特許第5780302号(P5780302)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780302
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】自動倉庫のラック
(51)【国際特許分類】
   B65G 1/14 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   B65G1/14 F
   B65G1/14 B
   B65G1/14 J
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-527925(P2013-527925)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(86)【国際出願番号】JP2012065587
(87)【国際公開番号】WO2013021730
(87)【国際公開日】20130214
【審査請求日】2014年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2011-174713(P2011-174713)
(32)【優先日】2011年8月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渓太
(72)【発明者】
【氏名】福田 修
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
【審査官】 大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3729316(JP,B2)
【文献】 特表2008−542148(JP,A)
【文献】 特開2000−014472(JP,A)
【文献】 特開2008−017885(JP,A)
【文献】 特開2005−211330(JP,A)
【文献】 特開2006−170360(JP,A)
【文献】 特開2003−252411(JP,A)
【文献】 特開平11−230254(JP,A)
【文献】 特開2011−245136(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/14
F16F15/02−15/08
E04H 9/02
E04B 1/36
A47B53/00−53/02,97/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッカークレーンの経路に沿って配置される、自動倉庫のラックであって、
本体部と、
前記本体部に設けられた複数の棚部と、を有しており、
前記複数の棚部の少なくとも一つは、
前記本体部に固定され、前記経路に直交する第1水平方向に長く延びる基体と、
前記基体に相対移動可能に取り付けられ、前記第1水平方向に長く延び、荷物が載置される載置部材と、を有し、
前記基体及び前記載置部材の一方は、前記第1水平方向に延びる凹部を有しており、
前記基体及び前記載置部材の他方は、前記凹部内に高さ方向に隙間を空けて配置されており、
前記複数の棚部の少なくとも一つは、前記載置部材が前記基体に対して、前記第1水平方向に移動するときに、前記載置部材の前記第1水平方向両端の高さを元の位置から異ならせることで前記載置部材の前記基体に対する高さ位置を変更する高さ位置変更機構をさらに有し、
前記高さ位置変更機構は、前記基体の第1水平方向両端に設けられた2個のピンと、前記載置部材の前記第1水平方向両端に形成され前記2個のピンがそれぞれ挿入された2個のスリットとを有している、自動倉庫のラック。
【請求項2】
スリットは、前記第1水平方向に延びる第1部分と、前記第1部分から他のスリットに向かって斜め下方に延びる第2部分とを有している、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項3】
スリットは、他のスリットに向かって斜め下方に延びている、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項4】
前記スリットは、下側に凸の円弧状である、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項5】
各スリットは、他のスリットに向かって斜め下方に伸びる第1部分と、前記第1部分から水平方向に延びる第2部分とを有している、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項6】
各スリットは、第1部分と第2部分とからなるV字状に形成されている、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項7】
前記第1部分と前記第2部分の各々が直線状である、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【請求項8】
前記第1部分と前記第2部分は、第1直線部分と、前記第1直線部分の上端に接続された第2直線部分とを有しており、前記第1水平方向に対する前記第2直線部分の傾斜角度が前記第1直線部分の傾斜角度より大きい、請求項に記載の自動倉庫のラック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラック、特に、スタッカークレーンの経路に沿って配置される、自動倉庫のラックに関する。
【背景技術】
【0002】
自動倉庫には、スタッカークレーンの経路に沿って配置されるラックが設けられる。ラックは、経路に沿って並んだ複数の支柱を有する本体部と、本体部に設けられた複数の棚部とを有する。支柱は、経路に隣接して並んだ複数の第1支柱と、経路から離れて並んだ第2支柱とを有している。第1支柱と第2支柱は一対一で対応して対となっており、間隔を隔てて配置される。棚部は、荷物を受けるものである。複数の棚部は、一対の第1支柱及び第2支柱に上下に間隔を隔てて配置される。棚部の経路側に荷物の落下を防止するためのストッパが設けられたラックが従来知られている(例えば、特許文献1参照)。
従来のラックでは、ストッパは、棚部の経路側に、溶接又はネジ止めにより取り付けられる。これにより、地震等の発生によりラックが横揺れしても、荷物がストッパで止まり、棚部から荷物が落下しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−208830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のラックでは、ラックの横揺れにより移動する荷物をストッパに接触させて止めている。このため、ストッパに荷物が接触したとき荷物を傷つけるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、ラックが横揺れしても、荷物の落下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一見地に係る自動倉庫のラックは、スタッカークレーンの経路に沿って配置されるラックである。自動倉庫のラックは、本体部と、本体部に設けられた複数の棚部と、を有している。棚部の少なくとも一つは、本体部に固定された基体と、載置部材と、高さ位置変更機構と、を有している。載置部材は、基体に相対移動可能に取り付けられ、荷物が載置される部材である。高さ位置変更機構は、載置部材が基体に対して水平方向に移動するときに、載置部材の基体に対する高さ位置を変更する機構である。
【0007】
このラックでは、ラックが横揺れし、荷物が載置された載置部材が横揺れの外力により基体に対して水平方向に移動すると、載置部材の基体に対する高さ位置が変更される。これにより、載置部材を水平方向に移動させる運動エネルギー(外力)が位置エネルギーに変換され、荷物に外力の一部しか作用しなくなる。このため、ラックが横揺れしても荷物の落下が生じにくくなる。
【0008】
高さ位置変更機構が載置部材の基体に対する高さ位置を変更するのは、載置部材が基体に対して、経路に直交する第1水平方向に移動するときであってもよい。これにより、スタッカークレーンが配置される経路側に荷物が落下しにくくなる。
高さ位置変更機構は、載置部材の第1水平方向両端の高さを異ならせてもよい。これにより、第1水平方向に載置部材が移動すると載置部材の第1水平方向の両端の高さが変化するので、載置部材が移動前の位置に戻りやすくなる。
【0009】
基体及び載置部材は、第1水平方向に長く延びていてもよい。基体及び載置部材の一方は、第1水平方向に延びる凹部を有している。基体及び載置部材の他方は、凹部内に高さ方向に隙間を空けて配置されている。これにより、基体及び載置部材の間に高さ位置変更機構を設けても、全体の高さをコンパクトにすることができる。
【0010】
高さ位置変更機構は、基体の第1水平方向両端に設けられた2個のピンと、載置部材の第1水平方向両端に形成され2個のピンがそれぞれ挿入された2個のスリットとを有していてもよい。これにより、高さ位置変更機構を安価に構成できる。
【0011】
各スリットは、第1水平方向に延びる第1部分と、第1部分から内側下方に延びる第2部分とを有していてもよい。これにより、簡単なスリット形状で高さ位置を変更できる。
【0012】
各スリットは、他のスリットに向かって斜め下方に延びていてもよい。その場合に、スリットは、下側に凸の円弧状であってもよい。また、スリットは、他のスリットに向かって斜め下方に伸びる第1部分と、第1部分から第1水平方向に延びる第2部分とを有していてもよい。
【0013】
各スリットは、第1部分と第2部分とからなるV字状に形成されていてもよい。その場合、第1部分と第2部分の各々が直線状であってもよい。また、第1部分と第2部分は、第1直線部分と、第1直線部の上端に接続された第2直線部分とを有しており、第1水平方向に対する第2直線部分の傾斜角度が第1直線部分の傾斜角度より大きくてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、載置部材を水平方向に移動させる運動エネルギー(外力)が位置エネルギーに変換され、荷物に外力の一部しか作用しなくなる。このため、ラックが横揺れしても荷物の移動量が減る。その結果、荷物が落下しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態を採用した自動倉庫の概略側面図。
図2】その自動倉庫の概略平面図。
図3】棚部の正面図。
図4】棚部の側面図。
図5】棚部の斜視図。
図6】棚部のXI−XI横断面図。
図7A】棚部の横揺れ時の高さ位置変更動作を示す側面図。
図7B】棚部の横揺れ時の高さ位置変更動作を示す側面図。
図7C】棚部の横揺れ時の高さ位置変更動作を示す側面図。
図8A】第1実施形態の棚部の第1変形例の図6に相当する図。
図8B】第1実施形態の棚部の第1変形例の図6に相当する図。
図9A】第1実施形態の第2変形例の棚部の図6に相当する図。
図9B】第1実施形態の第2変形例の棚部の図6に相当する図。
図10A】第2実施形態の棚部の図6に相当する図。
図10B】第2実施形態の棚部の図6に相当する図。
図11A】第2実施形態の変形例の棚部の図6に相当する図。
図11B】第2実施形態の変形例の棚部の図6に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)自動倉庫の全体概要
図1は、自動倉庫1を、スタッカークレーン10の経路方向に見た側面図である。図2は、自動倉庫1を、上方から見た平面図である。
なお、スタッカークレーン10の経路5の方向(走行方向)は、図2の上下方向に対応している。また、スタッカークレーン10の経路5から離れる方向(前後方向、奥行き方向)は、図1の左右方向に対応している。
【0017】
自動倉庫は、主に、スタッカークレーン10と、ラック装置12とを、備えている。スタッカークレーン10、自動倉庫1内を経路5に沿って走行する。スタッカークレーン10は、パレットPに載置された荷物Wを搬送し、ラック装置12に荷物Wを載置する。スタッカークレーン10の両側に、ラック装置12が配置されている。スタッカークレーン10は、走行台車10aと、走行台車10aに立設されたマスト10bと、マスト10bに昇降可能に支持される昇降台10cと、昇降台10cに対して進退する移載用のフォーク10dと、を有している。走行台車10aは、経路5に沿って上下に配置された一対のガイドレール11aに案内される。
【0018】
(2)第1実施形態のラック装置
本発明の第1実施形態によるラック装置12は、荷物Wを収納するためのものである。ラック装置12は、ラック装置本体14(本体部の一例)と、ラック装置本体14に設けられた複数の棚部16とを、備えている。
【0019】
(2−1)ラック装置本体
ラック装置本体14は、複数の支柱21と、複数のブレース23と、複数の水平部材24とを、備えている。複数の支柱21は、床面FL上に配置される。ここでは、スタッカークレーン10に近い側に配置された支柱21を、第1の支柱21aと呼ぶ。また、スタッカークレーン10から離れた側に配置された支柱21を、第2の支柱21bと呼ぶ。第1の支柱21aは、経路方向に並べて配置されている。また、第2の支柱21bは、経路方向に並べて配置されている。さらに、第1の支柱21a及び第2の支柱21bは、経路5に直交する方向に一対一で対応するように並べて配置されている。
【0020】
ブレース23は、水平ブレース23aと、背面ブレース23bと、側面ブレース23cと、を有している。水平ブレース23aは、ジグザグ状に配置され、第1の支柱21aと第2の支柱21bとを水平方向に連結する。背面ブレース23bは、隣り合う第2の支柱21bを垂直方向に連結する。側面ブレース23cは、ジグザグ状に配置され、第1の支柱21aと第2の支柱21bとを垂直方向に連結する。水平部材24は、第1の支柱21aを水平方向において連結する第1水平部材24aと、第2の支柱21bを連結する第2水平部材24bと、を有する。水平部材24は、複数の棚部16毎に上下に間隔を隔てて設けられる。
【0021】
(2−2)棚部
棚部16は、荷物Wが載置される部分である。棚部16は、第1の支柱21aと第2の支柱21bとの間に設けられる。ここでは、複数の棚部16が、高さ方向に互いに間隔を隔てて、第1の支柱21aと第2の支柱21bとに装着されている。
【0022】
棚部16は、図2図3図4及び図5に示すように、支柱21に固定された一対の支持部材25と、支持部材25に片持ち支持された基体26と、を有している。棚部16は、荷物Wが載置される載置部材27と、載置部材27の高さ位置を変更する高さ位置変更機構28と、をさらに有している。載置部材27は、基体26に相対移動可能に取り付けられている。高さ位置変更機構28は、載置部材27が基体26に対して経路5と直交する前後方向(第1水平方向の一例)に移動するときに、載置部材27の基体26に対する高さ位置を変更する。
【0023】
一対の支持部材25は、それぞれが走行方向に長い部材である。ここでは、一対の支持部材25が、互いに平行になるように、第1の支柱21a及び第2の支柱21bに固定される。具体的には、一対の支持部材25の一方(第1の支持部材25a)が第1の支柱21aに固定され、一対の支持部材25の他方(第2の支持部材25b)が第2の支柱21bに固定される。
【0024】
基体26は、図6に示すように、例えば、角パイプ製であり、第1の支持部材25a及び第2の支持部材25bの先端の上面に固定されている。基体26は、図4及び図5に示すように、前後方向(第1水平方向の一例)に延びている。
【0025】
載置部材27は、基体26に相対移動可能に取り付けられている。載置部材27は、図6に示すように、断面視C字形状の部材であり、前後方向に長く延びている。載置部材27は、前後方向に延びる凹部27aを有している。基体26は、凹部27a内に高さ方向に載置部材27と隙間を空けて配置されている。図5及び図6に示すように、載置部材27の上面には、パレットPを載置するための載置面27bが前後方向に間隔を隔てて配置されている。載置面27bは、例えば合成樹脂製であり、滑り止めのために設けられている。
【0026】
高さ位置変更機構28は、基体26の両側面にそれぞれ設けられた2本のピン30と、載置部材27の両側面にそれぞれ設けられた2つのスリット32と、を有している。2本のピン30は、基体26の左右の側面の前後方向の両端部にそれぞれ配置されている。2つのスリット32は、載置部材27の左右の側面のピン30に係合可能に配置されている。ピン30は、基体26の左右の側面の両端部に形成されたネジ孔26aにねじ込まれる、例えばネジ部材である。ピン30は、スリット32に係合する頭部30aと、頭部30aより小径のネジ部30bと、を有している。頭部30aには、例えば六角棒レンチに係合する六角穴30cが形成されている。ピン30は、基体26に載置部材27を浮かせて配置した後にスリット32を貫通してネジ孔26aにねじ込まれ、基体26に固定される。
【0027】
スリット32は、載置部材27の前後方向の中心位置に対して線対称に形成されている。スリット32は、ピン30が挿入可能な幅を有している。スリット32は、前後方向に延びる第1部分32aと、第1部分32aから内側下方に斜めに延びる第2部分32bと、を有している。第1部分32a及び第2部分32bは、直線的に延びている。水平な第1部分32aと、下方に斜めに延びる第2部分32bとの角度αは、例えば、20度から25度の範囲が好ましい。角度αがこのような範囲にあると、0.3Gから0.5G程度の横揺れで生じる運動エネルギーを位置エネルギーにより効果的に吸収できるからである。
【0028】
このような構成のラック装置12では、地震等により床FLが揺れ、その揺れがラック装置本体14を介して棚部16に伝達されると、揺れの前後方向の力によりパレットP及び荷物Wが移動しようとする。しかし、載置面27bが設けられた載置部材27が、図7Aに示す初期位置から図7Bに示す第1傾斜位置又は図7Cに示す第2傾斜位置に向けて基体26に対して前後方向及び上下方向に揺れる。このとき、載置部材27の一端側と他端側とが交互に上下方向に揺れる。これにより、揺れによる運動エネルギーが位置エネルギーに変換されることによって減衰する。しかも、ピン30とスリット32との間の摩擦も作用しさらに運動エネルギーが減衰する。この結果、パレットP上に荷物を載置しても荷物WがパレットPに対して移動しにくくなり、荷物Wが落下しにくくなる。また、ストッパ等を設けることなく、荷物Wの移動を抑えているので、荷物Wを傷つけることがない。さらに、ラック装置12の揺れが収まると、載置部材27は自重により初期位置に戻る。さらにまた、上下方向に揺らすことにより左右方向に慣性が働いても、荷物Wが載置部材27から脱落しにくくなる。
【0029】
以下、第1変形例及び第2変形例において、スリットが、他のスリットに向かって斜め下方に延びている変形例を説明する。
(3)第1実施形態の第1変形例
第1実施形態では、スリット32を水平な第1部分32aと斜め下方に延びる第2部分32bとで高さ位置変更機構28のスリット32を構成した。なお、以降の説明では第1実施形態と同じ部材についての説明は省略する。
【0030】
第1変形例では、図8Aに示すように、高さ位置変更機構128のスリット132は下側に凸の円弧状に内側下方に延びている。スリット132の両端部の高さ位置の差は、前記実施形態より大きい。これにより、載置部材127が、前後方向の図8Aに示す初期位置から図8Bに示す第1傾斜位置又は第2傾斜位置(図示せず)に揺れると、載置部材127の一端又は他端の上昇位置が第1実施形態より高くなり、さらに大きな位置エネルギーを得ることができる。
【0031】
(4)第1実施形態の第2変形例
第2変形例では、図9Aに示すように、高さ位置変更機構228のスリット232の第1スリット232aが内側斜め下方に延びている。第2スリット232bは、前後方向に延びている。これにより、載置部材227が、前後方向の図9Aに示す初期位置から図9Bに示す第1傾斜位置又は第2傾斜位置(図示せず)に揺れると、載置部材227の一端又は他端が交互に上下方向に揺れる。これにより、前記と同様な作用効果を得ることができる。
【0032】
(5)第2実施形態
第2実施形態において、スリットが第1部分と第2部分とからなるV字状に形成されている実施形態を説明する。
図10Aに示すように、第2実施形態では、高さ位置変更機構328は、載置部材327の前後方向の横揺れにより、基体26に対して初期位置から図10Bに示す第1水平位置と第2水平位置(図示せず)に向けて上下方向に及び前後方向に揺れる。このため、第2実施形態では、載置部材327の両端に配置されたスリット332は、同じ形状である。また、第1部分332aと第2部分332bは、線対称の形状である。スリット332の第1部分332aは、内側下向きに直線的に延びている。第2部分332bは、第1部分332aの下端から内側上向きに直線的に延びている。したがって、スリット332は、V字状に形成されている。このように構成された高さ位置変更機構338では、第1水平位置と第2水平位置は初期位置からの前後方向の変位に対して同じ高さ位置に配置される。
【0033】
このような第2実施形態では、載置部材327が基体326に対して前後方向に揺れると、載置部材327が水平状態を維持して上下に揺れる。これにより、運動エネルギーが減少し、パレットP上に荷物Wが載置されても、荷物Wが落下しにくくなる。
ここでは、載置面327bが水平な状態で揺れるので、パレットPに荷物Wを載置しても、荷物Wがさらに前後方向に移動しにくくなる。また、揺れが収まると、載置部材327が初期位置に戻る。
【0034】
(6)第2実施形態の変形例
図11A及び図11Bに示すように、第2実施形態の変形例では、高さ位置変更機構428のスリット432は、第1部分432aと第2部分432bとからなるV字形状である。第1部分432a及び第2部分432bは、傾きが途中で変化している。言い換えると、第1部分432a及び第2部分432bは、第1直線部分と、第1直線部分の上端に接続された第2直線部分とを有しており、水平方向に対する第2直線部分の傾斜角度が第1直線部分の傾斜角度よりも大きい。
このような構成の第2実施形態の変形例では、載置部材427が前後方向に移動すると、その途中で上下方向の揺れの加速度が変化する。このため、運動エネルギーをさらに効率よく減衰させることができる。
【0035】
(7)実施形態の作用効果
上記実施形態は、下記のように表現可能である。なお、以降の説明において、部材に対応する符号は、明細書に最も先に記載されたものだけを付す。
【0036】
(A)自動倉庫のラック装置12は、スタッカークレーン10の経路5に沿って配置されるラック装置である。自動倉庫のラック装置12は、ラック装置本体14と、ラック装置本体14に設けられた複数の棚部16と、を有している。棚部16の少なくとも一つは、ラック装置本体14に固定された基体26と、載置部材27と、高さ位置変更機構28と、を有している。載置部材27は、基体26に相対移動可能に取り付けられ、荷物Wが載置される部材である。高さ位置変更機構28は、載置部材27が基体26に対して水平方向に移動するときに、載置部材27の基体に対する高さ位置を変更する機構である。
このラック装置12では、ラック装置12が横揺れし、荷物Wが載置された載置部材27が横揺れの外力により基体26に対して水平方向に移動すると、載置部材27の基体26に対する高さ位置が変更される。これにより、載置部材27を水平方向に移動させる運動エネルギー(外力)が位置エネルギーに変換され、荷物Wに外力の一部しか作用しなくなる。このため、ラック装置12が横揺れしても荷物Wの移動量が減る。その結果、荷物Wが落下しにくくなる。
【0037】
(B)高さ位置変更機構28が載置部材27の基体26に対する高さ位置を変更するのは、載置部材27が基体26に対して、経路5に直交する前後方向に移動するときであってもよい。これにより、スタッカークレーン10が配置される経路5側に荷物Wが落下しにくくなる。
【0038】
(C)高さ位置変更機構28は、載置部材27の前後方向両端の高さを異ならせてもよい。これにより、前後方向に載置部材27が移動すると載置部材27の前後方向の両端の高さが変化するので、載置部材27が移動前の位置に戻りやすくなる。
【0039】
(D)基体26及び載置部材27は、前後方向に長く延びていてもよい。載置部材27は、前後方向に延びる凹部27aを有している。基体26は、凹部27a内に高さ方向に隙間を空けて配置されている。これにより、基体26及び載置部材27の間に高さ位置変更機構8を設けても、全体の高さをコンパクトにすることができる。
【0040】
(E)高さ位置変更機構28は、基体26の前後方向両端に設けられた2個のピン30と、載置部材27の前後方向両端に形成され2個のピン30がそれぞれ挿入された2個のスリット32とを有していてもよい。これにより、高さ位置変更機構28を安価に構成できる。
【0041】
(F)各スリット32は、前後方向に延びる第1部分32aと、第1部分32aから内側下方に延びる第2部分32bとを有していてもよい。これにより、簡単なスリット32形状で高さ位置を変更できる。
【0042】
(8)他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
【0043】
(a)前記実施形態では、基体26を角パイプで構成したが、本発明はこれに限定されない。基体は、どのような形状でもよく、例えば、通常の丸パイプでもよい。
【0044】
(b)前記実施形態では、固定されたピンをスリットに係合させたが、本発明はこれに限定されない。ピンに代えて、カムフォロア等の回転可能なネジ付きローラをネジ孔26aにねじ込んでもよい。この場合には、ピンの摩擦による運動エネルギーの減衰量は少なくなるが、位置エネルギーによる減衰量は多くなる。
【0045】
(c)前記実施形態では、4本のピンを基体26のそれぞれの側面にネジ止めして装着したが、本発明はこれに限定されない。例えば、載置部材を浮かせて配置した後に、基体の一側面から他側面に向けて基体の両端に2本のピンを貫通させて、ピンの両端を両側面から突出させてもよい。ピンを例えば軸用止め輪により抜け止めしてもよい。
【0046】
(d)スリットの形状は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0047】
(e)前記実施形態では、パレットPに載置された荷物Wを収納するラック装置12を例示したが、本発明はこれに限定されない。荷物を棚部に直接収納するラック装置にも本発明を適用できる。
【0048】
(f)前記実施形態では、載置部材27に凹部27aを設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、基体に凹部を設け、凹部内に載置部材を載置してもよい。この場合、第1実施形態の図6の棚部16を上下反転し、角パイプ形状の基体26を載置部材とし、C字断面の載置部材27を基体とすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、自動倉庫のラック装置に広く適用可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 自動倉庫
5 経路
10 スタッカークレーン
10a 走行台車
10b マスト
10c 昇降台
10d フォーク
11a ガイドレール
12 ラック装置
14 ラック装置本体
16 棚部
21 支柱
21a 第1の支柱
21b 第2の支柱
23 ブレース
23a 水平ブレース
23b 背面ブレース
23c 側面ブレース
24 水平部材
24a 第1水平部材
24b 第2水平部材
25 支持部材
25a 第1の支持部材
25b 第2の支持部材
26 基体
26a ネジ孔
27 載置部材
27a 凹部
27b 載置面
28 高さ位置変更機構
30 ピン
30a 頭部
30b ネジ部
30c 六角穴
32 スリット
32a 第1部分
32b 第2部分
127 載置部材
128 高さ位置変更機構
132 スリット
227 載置部材
228 高さ位置変更機構
232 スリット
232a 第1部分
232b 第2部分
327 載置部材
327b 載置面
328 高さ位置変更機構
332 スリット
332a 第1部分
332b 第2部分
427 載置部材
428 高さ位置変更機構
432 スリット
432a 第1部分
432b 第2部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B