特許第5780377号(P5780377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5780377情報処理システム、及びアプリケーションの移転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780377
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】情報処理システム、及びアプリケーションの移転方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 9/50 20060101AFI20150827BHJP
   G06F 9/46 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   G06F9/46 465Z
   G06F9/46 350
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-505539(P2015-505539)
(86)(22)【出願日】2014年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2014056597
(87)【国際公開番号】WO2014142217
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2013-53134(P2013-53134)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、総務省「大規模災害時に被災地の通信能力を緊急増強する技術の研究開発(大規模通信混雑時における通信処理機能のネットワーク化に関する研究開発)」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 隆史
【審査官】 漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−116852(JP,A)
【文献】 特開2003−316633(JP,A)
【文献】 特開2011−180889(JP,A)
【文献】 特開2012−203625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 9/50
G06F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションを仮想マシン部で稼働させる情報処理装置を有し、互いにネットワークで結ばれた複数の拠点の情報処理装置と、
前記拠点の任意の1つの情報処理装置が有する前記アプリケーションを、前記仮想マシン部を含めて他の拠点の情報処理装置に移転させる場合の制御を行うシステム管理・制御部と
を備え、
前記システム管理・制御部は、
前記アプリケーションを実行する仮想マシン部のマイグレーションを制御するマイグレーション制御部と、
アプリケーションを移転させる拠点の情報処理装置を決定する配置プラン部と、
アプリケーション毎に拠点別・アプリケーション別のバックアップ世代を把握するストレージ制御部と
を有し、
前記アプリケーションを移転させる候補の拠点であり、かつ、前記アプリケーションの実行に必要なデータをバックアップする拠点として、前記複数の拠点の情報処理装置の中から複数の拠点の情報処理装置を選定し、前記データを該複数の拠点の情報処理装置の各々に移動させて、該複数の拠点の情報処理装置の各々に保管させ、
前記配置プラン部は、前記アプリケーションの実行に必要なデータを、前記複数の拠点の中から選定した複数の拠点の情報処理装置に、前記バックアップ世代毎に配置し、
前記配置プラン部は、前記拠点の情報処理装置間でアプリケーションを移転させる場合に、前記アプリケーションの実行に必要なデータについて、移転先の拠点が記憶する当該データのバックアップ世代情報に基づいて、当該データの同期に必要な更新コストを計算する
ことを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記配置プラン部は、前記更新コストを、前記アプリケーション別及び前記拠点の情報処理装置別に計算し、該計算結果で得られた前記更新コストに対して所定の重みを加えた情報を参照して、全体のコストが最小になる拠点の情報処理装置を選ぶ
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記配置プラン部は、前記拠点間でアプリケーションを移転させる場合に、前記アプリケーションの実行に必要なデータについて、拠点の情報処理装置間のネットワーク遅延、データ同期のためのコスト、及び当該アプリケーションのデータアクセスに対する要求性能を考慮する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記ストレージ制御部は、前記拠点の情報処理装置間でアプリケーションを移転させる場合に、当該移転対象のアプリケーションについて、当該アプリケーションが使用するデータを記憶しているデータ領域との関連付けを解析する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
アプリケーションを仮想マシン部で稼働させる情報処理装置を有し、互いにネットワークで結ばれた複数の拠点の情報処理装置の任意の1つが有する前記アプリケーションを、前記仮想マシン部を含めて他の拠点の情報処理装置に移転させる場合に適用されるアプリケーションの移転方法であって、
アプリケーションを移転させる拠点の情報処理装置を決定する段階と、
アプリケーション毎に拠点の情報処理装置別・アプリケーション別のバックアップ世代を把握する段階と、
前記アプリケーションを移転させる候補の拠点であり、かつ、前記アプリケーションの実行に必要なデータをバックアップする拠点の情報処理装置として、前記複数の拠点の情報処理装置の中から複数の拠点の情報処理装置を選定し、前記データを該複数の拠点の情報処理装置の各々に移動させて、該複数の拠点の情報処理装置の各々に保管させる段階と
前記アプリケーションの実行に必要なデータを、前記複数の拠点の中から選定した複数の拠点の情報処理装置に、前記バックアップ世代毎に配置する段階と、
前記拠点の情報処理装置間でアプリケーションを移転させる場合に、前記アプリケーションの実行に必要なデータについて、移転先の拠点が記憶する当該データのバックアップ世代情報に基づいて、当該データの同期に必要な更新コストを計算する段階と
を備えることを特徴とするアプリケーションの移転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報処理システム、及びアプリケーションの移転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報処理システムの分野では、仮想マシン(以下、「VM」と略称することがある)で稼働するアプリケーション(ソフトウエア)を拠点間で移転させることが行われている。なお、VMの技術が進化したことにより、VM自体もマイグレーション(プログラムやデータの移転や変換)することができるようになっている。
その結果、アプリケーションを実行するVMを稼働させたまま、アプリケーションを他のサーバに移転することができる(以下では、このような形態のアプリケーションのマイグレーションのことを、単に「移転」と表現することがある)。但し、アプリケーションをそのまま移転できる先は、同一のネットワーク上の拠点に限定されている。この理由は、ネットワークアドレスをそのまま使えるようにするためである。
【0003】
しかしながら、最近は、アプリケーションの移転先に関する上記の制限も、解決できるようになった。即ち、ネットワーク技術の発展により、異なるネットワークが介在する、物理的に遠く離れた拠点間であっても、あたかも同一のネットワークに属しているかのような制御が可能になったのである。
しかしながら、データアクセスが頻繁に発生するアプリケーションについては、物理的に遠く離れた拠点間で移転させると、アプリケーションを実行する際の、データアクセスの性能が劣化するといった問題点が生じる。このため、このような物理的に遠く離れた拠点間でのアプリケーションの移転は、実用的ではない。
【0004】
このような背景に関連する技術としては、様々なものが知られている(例えば、特許文献1〜5参照。)。
【0005】
例えば、特許文献1には、データ復元システムとして、円滑にデータを復元して、アプリケーションプログラムを迅速かつ適切に再作動可能にすることが記載されている。
具体的には、アプリケーションプログラムが使用するデータベース中のデータのデータ構造に世代番号を付与する世代付与部を設ける。また、バックアップの際に、データベース中のデータと世代番号とを対応付けたバックアップデータを作成し、外部記憶媒体に記憶するバックアップデータ作成部を設ける。また、データ復元の際に、外部記憶媒体中の世代番号と、データを復元して作動させるべきアプリケーションプログラムの使用するデータベースに関するデータ構造の世代番号とを比較照合する世代認識部を設ける。さらに、世代番号間の相違に従って、外部記憶媒体中のデータのデータ構造を変換し、作動させるべきアプリケーションプログラムに適合させるデータ復元部を設ける。
【0006】
また、例えば、特許文献2には、データの一時保管を伴う状況にも対応させて、サービス提供のコストを最小にすることが記載されている。
具体的には、入力インターフェイスよりデータ保管依頼を受け付けて、当該データ保管依頼対象のデータを保管データサイズ以上の空き容量を有するデータセンタに格納するケースを検索する保管ケース検索部を備える。保管ケース検索部の上記の検索は、当該データ保管依頼が含む保管データサイズの情報と、データセンタテーブルとに基づいて行われる。
また、データセンタテーブルと保管データサイズとに基づいて、上記ケース毎に必要とされる保管コストを算定する保管コスト算定部を備える。また、データ保管テーブルに基づき、上記ケース毎に必要とされる、要求される保管レベルに達しない場合の違約コストを算定する違約コスト算定部を備える。さらに、上記ケース毎の総コストを算定し、当該総コストが最小となるケースに則した該当データセンタへのデータ格納を行うか、または該当データセンタへの保管依頼を行う、ケース選択部を備える。
【0007】
また、例えば、特許文献3には、仮想マシンのマイグレーション先を決定する方法で、とくに様々なアプリケーションの特性を考慮したマイグレーション制御を可能にする方法が記載されている。
具体的には、システム全体の最適化のためのマイグレーションポリシーだけでなく、アプリケーションに依存するマイグレーションポリシーをユーザが定義できる。即ち、両ポリシーを考慮しながら、アプリケーションが稼働する仮想マシンを稼働させたまま、アプリケーションを他のサーバに移転させる。
【0008】
また、例えば、特許文献4には、アプリケーションのマイグレーションを可能にするために、現在のパフォーマンス状態に準じてアプリケーションを実行することが可能な、1つ以上の適切なデータセンタを自動的に見つけることが記載されている。
具体的には、第1のデータセンタは、マイグレーションされるアプリケーションのためのネットワーク要件、サーバ要件、及びストレージ要件を指定するマイグレーション要求文書を参照する。これにより、第1のデータセンタは、マイグレーション後にアプリケーションの指定されたパフォーマンスレベルが維持されることを保証する。
一方、マイグレーションを受ける候補である第2のデータセンタは、指定された要件を受け取り、パフォーマンスインデックスおよび他の分析を用いてそのハードウェア、ソフトウェア、及び他の構成が指定された要件を満たすかを決定する。この決定結果は、要求側データセンタに返され、要求側データセンタはマイグレーションを実施するか否かを決定する。
【0009】
また、例えば、特許文献5には、外部装置に接続され、この外部装置にデータ処理サービスを提供するアプリケーションシステムが構築されている第1のデータセンタと、第1のデータセンタと同等の構成を有する第2のデータセンタとを備えているデータセンタシステムが記載されている。
より具体的に説明すると、このデータセンタシステムは、アプリケーションシステムが互いに通信可能に接続されている構成要素を有する。そして、このデータセンタシステムは、第1のデータセンタのアプリケーションシステムが有する構成要素の中から、第2のデータセンタに移動する候補となる第1の構成要素を選択する。そして、アプリケーションシステムに含まれる構成要素間の通信に関する必要条件を示す指標である結合度を、各構成要素について設定する。そして、移動候補である構成要素について設定されている結合度と、第1のデータセンタと第2のデータセンタとの間の通信回線の通信状況に関する情報であるデータセンタ間通信回線情報とを比較評価する。比較評価の結果、上記結合度がデータセンタ間通信回線情報より優れていると判定された場合に、第1の構成要素と共に第2のデータセンタに移動する必要のある構成要素を決定し、移動候補に加える。
このようにして、このデータセンタシステムによっては、複数のデータセンタにまたがるアプリケーションシステムについて、その詳細な構成を知ることなく、アプリケーションシステム内の特定の構成要素が具備すべき性能上の要件、又は構成要素間で維持すべき要件を満たしつつ、構成要素をデータセンタ間で移動させることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−066939号公報
【特許文献2】特許第4141937号公報
【特許文献3】特許第5104588号公報
【特許文献4】特許第5137709号公報
【特許文献5】特開2012−221049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上述のとおり、近年の情報処理システムは、VMで稼働するアプリケーションを拠点間で移転させることができるようになっている。しかしながら、一般に、アプリケーションの実行中にアクセスされるデータを拠点間で移動させる処理は、多くの動作時間を要する処理である。このため、アプリケーション自体は移動できたとしても、その後にアクセスされるデータは、拠点間を跨いでアクセスされるデータであるので、アクセス速度の遅いデータとなってしまう。そこで、この問題点を解決するために、データを予め拠点間で移動させておくと共に該拠点間で同期をとっておくことが行われている。
【0012】
しかしながら、データを予め拠点間で移動させておくと共に該拠点間で同期をとっておくためには、アプリケーションを移動させる拠点が決まっていなければならない。システム障害に対応して行われるバックアップであれば、移動先の拠点はバックアップサイトと決まっていた。しかし、クラウドコンピューティングの拠点間の相互連携が行われるシステムの場合には、アプリケーションの移動先は必ずしも固定的に限定されておらず、複数の候補の中から決められることになる。
【0013】
このため、このような場合は、拠点間で予めデータを移動させておく対策は現実的な対策ではない。このような事情が有るため、データアクセスが頻繁に発生するアプリケーションについては、該アプリケーションを拠点間で移動させると、その後に行われるデータアクセスの速度性能が大幅に劣化するため、実用的ではなかった。上述の特許文献1〜5に開示されている技術においても、この点が解消されていない。
【0014】
本発明の目的は、上述した課題を解決する情報処理システム、及びアプリケーションの移動方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、アプリケーションを仮想マシン部で稼働させる情報処理装置を有し、互いにネットワークで結ばれた複数の拠点の情報処理装置と、拠点の任意の1つの情報処理装置が有するアプリケーションを、仮想マシン部を含めて他の拠点の情報処理装置に移転させる場合の制御を行うシステム管理・制御部とを備え、システム管理・制御部は、アプリケーションを実行する仮想マシン部のマイグレーションを制御するマイグレーション制御部と、アプリケーションを移転させる拠点の情報処理装置を決定する配置プラン部と、アプリケーション毎に拠点別・アプリケーション別のバックアップ世代を把握するストレージ制御部とを有し、アプリケーションの実行に必要なデータをバックアップする拠点として、複数の拠点の情報処理装置の中から複数の拠点の情報処理装置を選定し、データを該複数の拠点の情報処理装置の各々に移動させて、該複数の拠点の情報処理装置の各々に保管させる情報処理システムを提供する。
【0016】
本発明はまた、アプリケーションを仮想マシン部で稼働させる情報処理装置を有し、互いにネットワークで結ばれた複数の拠点の情報処理装置の任意の1つが有する前記アプリケーションを、前記仮想マシン部を含めて他の拠点の情報処理装置に移転させる場合に適用されるアプリケーションの移転方法であって、アプリケーションを移転させる拠点の情報処理装置を決定する段階と、アプリケーション毎に拠点の情報処理装置別・アプリケーション別のバックアップ世代を把握する段階と、アプリケーションの実行に必要なデータをバックアップする拠点の情報処理装置として、複数の拠点の情報処理装置の中から複数の拠点の情報処理装置を選定し、データを該複数の拠点の情報処理装置の各々に移動させて、該複数の拠点の情報処理装置の各々に保管させる段階とを備える方法も提供する。
【0017】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、本発明となり得る。
【発明の効果】
【0018】
以上の説明から明らかなように、この発明によっては、常に複数拠点でバックアップを取る方法に比べて、バックアップのための運行コストを減らすことができる。即ち、アプリケーションの移転に伴って必要となるデータのバックアップ拠点の選定を最適化し、アクセス時間の短縮を可能にすると共に、拠点間ネットワークのトラフィックの削減を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムの拠点及び拠点間の一構成例を示す構成図である。
図2】同第1の実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムの拠点及び拠点間の一構成例を示す構成図である。
本発明の特徴的な部分は、まず、アプリケーションを移転させる拠点を選択する際に、データのバックアップを取っている拠点から優先して選択することである。
次に、データのバックアップやレプリケーションの拠点として複数の拠点を用意し、アプリケーションの移転先の拠点を、該複数拠点の内から選択することである。但し、一般に、複数拠点に同時にバックアップをとるのでは運行コストが高くなるため、バックアップの取り方については、下記に説明するような方法により、バックアップのコストを低減しながら取るものとし、アプリケーションを移転させる際には、過去の運行状態を考慮した上で、移転先の拠点を選択するものとする。
【0022】
以下、本発明でのバックアップの取り方について説明する。本発明によるバックアップの取り方は、バックアップの世代によって、バックアップ先の拠点を変えておくものである。例えば世代Xのバックアップを拠点Aに取り、世代X+1のバックアップを拠点Bに取る、といった方法を採用している。
この方法によれば、常に固定的な複数拠点にバックアップを取る従前の方法に比べて、複数拠点へのバックアップを低コストで済ませることができる効果が有る。但し、拠点によってバックアップの世代が異なるので、アプリケーションの実行に必要なデータを最新の状態にまで同期させるためのコストはこの限りではなく、各々のケースで異なるので、この点を考慮して、アプリケーションの移転先を選択するものとする。
【0023】
図1において、本実施形態の情報処理システムは、移転元である拠点A、及び複数の移転先候補である拠点B〜Eを有する。但し、図1に示す構成は、あくまで一例に過ぎず、本発明では、一般に、移転元の拠点、移転先候補である拠点、及び各拠点の個数は、この限りではない。
【0024】
図2は、発明の第1の実施形態に係る情報処理システムのハードウェア構成を示す構成図である。図2に示す本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムは、システム管理・制御部1、及び拠点2を有する。拠点2は、他の2つの拠点とネットワークで接続されている。
【0025】
システム管理・制御部1は、アプリケーションを実行する仮想マシンのマイグレーションを制御するマイグレーション制御部11、どこの拠点のどの物理サーバに仮想マシンをマイグレーションするかを計画する配置プラン部12を備える。また、システム管理・制御部1は、ストレージを制御するストレージ制御部13を備える。
【0026】
拠点2は、アプリケーション21、仮想マシン22(仮想マシン部)、及びストレージ23を備える。(他の2つの拠点についても、構成は拠点2の構成と同じであるので、符号付け及び説明は省略する)。
【0027】
以下、図1,2を参照して、本発明の第1の実施形態に係る情報処理システムの機能を説明する。
システム管理・制御部1では、マイグレーション制御部11、配置プラン部12、及びストレージ制御部13が連携し、拠点2等の仮想マシンで実行されるアプリケーションの移転(マイグレーション)と、それに伴うデータの移動とを制御する。システム管理・制御部1では、上記の制御により、アプリケーションを拠点間で移転させるときのデータの移動件数を最小限に抑える。
具体的には、まず、アプリケーションと、アプリケーションが利用するデータ領域との関連付けとが必要となるので、これらの解析を行う。この解析は、アプリケーションがデータ領域をマウントするときに、ストレージ制御部13がそれを記憶しておくことで、上記関連付けが可能となるので、ここでも、その方法を採用するものとする。
【0028】
次に、データ領域のデータをバックアップするための拠点の情報処理装置(以下、単に「拠点」と略称する)の設定を行う。この設定は、人手に依存する方法を採用しても良いし、予め設定された本システムとしてのルールに基づき、どの拠点にバックアップを取るかをシステム管理・制御部1が決定しても良い。
その結果として、本実施形態では、システム管理・制御部1は、データ領域に対しては複数の拠点をバックアップを取る拠点として選定するものとする。但し、その際に、システム管理・制御部1は、バックアップの世代によってバックアップ拠点を変えておくものとする。つまり、システム管理・制御部1は、拠点Bに対しては世代Xを、拠点Cに対しては世代X+1をといったようにバックアップの世代を割り当てる。
【0029】
この実施形態に係る情報処理システムによれば、常に複数拠点でバックアップを取る従前の方法に比べて、バックアップのための運行コストを減らすことができる効果が有る。
即ち、拠点の配置を最適化したことにより、バックアップ時間の短縮、拠点間ネットワークのトラフィックの削減が可能となるので、バックアップのための運用コストを減らすことができるのである。
【0030】
以下、本発明の第2の実施形態に係る情報処理装置について説明する。この実施形態は、システム管理・制御部1がアプリケーションの移転先拠点を選択する際の選択手段に関するものである。
上述のとおり、システム管理・制御部1は、複数拠点をアプリケーションの実行に必要なデータのバックアップ用拠点として確保する。また、それぞれの拠点でデータのバックアップ世代が異なっている。
【0031】
このため、アプリケーションを移転させたときには、アプリケーションの実行に必要なデータの同期をとるために、移転元拠点から、更新されたデータを送出する必要がある。
どの拠点にアプリケーションを移転させるかを決定するのは配置プラン部12の役割である。配置プラン部12は、ストレージ制御部13に問合わせ、アプリケーション毎に、どの拠点に当該アプリケーションのどのバックアップ世代が置かれているかを把握する。さらに、配置プラン部12は、移転させることを仮決定した拠点に当該アプリケーションを移転させた場合にデータ同期に必要となるデータ更新コストの概算を得る。
【0032】
配置プラン部12は、これらのデータを基にして、どの拠点にアプリケーションを移転させるか計画を立てる。配置プラン部12によるこの移転計画は、移転によるコストを後述するデータに関する要素毎及び拠点毎に計算し、これにコストに対応して加重する重みを加えて、全体のコストが最小になる拠点を選ぶ。
上記のデータに関する要素としては、拠点間のネットワーク遅延、データ同期のためのコスト、及びアプリケーションのデータアクセスに対する要求性能を考慮する。ネットワーク遅延が短ければ、拠点間を跨がってデータアクセスをする場合のコストは少なくなる。それに対して、ネットワーク遅延が大きければ、拠点間を跨がったデータアクセスをする場合の応答時間が長くなり、データアクセス性能が低下する。
【0033】
このデータアクセスの速度性能が、アプリケーションの要求する性能を下回るものであれば、拠点間を跨がったデータアクセスをすることができない。よって、この場合には、アプリケーションを移転させる前に、当該アプリケーションで使用するデータの同期を済ませておき、データアクセスが拠点内で閉じるようにする。このためには、バックアップ世代を最新の世代にまで同期させるために必要なデータの転送量(つまり、どの程度データの更新が進んでいるか)を考慮して、データ同期のコストを求めるものとする。
【0034】
アプリケーションが拠点間を跨がったデータアクセスを行う場合は、データアクセスに対して速い速度性能が要求される。よって、この場合、バックアップ世代はなるべく最新の世代にしておくことが望ましいことになる。それに対して、アプリケーションがデータアクセスに対して速い速度性能を要求しない場合は、ネットワーク遅延を含めるものとしても、任意の拠点間を跨がったアクセスが許容される。また、この場合、データの同期をとる処理は、アプリケーションの移転後に行っても良いことになるので、バックアップ世代が古くても許容される。
【0035】
この出願は、2013年3月15日に出願された日本出願特願2013−053134号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【産業上の利用可能性】
【0036】
この発明によっては、バックアップのための運行コストを減らし、アプリケーションの移転に伴って必要となるデータのバックアップ拠点の選定を最適化できる。即ち、アクセス時間の短縮を可能にすると共に、拠点間ネットワークのトラフィックの削減を可能にする。
【符号の説明】
【0037】
1 システム管理・制御部
2 拠点
11 マイグレーション制御部
12 配置プラン部
13 ストレージ制御部
21 アプリケーション
22 仮想マシン
23 ストレージ
図1
図2