【実施例】
【0044】
以下、本発明の有効性について実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の本発明における中空糸膜の評価方法は以下の通りである。
【0045】
(破断強伸度、降伏強伸度の測定)
中空糸膜の破断強伸度および降伏強伸度は、引っ張り試験機(東洋ボールドウイン社製テンシロンUTMII)を用いて測定する。全長約15cmの単糸をチャック(チャック間距離10cm)に固定し、100mm/分の速度でチャックに連結したフルスケール100gのセルを上昇させる。チャート紙から中空糸膜が切れた破断伸度と破断強度を読み取り、S−Sカーブとする。初期勾配を延長させた補助線と、極大点における傾きゼロの補助線が交わる点を降伏点とし、その点における強度を降伏強度、伸度を降伏伸度とする。
【0046】
(断面構造の観察(透過型電子顕微鏡(TEM)))
評価する中空糸膜を水洗した後、エタノールで脱水する。脱水後、エタノールを酢酸3‐メチルブチルに置換し、臨界点乾燥装置(メーカー名、装置型式)を用いて膜を乾燥する。乾燥した膜を樹脂包埋し、ミクロトームを用いて超薄切片を作製した。作製した超薄切片を四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色し、カーボン蒸着を施した。透過電子顕微鏡(日本電子株式会社製JEM2100)を用いて、加速電圧200kVで膜全体の構造を観察した。
【0047】
(断面構造の観察(走査型電子顕微鏡(SEM)))
中空糸膜を軽く水洗しグリセリンを除去したサンプルを液体窒素にて凍結して切断する。得られたサンプルを切断面が観察できるように試料台に固定し、スパッタリングによりカーボン蒸着を行う。カーボン蒸着したサンプルを走査型電子顕微鏡(日立製S-2500)にて観察を行う。なお、加速電圧は10kV、倍率は10,000倍とした。
【0048】
(中空糸膜の内径、外径、膜厚の測定)
これらの測定は、中空形成材を洗浄、除去した後、中空糸膜を乾燥させた形態で観察する。乾燥方法は問わないが、乾燥により著しく形態が変化する場合には中空形成材を洗浄、除去したのち、純水で完全に置換した後、湿潤状態で形態を観察する。中空糸膜の内径、外径および膜厚は、中空糸膜をスライドグラスの中央に開けられたφ3mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当本数通し、スライドグラスの上下面でカミソリによりカットし、中空糸膜断面サンプルを得た後、投影機Nikon-V-12Aを用いて中空糸膜断面の短径、長径を測定することにより得られる。中空糸膜断面1個につき2方向の短径、長径を測定し、それぞれの算術平均値を中空糸膜断面1個の内径および外径とし、膜厚は(外径−内径)/2で算出した。5断面について同様に測定を行い、その平均値を内径、外径、膜厚とした。
【0049】
(空隙率の測定)
中空糸膜に対する空隙率の測定は以下のように測定した。
十分に純水に浸漬させた中空糸束を900rpmの回転数で5分間遠心脱液し、膜孔に純水が詰った状態の中空糸の重量(W)を測定する。その後、乾燥機中で絶乾し、中空糸のみの重量(P)を測定し、空隙率(φ)を計算した。
φ(%)=W/(W+P/ポリマーの密度)×100
【0050】
(膜孔形保持剤(グリセリン)付着率の測定)
中空糸膜に対する膜孔形保持剤グリセリン付着率は、以下のように測定した。
適当量(約30g)の中空糸膜を用意する。ループ状でもバンドル状でも構わない。必要に応じて中空糸内部に芯材がある場合はこれを除去する。中空糸膜を完全に乾燥させ重量Wを測定する。その後、中空糸膜を約40℃の水に浸漬させ、十分に洗浄した後、120℃の乾熱オーブンで2時間乾燥させ、重量Pを測定する。次に下記式により中空糸膜に対する膜孔形保持剤の付着率G(wt%)を計算した。
G(wt%)=(W−P)÷W×100
【0051】
(中空糸膜に付着する液滴の測定)
中空糸膜を約50mmの長さ分切り取り、ペトリ皿に入れて密封した後、光学顕微鏡にて倍率40倍で観察した。視野内に存在する液滴の数と大きさを測定した。なお、ごく微小の液滴については、中空糸膜品質や組立て不良につながる可能性が低いため、最大径が約15μm以上の大きさのものを測定対象とした。液滴が多量に存在するとモジュール組立て不良が発生する頻度が高くなる。
【0052】
(中空糸膜モジュールの作製)
中空糸膜を複数本束ね、およそ30cmの長さに切断し、ポリエチレンフィルムで巻いて中空糸膜束とした。この中空糸膜束を円筒型のポリカーボネート製モジュールケースに挿入し、両末端をウレタンポッティング剤で固めた。端部を切断して、中空糸膜の両末端が開口したモジュールを得た。中空糸膜の本数およびモジュールケースの大きさは、端部充填率が55%、内径基準の膜面積が1.5m
2となるよう適宜設定した。
【0053】
(中空糸膜モジュールの組立て性の評価)
1.分離膜モジュールの接着性の試験
端部接着部分に剥離の見られない分離膜モジュールの中空部分と中空糸膜の外側部分に純水を満たし、モジュールの中空糸膜の外側部分に加圧空気を送り、端部を密閉した状態でおよそ24時間、最高使用時の1.5倍の圧力をかけた。24時間後、端部接着部分の観察を行い剥離の状態を確認した。この時、剥離のない状態を合格とした。
2.中空糸膜束の偏り
作製したモジュールをケースの外側から観察し、中空糸膜束の偏りや割れが生じていないものを合格とした。
3.接着不良
作製したモジュールの接着端部を目視により、またリーク試験により接着樹脂の充填不良がないか確認する。リーク試験は、モジュールを水中に浸漬し、透析液側より加圧エアを送り込みモジュール端部よりエア漏れの有無を確認する。
【0054】
(透水性の測定)
モジュールの血液出口部回路(圧力測定点よりも出口側)を鉗子で挟んで封止した。37℃に保温した純水を加圧タンクに入れ、レギュレーターにより圧力を制御しながら、37℃恒温槽で保温したモジュールの血液流路側へ純水を送り、透析液側から流出した濾液量を測定した。膜間圧力差(TMP)は
TMP=(Pi+Po)/2
とする。ここでPiは透析器入り口側圧力、Poは透析器出口側圧力である。TMPを4点変化させ濾過流量を測定し、それらの関係の傾きから透水性(mL/hr/mmHg)を算出した。このときTMPと濾過流量の相関係数は0.999以上でなくてはならない。また回路による圧力損失誤差を少なくするために、TMPは100mmHg以下の範囲で測定する。中空糸膜の透水性は膜面積とモジュールの透水性から算出する。
UFR(H)=UFR(D)/A
ここでUFR(H)は中空糸膜の透水性(mL/m
2/hr/mmHg)、UFR(D)はモジュールの透水性(mL/hr/mmHg)、Aはモジュールの膜面積(m
2)である。
【0055】
(β2MGのクリアランス測定)
透析会誌41(3)、p159〜167、2008年に示されたモジュール性能評価基準に準じ実施する。膜面積1.5m
2(中空糸膜内径基準)のモジュールに、総タンパク濃度6.5±0.5g/dlに調整し、37℃に保温したACD(acid-citrate-dextrose)添加牛血漿を血液側流量200ml/minで1時間循環する。次いでヒトβ2MG(遺伝子組み換え品、和光純薬製)を0.05〜0.1mg/lの濃度になるように添加した総タンパク質濃度6.5±0.5g/dlに調整し、37℃に保温したACD添加牛血漿を血液側流量200ml/minで血液側に流し、市販透析液を500ml/min、ろ過流量15ml/minで透析を実施する。このクリアランス評価はシングルパスで実施する。透析開始後、60分時点の血液入口、出口、透析液出口より採取した試験液のβ2MG濃度を測定する。クリアランスは以下の式で計算する。
CLβ15(ml/min)=200×[(200×CBi)−(185×CBo)]/(200×CBi)
ここで、CBi;血液入口部濃度、CBo;血液出口部濃度。
【0056】
(実施例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、30℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を80%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。(
図4、
図5参照)。
【0057】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0058】
(実施例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を110℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、100℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を100%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、実施例1と同様に中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0059】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0060】
(実施例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、30℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を80%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、20%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、実施例1と同様に中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0061】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0062】
(実施例4)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、30℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を80%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、80質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、実施例1と同様に中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0063】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、30℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を80%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は55%RHで行った。なお、ドライヤーの前後で中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0065】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0066】
(実施例6)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を90℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、40℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を90%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、15.5%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、93質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は45%RHで行った。なお、ドライヤーの前後で中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0067】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0068】
(比較例1)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.7質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.3質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管内の調湿は行わなかった。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理せずに用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0069】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0070】
本比較例においては、製膜溶液中のポリマー濃度を高めたことと紡糸管内の調湿を行わなかったため、粒子が十分成長しなかった。そのため、所期のβ2MGのクリアランスを得ることが出来なかった。また、HEPAフィルターで処理していない乾燥エアを使用したため、中空糸表面に異物が付着し、それが核となり、雰囲気中の水分を吸湿して液滴を形成し、モジュール接着性が悪くなったと思われる。
【0071】
(比較例2)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)19.0質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)56.7質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)24.3質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管内の調湿は行わなかった。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、10%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、傾きを3度とし、洗浄水が緩やかに下っていくように調整し、洗浄水と中空糸膜とが同じ方向に流れる並流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は72%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0072】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0073】
本比較例においては、比較例1の課題に加えて、グリセリンの掻き取りをしていないために、中空糸膜外表面に付着する過剰のグリセリンによって中空糸膜同士が固着し、モジュール組立ての際に接着樹脂が中空糸膜間に入り込ますモジュール組立て性が悪くなったと思われる。
【0074】
(比較例3)
セルローストリアセテート(ダイセル化学社製)15.5質量%、N-メチル-2-ピロリドン(NMP、三菱化学社製)59.15質量%およびトリエチレングリコール(TEG、三井化学社製)25.35質量%を加熱して均一に溶解し、ついで得られた製膜溶液の脱泡を行った。得られた製膜溶液を100℃に加温したチューブインオリフィスノズルから中空形成材として流動パラフィンとともに吐出し、紡糸管により外気と遮断された空中走行部を通過した後、凝固浴に浸漬した。紡糸管には、30℃の水蒸気を吹き込み管内湿度を80%RHとした。空中走行部の長さは20mm、紡糸管内を通過時間は0.02秒であった。40℃のNMP/TEG/水=10.5/4.5/85.0からなる第1凝固浴および第2凝固浴中で凝固、相分離させた。このとき、ドラフト比は7であった。第2凝固浴における延伸は、3%とした。凝固浴から曳き出した中空糸膜を30℃の水洗浴で洗浄した。このとき、水洗浴は、従来法による向流とした。水洗浴は7段とした。引き続き90℃、95質量%のグリセリン水溶液からなるグリセリン浴に浸漬した。グリセリン浴から曳き出した中空糸膜は、40℃のドライヤーで乾燥し、紡糸速度75m/minで巻き上げた。乾燥エアはHEPAフィルターで処理したものを用いた。また、巻き取り時の雰囲気湿度は30%RHで行った。なお、ドライヤーの前後において、中空糸膜をシリコーン製のスクレーパーを備えたローラーに接触させ過剰のグリセリンを除去した。
【0075】
得られた中空糸膜の内径は200μm、膜厚は15μmであった。本実施例で得られた中空糸膜の物性、性能評価結果を表1に示す。
【0076】
本比較例においては、第2凝固浴における延伸が低いことと、水洗浴を向流としたために、中空糸の降伏強度が低くなり、モジュール組み立て性が悪くなったと思われる。
【0077】
【表1】