(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記分流室には、洗浄水がリム第一導水路に流入するリム第一導水路流入口と、洗浄水がゼット導水路に流入するゼット導水路流入口と、洗浄水がリム第二導水路に流入するリム第二導水路流入口と、が形成され、且つ、上記分流室の上流側から、上記リム第一導水路流入口、上記ゼット導水路流入口、上記リム第二導水路流入口の順序で配置されている請求項1の水洗大便器。
上記分流室の上記ゼット導水路流入口及び上記リム第二導水路流入口は、上記排水口から上記リム第一導水路流入口までの距離よりも上記排水口からの距離が離れた位置に配置され、且つ上記リム第二導水路流入口は、上記ゼット導水路流入口近傍に配置されている請求項3記載の水洗大便器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような水洗大便器は、貯水タンクの底部の開口の下方から前方に延びる導水路が、水洗大便器のほぼ左右中央の共通の領域で、2つのリム導水路と、ゼット導水路とにほぼ同時に3つの流路に分岐されるように形成されている。
このような水洗大便器においては、貯水タンクから供給された洗浄水が、最初に、ゼット導水路に流下してゼット吐水口からの吐水が行われてサイホン作用を比較的早いタイミングで発生させ、その後に、リム導水路に流入した洗浄水の2つのリム吐水口からの吐水が開始され、ボウル部の旋回流による洗浄が開始される。
近年の節水化の要請により、この水洗大便器において便器の洗浄水量を減少させて節水化する場合、ゼット吐水口から吐水される洗浄水量が減少するためにサイホン作用の発生が継続する時間が節水化前の継続時間と比べて短くなり、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができない場合がある。その結果として、汚物がサイホン作用により排出されず、ボウル部内に汚物が残存するといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、洗浄水により便器を洗浄する水洗大便器において、便器
本体へ供給する洗浄水を貯水し且つ洗浄水を排出する排水口が形成された貯水タンク
装置と、ボウル形状の汚物受け面と、上縁部にあり内周面を形成するリム部とを備えたボウル部と、このボウル部の下方にその入口が接続され汚物をサイホン作用により排出する排水路と、ボウル部の側方に対応するリム部の位置から洗浄水を前方に向けて吐水し、洗浄水がリム部の内周面に沿って旋回してボウル部を洗浄するリム第一吐水部と、 ボウル部の後方に対応するリム部の位置から洗浄水を吐水し、洗浄水がリム第一吐水部から吐水される洗浄水の旋回方向と同一方向にリム部の内周面に沿って旋回してボウル部を洗浄するリム第二吐水部と、排水路の入口に向かって洗浄水を吐水するゼット吐水部と、貯水タンク
装置の排水口から流入した洗浄水を分流する分流室と、分流室からリム第一吐水部へ洗浄水を導くリム第一導水路と、分流室からゼット吐水部へ洗浄水を導くゼット導水路と、分流室からリム第二吐水部へ洗浄水を導くリム第二導水路と、を備え、
分流室、リム第一導水路、ゼット導水路、リム第二導水路が、リム第一吐水部から洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部
及びリム第二吐水部から
洗浄水の吐水が開始され、サイホン作用が終了する時又は終了する前に、リム第一吐水部及びリム第二吐水部から吐水された洗浄水によるボウル部の洗浄が終了するように構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、先ず、リム第一吐水部から洗浄水の吐水が開始され、ボウル部の旋回流による洗浄の開始を従来よりも早めることができ、従来よりも早いタイミングで、汚物をボウル部内の溜水の中央に集めることができる。さらに、リム第一吐水部から洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部から洗浄水の吐水が開始され、ゼット吐水部から吐水された洗浄水とリム第一吐水部からボウル部に吐水された洗浄水とが相俟って、従来よりも遅いタイミングでサイホン作用により汚物を排出することができる。
さらに、リム第一吐水部から洗浄水の吐水が開始された後に、リム第二吐水部から洗浄水の吐水が開始され、リム第一吐水部から吐水された洗浄水で洗浄しにくいボウル部の後方領域をすばやく洗浄することができると共にサイホン作用の発生が継続している間に汚物をボウル部内の溜水の中央に集めることができる。この結果、本発明によれば、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、分流室には、洗浄水がリム第一導水路に流入するリム第一導水路流入口と、洗浄水がゼット導水路に流入するゼット導水路流入口と、洗浄水がリム第二導水路に流入するリム第二導水路流入口と、が形成され、且つ、分流室の上流側から、リム第一導水路流入口、ゼット導水路流入口、リム第二導水路流入口の順序で配置されている。
このように構成された本発明においては、先ず、洗浄水は、分流室の上流側から、リム第一導水路流入口に流入し、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、次に、洗浄水は、ゼット導水路流入口に流入し、ゼット吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、最後に、洗浄水は、リム第二導水路流入口に流入し、リム第二吐水部からの洗浄水の吐水が開始される。従って、先ず、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、ボウル部の旋回流による洗浄の開始を従来よりも早めることができ、従来よりも早いタイミングで、汚物をボウル部内の溜水の中央に集めることができる。次に、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、従来よりも遅いタイミングで、ゼット吐水部から吐水された洗浄水とリム第一吐水部からボウル部に吐水された洗浄水とが相俟って、サイホン作用により汚物を排出することができ、最後に、リム第二吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、リム第一吐水部から吐水された洗浄水で洗浄しにくいボウル部の後方領域をすばやく洗浄することができると共にサイホン作用の発生が継続している間に汚物をボウル部内の溜水の中央に集めることができる。この結果、本発明により、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、分流室のリム第一導水路流入口は、貯水タンク
装置の排水口近傍に配置されている。
このように構成された本発明においては、貯水タンク
装置から排出された洗浄水がリム第一導水路流入口からリム第一吐水部へ確実に早いタイミングで導かれ、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が最も早く開始されることができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、分流室のゼット導水路流入口及びリム第二導水路流入口は、排水口からリム第一導水路流入口までの距離よりも排水口からの距離が離れた位置に配置され、且つリム第二導水路流入口は、ゼット導水路流入口近傍に配置されている。
このように構成された本発明においては、確実に、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が確実に最も早く開始されることができる。次に、リム第一吐水部からの洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部からの洗浄水の吐水が開始され、より確実に、従来よりも遅いタイミングで、ゼット吐水部から吐水された洗浄水とリム第一吐水部からボウル部に吐水された洗浄水とが相俟って、サイホン作用により汚物を排出することができる。さらに、リム第二導水路流入口は、ゼット導水路流入口近傍に配置されているので、ゼット吐水部からの洗浄水の吐水が開始された後に、比較的早いタイミングで、リム第二吐水部からの洗浄水の吐水が開始されることができる。この結果、本発明により、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水洗大便器によれば、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1乃至
図3を参照して、本発明の一実施形態による水洗大便器を説明する。
図1は本発明の一実施形態による水洗大便器を示す平面図であり、
図2は
図1に示す水洗大便器の縦断面図である。
【0013】
図1に示すように、符号1は水洗大便器を示し、この水洗大便器1は、便器本体2と、この便器本体2の後方上部に取付けられた貯水タンク装置4を備えている。貯水タンク装置4は、洗浄開始前において、外部の給水管(図示せず)により供給された洗浄水を貯水した状態にされるようになっており、さらに、貯水タンク装置4には、排水弁(図示せず)が設けられ、操作レバー(図示せず)、操作スイッチ(図示せず)等の操作により開閉し、便器本体2へ洗浄水を供給するようになっている。
便器本体2には、この便器本体2の上部の前方側にボウル部6が、後方側の上部には分流室8が、分流室8の下方にはボウル部6と連通する排水トラップ管路10が、それぞれ形成されている。
【0014】
ボウル部6はボウル形状をなす汚物受け面12と、上縁部を構成し且つ内側に向かう内周面を形成するリム14を有し、汚物受け面12とリム14の内周面はスムーズな曲面で連続している。リム14の内周面は内方に向かってある程度オーバーハングした形状になっている。ボウル部6は、楕円形状であり、前端と後端の領域は曲率半径が小さく、平面視で右側と左側の領域は曲率半径が大きくなっている。ボウル部6の下方には溜水を貯溜する溜水部16が形成されている。なお、
図2においては、溜水部16の溜水面W0を一点鎖線で示している。
【0015】
汚物受け面12の中央近傍の溜水面W0の下方には排水トラップ管路10の排水トラップ管路入口10aが開口し、この排水トラップ管路入口10aから上昇路10bが後方に伸び、この上昇路10bには下降路10c(縦管)が連続し、下降路10cの下端は、ジョイント(図示せず)を介して排出管(図示せず)に接続されている。
【0016】
水洗大便器1の分流室8の後方側の上方には、洗浄水を貯留する貯水タンク装置4が設けられている。この貯水タンク装置4の底面4aには、水洗大便器1の分流室8に排水する排水口4bが形成されている。
この貯水タンク装置4は、節水型の貯水タンク装置であり、貯水される洗浄水量は、3.8リットルである。なお、この貯水タンク装置4に貯水される洗浄水量は、3.6リットル乃至4.2リットルの範囲が好ましい。
【0017】
さらに、この便器本体2には、ボウル部6の側方に対応するリム14の位置(ボウル部6の前後方向の中心軸線Aを中心として一方の側のボウル部6の小さな曲率半径から大きな曲率半径に変化する近傍位置)から洗浄水を前方に向けて吐水し、洗浄水がリム14の内周面に沿って旋回してボウル部6洗浄するリム第一吐水部18と、このボウル部6の後方に対応するリム14の位置(リム第一吐水部18と他方の側のボウル部6の大きな曲率半径から小さな曲率半径に変化する近傍位置)から洗浄水を吐水し、洗浄水がリム第一吐水部18から吐水される洗浄水の旋回方向と同一方向にリム14の内周面に沿って旋回してボウル部6を洗浄するリム第二吐水部20とが形成され、洗浄水が旋回しながら下降してボウル部6の表面上の汚物を洗浄できるようになっている。
また、ボウル部6の中心下部には、分流室8から洗浄水が供給されるゼット吐水部(ジェット吐水口)22が形成され、このゼット吐水部22から洗浄水が排水トラップ管路10の排水トラップ管路入口10aに向けて吐水され、サイホンを短時間で発生させるようになっている。
【0018】
さらに、便器本体2内には、分流室8からリム第一吐水部18へ洗浄水を導くリム第一導水路24と、分流室8からゼット吐水部22へ洗浄水を導くゼット導水路26と、分流室8からリム第二吐水部20へ洗浄水を導くリム第二導水路28と、がそれぞれ形成されている。
【0019】
次に、
図1乃至4により、分流室8についてより詳細に説明する。
図3は、本発明の一実施形態による水洗大便器の分流室のゼット導水路流入口及びリム第二導水路流入口を斜め後方上方より見た概略斜視図であり、
図4(a)は、本発明の一実施形態による水洗大便器の分流室と、この分流室に接続されるリム第一導水路、ゼット導水路及びリム第二導水路を概念的に示す図であり、
図4(b)は、
図4(a)のうちゼット導水路を分かりやすく示すために、分流室と、この分流室に接続されるゼット導水路とを実線により示し、リム第一導水路及びリム第二導水路を破線により示す図であり、
図4(c)は、
図4(a)のうちリム第二導水路を分かりやすく示すために、分流室と、この分流室に接続されるリム第二導水路とを実線により示し、リム第一導水路及びゼット導水路を破線により示す図である。
便器本体2内の分流室8は、便器中央後方から便器前方右側に向かって延びる導水路を形成し、貯水タンク装置4の排水口4bから流入した洗浄水を3つの流れに分流する分流室であり、分流室8には、洗浄水がリム第一導水路24に流入するリム第一導水路流入口8aと、洗浄水がゼット導水路26に流入するゼット導水路流入口8bと、洗浄水がリム第二導水路28に流入するリム第二導水路流入口8cと、が形成され、且つ、分流室8の上流側から、リム第一導水路流入口8a、ゼット導水路流入口8b、リム第二導水路流入口8cの順序で配置されている。
分流室8のリム第一導水路流入口8aは、リム第一導水路24のリム第一導水路流入口部24aに接続されている。分流室8のゼット導水路流入口8bは、ゼット導水路26のゼット導水路流入口部26aに接続されている。分流室8のリム第二導水路流入口8cは、リム第二導水路28のリム第二導水路流入口部28aに接続されている。
【0020】
分流室8のリム第一導水路流入口8aは、貯水タンク装置4の排水口4b近傍に配置されている。より具体的には、リム第一導水路流入口8aは、排水口4bの前方側近傍且つ便器前後方向に延びる中心軸線Aのわずかに左側近傍に配置され、且つ便器前方側への開口部を形成している。リム第一導水路流入口8aが排水口4b近傍に配置されるので、リム第一吐水部18からの吐水を最初に出来る限り早いタイミングで行うことができる。
これに対し、分流室8のゼット導水路流入口8bは、貯水タンク装置4の排水口4bからリム第一導水路流入口8aよりも離れた位置に配置されている。より具体的には、ゼット導水路流入口8bは、排水口4bからリム第一導水路流入口8aまでの距離よりも、排水口4bからゼット導水路流入口8bまでの距離が長くなるように配置され、且つ便器前後方向に延びる中心軸線Aから一定距離離れた便器側部近傍に配置されている。ゼット導水路流入口8bは、分流室8の底部8dが下方に開口した開口部を形成している。
分流室8のリム第二導水路流入口8cも、貯水タンク装置4の排水口4bからリム第一導水路流入口8aよりも離れた位置に配置されている。より具体的には、リム第二導水路流入口8cは、排水口4bからリム第一導水路流入口8aまでの距離よりも、排水口4bからリム第二導水路流入口8cまでの距離が長くなるように配置され、さらに、排水口4bからゼット導水路流入口8bまでの距離よりも、排水口4bからリム第二導水路流入口8cまでの距離が長くなるように配置されている。
さらに、リム第二導水路流入口8cは、便器前後方向に延びる中心軸線Aから一定距離離れた便器側部近傍に配置され、且つ分流室8のゼット導水路流入口8bの上方空間Sの前方側の一部が開口された形状として形成されている。
【0021】
次に、
図3及び
図4により、リム第一導水路24と、ゼット導水路26と、リム第二導水路28についてより詳細に説明する。
リム第一導水路24は、リム第一導水路流入口8aに接続され、リム第一導水路流入口部24aから中心軸線Aに沿って前方に延びボウル部6の内周面の裏側を弧を描くように湾曲して延び、リム第一吐水部18に至る導水路を形成している。
ゼット導水路26は、下方に開口したゼット導水路流入口8bに接続され、ゼット導水路流入口部26aから下方且つ前方に延び、ボウル部6の中央近傍においてU字形に屈曲され、後方に向かって開口するゼット吐水部22に至る導水路を形成している。
リム第二導水路28は、リム第二導水路流入口8cに接続され、リム第二導水路流入口部28aから流路がボウル部6の内周面に沿う向きに屈曲され、リム第二吐水部20に至る導水路を形成している。
【0022】
リム第一導水路24の長さは、最初に洗浄水がリム第一導水路流入口部24aからリム第一導水路24に流入を開始すると、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が最初に開始されるような長さに形成されている。
ゼット導水路26の長さは、リム第一導水路24に流入を開始後に、2番目に、洗浄水がゼット導水路流入口部26aからゼット導水路26に流入を開始すると、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水の開始後、2番目に開始されるような長さに形成されている。
リム第二導水路28の長さは、最後に、洗浄水がリム第二導水路流入口部28aからリム第二導水路28に流入を開始すると、リム第二吐水部20からの洗浄水の吐水が、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水の開始後、最後に開始されるような長さに形成されている。
【0023】
なお、リム第一導水路流入口8a、ゼット導水路流入口8b及びリム第二導水路流入口8cの開口面積の大きさの関係は、ゼット導水路流入口8bの開口面積>リム第一導水路流入口8aの開口面積>リム第二導水路流入口8cの開口面積の関係にされている。
【0024】
次に、上述した本発明の実施形態による水洗大便器の作用(動作)を説明する。
【0025】
具体的には、先ず、使用者が貯水タンク装置4の操作レバー、操作スイッチ等を操作すると、貯水タンク装置4から洗浄水が排出され、便器本体2への洗浄水の供給が開始される。この後、洗浄水は、貯水タンク装置4の排水口4bから落下して、分流室8に流入する。分流室8に流入した洗浄水は、先ず、リム第一導水路流入口8aに流入する洗浄水と、ゼット導水路流入口8b及びリム第二導水路流入口8cに供給される洗浄水とに分流される。
リム第一導水路流入口8aは、貯水タンク装置4の排水口4bの近傍に配置されているので、排水口4bから流入した洗浄水は、直ちにリム第一導水路流入口8aに到達し、リム第一導水路流入口部24aからの流入が開始される。
次に、このゼット導水路流入口8b及びリム第二導水路流入口8cに供給されるように分流された洗浄水のうち一部は、分流室8の底部8dに開口したゼット導水路流入口8bに到達し、ゼット導水路流入口部26aからの流入が開始される。洗浄水がゼット導水路流入口8bからゼット導水路流入口部26aに流入するにつれ、ゼット導水路流入口8bの直上の上方空間Sが満水にされる。上方空間Sが洗浄水で満水になると、洗浄水が上方空間Sの前方側で開口しているリム第二導水路流入口8cに到達し、リム第二導水路流入口部28aからの流入が開始される。このようにして、洗浄水は、ゼット導水路流入口8bと、リム第二導水路流入口8cとに分流される。
【0026】
最初に、リム第一導水路流入口部24aからリム第一導水路24に流入を開始した洗浄水は、リム第一導水路24を流れ、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が最初に開始される。
次に、ゼット導水路流入口部26aからゼット導水路26に流入を開始した洗浄水は、ゼット導水路26を流れ、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水の開始後、2番目に開始される。
最後に、リム第二導水路流入口部28aからリム第二導水路28に流入を開始した洗浄水は、リム第二導水路28を流れ、リム第二吐水部20からの洗浄水の吐水が、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水の開始後、最後に開始される。
【0027】
従って、このようなリム第一吐水部18、ゼット吐水部22及びリム第二吐水部20からの洗浄水の吐水の開始の順番と、便器本体2のボウル部6の洗浄の関係を次に説明する。
上述の様に貯水タンク装置4から便器本体2への洗浄水の供給が開始されると、先ず、リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始され、ボウル部6の旋回流による洗浄の開始のタイミングを、従来からのゼット吐水部22から最初に洗浄水が吐水される場合よりも、早めることができる。リム第一吐水部18から吐水された洗浄水は、主に、ボウル部6内の一方の側(例えば、前方から見て左側)の曲率半径の大きな領域、前側の曲率半径の小さな領域、他方の側(例えば、前方から見て右側)の曲率半径の大きな領域を旋回するように流れながら溜水部16の中央に向かって流下する。このように旋回しながら流下する流れにより、汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。
リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部22から排水トラップ管路入口10aに向けて洗浄水の吐水が開始され、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水とリム第一吐水部18からボウル部6に吐水され溜水部16に流下された洗浄水とが相俟って、サイホン作用を従来よりも遅らせたタイミングで、さらに、従来よりも強く発生させるようになっている。また、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水が、旋回流を形成しながら流下し、汚物等を溜水中に押し込みながら、サイホン作用により汚物を効果的に排出することができる。
【0028】
最後に、リム第二吐水部20から洗浄水の吐水が開始され、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水で洗浄しにくいボウル部6の後方の曲率半径の大きな領域を比較的すばやく且つ良好に洗浄することができると共に、主にこの後方領域から旋回するように流れながら溜水部16の中央に向かって流下するので、便器洗浄後半においても汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。
従って、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水により生じるサイホン作用が終了する時又は終了する前に、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水がボウル部6の洗浄を終了し、且つリム第二吐水部20から吐水された洗浄水がボウル部6の洗浄を終了するようになっている。このようにして、少ない洗浄水量で洗浄する場合にも、ボウル部6の全領域を効果的に洗浄することができ、且つ汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めてサイホン作用によって排出することができ、サイホン作用が終了するまでに汚物を効果的に排出することができる。
【0029】
本実施形態においては、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水によるサイホン作用の終了時又は終了前には、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水によるボウル部6の洗浄と、リム第二吐水部20から吐水された洗浄水によるボウル部6の洗浄とが完了している。これにより、本実施形態による水洗大便器1によれば、節水化により少ない洗浄水量で洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
ゼット吐水部22から吐水される洗浄水量が減少して、サイホン作用が終了した後、溜水部16の溜水面W0までリフィール水が供給されて、便器本体2の洗浄動作が終了する。
【0030】
次に、
図5により、本発明の一実施形態による水洗大便器における洗浄水の流量と時間との関係を説明する。
図5は、本発明の一実施形態による水洗大便器における洗浄水の瞬間流量(L/min)と時間(sec)との関係を示す線図である。
図5においては、本実施形態による水洗大便器の貯水タンク装置4の排水口4b直下の分流室8内において測定された洗浄水の瞬間流量をFallとし、本実施形態による水洗大便器1のリム第一吐水部18において測定された洗浄水の瞬間流量をF1とし、本実施形態による水洗大便器1のゼット吐水部22において測定された洗浄水の瞬間流量をF2とし、本実施形態による水洗大便器1のリム第二吐水部20において測定された洗浄水の瞬間流量をF3として示している。
図5に示すように、洗浄を開始すると、貯水タンク装置4の排水口4bから分流室8に洗浄水が供給されて瞬間流量Fallが上昇した後、先ず、リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始されて瞬間流量F1が上昇し、リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部22から洗浄水の吐水が開始されて瞬間流量F2が上昇し、最後に、リム第二吐水部20から洗浄水の吐水が開始されて瞬間流量F3が上昇する。
ここで、ゼット吐水部22から洗浄水の吐水が開始されることにより、サイホン作用が発生され、従来よりも短い約1.2秒乃至約3秒の時間においてサイホン作用が継続して発生されている。節水化により洗浄水量が低減されているため、サイホン作用の継続できる時間が約2秒程度の短い時間とされている。
図5に示すように、ゼット吐水部22から洗浄水の吐水が継続されてサイホン作用が持続している間に、リム第一吐水部18からの洗浄水の瞬間流量F1が低下し、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水によるボウル部6の洗浄が終了し、且つリム第二吐水部20からの洗浄水の瞬間流量F3が低下し、リム第二吐水部20から吐水された洗浄水によるボウル部6の洗浄が終了している。
また、最後に、リム第二吐水部20から洗浄水の吐水が開始されて、リム第二吐水部20から吐水される洗浄水の瞬間流量F3が、比較的遅いタイミングで増大されることにより、ゼット吐水部22から吐水される洗浄水の瞬間流量F2が減少してくるときに、リム第二吐水部20から吐水される洗浄水を溜水部16に流下させることができ、サイホン作用の早期の終了を防ぎ、サイホン作用の発生が継続する時間をより長くすることができる。
【0031】
上述した本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、先ず、リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始され、ボウル部6の旋回流による洗浄の開始を従来よりも早めることができ、従来よりも早いタイミングで、汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。さらに、リム第一吐水部18から洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部22から洗浄水の吐水が開始され、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水とリム第一吐水部18からボウル部6に吐水された洗浄水とが相俟って、従来よりも遅いタイミングでサイホン作用により汚物を排出することができる。最後に、リム第二吐水部20から洗浄水の吐水が開始され、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水で洗浄しにくいボウル部6の後方領域をすばやく洗浄することができると共にサイホン作用の発生が継続している間に汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。この結果、本発明によれば、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部6の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【0032】
また、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、先ず、洗浄水は、分流室8の上流側から、リム第一導水路流入口8aに流入し、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が開始され、次に、洗浄水は、ゼット導水路流入口8bに流入し、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が開始され、最後に、洗浄水は、リム第二導水路流入口8cに流入し、リム第二吐水部20からの洗浄水の吐水が開始される。従って、先ず、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が開始され、ボウル部6の旋回流による洗浄の開始を従来よりも早めることができ、従来よりも早いタイミングで、汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。次に、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が開始され、従来よりも遅いタイミングで、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水とリム第一吐水部18からボウル部6に吐水された洗浄水とが相俟って、サイホン作用により汚物を排出することができ、最後に、リム第二吐水部20からの洗浄水の吐水が開始され、リム第一吐水部18から吐水された洗浄水で洗浄しにくいボウル部6の後方領域をすばやく洗浄することができると共にサイホン作用の発生が継続している間に汚物をボウル部6内の溜水の中央に集めることができる。この結果、本発明により、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部6の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。
【0033】
また、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、貯水タンク装置4から排出された洗浄水がリム第一導水路流入口8aからリム第一吐水部18へ確実に早いタイミングで導かれ、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が最も早く開始されることができる。
【0034】
また、本発明の一実施形態による水洗大便器1によれば、確実に、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が確実に最も早く開始されることができる。次に、リム第一吐水部18からの洗浄水の吐水が開始された後に、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が開始され、より確実に、従来よりも遅いタイミングで、ゼット吐水部22から吐水された洗浄水とリム第一吐水部18からボウル部6に吐水された洗浄水とが相俟って、サイホン作用により汚物を排出することができる。さらに、リム第二導水路流入口8cは、ゼット導水路流入口8b近傍に配置されているので、ゼット吐水部22からの洗浄水の吐水が開始された後に、比較的早いタイミングで、リム第二吐水部20からの洗浄水の吐水が開始されることができる。この結果、本発明により、サイホン作用の終了時又は終了前に、ボウル部6の洗浄を終わらせることができ、少ない洗浄水量でサイホン作用を発生させて洗浄する場合の便器洗浄性能を向上させることができる。