【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 平成23年8月30日 社団法人 電子情報通信学会発行の「電子情報通信学会2011年ソサイエティ大会講演論文集(DVD−ROM)」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、総務省、「異なる大きさのセルが混在する環境下における複数基地局間協調制御技術の研究開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施形態では、OFDM方式を用いた移動通信システムにおいて基地局間で協調通信制御を行う場合に適用した場合について説明するが、本発明は、このような協調通信制御を行わない場合にも同様に適用することができる。
【0011】
図1は、本発明の一実施形態に係る無線通信システム(移動通信システム)の構成の一例を模式的に示す説明図である。本実施形態に係る無線通信システムでは、協調制御対象の任意の周波数を用いたデータ信号(DS、データシンボル)の無線送信のタイミングが互いに重複する複数のセル(図示の例では2つのセルC1〜C2)を含む協調制御エリアAが設定されている。この協調制御エリアAにおいて、通信端末としての移動局MSが在圏する自セルC1と、その自セルC1に隣接する周辺セルC2との境界エリアでは、データ信号とは別にチャネル推定等に用いられるリファレンス信号(RS)が、各基地局BS1,BS2から端末を特定せずに複数の移動局に対して報知するように、予め設定した所定のタイミングで送信される。協調制御装置100は、協調制御エリアA内の複数のセルC1,C2それぞれに設けられた基地局BS1,BS2と、図示しない通信回線を介して通信できるように接続され、協調制御エリアAにおける基地局BS1,BS2による協調無線通信を制御する。
【0012】
なお、図示の例では、協調制御エリアAに含まれるセル及び基地局がそれぞれ2つである場合について示しているが、協調制御エリアAに含まれるセル及び基地局はそれぞれ3以上であってもよい。また、図示の例では、協調制御エリアAのセルに1台の移動局MSが在圏しているが、複数台の移動局MSが在圏してもよい。また、図示の例では、協調制御装置により協調制御が行われているが、各基地局が自律分散的に制御を行ってもよい。また、上記基地局BS1,BS2は、3GPP(Third Generation Partnership Project)の仕様においては「NodeB」と呼ばれたり、更に、LTE(Long Term Evolution)の仕様では発展型のNodeBとして「eNodeB(evolved Node B)」と呼ばれたりする場合がある。また、移動局MSは、通信サービスの利用者によって使用されるためユーザ装置(UE:User Equipment)と呼ばれる場合があり、単に通信端末や端末と呼ばれたり、また、無線機と呼ばれる場合もある。移動局MSは、携帯電話機等の移動通信端末であってもよいし、無線通信機能を有する携帯可能なコンピュータ装置であってもよい。また、上記セルC1,C2はそれぞれ、互いに大きさが異なるマクロセル、マイクロセル、フェムトセル、ピコセル等の各種セルのいずれかであってもよい。
【0013】
移動局MSは、例えば、アンテナ、送信増幅器、受信増幅器、無線信号処理部、ベースバンド信号処理部、主制御装置などで構成される。主制御装置は、例えばマイクロプロセッサやメモリで構成され、予め組み込まれた所定の制御プログラムに基づいて各部を制御する。例えば、主制御装置は、所定の制御プログラムが実行されることにより、各基地局BS1,BS2からのデータ信号(DS)やリファレンス信号(RS)などの受信を処理したり、後述の干渉キャンセル処理を実行したり、その干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止を制御したりする。
【0014】
また、各基地局BS1,BS2は、例えば、アンテナ、送信増幅器、受信増幅器、無線信号処理部、ベースバンド信号処理部、有線伝送路インターフェース部、主制御装置などで構成される。主制御装置は、例えばマイクロプロセッサやメモリで構成され、予め組み込まれた所定の制御プログラムに基づいて各部を制御する。例えば、主制御装置は、所定の制御プログラムが実行されることにより、協調制御装置100から受信した協調制御情報に基づいて、移動局MSとの間のデータ信号(DS)やリファレンス信号(RS)などの送信や、他の基地局との間の通信を制御する。また、主制御装置は、所定の制御プログラムが実行されることにより、後述の移動局MSから受信した測定報告に含まれる情報や協調制御装置から受信する情報に基づいて干渉キャンセル処理の対象となる周辺セルの基地局を特定したり、その特定した一又は複数の周辺セルの基地局を識別可能な識別情報を含む制御情報を移動局MSに送信するように制御したりする。
【0015】
図2(a)及び(b)はそれぞれ上記構成の無線通信システム(移動通信システム)における自セルの基地局BS1及び周辺セル(隣接セル)の基地局BS2それぞれから送信される下りリンクOFDM信号のフレーム構成の一例を示す説明図である。
図2(a)は、自セルの基地局(以下、適宜「希望局」という。)BS1から送信される信号のフレーム構成の例であり、
図2(b)は、周辺セルの基地局(以下、適宜「干渉局」という。)BS2から送信される信号のフレーム構成の例である。
【0016】
図2(a)及び(b)に示すように、希望局BS1、干渉局BS2ともにリファレンス信号は周波数軸上において3サブキャリア毎に挿入され、時間軸においては1サブフレーム14OFDMシンボルのうち、1、5、8、12番目のOFDMシンボルにおいて送信される。ここで、希望局BS1、干渉局BS2からの信号は移動局MSにより同一のタイミングで受信され、希望局BS1及び干渉局BS2それぞれから送信されるリファレンス信号RSは相互に干渉を及ぼさないよう周波数軸上で1サブキャリア分シフトして配置されているものとした。
【0017】
基地局間協調制御により干渉局BS2からのデータ信号の送信が停止される場合、希望局BS1から希望リファレンス信号を受信するときの信号対干渉雑音電力比SINR(Signal-to-Interference and Noise power Ratio)は、次の(1)式に示すγ[dB]のように表される。ここで、S1は希望局BS1から受信したデータ信号(以下、「希望データ信号」という。)の電力[dBm]、I
2(R)は干渉局BS2から受信したリファレンス信号(以下、「干渉リファレンス信号」という。)からの干渉電力[dBm]、及びNはノイズの電力[dBm]である。
【数1】
【0018】
上記(1)式に示すように、希望データ信号の受信時における信号対干渉雑音電力比SINR(γ)は、ノイズだけでなく干渉リファレンス信号の影響を受けて劣化する。従って、周波数利用効率を向上させるべく例えば基地局間協調制御により干渉局BS2からのデータ信号の送信が停止される場合でも、干渉局BS2のリファレンス信号RSからの干渉が残留し、信号対干渉雑音電力比SINR(γ)を高めることができず、性能改善(周波数利用効率の向上)に限界がある。
【0019】
そこで、本実施形態では、
図3(b)に示すように移動局MS側で干渉局BS2のリファレンス信号RSを除去(キャンセル)する処理を行うことにより、性能改善(周波数利用効率の向上)を図っている。干渉局BS2のリファレンス信号RSを除去(キャンセル)する処理を行うと、次の(2)式に示すように、信号対干渉雑音電力比SINR(γ’)を高めることができ、周波数利用効率が向上するので、干渉局からのリファレンス信号の干渉による通信品質(スループット)の低下を抑制することができる。
【数2】
【0020】
図4は、前述の
図1に示したようにセルC1,C2からなる2セルモデルを用いたシミュレーションによってスループット特性として周波数利用効率(Spectral Efficiency)[bps/Hz]を評価した結果の一例を示すグラフである。
図4中の横軸は、両基地局BS1,BS2からの受信電力比(SIR:Signal-to-Interference Ratio)[dB]すなわち基地局BS1からの受信電力を基地局BS2からの受信電力で割った値であり、縦軸はスループット特性として周波数利用効率である。スループット特性(周波数利用効率)の評価は、表1の各種条件(諸元)の値を用いて行った。
【表1】
【0021】
また、両基地局BS1,BS2からの受信電力比SIRにおいて、干渉局BS2からの信号の受信電力は送信停止の有無に関わらず、データ信号が全帯域で送信される場合を仮定して定義した。セル境界での信号雑音比SNR(Signal-to-Noise Ratio)は20[dB]となるように設定し、希望局BS1からの受信電力を変えることでSIRを変化させた。アンテナ構成はSISO(Single Input Single Output)とし、干渉キャンセル処理を適用した後の希望電力と(残留干渉+雑音電力)との比率からシャノン容量によりスループットを計算した。なお、最終的なスループットは、リファレンス信号RSや制御信号による損失を考慮し、シャノン容量に0.75を掛けたものを用いた(3GPP(3rd Generation Partnership Project)の仕様書TR36.942参照)。以上の条件のもと、次の(1)〜(4)の場合それぞれについてスループット特性(周波数利用効率)の評価を行った。
(1)干渉キャンセル処理なし(ECO協調制御なし)
(2)干渉キャンセル処理なし(リファレンス信号RSの干渉のみ)
(3)干渉キャンセル処理あり
(4)干渉キャンセル処理あり(カンニングチャネル推定あり)
ここで、上記カンニングチャネル推定は、基地局と移動局との間の伝送路におけるフェージング状態について移動局側で理想的に知ることができることを指す。
【0022】
図4の評価結果に示すように、セル境界においてSIRが0[dB]の場合、干渉キャンセル処理なしでは協調制御によるデータ信号の送信停止により周波数利用効率が0.7bps/Hzから2.5[bps/Hz]と3.6倍改善される。これに対し、干渉キャンセル処理を適用することにより、4.6[bps/Hz]と更に1.8倍特性を改善できることが分かる。但し、SIRが13[dB]以上では、希望局BS1からの信号により隣接セルのチャネル推定精度が劣化し、干渉キャンセル処理がない場合よりも特性が劣化することが分かる。このため、希望局BS1と干渉局BS2との間の受信電力比又は受信電力差に応じて適応的に干渉キャンセル処理の適用を決定することが必要である。
【0023】
図5は、上記構成の無線通信システムにおいて周辺セルの基地局からリファレンス信号を検出したときに移動局で実行される干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御の一例を示すフローチャートである。
図5において、移動局MSは、予め設定された所定のタイミングに自セル及び複数の周辺セルの各基地局から報知されているリファレンス信号の受信電力の情報を受信し、移動局MS内のデータ記憶手段としてのメモリ内に保存されている各基地局のリファレンス信号受信電力:RSRP(Reference Signal Received Power)の値を更新するとともに、各RSRPの基づいて算出した信号対干渉雑音電力比:SINRの値を更新する(ステップ101)。
【0024】
次に、移動局MSは、自セルの基地局である希望局から受信した希望リファレンス信号についての第1条件と周辺セルの基地局である干渉局から受信した干渉リファレンス信号についての第2条件とを満たすか否を判断する(ステップ102〜104)。
具体的には、移動局MSは、第1の条件として、自セルの希望局から受信した希望リファレンス信号について算出したSINR[dB]の値が予め設定した所定の基準値x[dB]以上であるか否かを判断する(ステップ102)。ここで、基準値x[dB]は、予め行った実験やシミュレーション等に基づいて設定することができ、例えば0[dB]や10.3[dB]に設定される。
【0025】
次に、上記(1)式に示すSINR[dB]の値が基準値x[dB]以上(ステップ102でYes)の場合、移動局MSは、第2の条件(その1)として、干渉リファレンス信号を受信した複数の周辺セルの基地局のうち、判断対象の特定の周辺セルの干渉局から受信した干渉リファレンス信号のRSRPが前記複数の周辺セルの基地局の中で所定の順番以内に大きいか否か、すなわち前記RSRPが上位z番目以内か否かを判断する(ステップ103)。更に、前記RSRPが上位z番目以内(ステップ103でYes)の場合、移動局MSは、第2の条件(その2)として、前記特定の周辺セルの干渉局から受信した干渉リファレンス信号について算出したSINR[dB]の値が予め設定した所定の基準値y[dB]以上であるか否かを判断する(ステップ104)。ここで、上記所定の順番(zの値)や基準値y[dB]は、予め行った実験やシミュレーション等に基づいて設定することができ、例えばzの値は2又は3に設定される。また、干渉リファレンス信号のSINR[dB]としては、例えばデータ信号を受信していない場合、干渉リファレンス信号の受信レベルの受信レベルをS2、希望局からのデータ信号の受信レベルをI1(R)として、次の(3)式を用いて算出したγの値を用いることができる。
【数3】
【0026】
次に、前記特定の周辺セルの干渉局のSINR[dB]の値が基準値y[dB]以上(ステップ104でYes)の場合、すなわち第1の条件並びに第2の条件(その1及びその2)をすべて満たす場合、移動局MSは、前記特定の周辺セルの基地局から受信する干渉リファレンス信号について後述の時間軸上での干渉キャンセル処理を開始し、既に干渉キャンセル処理を開始している場合は、その干渉キャンセル処理を停止せずに継続する(ステップ105)。
その後、移動局MSは、ステップ101に戻って再び各基地局のRSRP及びSINRの値の更新から繰り返し実行する。
【0027】
一方、上記第1の条件並びに第2の条件(その1及びその2)のいずれかを満たさない場合、移動局MSは、干渉キャンセル処理を開始せず、既に干渉キャンセル処理を開始している場合はその干渉キャンセル処理を停止する(ステップ106)。
【0028】
なお、複数の周辺セルの基地局からリファレンス信号が検出された場合は、それら複数のリファレンス信号それぞれについて、上記
図5の干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御(ステップ101〜106)が実行される。
【0029】
図6は、移動局で実行される干渉キャンセル処理の一例を示すフローチャートである。本例では、時間軸上で干渉キャンセル処理が実行される。
前述の
図5において干渉キャンセル処理が開始(継続)された場合、その干渉キャンセル処理対象の周辺セルの基地局である干渉局から受信される干渉リファレンス信号については、次のように移動局MSで処理される。
図6において、まず、干渉局から干渉リファレンス信号が受信されると、その干渉リファレンス信号の受信タイミングが検出される(ステップ201)。
次に、受信した干渉リファレンス信号がフーリエ変換され(ステップ202)、フーリエ変換後の周波数軸上における干渉リファレンス信号を用いてチャンネル推定が行われる(ステップ203)。本例では、チャンネル推定として、周波数応答から逆フーリエ変換によりインパルス応答を求め、CP(Cyclic Prefix)区間のみを残して再度フーリエ変換することで精度よく推定を行う遅延時間領域チャネル推定を用いた(例えば、「J. J. van de Beek et. al. "On Channel Estimation in OFDM Systems," IEEE VTC'95.」参照)。この推定値をサブフレーム内で時間平均したものを最終的なチャネル推定値とした。なお、チャンネル推定としては、遅延時間領域チャネル推定以外の方法で推定するものを採用してもよい。
【0030】
次に、上記チャネル推定で得られたチャネル推定値に基づいて、干渉局の干渉リファレンス信号RSのレプリカ信号が、周波数軸上においてサブキャリア単位で生成される(ステップ204)。この周波数軸上におけるレプリカ信号は逆フーリエ変換で時間領域へ変換され、時間軸上においてサンプル時間単位でレプリカ信号が生成される(ステップ205)。一般にOFDM信号では、信号間干渉を防ぐために信号区間に先立ってサイクリック・プレフィックス(または、ガードインターバル)区間が設けられており、このサイクリック・プレフィックス区間の干渉を除去するために、生成された時間領域のレプリカ信号の後方部分からサイクリック・プレフィックス信号を生成し、これを含めて最終的なレプリカ信号としてもよい。
【0031】
一方、自セルの基地局である希望局から受信する希望データ信号については、次のように移動局MSで処理される。
まず、希望局から希望データ信号が受信されると、その希望データ信号の受信タイミングが検出される(ステップ301)。
次に、上記ステップ205で生成された時間軸上における干渉リファレンス信号のレプリカ信号を用いて、希望局から受信した受信信号である希望データ信号から上記干渉リファレンス信号のレプリカ信号が除去される(ステップ302)。
次に、上記干渉リファレンス信号のレプリカ信号が除去された希望データ信号は、フーリエ変換で周波数領域へ変換され(ステップ303)、希望データ信号の復調が行われる(ステップ304)。
【0032】
以上の干渉キャンセル処理により、周辺セルの干渉局からの干渉リファレンス信号を受信する場合に、その干渉リファレンス信号の干渉を低減し、希望データ信号の復調を精度よく行うことができ、リファレンス信号の干渉による通信品質(スループット)の低下を抑制することができる。特に、セル境界エリアに位置する移動局MSとの無線通信で前述の協調通信制御を行う場合においては、主要干渉源となる周辺セルの基地局からのリファレンス信号による干渉を低減し、希望データ信号の復調を精度よく行うことができる。
【0033】
また、上記
図5及び
図6で説明した干渉キャンセル処理の制御は、時間軸上で干渉キャンセル処理を行うものであり、自セルの希望リファレンス信号の受信タイミングと、周辺セルの干渉リファレンス信号の受信タイミングとがずれていても、周辺セルの基地局からのリファレンス信号による干渉を低減することができる。
【0034】
図7は、上記構成の無線通信システムにおいて周辺セルの基地局からリファレンス信号を検出したときに移動局で実行される干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御の他の例を示すフローチャートである。本例は、周波数軸上で干渉キャンセル処理を行うものである。
なお、
図7において、前述の
図5の制御と同様なステップ401〜404の部分については説明を省略する。
【0035】
図7において、前記特定の周辺セルの干渉局のSINR[dB]の値が基準値y[dB]以上(ステップ404でYes)の場合、移動局MSは、第3の条件として、自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(=T2−T1)を算出し、その時間差ΔT[μs]が予め設定した所定範囲以内(
図7の例では所定の基準時間−t
b[μs]からt
f[μs]までの範囲内。但し、t
b、t
fは非負の実数。)か否かを判断する(ステップ405)。ここで、上記所定範囲(所定の基準時間t
b、t
f[μs])は、予め行った実験やシミュレーション等に基づいて設定することができ、例えば基準時間t
bは5.3[μs]、t
fは10.6[μs]に設定される。
【0036】
次に、自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(=T2−T1)[μs]が上記所定範囲以内(所定の基準時間−t
b[μs]からt
f[μs]までの範囲内)の場合(ステップ405でYes)、移動局MSは、前記特定の周辺セルの基地局から受信する干渉リファレンス信号について後述の周波数軸上での干渉キャンセル処理を開始し、既に干渉キャンセル処理を開始している場合は、その干渉キャンセル処理を停止せずに継続する(ステップ406)。
その後、移動局MSは、ステップ401に戻って再び各基地局のRSRP及びSINRの値の更新から繰り返し実行する。
【0037】
一方、自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(T2−T1)[μs]が所定範囲外(所定の基準時間−t
b[μs]からt
f[μs]までの範囲の外)の場合(ステップ405でNo)、移動局MSは、干渉キャンセル処理を開始せず、既に干渉キャンセル処理を開始している場合はその干渉キャンセル処理を停止する(ステップ407)。
【0038】
なお、本制御例においても、複数の周辺セルの基地局からリファレンス信号が検出された場合は、それら複数のリファレンス信号それぞれについて、上記
図7の干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御(ステップ401〜407)が実行される。
【0039】
図8は、移動局で実行される干渉キャンセル処理の他の例を示すフローチャートである。本例では、周波数軸上で干渉キャンセル処理が実行される。
前述の
図7において干渉キャンセル処理が開始(継続)された場合、その干渉キャンセル処理対象の干渉局から受信される干渉リファレンス信号については、次のように移動局MSで処理される。なお、
図8中のステップ501〜504の部分については、
図6中のステップ201〜204と同様であるので、説明を省略する。
【0040】
図8のステップ504において、周波数軸上においてサブキャリア単位で生成された干渉リファレンス信号RSのレプリカ信号は、時間領域への変換が行われることなく、干渉キャンセル処理に用いられる。
【0041】
図8において、希望局から希望データ信号が受信されると、その希望データ信号の受信タイミングが検出される(ステップ601)。また、受信した希望データ信号はフーリエ変換され、周波数軸上におけるサブキャリア単位で希望データ信号が生成される(ステップ602)。
次に、上記ステップ504で生成された周波数軸上における干渉リファレンス信号のレプリカ信号を用いて、希望局から受信した受信信号である希望データ信号から上記干渉リファレンス信号のレプリカ信号が除去される(ステップ603)。このレプリカ信号の除去は周波数軸上で行われる。
次に、上記干渉リファレンス信号のレプリカ信号が除去された希望データ信号に基づいて、希望データ信号の復調が行われる(ステップ604)。
【0042】
以上の干渉キャンセル処理により、周辺セルの干渉局からの干渉リファレンス信号を受信する場合に、その干渉リファレンス信号の干渉を低減し、希望データ信号の復調を精度よく行うことができ、リファレンス信号の干渉による通信品質(スループット)の低下を抑制することができる。特に、セル境界エリアに位置する移動局MSとの無線通信で前述の協調通信制御を行う場合においては、主要干渉源である周辺セルの基地局からのリファレンス信号による干渉を低減し、希望データ信号の復調を精度よく行うことができる。
【0043】
また、上記
図7及び
図8で説明した干渉キャンセル処理の制御は、周波数軸上で干渉キャンセル処理を行うものであり、自セルのサブフレームの受信タイミングと、周辺セルのサブフレームの受信タイミングとがほぼ同じタイミングの場合に、周辺セルの基地局からのリファレンス信号による干渉を低減することができる。特に、
図8で説明したように、本例の干渉キャンセル処理では、周波数軸上で生成したレプリカ信号を逆フーリエ変換で時間領域に変換する処理が不要になる。
【0044】
図9は、上記構成の無線通信システムにおいて周辺セルの基地局からリファレンス信号を検出したときに移動局で実行される干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御の更に他の例を示すフローチャートである。本例は、自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(=T2−T1)に応じて、時間軸上の干渉キャンセル処理(
図6参照)と周波数軸上の干渉キャンセル処理(
図8参照)とを切り換えて行う制御例である。
なお、
図9において、前述の
図7の制御と同様なステップ701〜705、708の部分については説明を省略する。
【0045】
図9において、自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(=T2−T1)[μs]が所定範囲以内(所定の基準時間−t
b[μs]からt
f[μs]までの範囲内)の場合(ステップ705でYes)、移動局MSは、前記特定の周辺セルの基地局から受信する干渉リファレンス信号について前述の周波数軸上での干渉キャンセル処理(
図8参照)を開始し、既に干渉キャンセル処理を開始している場合は、その周波数軸上での干渉キャンセル処理を停止せずに継続する(ステップ706)。その後、移動局MSは、ステップ701に戻って再び各基地局のRSRP及びSINRの値の更新から繰り返し実行する。
【0046】
一方、上記自セルのサブフレームの受信タイミングT1と周辺セルのサブフレームの受信タイミングT2との時間差ΔT(=T2−T1)[μs]が所定範囲外(所定の基準時間−t
b[μs]からt
f[μs]までの範囲の外)の場合(ステップ705でNo)、移動局MSは、前記特定の周辺セルの基地局から受信する干渉リファレンス信号について前述の時間軸上での干渉キャンセル処理(
図6参照)を開始し、既に干渉キャンセル処理を開始している場合は、その時間軸上での干渉キャンセル処理を停止せずに継続する(ステップ707)。
【0047】
なお、本制御例においても、複数の周辺セルの基地局からリファレンス信号が検出された場合は、それら複数のリファレンス信号それぞれについて、上記
図9の干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御(ステップ701〜708)が実行される。
【0048】
図10は、上記構成の無線通信システムにおいて周辺セルの基地局からリファレンス信号を検出したときに移動局で実行される干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止の制御の更に他の例を示すフローチャートである。
本例は、干渉キャンセル処理の開始(継続)及び停止を、移動局MSが自セルの基地局である希望局から受信した制御情報に基づいて制御する例である。希望局は、周辺セルから送信されたリファレンス信号の受信状況に関する情報(例えば、RSRP,SINR)を含む測定報告を、自セルに在圏する移動局MSから受信している。従って、希望局は、移動局MSから受信した測定報告に含まれる情報に基づいて、干渉キャンセル処理の制御対象となる周辺セルの基地局を特定することができる。この特定は、例えば移動局MS側での処理制御として説明した
図9の方法で行うことができる。そして、希望局は、自セルに在圏する移動局MSに、前記特定した干渉キャンセル処理の制御対象となる一又は複数の周辺セルの基地局を識別可能な識別情報(例えば、基地局ID)を含む制御情報を送信することができる。
【0049】
図10において、移動局MSは、干渉キャンセル処理の制御対象となる一又は複数の周辺セルの基地局を識別可能な識別情報(例えば、基地局ID)を含む制御情報を希望局(自セルの基地局)から受信すると(ステップ801)、その制御情報に基づき、干渉キャンセル処理の制御対象となっている特定の周辺セルについて干渉キャンセル処理を実行する(ステップ802)。
【0050】
なお、
図10の例において、干渉キャンセル処理の制御対象となる周辺セルの基地局を特定する処理のすべてを基地局側で行ってもよいが、当該処理の一部を移動局MSで行うようにしてもよい。すなわち、干渉キャンセル処理の制御対象となる周辺セルの基地局を特定する処理を、基地局と移動局MSとで分担して行うようにしてもよい。
【0051】
以上のように、干渉キャンセル処理の制御対象となる周辺セルの基地局を特定する処理の一部又はすべてを、基地局側で行うことにより、移動局MS側での処理制御の負荷を低減することができる。
【0052】
以上、本実施形態によれば、通信端末としての移動局MSが在圏する自セルC1の基地局である希望局BS1から受信した希望データ信号について算出した信号対干渉雑音電力比(SINR)の値[dB]が所定の基準値x[dB]以上である第1の条件と、自セルC1の周辺に位置する複数の周辺セルの基地局のうち特定の周辺セルC2の基地局である干渉局BS2から受信した干渉リファレンス信号の受信電力(RSRP)[dBm]が前記複数の周辺セルの基地局の中で所定の順番(z番目)以内に大きく且つその干渉リファレンス信号について算出した信号対干渉雑音電力比(SINR)の値[dB]が所定の基準値y[dB]以上である第2条件とを満たすか否かを判断する。ここで、前記第1の条件は、リファレンス信号からの干渉をキャンセルすることにより通信品質(スループット)が向上するための条件である。通信品質が向上しない場合は、キャンセル処理を行わないことで移動局の信号処理量を低減することができる。また、前記第2の条件は、リファレンス信号の干渉を除去可能な周辺セルの基地局の数を指定するとともに、その干渉を除去可能な周辺セルの干渉局BS2との間における無線通信のチャネル推定を精度よく行うための条件であり、チャネル推定精度が悪い場合、レプリカ信号の精度も低下し、キャンセル処理を行うことにより逆に通信品質が低下する場合があり、それを排除するための条件である。従って、前記第1の条件と第2条件とを満たす場合に、前記特定の周辺セルC2の干渉局BS2から受信するリファレンス信号による干渉をキャンセルする干渉キャンセル処理を実行することにより、その干渉キャンセル処理に必要なチャネル推定を高精度に行いつつ、リファレンス信号の干渉を除去可能な数の周辺セルの基地局について干渉キャンセル処理を実行することができる。よって、複数の基地局から互いに干渉を起こすようなリファレンス信号を受信する場合でも、そのリファレンス信号の干渉による通信品質(スループット)の低下を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、前記干渉キャンセル処理が、干渉局BS2から受信するリファレンス信号のレプリカ信号を生成する処理を含むことにより、そのレプリカ信号を希望データ信号から除去するという簡易な処理で、その干渉局BS2からのリファレンス信号の干渉による通信品質の低下を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、周波数軸上においてサブキャリア単位で生成したレプリカ信号を用いることにより、そのレプリカ信号を希望データ信号から除去する処理を周波数軸上で行うことができ、レプリカ信号を逆フーリエ変換で時間領域に変換する必要がない。
また、本実施形態によれば、時間軸上においてサンプル時間単位で生成したレプリカ信号を用いることにより、そのレプリカ信号を希望データ信号から除去する処理を時間軸上で行うことができ、希望局BS1からのサブフレームの受信タイミングと干渉局BS2からのサブフレームの受信タイミングとの時間差が大きい場合でも干渉キャンセル処理を行うことができ、干渉局BS2からのリファレンス信号の干渉による通信品質の低下を抑制することができる。
また、本実施形態によれば、周辺セルC2の干渉局BS2から受信したサブフレームの受信タイミングと、自セルC1の希望局BS1から受信したサブフレームの受信タイミングとの間の時間差が所定範囲以内の場合は、前記レプリカ信号を周波数軸上においてサブキャリア単位で生成して周波数軸上で干渉キャンセル処理を実行することにより、レプリカ信号を逆フーリエ変換で時間領域に変換することなく干渉キャンセル処理を精度よく行うことができる。一方、前記受信タイミング間の時間差が比較的大きく前記所定範囲の外にある場合は、レプリカ信号を時間軸上においてサンプル時間単位で生成して時間軸上で干渉キャンセル処理を実行することにより、干渉キャンセル処理を精度よく行うことができる。このように干渉基地局のサブフレームの受信タイミングと希望基地局のサブフレームの受信タイミングとの間の時間差に応じて干渉キャンセル処理を精度よく行うことができる。
また、本実施形態によれば、干渉基地局のサブフレームの受信タイミングと希望基地局のサブフレームの受信タイミングとの間の時間差が前記所定範囲の外にある場合は、前記干渉キャンセル処理を実行しないように制御することにより、上記時間差によって干渉キャンセル処理の精度の低下を回避することができる。
また、本実施形態によれば、前記干渉キャンセル処理を実行する対象の一又は複数の周辺セルの基地局を識別可能な識別情報を受信し、その識別情報で特定される周辺セルの基地局について前記キャンセル処理を実行することにより、干渉キャンセル処理を実行する対象の周辺セルの基地局を特定する処理を移動局MS側で行う必要がない。
また、本実施形態によれば、前記第1の条件、前記第2条件及び前記第3の条件の少なくとも一つを満たさないようになった周辺セルの基地局について、前記干渉キャンセル処理を停止することにより、不要な干渉キャンセル処理による通信品質(スループット)の低下を防止することができる。