(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780492
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】制振材用シリコーン組成物およびこれを硬化させて得られる制振材
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20150827BHJP
C08G 77/38 20060101ALI20150827BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20150827BHJP
F16F 15/02 20060101ALN20150827BHJP
【FI】
C08L83/06
C08G77/38
C09K3/00 P
!F16F15/02 Q
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-175696(P2012-175696)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-34612(P2014-34612A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2014年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小川 雄史
【審査官】
山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−069326(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/090280(WO,A1)
【文献】
特開2001−240679(JP,A)
【文献】
特開2009−041037(JP,A)
【文献】
米国特許第05830950(US,A)
【文献】
特開昭54−034363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08K 3/00−13/08
C08G 77/00−77/62
C09K 3/00−3/32
F16F 15/00−15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、メチル基またはフェニル基を表し、平均繰り返し単位数mは、30〜1,500の整数を表す)で表される両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)及び一般式(2):Si(OR
2)
4(式中、R
2は、メチル基またはエチル基を表す)で表されるテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)を脱アルコール反応させて得られるトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)、一般式(3):R
33SiX(式中、R
3 は、炭素数1〜6の炭化水素基、Xはメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表す)で表されるシラン化合物(3)及び一般式(4):SiX´
4(式中、X´はメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表す)で表されるシラン化合物(4)を加水分解、縮合して得られるオルガノポリシロキサン(B)ならびに硬化触媒(C)を含有
し、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とオルガノポリシロキサン(B)のシロキサン単位のモル比率((A):(B))が、10:4〜15であることを特徴とする制振材用シリコーン組成物。
【請求項2】
オルガノポリシロキサン(B)の軟化温度が−20℃〜80℃であることを特徴とする請求項1記載の制振材用シリコーン組成物。
【請求項3】
テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)が1分子あたり平均で3〜6個のケイ素原子を含有するものである請求項1又は2に記載の制振材用シリコーン組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の制振材用シリコーン組成物を硬化させて得られる制振材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種部材や装置を振動から保護する制振材用シリコーン組成物およびこれを硬化させて得られる制振材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)等の光学信号読み取り装置、磁気ディスク、光磁気ディスク等の磁気信号読み取り装置、精密測定装置、精密機器、また振動が発生するポンプなどには、これらを振動による破損から保護するためゴムやエラストマーなどからなる制振材が使用されている。特に、半導体製造装置やその測定装置のステージには、nmオーダーの高い位置決め性能が要求され、高精度位置決めを行うためには、装置の定常振動、ステージ動作時の残留振動を抑える必要があり、制振材が用いられている。
【0003】
制振材としては、振動を吸収する制振性に加えて、長時間の使用に耐えられる高い耐久性、同時に振動を吸収することで発生する熱にも耐えられる高い耐熱性が求められている。これまで、高い制振性を有する材料としては、ウレタンゴムやアクリルゴムが用いられているが、これらは耐久性が低く、長期間の使用や多数回の振動により、形状が変形し制振性が失われたり、材料が液状化したりすることが多く見られている(特許文献1)。
一方、シリコーン系の制振材として、シリコーンオイル等の粘性液体に固体粉末を混合したものや、シリコーンゲルが知られている(特許文献2〜4)。これらは液体であるため、長時間の使用によりシリコーンオイルが浸み出し、変形が発生しやすく、さらに揮発性の環状シロキサンが発生するため、精密機器や、長時間振動し続ける機械にはできない問題があった。
【0004】
【特許文献1】特開2004−277604号公報
【特許文献2】特開2002−69299号公報
【特許文献3】特開平5−70693号公報
【特許文献4】特開2002−105316号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、硬化させることにより、優れた制振性を有しつつ、耐久性および耐熱性も合わせもつ制振材を与える制振材用シリコーン組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン、特定のオルガノポリシロキサン(B)を用いることにより上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は、メチル基またはフェニル基を表し、平均繰り返し単位数mは、30〜1,500の整数を表す)で表される両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)および一般式(2):Si(OR
2)
4(式中、R
2は、メチル基またはエチル基を表す)で表されるテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)を脱アルコール反応させて得られるトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)、一般式(3):R
33SiX(式中、R
3 は、炭素数1〜6の炭化水素基、Xはメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表す)で表されるシラン化合物(3)及び一般式(4):SiX´
4(式中、X´はメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表す)で表されるシラン化合物(4)を加水分解、縮合して得られるオルガノポリシロキサン(B)ならびに硬化触媒(C)を含有
し、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とオルガノポリシロキサン(B)のシロキサン単位のモル比率((A):(B))が、10:4〜15であることを特徴とする制振材用シリコーン組成物;前記制振材用シリコーン組成物を硬化させて得られる制振材に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、優れた制振性を有しつつ、長期間の使用によって制振性が低下しない耐久性と、振動吸収熱等による劣化を生じにくい耐熱性を併せ持つ制振材を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の制振材用シリコーン組成物はトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とオルガノポリシロキサン(B)ならびに硬化触媒(C)を含有することを特徴とする。
本発明のトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)は、一般式(1):
【化2】
【0010】
(式中、R
1は、メチル基またはフェニル基を表し、平均繰り返し単位数mは、30〜1,500の整数を表す)で表される両末端にシラノール基を有するポリシロキサンおよび一般式(2):Si(OR
2)
4(式中、R
2は、メチル基またはエチル基を表す)で表わされるテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)を脱アルコール反応させて得られる。
【0011】
本発明で用いる両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)は、前述の一般式(1)で表される主鎖の両末端にシラノール基を有するものであり、R
1がメチル基またはフェニル基であるシリコーンオイルである。
【0012】
このようなポリシロキサン(1)の主鎖構造としては、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等が挙げられ、2種類以上の主鎖構造を持つシロキサンを混合して用いても良い。本発明に用いるポリシロキサン(1)はその主鎖構造が、有機性共有結合(C−C、C−O、Si−Cなど)を含まず、耐熱性の強いシロキサン結合(Si−O−Si)で構成され、主鎖の両末端に、シラノール基(SiOH)が直接結合した構造を有していていることを特徴としている。一般的な市販のシリコーンオイルは、ポリエーテルやポリカーボネートなどを主鎖構造中に含むものや、分子末端がアミノプロピル基、グリシドキシプロピル基、カルビトール基、(メタ)アクリル基などの有機性官能基を持つものが多いが、有機性共有結合を含むこれらのシリコーンオイルを使うと、硬化物の耐熱性が落ち好ましくない。
【0013】
両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)は、主に硬化物の硬さ、オルガノポリシロキサン(B)との相溶性及び得られるシリコーン組成物の粘度を適切なものとする観点から、一般式(1)における平均繰り返し単位数mは30〜1,500程度、好ましくは50〜1,000のものを使用する。また、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)のゲル浸透クロマトグラフ(GPC、東ソー(株)製SC8010)によって測定した数平均分子量は500〜100,000程度、好ましくは800〜70,000のものを使用することが好ましい。数平均分子量を500以上とすることにより硬化物の硬度を適度に維持でき、クラック等の発生を抑制できるため好ましく、100,000以下とすることによりオルガノポリシロキサン(B)と混和しやすくなり、得られるシリコーン組成物の粘度を適度に維持でき、取り扱いが容易になるため好ましい。
【0014】
テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)は、前述の一般式(2)で表されるテトラアルコキシシランを部分的に加水分解、縮合させたものである。ここで、R
2としてはメチル基あるいはエチル基を示す。R
2としてメチル基またはエチル基以外の置換基を有するものを用いた場合には、シリコーン組成物の硬化が困難になる。一方、R
2がシラノール基の場合にはシリコーン組成物の粘度安定性が悪くなり取扱いにくくなる。
【0015】
このようなテトラアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどがあげられる。これらの中でも、シリコーン組成物の粘度安定性と硬化のしやすさからR
2がエチル基のテトラエトキシシランを用いるのが最も好ましい。一方、テトラアルコキシシランに代えて、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類、或いはジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類を用いると耐熱性が悪化するため好ましくない。
【0016】
テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)は、テトラアルコキシシランのアルコキシ基1当量に対し水を0.125〜0.33当量程度の範囲で加水分解反応させ、さらに縮合して得られる。
【0017】
また、テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)は、1分子あたり平均で3〜6個のケイ素原子を含有するものとすることが好ましい。1分子あたりの平均ケイ素原子数が3未満であると、脱アルコール反応時に未反応のまま系外に留去するテトラアルコキシシランの割合が増え、また硬化物の耐熱性が落ちるため好ましくない。また1分子あたりの平均ケイ素原子数が6を超えると、ポリシロキサン(1)との相溶性が得られにくく、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)の製造が困難な傾向がある。
【0018】
トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)は、上記両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)と、上記テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)とを脱アルコール反応させて製造する。両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)とテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)の使用割合は、特に制限されないが、テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)のモル数/両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)のモル数(モル比)を、好ましくは1.5〜2.5、更に好ましくは1.6〜2.0の範囲とする。1.5未満では脱アルコール反応途中にゲル化が生じる傾向があり、2.5を超えるとポリシロキサン(1)と反応しない未反応のアルコキシシラン部分縮合物(2)が増加する。
【0019】
具体的には、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)は、たとえば、上記両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(1)と上記テトラアルコキシシランの部分縮合物(2)を上記した使用割合で仕込み、加熱して生成するアルコールを留去しながらエステル交換反応を行なう。反応温度は、特に限定されないが、通常、90〜170℃程度、好ましくは110〜150℃であり、全反応時間は、通常、1〜15時間程度である。
【0020】
また、上記の脱アルコール反応に際しては、反応促進のために公知のエステル交換触媒を使用できる。該触媒としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ゲルマニウム、錫、鉛、アンチモン、砒素、セリウム、硼素、カドミウム、マンガン、ビスマスのような金属や、これらの酸化物、有機酸塩、ハロゲン化物、アルコキシド等があげられる。これらの中でも、特に有機錫、有機酸錫が好ましく、具体的には、ジオクチル錫ジラウレートやオクチル酸錫が好ましい。
【0021】
本発明に用いるトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)においては、使用されるポリシロキサン(1)の末端シラノール基の少なくとも80%がアルコキシシラン変性されていることが好ましい。反応率が80%未満であると、未反応のアルコキシシラン部分縮合物(2)が増加し、硬化時の揮発によってクラックを生じる傾向がある。一方、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)は、少量であれば、未反応のテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)を含有していても差し支えなく、未反応のテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)は、本発明のシリコーン組成物の硬化時に、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とともに硬化する。
【0022】
前記トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)は、ポリシロキサン(1)に由来するセグメントの両側にテトラアルコキシシランの部分縮合物(2)に由来するポリアルコキシシランセグメントを有するブロックコポリマーである。両端に位置するアルコキシシリル基はゾル−ゲル硬化によって、シリカ(SiO
2)を形成する。両端にアルコキシシリル基を集中させることで、アルコキシシリル基の分子内或いは分子間の反応性を向上させて硬化物中に未反応のアルコキシシリル基が残存することを抑制している。またこれらのシリカは、ポリシロキサン(1)に由来するセグメントによって共有結合で結ばれる。当該ポリシロキサン(1)に由来するセグメントにはセグメント中に反応性基を含まず、硬化時に生じる応力を緩和し、発泡を抑制、更に硬化物に強靭性、柔軟性を与える。
【0023】
本発明のオルガノポリシロキサン(B)は、一般式(3):R
33SiX(式中、R
3は、炭素数1〜6の炭化水素基、Xはメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表わす)で表されるシラン化合物および一般式(4):SiX´
4(式中、X´はメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表わす)で表されるシラン化合物を加水分解、縮合することで得られる。
【0024】
一般式(3):R
33SiX(式中、R
3は、炭素数1〜6の炭化水素基、Xはメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表わす)で表されるシラン化合物(3)と一般式(4):SiX´
4(式中、X´はメトキシ基、エトキシ基又はクロロ基を表わす)で表されるシラン化合物(4)の使用割合は、シロキサン単位のモル数で、シラン化合物(3)/シラン化合物(4)=0.3以上であることが好ましい。この範囲を下回ると、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)との相溶性が悪くなり、均一にならず、十分な制振性が発現しない場合がある。
【0025】
加水分解反応に必要な水の量は、[加水分解反応に用いる水のモル数]/[前記一般式(3)および一般式(4)に含まれる各アルコキシ基またはクロロ基の合計モル数](モル比)が0.4以上10以下が好ましく、より好ましくは1である。前記モル比の範囲とすることにより、加水分解されずに残存するアルコキシ基の数を少なくし、かつ、縮合反応(脱水反応)の際に除くべき水の量を少なくして効率よく製造することができる。
【0026】
加水分解反応に用いる触媒としては、特に限定はされず、公知の加水分解触媒を任意に用いることができる。加水分解触媒としては、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基を挙げることができる。有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸(蓚酸)、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができる。無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸等を挙げることができる。有機塩基としては、例えばピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等を挙げることができる。無機塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。
【0027】
触媒の添加量は、特に限定されないが、通常、シラン化合物(3)およびシラン化合物(4)の合計量100重量部に対して、0.1〜25重量部である。反応温度、時間はシラン化合物の種類により任意に設定できるが、通常0〜100℃程度、好ましくは20〜60℃、1分間〜2時間程度である。該加水分解反応は、溶剤の存在下または不存在下で行うことができる。溶剤の種類は特に限定されず、任意の溶剤を1種類以上選択して用いることができる。
【0028】
縮合反応は、従来公知の脱水縮合触媒を任意に用いることができる。脱水縮合触媒としては、前記の加水分解触媒に例示したものがあげられる。反応温度、時間はそれぞれ任意に設定できるが、通常は40〜150℃程度、好ましくは60〜100℃、30分〜12時間程度である。
【0029】
オルガノポリシロキサン(B)は、軟化温度が−20℃以上、80℃以下とすることが好ましい。当該範囲とすることでシリコーン組成物を硬化させて制振材にして使用される際に、−40℃から100℃の温度範囲における制振性が向上するため好ましい。
オルガノポリシロキサン(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(M
w)が10,000以下にあることが好ましく、3,000以下であることがより好ましい。オルガノポリシロキサン(B)の重量平均分子量が10,000以下とすることにより、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)との相溶性がより良好なものとなり、制振性が向上する。
【0030】
トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とオルガノポリシロキサン(B)のシロキサン単位のモル比率が、10:4〜15であることが好ましい。モル比率が10:4未満であると、制振性が不足する場合がある。10:15を超えると、硬化した際に、硬くなりすぎて1mmを越えるようないわゆる厚物の成形物を作製することが困難になる傾向があり、好ましくない。
【0031】
本発明のシリコーン組成物に用いる硬化触媒(C)は、前記トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)のアルコキシシラン部位と、前記オルガノポリシロキサン(B)のシラノール部位を硬化させるために必要とされる成分である。硬化触媒(C)としては、シリコーン組成物の安定性、得られる硬化物の硬度、得られる硬化物の耐熱性等に優れることから、有機金属系触媒が用いられる。有機金属系触媒としては、例えば、亜鉛、鉄、アルミニウム、チタン、錫、コバルト、ビスマス等の原子を含有するものが挙げられ、好ましくは亜鉛、アルミニウム、錫、ビスマス原子を含有するものである。具体的には、有機酸亜鉛化合物、有機酸錫化合物、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機酸ビスマス化合物等が挙げられる。より具体的には、オクチル酸亜鉛、安息香酸亜鉛、p-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、塩化アルミニウム、過塩素酸アルミニウム、リン酸アルミニウム、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、アルミニウムブトキシビスエチルアセトアセテート、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、オクチル酸錫、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸錫、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、オクチル酸ビスマス等が挙げられ、好ましくはオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレートである。これらは、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0032】
硬化触媒(C)の配合量は、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)とオルガノポリシロキサン(B)の合計を100重量部とした時、通常0.1〜5重量部程度である。0.1重量部以上とすることで硬化が容易になるため好ましく、5重量部以下とすることで、シリコーン組成物の安定性が良好となり、さらに硬化物の耐熱性が向上するため好ましい。
【0033】
本発明の制振材用シリコーン組成物には、上記記載のトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)、オルガノポリシロキサン(B)、硬化触媒(C)のほかに、本発明の作用・効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を配合することができる。その他の任意成分としては、例えば、無機フィラー、無機蛍光体、老化防止剤、ラジカル禁止剤、紫外線吸収剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定改良剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、導電性付与剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤、有機溶媒等が挙げられる。これらの任意成分は、一種を単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0034】
無機フィラーを配合することにより、得られる硬化物の屈折率や組成物の流動性が適切な範囲となったり、該組成物を硬化物の強度が向上させることができる。無機フィラーとしては、特に限定されないが、他の特性を低下させない微粒子状のものが好ましく、例えば、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、黒鉛等が挙げられる。
【0035】
本発明の制振材用シリコーン組成物は、前記トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)、オルガノポリシロキサン(B)、硬化触媒(C)および場合により含有される任意成分を公知の方法により混合して調製することができる。具体的には、例えば、トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)、オルガノポリシロキサン(B)、硬化触媒(C)、および上記任意成分を、通常、市販の攪拌機(例えば、THINKY CONDITIONING MIXER((株)シンキー製)等)に入れて、1〜5分間程度、均一に混合することによって、本発明の組成物を調製することができる。
【0036】
また、前記制振材用シリコーン組成物を硬化させる際の硬化方法は、例えば、80〜200℃で1〜12時間程度行うことができるが、80〜200℃の範囲でステップキュアをすることにより行うことが好ましい。例えば、ステップキュアは、2段階または3段階以上を経て、好ましくは以下の3段階を経て行うことができる。まず、本発明の組成物を、通常、80〜120℃程度で低温硬化させる。硬化時間は、特に限定されないが、通常、0.5〜2時間程度の範囲でよい。次いで、当該低温硬化物を、通常、125〜175℃程度で加熱硬化させる。硬化時間は、特に限定されないが、通常、0.5〜2時間程度の範囲でよい。最後に、当該硬化物を180〜200℃程度で加熱硬化させる。硬化時間は、特に限定されないが、通常、1〜10時間程度の範囲でよい。より具体的には、該組成物を80℃で1時間低温硬化させ、次いで150℃で1時間加熱硬化させ、さらに200℃で8時間加熱硬化させることが好ましい。これらの段階を経たステップキュアにより、得られる組成物は硬化性に優れ、気泡の発生も適切な範囲となる。更に、ステップキュアにより、1mm以上の厚みを有する硬化物を得ることができるため特に好適である。
【0037】
また本発明の制振材用シリコーン組成物を硬化して得られる制振材は、主鎖構造がポリシロキサン(1)に由来するシロキサン結合(Si−O−Si)、架橋部位がアルコキシシラン部分縮合物(2)、かつオルガノポリシロキサン(B)に由来するシリカ(SiO
2)構造を持ち、有機性の共有結合を含まないため熱分解しにくく、特に高温下において耐熱性を求められる条件で使用する制振材として有用である。
【実施例】
【0038】
以下、実施例および比較例をあげて本発明を具体的に説明する。なお、各例中、「部」および「%」は特記しない限り重量基準である。
【0039】
合成例A1(トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)の製造)
攪拌機、冷却管、温度計、窒素導入管を備えた反応装置に、両末端シラノールのポリシロキサン(1)(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン(同)製,商品名「YF3800」、数平均分子量6000、一般式(1)において、R
1がメチル基、m=80のもの)1900部とテトラエトキシシラン部分縮合物(2)(一般式(2)において、R
2がエチル基、n=5のもの)471.83部を仕込み加熱した。140℃になったときに触媒としてジブチル錫ジラウレート0.48部を加え、そのまま140℃で6時間反応させてトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A1)を得た。なお、仕込み時の(アルコキシシラン部分縮合物(2)のモル数/ポリシロキサン(1)のモル数(モル比))=2.0である。反応前と反応後の質量差から留去したエタノール量は32.2部であることを確認した。
【0040】
合成例A2(トリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A)の製造)
合成例1と同様の装置に、両末端シラノールのポリシロキサン(1)(Bluestar Silicones製,商品名「48V3500」、数平均分子量35,000、一般式(1)において、R
1がメチル基、m=470のもの)1000部とテトラメトキシシラン部分縮合物(2)(一般式(2)において、R
2がメチル基、n=5のもの)19.9部を仕込み加熱した。130℃になったときに触媒としてジブチル錫ジラウレート0.03部を加え、そのまま130℃で6時間反応させてトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A2)を得た。なお、仕込み時の(アルコキシシラン部分縮合物(2)のモル数/ポリシロキサン(1)のモル数(モル比))=1.5である。反応前と反応後の質量差から留去したメタノール量は2.5部であることを確認した。
【0041】
[実施例1](制振用シリコーン組成物およびシート状制振材の製造)
合成例A1で得られたトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A1)65.8部と、オルガノポリシロキサン(B)商品名「10350tt」(Bluestar Silicones製、軟化温度30℃、固形分65%)を61.5部、硬化触媒としてオクチル酸錫を1.0部混合し、シリコーン組成物とした。このシリコーン組成物をテフロン(登録商標)カップ中に硬化後の厚みが3mmになるように流し入れ、80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、硬化させ、シート状制振材を得た。
【0042】
[実施例2](シリコーンゴム組成物およびシリコーンゴムシートの製造)
合成例A2で得られたトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A2)60.7部と、実施例1で使用したオルガノポリシロキサン(B)を76.9部、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレートを2.0部混合し、シリコーン組成物とした。このシリコーン組成物をテフロン(登録商標)カップ中に硬化後の厚みが3mmになるように流し入れ、80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、硬化させ、シート状制振材を得た。
【0043】
[実施例3](制振用シリコーン組成物およびシート状制振材の製造)
合成例A2で得られたトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A2)50.6部と、実施例1で使用したオルガノポリシロキサン(B)を76.9部、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレートを1.2部混合し、シリコーンゴム組成物とした。このシリコーン組成物をテフロン(登録商標)カップ中に硬化後の厚みが3mmになるように流し入れ、80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、硬化させ、シート状制振材を得た。
【0044】
[比較例1]
エーテル系ウレタンエラストマー商品名「ソルボセイン022M」(三進興産(株)製)、厚み3mmのものをシート状制振材とした。
【0045】
[比較例2]
合成例A2で得られたトリアルコキシシリル基末端アルコキシシラン変性ポリシロキサン(A2)100部と、硬化触媒としてジオクチル錫ジラウレートを1.0部混合し、シリコーン組成物とした。このシリコーン組成物をテフロン(登録商標)カップ中に硬化後の厚みが3mmになるように流し入れ、80℃で1時間、150℃で1時間、200℃で1時間加熱し、硬化させ、シート状制振材を得た。
【0046】
[比較例3]
両末端ジメチルヒドロキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン生ゴム(Bluestar Silicones製、平均重合度が1,400)100部、側鎖に2.4モル%のビニル基を有する両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体(Bluestar Silicones製、平均重合度が500)0.8部、メチルフェニルポリシロキサン(信越化学工業株式会社製、平均重合度80)12部、BET法比表面積が200m2 /gのヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製、アエロジル200)42.5部、けいそう土(昭和化学工業(株)製、ラヂオライトF)10部をニーダーミキサーに投入して、100℃で混練してシリコーンゴムベースコンパウンドを製造した。
【0047】
このコンパウンド100部に、硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン0.15部を添加して二本ロール上で均一混合してシリコーンゴム組成物を製造した。このシリコーンゴム組成物を170℃で10分間の条件下で圧縮して厚さ3mmのシリコーンゴムのシート状制振材とした。
【0048】
上記により得られたシート状制振材を以下の方法で性能を評価した。
(貯蔵弾性率、損失正接)
実施例1〜3および比較例1〜3で得られたシート状制振材をそれぞれ10mm×30mmにカットして試料とし、粘弾性測定器(セイコーインスツル(株)製、商品名「DMS6100」、測定条件:振動数10Hz、スロープ3℃/分、測定温度0℃〜150℃)を用いて貯蔵弾性率、損失弾性率を測定して、損失正接を算出した。機械強度として25℃と100℃での貯蔵弾性率を、制振性として25℃と100℃での損失正接を評価した。
(アウトガス)
実施例1〜3および比較例1〜3で得たシート状制振材をそれぞれ30mm×30mmにカットして試料とし、順風乾燥機で180℃100時間加熱した際、下記式によりアウトガス量を測定した。
アウトガス(%)=(初期の重さ−180℃100時間後の重さ)/(初期の重さ)×100
(多数回振動後の外観)
実施例1〜3および比較例1〜3で得たシート状制振材をそれぞれ50mm×50mmにカットして試料とした。試料を金属板で挟み、0.3mm圧縮するように加圧しては除圧することを1秒間に10回の速度で1000万回繰り返した。所定の回数を上下動させた後に、試料に破断が見られるものを破壊として、破壊されるかどうかを確認した。同時に、液状成分の浸み出しが見られるか目視にて評価した。
【0049】
【表1】