(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5780485
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】指先装着型安全スケーラー
(51)【国際特許分類】
A61D 5/00 20060101AFI20150827BHJP
A61C 17/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
A61D5/00
A61C17/00 T
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-18514(P2015-18514)
(22)【出願日】2015年2月2日
【審査請求日】2015年2月9日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515030576
【氏名又は名称】辻本 恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100134050
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 博孝
(72)【発明者】
【氏名】辻本 恵子
【審査官】
石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平04−061514(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 17/00
A61D 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
指の末節部分に嵌合可能なリング部と、該リング部に取り付けられ歯の表面に付着した歯石や歯垢を削ぎ落とす削部とを備えた指先装着型安全スケーラーであって、
前記削部が、略人間の手指の爪の形状に形成され、
更に、当該削部の先端全体が、前記リング部の外周よりも軸心側に位置するように構成され、
更に、前記リング部とは別体として構成され、指の中節又は基節部分に嵌めるサブリングを備え、
当該サブリングと前記リング部は、紐又は鎖で構成された脱落防止部材によって連結されている
ことを特徴とする指先装着型安全スケーラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先に装着して動物、特に犬や猫等の愛玩動物の歯石や歯垢を取り除くためのスケーラーの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
人間同様、犬や猫等の愛玩動物にも歯石や歯垢が付着し、歯周病の原因となっている。定期的に歯石を取り除くことは歯周病予防に効果的なことは分かっているが、人間のように意思疎通のできない動物の場合は、その作業も簡単ではない。場合によっては麻酔を掛けて眠らせた状態で歯石を取り除く作業が行われるが、麻酔によるリスクを避けることはできない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】スケーラーの選び方 - 犬の車椅子 | ワンホイール のウェブサイト http://onewheel.webcrow.jp/article/tooth06_02.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的には、非特許文献にも示されているように、棒状の部材の一端又は両端が、鎌形又は掻爬型に形成されたスケーラーが利用されることが多いが、このように先端が尖ったスケーラーは、歯茎等を傷つけ易いので、操作に熟練の技術を要する。
【0005】
また、このような棒状のスケーラーの場合、歯石除去の作業を行う場合に、動物自身の視野に入りやすいので、その器具を見て動物自身が恐怖を抱きやすいという問題もある。
【0006】
発明者は、このような問題点を解決するには、非特許文献1に示されているような鎌形又は掻爬型に形成されたスケーラーを使用するよりも、自分自身の「爪」で直接動物の歯に付着した歯石や歯垢(以下単に「歯石等」という。)を取り除くのが、動物自身が安全であるし、何より自分の指先の爪をそのまま利用するので、位置を明確に把握でき、作業も確実となる。更に、人間の手の指の爪の形状が、動物の歯石等を取り除く作業をするのに非常に向いている形状であることを経験的に知得したのである。
【0007】
しかしながら、自分自身の指の爪で作業を行う場合、作業者にとって決して衛生的なものではない。例えば作業により爪の先に歯石等が入り込み残存しやすく不衛生である。また、頻繁に行うと爪自体が削れて上手く作業できない場合もあるし、爪を伸ばし過ぎないようにいつも注意しておく必要もある。
【0008】
そこで本発明は、上記のような課題を解決するべくなされたものであり、自身の指先の爪で作業する感覚で操作でき、且つ、作業時に動物の視野に入りにくい動物用スケーラーを提供する事をその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するべく、本願発明は、指先に嵌合可能なリング部と、該リング部に取り付けられ歯の表面に付着した歯石や歯垢を削ぎ落とす削部とを備えた指先装着型安全スケーラーであって、前記削部が、略人間の手指の爪の形状に形成され、更に、当該削部の先端全体が、前記リング部の外周よりも軸心側に位置するように構成されていることを特徴とする。
【0010】
このように構成したことによって、作業を行っている際、動物の視野に入りにくいので、恐怖感を与える可能性も低い。また、削部は人間の手の指の爪の形状に形成されているので、削部の先端や断面が弧を描く形状となっており(即ち、丸みを帯びた形状となっており)、動物の歯茎等を傷つけるリスクが低い。更に、歯と歯茎の境目は弧を描くような形状となっている部分が多いので、削部の形状と親和性が高く、効率的に歯石等を除去することも可能である。もちろん、作業者自身の爪を直接使用するのではないため、衛生的にも優れているし、自身の爪が削れてしまうこともない。加えて、削部の先端全体が、前記リング部の外周よりも軸心側に位置するように構成されているので、装着した際に装着者自身の手の指の爪に近い位置に削部の先端が位置するので、恰も自分の爪で歯石を除去する感覚で使用することができる。
【0011】
また、前記削部の位置は、指に前記リング部を嵌めた際に、丁度手指の爪がそのまま指先方向移動した位置となるように形成するのが望ましい。
【0012】
このように構成すれば、作業者が自分の手の指の爪で作業している感覚を最も発揮することができ、作業し易い。
【0013】
更に、指の奥方に嵌めるサブリングを備え、当該サブリングと紐や鎖等の脱落防止部材によって連結して構成してもよい。
【0014】
このように構成すれば、作業時に、万が一削部を備えたリング部の装着状態に緩みが生じた場合でも、動物の口の中に落ちて動物が誤飲する等の危険を未然に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明を適用することで、自身の指先の爪で作業する感覚で操作でき、且つ、作業時に動物の視野に入りにくい動物用スケーラーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態の一例として示した指先装着型安全スケーラーの全体図であって、(a)が正面図、(b)が右側面方向斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態の一例として示した指先装着型安全スケーラーの平面図である。
【
図3】(a)は
図2矢視A−A線に沿う断面図、(b)は
図2矢視B−B線に沿う断面図、(c)は
図2矢視C−C線に沿う断面図である。
【
図4】本発明の第2の実施例を示した全体構成図である。
【
図5】指先に装着して使用している状態の一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例である指先装着型安全スケーラー100について説明を加える。なお、図面理解容易の為、各部の大きさや寸法を誇張して表現している部分があり、実際の製品と必ずしも一致しない部分があることを付記しておく。また各図面は符号の向きに見るものとし、当該向きを基本に上下左右、手前、奥と表現する。
【0018】
〈指先装着型安全スケーラーの構成〉
図1〜3に示している通り、本発明の実施形態の一例として示す指先装着型安全スケーラー100の構成は非常にシンプルである。
【0019】
指先装着型安全スケーラー100は、指先に嵌合可能なリング部102と、該リング部102に取り付けられ歯の表面に付着した歯石や歯垢を削ぎ落とす削部104とを備えている。削部104は、略人間の手指の爪の形状に形成される。即ち、平面から見ても削部104の先端104aは円弧を描くように丸みを帯びた形状になっていると共に、その断面も円弧を描くような形状となっている(
図3参照)。
【0020】
また、削部104は、リング部102の外周面よりも内側に(軸心O側に)位置するように折り曲げて構成されている(
図1参照)。即ち、指にリング部102を嵌めた際に、丁度手指10の爪12がそのまま指先方向へ移動したところに削部104の先端104aが位置するように形成されている(
図4参照)。
【0021】
また、削部104は、先端104a側に近づくほど、及び、外周縁104bに近づくほど薄くなるように構成されている。即ち、
図3に示した断面図から明らかなように、削部104はリング部102側に近い方が厚く構成されている。更に、先端104a側に近づくほど外周縁104bが徐々に薄くなるように形成されている。
【0022】
なお、本実施形態においては、リング部102と削部104とは金属による一体成形とされているが、相応の強度並びに硬度を備えた樹脂等を利用してもよい。
【0023】
〈指先装着型安全スケーラーの作用・機能〉
本発明の実施形態の一例である指先装着型安全スケーラー100を使用する際は、単に、所望の指先にリング部102を嵌め込むのみである。このとき、当然ながら削部104が指先の方向を向くように装着する。なお本発明の実施形態の一例である指先装着型安全スケーラー100における削部104は、上記構成で説明でした通り、削部104全体がリング部102の外周面よりも内側となるように位置しているので、装着方向を間違えることはほぼ無い。
【0024】
装着後は、
図5に示しているように、動物の口を開けて削部104で歯石等を削りとればよい。なお、作業の場所に応じて、リング部102を回転させ削部104の方向を変えながら作業すると作業が行いやすい。
【0025】
このように、本願発明は、指先に嵌合可能なリング部102と、該リング部102に取り付けられ歯の表面に付着した歯石や歯垢を削ぎ落とす削部104とを備え、削部104が、略人間の手指の爪の形状に形成され、更に、当該削部104の先端全体が、102リング部の外周よりも軸心O側に位置するように構成されているので、作業を行っている際、動物の視野に入りにくく、恐怖感を与える可能性も低い。また、削部104は人間の手の指の爪の形状に形成されているので、削部104の先端や断面が弧を描く形状となっており(即ち、丸みを帯びた形状となっており)、動物の歯茎等を傷つけるリスクが低い。更に、歯と歯茎の境目は弧を描くような形状となっている部分が多いので、削部104の形状と親和性が高く、効率的に歯石等を除去することも可能である。もちろん、作業者自身の爪を直接使用するのではないため、衛生的にも優れているし、自身の爪が削れてしまうこともない。加えて、削部104の先端全体が、リング部102の外周よりも軸心O側に位置するように構成されているので、装着した際に装着者自身の手の指の爪に近い位置に削部104の先端が位置するので(
図4参照)、恰も自分の爪で歯石を除去する感覚で使用することができる。
〈その他の構成例〉
【0026】
上記では、リング部102と削部104とが一体成形された構成の図面を用いて説明しているが、リング部102と削部104とが着脱可能な構成であってもよい。例えば、図示はしないが、形状や大きさの異なる削部を数パターン用意しておき、対象とする動物や歯石等を除去する作業を行う歯に合わせて付け替え可能に構成してもよい。
【0027】
また、リング部102は、装着する指の太さや場所によってサイズを調整できるように調整機構が備わっていてもよい。
【0028】
また、
図4に示しているように、上記説明した構成に加えて、更に、指の奥方に嵌めるサブリング200を備え、当該サブリング200とリング部102とが紐や鎖等の脱落防止部材202によって連結されるような構成を採用してもよい。
【0029】
このように構成すれば、作業時に、万が一削部104を備えたリング部102の装着状態に緩みが生じた場合でも、動物の口の中に落ちて動物が誤飲する等の危険を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0030】
100・・・指先装着型安全スケーラー
102・・・リング部
104・・・削部
104a・・・削部凸面
104b・・・削部凹面
104c・・・削部外周縁
104d・・・削部先端
O・・・軸心
【要約】
【課題】
自身の指先の爪で作業する感覚で操作でき、且つ、作業時に動物の視野に入りにくい動物用スケーラーを提供する。
【解決手段】
指先に嵌合可能なリング部102と、該リング部102に取り付けられ歯の表面に付着した歯石や歯垢を削ぎ落とす削部104とを備えた指先装着型安全スケーラー100であって、前記削部104が、略人間の手指の爪の形状に形成され、更に、当該削部104の先端全体が、前記リング部の外周よりも軸心側に位置するように構成する。
【選択図】
図1