(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記前部船体及び前記後部船体が結合された状態でこれら前部船体及び後部船体の左右各側に固定される一対の付加浮体を備え、該付加浮体は前記前部船体及び前記後部船体に跨るように配置され、前部を前記前部船体にネジ具を介して固定され、後部を前記後部船体にネジ具を介して固定されることを特徴とする請求項1記載の組立式ボート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は鋼板製の甲板、船底を有する組立式ボートの組立状態を示す斜視図、
図2は前記組立式ボートの分解状態を示す斜視図である。組立式ボート100は、前部船体1、後部船体2及び、左右一対の付加浮体3a、3bを一体状に結合している。組立式ボート100は、
図2に示すような状態に各部1、2、3a、3bを分離できる。
【0009】
図2を参照して各部について説明すると、前部船体1は単独で浮体として機能するもので前部外板4及び前部甲板5を具備している。そして前部外板4は船首部4a、船底部4b、左右各側部4c1、4c2、及び後端面部4dからなっている。
【0010】
図3は前記組立式ボートの側面図である。
図2及び
図3に示すように、船底部4bの外面の左右箇所には前部スケグ5a、5bが船体長さ方向(前後方向)a1に沿って溶接されている。これら前部スケグ5a、5bは細長い鋼板であり、船底から起立浄に立ち上がっており、組立式ボート100の使用中に水との相互作用により直進性を向上させるものである。
【0011】
図4は前記組立式ボート100の一部を示す斜視図である。
図4に示すように、各前部スケグ5a、5bの後部には多数のボルト孔c1が前後方向a1へ適当な間隔を置いて一列状に形成されている。なお、
図3に示すように前部スケグ5a、5bの前端部5cは組立式ボート100の前進時に水から受ける抵抗が小さくなるように船底部4bからの下方突出量を船首部側へ向かうほど小さくされている。
【0012】
図2において、左右各側部4c1、4c2は対称構造とされており、説明簡略化のため右側部4c2のみの構造について説明し、左側部4c1における対応箇所には図中に符号のみを付すものとする。右側部4c2の下縁から下方へ張り出させた態様の前部前後向きのフランジd1が溶接されている。
図4にも示すように多数のボルト孔c2を前後方向a1へ適当な間隔を置いて一列状に形成されている。また右側部4c2の外面にはフランジd1の前端近傍から上向きに付加板d2が溶接されると共にこの付加板d2の上端位置に対応した高さに付加板d3が前後方向a1に沿って溶接されている。多数の雌ネジc3が上下方向の適当な間隔を置いて一列状に形成されている。そして付加板d3は付加板d2の上端近傍から右側部4c2の後端までに位置し、多数の雌ネジc4が前後方向a1の適当な間隔を置いて一列状に形成されている。後端面部4dは後部船体2に衝接させる前衝接面として機能する。
【0013】
前部甲板5は前部外板4の上縁e1に位置されており、本実施例では上縁e1で囲まれた全範囲を水密状に覆った構造としている。前部甲板5上には前部構造物6が設けられている。前部構造物6は左右一対の前部コーミング7a、7bを備えている。これら前部コーミング7a、7bは、鋼板製であり前部甲板5の上面の左右箇所に起立状に前後方向a1に沿って溶接される。
【0014】
図4において、前部コーミング7a、7bの後部には多数のボルト孔c5が上下2列とされ各列で適当な間隔を置いて前後方向a1へ一線状に形成されている。前部甲板5の上面後端であって左右の前部コーミング7a、7bの内側箇所には上方へ突出した前側横向きのフランジ9が固設されている。このフランジ9には多数のボルト孔c6が適当な間隔を置いて左右方向b1へ一列状に形成されている。前部甲板5の上面後端であって左右の前部コーミング7a、7bの左右各外側箇所には位置合わせ用の係合部材10a、10bが固設されている。これら係合部材10a、10bは図示例では後部船体2側へ向け先細り状となるように形成されている。
【0015】
図2中、11は前部外板4に固着された掛け吊り部材であり、12は前部甲板5に設けられ水密状に閉鎖される開閉口であり、13は任意な物を載置し固定させるための支持台である。
【0016】
次に上記の後部船体2について説明する。
図2において、後部船体2は単独で浮体として機能するもので後部外板14及び後部甲板15を具備している。後部外板14は前端面部14a、船底部14b、左右各側部14c1、14c2、及び船尾面部14dからなっている。
【0017】
前端面部14aは前部船体1の前衝接面4dに衝接される後衝接面として機能するもので、前部船体1の前衝接面4dに対応した形態となっている。
船底部14bの外面の左右箇所には
図3及び
図4にも示すように、後部スケグ16a、16bが前後方向a1に沿って起立状に溶接されている。各後部スケグ16a、16bの前部には多数のボルト孔c7が前後方向a1へ適当な間隔を置いて一列状に形成されている。これら後部スケグ16a、16bは細長い板状の鋼板であり、組立式ボート100の使用中に水との相互作用により直進性を向上させる。
【0018】
図2において、左右各側部14c1、14c2は対称構造であり、説明簡略化のため右側部14c2のみの構造について説明し、左側部14c1における対応箇所には図中に符号のみを付すものとする。右側部14c2の下縁から下方へ張り出させた態様の後部前後向きのフランジd4が溶接されている。このフランジd4は前後方向a1の長さを後部船体2のそれと同一にされ、多数のボルト孔c8をこれらの相互間に前後方向a1の適当な間隔を置いて一列状に形成されている。また右側部14c2の外面上で浮体3bの高さ位置には後部前後向きの付加板d5を前後方向a1に沿って溶接されている。この付加板d5には多数の雌ネジc9がこれらの相互間に前後方向a1の適当な間隔を置いて一列状に形成されている。
【0019】
後部甲板15は後部外板14の上縁e2の高さに位置されており、本実施例では該上縁e2で囲まれた全範囲を水密状に覆っている。後部甲板15上には後部構造物17が設けられている。後部構造物17は左右一対の後部コーミング18a、18bを備えており、これら後部コーミング18a、18bは後部甲板15の上面の左右箇所に前後方向a1に沿って起立状に溶接されている。
【0020】
図4において、各後部コーミング18a、18bの前部には多数のボルト孔c10が上下2列に配置されると共に各列の多数のボルト孔c9は前後方向a1へ適当な間隔を置いて一線状配列に形成されている。そして後部甲板15の上面前端部であって左右一対の後部コーミング18a、18bの内側箇所には上方へ突出した横向き後側フランジ20が設けられている。この横向き後側フランジ20には多数のボルト孔c11が適当な間隔を置いて左右方向b1へ一列状に形成されている。
【0021】
後部甲板15の上面前端であって左右一対の後部コーミング18a、18bの左右各外側箇所には位置合わせ用の係合部材21a、21bが固設されている。この係合部材21a、21bは図示例では
図2に示す船尾面部14d側へ向け先細り状となる凹み部を有するものとされている。
【0022】
図2中、22は後部外板14に固着された吊上げ部材であり、23は後部甲板15に設けられ水密状に閉鎖される開閉口であり、24は任意な物を固定させるための支持台であり、25はロープの掛け止めなどに使用される船尾付加部材である。
【0023】
次に
図2を参照して左右一対の付加浮体3a、3bについて説明する。これら一対の付加浮体3a、3bは対称構造とされており、説明簡略化のため右側の浮体3bのみの構造について説明し、左側の付加浮体3aにおける対応箇所には図中に符号のみを付すものとする。付加浮体3bは周囲を外板26で囲まれると共に外板26の内方に発泡スチロールなどの発泡材を充填されている。外板26はアルミニューム材で形成されていて、外側面部26a、内側面部26b、上面部26c、下面部26d及び後面部26eからなっている。内側面部26bにおいて、上側には、付加板d3及びd5に当接される上側前後向きフランジd6が形成されており、下側には前記したフランジd1及びフランジd4に対応した下側前後向きフランジd7が形成されており、前側には付加板d2に対応した縦向きフランジd8が形成されている。上下各側の前後向きフランジd6、d7のそれぞれには多数のボルト孔c12、c13が前後方向a1に沿って適当な間隔を置いて一列状に形成されている。そして縦向きフランジd8には多数のボルト孔c14が上下方向に沿って適当な間隔を置いて一列状に形成されている。そして上面部26cの適当位置には吊り上げ部材f1が設けられている。
【0024】
次に
図2に示す分解状態にある組立式ボート100の保管、運搬及び組立の手順の一例を説明する。
図5は組立式ボート100の組立てに使用する第1支持台101及び第2支持台102を示す斜視図である。組立式ボート100の各部1、2、3a、3bはトラックで運搬されてくる。正確に位置決めされた第1支持台101と第2支持台102の上で、これらの組み立てを行う。
【0025】
前部船体1の係合部材10a、10bを後部船体2の係合部材21a、21bに係合させて前部船体1と後部船体2とを位置合わせする。
図6、
図7及び
図8は前部船体1及び後部船体2の位置合わせが正確に行われた状態を示している。
【0026】
図6において、前部スケグ5a、5bと後部スケグ16a、16bとは同一高さの同一面上に位置して対向し近接した状態となり、また前部コーミング7a、7bと後部コーミング18a、18bとは同一高さの同一面上に位置して対向し近接した状態となっている。この実施例では前部スケグ5a、5bと後部スケグ16a、16bは同一幅で同一厚さであり、また前部コーミング7a、7bと後部コーミング18a、18bは同一の上下方向幅で同一厚さである。
【0027】
この後、左右の前部スケグ5a、5bのそれぞれの左右側に金属製のフラットバーからなる結合板27a、27bを、そして左右の後部スケグ16a、16bのそれぞれの左右側に金属製のフラットバーからなる結合板28a、28bを配置する。そして、一方の一対の結合板27a、27bは左側の前部スケグ5aの左右面及び後部スケグ16aの左右面に橋渡し状に当接させ前部スケグ5a及び後部スケグ16aを挟み付けた状態とする。他方の一対の結合板28a、28bは右側の前部スケグ5bの左右面及び後部スケグ16bの左右面に橋渡し状に当接させ前部スケグ5b及び後部スケグ16bを挟み付けた状態とする。各結合板27a、27b、28a、28bは前部スケグ5a、5bや後部スケグ16a、16bに対応した幅となっている。各結合板27a、27b、28a、28bには前部スケグ5a、5b及び後部スケグ16a、16bの複数のボルト孔c7と同じ配列のボルト孔c12が予め形成されている。
【0028】
したがって、各結合板27a、27b、28a、28bの位置合わせを行うことにより、前部スケグ5a、5bのボルト孔c1と結合板27a、27b、28a、28bの前部のボルト孔c12とが同心に位置し、また後部スケグ16a、16bの対応するボルト孔c7と結合板27、27b、28a、28bの後部の対応するボルト孔c12とが同心に位置した状態となる。この状態の下で、前部スケグ5a、5b及び後部スケグ16a、16bの各ボルト孔c1、c7と、各結合板27a、27b、28a、28bの対応する1つのボルト孔c12に一本のボルトi1を挿通させこれに座金を外挿してナットを螺合させ締結する。
【0029】
また
図7において、左右各側の前部コーミング7a、7b及び後部コーミング18a、18bの左右各外面側に金属製のフラットバーからなる結合板29a、29bを配置する。そして、これらの結合板29a、29bを左右各側の前部コーミング7a、7b及び後部コーミング18a、18bの外面に橋渡し状に当接させる。各結合板29a、29bは前部コーミング7a、7bや後部コーミング18a、18bに対応した幅である。また各結合板29には前部コーミング7a、7bの後部及び後部コーミング18a、18bの前部に形成された複数のボルト孔c5、c10と同じ配列のボルト孔c13が予め形成されている。
【0030】
したがって各結合板29a、29bの位置合わせを行うことにより、前部コーミング7a、7bの後部のボルト孔c5と結合板29a、29bの前部のボルト孔c13とが同心に位置し、また後部コーミング18a、18bの前部のボルト孔c10と結合板29a、29bの後部の対応するボルト孔c13とが同心に位置した状態となる。この状態の下で、前部コーミング7a、7b及び後部コーミング18a、18bの各ボルト孔c5、c10と、各結合板29a、29bの対応する1つのボルト孔c13に一本のボルトj1を挿通させ、これに座金を外挿してナットを螺合させ締結する。
【0031】
上記のように前部スケグ5a、5b及び後部スケグ16a、16bが結合され、また前部コーミング7a、7b及び後部コーミング18a、18bが結合された状態では、前部横向きフランジ9と後部横向きフランジ20も正対した状態となってそれぞれに形成された多数のボルト孔c6、c11は同心に位置した状態となる。この状態の下で前部横向きフランジ9及び後部横向きフランジ20の各ボルト孔c6、c11に一本のボルトk1を挿通させると共にこれに座金を外挿してナットを螺合させ締結する。
【0032】
以上により前部船体1と後部船体2とは強固に結合された状態となる。ここに前部船体1及び後部船体2は何れも単独で浮体として機能するため、これら船体1、2の結合誤差による各船体1、2内への浸水などの可能性はない。
【0033】
図9は前部船体1及び後部船体2が適正に結合された状態を示している。この後、各付加浮体3a、3bを吊りワイヤh5、h6を介して吊り上げ移動させ、前部船体1と後部船体2に跨るようにその対応する左右側に適正に位置させる。これにより、各付加浮体3a、3bの上側フランジd6は前後部の付加板d3、d5に適正に当接し、上側フランジd6の各ボルト孔c12は付加板d3、d5の対応する雌ネジc4、c9と同心に位置した状態となる。この状態の下で座金の外挿されたボルトm1を上側フランジd6の各ボルト孔c12に挿通させ、その対応する雌ネジc4、c9にねじ込み締結する。
【0034】
また各付加浮体3a、3bの下側フランジd7は前後部の下側前後向きフランジd1、d4に適正に当接した状態となり、下側フランジd7の各ボルト孔c13は前後部の下側前後向きフランジd1、d4の対応するボルト孔c2、c8と同心に位置した状態となる。
【0035】
図10は付加浮体3a、3bの下側フランジd7を前部船体1及び後部船体2にボルトm2を介して固定する場合の構造例を示した斜視図である。
図9及び
図10において、前後部の下側前後向きフランジd1、d4の各ボルト孔c2、c8のうち前部船体1と後部船体2との結合位置の近傍範囲n1以外に位置したボルト孔c2、c5及び下側フランジd7における対応のボルト孔c13のそれぞれに1本のボルトm2を挿通させると共にこれらボルトm2に座金を外挿してナットを螺合し締結する。このとき、フランジd1とフランジd4とは同一高さで同一面上に位置した状態となるように形成されている。一方、前部船体1及び後部船体2の左右側における前記近傍範囲n1の前後部の下側前後向きフランジd1、d4の船体中心側或いは外側の何れか一方の面には結合板30a、30bを配置し、これらの結合板30a、30bの前部をフランジd1に当接させ、後部をフランジd4に当接させる。各結合板30a、30bの前部にはフランジd1のボルト孔c2に合致した配列のボルト孔c15が形成され、後部にはフランジd4のボルト孔c8に合致した配列のボルト孔c15が形成されている。したがって各結合板30a、30bの位置合わせを行うことにより、結合板30a、30bの各ボルト孔c15と前後部の下側前後向きフランジd1、d4及び下側フランジd7の対応するボルト孔c2、c8、c13とは同心に位置した状態となる。この状態の下で結合板30a、30bの各ボルト孔c15及びその対応するボルト孔c2、c8、c13のそれぞれに1本のボルトm2を挿通させると共にこれの必要箇所に座金を外挿した状態としてナットを螺合し締結する。
【0036】
また
図9及び
図10において、各付加浮体3a、3bの縦向きフランジd8は付加板d2に適正に当接し、縦向きフランジd8の各ボルト孔c14は付加板d2の対応する雌ネジc3と同心に位置した状態となる。この状態の下で縦向きフランジd8の各ボルト孔c14に座金の外挿されたボルトm1を挿通させ雌ネジc3にねじ込み締結する。
【0037】
本実施例によれば、甲板5、7上に溶接された前部コーミング7a、7bと後部コーミング18a、18b及び、船底部4b、14bに溶接された前部スケグ5a、5bと後部スケグ16a、16bを利用して、船体1、2の上下から結合板により固定する。コーミングおよびスケグは船底部或いは甲板から起立状に溶接されているため、必要な強度を効果的に得られる。さらに、前部船体1と後部船体2の側面においても、これらに跨った各浮体3a、3bにより結合される。このため、前部船体1と後部船体2は、上下左右において、強固に固定されることになる。
【0038】
また、組立式ボート100は、前部船体1、後部船体2の夫々が7m程度となり、これを運搬するトラックの積載全長は道路法第47条
第1項、車両制限令第3条に規定される長さの範囲内とすることができる。
【0039】
以上により、
図1に示す組立状態の組立式ボート100が形成される。なお、組立式ボート100の分解は組立の場合の処理の逆順の処理を行えばよい。
上記実施例は次のように変形することができる。
前部船体1及び後部船体2の何れか一方或いは双方をさらに前部と後部に分割し、このさいの前部と後部とを前部船体1と後部船体2の結合の場合に準じて結合する構成とすることもできる。