(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2のコイルアンテナは、前記第1のコイルアンテナの一方の開口面から前記第2のコイルアンテナの一方の開口面を、前記第1および第2のコイルアンテナのコイル導体によって遮られることなく見通せるように配置されている、請求項1に記載のアンテナ装置。
前記第1の主面に垂直な方向から平面視したとき、前記切欠部は、前記第2のコイルアンテナの前記導電層に近接する側の開口面を挟んで前記第1のコイルアンテナと反対側に設けられている、請求項9に記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0034】
<実施の形態1>
本実施の形態のアンテナ装置は、移動体通信システム用の内蔵アンテナとして構成されており、たとえばフェリカ(FeliCa:登録商標)やNFC(Near Field Communication)などHF帯のリーダライタ側アンテナまたはタグ側アンテナとして利用される。
【0035】
図1は、この発明の実施の形態1によるアンテナ装置1の構成を模式的に示す外観図である。
【0036】
図2は、
図1のアンテナ装置1の構造を説明するための図である。
図3は、
図1のアンテナ装置1を主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0037】
図1〜
図3を参照して、アンテナ装置1は、誘電体、または絶縁体の磁性体、またはこれらの両方を含む素体40と、概ねX方向に巻回軸を有する第1のコイルアンテナ10と、概ねY方向に巻回軸を有し、第1のコイルアンテナ10と電気的に直列に接続された第2のコイルアンテナ20とを備える。
【0038】
以下、
図3に示すように、第1のコイルアンテナ10において、コイル導体(巻線導体)16によって取り囲まれる空間を中空部17と称する。巻回軸61は、コイル導体16が巻きつけられる中心軸線を意味する。中空部17のうち巻回軸61方向の両端面を開口面18A,18Bと称する。第2のコイルアンテナ20についても同様に、コイル導体26によって取り囲まれる空間を中空部27と称する(中空部27の厚みは、コイル導体26の厚みに等しい)。巻回軸62は、コイル導体26が巻きつけられる中心軸線である。中空部27のうち巻回軸62方向の両端面を開口面28A,28Bと称する。
【0039】
実施の形態1の場合、素体40は、第1の主面41、第1の主面41に対向する第2の主面42、ならびに第1および第2の主面41,42を連接する4つの側面43からなる直方体の形状を有する。第1および第2の主面41,42は、Y方向に垂直な面、すなわちXZ平面に沿って形成される。アンテナ装置1を通信端末に搭載する場合、第2の主面42は、通信端末内に設けられたプリント配線板への取付け面となる。
【0040】
図1〜
図3の場合、コイルアンテナ10のコイル導体16は素体40の表面および内部に形成され、コイルアンテナ20のコイル導体26は素体40の表面に形成される。そして、第1のコイルアンテナ10の巻回軸は、互いに対向する2つの側面43と交差する。第2のコイルアンテナ20の巻回軸は、第1および第2の主面41,42と交差する。
【0041】
図1〜
図3の場合と異なり、コイルアンテナ10,20の両方のコイル導体16,26を素体40の内部に形成してよい。より一般的に言えば、第1のコイルアンテナ10のコイル導体16は、素体40の内部に、または素体40の内部から第1および第2の主面41,42の少なくとも一方にかけて、または素体40の表面上に形成される。第2のコイルアンテナ20のコイル導体26は、素体40の内部に、または第1の主面41上に、または素体40の内部から第1の主面41にかけて形成される。
【0042】
ただし、素体40に磁性体部分が含まれる場合には、コイルアンテナ10の少なくとも一部およびコイルアンテナ20の少なくとも一部は磁性体部分の表面または外部に形成する必要がある。素体40を全て磁性体によって形成する場合には、コイルアンテナ10の一部とコイルアンテナ20の少なくとも一部とを、素体40の表面上に形成する必要がある。コイルアンテナ10,20を磁性体の内部に形成すると、磁性体の内部で閉じた磁気回路が形成されるために素体の外部に磁界が生じなくなるからである。
【0043】
なお、素体40の形状は直方体に限らず、互いに対向する(平行とは限らない)主面41,42と、主面41,42間を連接する1または複数の側面43とを有するものであればどのような形状でもよい。たとえば、素体40の形状は、円柱などの柱体であってもよい。この場合、柱体の上下の底面が主面41,42に相当する。円柱の側面43は1つの曲面によって構成される。主面41,42は同一形状でなくてもよいし、側面43は主面41,42と直交していなくてもよい。
【0044】
上記のように、より一般的な形状の素体の場合において、第1および第2のコイルアンテナのコイル導体は、素体の内部または表面上の少なくとも一方に形成される。そして、第1のコイルアンテナの巻回軸は素体を構成する1または複数の側面のうち少なくとも1つと交差し、第2のコイルアンテナの巻回軸は素体を構成する第1および第2の主面と交差する。
【0045】
図2に示すように、素体40は、絶縁体材料からなる複数の基材層がY方向に積層された構造を有する。各基材層は、たとえば熱可塑性樹脂やガラスセラミック等の誘電体、または、フェライト粉末入り樹脂のような磁性体によって形成される。具体的に
図2の場合には、素体40は、第1〜第3の基材層50,51,52からなる積層体である。
【0046】
第1および第2のコイルアンテナ10,20は、銀および銅などの導体線によって形成される。
【0047】
第1のコイルアンテナ10のコイル導体16は、第1の基材層50の表面に形成された複数の導体線12と、第3の基材層52の表面に形成された複数の導体線15と、第1の基材層50を貫通する複数の導体線13と、第2の基材層51を貫通する複数の導体線14とを含む。第1および第2の基材層50,51を貫通する導体線13,14によって、第1の基材層50の表面に形成された導体線12と、第3の基材層52の表面に形成された導体線15とが連結される。
【0048】
第2のコイルアンテナ20は、導体線を複数ターンのコイル状に巻回した平面コイルである。第2のコイルアンテナ20は、第1の基材層50上、すなわち、
図1の素体40の第1の主面41上に設けられている。
【0049】
第1のコイルアンテナ10を構成するコイル導体16の一方端には第1の給電端子11が接続されており、他方端は第2のコイルアンテナ20を構成するコイル導体26の一方端に接続されている。コイル導体26の他方端は第2の給電端子21に接続されている。すなわち、第1のコイルアンテナ10と第2のコイルアンテナ20は、第1の給電端子11と第2の給電端子21との間に直列に接続されている。
【0050】
図1、
図2では、第1および第2の給電端子11,21は、素体40の第1の主面41上に形成されているが、必ずしも第1の主面41に形成する必要はない。給電端子11,21は、素体40の第2の主面42に設けられていてもよいし、側面43に設けられていてもよい。給電端子11,21が素体40の第2の主面42に設けられている例については、
図5、
図6を参照して後述する。
【0051】
図4は、アンテナ装置1に形成される磁束の様子を模式的に示す図である。
図4では、磁束FLが破線で示され、等磁位面MPが二点鎖線で示される。以下、
図3、
図4を参照して、第1および第2のコイルアンテナ10,20の配置および巻回方向についてさらに詳しく説明する。
【0052】
第1および第2のコイルアンテナ10,20は、第2のコイルアンテナ20のほうが第1のコイルアンテナ10よりも第2の主面42から離間するように配置される。すなわち、第2のコイルアンテナ20のコイル導体上の任意の点から第2の主面までの距離の最小値は、第1のコイルアンテナ10のコイル導体上の任意の点から第2の主面までの距離の最小値よりも大きい。
【0053】
さらに、第1および第2のコイルアンテナ10,20は、以下のような条件を満たすように配置されることが望ましい。
【0054】
第1に、第1のコイルアンテナ10の巻回軸61は、少なくとも1つの側面43と交差するが、第2の主面42と交差しない。
図3の場合には、第1のコイルアンテナ10の巻回軸61は、第2の主面42と略平行に設定され、互いに対向する2つの側面43と交差する。なお、この明細書で略平行とは、平行方向から±10°の範囲内を意味する。これによって、プリント配線板などの母材への貼付け面として用いられる第2の主面42側の磁束密度の漏れを抑制し、素体40の側面43方向の磁束密度を増加させることができる。
【0055】
第2に、第2のコイルアンテナ20の巻回軸62は、第1の主面41および第2の主面42と交差する。
図3の場合には、第2のコイルアンテナ20の巻回軸62は、第1の主面41および第2の主面42と略直交する。なお、この明細書で略直交(略垂直)とは、直交方向(垂直方向)から±10°の範囲内を意味する。これによって、第1の主面41側に導かれる磁束の密度を増大させる。
【0056】
第3に、第1のコイルアンテナ10の一方の開口面18Aから第2のコイルアンテナ20の一方の開口面28Bを、第1および第2のコイルアンテナのコイル導体16,26によって遮られることなく見通すことができる。言替えると、開口面18A上の任意の点と開口面28B上の任意の点とを結ぶ線分は、コイル導体16,26と交差することはない(コイル導体16,26の内部を貫くことはない)。
図3の場合には、開口面18A,28B間を結ぶ線分はコイル導体26と接する場合はあるが、交差することはない。
【0057】
さらに、第2のコイルアンテナ20のコイル導体の外径および内径は、第1のコイルアンテナ10のコイル導体の外形および内径よりもそれぞれ大きいほうが望ましい。ここで、コイルアンテナの外形とは、コイルアンテナを巻回軸方向に沿って平面視したとき、コイル導体の外周上の任意の2点間の距離の最大値を意味するものとする。コイルアンテナの内径とは、コイルアンテナを巻回軸方向に沿って平面視したとき、コイル導体の内周上の任意の2点間の距離の最大値を意味するものとする。したがって、平面視したときの外周(内周)の形状が円の場合には、外形(内径)は円の直径である。平面視したときの外周(内周)の形状が長方形または正方形の場合には、外形(内径)は対角線の長さである。コイルアンテナ10,20の外形および内径を上記のように設定することによって、第1のコイルアンテナ10から第2のコイルアンテナ20の内部に磁束を効率良く導くことができる。
【0058】
第4に、第1および第2のコイルアンテナ10,20は、第1のコイルアンテナ10の開口面18Aと第2のコイルアンテナ20の開口面28Bのうちで一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となるような方向に巻回されている。すなわち、第1および第2のコイルアンテナ10,20の一方から他方に電流が流れる場合、第1のコイルアンテナ10の上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10の外部に出た磁力線FLが、第2のコイルアンテナ20の上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20の内部に入るように、もしくは、第2のコイルアンテナ20の上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20の外部に出た磁力線FLが、第1のコイルアンテナ10の上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10の内部に入るように、第1および第2のコイルアンテナ10,20の巻回方向が設定されている。このように、巻回方向が設定されていることによって、第1のコイルアンテナ10と第2のコイルアンテナ20とを磁気結合させることができる。ここで、磁気結合とは、
図5、
図6で説明するように共振を利用した磁界の結合をいう。
【0059】
上記第3および第4の条件によって、第1のコイルアンテナ10の内部を通る磁束の大部分が第2のコイルアンテナ20の内部を通るようになる。
【0060】
上記の第1〜第4の条件を満たすように第1および第2のコイルアンテナ10,20の配置および巻回方向を設定することによって、第1および第2の給電端子11,21間を信号電流が流れると、
図4に示すように、素体40の側面43から入り第1、第2のコイルアンテナ10,20の内部を通って第1の主面41に抜ける方向またはその逆方向の磁束FLが効率良く形成される。この磁束FLは、各コイルの巻回軸とは異なる方向にも広がる。具体的に言うと、素体40の側面方向(図中左方向)、すなわち、第1のコイルアンテナ10の巻回軸61方向であって第2のコイルアンテナ20の巻回軸62とは垂直方向に、磁束密度が高い領域が生じる。さらに、素体40の主面41に対して斜め方向(図中右上方向)に、すなわち、第1のコイルアンテナ10の巻回軸61および第2のコイルアンテナ20の巻回軸62とは45度異なる方向に、磁束密度が高い領域が生じる。この結果、これらの磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。
【0061】
[アンテナ装置の変形例]
図5は、
図1のアンテナ装置1の変形例としてのアンテナ装置1Aの構成を模式的に示す外観図である。
図6は、
図5のアンテナ装置1Aを主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0062】
図5、
図6を参照して、アンテナ装置1Aは、第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体16が素体40の内部に設けられている点で
図1〜
図3で説明したアンテナ装置1と異なる。
図1〜
図3のアンテナ装置1の場合には、第1のコイルアンテナ10のコイル導体は、素体40の第1の主面41上から素体40の内部にかけて形成されている。
【0063】
さらに、アンテナ装置1Aは、給電端子11,21が素体40の第1の主面41上でなく、第2の主面42上に設けられている点で、
図1〜
図3のアンテナ装置1と異なる。
図5の給電端子11は、素体40の内部に形成されたビアホールを介して第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体16の端部と接続される。給電端子21は、素体40の内部に形成されたビアホールを介して第2のコイルアンテナ20のコイル導体26の端部と接続される。給電端子11,21には、給電回路90が接続される。
【0064】
第2の主面42がプリント配線板への取付け面となる場合には、給電端子11,21をプリント配線板上に形成された配線とはんだで接続することができるというメリットがある。なお、第2の主面42をプリント配線板への取付け面とする場合には、第1および第2のコイルアンテナ10A,20は、第2のコイルアンテナ20のほうが第1のコイルアンテナ10Aよりも第2の主面42から離間するように配置されている。
【0065】
図5、
図6のアンテナ装置1Aのその他の構成は
図1〜
図3のアンテナ装置1の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0066】
上記のアンテナ装置1Aは、アンテナ装置1と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2のコイルアンテナ20から斜め上方の方向(
図6の+X方向と+Y方向の間の方向)への磁束FLを増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。一方、第2の主面42から漏れる磁束密度を小さくすることができるので、第2の主面42を、金属物を含む母材への貼付け面として用いることができる。
【0067】
図7は、
図5、
図6のアンテナ装置1Aの変形例としてのアンテナ装置1Bの構成を模式的に示す外観図である。
図8は、
図7のアンテナ装置1Bを主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0068】
図7、
図8を参照して、アンテナ装置1Bは以下の点でアンテナ装置1Aと異なる。まず、アンテナ装置1Bの場合には、第1のコイルアンテナ10Aを構成するコイル導体16の両端に給電端子11A,11Bがそれぞれ接続され、第2のコイルアンテナ20を構成するコイル導体26の両端に給電端子21A,21Bがそれぞれ接続される。給電端子11A,11B,21A,21Bは、素体40の第2の主面42上に設けられる。第1のコイルアンテナ10Aと第2のコイルアンテナ20とを直列に接続する配線は素体40に設けられていない。
【0069】
さらに、アンテナ装置1Bの場合には、第1および第2のコイルアンテナ10A,20は、給電回路90に対して並列に接続される。給電回路90から第1および第2のコイルアンテナ10A,20に電流が流れる場合、第1および第2のコイルアンテナ10A,20は、互いに対向する開口面18A,28Bのうち一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となるような方向に巻回されている。
【0070】
ここで、第1のコイルアンテナ10Aと第2のコイルアンテナ20とが磁気結合するためには、共振周波数に関して次のような関係が必要である。すなわち、第1のコイルアンテナ10Aを含む第1の共振回路の共振周波数をf1とする(たとえば、給電端子11A,11B間に容量が設けられる)。第2のコイルアンテナ20を含む第2の共振回路の共振周波数をf2とする(たとえば、給電端子21A,21B間に容量が設けられる)。なお、この明細書では、コイルアンテナを含む共振回路の共振周波数を単にコイルアンテナの共振周波数と記載する場合がある。
【0071】
通信に用いるキャリア周波数(送信信号および/または受信信号の搬送波の周波数)をf0とすると、共振周波数f1,f2は、キャリア周波数f0に近接した値であり、かつ、どちらもキャリア周波数f0よりも大きな値に設定する必要がある。これによって、第1のコイルアンテナ10Aの給電端子11A,11B間のインピーダンス、および第2のコイルアンテナ20の給電端子21A,21B間のインピーダンスが誘導性になるので、第1のコイルアンテナ10Aと第2のコイルアンテナ20とを磁気結合させることができる。
【0072】
図7、
図8のアンテナ装置1Bのその他の構成および効果は
図1〜
図3で説明したアンテナ装置1の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0073】
[携帯通信端末への適用例]
図9は、
図5のアンテナ装置1Aが搭載された携帯通信端末70の一例を模式的に示す断面図である。
【0074】
図9を参照して、携帯通信端末70は、略直方体の形状を有するプラスチック製の筐体72と、筐体72の内部に設けられたプリント配線板73と、アンテナ装置1Aとを含む。アンテナ装置1Aは、たとえば13.56MHzのようなHF帯RFIDシステム用のアンテナである。
図9の左右方向が、筐体72の長手方向LDである。筐体の正面72Aは
図9の下方に配置され、筐体の裏面72Bは
図9の上方に配置され、筐体の先端部72Cは
図9の左側に配置され、筐体の基端部72Dは
図9の右側に配置されるものとする。
【0075】
プリント配線板73は、内部にグランド層74を有する。プリント配線板73の正面側および裏面側には、抵抗素子やコンデンサなどの複数の電子部品75A〜75H、集積回路76A〜76C、およびバッテリーパック77が搭載される。集積回路76A〜76Cのいずれかには、アンテナ装置1Aに送信信号を出力する給電回路が設けられている。
【0076】
アンテナ装置1Aは、筐体72の先端部72Cに近接して設けられる。具体的には、
図5に示す素体40の第1の主面41と、筐体72の裏面72Bの内側とが、絶縁性接着材を用いて接着される。給電端子11,21は、素体40の第2の主面42上に形成され、これらの給電端子11,21とプリント配線板73上の配線とが給電ピン78A,78Bを介して電気的に接続される。
【0077】
図10は、
図5のアンテナ装置1Aが搭載された携帯通信端末他の例を模式的に示す断面図である。
図10に示す携帯通信端末71は、アンテナ装置1Aの配置を除いて
図9の場合と同一である。
図10の場合には、
図5に示す素体40の第2の主面42がプリント配線板73に貼り付けられる。給電端子11,21は素体40の第2の主面42上に形成され、こられの給電端子11,21が、半田等の接合部材を介してプリント配線板に搭載された給電回路と接続される。
【0078】
なお、
図1のアンテナ装置1のように給電端子11,21を素体40の第1の主面41上に形成した場合には、ボンディングワイヤを介して給電端子11,21とプリント配線板に取付けられた給電回路とを接続する。
【0079】
図11は、
図10の携帯通信端末71においてアンテナ装置1Aの具体的な配置を説明するための図である。
図11の場合には、
図5の第1のコイルアンテナ10Aが筐体72の先端部72Cに近接する位置に配置され、第2のコイルアンテナ20が第1のコイルアンテナ10Aを挟んで先端部72Cと反対側に配置される。第1のコイルアンテナ10Aの巻回軸は、筐体72の長手方向LDと略平行である。なお、この明細書で略平行とは、平行方向から±10°の範囲内を意味する。
【0080】
アンテナ装置1Aを
図11のように配置すれば、端末筐体72の長手方向LDに磁束密度が高い領域を生じさせることができる。この結果、磁束密度が高い長手方向LDに通信距離を大きくすることができる。すなわち、
図11の構造の場合、第1のコイルアンテナ10Aがメインアンテナとして機能し、第2のコイルアンテナ20は指向性制御素子として機能する。
【0081】
図12は、
図10の携帯通信端末71においてアンテナ装置1Aの他の具体的な配置例を説明するための図である。
図12の場合には、
図5の第2のコイルアンテナ20が筐体72の先端部72Cに近接する位置に配置され、第1のコイルアンテナ10Aが第2のコイルアンテナ20を挟んで先端部72Cと反対側に配置される。第1のコイルアンテナ10Aの巻回軸は、筐体72の長手方向LDと略平行である。
【0082】
アンテナ装置1Aを
図12のように配置すれば、端末筐体72の長手方向LDとは45度異なる方向に磁束密度が高い領域を生じさせることができ、この磁束密度が高い領域の方向に通信距離を大きくすることができる。すなわち、
図12の構造の場合、第2のコイルアンテナ20がメインアンテナとして機能し、第1のコイルアンテナ10Aが指向性制御素子として機能する。
【0083】
なお、
図12のように、本実施の形態のアンテナ装置1Aをグランド層74等の金属物の上に搭載する場合、第1のコイルアンテナ10Aと第2のコイルアンテナ20の下面にグランド層74が位置しても、グランド層74の影響をほとんど受けることはない。ただし、好ましくは、第2のコイルアンテナ20の外縁よりはグランド層74の外縁が内側(図の右側)となるように配置したほうが、発生する磁束密度をより増大させることができる。
【0084】
[RFIDタグへの適用例]
図13は、
図1の構造のアンテナ装置をRFIDタグに適用した例を示す外観図である。
図13に示すアンテナ装置2の場合には、給電端子21は、給電端子11に近接して配置され、第2のコイルアンテナ20の端部と給電端子21とを接続する配線22が素体40の内部に形成される。通信回路等を集積したIC(Integrated Circuit)チップ81は、第1の主面41上に設けられた給電端子11,21と半田接続される。第2の主面42が母材80への貼付け面として用いられる。
【0085】
図13のようなアンテナ装置2の配置とすれば、素体40の側面から第1および第2のコイルアンテナ10,20の内部を通って第1の主面41に抜ける方向またはその逆方向の磁束を強めることができる。さらには、第2の主面42側への磁束の漏れを小さくすることができるので、ガスボンベのような金属物80の上にもRFIDタグを貼り付けることができる。
【0086】
[まとめ]
上記のとおり、本実施の形態のアンテナ装置1,1A,1B,2によれば、磁束方向を制御できるため、このアンテナ装置が搭載されるプリント配線板に配線やグランド等の金属物があっても、あるいは、周囲にチップコンデンサやICチップ等の金属部品があっても、これらの金属に磁束がぶつからないようにできる。この結果、これらの金属の影響を受けにくく、十分な通信距離を確保しうるアンテナ装置を実現することができる。
【0087】
[アンテナ装置のその他の変形例]
図14は、
図1のアンテナ装置1の他の変形例としてのアンテナ装置3の構成を模式的に示す断面図である。
【0088】
図14に示す場合には、第2のコイルアンテナ20Aは、素体40の内部に積層された2層の平面コイル23,24を含む。通常、素体40は第1の主面41と垂直な方向に積層された複数の絶縁体層によって形成されるので、平面コイル23,24は2層の絶縁体層の表面にそれぞれ形成される。平面コイル23,24は絶縁体層を貫通するビア導体(図示省略)によって接続される。さらに、
図14の場合、Y方向から平面視したとき、第1のコイルアンテナ10Aを構成する導体線と第2のコイルアンテナ20Aを構成するコイル導体線とは一部重なっている。
【0089】
このようなコイルの配置であっても、第1のコイルアンテナ10Aの一方の開口面18Aから第2のコイルアンテナ20Aの一方の開口面28Bを、第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aを構成するコイル導体によって遮られることなく見通すことができる。さらに、第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aの一方から他方に電流が流れる場合、第1のコイルアンテナ10Aの上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10Aの外部に出た磁力線が、第2のコイルアンテナ20Aの上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20Aの内部に入るように、もしくは、第2のコイルアンテナ20Aの上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20Aの外部に出た磁力線が、第1のコイルアンテナ10Aの上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10Aの内部に入るように、第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aの巻回方向を設定することができる。この結果、素体40の側面から第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aの内部を通って第1の主面41に抜ける方向またはその逆方向の磁束密度を大きくすることができる。
【0090】
図15は、
図1のアンテナ装置1のさらに他の変形例としてのアンテナ装置4の構成を模式的に示す断面図である。
【0091】
図15に示す場合には、第2のコイルアンテナ20Bは、素体40の内部に積層された3層の平面コイル23〜25を含む。さらに第2のコイルアンテナ20Bの巻回軸62は、第1の主面41に対して所定の傾きをもつ。第1のコイルアンテナ10Bは、その内径が第2のコイルアンテナ20Bに向かって徐々に大きくなるように構成される。第1のコイルアンテナ10Bの巻回軸は、第2のコイルアンテナ20Bに向かって徐々に上向き(+Y方向)になるが、第2の主面42とは交差しない。
【0092】
このようなコイルの配置であっても、第1のコイルアンテナ10Bの一方の開口面18Aから第2のコイルアンテナ20Bの一方の開口面28Bを、第1および第2のコイルアンテナ10B,20Bを構成するコイル導体によって遮られることなく見通すことができる。さらに、第1および第2のコイルアンテナ10B,20Bの一方から他方に電流が流れる場合、第1のコイルアンテナ10Bの上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10Bの外部に出た磁力線が、第2のコイルアンテナ20Bの上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20Bの内部に入るように、もしくは、第2のコイルアンテナ20Bの上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20Bの外部に出た磁力線が、第1のコイルアンテナ10Bの上記一方の開口面18Aを通って第1のコイルアンテナ10Bの内部に入るように、第1および第2のコイルアンテナ10B,20Bの巻回方向を設定することができる。この結果、素体40の側面から第1および第2のコイルアンテナ10B,20Bの内部を通って第1の主面41に抜ける方向またはその逆方向の磁束密度を大きくすることができる。
【0093】
<実施の形態2>
図16は、この発明の実施の形態2によるアンテナ装置5の構成を模式的に示す外観図である。
【0094】
本実施の形態のアンテナ装置5は、
図16に示すように、実施の形態1のアンテナ装置に、さらに、ブーストアンテナとしての導電層83を付加したものである。導電層83は、素体40の第1の主面41に沿うように第1の主面41に近接して配置される。導電層83には、導電層83を垂直方向に貫通する穴部84と、穴部84に達するスリット状の切欠部85とが形成される。切欠部85は、穴部84と導電層83の外周側の空間を連通しかつ導電層83を垂直方向に貫通する。第1の主面41に垂直な方向から平面視したとき、導電層83の穴部84は、第2のコイルアンテナ20の開口に重なるように形成される。さらに、第2のコイルのコイル導体は、切欠部85の部分を除いて導電層83によって覆われる。
【0095】
上記のような構成とすれば、第2のコイルアンテナ20と導電層83とが電磁結合することによって、導電層83の外周に誘電電流が流れる。したがって、第1の主面41に垂直な方向から平面視したとき、導電層83の面積を、第2のコイルアンテナ20のコイル導体の最外周によって囲まれる面積よりも大きくすれば、アンテナ装置5によって形成される磁束密度を高めることができる。
【0096】
好ましくは、第1の主面41に垂直な方向から平面視したとき、切欠部85は、第2のコイルアンテナ20の導電層83に近接する側の開口面を挟んで第1のコイルアンテナ10と反対側に設けるのがよい。これによって、切欠部85が設けられている方向の磁束密度をさらに高めることができる。
【0097】
図17は、
図16に示すアンテナ装置5を携帯通信端末71に搭載するときのアンテナ装置5の配置について説明するための図である。
【0098】
図17に示すように、
図16の第2のコイルアンテナ20が筐体72の先端部72Cに近接する位置に配置され、第1のコイルアンテナ10が第2のコイルアンテナ20を挟んで先端部72Cと反対側に配置される。第1のコイルアンテナ10の巻回軸は、筐体72の長手方向LDと略平行である。
【0099】
アンテナ装置5を
図17のように配置すれば、端末筐体72の長手方向LDとは45度異なる方向に磁束密度が高い領域を生じさせることができ、この磁束密度が高い領域の方向に通信距離を大きくすることができる。
【0100】
<実施の形態3>
[アンテナ装置6の構成]
図18は、この発明の実施の形態3によるアンテナ装置6の構成を模式的に示す外観図である。
【0101】
図19は、
図18のアンテナ装置6を主面41に平行な方向であるZ方向から見たときの断面図である。
【0102】
本実施の形態のアンテナ装置6は、
図18および
図19に示すように、実施の形態1のアンテナ装置1に、さらに、第3のコイルアンテナ30を付加したものである。ただし、
図18、
図19の場合には、第1および第3のコイルアンテナ10C,30のコイル導体16,36は、素体40の内部から第1および第2の主面41,42の両方にかけて形成される。
【0103】
図18、
図19を参照して、第1のコイルアンテナ10C、第2のコイルアンテナ20、および第3のコイルアンテナ30は、第1の給電端子11と、第2の給電端子31との間にこの順で直列に接続される。
図18の場合、給電端子11,31は、素体40の第1の主面41上に形成されている。
【0104】
第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30は、第2のコイルアンテナ20のほうが第1および第3のコイルアンテナ10C,30よりも第2の主面42から離間するように配置される。さらに、第1〜第3のコイルアンテナの配置に関して、第2のコイルアンテナ20の一方の開口面28Bからは、第1のコイルアンテナ10Cの一方の開口面18Aおよび第3のコイルアンテナ30の一方の開口面38Bを、第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30のコイル導体によって遮られることなく見通すことができる。
【0105】
好ましくは、素体40の第1の主面41に垂直な方向からアンテナ装置6を平面視したとき、第3のコイルアンテナ30は、第2のコイルアンテナ20を挟んで第1のコイルアンテナ10Cと反対側に配置されるようにする。
【0106】
好ましくは、第2のコイルアンテナ20のコイル導体の外径および内径を、第1のコイルアンテナ10Cのコイル導体の外形および内径よりもそれぞれ大きくする。さらに、第2のコイルアンテナ20のコイル導体の外径および内径を、第3のコイルアンテナ30のコイル導体の外形および内径よりもそれぞれ大きくする。これによって、第1、第3のコイルアンテナ10C,30から第2のコイルアンテナ20に効率良く磁束を導くことができる。
【0107】
第3のコイルアンテナ30の巻回軸63は、素体40の対向する2つの側面43と交差するが、第2の主面42と交差しない。
図18、
図19の場合には、第3のコイルアンテナ30の巻回軸63は、第1および第2の主面41,42と平行である。
図19に示すように第1のコイルアンテナ10Cの巻回軸61と第3のコイルアンテナ30の巻回軸63が略平行、理想的には共通であるのが望ましい。
【0108】
第2および第3のコイルアンテナ20,30は、互いに対向する第2のコイルアンテナ20の開口面28Bと第3のコイルアンテナ30の開口面38Bとのうち、一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となるような方向に巻回されている。すなわち、第2および第3のコイルアンテナ20,30の一方から他方に電流が流れる場合、第2のコイルアンテナ20の上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20の外部に出た磁力線が、第3のコイルアンテナ30の上記一方の開口面38Bを通って第3のコイルアンテナ30の内部に入るように、もしくは、第3のコイルアンテナ30の上記一方の開口面38Bを通って第3のコイルアンテナ30の外部に出た磁力線が、第2のコイルアンテナ20の上記一方の開口面28Bを通って第2のコイルアンテナ20の内部に入るように、第3のコイルアンテナ30の巻回方向が設定されている。第1および第2のコイルアンテナ10C,20の巻回方向の設定は、実施の形態1の場合と同じである。巻回方向がこのように設定されていることによって、第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30を磁気結合させることができる。
【0109】
なお、第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30は電気的に直列に接続されていればよいので、第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30の電気的な接続順序を、
図18の場合と異ならせても構わない。たとえば、第1および第2の給電端子11,31間に第1のコイルアンテナ10C、第3のコイルアンテナ30、第2のコイルアンテナ20の順に直列に接続することもできる。その他の接続方法の変形例として、第1〜第3のコイルアンテナ10C,20,30を給電回路に対して並列に接続してもよい。
【0110】
図20は、アンテナ装置6に形成される磁束FLの様子を模式的に示す図である。
図18、
図19で説明した構成よれば、素体40の側面43Aから入り第1および第2のコイルアンテナ10C,20の内部を通って第1の主面41に抜ける磁束FL1と、素体40の側面43Bから入り第3および第2のコイルアンテナ30,20の内部を通り第1の主面41に抜ける磁束FL2が生じる。この結果、第1の主面41と垂直方向に磁束密度の高い領域を生じさせることができ、この垂直方向への通信距離を増大させることができる。一方、第2の主面42から漏れる磁束密度を小さくすることができるので、第2の主面42を、金属物を含む母材への貼付け面として用いることができる。
【0111】
[アンテナ装置6の変形例]
図21は、
図18のアンテナ装置6の変形例としてのアンテナ装置6Aの構成を模式的に示す外観図である。
図22は、
図21のアンテナ装置6Aを主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0112】
図21、
図22を参照して、アンテナ装置6Aは、第1および第3のコイルアンテナ10A,30Aのコイル導体16,36が素体40の内部に形成されている点で、
図18〜
図20で説明したアンテナ装置6と異なる。アンテナ装置6では、第1および第3のコイルアンテナ10C,30のコイル導体は素体40の内部から第1および第2の主面41,42にかけて形成されている。
【0113】
さらに、アンテナ装置6Aの場合には、給電端子11,31が素体40の第1の主面41上でなく、第2の主面42上に設けられている。給電端子11は、素体40の内部に形成されたビアホールを介して第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体16の端部と接続される。給電端子
31は、素体40の内部に形成されたビアホールを介して第3のコイルアンテナ30Aのコイル導体36の端部と接続される。給電端子11,31には、給電回路90が接続される。
【0114】
第2の主面42がプリント配線板への取付け面となる場合には、給電端子11,31をプリント配線板上に形成された配線とはんだで接続することができるというメリットがある。
図21、
図22のアンテナ装置6Aのその他の構成は
図18、
図19のアンテナ装置6の場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0115】
アンテナ装置6Aは、アンテナ装置6と同様の作用効果を奏する。すなわち、第2のコイルアンテナ20を通って主面41に垂直方向(+Y方向)への磁束FLを増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。一方、第2の主面42から漏れる磁束密度を小さくすることができるので、第2の主面42を、金属物を含む母材への貼付け面として用いることができる。
【0116】
図23は、
図18のアンテナ装置6の他の変形例としてのアンテナ装置6Bの構成を模式的に示す外観図である。
図24は、
図23のアンテナ装置6Bを主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0117】
図23、
図24を参照して、アンテナ装置6Bの場合には、第1および第3のコイルアンテナ10D,30Bのコイル導体が素体40の表面上(第1、第2の主面41,42上および側面43上)に形成されている。さらに、アンテナ装置6Bの場合には、給電端子11,31が素体40の第1の主面41上でなく、第2の主面42上に設けられている。これら点で、アンテナ装置6Bは、
図18、
図19で説明したアンテナ装置6と異なる。
【0118】
素体40を強磁性体材料で構成する場合には、
図23、
図24のように全てのコイルアンテナ10C,20,30Bのコイル導体を素体40の表面上に形成するのが好ましい。磁束は強磁性体材料の内部を通るので、コイルナンテナ10C,20,30Bをより強く結合することができる。
図23、
図24のアンテナ装置6Bのその他の構成および効果は、
図18、
図19のアンテナ装置6の場合と同様であるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して詳しい説明を繰り返さない。
【0119】
[アンテナ装置6の携帯通信端末への搭載例]
図25は、
図18に示すアンテナ装置6を携帯通信端末71Bに搭載するときのアンテナ装置6の具体的な配置について説明するための図である。
【0120】
図25に示すように、
図18に示す第1のコイルアンテナ10が筐体72の先端部72Cに近接する位置に配置され、第3のコイルアンテナ30が第1および第2のコイルアンテナ10,20を挟んで先端部72Cと反対側に配置される。第1および第3のコイルアンテナ10,30の巻回軸は、筐体72の長手方向LDと略平行である。
【0121】
アンテナ装置6を
図25のように配置すれば、端末筐体の長手方向LDとは90度異なる方向に磁束密度が高い領域を生じさせることができる。さらに、素体40の第2の主面42側には磁束が漏れにくいため、プリント配線板73に配線やグランド74等の金属物があっても、これらの金属の影響を受けにくく、十分な通信距離を確保しうるアンテナ装置を実現できる。
【0122】
<実施の形態4>
図26はこの発明の実施の形態4によるアンテナ装置7の構成を模式的に示す断面図である。
図26のアンテナ装置7は、
図14に示したアンテナ装置3の変形例である。
【0123】
図26を参照して、素体40Aは、誘電体層45とフェライトなどの磁性体層46とを含む。磁性体層46は誘電体層45と第2の主面42との間に配置される。第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aのコイル導体は、誘電体層45の内部に形成される。第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aは、第2のコイルアンテナ20Aのほうが第1のコイルアンテナ10Aよりも磁性体層46から離間するように配置される。なお、
図2で説明したように、通常、誘電体層45は、誘電体からなる複数の基材層がY方向に積層された構造を有する(無論、誘電体層45を一層の基材層によって形成しても構わない)。磁性体層46も同様に、磁性体からなる複数の基材層をY方向に積層した構造としてもよい(無論、磁性体層46を一層の基材層によって形成しても構わない)。誘電体層45を低透磁率磁性体層とし、磁性体層46を誘電体層45よりも透磁率の高い高透磁率磁性体層としてもよい。
【0124】
図26の構成によれば、磁性体層46は磁気遮蔽層として機能するので、第2の主面42に漏れる磁束をさらに減少させることができる。なお、第1および第2のコイルアンテナのコイル導体は、誘電体層45の内部に限らず、誘電体層45の内部および表面上(第1のコイルアンテナのコイル導体については、誘電体層45と磁性体層46との界面を含む)の少なくとも一方に形成しても構わない。
【0125】
<実施の形態5>
図27は、この発明の実施の形態5によるアンテナ装置8の構成を模式的に示す断面図である。図
27のアンテナ装置8は、
図14に示したアンテナ装置3の変形例である。
【0126】
図27を参照して、素体40Bは、誘電体層45、磁性体層46、および誘電体層47がこの順で積層された積層体である。すなわち、誘電体層47は誘電体層45と第2の主面42との間に設けられ、磁性体層46は誘電体層45と誘電体層47の間に設けられる。通常、誘電体層45,47の各々は、誘電体からなる複数の基材層がY方向に積層された構造を有する(無論、誘電体層45,47の各々を一層の基材層によって形成しても構わない)。磁性体層46も同様に、磁性体からなる複数の基材層をY方向に積層した構造としてもよい(無論、磁性体層46を一層の基材層によって形成しても構わない)。誘電体層45,47の各々を低透磁率磁性体層とし、磁性体層46を誘電体層45,47よりも透磁率の高い高透磁率磁性体層としてもよい。
【0127】
第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体は、磁性体層46よりも第1の主面41寄りに形成された複数の第1の導体部分12と、磁性体層46よりも第2の主面42寄りに形成された複数の第2の導体部分15と、磁性体層46を貫通することによって複数の第1の導体部分12と複数の第2の導体部分15とを接続する複数の第3の導体部分(図示省略)とを含む。第2のコイルアンテナ20Aのコイル導体は、磁性体層46よりも第1の主面41寄りに形成される。
図27の構成によれば、磁性体層46の内部に磁束を集中させることができるので、第1および第2のコイルアンテナ10A,20Aに導かれる磁束の密度をさらに大きくすることができる。
【0128】
第1および第2のコイルアンテナの配置は、
図27に示した配置に限られない。より一般的には、次のような配置であればよい。すなわち、第1のコイルアンテナは磁性体層46の一部を内部に含むように設けられる。第1のコイルアンテナのコイル導体の一部は、誘電体層45の内部および表面上(誘電体層45と磁性体層46との界面を含む)の少なくとも一方に形成される。第2のコイルアンテナのコイル導体は、誘電体層45の内部および表面上(誘電体層45と磁性体層46との界面を含む)の少なくとも一方に形成される。
【0129】
磁性体層46を、第2の主面42を含む最外層に配置することもできる。この場合、第1のコイルアンテナのコイル導体は、磁性体層46よりも第2の主面42から離間して形成された複数の第1の導体部分と、磁性体層46の第2の主面42側の表面上に形成された複数の第2の導体部分と、磁性体層46を貫通することによって複数の第1の導体部分と複数の第2の導体部分とを接続する複数の第3の導体部分とを含む。第2のコイルアンテナ20Aは、磁性体層46よりも第2の主面42から離間して形成される。
【0130】
<実施の形態6>
図28は、この発明の実施の形態6によるアンテナ装置9の構成を模式的に示す断面図である。
図28のアンテナ装置9は、
図21、
図22で説明したアンテナ装置6Aの変形例である。
【0131】
図28を参照して、素体40Bは、誘電体層45、磁性体層46、および誘電体層47がこの順で積層された積層体である。すなわち、誘電体層47は誘電体層45と第2の主面42との間に設けられ、磁性体層46は誘電体層45と誘電体層47の間に設けられる。通常、誘電体層45,47の各々は、誘電体からなる複数の基材層がY方向に積層された構造を有する。磁性体層46も同様に、磁性体からなる複数の基材層をY方向に積層した構造としてもよい。誘電体層45,47の各々を低透磁率磁性体層とし、磁性体層46を誘電体層45,47よりも透磁率の高い高透磁率磁性体層としてもよい。
【0132】
第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体は、磁性体層46よりも第1の主面41寄りに形成された複数の第1の導体部分12と、磁性体層46よりも第2の主面42寄りに形成された複数の第2の導体部分15と、磁性体層46を貫通することによって複数の第1の導体部分12と複数の第2の導体部分15とを接続する複数の第3の導体部分(図示省略)とを含む。
図28の場合には、導体部分12,15は磁性体層46の表面に形成される。
【0133】
第2のコイルアンテナ20のコイル導体は、磁性体層46よりも第1の主面41寄りに形成される。
図28の場合には、第2のコイルアンテナ20は、第1の主面41上に形成される。
【0134】
第3のコイルアンテナ30Aのコイル導体は、磁性体層46よりも第1の主面41寄りに形成された複数の第1の導体部分32と、磁性体層46よりも第2の主面42寄りに形成された複数の第2の導体部分35と、磁性体層46を貫通することによって複数の第1の導体部分32と複数の第2の導体部分35とを接続する複数の第3の導体部分(図示省略)とを含む。
図28の場合には、導体部分32,35は磁性体層46の表面に形成される。
【0135】
第1〜第3のコイルアンテナ10A〜30Aの配置に関するその他の点や、巻回軸の延在方向およびコイル導体の巻回軸回りの巻回方向については、実施の形態3の場合と同様であるので、説明を繰返さない。
【0136】
なお、第1〜第3のコイルアンテナの配置は、
図28に示した配置に限られない。より一般的には、次のような配置であればよい。すなわち、第1および第3のコイルアンテナの各々は磁性体層46の一部を内部に含むように設けられる。第1および第3のコイルアンテナの各々のコイル導体の一部は、誘電体層45の内部および表面上(誘電体層45と磁性体層46との界面を含む)の少なくとも一方に形成される。第2のコイルアンテナのコイル導体は、誘電体層45の内部および表面上(誘電体層45と磁性体層46との界面を含む)の少なくとも一方に形成される。
【0137】
図28の構成によれば、磁性体層46の内部に磁束を集中させることができるので、第2のコイルアンテナ20に導かれる磁束の磁束密度をさらに大きくすることができるとともに、第2の主面42側への磁束の漏れをさらに小さくすることができる。
【0138】
<実施の形態7>
図29は、この発明の実施の形態7によるアンテナ装置100の構成を模式的に示す外観図である。
図30は、
図29のアンテナ装置100を主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0139】
図29、
図30を参照して、アンテナ装置100は、
図7、
図8で説明したアンテナ装置1Bの変形例であり、アンテナ装置100への給電方法がアンテナ装置1Bの場合と異なる。アンテナ装置100のその他の点はアンテナ装置1Bの場合と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0140】
アンテナ装置100では、第1のコイルアンテナ10Aは非給電素子として用いられ、第2のコイルアンテナ20は給電素子として用いられる。すなわち、第2のコイルアンテナ20は給電回路90と直接接続される。第1のコイルアンテナ10Aは給電回路90と直接接続されず、第2のコイルアンテナ20と磁気結合する(共振を利用して磁気的に結合する)ことによって磁界エネルギーを受ける。
【0141】
第1および第2のコイルアンテナ10A,20の各々は共振回路を構成する。
図29に示すように、第1のコイルアンテナ10Aは、給電端子11A,11B間の容量C1と第1の共振回路を構成する(この容量C1は、コイルアンテナ10Aのコイル導体の寄生容量などを含めたものである)。この第1の共振回路の共振周波数をf1とする。第2のコイルアンテナ20は、給電端子21A,21B間の容量C2と第2の共振回路を構成する(この容量C2は、コイルアンテナ20のコイル導体の寄生容量および給電回路90の寄生容量などを含めたものである)。この第2の共振回路の共振周波数をf2とする。
【0142】
通信に用いられるキャリア周波数(送信信号および/または受信信号の搬送波の周波数)をf0とすると、共振周波数f1,f2は、キャリア周波数f0に近接した値であり、かつ、どちらもキャリア周波数f0よりも大きな値に設定する必要がある。これによって、第1のコイルアンテナ10Aの給電端子11A,11B間のインピーダンス、および第2のコイルアンテナ20の給電端子21A,21B間のインピーダンスが誘導性になるので、第1のコイルアンテナ10Aと第2のコイルアンテナ20とを磁気結合させることができる。
【0143】
さらに、上記の構成のアンテナ装置100から放射される電磁界強度の周波数特性は、2つのピークを持つ双峰特性を示すので、アンテナの広帯域化が実現できる。その他のアンテナ装置100の構成および効果は、実施の形態1で説明したアンテナ装置1の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0144】
なお、上記のアンテナ装置100とは逆に、第1のコイルアンテナ10Aを給電素子として用い、第2のコイルアンテナ20を非給電素子として用いることもできる。
【0145】
<実施の形態8>
図31は、この発明の実施の形態8によるアンテナ装置101の構成を模式的に示す外観図である。
図32は、
図31のアンテナ装置101を主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0146】
図31、
図32を参照して、アンテナ装置101は、
図23、
図24で説明したアンテナ装置6Bの変形例である。アンテナ装置101では、第1のコイルアンテナ10Dを構成するコイル導体16の両端に給電端子11A,11Bがそれぞれ接続され、第2のコイルアンテナ20を構成するコイル導体26の両端に給電端子21A,21Bが接続され、第3のコイルアンテナ30Bを構成するコイル導体36の両端に
給電端子31A,31Bが接続される。給電端子11A,11B,21A,21B,31A,31Bは、素体40の第2の主面42上に設けられる。第1〜第3のコイルアンテナ10D,20,30Bを直列に接続する配線は素体40に設けられていない。
【0147】
さらに、アンテナ装置101への給電方法が、アンテナ装置6Bの場合と異なる。具体的に、アンテナ装置101では、第1および第3のコイルアンテナ10D,30Bは非給電素子として用いられ、第2のコイルアンテナ20は給電素子として用いられる。すなわち、第2のコイルアンテナ20は給電回路90と直接接続される。第1および第3のコイルアンテナ10D,30Bは給電回路90と直接接続されず、第2のコイルアンテナ20と磁気結合することによって磁界エネルギーを受ける。
【0148】
第1〜第3のコイルアンテナ10D,20,30Bの各々は共振回路を構成する。
図31に示すように、第1のコイルアンテナ10Dは、給電端子11A,11B間の容量C1と第1の共振回路を構成する。この第1の共振回路の共振周波数をf1とする。第2のコイルアンテナ20は、給電端子21A,21B間の容量C2と第2の共振回路を構成する。この第2の共振回路の共振周波数をf2とする。第3のコイルアンテナ30は、給電端子31A,31B間の容量C3と第3の共振回路を構成する。この第3の共振回路の共振周波数をf3とする。これらの容量C1,C2,C3は、寄生容量を含めたものである。
【0149】
ここで、通信に用いるキャリア周波数(送信信号および/または受信信号の搬送波の周波数)をf0とすると、共振周波数f1,f2,f3は、キャリア周波数f0に近接した値であり、かつ、いずれもキャリア周波数f0より大きな値に設定する必要がある。これによって、第1のコイルアンテナ10Dの給電端子11A,11B間のインピーダンス、第2のコイルアンテナ20の給電端子21A,21B間のインピーダンス、および第3のコイルアンテナ30Bの給電端子31A,31Bのインピーダンスが誘導性になるので、第1および第3のコイルアンテナ10D,30Bと第2のコイルアンテナ20とを磁気結合させることができる。
【0150】
さらに、上記の構成のアンテナ装置101からの放射強度の周波数特性は、3つのピークを持つ三峰特性を示すようになるので、アンテナの広帯域化が実現できる。その他のアンテナ装置101の構成および効果は、実施の形態3で説明したアンテナ装置6の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0151】
なお、上記のアンテナ装置101とは異なり、第1、第3のコイルアンテナ10D,30Bの一方を給電素子として用い、その他のコイルアンテナを非給電素子とすることもできるが、放射強度の点からは第2のコイルアンテナ20を給電素子として用いるが望ましい。第1〜第3のコイルアンテナ10D,20,30Bのうち、いずれか2個のコイルアンテナを給電素子として用い、残りのコイルアンテナを非給電素子として用いることもできる。
【0152】
<実施の形態9>
図33は、この発明の実施の形態9によるアンテナ装置102の構成を模式的に示す外観図である。
【0153】
図33を参照して、実施の形態9によるアンテナ装置102は、これまで説明した実施の形態1〜8のいずれか1つのアンテナ装置の構成に加えて、コイル型ブースターアンテナ(ブースターコイル)130をさらに含む。ブースターアンテナ130は、素体40に設けられた複数のコイルアンテナの近傍に配置されることによって、これらのコイルアンテナと磁気結合する。ブースターアンテナ130の外形は、素体40に形成された各コイルアンテナの外径よりも大きい。
【0154】
以下、実施の形態1の
図5、
図6で説明したアンテナ装置1Aにさらにブースターアンテナ130が付加された例を代表として説明する。
図33に示すように、アンテナ装置1Aは、第2の主面42がプリント配線板73への取付け面となる。素体40に形成された複数のコイルアンテナ10A,20は、プリント配線板73に搭載された給電回路と接続される。アンテナ装置1Aは、ブースターアンテナ130を介して相手側のコイルアンテナと通信する。
【0155】
図34は、
図33のブースターアンテナ130の構成を概略的に示す分解斜視図である。
図34を参照して、ブースターアンテナ130は、基材シート133と、基材シート133の第1の主面上(+Y方向側の主面上)に形成された第1のコイル導体131と、基材シート133の第2の主面上(−Y方向側の主面上)に形成された第2のコイル導体132とを含む。コイル導体131,132の各々は、矩形のスパイラル状にパターン化されている。第1の主面側(+Y方向側)から見たとき、第1のコイル導体131と第2のコイル導体132とはパターンの大部分が重なるように形成されているが、巻回方向は逆方向である。言い換えると、第1のコイル導体131を第1の主面側(+Y方向側)から見たときの巻回方向と、第2のコイル導体132を第2の主面側(−Y方向側)から見たときの巻回方向とは同じである。第1のコイル導体131と第2のコイル導体132とは電磁界結合(容量結合および誘導結合)する。
【0156】
図35は、
図34のブースターアンテナ130の等価回路図である。
図35を参照して、
図34の第1のコイル導体131のインダクタンスをインダクタL131で表わし、第2のコイル導体132のインダクタンスをインダクタL132で表わしている。
図34の第1および第2のコイル導体131,132間に生じる容量を、キャパシタC11,C12によって集中定数素子として表わしている。
【0157】
ブースターアンテナ130の2つのコイル導体131,132は、各コイル導体131,132に流れる誘導電流が同方向に伝搬するように巻回・配置されるともに、容量を介して結合されている。したがって、ブースターアンテナ130では、各コイル導体131,132自身のインダクタンスと、コイル導体131,132間の容量結合によるキャパシタンスによって第1の共振回路が構成されている。この第1の共振回路の共振周波数は通信に用いるキャリア周波数に実質的に相当している(共振周波数はキャリア周波数よりも若干大きい)ことが好ましい。これにより通信距離を延ばすことができる。
【0158】
図36は、
図33のアンテナ装置102の等価回路図である。
図36の等価回路図は、
図35のブースターアンテナの等価回路に
図5のアンテナ装置1Aの等価回路を付加したものである。
【0159】
図36を参照して、
図5の第1のコイルアンテナ10AのインダクタンスをインダクタL10で表わし、
図5の第1のコイルアンテナ20のインダクタンスをインダクタL20で表わしている。
図36のキャパシタCICは、
図5の給電端子11,21間の容量を表わす。この容量には、高周波集積回路(RFIC:Radio Frequency Integrated Circuit)の寄生容量などが含まれる。
【0160】
インダクタL10,L20とキャパシタCICとは第2の共振回路を構成する。この第2の共振回路の周波数は通信に用いるキャリア周波数の実質的に相当している(共振周波数はキャリア周波数よりも若干大きい)。さらに、インダクタL20とインダクタL131,L132とは磁気結合している。したがって、給電回路90(高周波集積回路)は、ブースターアンテナ130による前述の第1の共振回路とインピーダンス整合状態で結合している。このように、給電回路90はコイルアンテナ10A,20を介在してブースターアンテナ130と強く磁気結合している。このため、給電回路90とブースターアンテナ130との接続のために、コンタクトピンまたはフレキシブルケーブルなどの機構的な接続手段を必要としない。
【0161】
図37は、アンテナ装置102の平面図である。
図38は、アンテナ装置102を備えた通信端末装置の断面図である。
【0162】
図37、
図38を参照して、アンテナ装置1A(コイルアンテナ10A,20)は、表面実装部品として筐体72の内部に設けられたプリント配線板73に搭載されている。プリント配線板73の内部には、グランド層74が設けられている。ブースターアンテナ130は、筐体72の内壁に接着剤140によって貼り付けられている。
【0163】
ブースターアンテナ130は、通信の相手側のアンテナの近づける必要があるので、筐体72の長手方向LDの端部に配置される。コイルアンテナ10A,20は、ブースターアンテナ130に比べると、筐体72の長手方向LDの中央寄りの位置に配置される。具体的に、
図38のY方向(ブースターアンテナ130の巻回軸方向)から平面視したとき、コイルアンテナ20は、ブースターアンテナ130のコイル導体131,132の一部と重なるように配置されるのが望ましい。コイルアンテナ10Aは、コイルアンテナ20を挟んでブースターアンテナ130の反対側に配置されるのが望ましい。
【0164】
このような配置にすることによって、コイルアンテナ20の内部を通過した磁束の大部分がブースターアンテナ130の内部を通過するようになるので、コイルアンテナ20とブースターアンテナ130とを強く結合することができる。さらにこの配置によれば、
図38において、ブースターアンテナ130の下方領域にプリント配線板73を設ける必要がないので、たとえば、バッテリーパック77などをこの領域に配置することが可能になる。
【0165】
<実施の形態10>
図39は、この発明の実施の形態10によるアンテナ装置103の構成を模式的に示す外観図である。
図40は、
図39のアンテナ装置103を主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0166】
図39、
図40を参照して、アンテナ装置103は、
図5、
図6で説明したアンテナ装置1Aを構成する第1および第2のコイルアンテナ10A,20に、さらに第3のコイルアンテナ120を付加したものである。
【0167】
第3のコイルアンテナ120の巻回軸の方向は素体40の第1および第2の主面41,42と交差する。第1の主面41に垂直な方向から平面視したとき、第3のコイルアンテナ120は、第1のコイルアンテナ10Aを挟んで第2のコイルアンテナ20と反対側に配置されている。さらに、第1〜第3のコイルアンテナ10A,20,120は、第2および第3のコイルアンテナ20,120のほうが第1のコイルアンテナ10Aよりも第2の主面42から離間するように配置されている。
【0168】
より好ましい配置では、第1のコイルアンテナ10Aの一方の開口面18Aから第2のコイルアンテナ20の一方の開口面28Bを、第1および第2のコイルアンテナ10A,20のコイル導体16,26によって遮られることなく見通すことができる。さらに、第1のコイルアンテナ10Aの他方の開口面18Bから第3のコイルアンテナ120の一方の開口面128Bを、第1および第3のコイルアンテナ10A
,120のコイル導体16,126によって遮られることなく見通すことができる。
【0169】
さらに好ましくは、第2のコイルアンテナ20のコイル導体26の外径および内径を、第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体16の外径および内径よりもそれぞれ大きくする。第3のコイルアンテナ
120のコイル導体126の外径および内径を、第1のコイルアンテナ10Aのコイル導体16の外径および内径よりもそれぞれ大きくする。これによって、第1のコイルアンテナ10Aから第2および第3のコイルアンテナ20,120に効率良く磁束を導くことができる。
【0170】
図39の例の場合、第3のコイルアンテナ120は、コイル導体が素体40の第1の主面41上に形成された平面アンテナである。ただし、第3のコイルアンテナ120は平面アンテナに限るものでない。より一般的には、第3のコイルアンテナ120のコイル導体は、上記の配置の条件を満たすように素体40の内部および表面上の少なくとも一方に形成される。
【0171】
アンテナ装置103は、さらに、素体40の第2の主面42上に形成された給電端子21,121を含む。第2のコイルアンテナ20、第1のコイルアンテナ10A、および第3のコイルアンテナ120はこの順で給電端子21,121間に直列に接続されている。給電端子21,121間には給電回路90が接続されている。
【0172】
コイルアンテナ10A,20,120の巻回方向については次の条件を満たす必要がある。すなわち、
図40に磁束FLで示されるように、第1および第2のコイルアンテナ10A,20は、互いに対向する第1のコイルアンテナ10Aの開口面18Aと第2のコイルアンテナ20の開口面28Bのうち、一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となるような方向に巻回されている。第1および第3のコイルアンテナ10A,120は、互いに対向する第1のコイルアンテナ10Aの開口面18Bと第3のコイルアンテナ120の開口面128Bのうちで一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となるような方向に巻回されている。巻回方向がこのように設定されていることによって、第1〜第3のコイルアンテナ10A,20,120を磁気結合させることができる。
【0173】
上記の構成によれば、第2のコイルアンテナ20から斜め上方(
図40の+X方向と+Y方向の間の方向)への磁束密度を増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。同様に第3のコイルアンテナ120から斜め上方(
図40の−X方向と+Y方向の間の方向)への磁束密度を増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。一方、第2の主面42から漏れる磁束密度を小さくすることができるので、第2の主面42を、金属物を含む母材への貼付け面として用いることができる。
【0174】
<実施の形態11>
図41は、この発明の実施の形態11によるアンテナ装置104の構成を模式的に示す外観図である。
図42は、
図41のアンテナ装置104を主面41に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0175】
図41、
図42を参照して、アンテナ装置104は、
図39、
図40で説明したアンテナ装置103の変形例である。具体的に、アンテナ装置104は、コイルアンテナ10A,20,120が直列接続されていない点でアンテナ装置103と異なる。すなわち、アンテナ装置104の場合、第1のコイルアンテナ10Aを構成するコイル導体16の両端に給電端子11A,11Bがそれぞれ接続される。給電端子11A,11Bは、第2の主面42上に設けられている。第2のコイルアンテナ20を構成するコイル導体20の両端に給電端子21A,21Bがそれぞれ接続される。給電端子21A,21Bは、第1の主面41上に互いに近接して設けられている。第3のコイルアンテナ120を構成するコイル導体126の両端に給電端子121A,121Bが設けられる。給電端子121A,121Bは、第1の主面41上に互いに近接して設けられている。
【0176】
さらに、アンテナ装置104への給電方法がアンテナ装置103の場合と異なる。アンテナ装置104では、第2および第3のコイルアンテナ20,120は非給電素子として用いられ、第1のコイルアンテナ10Aは給電素子として用いられる。すなわち、第1のコイルアンテナ10Aは給電端子11A,11Bを介して給電回路90と直接接続される。第2、第3のコイルアンテナ20,120は給電回路90と直接接続されず、第1のコイルアンテナと磁気結合することによって磁界エネルギーを受ける。
【0177】
第1〜第3のコイルアンテナ10A,20,120の各々は共振回路を構成する。具体的に、第1のコイルアンテナ10Aは、給電端子11A,11B間の容量C1と第1の共振回路を構成する(この容量C1は、コイルアンテナ10Aのコイル導体の寄生容量および給電回路90の寄生容量を含めたものである)。この第1の共振回路の共振周波数をf1とする。第2のコイルアンテナ20のコイル導体26の両端に接続された給電端子21A,21BにはキャパシタC2が取付けられる。このキャパシタC2とコイルアンテナ20とで第2の共振回路を構成する。この第2の共振回路の共振周波数をf2とする。第3のコイルアンテナ120のコイル導体126の両端に接続された給電端子121A,121BにはキャパシタC3が取付けられる。このキャパシタC3とコイルアンテナ120とで第3の共振回路を構成する。この第3の共振回路の共振周波数をf3とする。
【0178】
通信に用いられるキャリア周波数(送信信号および/または受信信号の搬送波の周波数)をf0とすると、共振周波数f1,f2、f3は、キャリア周波数f0に近接した値であり、かつ、いずれもキャリア周波数f0よりも大きな値に設定する必要がある。これによって、第1のコイルアンテナ10Aの給電端子11A,11B間のインピーダンス、第2のコイルアンテナ20の給電端子21A,21B間のインピーダンス、第3のコイルアンテナ120の給電端子121A,121B間のインピーダンスが誘導性になるので、第1〜第3のコイルアンテナ10A,20,120を互いに磁気結合させることができる。
【0179】
さらに、上記の構成のアンテナ装置104からの放射強度の周波数特性は、3つのピークを持つ三峰特性を示すようになるので、アンテナの広帯域化が実現できる。その他のアンテナ装置104の構成および効果は、実施の形態10で説明したアンテナ装置103の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0180】
なお、上記のアンテナ装置104とは異なり、第2、第3のコイルアンテナ20,120の一方を給電素子として用い、その他のコイルアンテナを非給電素子とすることもできるが、放射強度の点からは第2のコイルアンテナ20を給電素子として用いるが望ましい。第1〜第3のコイルアンテナ10A,20,120のうち、いずれか2個のコイルアンテナを給電素子として用い、残りのコイルアンテナを非給電素子として用いることもできる。
【0181】
<実施の形態12>
図43は、この発明の実施の形態12によるアンテナ装置105の構成を模式的に示す外観図である。
図44は、
図43のアンテナ装置105を基板73に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0182】
図43、
図44を参照して、アンテナ装置105は、共通の基板(プリント配線板)73に取付けられた2個のアンテナチップ105X,105Yを含む。
【0183】
アンテナチップ105Xは、素体40Xと、第1のコイルアンテナ10Xと、第2のコイルアンテナ20Xと、給電端子11X,21Xとを含む。これらの構成は、
図5、
図6で説明したアンテナ装置1Aと同様であるので説明を繰り返さない。素体40Xの第2の主面42Xがプリント配線板73への貼り付け面となっている。なお、第2の主面42Xをプリント配線板への取付け面とする場合には、コイルアンテナ10X,20Xは、コイルアンテナ20Xのほうがコイルアンテナ10Xよりも第2の主面42Xから離間するように配置する。
【0184】
アンテナチップ105Yも同様に、素体40Yと、第1のコイルアンテナ10Yと、第2のコイルアンテナ20Yと、給電端子11Y,21Yとを含む。これらの構成は、
図5、
図6で説明したアンテナ装置1Aと同様である。
図43の場合、コイルアンテナ10Yの巻回方向はコイルアンテナ10Xの巻回方向と同方向であり、コイルアンテナ20Yの巻回方向はコイルアンテナ20Xの巻回方向と同方向である。素体40Yの第2の主面42Yがプリント配線板73への貼り付け面となっている。なお、第2の主面42Yをプリント配線板への取付け面とする場合には、コイルアンテナ10Y,20Yは、コイルアンテナ20Yのほうがコイルアンテナ10Yよりも第2の主面42Yから離間するように配置する。
【0185】
プリント配線板73に垂直な方向から平面視したとき、コイルアンテナ20X,20Yは、コイルアンテナ10X,10Yを挟んで互いに反対側に配置されている。コイルアンテナ10Xの巻回軸の方向は、コイルアンテナ10Yの巻回軸の方向と略平行である。
【0186】
給電端子11X,11Y間は、プリント配線板73に形成された配線によって接続されている。給電端子21X,21Yは、プリント配線板73に搭載された給電回路90と接続される。この場合、
図44に磁束FLで示す方向に磁束が生じる。すなわち、互いに対向するコイルアンテナ10Xの開口面18BXとコイルアンテナ10Yの開口面18BYとは、一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となる。互いに対向するコイルアンテナ10Xの開口面18AXとコイルアンテナ20Xの開口面28BXとは、一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となる。互いに対向するコイルアンテナ10Yの開口面18AYとコイルアンテナ20Yの開口面28BYとは、一方が磁束の入り口となる場合に他方が磁束の出口となる。
【0187】
上記の構成のアンテナ装置105によれば、コイルアンテナ20Xから斜め上方(
図44の+X方向と+Y方向の間の方向)への磁束密度を増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。同様にコイルアンテナ20Yから斜め上方(
図44の−X方向と+Y方向の間の方向)への磁束密度を増大させることができ、この磁束密度の高い方向への通信距離をより長くすることができる。一方、素体40Xの第2の主面42Xおよび素体40Yの第2の主面42Yから漏れる磁束密度を小さくすることができるので、素体40Xの第2の主面42Xおよび素体40Yの第2の主面42Yを、金属物を含む母材への貼付け面として用いることができる。
【0188】
図45は、
図43のアンテナ装置105に
図34に示すブースターアンテナ130を付加した構成を示す図である。
図46は、
図45の部分拡大図である。
図45、
図46では、図解を容易にするために、
図34のブースターアンテナ130のうち第1のコイル導体131のみ示している。
【0189】
図45、
図46を参照して、ブースターアンテナを構成するコイル導体131の開口面は、プリント配線板73の斜め上方にプリント配線板73と略平行に配置される。プリント配線板73に垂直な方向から平面視して、コイル導体131は、その一部がアンテナチップ105Xとアンテナチップ105Yの間を通るように配置される。すなわち、アンテナチップ105Xはコイル導体131の内側に配置され、アンテナチップ105Yはコイル導体131の外側に配置される。
【0190】
このような配置にすることによって、コイルアンテナ20Xの内部を通過した磁束の大部分がブースターアンテナ130の内部を通過するようになるので、コイルアンテナ20Xとブースターアンテナ130とを強く結合することができる。さらにこの配置によれば、ブースターアンテナ130の下方領域の全体にプリント配線板73を設ける必要がないので、たとえば、この領域にバッテリーパックなどを配置することが可能になる。
【0191】
さらにアンテナ装置105は、実施の形態10で説明したアンテナ装置103と類似の構成であるが、アンテナ装置103に比べてチップのサイズを小さくできるので、製造コストを削減できるというメリットがある。
【0192】
<実施の形態13>
図47は、この発明の実施の形態13によるアンテナ装置106の構成を示す外観図である。
図48は、
図47のアンテナ装置106を基板73に平行な方向であるZ方向から見た断面図である。
【0193】
図47、
図48を参照して、アンテナ装置106は、
図43〜
図46で説明したアンテナ装置105の変形例であり、アンテナ装置106への給電方法がアンテナ装置105の場合と異なる。アンテナ装置
106のその他の点はアンテナ装置105と同じであるので、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0194】
アンテナ装置106では、アンテナチップ106X(アンテナチップ105Xに対応する)が非給電素子として用いられ、アンテナチップ106Y(アンテナチップ105Yに対応する)が給電素子として用いられる。すなわち、アンテナチップ106Yの給電端子11Y,21Y間に給電回路90が直接接続される。アンテナチップ106Xのコイルアンテナ10X,20Xは給電回路90と直接接続されず、アンテナチップ106Yのコイルアンテナ10Y,20Yと磁気結合することによって磁界エネルギーを受ける。
【0195】
図47に示すように、アンテナチップ106Xのコイルアンテナ10X,20Xは、給電端子11X,21X間の容量CXと第1の共振回路を構成する(この容量CXは、コイルアンテナ10X,20Xの寄生容量などを含めたものである)。この第1の共振回路の共振周波数をf1とする。アンテナチップ106Yのコイルアンテナ10Y,20Yは、給電端子11Y,21Y間の容量CYと第2の共振回路を構成する(この容量CYは、コイルアンテナ10Y,20Yの寄生容量および給電回路90の寄生容量などを含めたものである)。この第2の共振回路の共振周波数をf2とする。
【0196】
通信に用いられるキャリア周波数(送信信号および/または受信信号の搬送波の周波数)をf0とすると、共振周波数f1,f2は、キャリア周波数f0に近接した値であり、かつ、どちらもキャリア周波数f0よりも大きな値に設定する必要がある。これによって、アンテナチップ106Xの給電端子11X,21X間のインピーダンス、およびアンテナチップ106Yの給電端子11Y,21Y間のインピーダンスが誘導性になるので、アンテナチップ106Xのコイルアンテナ10X,20Xとアンテナチップ106Yのコイルアンテナ10Y,20Yとを磁気結合させることができる。
【0197】
さらに、上記の構成のアンテナ装置106から放射される電磁界強度の周波数特性は、2つのピークを持つ双峰特性を示すので、アンテナの広帯域化が実現できる。その他のアンテナ装置106の構成および効果は、実施の形態12で説明したアンテナ装置105の場合と同様であるので説明を繰り返さない。
【0198】
なお、上記のアンテナ装置106とは逆に、アンテナチップ106Xを給電素子として用い、アンテナチップ106Yを非給電素子として用いることもできる。
【0199】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。たとえば、上記の各実施の形態によるアンテナ装置は、FeliCaやNFCなどのHF帯のRFIDシステムに用いられるアンテナに限定されるものではなく、FMラジオ用アンテナやキーレスエントリー用モジュールにおけるアンテナなど、様々な周波数帯のアンテナに応用可能である。
【0200】
この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。