(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項3において、前記継手本体は一端に前記差込み口を有し、他端に接合面を有するフランジ継手であり、前記当たり面から前記接合面にかけて、前記鋼管の内径と同じ径の孔が管通していることを特徴とする継手構造。
【背景技術】
【0002】
パイプ同士を締結する方法としては、溶接する溶接方式や、パイプ端部に雄ねじを切り、雌ねじを有する継手と噛み合わせるねじ方式などが行われている。
【0003】
ところがねじ方式によるパイプの締結は、外部からいかに大きな力を加えてねじ込みを行っても、雄ねじと雌ねじの噛み合わせ箇所に生じる空隙をなくすることが難しい。空隙をなくする試みとして、特許文献1によれば、転造雄ねじをつけたパイプを用いて高い内圧に耐えるとともに、継手に形状記憶合金を用いて、雄ねじと雌ねじの噛み合わせ箇所に生じる空隙を消失させてシール性を持たせる技術が開示されている。本文献においては、テーパねじ(PTねじ)のほか、平行ねじ(PFねじ)にも利用できることが示唆されている。
【0004】
尚、特許文献2によれば、高圧対応ではないが、パッキンによりシールする構造が示されている。中空筒状の継手本体の内周面に、両鋼管の端部外周面に形成された雄ねじ部が管軸芯方向の両側から螺合接続自在な一対の雌ねじ部と、両雌ねじ部の隣接間において鋼管の内径と同じ内径で径方向内方に突出する円環状壁部(ストッパーリング)とが形成され、前記継手本体の両雌ねじ部に螺合された両鋼管の端面と前記継手本体の円環状壁部の環状側面との対向面間には、螺合操作される鋼管の端面で圧縮される環状パッキンが介装されている。
【0005】
また、特許文献3によれば、特許文献2を改良した技術であって、パッキンが圧縮されたときに管の内部にはみ出さないようにする技術が開示されている。なお、特許文献2、3は内部に高圧の流体を流す技術ではない。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、二本の鋼管1を同芯状態で接続する管継手を示しており、
図1Aは分解した状態であり、
図1Bは組み立てた状態である。両鋼管1の端部の外周面には、平行ねじである雄ねじ部1a形成されている。中空円筒状の金属製の継手本体2の両側の差込口50の内周面には雄ねじ部1aが螺合接続される雌ねじ部2aが形成されている。継手本体2の内周中央部には、表面粗さが調整(例えば、Ra=1.6μm)された平滑面2bが設けられている。この平滑面2bは、雌ねじ部2aのねじ山の頂部の内径と同じかそれよりも、小さい内径の曲面である。平滑面2bは、雄ねじ部1の中心線Oと同芯である。
【0013】
両鋼管1の間には、インサート3が介在している。インサート3はリング状であり、その内周面3aは鋼管1の内周面1bと同径であり、外周面3bは継手本体2の平滑面2bの径よりやや小さい。インサート3の外周面3bからインサート3の左右の端面3cの間には、同心円に窪んだステップ状溝3dが設けられている。ステップ状溝3dは、半径方向に平行なドーナツ面3fと中心線方向に並行なリング面3gとを有している。ドーナツ面3fとリング面3gの表面は、継手本体2の平滑面2cと同様に表面粗さが調整されている。
【0014】
インサート3には、さらに、継手本体2内において、平滑面2cの位置で固定されるのに利用される非貫通の孔3eが設けられている。継手本体2には、その外周面から平滑面2bに向かって孔2cが貫通しており、インサート3の孔3eと継手本体2の孔2cとはボルト4により締結される。
【0015】
図1Bにおいて、インサート3が継手本体2内にボルト4で固定されたとき、ドーナツ面3fとリング面3gと継手本体2の平滑面2cは、それぞれOリング5を収容するドーナツ状溝の底面及び両側面となる。ボルト4は、鋼管1の周方向に問う角度間隔に3本以上配置されている。
【0016】
鋼管1は、配管施工現場で切断されて、端部に雄ねじ部1aが加工される。雄ねじの加工は、切削加工でも転造加工でも良い。加工される雄ねじは、平行ねじである。
【0017】
図2は、継手本体2の製造工程を示す図である。
まず、金属の円筒2’の中央内周の表面粗さを調整する(
図2A)。円筒2’の両側から中央部を残し雌ねじ部2aを形成する(
図2B)。雌ねじ部2aは、転造、切削のいずれの方法によっても差し支えない。雌ねじ加工を行うことにより、中央の平滑面2bよりも深くねじ山が形成される。次いで、外周から平滑面2bに向けて貫通する孔2cを開けてねじ加工を行う(
図2C)。
【0018】
上述の如く構成された継手本体2を用いて両差込口50に鋼管1を接続する場合、継手本体2に挿入して雌ねじ部2aの中央の平滑面2bの位置にインサート3を位置付ける。この状態でボルト4によりインサート3を継手本体2に固定する。Oリング5は、継手本体2内面に形成する雌ねじ部2aのねじ山の頂部に限り無く等しい外径を有する。継手本体2に固定されたインサート3にOリング5を装着する。
【0019】
両鋼管1の雄ねじ部1aを継手本体2の雌ねじ部2aに対して管軸芯方向の両側から各差込口50に螺合接続する。Oリング5は、インサート3の側面、底面及び継手本体の平滑面2bで囲まれたドーナツ状の空間に収容され、かつ、インサート3の当り面3aに向けて鋼管1をねじ込むことにより、ドーナツ状の空間の中で、鋼管1の端面1aにより圧縮される。この際、Oリングに必要な反発力を得る為にねじ込み量を調整する。ボルト4による固定により、ドーナツ状の空間の形状を安定させて、Oリングにシールの性能を発揮させる。
【0020】
鋼管1を螺合接続する前にインサート3を継手本体2に固定する理由は、Oリング5の圧縮量は鋼管1との間のねじ込み量に関連するため、継手本体2内でインサート3の位置が予め定まっていなければならないからである。
【0021】
図3は、継手本体2に装着されたOリング5の周辺の拡大図である。継手本体2の雌ねじ部2aと鋼管1の雄ねじ部1aの間の隙間、インサート3と鋼管1や継手本体2の隙間を模式的に示している。インサート3の端面3cと鋼管1の端面1cとの隙間以外の隙間は、互いに嵌合する為に必要な隙間である。鋼管1を継手本体2にねじ込んだ際、両端面1cと3cとの隙間がゼロとなる状態で、Oリング5に対して適性な押圧力が付与させるようにリング面3gの幅が制御されている。Oリング5を収容するドーナツ状の空間の寸法設計をするときに、両端面1cと3cとの隙間がゼロとなるときに、ちょうど所要のOリング5の潰し量が得られるように設計しておくのである。
【0022】
Oリング5は、鋼管1の端面1cとインサート3のドーナツ面3fとの間隔の中で圧縮され、その反発力により鋼管1の内部空間をシールする。
【0023】
Oリング5は、継手本体2の平滑面2b側に寄った状態で、ドーナツ状溝内に位置させるのが望ましい。鋼管1内を流れる流体の圧力が高いため、Oリングは、鋼管1の径方向の力を受けるため、外径側の側面(平滑面2b)をバックアップに利用できるからである。
【0024】
インサート3において、Oリング5を収容するドーナツ状溝内側の側面(リング面3g)を提供する壁は、Oリング5が、鋼管1内部の圧力の変動によって摩耗、または脱落することを避ける目的で設けられるものであり、その壁厚は薄くてもよい。一方、Oリング5を収容する溝を構成する底面(ドーナツ面3f)は、インサート3の径方向の肉厚を確保し、できるだけ太いOリング5を利用できるようし、かつこの位置の背後にボルト4用の孔3eが設けられる。
【0025】
本実施例によれば、Oリング5を収容するドーナツ状溝の外側の側面は、継手本体2の平滑面2bを利用することから、インサート3側にOリング用溝の両側面を有する必要が無く、Oリング5として太いものを使用できるため密封性を安定させるのに優位である。
【0026】
STPT410 Sch160 20A(高温配管用炭素鋼管(JIS G 3456))、STPG370 Sch80 A20、STPG370 Sch40 20A(圧力配管用炭素鋼鋼管(JIS G 3454))の鋼管について、試験を行った。まず、各鋼管の端部に切削ねじを10mm、20mm、30mmの長さ範囲で形成した。試験は、
図1の接続構造によるものである。但し、ねじとしては、先の実施例に示した平行ねじの場合に加えてテーパーねじについても、引張による実験を行った。
【0027】
図4は試験結果を表す図である。
図中、規格値荷重の欄の「破断荷重」、「降伏荷重」は鋼管自体の母材の強度として要求される最低の強度である。その左の破断荷重の欄は、試験された接続構造が破断した引張荷重を示しており、備考においてどこで切断したかを示した。なお、これらの荷重は、何れも接合箇所における内部に流れる流体に対して要求される最低圧力の数十倍である。
【0028】
実験結果、STPT410 Sch160 20Aにおけるねじ長さ10mmの試料及びテーパねじの試料において、雄ねじ部1a、雌ねじ部2aのねじ山が破損しねじの抜けが起こった。このときの荷重は119KNである。破断荷重には至らなかったが、降伏荷重を超えた。一方、20mm及び30mmのねじ長さでは、ねじの抜けは起こらず、ねじが切られている箇所と切られていない箇所の境目のねじの谷の位置(ねじ末端、
図1におけるPの位置)で切断した。これは、この部分では、ねじの谷により肉厚が薄くなったことによる応力の集中によるものと推察される。従って、この部分を例えば転造や焼入れ等で組織を強化することにより、耐久力が上昇すると考えられる。また、ねじの範囲を20mm以上長くしても、引張強度に対する耐性は強化されないことがわかった。
【0029】
一方、ねじ長さ10mmでは、ねじの抜けが起こったため、ねじ山の強度自体を転造や焼入れ等で強化することで対応できないかを検討した。
図5は、STPG370 Sch80 A20の鋼管にねじを切削加工して、高周波焼入れを行った例である。いずれの例においても、鋼管自体の母材の強度105KNを上回った。また、平行ねじ20mm以上では、継手構造の箇所ではなく、鋼管1自体が破断した。これは、継手箇所の強度が鋼管の母材の強度を上回ったことを示している。
【0030】
各実験例の継手構造において、片端を封じて他端から室温の油を導入し、内圧を60MPs(600kgf/mm2)で60分保持したところ、漏れ等の生じないことを確認した。
【0031】
図6は、鋼管1と径の異なる鋼管100とを接続する継手構造を示している。先の実施例との相違は、継手本体200の左右の差込口50の口径が異なっている点と、インサート30の図面上で左右の形状が異なっていることである。すなわち、インサート30の内周面30aは鋼管100の内周面と同径であり、左側の外周面30b1と右側の外周面30b2、左側のドーナツ面30f1と右側のドーナツ面30f2、左側のリング面30g1と右側のリング面30g2は、夫々鋼管1と100に対応した径になっている。各ドーナツ面30f1,2とリング面30g1、2の表面の表面粗さは、先の実施例と同じである。
【0032】
図7は、鋼管1とフランジ継手20を接続する接続構造を示している。図面において紙面右側のフランジ継手20のスリーブ部21に形成された差込口50の構造は、先の実施例に示した継手本体の左半分の差込口50構造に等しい。一方、差込口50の反対側の右端は、他の部品と接合される接合面20aである。フランジ継手20の周端部には接合面20aに向けて同心円に他の部品と接続さるための孔20cが設けられている。
【0033】
フランジ継手20の差込口50側には、雌ねじ2a、平滑面2bが設けられ、平滑面2bに続いて半径方向に延びた当たり面22を有している。そしてフランジ継手20の中空は、当たり面22から鋼管1の内径と同じ内径の孔20bに連続して接合面20aに至っている(
図7A参照)。平滑面2bに位置するインサート3の構造は先の実施例と同じであり、両側にOリング5を装着できるようになっている。両側にOリング5を装着するのは、当たり面22とインサート3との間の隙間からねじ2aを介して内部流体が漏れ出すのを防ぐためである。一方、インサート3は、先の実施例とは異なり、ボルトにより固定されていない(
図7B参照)。従って、平滑面2bに貫通する孔2cを有さない。またインサート3の非貫通の孔3eは、使用しないため、あってもなくても良い。
【0034】
本実施例の場合、右側のOリング5は、鋼管1をねじ込んで端面1cがインサート3の一方側の端面3cと接触し、かつインサート3の他方側の端面3cが当たり面32に接触したときに、両側のOリングに対して適性な圧縮力が加わるように、インサート3のリング面3gやドーナツ面3fが設計されている。
【0035】
図8のフランジ継手20’は、差込口50の開口近くのスリーブ21を貫通するボルト孔24が設けられ、一方、鋼管1にはボルト孔24に対応する位置に非貫通孔1d(ねじ山無し)が設けられている。そして、鋼管1の雄ねじ1aの緩みを止めるため、ボルト42により固定される(
図8B)。尚、ボルト42は、先のボルト4と相違して頭部がなく、スリーブ部21に埋没するものである。そして、ボルト42は鋼管1に嵌合する先端部42aには雄ねじがなく、スリーブ21と嵌合する箇所42bのみ雄ねじが設けられている。これは、鋼管100とスリーブ21の境界位置のボルト42の形状にねじ形状変化(特にボルトの肉厚を薄くするような形状変化)を持たせないためである。ボルト42には、鋼管1の引張力が加えられることがありえるため、応力が集中するような構造を避けているのである。
【0036】
図9に、他のフランジ継手20’’の例を示す。
図8のフランジ継手との相違は、ボルト42により固定される位置が、鋼管1の雄ねじ1aの範囲外であることである。フランジ継手は、スリーブ21が雌ねじ2aの存在しない部分23が追加され、鋼管1の外径が嵌合するように部分23の差込口50の開口径が大きくなっている。このフランジによれば、雄ねじ1aの分だけ鋼管1の肉厚が失われないため、より強度が高まる。
【0037】
図10は、T型継手30を示している。T型継手30は、3箇所に差込口を50有する継ぎ手であり、各差込口50は、
図7に示したフランジ継手20の差込口50と同様な構成を有している。T型継手の内側は鋼管1の内径と同じ径rを有しており、各差込口50における平滑面2bとの間の段差箇所に半径方向の当たり面22を有する構造となっている。当たり面22は、先の実施例と同様に、インサート3のOリング5が当接し、当たり面22とインサート3との間の隙間から雄ねじ1aを介して内部流体が漏れ出すのを防ぐ面である。
【0038】
図11は、フランジ継手25を貫通する雌ねじ25dが設けられており、フランジ継手25の接合面(端面)25aの面に鋼管1の端面1bが揃うまで、鋼管1がねじ込まれた状態を示している。フランジ継手25のスリーブ部分25eには、鋼管1に至るまでボルト42が挿入されている。挿入箇所は、鋼管1に雄ねじ1aが切られた範囲(
図9B)あるいは平滑周面の範囲(
図9C)の何れでも良い。ボルトとしては、ヘッド部の無いものが用いられている。ボルト42は、雌雄ねじ1a、25dの螺合が緩まないようにするためのものである。
【0039】
フランジ継手25の接合面側には、平板状のパッキン26或いは、鋼管1の端面1bに当たる直径を有するOリング28を装着したインサート27が用いられる。この例は、実施例を構成するものではないが、低圧流体に使用する場合の例として示した。
【0040】
図12は、
図6の継手本体200の変形例を示している。
図8のフランジ継手20’と同じように、差込口50の開口近くのを貫通するボルト孔24が設けられ、一方、径の相違する鋼管1、100にはボルト孔24に対応する位置に非貫通孔1dが設けられた継手本体200’の例である(
図12A)。また、
図9に示したフランジ継手20’’のように、ボルト42により固定される位置が、鋼管1、100の雄ねじ1aの範囲外とした継手本体200’’とすることもできる(
図12B)。継手本体200’’は、スリーブ21が部分23だけ延長され、鋼管1、100の外径が嵌合するように差込口50の開口径が大きくなっている。
【0041】
図13は、
図1の継手本体2の変形例を示している。
図13Aの変形例も
図8のフランジ継手20’と同じように、差込口50の開口近くを貫通するボルト孔24が設けられ、一方、鋼管1(
図12参照)にはボルト孔24に対応する位置に非貫通孔1dが設けられた継手本体2’’の例である。また、
図9に示したフランジ継手20’’のように、ボルト42により固定される位置が、鋼管1の雄ねじ1aの範囲外とした継手本体2’’’とすることもできる(
図13B)。継手本体2’’’は、雌ねじ2aの無い部分23だけ延長され、鋼管1の外径が嵌合するよう部分23の差込口50の開口径が大きくなっている。
【0042】
図14は、
図10のT型継手30の変形例を示している。本変形例は、
図9に示したフランジ継手20’’のように、ボルト42により固定される位置が、鋼管1の雄ねじ1aの範囲外としたT型継手30’である。T型継手30’は、スリーブ21が部分23だけ延長され、鋼管1の外径が嵌合するように差込口50の開口径が大きくなっている。