(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780281
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】リミッタアンプ回路
(51)【国際特許分類】
H03F 3/08 20060101AFI20150827BHJP
H03F 3/34 20060101ALI20150827BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H03F3/08
H03F3/34 A
H03F3/45 Z
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-212849(P2013-212849)
(22)【出願日】2013年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-76789(P2015-76789A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】591230295
【氏名又は名称】NTTエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 初史
(72)【発明者】
【氏名】河野 誠
(72)【発明者】
【氏名】和田 尚也
【審査官】
柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−038556(JP,A)
【文献】
特開平08−162860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/08
H03F 3/34
H03F 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正相入力信号と逆相入力信号とからなる差動入力信号を増幅する第1の差動増幅回路と、
前記第1の差動増幅回路の差動出力信号を増幅する第2の差動増幅回路と、
前記正相入力信号の直流成分と前記逆相入力信号の直流成分との電圧差に応じて前記第1の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する第1のオフセット調整回路と、
前記第2の差動増幅回路の差動出力信号の一方の信号の直流成分と基準電圧に応じて前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する第2のオフセット調整回路と、
前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のどちらか一方に応じてリセットパルスを生成するリセットパルス生成回路と、
第1及び第2の初期値設定回路とを備え、
前記基準電圧が所定の値に調整され、前記第2のオフセット調整回路は、前記差動入力信号が入力された場合は前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加せず、前記差動入力信号が入力されていない場合は前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加し、
前記第1のオフセット調整回路は、
前記正相入力信号の直流成分を検出する第1のピーク検出回路と、
前記逆相入力信号の直流成分を検出する第2のピーク検出回路と、
前記第1のピーク検出回路の出力と前記第2のピーク検出回路の出力との電圧差を増幅する第3の差動増幅回路とを有し、
前記リセットパルスが生成された時に、前記第1の初期値設定回路は第1の初期化電圧で前記第1のピーク検出回路のピーク検出電圧を初期化し、前記第2の初期値設定回路は、第2の初期化電圧で前記第2のピーク検出回路のピーク検出電圧を初期化することを特徴とするリミッタアンプ回路。
【請求項2】
前記第1の初期化電圧は前記第2の初期化電圧より大きいことを特徴とする請求項1に記載のリミッタアンプ回路。
【請求項3】
前記リセットパルス生成回路は、
前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のどちらか一方を入力する第1のローパスフィルタと、
前記第1のローパスフィルタの出力信号を入力する差動コンパレータと、
前記差動コンパレータの第1の出力信号を入力する第2のローパスフィルタと、
前記第2のローパスフィルタの出力信号と前記差動コンパレータの第2の出力信号を入力するAND回路とを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のリミッタアンプ回路。
【請求項4】
前記第1の初期値設定回路は、第1の初期電圧値発生部と、第1のスイッチとを有し、
前記第2の初期値設定回路は、第2の初期電圧値発生部と、第2のスイッチとを有し、
前記リセットパルスが生成された時には、前記第1のスイッチは前記第1の初期電圧値発生部の電圧値を選択して出力し、前記第2のスイッチは前記第2の初期電圧値発生部の電圧値を選択して出力し、
前記リセットパルスが生成されない時には、前記第1のスイッチは前記第1の初期電圧値発生部の電圧値を選択せず、出力を開放状態とし、前記第2のスイッチは前記第2の初期電圧値発生部の電圧値を選択せず、出力を開放状態とすることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のリミッタアンプ回路。
【請求項5】
前記第1及び第2のピーク検出回路は、ダイオードと、前記ダイオードのカソードと接地の間に接続された容量とを有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のリミッタアンプ回路。
【請求項6】
前記第2の差動増幅回路の差動出力は飽和していることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のリミッタアンプ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速のバースト信号に対して優れた受信感度と応答特性を有するリミッタアンプ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高速データ伝送を可能とする光伝送システムとして、複数のデータ信号のパケットを時間多重する光伝送システムが知られている。このシステムにおいてバースト信号を受信するために光受信回路が用いられる。
【0003】
図1は従来の光受信回路を示す図である。フォトダイオード100は微小な光信号を電流信号に変換する。トランスインピーダンスアンプ(TIA: Trans Impedance Amplifier)101は、この電流信号を電圧信号に変換増幅する。リミッタアンプ回路102は、トランスインピーダンスアンプ101の出力信号を一定振幅に増幅する。
【0004】
このような構成の光受信回路では、トランスインピーダンスアンプ101の差動出力の正相側IPと逆相側INにそれぞれDCオフセットが生じる。入力信号のDCオフセットはトランスインピーダンスアンプ101の利得分だけ増幅される。DCオフセットの大きさはトランスインピーダンスアンプ101の個体差により異なるが、DCオフセットが大きい場合、リミッタアンプ回路のバースト応答性を劣化させ、良好な応答特性が得られないという問題がある。
【0005】
図2はAC結合構成の従来の光受信回路を示す図である。トランスインピーダンスアンプ101とリミッタアンプ回路102の間に結合容量C1,C2が設けられている。これにより、
図1の光受信回路のDCオフセットの影響を無くすことができる。
図3は
図2のリミッタアンプ回路の入力を示す図である。
図3(a)(b)のように結合容量C1,C2とリミッタアンプ回路102の入力インピーダンスで決まる時定数によりDCレベルが変化して、安定するまでに時間がかかるという問題がある。ここで
図3(c)(d)は
図3(a)(b)の500ns付近の時間幅を拡大したリミッタアンプ入力IP及びINの時間応答波形を示す。オフセット調整回路を設けない従来のリミッタアンプ回路では、差動入力信号が入力されていない場合に正相出力信号と逆相出力信号のDC出力レベルが等しくなり、無信号時にノイズが出力され、後段の受信装置の特性に影響が生じるという問題があった。
【0006】
これらの問題を改善するためのリミッタアンプ回路が提案された(例えば、特許文献1参照)。
図4は改善された従来のリミッタアンプ回路を示す図である。差動増幅回路11は、正相入力信号IPと逆相入力信号INとからなる差動入力信号を増幅する。差動増幅回路12,13は、差動増幅回路11の差動出力信号を増幅する。
【0007】
オフセット調整回路14は、ピーク検出回路15,16と、差動増幅回路17とを有する。ピーク検出回路15は、正相入力信号IPの直流成分を検出して保持する。ピーク検出回路16は、逆相入力信号INの直流成分を検出して保持する。差動増幅回路17は、ピーク検出回路15,16により検出した正相入力信号IPの直流成分と逆相入力信号INの直流成分との電圧差を差動増幅回路11に負帰還し、この電位差に応じて差動増幅回路11の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する。
【0008】
オフセット調整回路18は、ピーク検出回路19と、差動増幅回路20とを有する。ピーク検出回路19は、飽和している差動増幅回路13の差動出力信号の一方の信号の直流成分を検出して保持する。差動増幅回路20は、ピーク検出回路19により検出した差動増幅回路12の差動出力信号の一方の信号の直流成分と基準電圧REFとの電圧差を差動増幅回路12に正帰還し、この電位差に応じて差動増幅回路12の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する。
【0009】
基準電圧REFは所定の値に調整されている。オフセット調整回路18は、リミッタアンプ回路の入力に差動信号が入力された場合は差動増幅回路13の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加せず、リミッタアンプ回路の入力に差動信号が入力されていない場合は差動増幅回路13の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加する。このため、リミッタアンプ回路の入力に差動信号が入力されていない場合に正相出力信号と逆相出力信号のDC出力レベルが等しくなるのを防ぐことができ、良好な応答特性を得ることができる。
【0010】
図5は
図4のリミッタアンプ回路の入力信号応答特性のシミュレーション結果を示す図である。
図5(a)はリミッタアンプ回路の入力信号を示す。入力信号は10Gbpsの10(イチゼロ)の交番信号である。入力信号は無入力の状態から5ns後に300mVpp(片側)を入力し、45ns後に無入力状態とした後の70ns後(パケット間隔25ns)に20mVpp(片側)を入力している。
図5(b)はその時のリミッタアンプの出力であるが、70ns後のパケット信号は欠落してしまい出力されないという問題があった。
図5(c)(d)は20ns付近の時間幅を拡大したリミッタアンプの入力及び出力波形を、
図5(e)は70ns付近の時間幅を拡大したリミッタアンプの入力波形を示す。
【0011】
この問題の原因、動作について以下に説明する。
図6は光パケット信号の例を示す図である。送信側から受信側までの送信距離等によって光パケット信号1,2間で光強度の差が生じる。このため、無入力時間が短くなるほど、ピーク検出回路15,16のホールド容量は光パケット信号1の信号レベルを維持する。このため
図4の構成では、
図5に示したシミュレーション結果のようにプリアンブルビットが欠落して、応答性が劣化し、受信感度も低下するという問題があった。この動作について以下に説明する。
【0012】
図7はピーク検出回路の例を示す図である。ダイオード21は入力端子INPKから入力された信号を整流して、ホールド容量22に電荷をチャージする。ホールド容量22はチャージされた電荷に相当する電圧を保持し、この電圧が出力端子OUTPKから出力される。ここで初期状態の場合(無信号時からパケット信号が入力される場合)、無信号時のホールド容量22におけるホールド電圧はパケット信号に相当する電圧より低くなっているので、ダイオード21には順方向の電圧が印加され、整流作用によりホールド容量22に電荷がチャージされる。チャージに必要な応答時間はパケット信号が正常に受信できるようにダイオード21とホールド容量22の回路定数が適切に設計されている。
【0013】
一方、
図6のように、あるパケット信号から次のパケット信号に遷移したときに光強度の差が大から小に遷移する場合、
図7のピーク検出回路のダイオード21のカソード側の電圧はホールド容量22で保持された遷移前のパケット信号に相当する電圧となっており、ダイオード21のアノード側の電圧は遷移後のパケット信号に相当する電圧となるので、ダイオード21には逆方向の電圧が印加される。従って、ホールド容量22の電圧は遷移後のパケット信号に相当する電圧まで、ディスチャージされる。ディスチャージの応答時間は容量値と差動増幅回路17の入力抵抗及びダイオード21の逆方向等価抵抗で決まり、チャージする場合に比べて大きな時間となる。このため、リミッタアンプ回路には適切なオフセット電圧が与えられないうちにパケット信号が入力されてしまい上記のようにプリアンブルビットが欠落して、応答性が劣化し、受信感度も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2009−38556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
図4のリミッタアンプ回路では、光パケット信号間で光強度の差が生じた場合、最初の光パケット信号入力終了後、適切なオフセット電圧が与えられないうちに次の光パケット信号が入力されてしまう。このため、プリアンブルビットが欠落して、応答性が劣化し、受信感度も低下するという問題がある。
【0016】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は高速のバースト信号に対して優れた受信感度と応答特性を有するリミッタアンプ回路を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るリミッタアンプ回路は、正相入力信号と逆相入力信号とからなる差動入力信号を増幅する第1の差動増幅回路と、前記第1の差動増幅回路の差動出力信号を増幅する第2の差動増幅回路と、前記正相入力信号の直流成分と前記逆相入力信号の直流成分との電圧差に応じて前記第1の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する第1のオフセット調整回路と、前記第2の差動増幅回路の差動出力信号の一方の信号の直流成分と基準電圧に応じて前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する第2のオフセット調整回路と、前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のどちらか一方に応じてリセットパルスを生成するリセットパルス生成回路と、第1及び第2の初期値設定回路とを備え、前記基準電圧が所定の値に調整され、前記第2のオフセット調整回路は、前記差動入力信号が入力された場合は前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加せず、前記差動入力信号が入力されていない場合は前記第2の差動増幅回路の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加し、前記第1のオフセット調整回路は、前記正相入力信号の直流成分を検出する第1のピーク検出回路と、前記逆相入力信号の直流成分を検出する第2のピーク検出回路と、前記第1のピーク検出回路の出力と前記第2のピーク検出回路の出力との電圧差を増幅する第3の差動増幅回路とを有し、前記リセットパルスが生成された時に、前記第1の初期値設定回路は第1の初期化電圧で前記第1のピーク検出回路のピーク検出電圧を初期化し、前記第2の初期値設定回路は、第2の初期化電圧で前記第2のピーク検出回路のピーク検出電圧を初期化する。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、高速のバースト信号に対して優れた受信感度と応答特性を有するリミッタアンプ回路を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図2】AC結合構成の従来の光受信回路を示す図である。
【
図3】
図2のリミッタアンプ回路の入力を示す図である。
【
図4】改善された従来のリミッタアンプ回路を示す図である。
【
図5】
図4のリミッタアンプ回路の入力信号応答特性のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係るリミッタアンプ回路を示す図である。
【
図9】リセットパルス生成回路と初期値設定回路の動作を説明するための図である。
【
図10】
図8の回路を基本構成としたリミッタアンプ回路の入力信号応答特性のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図8は、本発明の実施の形態に係るリミッタアンプ回路を示す図である。フォトダイオード100が光信号を電気信号に変換する。その電気信号をトランスインピーダンスアンプ101が増幅する。トランスインピーダンスアンプ101の差動出力信号をリミッタアンプ回路102が増幅する。
【0021】
リミッタアンプ回路102において、差動増幅回路11が、正相入力信号IPと逆相入力信号INとからなる差動入力信号を増幅する。差動増幅回路12,13が差動増幅回路11の差動出力信号を増幅する。差動増幅回路13の差動出力信号がリミッタアンプ回路102の正相出力信号OP及び逆相出力信号ONとなる。
【0022】
オフセット調整回路14は、正相入力信号IPの直流成分と逆相入力信号INの直流成分との電圧差に応じて差動増幅回路11の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する。具体的には、オフセット調整回路14は、正相入力信号IPの直流成分を検出して保持するピーク検出回路15と、逆相入力信号INの直流成分を検出して保持するピーク検出回路16と、ピーク検出回路15の出力とピーク検出回路16の出力との電圧差を増幅する差動増幅回路17とを有する。
【0023】
ピーク検出回路15,16は、
図7に示すようにダイオード21と、ダイオード21のカソードと接地の間に接続された容量22とを有する。差動増幅回路17は、ピーク検出回路15,16により検出した正相入力信号IPの直流成分と逆相入力信号INの直流成分との電圧差を増幅して、差動増幅回路11に
与えるフィードフォワード系を構成し、この電圧差に応じて差動増幅回路11の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する。
【0024】
オフセット調整回路18は、ピーク検出回路19と、差動増幅回路20とを有する。ピーク検出回路19は、飽和している差動増幅回路13の差動出力信号の一方の信号の直流成分を検出して保持する。差動増幅回路20は、ピーク検出回路19の出力と基準電圧REFとの電圧差を増幅する。このオフセット調整回路18は、飽和している差動増幅回路13の差動出力信号の一方の信号の直流成分と基準電圧REFに応じて差動増幅回路12の差動出力信号のDCオフセット電圧を調整する。基準電圧REFは所定の値に調整されている。オフセット調整回路18により正帰還ループを構成し、自動的に差動増幅回路12のDCオフセット電圧を調整する。具体的には、オフセット調整回路18は、リミッタアンプ回路102に差動入力信号が入力された場合は差動増幅回路12の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加せず、差動入力信号が入力されていない場合は差動増幅回路12の差動出力信号のDCオフセット電圧にDCオフセットを付加する。
【0025】
リセットパルス生成回路103は、差動増幅回路13の差動出力信号の正相出力信号OPを入力するローパスフィルタ23と、ローパスフィルタ23の出力信号を入力する差動コンパレータ24と、差動コンパレータ24の第1の出力信号を入力するローパスフィルタ25と、ローパスフィルタ25の出力信号と差動コンパレータ24の第2の出力信号を入力するAND回路26とを有する。リセットパルス生成回路103は、差動増幅回路13の差動出力信号の正相出力信号OPに応じてリセットパルスを生成する。差動増幅回路13の差動出力信号の逆相出力信号ONを用いてリセット生成パルスを生成する場合は、差動コンパレータ24の第1の出力信号をAND回路26へ、差動コンパレータ24の第2の出力信号をローパスフィルタ25へ入力することにより同様にリセットパルスを生成することができる。
【0026】
初期値設定回路104aは抵抗Ra1,Ra2とスイッチSWaを有する。抵抗Ra1,Ra2は定電圧VEEとGNDの間に直列に接続されている。初期値設定回路104bは抵抗Rb1,Rb2とスイッチSWbを有する。抵抗Rb1,Rb2は定電圧VEEとGNDの間に直列に接続されている。スイッチSWa,SWbはSPST(Single pole Single Throw)である。
【0027】
抵抗Ra1,Ra2は初期化電圧VA1を生成する第1の初期電圧値発生部であり、抵抗Rb1,Rb2は初期化電圧VA2を生成する第2の初期電圧値発生部である。初期化電圧VA1はVA1=Ra1・VEE/(Ra1+Ra2)で与えられ、初期化電圧VA2はVA2=Rb1・VEE/(Rb1+Rb2)で与えられる。
【0028】
リセットパルス生成回路103でリセットパルスが生成された時にはスイッチSWa,SWbがオンとなり、スイッチSWaは初期化電圧VA1を選択して出力し、スイッチSWbは初期化電圧VA2を選択して出力する。一方、リセットパルスが生成されない時には、スイッチSWaは初期化電圧VA1を選択せず、出力を開放状態とし、スイッチSWbは初期化電圧VA2を選択せず、出力を開放状態とする。従って、初期値設定回路104a,104bの出力電圧(PKp、PKnに与えられる電圧)はリセットパルスが生成された時だけVA1,VA2となり、その他は開放状態である。
【0029】
これにより、リセットパルスが生成された時に、初期値設定回路104aは初期化電圧VA1をピーク検出回路15のホールド容量に与えてピーク検出電圧を初期化し、初期値設定回路104bは初期化電圧VA2をピーク検出回路16のホールド容量に与えてピーク検出電圧を初期化する。その他の状態の時には、ピーク検出回路15,16のホールド容量電位は維持され、リミッタアンプ回路のオフセット調整機能がそのまま維持される。
【0030】
初期化電圧VA1,VA2を予め入力されるパケット信号強度の最小値より低い値に設定しておけば、
図6の後段の光パケット信号2が入力されてもピーク検出回路15,16のダイオード21は順方向状態となり、ダイオード21の整流作用によりパケット信号に相当する電圧まで容量にチャージされるので、高速のバースト信号に対して優れた受信感度と応答特性を得ることができる。
【0031】
差動増幅回路11
はフィードフォワード回路であるため、初期化電圧VA1を初期化電圧VA2より大きくする。これにより、AC結合したパケット信号の先頭部は
図3(c)(d)に示したIP側のDCレベルを下げるように、IN側のDCレベルを上げるように働く。このため、VA1とVA2を同電位に設定した場合よりもオフセット調整回路14のオフセット電圧を早期に調整することができる。適切なVA1を与えると
図9(g)のように次パケット信号の最小入力振幅に対して、差動増幅回路12では適切なDCオフセット電圧が与えられるため、良好な応答特性が得られる。
【0032】
図9は、リセットパルス生成回路と初期値設定回路の動作を説明するための図である。ここでは初期値設定回路104aを例にとって説明するが、初期値設定回路104bでも同様である。
図9(a)は光パケット信号としてバースト信号が入力された時のリミッタアンプ回路の正相出力OPの波形を示す。
図9(b)はローパスフィルタ23通過後の出力波形を示す。ここで破線は次段のコンパレータの閾値レベルを示す。コンパレータの正相出力はローパスフィルタ25を介して高周波成分が除去されて
図9(c)のような波形になり、逆相出力は
図9(d)のようになる。従って
図9(c)と
図9(d)の波形のAND演算をすると、AND回路26の出力には
図9(e)に示されるリセットパルスが得られる。
【0033】
図10は、
図8の回路を基本構成としたリミッタアンプ回路の入力信号応答特性のシミュレーション結果を示す図である。
図10(a)は
図5(a)と同じ条件のリミッタアンプ回路の入力信号を示す。
図10(b)はリミッタアンプ回路のPKp、PKnへ入力したリセットパルスの例である。このときのリミッタアンプの出力を
図10(c)に示す。従来構成では、70ns後のパケット信号が欠落となったが、オフセット調整回路14を初期化するため、リミッタアンプ出力にパケット信号が出力される。
図11は、
図8の70ns付近の拡大図である。
図11(a)にリミッタアンプの入力を示し、
図11(b)にリミッタアンプの出力を示す。パケット先頭部より良好な出力特性が得られる。
【0034】
以上説明したように、本実施の形態では、光入力パケット信号間に強度差があっても、リセットパルス生成回路103と初期値設定回路104a,104bによりピーク検出回路のホールド容量を初期化できる。このため、高速のバースト信号に対して優れた受信感度と応答特性を得ることができる。また、リミッタ(飽和)出力より、リセット生成しているため、光入力パワーに関係することなく、パケット信号が終了するときには常にリセット信号を生成することができる。さらにAGC(Auto Gain Control)機能がなく、オフセットを合わせて増幅(リミット)するため、バースト応答性(10ns程度)に優れている。
【符号の説明】
【0035】
11,12,13,17,20 差動増幅回路、14,18 オフセット調整回路、15,16,19 ピーク検出回路、21 ダイオード、22 容量、23,25 ローパスフィルタ、24 差動コンパレータ、26 AND回路、103 リセットパルス生成回路、104a,104b 初期値設定回路、Ra1,Ra2 抵抗(第1の初期電圧値発生部)、Rb1,Rb2 抵抗(第2の初期電圧値発生部)、SWa,SWb スイッチ