(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5780373
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】極板搬送システム
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20150827BHJP
H01M 4/04 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M4/04 Z
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-24085(P2015-24085)
(22)【出願日】2015年2月10日
【審査請求日】2015年2月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】玉野 貴大
(72)【発明者】
【氏名】三輪 芳揮
【審査官】
冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−235468(JP,A)
【文献】
特開平08−077998(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 4/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電部の対向する一対の辺に正対する一対の耳部を備えてなる集電体に活物質が充填されてなる極板を、無端の1以上の支持部材により極板面を支持しながら搬送方向に搬送する搬送装置と、
前記搬送装置により搬送されている前記極板の前記一対の耳部が前記搬送方向と直交する直交方向に並ぶように、前記無端の1以上の支持部材に対する前記極板の位置を矯正する矯正装置とを備えてなる極板搬送システムであって、
前記搬送装置は、前記一対の耳部が前記無端の1以上の支持部材よりも前記直交方向の外側に位置するように前記極板を搬送し、
前記矯正装置は、前記無端の1以上の支持部材の前記直交方向の両側に配置されて、前記直交方向に正対する一対の矯正具を備えており、
前記一対の矯正具はそれぞれ、前記搬送方向と平行な方向に軸線が延びる回転軸と、前記回転軸の外周面に設けられて、前記外周面の回りを回りながら前記軸線に沿って延びる螺旋状のガイド壁部を備えており、
前記搬送装置によって搬送されている前記極板の前記極板面と直交し且つ前記一対の矯正具の間の中央に位置して前記搬送方向に延びる仮想面に対し、前記一対の矯正具のそれぞれの前記回転軸及び前記螺旋状のガイド壁部が、鏡面対称となるように前記一対の矯正具は位置決めされており、
前記一対の矯正具は、それぞれの前記回転軸を中心にして異なる方向に同期して回転駆動され、
前記一対の矯正具のそれぞれの前記螺旋状のガイド壁部の形状は、前記一対の矯正具が同期して回転している状態で、前記螺旋状のガイド壁部の側面が前記極板の前記一対の耳部と接触して前記一対の耳部に前記搬送方向に向かう力を加えるように定められており、
前記一対の矯正具のそれぞれの前記回転軸の形状は、前記一対の矯正具が同期して回転駆動している状態で、前記回転軸の外周面が前記極板の前記一対の耳部と接触して前記一対の耳部が仮想面に対して鏡面対称となるように定められていることを特徴とする極板搬送システム。
【請求項2】
前記一対の矯正具のそれぞれの前記回転軸の前記外周面の形状は、前記搬送方向に向かうに従って直径が大きくなる形状を有しており、且つ前記一対の矯正具の前記回転軸の前記外周面の最大直径間の距離が、前記一対の耳部の端部間の距離よりも僅かに大きくなるように前記一対の矯正具の間隔が定められている請求項1に記載の極板搬送システム。
【請求項3】
前記一対の矯正具のそれぞれの前記螺旋状のガイド壁部は、前記回転軸の前記外周面に沿って少なくとも1ターンを形成している請求項1または2に記載の極板搬送システム。
【請求項4】
前記一対の矯正具のそれぞれの前記螺旋状のガイド壁部は、前記回転軸の前記外周面に2ターン以上を形成しており、前記螺旋状のガイド壁部の隣り合う二つの外縁部間のピッチ寸法が等しいか又は前記搬送方向に向かうに従って徐々に小さくなり、且つ前記ピッチ寸法の最小寸法が前記耳部の前記搬送方向に沿う幅寸法よりも僅かに大きい寸法になる形状を有している請求項3に記載の極板搬送システム。
【請求項5】
前記螺旋状のガイド壁部は、前記ガイド壁部の外縁部が、前記回転軸の前記外周面の直径の最大寸法よりも大きな直径を有する仮想円筒面に内接している請求項1乃至4のいずれか1項に記載の極板搬送システム。
【請求項6】
前記一対の矯正具は、停止状態にあるときから回転を開始すると、前記螺旋状のガイド壁部の前記搬送方向とは反対側に位置する終端部が、前記搬送装置によって搬送されてくる前記極板の前記耳部の下方端縁と接触する姿勢で停止している請求項1乃至5のいずれか1項に記載の極板搬送システム。
【請求項7】
前記極板の前記一対の耳部が前記一対の矯正具のそれぞれの前記螺旋状のガイド壁部と接触する直前または接触した後に、前記極板が搬送されてきたことを検出する極板検出用センサが設けられており、
前記極板検出用センサの検出出力に基づいて前記一対の矯正具の前記回転軸の回転を開始する請求項6に記載の極板搬送システム。
【請求項8】
前記極板の前記活物質が未乾燥状態にあり、
前記無端の1以上の支持部材が、前記直交方向に間隔を開けて配置された2以上の無端ベルトからなる請求項1乃至7のいずれか1項に記載の極板搬送システム。
【請求項9】
前記一対の矯正具は、前記直交方向に相互の位置関係が調整可能である請求項1乃至8のいずれか1項に記載の極板搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集電部の対向する一対の辺に正対する一対の耳部を備えてなる集電体に活物質が充填されてなる極板を搬送する極板搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
WO 2014/087473 A1(特許文献1)には、集電体の両面にペースト状活物質が充填されてなるペースト状活物質層を備えた未乾燥極板を乾燥機に搬送する搬送ラインが開示されている。この搬送ラインでは、極板の搬送方向と直交する幅方向に所定の間隔を開けて配置されて移動する一対のループ状搬送レーンを備えている。
【0003】
そして一対のループ状搬送レーンには、極板が備えた一対の耳部と係止して極板を垂下させた状態で搬送することを可能にする複数の係止部が、搬送方向に所定の間隔を開けて設けられている。この一対のループ状搬送レーンの係止部に、一対の耳部を備えてなる極板の耳部を係止させる作業を自動化するためには、一対のループ状搬送レーンの手前で極板の姿勢が常に同じ姿勢になっていなければ、ハンドリング装置で確実に極板の耳部を一対のループ状搬送レーンの係止部に係止させることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO 2014/087473 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来は、極板を一定の姿勢で搬送するのに適した極板搬送システムがなく、どうしても作業者が極板の姿勢を監視して、手作業で搬送される極板の姿勢の補正を行っていた。
【0006】
本発明の目的は、搬送装置により搬送されている極板の一対の耳部が搬送方向と直交する直交方向に並ぶように、極板の位置を矯正する矯正装置を備えてなる極板搬送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、集電部の対向する一対の辺に正対する一対の耳部を備えてなる集電体に活物質が充填されてなる極板を、無端の1以上の支持部材により極板面を支持しながら搬送方向に搬送する搬送装置と、搬送装置により搬送されている極板の一対の耳部が搬送方向と直交する直交方向に並ぶように、無端の1以上の支持部材に対する極板の位置を矯正する矯正装置とを備えてなる極板搬送システムを対象とする。
【0008】
搬送装置は、一対の耳部が前記無端の1以上の支持部材よりも前記直交方向の外側に位置するように極板を搬送する。矯正装置は、無端の1以上の支持部材の直交方向の両側に配置されて、直交方向に正対する一対の矯正具を備えている。一対の矯正具はそれぞれ、搬送方向と平行な方向に軸線が延びる回転軸と、回転軸の外周面に設けられて、外周面の回りを回りながら軸線に沿って延びる螺旋状のガイド壁部を備えている。そして搬送装置によって搬送されている極板の極板面と直交し且つ一対の矯正具の間の中央に位置して搬送方向に延びる仮想面に対し、一対の矯正具のそれぞれの回転軸及び螺旋状のガイド壁部が、鏡面対称となるように一対の矯正具は位置決めされている。一対の矯正具は、それぞれの回転軸を中心にして異なる方向に同期して回転駆動される。そして一対の矯正具のそれぞれの螺旋状のガイド壁部の形状は、一対の矯正具が同期して回転している状態で、螺旋状のガイド壁部の側面が極板の一対の耳部と接触して一対の耳部に搬送方向に向かう力を加えるように定められている。また一対の矯正具のそれぞれの回転軸の形状は、一対の矯正具が同期して回転駆動している状態で、回転軸の外周面が極板の一対の耳部と接触して一対の耳部が仮想面に対して鏡面対称となるように定められている。
【0009】
本発明の極板搬送システムによれば、搬送装置によって搬送されてくる極板の一対の耳部が、搬送方向と直交する直交方向に並んでいないときでも、一対の矯正具のそれぞれの回転軸及び螺旋状のガイド壁部が回転することにより、一対の耳部に搬送方向に向かう力が加えられて、極板は一対の耳部が、搬送方向と直交する直交方向に並ぶように姿勢が矯正される。したがって本発明によれば、搬送装置により搬送されて来た極板の一対の耳部が搬送方向と直交する直交方向に並ぶように自動で矯正することができる。
【0010】
一対の矯正具のそれぞれの回転軸の外周面の形状は、搬送方向に向かうに従って直径が大きくなる形状を有しており、且つ一対の矯正具の回転軸の外周面の最大直径間の距離が、一対の耳部の端部間の距離よりも僅かに大きくなるように一対の矯正具の間隔が定められているのが好ましい。このような形状を採用すると、無理なく極板の一対の耳部と回転軸の外周面とが接触して、搬送方向と直交する直交方向への極板の位置決めをスムーズに実現できる。
【0011】
また一対の矯正具のそれぞれの螺旋状のガイド壁部は、回転軸の外周面に沿って少なくとも1ターンを形成していることが好ましい。ガイド壁部が、回転軸の外周面に沿って少なくとも1ターンを形成していれば、確実に搬送装置により搬送されて来た極板の一対の耳部を搬送方向と直交する直交方向に並べることができる。
【0012】
また一対の矯正具のそれぞれの螺旋状のガイド壁部は、回転軸の外周面に2ターン以上を形成されているときには、螺旋状のガイド壁部の隣り合う二つの外縁部間のピッチ寸法が等しいか又は搬送方向に向かうに従って徐々に小さくなり、且つピッチ寸法の最小寸法が耳部の搬送方向に沿う幅寸法よりも僅かに大きい寸法になる形状を有しているのが好ましい。このような形状にすると、搬送装置によって搬送されてくる極板の一対の耳部をつなぐ仮想直線と直交方向に延びる仮想直線との間の角度が大きくなった場合でも、大半の極板を一対の矯正具で受け入れて、その姿勢を矯正することができる。
【0013】
螺旋状のガイド壁部は、ガイド壁部の外縁部が、回転軸の直径の最大寸法よりも大きな直径を有する仮想円筒面に内接していることが好ましい。ガイド壁部の形状をこのようにすると、一対の耳部をしっかりとガイドすることができる。
【0014】
一対の矯正具は、停止状態にあるときから回転を開始すると、螺旋状のガイド壁部の搬送方向とは反対側に位置する終端部が、搬送装置によって搬送されてくる極板の耳部の下方端縁と接触する姿勢で停止しているのが好ましい。この姿勢で一対の矯正具が停止状態にあると、極板を迎え入れる側に形成される一対の螺旋状のガイド壁部の間の間隔寸法を最大にすることができる。したがって搬送装置によって搬送されてくる極板の一対の耳部をつなぐ仮想直線と直交方向に延びる仮想直線との間の角度が大きくなった場合でも、大半の極板を一対の矯正具で受け入れて、その姿勢を矯正することができる。
【0015】
極板の一対の耳部が一対の矯正具のそれぞれの螺旋状のガイド壁部と接触する直前または接触した後に、極板が搬送されてきたことを検出する極板検出用センサを設け、極板検出用センサの検出出力に基づいて一対の矯正具の回転軸の回転を開始するようにする。このようにすると、正しい回転位置で停止している一対の矯正具で、確実に極板を受け入れて、一対の矯正具により極板の姿勢を矯正することができる。
【0016】
極板乾燥装置に極板を搬送する場合には、極板の活物質が未乾燥状態にある。そして無端の1以上の支持部材が、直交方向に間隔を開けて配置された2以上の無端ベルトからなるのが好ましい。なお本発明の極板搬送システムは、極板乾燥装置の前段だけでなく、他の工程でも利用できるのは勿論である。
【0017】
一対の矯正具は、搬送方向と直交する方向に相互の位置関係が調整可能であるのが好ましい。言い換えると、一対の矯正具は相互間の間隔寸法を調整することが可能であるのが好ましい。このようにすると、一対の耳部間の距離が異なる、複数種類の極板の搬送に本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】(a)(b)(c)はそれぞれ、本発明の極板搬送システムの一つの実施の形態に含まれる矯正装置と搬送装置との要部を示す平面図である。
【
図2】(a)(b)(c)はそれぞれ、
図1の実施の形態の矯正装置の拡大された正面図、側面図及び背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施の形態について説明する。
図1(a)(b)(c)には、本実施の形態の極板搬送システムに含まれる矯正装置13と搬送装置であるベルトコンベア3の要部、及び搬送の対象となる極板5が示されている。
図1においては、
図1(c)→
図1(b)→
図1(a)の順に時間が経過している。極板搬送システムが搬送する極板5は、平面で見たときの輪郭形状が方形の集電部7と、集電部7の対向する短辺71,72からそれぞれ
図1で見て左右方向に突出する一対の耳部(9L,9R)とからなる。極板5には、集電部7に活物質(図示していない)が充填されている。
図1(a)(b)(c)においては、左右の耳部をそれぞれ、左耳部9L及び右耳部9Rとして図示する。
【0020】
ベルトコンベア3は、支持部材を構成する無端の4本のベルト11を備えている。4本のベルト11は、極板5の集電部7の一面に接する支持面を形成しており、支持面の上に極板5を支持しながら、
図1(c)に矢印Dで示す搬送方向に極板5を搬送する。このとき極板5は、極板5の左耳部9L及び右耳部9Rが各ベルト11よりも搬送方向Dに直交する直交方向(
図1で見た左右方向)の外側に位置する姿勢で搬送される。例えばスプロケットやモータ等のベルトコンベア3を構成するその他の部材は本発明と直接関係しないので図示を省略する。
【0021】
なお
図1に示す実施の形態においては、ベルト11は水平な支持面を形成し、直線的な搬送方向Dに延びているが、少なくとも矯正装置1の設けられている地点では支持面は水平であり、搬送方向Dは直線に保たれていることが好ましい。しかしながら矯正装置13の設けられていない経路部分においては、支持面は水平ではなくてもよく、搬送方向Dは湾曲していてもよい。本実施の形態の極板搬送システムにおいて、矯正装置13は、例えば未乾燥の極板5を極板乾燥装置に搬送する搬送ラインに到達する直前の位置に配置される。しかし矯正装置13の設置位置は、これに限定されるものではない。また搬送途中で極板の姿勢が変わる可能性がある場合には、矯正装置が1つの搬送経路に複数設けられていてもよいのは勿論である。また本実施の形態の極板搬送システムは、極板乾燥装置の前段だけでなく、他の工程においても利用可能であることは言うまでもない。
【0022】
矯正装置13は、ベルトコンベア3により搬送されている極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rとが搬送方向Dと直交する直交方向(左右方向)に並んでいる所定の姿勢になるように、4つのベルト11に対する極板5の位置を矯正する。本実施の形態で用いる矯正装置13は、搬送方向Dと直交する直交方向の両側(ベルト11の両側)に配置されて、直交方向に正対する一対の矯正具1L,1Rを備えている。一対の矯正具はそれぞれ、
図1で見て左側に配置されたものが矯正具1L、右側に配置されたものが矯正具1Rとして図示されている。
【0023】
図2(a)(b)(c)に示すように、矯正具1R(1L)は、回転軸15と、回転軸15の外周面に設けられて、回転軸15の外周面の回りを回りながら軸線に沿って延びる螺旋状のガイド壁部17を備えている。矯正具1R及び矯正具1Lは、
図1に示すように、回転軸15の軸線が搬送方向Dと平行な方向に延びるように配置されている。また一対の矯正具1Lと矯正具1Rの回転軸15の軸線は、回転軸15の外周面が確実に左耳部9Lと右耳部9Rに当接するように、ベルト11により形成される支持面を直交方向(左右方向)に延長した仮想平面に含まれるように配置される。
【0024】
一対の矯正具1Lと矯正具1Rそれぞれの螺旋状のガイド壁部17は、相互に鏡面対称形状である。すなわち一対の矯正具1Lと矯正具1Rそれぞれの螺旋状のガイド壁部17は高さ、厚さ及びピッチは同一寸法である。但し一対の矯正具1Lと矯正具1Rが、回る方向は、逆方向である。一対の矯正具1Lと矯正具1Rそれぞれが配置される位置及び姿勢も相互に鏡面対称となるように位置決めされている。すなわち一対の矯正具1Lと矯正具1Rは、ベルトコンベア3によって搬送されている極板5の極板面と直交し且つ一対の矯正具1Lと矯正具1Rの間の中央に位置して、極板面と直交する方向及び搬送方向Dに延びる仮想面に対し、一対の矯正具1Lと矯正具1Rのそれぞれの回転軸15及び螺旋状のガイド壁部17が、鏡面対称となるように一対の矯正具1Lと矯正具1Rとは位置決めされている。
【0025】
一対の矯正具1Lと矯正具1Rは、それぞれ回転している間も鏡面対称を維持している。すなわち一対の矯正具1Lと矯正具1Rは、それぞれの回転軸15を中心にして、異なる方向に同期して回転駆動される。矯正具1Lと矯正具1Rの回転駆動機構や伝達機構は、図示を省略する。
【0026】
また、一対の矯正具1Lと矯正具1Rのそれぞれの螺旋状のガイド壁部17の形状は、一対の矯正具1Lと矯正具1Rが同期して回転している状態で、一対の矯正具1Lと矯正具1Rの螺旋状のガイド壁部17の側面がそれぞれ極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rの下側端縁(搬送方向と反対方向に位置する耳部の縁)と接触して一対の左耳部9Lと右耳部9Rに搬送方向Dに向かう力を加えるように定められている。一対の矯正具1Lと矯正具1Rによる搬送方向Dに向かわせる速度は、ベルト11の駆動速度と同じになるように回転速度が調整されていることが好ましいが、条件に応じて僅かにより遅く又はより速くする方が望ましい場合もある。
【0027】
さらにまた、一対の矯正具1Lと矯正具1Rのそれぞれの回転軸15の形状は、一対の矯正具1Lと矯正具1Rが同期して回転駆動している状態で、回転軸15の外周面が極板5の一対の左耳部9L及び右耳部9Rと接触して一対の左耳部9Lと右耳部9Rが前述の仮想面に対して鏡面対称となるように定められている。回転軸15の外周面の形状は截頭された円錐形状であり、搬送方向Dに向かうに従って、すなわち
図2では正面から背面に向かうに従って、直径が大きくなる形状を有している。
図1に示されているように、一対の矯正具1Lと矯正具1Rの回転軸15の外周面の最大直径間の距離が、左耳部9Lと右耳部9Rの端部間の距離よりも僅かに大きくなるように、一対の矯正具1Lと矯正具1Rの間隔が定められており、これにより極板5の位置決めをスムーズに実現できる。位置決め過程については後述する。
【0028】
本実施の形態において、一対の矯正具1Lと矯正具1Rそれぞれの螺旋状のガイド壁部17は、回転軸15の外周面に沿って2ターン半を形成している。なお理論的には、螺旋状のガイド壁部17が、回転軸15の外周面に沿って少なくとも1ターンを形成していれば、ベルトコンベア3により搬送されて来た極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rを搬送方向Dと直交する直交方向に並べることができる。
【0029】
また本実施の形態においては、一対の矯正具1Rと矯正具1Lのそれぞれの螺旋状のガイド壁部17は、回転軸15の外周面に2ターン半が形成されており、螺旋状のガイド壁部17の隣り合う二つの外縁部間のピッチ寸法は、
図2(b)に示すように、搬送方向Dに向かうに従って徐々に小さくなり、且つピッチ寸法の最小寸法が搬送方向に沿う耳部9の幅寸法よりも僅かに大きい寸法になる形状を有している。すなわち、搬送方向Dとは反対側に位置する終端部19におけるピッチ寸法P1よりも、搬送方向Dに1ターン向かっているピッチ寸法P2は、僅かに小さくなっており、搬送方向D側に位置する終端部21におけるピッチ寸法P3はさらに僅かに小さくなっている。但し、最小のピッチ寸法P3でも、右耳部9Rの搬送方向に沿う幅寸法よりも僅かに大きい寸法になっている。このような形状にすると、ベルトコンベア3によって搬送されてくる極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rとをつなぐ仮想直線と直交方向に延びる仮想直線との間の角度が大きくなった場合でも、大半の極板5を一対の矯正具1Rと矯正具1Lで受け入れて、その姿勢を矯正することができる。
【0030】
本実施の形態において、一対の矯正具1Lと矯正具1Rそれぞれの螺旋状のガイド壁部17は、螺旋状のガイド壁部17の外縁部が、回転軸15の直径の最大寸法よりも大きな直径を有する仮想円筒面に内接している。螺旋状のガイド壁部17の形状をこのようにすると、一対の左耳部9Lと右耳部9Rをしっかりとガイドすることができる。
【0031】
一対の矯正具1Rと矯正具1Lはそれぞれ、停止状態にあるときから回転を開始すると、螺旋状のガイド壁部17の搬送方向Dとは反対側に位置する終端部19が、ベルトコンベア3によって搬送されてくる極板5の左耳部9Lと右耳部9Rの下方端縁と接触する姿勢で停止して、極板5の到来を待機している。
図2(a)に示すように、矯正具1R(1L)は、螺旋状のガイド壁部17の終端部19が最下方に位置する姿勢で停止している。ベルトコンベア3上を搬送されてくる極板5が矯正具1を配置している箇所に近付くと、一対の矯正具1Lと矯正具1Rが
図2(a)で見て時計回り方向と反時計回り方向に回転を開始し、終端部19が最下方から上方へと向かうことになる。この姿勢で一対の矯正具1Rと矯正具1Lが停止状態にあると、極板5を迎え入れる側に形成される一対の螺旋状のガイド壁部17の間の間隔寸法を最大にすることができる。このようにすれば、ベルトコンベア3によって搬送されてくる極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rをつなぐ仮想直線と直交方向に延びる仮想直線との間の角度がかなり大きくても、極板5を一対の矯正具1Rと矯正具1Lで受け入れて、その姿勢を矯正することができる。
【0032】
本実施の形態には、極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rが一対の矯正具1Rと矯正具1Lのそれぞれの螺旋状のガイド壁部17と接触する直前に、極板5が搬送されてきたことを検出する一対の極板検出用センサSが設けられている。そして一対の極板検出用センサSの検出出力に基づいて、図示しない駆動装置は、一対の矯正具1Rと矯正具1Lの回転軸15の回転を開始する。このようにすると、正しい回転位置で停止している一対の矯正具1Rと矯正具1Lの螺旋状のガイド壁部17の間に、極板5を確実に受け入れ、その後矯正具1Rと矯正具1Lの螺旋状のガイド壁部17の側面が、極板5の左耳部9Lと右耳部9Rと接触して一対の左耳部9Lと右耳部9Rにそれぞれ搬送方向に向かう力を加える。そして回転している螺旋状のガイド壁部17によって一対の左耳部9Lと右耳部9Rが同時に押される状態になって、極板5の姿勢が矯正される。
【0033】
他の実施の形態においては、極板検出用センサSは、極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rが一対の矯正具1Rと矯正具1Lのそれぞれの螺旋状のガイド壁部17と接触した後に、極板5が搬送されてきたことを検出するように配置されている。このようにすると、直交方向から搬送方向D側にずれた左耳部9Lと右耳部9Rのいずれか一方が先に停止している螺旋状のガイド壁部17に突き当たる。その後に矯正具1Rと矯正具1Lが回転を開始するまでに、極板5が搬送方向Dに進むので、極板5の姿勢がある程度矯正される。その後は、回転するガイド壁部17によって一対の左耳部9Lと右耳部9Rが同時に押される状態になると、極板5の姿勢が矯正される。
【0034】
図示しない駆動装置は、回転を開始してから予め定められた回転速度と回数で(本実施の形態では0.5秒間に3回転)一対の矯正具1Rと矯正具1Lの回転軸15をそれぞれ同期して回転させた後、矯正具1R及び矯正具1Lの螺旋状のガイド壁部17の終端部19が最下方に位置する待機状態で回転軸の回転を停止する。
【0035】
極板検出用センサSとしては、超音波センサ、光センサ、磁気センサ、リミットスイッチ等が使用可能である。
【0036】
次に本実施の形態の動作について説明する。
【0037】
図1(c)は、ベルトコンベア3の支持面上を、左耳部9Lと右耳部9Rをつなぐ仮想直線と搬送方向Dと直交する直交方向(左右方向)に延びる仮想直線との間にずれを生じている極板5が搬送されてきて、右耳部9Rが矯正具1Rの螺旋状のガイド壁部17に接触した状態を示す。この状態では、極板5cの左耳部9Lは未だ矯正具1Lの螺旋状のガイド壁部17に接触していないが、極板検出用センサSが耳部の進入を検出して、左耳部9Lと右耳部9Rは同期して回転を開始する。さらに極板5が搬送方向Dに搬送されると共に、一対の矯正具1Lが回転軸15回りに回転して螺旋状のガイド壁部17の終端部19が最下方から上昇してくることにより、左耳部9Lは矯正具1Lの螺旋状のガイド壁部17のピッチの間に受け入れられる。これにより極板5は時計回り方向に回転して、一定の姿勢に近付く。さらに極板5が搬送方向Dに搬送されるにつれて、左耳部9Lと右耳部9Rがそれぞれ矯正具1Lと矯正具1Rの螺旋状のガイド壁部17の小さくなっていくピッチにより徐々に矯正されて、
図1(b)の状態に到る。この状態では、左耳部9Lと右耳部9Rが矯正具1Lと矯正具1Rの螺旋状のガイド壁部17のピッチの間に受け容れられつつ極板5が進む。その後、極板5は矯正具1Rの搬送方向Dに向かうに従って直径が大きくなる外周面に押されて、直交方向の図視左向きに移動し、一定の姿勢に近付いていく。そして
図1(a)のように矯正具1Lと矯正具1Rとの間を通過した状態では、極板5は左耳部9Lと右耳部9Rをつなぐ仮想直線が直交方向に沿った一定の姿勢に矯正される。
図1(a)のように矯正具1Lと矯正具1Rとの間を通過した状態では、一対の矯正具1Lと矯正具1Rの回転軸15の外周面の最大直径間の距離が左耳部9Lと右耳部9Rの端部間の距離とほぼ同一なので、極板5として示すように、その姿勢が矯正されることになる。
【0038】
以上のように本実施の形態の極板搬送システムによれば、ベルトコンベア3によって搬送されてくる極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rが、搬送方向Dと直交する直交方向に並んでいないときでも、一対の矯正具1Lと矯正具1Rのそれぞれの回転軸15及び螺旋状のガイド壁部17が回転することにより、一対の左耳部9Lと右耳部9Rに搬送方向Dに向かう力が加えられて、極板5は一対の左耳部9Lと右耳部9Rが搬送方向Dと直交する直交方向に並ぶように姿勢が矯正される。したがって本実施の形態によれば、ベルトコンベア3により搬送されて来た極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rが搬送方向Dと直交する直交方向に並ぶように自動で矯正することができる。
【0039】
また一対の矯正具1Lと矯正具1Rの回転軸15の外周面の形状は搬送方向Dに向かうに従って直径が大きくなり、且つ一対の矯正具1Lと矯正具1Rの回転軸15の外周面の最大直径間の距離が、一対の左耳部9Lと右耳部9Rの距離よりも僅かに大きくなるように一対の矯正具1Lと矯正具1Rの間隔が定められているので、無理なく極板5の一対の左耳部9Lと右耳部9Rと回転軸15の外周面とが接触して、搬送方向Dと直交する直交方向への極板の位置決めをスムーズに実現できる。
【0040】
上記実施の形態では、一対の矯正具1L及び1Rが、搬送方向Dと直交する方向に移動しない。しかし一対の矯正具1L及び1Rを、直交方向に相互の位置関係が調整可能にしてもよい。このようにすると、一対の矯正具は相互間の間隔寸法を変更することが可能になり、一対の耳部間の距離が異なる複数種類の極板を搬送することができ、汎用性が高くなる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、搬送装置により搬送されている極板の一対の耳部が搬送方向と直交する直交方向に並ぶように、極板の位置を矯正することができる。
【符号の説明】
【0042】
1L,1R 矯正具
3 ベルトコンベア
5 極板
7 集電体
9L 左耳部
9R 右耳部
11 ベルト
13 矯正装置
15 回転軸
17 螺旋状のガイド壁部
19,21 終端
S 極板検出用センサ
【要約】 (修正有)
【課題】搬送装置により搬送されている極板の一対の耳部が搬送方向と直交する直交方向に並ぶように、極板の位置を矯正する矯正装置を備えてなる極板搬送システムを提供する。
【解決手段】一対の矯正具1Lと矯正具1Rとが回転軸回りに回転すると、極板5の左耳部9Lと右耳部9Rが矯正具1Lと矯正具1Rの螺旋状のガイド壁部のピッチの間に受け入れられるとともに、矯正具1Rの搬送方向Dに向かうに従って直径が大きくなる外周面に押される。これにより極板5の姿勢が自動的に矯正される。
【選択図】
図1