に対向させた姿勢で筐体内の上部位置に配備される。また、ケーブル10には、制御基板に接続されるコード線も含まれる。
【0037】
投光部201は、レーザダイオード22が搭載された基板23(以下、「LD基板23」という。)とレンズ部21とにより構成される。LD基板23は、レーザダイオード22が投光窓20の方に向けられた状態になるように支持板110上に起立した姿勢をもって、投光部210の奥部に配備される。
【0038】
レンズ部21は、前面が開口されたレンズホルダ210の内部に1枚または複数枚のレンズ(図示せず。)が収容された構成のもので、LD基板23の前方に配備される。
【0039】
受光部301には、受光ユニット32とレンズ部31とが含まれる。受光ユニット32は、CMOSイメージセンサのチップ素子が搭載された基板33をホルダ部34に組み付けた構成のもので、接着剤などにより支持板110上に固定される。レンズ部31は、前面が開口されたレンズホルダ310の開口部に集光用のレンズ311が嵌め込まれた構成のものである。このレンズ部31は、受光窓30の近傍位置に、その窓面に対してレンズ311の面をやや斜めにした状態で固定される。
【0040】
図5は、上記のセンサ1内の投光部201を対象とした拡大斜視図である。
図4および
図5に示すように、この投光部201のレンズ部21のレンズホルダ210は、後端部が幅広に形成されているが、後端部から開口部213を含む前端部までの範囲が比較的長く形成されている。以下、この幅が狭い範囲の両側面211,212を「幅狭部211,212」という。支持板110には、レンズホルダ210の幅狭部211,212の形成箇所を挟んで対向するように、一対の三角柱121,122が立設されている。各三角柱121,122は、ともに一角部をレンズホルダ210に対向させた状態となっている。
【0041】
レンズ部21は、各三角柱121,122とレンズホルダ210との間の隙間に注入されて固められた接着性樹脂40(この実施例では、紫外線硬化樹脂を使用する。)を介して各三角柱121,122に固定される。
【0042】
図6は、受光部301側のレンズ部31の拡大斜視図である。
図4および
図6に示すように、レンズ部31のレンズホルダ310の四隅の近傍位置にはそれぞれ円柱131,132,133,134が立設されている。レンズ部31は、各円柱131〜134とレンズホルダ310との間の隙間に注入されて固められた接着性樹脂40を介して各円柱131〜134に固定される。
【0043】
上記構成の変位センサ1を組み立てる際には、まず支持板110を筐体100の側板102の内面に組み付けてから、各種部品を筐体100内に導入して固定する。
【0044】
この場合、投光部201は受光部301より先に形成される。投光部201を形成する作業では、まず、接着剤による固定や圧入などの方法により、LD基板23を投光部201内の奥部に固定する。そして、レンズ部21を専用の治具により支持しながら、各三角柱121,122の間の空間内に挿入し、光軸方向(Z軸方向)および幅方向(X軸方向)ならびに高さ方向(Y軸方向)の各軸方向に対するレンズ部21の位置や姿勢を調整する。具体的には、筐体100の投受光面101から所定距離離れた位置に計測器を配置して、レーザダイオード22を発光させながら投光窓20より出射されるレーザビームL1の径やそのビームのX座標およびY座標を計測し、これらの計測値があらかじめ定めた適切な値になるまで調整を続ける。なお、この調整処理はレンズ部21を支持板110に接触させない状態で行われるので、最終的にも、レンズ部21は支持板110から浮いた状態で固定される可能性がある。
【0045】
調整が終了した後も、レンズ部21の位置および姿勢が調整された状態で維持されるように、治具による支持を続けながら、レンズホルダ210と各三角柱121,122との間の隙間に紫外線硬化樹脂40を注入する。さらに、引き続き、治具によるレンズ部21の支持を続けながら、投光部201の上方から支持板110の方に向けて紫外線を照射する。この紫外線は広がりながら進行したり、支持板110や筐体100の内壁面などで反射したりして、レンズ部21や三角柱121,122の方へと導かれる。レンズ部21と三角柱121,122との間の隙間は微小なものであるが、いずれの三角柱121,122も、一角部をレンズ部21に対向させた状態で配置されているので、
図7で矢印により示すように、紫外線を三角柱121,122の側面に沿って接着箇所に回り込ませることができる。これにより、樹脂40を速やかに硬化させることができるので、調整後のレンズ部21が位置ずれしないうちにレンズ部21を固定することができる。
【0046】
上記の調整方法によれば、レンズホルダ21の幅狭部211,212と各三角柱121,122間の距離との差が微小であるので、X軸方向に対する位置決めが容易になる。一方、Y軸方向に対しては、上下の各方向にレンズ部21を動かして詳細な位置調整を行うことができる。またZ軸方向におけるレンズ部21の位置調整によって焦点の位置が調整されることになるが、この実施例では、レンズホルダ210の幅狭部211,212と三角柱121,122とを対向させる範囲内であれば、レンズ部21を自由に動かすことができるので、焦点位置の設定の自由度を高めることができる。
【0047】
また、この実施例では、
図8に示すように、レンズ部21の光軸Lを中心とする所定の高さ範囲が紫外線硬化樹脂40の注入位置となるようにしている。これにより、レーザビームL1が通過する高さ位置でレンズ部21を安定して支持することができるので、レーザビームL1の出射方向やビームの径を安定させることができる。
【0048】
投光部201に照射される紫外線は、実際にはかなりの範囲に広がるので、
図9に示すように、筐体100の内側面のレンズ部21に対向する位置にミラー25を配備してもよい。このようにすれば、レンズ部21の周囲に拡散した紫外線の一部をミラー25により反射させて、レンズ部21の方に導くことができるので、紫外線硬化樹脂40をより迅速に固めることができる。
【0049】
受光部301を形成する作業においても、上記と同様に、まず支持板110上に受光ユニット32を固定し、4個の円柱131〜134により囲まれた空間内にレンズ部31を挿入する。そして、受光ユニット32が検出に適した受光状態になるように、レンズ部31の位置や姿勢を調整する。たとえば、投受光面101から一定の距離離れた場所にモデルの検出対象物を配置し、この対象物にレーザビームL1を照射しながらCMOSイメージセンサによる撮像を行い、生成された画像データ中の受光量のピークがセンサ1から対象物までの距離に適合する位置に現れるようになるまで、レンズ部31の位置や姿勢を調整する。
【0050】
上記の調整が終了すると、その時点のレンズ部31の位置および姿勢を維持したまま、各円柱131〜134とレンズユニット310との隙間に紫外線硬化樹脂40を注入する。そして、紫外線を照射することにより、各円柱131〜134にレンズ部31を固定する。
【0051】
各円柱131〜134は、それぞれレンズ部31の配置場所を挟んで互いに対向した関係になっているので、レンズ部31を安定して支持することができる。また、レンズ部31の四隅を紫外線硬化樹脂40を介して円柱131〜134の周面に固定することが可能な範囲であれば、円柱131〜134に対するレンズ部31の位置や姿勢を自由に変更することができるので、受光ユニット32に対するレンズ部31の位置合わせを精度良く行うことができる。
【0052】
ただし、この実施例では、受光部301側のレンズ部31の調整に際しては、レンズ部31を支持板110に接触させた状態で行うようにしている。つまり、X軸方向およびZ軸方向における位置とレンズ部31の姿勢とは調整されるが、Y軸方向におけるレンズ部31の位置は調整されない。受光部301では、レンズ311が投光部201側のレンズより大型であり、またCMOSイメージセンサの画素配列が受光ユニット32の横幅方向に対応しているので、Y軸方向における光軸の位置に多少のずれが生じても、画素配列に対する反射光の入射位置に大きな影響が生じることがないからである。
【0053】
上記のように、この実施例では、投光部201や受光部301を形成する際に、先にレーザダイオード22を含むLD基板23やCMOSイメージセンサを含む受光ユニット32を固定し、これらの前方に位置する複数の柱状体(三角柱121,121または円柱131〜134)の間の空間にレンズ部21,31を挿入し、レンズ部21,31と光学素子(レーザダイオードまたはCMOSイメージセンサ)との光軸合わせや焦点位置の調整を行った後にレンズ部21,31を固定する。よって、光軸や焦点位置を高精度に調整する処理を効率良く行うことができる。
【0054】
また、レンズ部の周囲の柱状体とレンズ部との間に紫外線硬化樹脂40を注入して当該樹脂40を固めることによって、ネジなどの固定手段を用いなくともレンズ部を容易に固定することができる。よって、狭い筐体の内部でも固定作業を容易に行うことができ、レンズ部21,31の光軸や焦点の位置を精度良く合わせて、検出の精度を確保することができる。
【0055】
また、センサの製作現場では、複数のタイプのセンサの間で、筐体や各種部品を共通にしたいという要望があるが、上記の実施例の投光部201では、レンズ部21の幅狭部211,212が三角柱121,122に対向する範囲内であれば、Z軸方向に沿ってレンズ部を自由に動かすことができる。よって、センサのタイプによって検出距離が異なる場合でも、Z軸方向におけるレンズ部21の位置を調整することにより対応できるので、柱状体を含む支持板110やLD基板23およびレンズ部21を変更することなく、対応することができる。
【0056】
センサの型によってレンズ部21のレンズの種類や数が異なる場合にも、同様に、レンズ部21のZ軸方向の位置調整により対応することができる。
【0057】
投光部201や受光部301のレンズホルダ21,31の大きさや形状が若干変わった場合にも、柱状体に対向させる部位(レンズ部21ではレンズホルダ210の幅狭部211,212、レンズ部31ではレンズホルダ310の四隅)との間に十分な余裕度があれば、柱状体の形成位置を変更することなく、レンズ部21,31を固定することができる。
【0058】
また、上記の実施例では、投光部201の柱状体を三角柱とし、受光部301の柱状体を円柱としたが、これに限らず、全ての柱状体を三角柱にしてもよい。また、レンズ部との間の隙間に紫外線を導くのに適した柱状体の形状は三角柱に限らず、レンズ部に対向する箇所の幅が反対側よりも狭く設定されていればよい。たとえば、断面が半円状の柱を、その円弧部分がレンズ部の配置場所に対向する状態になるようにして支持板110に立設してもよい。
【0059】
また、上記の実施例は、変位センサの投光部および受光部に本発明を適用したものであるが、変位センサに限らず、物体検出用の光電スイッチや安全用途に用いられる多光軸光電センサにおいても、上記実施例と同様の方法によりレンズ部を固定することができる。
【0060】
上記のとおり、投光部201および受光部301のレンズ部21,31を、支持板110に立設された柱状体に紫外線硬化樹脂40を介して固定する実施例を示したが、同様の固定方法を、LD基板23の固定に適用することもできる。この適用例を
図10を参照して説明する。
【0061】
図10(1)は、他の実施例による変位センサの投光部201の拡大された斜視図であり、
図10(2)は投光部201の上面図である。これらの図に示すように、この実施例の投光部201には、先の実施例とは異なる形状のレンズ部21Aと、LD基板23とが配備される。また、支持板110には、LD基板23を固定する目的で、レンズ部21Aの配置場所より奥部に、一対の三角柱123,124が所定の間隔をあけて立設される。
【0062】
レンズ部21Aは、薄型のホルダ214にレンズ24が嵌め込まれた構成のもので、支持板110に固定される。
【0063】
LD基板23は、レーザダイオード22が三角柱123,124の間の空間に挿入され、基板本体が三角柱123,124より後方に位置する状態で固定される。この固定は、レーザダイオード22と各三角柱123,124との間の隙間に注入されて固められた接着性樹脂40を介したレーザダイオード22と三角柱123,124との連結により実現したものである。
【0064】
上記構成の投光部201を組み立てる処理では、まず、接着剤による固定や圧入などの方法により、レンズ部21Aを支持板110上に固定する。次に、治具を用いて、レーザダイオード22が三角柱123,124の間の空間に挿入され、基板本体が三角柱123,124の背後の空間に挿入されるように、LD基板23を筐体100内に導入する。
【0065】
次に、レーザダイオード22を発光させて、レンズ24および投光窓20を介して出射されたレーザビームL1の径やX座標およびY座標を計測しながら、各計測値があらかじめ定めた適切な値になるようにLD基板23の位置や姿勢を調整する。この調整処理では、レーザダイオード22の外周面のいずれかの箇所が三角柱123,124に対向する状態を維持することを条件に、X,Y,Zの各軸方向におけるLD基板23の位置を変更する。調整が終了すると、その調整終了時の状態が維持されるように治具による支持を続けながら、レーザダイオード22と三角柱123,124との間の隙間に紫外線硬化樹脂40を注入する。さらに紫外線を照射して紫外線硬化樹脂40を固めることによって、LD基板23を調整された状態で固定する。
【0066】
上記の方法では、X方向においては、紫外線硬化樹脂40を介した固定に支障が生じない範囲で、各三角柱123,124とレーザダイオード22との間に余裕度をもたせることによって、微小な位置調整を行うことが可能になる。また、Y軸方向に対しては上下の各方向にLD基板23を動かしてレーザダイオード22の高さを調整することができる。また、最終的に、支持板110に接触しない状態でLD基板23を固定することもできる。Z方向に関しても、三角柱123,124の間にレーザダイオード22を安定して支持することができる範囲内で、LD基板23の位置を変更することができるので、焦点位置の設定の自由度を確保することができる。