(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記バルブ筐体には、前記ダイヤフラムの変位による前記受圧板の変位に伴って前記弁体が前記流入孔と前記バルブ室とを接続状態としたときに、前記受圧板の前記受圧部が対向する突出部と、当該流体を前記突出部の内側から外側へ通過させる流路とが、前記受圧板と対向する前記バルブ室の底面上における前記流入孔の周囲に形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のバルブ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)においては、燃料カートリッジから発電セルへ液体燃料(メタノール)の輸送を行うポンプを備えている。燃料カートリッジはポンプの上流側に配置されており、発電セルはポンプの下流側に配置されている。ポンプが弁方式である場合、弁によってポンプの下流側からポンプの上流側への流体の流れを遮断する逆止機能を備えている。しかし、ポンプの上流側からポンプの下流側への液体燃料の過剰な流れを遮断する機能、すなわち順止機能は備えていないものが一般的である。
【0007】
例えば、ダイレクトメタノール型燃料電池システムにおいて、燃料電池システム内に組み込まれる燃料カートリッジが、発熱部品によって高温になることがある。燃料カートリッジが高温になると燃料カートリッジの内部の液体燃料が膨張する。このため、高圧となった液体燃料が燃料カートリッジから吐出されることがある。順止機能を備えていない弁方式のポンプでは、これにより、過剰な量の液体燃料が発電セルに供給され、ポンプの非作動時にも、燃料カートリッジから発電セルへ液体燃料が輸送されてしまう。また、場合によってはポンプを破壊してしまうおそれがある。
【0008】
このような問題を解消するために、高圧の液体燃料が万が一加わった場合などに、順方向の流れを止めるバルブが求められている。そこで、本願の発明者は、高圧の液体燃料が万が一加わった場合などに、順方向の流れを止めるバルブであって、ポンプの圧力によって開閉が行われるバルブを燃料カートリッジとポンプとの間に設けるという方策を用いた。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の圧力制御弁では、ダイヤフラム1の変位量を高めるためにダイヤフラム1を剛性の低い材料(例えばゴム)で形成した場合に、圧力制御弁を駆動させると、ダイヤフラム1が撓み、ダイヤフラム1の周縁部がバルブ室8の底面9に押圧されてしまう。この時、ダイヤフラム1とバルブ室8の底面9との間に隙間がなくなると、弁体部4の押し下げに必要なダイヤフラム1の上記受圧面積S2が小さくなる。この結果、上記右辺(P0−P2)S2の値が小さくなり、最悪の場合には弁体部4を開くことができなくなってしまうという問題がある。
【0010】
そこで、ダイヤフラム1がバルブ室8の底面9に当接する程のダイヤフラム1の撓みを抑制するために、ダイヤフラム1の厚みを従来よりも厚くして剛性を高める方法も考えられるが、ダイヤフラム1の変位量の低下や、圧力制御弁の小型化が阻害されてしまうという問題がある。
【0011】
そこで本発明は、ダイヤフラムの変位量を低下させずに、ダイヤフラムの撓みを抑制することができる流体の順方向の過剰な流れを遮断するバルブ、及びこのバルブを備える燃料電池システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のバルブは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0013】
(1)流体の流入孔と、前記流体の流出孔とを有するバルブ筐体と、
周縁部が前記バルブ筐体に固定されて前記バルブ筐体とともにバルブ室を構成し、前記バルブ室の前記流体の圧力によって前記周縁部より内側の中央部が変位するダイヤフラムと、
第1の面と前記第1の面に対向する第2の面とを有する平板状の受圧部と、前記受圧部の前記第1の面に接続された柱状のプッシャー部とを有し、前記受圧部の前記第2の面の面積は、前記プッシャー部の前記受圧部との接続面の面積よりも大きく、前記受圧部の前記第2の面が前記ダイヤフラムの前記バルブ筐体側の面に非接着状態で対向するよう前記バルブ室に配置されている受圧板と、
前記プッシャー部に対向して前記流入孔に配置され、前記ダイヤフラムの変位による前記受圧板の変位に伴って、前記流入孔と前記バルブ室とを遮断状態から接続状態にする弁体と、を備え
、
前記流入孔から前記ダイヤフラムにおける前記流入孔に対向する部分までの距離は、前記流出孔から前記ダイヤフラムにおける前記流出孔に対向する部分までの距離よりも短い。
【0014】
この構成では、バルブ室の圧力が低下した時、ダイヤフラムの中央部がバルブ筐体側に変位して受圧板の受圧部に当接して受圧部を押圧する。これに伴って、受圧板のプッシャー部が変位して弁体に当接して弁体を押圧する。これにより、流入孔とバルブ室とが遮断状態から接続状態になって弁が開き、流体が流入孔からバルブ室へ流入する。
【0015】
受圧板は、ダイヤフラムとバルブ室の底面との間に配置されているため、ダイヤフラムの変位によって発生するダイヤフラムの撓みを抑制することができる。そのため、仮にダイヤフラムを剛性の低い材料で形成した場合でも、ダイヤフラムに対向する受圧板の面の面積分の受圧面積は少なくとも確保できる。
【0016】
さらに、受圧板は、ダイヤフラムのバルブ筐体側の面に非接着状態で対向するようバルブ室に配置されているため、ダイヤフラムの変形を妨げずにダイヤフラムの中央部の変位に伴って弁体側へ変位する。そのため、ダイヤフラムの変位量を低下させない。
【0017】
したがって、この構成によれば、ダイヤフラムの変位量を低下させずに、ダイヤフラムの撓みを抑制することができる。
【0018】
(2)前記受圧板の剛性は、前記ダイヤフラムの剛性より高いことが好ましい。
【0019】
この構成によれば、ダイヤフラムの撓みを一層抑制することができる。
【0020】
(3)前記受圧板は、前記プッシャー部が前記弁体に非接着状態で対向するよう配置されていることが好ましい。
【0021】
この構成におけるバルブは、受圧板をダイヤフラム及び弁体に接着する必要がないため、接着工程を使用せずに製造できる。そのため、この構成によれば、低コストで製造できる。また、この構成におけるバルブは、接着工程を使用せずに製造できるため、接着剤が流体中に溶出することがない。
【0022】
(4)前記バルブ筐体には、前記ダイヤフラムの変位による前記受圧板の変位によって前記弁体が前記流入孔と前記バルブ室とを接続状態にしたときに、前記受圧板の前記受圧部が対向する突出部と、当該流体を前記突出部の内側から外側へ通過させる流路と、が、前記受圧板と対向する前記バルブ室の底面上における前記流入孔の周囲に形成されていることが好ましい。
【0023】
この構成では、流入孔とバルブ室とが接続状態となるとき、受圧板の受圧部が、バルブ室の底面でなく突出部に接触する。さらに、受圧板の受圧部が突出部に接触したとき、流体は突出部の内側から流路を介して突出部の外側へ通過する。
【0024】
したがって、この構成によれば流入孔とバルブ室とが接続状態のとき、受圧板がバルブ筐体の流入孔を塞ぐことを防ぐことができる。
【0025】
(5)前記バルブ筐体の前記流入孔は、前記流入孔から前記ダイヤフラムにおける前記流入孔に対向する部分までの距離が、前記流出孔から前記ダイヤフラムにおける前記流出孔に対向する部分までの距離よりも短くなるように形成されていることが好ましい。
【0026】
この構成では流入孔とバルブ室とが接続状態のとき、受圧板がまず、バルブ室の底面上における流入孔の周囲と当接する。そのため、この構成によれば、受圧板やダイヤフラムがバルブ筐体の流出孔を塞ぐことを抑制できる。
【0027】
(6)ダイヤフラムがゴムで形成されている場合、ダイヤフラムの変位は大きいものの、ゴム製のダイヤフラムはガス透過性が大きくガス漏れのおそれがあるため、前記ダイヤフラムの材質は樹脂であることが好ましい。
【0028】
液体を流体としてバルブに使用した場合、液体の表面張力が大きいため、気体を流体としてバルブに使用した場合より大きな流体の流路が必要となるが、この構成のバルブではダイヤフラムの変位量が大きいため、ダイヤフラムの材質が樹脂であっても液体の流路を十分に確保できる。
【0029】
(7)前記受圧板の材質は樹脂であることが好ましい。
【0030】
(8)前記流体はメタノールであることが好ましい。
【0031】
この構成において、接着剤の成分がメタノールに溶出すると、燃料電池の機能を損なう。そのため、上記(1)の構成は、メタノールを流体として使用するバルブにおいて好適である。
【0032】
また、本発明の燃料電池システムは、前記課題を解決するために以下の構成を備えている。
【0033】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載のバルブと、
前記バルブの前記流入孔に接続される燃料貯蔵部と、
前記バルブの前記流出孔に接続されるポンプと、を備える。
【0034】
この構成により、上記(1)〜(8)のうちいずれかに記載のバルブを用いることで、当該バルブを備える燃料電池システムにおいても同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0035】
この発明によれば、ダイヤフラムの変位量を低下させずに、ダイヤフラムの撓みを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係るバルブ101について説明する。
【0038】
図2は、本発明の実施形態に係るバルブ101を備える燃料電池システム100のシステム構成図である。燃料電池システム100は、液体燃料であるメタノールを貯蔵する燃料カートリッジ102と、バルブ101と、メタノールを輸送するポンプ103と、ポンプ103からメタノールの供給を受けて発電する発電セル104と、を備える。
【0039】
燃料電池システム100では、メタノールが燃料カートリッジ102から流入路163へ流入する。そして、ポンプ103を作動させることによって、メタノールが流入孔143を介してバルブ室140へ流入する。そして、メタノールはバルブ室140から流出路165と流出孔149とポンプ103を介して発電セル104へ供給される。
【0040】
バルブ101は、詳細を後述するが、ダイヤフラム120とともにバルブ室140を構成するバルブ筐体130を備える。バルブ筐体130には、燃料カートリッジ102が流入路163を介して接続される流入孔143と、ポンプ103が流出路165を介して接続される流出孔149とが形成されている。バルブ101は、流入路163と流出路165とが形成され、例えばPPS(Polyphenylenesulfide)樹脂製のシステム筐体160に、液漏れを防ぐOリング161、162を介して表面実装される。
【0041】
図3は、本発明の実施形態に係るバルブ101の分解斜視図である。
図4(A)は、
図3のバルブ101に備えられるキャップ部110の上面図である。
図4(B)は、
図3のバルブ101に備えられるバルブ筐体130の下面図である。
図5は、
図4(A)のS−S線における断面図である。
【0042】
バルブ101は、
図3〜
図5に示すように、キャップ部110と、ダイヤフラム120と、受圧板125と、バルブ筐体130と、弁部150とを備える。
【0043】
バルブ筐体130は、例えば略正方形板状である。バルブ筐体130には、バルブ室140へ流体が流入する流入孔143と、ポンプ103が接続されてポンプ103による流体の吸引圧力によってバルブ室140から流体が流出する流出孔149と、が形成されている。流入孔143は、
図5に示すように、当該流入孔143からダイヤフラム120における流入孔143に対向する部分までの距離A(即ち、流入孔143とダイヤフラム120との最短距離)が、流出孔149からダイヤフラム120における流出孔149に対向する部分までの距離B(即ち、流出孔149とダイヤフラム120との最短距離)よりも短くなるように形成されている。
【0044】
このように形成することにより、バルブ101が開くときに、まず受圧板125がバルブ室140の底面上における流入孔143の周囲と当接する。このため、ダイヤフラム120の撓みによって受圧板125やダイヤフラム120がバルブ筐体130の流出孔149を塞ぐことを抑制できる。
【0045】
また、バルブ筐体130には、キャップ部110とバルブ筐体130をシステム筐体160に固定するためのネジ止め用の穴131と、キャップ部110の周縁部位114と対向する位置に、液漏れを防ぐシール部134と、が設けられている。
【0046】
また、バルブ筐体130には、
図3及び
図5に示すように、弁部150が流入孔143とバルブ室140とを接続させたときに、受圧板125が当接する突出部144と、メタノールを突出部144の内側から外側へ流入させる流路145とが、ダイヤフラム120と対向するバルブ室140の底面141上における流入孔143の周囲に形成されている。
【0047】
また、バルブ筐体130には、
図4(B)及び
図5に示すように、弁部150をバルブ筐体130の実装面側から嵌めこむことにより弁部150を収納する開口部147と、流入孔143の周縁に位置する弁座148と、が形成されている。
【0048】
なお、バルブ筐体130の材質については、バルブ筐体130のメタノールと接する部分141、144、145、148の材質は耐メタノール性の高い樹脂、例えばPPS樹脂等からなり、バルブ筐体130のメタノールと接しない部分である縁部132の材質は金属からなる。バルブ筐体130は、金属部分の縁部132をモールド金型にインサートして射出成形するインサートモールドにより形成される。
【0049】
ダイヤフラム120は、
図3及び
図5に示すように、例えば円板状に形成されている。ダイヤフラム120の材質は、耐メタノール性の高い樹脂、例えばPET(Polyethylene Terephthalate)樹脂又はPPS樹脂である。
【0050】
ダイヤフラム120は、周縁部121がバルブ筐体130上のシール部134に載置されてバルブ筐体130とともにバルブ室140を構成する。シール部134は例えばOリングである。ダイヤフラム120は、バルブ室140の流体の圧力によって周縁部121の内側の中央部122が変位する。ポンプ103による流体(メタノール)の吸引によってバルブ室140の圧力が低下した時、ダイヤフラム120の中央部122が弁部150に近づく方向へ変位して受圧板125を押下し、受圧板125のプッシャー部127が弁部150の弁体部151に当接して弁体部151を押下する。
【0051】
弁部150は、
図3及び
図5に示すように、略円形状であり、耐メタノール性の高いゴム、例えばシリコーンゴムからなる。弁部150は、ダイヤフラム120の変位に伴って流入孔143とバルブ室140とを遮断状態から接続状態にして流体(メタノール)の流入を制御する弁体部151と、弁体部151が弁座148に対して接近および離間する方向へ可動自在に弁体部151を支持する支持部152と、メタノールを通過させる孔部153と、弁部150が開口部147に収納されたときにバルブ筐体130の開口部147の内周面に当接し、支持部152を固定する固定部154と、を有する。
【0052】
なお、弁体部151には、弁座148とのシール性を高めるため、流入孔43側にリング状の弁突起155が形成されているが、弁突起155は必ずしも形成される必要はない。
【0053】
弁体部151は、弁部150が開口部147に収納されたときに弁体部151の弁突起155が弁座148に当接し、弁体部151が流入孔143からバルブ室140への流体の流入を遮断するよう弁座148を付勢力Fsで付勢する。
【0054】
弁体部151は、ポンプ103によるメタノールの吸引によってバルブ室140の圧力が低下した時、ダイヤフラム120が下降して受圧板125のプッシャー部127が当接して押し下げられることによって弁座148から離間し、流入孔143とバルブ室140とが接続状態となる。この結果、流入孔143と孔部153が連通して、メタノールがバルブ室140へ流入する。
【0055】
なお、弁部150が、本発明の「弁体」に相当する。
【0056】
キャップ部110は、
図3、
図4(A)及び
図5に示すように、略正方形板状であり、例えば、ステンレススチールの板を用いて金型成形により形成される。キャップ部110には、キャップ部110とバルブ筐体130をシステム筐体160に固定するためのネジ止め用の穴111が形成されている。
【0057】
ここで、金属製のキャップ部110の縁部116は、ダイヤフラム120がシール部134に載置された状態で、バルブ筐体130の金属製の縁部132と溶接により接合される。キャップ部110の周縁部位114は、接合されると、ダイヤフラム120の周縁部121を押圧してシール部134とともに周縁部121を挟持する。ここで、シール部134の材質は、耐メタノール性の高いゴム、例えばエチレンプロピレンゴムまたはシリコーンゴムである。このため、当該シール部134がダイヤフラム120の周縁部121及びバルブ筐体130によって圧縮され、ダイヤフラム120の周縁部121とシール部134との密着性が極めて高くなる。そのため、メタノールがダイヤフラム120の周縁部121とシール部134との間を通過してバルブ室140の外側へ漏れることを防止できる。
【0058】
また、キャップ部110の中央部位113には、外気と通じる孔部115が形成されている。この結果、ダイヤフラム120の上部に大気圧が加わる。
【0059】
受圧板125は、例えば円板状に形成され、第1の面と第1の面に対向する第2の面とを備える受圧部126と、受圧部126におけるバルブ筐体130側の第1の面の中心部分から突出し、例えば円柱状に形成されているプッシャー部127とを有する。
【0060】
受圧板125は、ダイヤフラム120とバルブ筐体130との間に設けられている。受圧部126の第1の面がバルブ筺体130に対向しており、受圧部126の第2の面がダイヤフラム120に対向している。
【0061】
受圧板125の材質は例えば耐メタノール性の高い樹脂、例えばPPS樹脂等からなる。なお、受圧板125の剛性はダイヤフラム120の剛性より高いことが好ましい。
【0062】
受圧部126の第2の面の直径は8.5mmである。受圧部126の第2の面は、ダイヤフラム120のバルブ筐体130側の面に非接着状態で当接している。なお、受圧部126とダイヤフラム120は、必ずしも当接する必要はなく、互いに対向していてもよい。
【0063】
プッシャー部127の受圧部126との接続面の直径は0.5mmである。プッシャー部127の突出方向の先端は、バルブ筐体130の流入孔143を介して弁部150に非接着状態で当接している。
【0064】
なお、プッシャー部127と弁部150は、必ずしも当接する必要はなく、互いに対向していてもよい。ただし、プッシャー部127の突出方向の先端から弁部150までの距離は、受圧板125の非動作時の状態から、受圧板125が突出部144に当接するまでの距離である動作距離よりも大きい必要がある。
【0065】
なお、弁部150には、受圧板125のプッシャー部127が載置されるが、弁部150の付勢力Fsは受圧板125の重さに勝る力であるため、受圧板125の重さによって流入孔143とバルブ室140とが接続状態となることはない。
【0066】
受圧部126の第2の面の面積は、約56.7mm
2である。プッシャー部127の底面の面積、即ち、プッシャー部127の受圧部126との接続面の面積は、約0.20mm
2である。受圧部126の第2の面の面積は、プッシャー部127の受圧部126との接続面の面積よりも大きく、ダイヤフラム120の中央部122の面積よりも小さく構成されている。ここで、受圧部126の第2の面の面積が大きいほど受圧面積が増えるため、よりダイヤフラム120の撓みを抑制することができる。
【0067】
なお、受圧板125の受圧部126およびプッシャー部127の形状は、平面視した場合において、円形状であることが好ましい。このように形成すると、プッシャー部127を中心として円周方向に均一に力が加わるため、動作時に傾きが発生しにくい。ただし、これに限るものではなく、受圧部126およびプッシャー部127が楕円形状や多角形状であっても構わない。
【0068】
ここで、バルブ101の動作について説明する。
【0069】
図6(A)は、本発明の実施形態に係るバルブ101の弁閉時の模式断面図であり、
図6(B)は、本発明の実施形態に係るバルブ101の弁開時の模式断面図である。
【0070】
バルブ101は、流体の圧力が設定圧力になると、圧力差を利用して弁部150が自動的に開閉するように構成されている。詳述すると、ダイヤフラム120上部の大気の圧力をP0、バルブ上流の1次圧力をP1、バルブ下流の圧力をP2とし、弁体部151の面積(ここでは、弁体部151にリング状の弁突起155が形成されているため弁突起155で囲まれた領域の径で決まる面積)をS1、バルブ室140に接するダイヤフラム120の部分の面積(以下、「受圧面積」と称する。)をS2、弁体部151が弁座148を付勢する力をFsとする。
【0071】
このとき、圧力の釣り合いから、
図6(B)のように弁部150が開く条件は、(P1−P2)S1+Fs<(P0−P2)S2となる。P2がこの条件の圧力より高いと弁部150は閉じ、低いと弁部150は開く。これによって、P2を一定に保つことができる。
【0072】
そのため、バルブ101では、ポンプ103によるメタノールの吸引によってバルブ室140の圧力が低下した時、ダイヤフラム120の中央部122が変位して受圧板125の受圧部126を押下し、受圧板125のプッシャー部127が変位して弁部150の弁体部151を押下する(
図6(B)参照)。これにより、流入孔143とバルブ室140とが接続状態となり、メタノールが流入孔143からバルブ室140へ流入する。
【0073】
この時、受圧板125は、
図5、
図6に示すようにダイヤフラム120とバルブ室140の底面141との間に配置されているため、ダイヤフラム120の撓みを抑制することができる。そのため、仮にダイヤフラム120を剛性の低い材料で形成した場合でも、ダイヤフラム120に対向する受圧板125の面(第2の面)の面積分の受圧面積S2は少なくとも確保できる。
【0074】
したがって、バルブ101では、ダイヤフラム120の受圧面積S2が低下することを抑制できる。そのため、ダイヤフラム120がバルブ室140の底面141に固着することを抑制することができる。
【0075】
また、流入孔143とバルブ室140とが接続状態となるとき、受圧板125の受圧部126が、バルブ室140の底面でなく突出部144に接触する(
図3、
図5及び
図6(B)参照)。さらに、受圧板125の受圧部126が突出部144に接触した時、メタノールは突出部144の内側から流路145を介して突出部144の外側へ通過する。よって、この実施形態のバルブ101によれば、受圧板125がバルブ筐体130の流入孔143を塞ぐことを防ぐこともできる。
【0076】
また、バルブ筐体130の流入孔143は、当該流入孔143からダイヤフラム120における流入孔143に対向する部分までの距離A(即ち、流入孔143とダイヤフラム120との最短距離)が、流出孔149からダイヤフラム120における流出孔149に対向する部分までの距離B(即ち、流出孔149とダイヤフラム120との最短距離)よりも短くなるように形成されている。そのため、バルブ101が開くときに、受圧板125はまず、バルブ室140の底面上における流入孔143の周囲に位置する突出部144と当接する。そのため、この実施形態のバルブ101によれば、受圧板125やダイヤフラム120がバルブ筐体130の流出孔149を塞ぐことを抑制できる。
【0077】
ここで、ダイヤフラム120の変位量について、
図7(A)(B)に示すバルブ101と、
図8(A)(B)に示すバルブ201とを比較しながら説明する。
【0078】
図7(A)は、本発明の実施形態に係るバルブ101に備えられるダイヤフラム120及び受圧板125の前記流入孔143と前記バルブ室140とが遮断状態のとき、すなわち弁閉時の断面図である。
図7(B)は、本発明の実施形態に係るバルブ101に備えられるダイヤフラム120及び受圧板125の前記流入孔143と前記バルブ室140とが接続状態のとき、すなわち弁開時の断面図である。
図8(A)は、本発明の変形例に係るバルブ201に備えられるダイヤフラム120A及び受圧板125Aの弁閉時の断面図である。
図8(B)は、本発明の変形例に係るバルブ201に備えられるダイヤフラム120及び受圧板125の弁開時の断面図である。
【0079】
図8に示すバルブ201が、
図7に示すバルブ101と相違する点は、ダイヤフラム120及び受圧板125を接着させた点であり、その他の点については同じである。
【0080】
ダイヤフラム120及び受圧板125を非接着状態で当接させたバルブ101では、流入孔143とバルブ室140とが接続状態となるとき、
図8(B)に示すように、受圧板125がダイヤフラム120の変形を妨げない。受圧板125は、ダイヤフラム120の中央部122の変位に伴って弁体部151側へ変位する。そのため、バルブ101では、受圧板125を配置することによってダイヤフラム120の変位量dが低下しない。
【0081】
これに対して、ダイヤフラム120A及び受圧板125Aを接着させたバルブ201では、流入孔143とバルブ室140とが接続状態となるとき、
図8(B)に示すように、受圧板125がダイヤフラム120の変形を妨げる。このため、バルブ201では、受圧板125を配置することによってダイヤフラム120の変位量dが小さくなる。
【0082】
従って、この実施形態のバルブ101によれば、ダイヤフラム120の変位量dを低下させずに、ダイヤフラム120の撓みを抑制することができる。
【0083】
また、ダイヤフラム120がゴムで形成されている場合、ダイヤフラム120の変位は大きいものの、ガス透過性が大きいためガス漏れのおそれがある。このため、ダイヤフラム120の材質は樹脂であることが好ましい。液体を流体としてバルブ101に使用した場合、液体の表面張力が大きいため、気体を流体としてバルブ101に使用した場合より大きな流体の流路が必要となるが、この実施形態のバルブ101ではダイヤフラム120の変位量dが大きいため、ダイヤフラム120の材質が樹脂であってもメタノールの流路を十分に確保できる。
【0084】
また、この実施形態におけるバルブ101は、受圧板125をダイヤフラム120及び弁体部151に接着する必要がないため、接着工程を使用せずに製造できる。そのため、この実施形態におけるバルブ101によれば、低コストで製造できる。
【0085】
また、この実施形態におけるバルブ101は、接着工程を使用せずに製造できるため、接着剤の成分がメタノール中に溶出することがない。さらに、バルブ筐体130のメタノールと接する部分141、144、145、148及び受圧板125の材質は全て樹脂であり、ダイヤフラム120と弁部150の材質もゴムであるため、金属イオンがメタノール中に溶出することもない。そのため、この実施形態のバルブ101では、接着剤の成分や金属イオンの溶出によるDMFCの特性の劣化も起こらない。
【0086】
従って、この実施形態のバルブ101を用いることで、当該バルブ101を備える燃料電池システム100においても同様の効果を奏する。
【0087】
《その他の実施形態》
前記実施形態では活性の高い流体としてメタノールを用いているが、当該流体が、気体や、液体、気液混合流、固液混合流、固気混合流などのいずれであっても適用できる。
【0088】
なお、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。