特許第5780571号(P5780571)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5780571-圧延材を圧延するための方法及び装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780571
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】圧延材を圧延するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20150827BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20150827BHJP
   B21B 1/22 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B21B45/02 310
   B21B27/10 B
   B21B1/22 L
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-549410(P2014-549410)
(86)(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公表番号】特表2015-506277(P2015-506277A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2012075620
(87)【国際公開番号】WO2013098098
(87)【国際公開日】20130704
【審査請求日】2014年8月15日
(31)【優先権主張番号】102011090098.5
(32)【優先日】2011年12月29日
(33)【優先権主張国】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】コールラウシュ・アルント
(72)【発明者】
【氏名】パーヴェルスキー・ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】イェプゼン・オーラフ・ノルマン
【審査官】 坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−179888(JP,A)
【文献】 特表2005−501728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/02
B21B 1/22
B21B 27/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水ベースの冷却潤滑剤が、圧延材(1)及び/又はロールギャップ(200,300)を形成する少なくとも1つのロール(20,22,30,32)に塗布され、圧延材及び/又は少なくとも1つのロールに塗布する前の水ベースの冷却潤滑剤に、少なくとも1つの水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加され、圧延材(1)及び/又はロール(20,22,30,32)に塗布した後の過剰な冷却潤滑剤が捕集され、次に、冷却潤滑剤が、新たに圧延材(1)及び/又はロール(20,22,30,32)に塗布するために使用される、圧延材(1)を圧延するための方法において、
過剰な冷却潤滑剤が、その捕集後で、しかしながらその新たな塗布前に超微細濾過を受けさせられること、及び、水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加された水ベースの冷却潤滑剤では、相分離が行なわれないこと、を特徴とする方法。
【請求項2】
少なくとも1つの水溶性の摩擦学的活性添加剤が、個々の圧延ケースに適合するように、即ち、圧延材の材料及び/又はロールギャップ(200,300)内での所望の摩擦学的条件に適合するように選択されること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塗布条件の調整により、即ち、供給温度、塗布圧力、塗布の形式及び塗布の場所の変更により、水ベースの冷却潤滑剤が、水溶性の摩擦学的活性添加剤と共に圧延ケースに依存して圧延材(1)及び/又はロールギャップ(200,300)を形成するロール(20,22,30,32)に塗布されること、を特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
圧延材(1)及び/又はロール(20,22,30,32)に新たに塗布する前の超微細濾過を受けた冷却潤滑剤に、少なくとも1つの水溶性の摩擦学的活性添加剤が、冷却潤滑剤内での所望の添加剤濃度を再び達成するために供給され、これはこの添加剤の希釈の決定に基づいて行なわれ、希釈は捕集された冷却潤滑剤の相対的な誘電率及び/又は固有の電気伝導率を連続的に測定することによって決定されること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
圧延材(1)及び/又は少なくとも1つのロール(20,22,30,32)での添加剤の蓄積量が、適切な摩擦学的ロールギャップモデルを考慮した測定された圧延プロセスデータの評価を介して決定され、所望の添加剤蓄積量が得られるように、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加が制御されること、を特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ロールギャップ(200,300)から出る圧延材(1)上の添加剤蓄積量が、圧延材(1)上に残っている添加剤層を介して決定され、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加が相応に調整又は制御されること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
水溶性の摩擦学的活性添加剤の配量が、捕集された冷却潤滑剤内の粒状のロール摩耗片の連続的な測定に基づいてロール材料、ロール表面粗さ、ロール種類、圧延材、合金、パス計画及び適切な摩擦学的プロセスモデルを考慮するデータベースを比較利用して、制御又は調整されること、を特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
圧延材(1)の上面及び/又は上のロール(20)に塗布される冷却潤滑剤に、圧延材(1)の下面及び/又は下のロール(22)に塗布される冷却潤滑剤とは異なった量の水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加されること、を特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
添加された水溶性の摩擦学的活性添加剤の量が、時間にわたって変更されること、を特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
所望の表面外観に依存して洗浄作用と潤滑作用の間で冷却潤滑剤の作用のバランス取りをするため、少なくとも1つの別の水溶性の添加剤が冷却潤滑剤内に配量されること、を特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
水ベースの冷却潤滑剤が、圧延材(1)及び/又はロールギャップを形成する少なくとも1つのロール(20,22,30,32)に塗布され、水ベースの冷却潤滑剤に、水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加されている、ロール(20,22,30,32)によって形成されるロールギャップ(200,300)内で圧延材(1)を圧延するための装置において、
捕集された冷却潤滑剤の超微細濾過をするための少なくとも1つのフィルタ装置(8)が設けられていること、及び、水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加された水ベースの冷却潤滑剤では、相分離が行なわれないこと、を特徴とする装置。
【請求項12】
冷却潤滑剤に水溶性の摩擦学的活性添加剤を制御又は調整して添加するための配量装置(6)が設けられていること、を特徴とする請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧延材を圧延するための方法及び装置に関する。この方法及び装置は、好ましくは冷間圧延時に使用される。
【背景技術】
【0002】
金属のストリップの冷間及び熱間圧延時、通常は、ロールとストリップを冷却するため、作用面を潤滑するため、及び、ロールとストリップの清掃を可能にするために、液体がロール及び/又は圧延材に塗布される。この液体は、通常は冷却潤滑剤(KSS)と呼ばれる。
【0003】
ロール及びストリップ冷却機能において、冷却潤滑剤は、特に冷間圧延時には、変形熱と摩擦熱を排出するために使用される。ロールギャップ内での作用面の潤滑の機能において、冷却潤滑剤は、ロールギャップ内での摩擦学的特性を適切に調整し、これにより圧延される圧延材の相応の表面品質を保証するために使用される。清掃機能に関して、冷却潤滑剤は、圧延されるストリップの良好な表面品質を達成するため、ロールと圧延材を清掃し、汚れ粒子を搬出するために使用される。
【0004】
更に、冷却潤滑剤は、ストリップのコンディショニングに対して影響を有することがある。冷却潤滑剤は、更に、例えば、腐食防御に関して、他のプロセスステップ内での清掃に関して、及び/又は、例えば圧延材の赤熱時の圧延されるストリップの変色の回避に関して、圧延材の処理におけるプロセスチェーン内で前と後に接続されたユニットと互換性を有するように調整される。更に、冷却潤滑剤の特性がその使用中に実質的に安定を維持し、時間にわたって減損が行なわれないことが望ましい。
【0005】
これから、冷却潤滑剤のための要求事項一覧が生じる。即ち、冷却潤滑剤は、高い熱容量と良好な熱伝達を可能にする必要があり、冷却潤滑剤は、冷却潤滑剤のプロセスに適合した粘度により混合摩擦状態を得るために十分な潤滑膜吸収を達成可能にする必要があり、冷却潤滑剤は、プロセスに適合した限界摩擦状態の調整を実施可能にする必要があり、そして、冷却潤滑剤は、同時に良好な濾過能力を有する場合に良好な洗浄作用を備える必要がある。
【0006】
特に最後の形成は、通常は冷却潤滑剤を使用するための循環システムが使用され、既に前に使用した冷却潤滑剤を新たに塗布する時に圧延されるストリップの良好な表面品質を保証することができるように、搬出された汚れ粒子を冷却潤滑剤回路から再び取り除く必要があるので、重要である。
【0007】
相応に、従来技術では工業的冷間圧延業務で通常は、単相の油ベースの冷却潤滑剤として使用されるか、次にエマルジョンとして存在する分散した油ベースの滴を有する水ベースの冷却潤滑剤として使用される冷却潤滑剤が使用される。
【0008】
純粋に油ベースの冷却潤滑剤は、水ベースの系に対して燃焼性、粗悪な熱伝達、及び低い熱容量の欠点を有する。これにより、このように操業される圧延設備の生産性は、比較的制限されている。
【0009】
エマルジョンは、エマルジョン内の油ベースの滴が、これを含む潤滑活性物質と油相の高い粘度とがその作用を発揮するために、最初にそれぞれのロール表面もしくは圧延材表面に沈積する必要がある意味で欠点を備えることがある。ロールギャップの作用面内に入る前に、摩擦学的活性物質からの連続相の分離が望ましい。これにより、作用の遅延が生じ、これにより、要求される作用速度を達成するために、圧延速度の限界が得られるか、スタンド間の間隔を長くする必要がある。
【0010】
更に、エマルジョンにおいて欠点であるのは、不十分な超微細濾過能力である。
【0011】
以下では、 “濾過”及び“微細濾過”とは違い、1つの粒子の最大の長さ膨張が5μm以下である粒子スペクトルの部分も検出されることを明確にするために、“超微細濾過”との概念が使用される。
【0012】
油滴以下の大きさ程度でエマルジョン内に存在する汚れ粒子は、同時に油相をも冷却潤滑剤から除去することなく、冷却潤滑剤から取り除くことはできない。更に、分散した油ベースの滴を有する水ベースの冷却潤滑剤の特性は、機械的、生物学的又は化学的作用によって減損されることがある。
【0013】
以下では、変化の根底にあるメカニズムを詳細に説明することなく、及び、物理的、化学的、方法技術的、生理的、嗅覚的又は他の任意の製品特性に関する学問上のクラス分けに対して限定的に指摘をすることなく、製品特性の不利な変化が示された時は、簡略化して“減損”との概念が使用される。
【0014】
発明の対象に関して、以下の文献を参照されたい:独国特許出願公開第101 07 567号明細書(特許文献1)、独国特許出願公告第10 2004 061 939号明細書(特許文献2)、独国特許出願公開第10 2005 042 020号明細書(特許文献3)、独国特許第196 21 837号明細書(特許文献4)、欧州特許出願公開第0 839 895号明細書(特許文献5)。
【0015】
更に、独国特許出願公開第101 43 407号明細書(特許文献6)は、特に特殊鋼から成るストリップを冷間圧延するための方法及び設備を開示する。設備は、多スタンドタンデムラインであり、第1のスタンドは、比較的高い減面率で運転され、最後のスタンドは、比較的低い減面率でストリップの表面品質を決定する。比較的高いリダクションの第1のスタンドの場合は、冷却潤滑剤としてエマルジョンが使用され、このエマルジョンのために超微細濾過装置は設けられていない。これに対して、比較的少ないリダクションのタンデムラインの最後のスタンドのところでは、圧延油が潤滑剤として使用され、この圧延油は、高い表面品質を保証するために超微細濾過を受ける。
【0016】
最後に、英国特許第729,615号明細書(特許文献7)は、水ベースの冷却潤滑剤が、圧延材及び/又はワークロールの少なくとも一方に塗布される、圧延材を圧延するための方法及び設備を開示する。水ベースの冷却潤滑剤は、塗布前に水溶性の摩擦学的活性添加剤を添加され、添加された冷却潤滑剤は、次に再使用するため、即ち新たに塗布するために、ロールスタンドの出口で捕集される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】独国特許出願公開第101 07 567号明細書
【特許文献2】独国特許出願公告第10 2004 061 939号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10 2005 042 020号明細書
【特許文献4】独国特許第196 21 837号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第0 839 895号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第101 43 407号明細書
【特許文献7】英国特許第729,615号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の根底にある課題は、圧延された圧延材の表面品質を更に向上させるように、圧延材を圧延するための公知の方法及び公知の装置を発展させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、新しい請求項1で請求した方法によって解決される。この方法は、過剰な冷却潤滑剤が、その捕集後で、しかしながらその新たな塗布前に超微細濾過を受けさせられることを特徴とする。
【0020】
相応に、水ベースの冷却潤滑剤が、圧延材及び/又はロールギャップを形成する少なくとも1つのロールに塗布される、圧延材を圧延するための方法を提案する。本発明によれば、圧延材及び/又は少なくとも1つのロールに塗布する前の水ベースの冷却潤滑剤に、粘度並びに変形プロセス時の作用面内の潤滑特性を変化させる以下では単に“摩擦学的活性”と呼ばれる少なくとも1つの水溶性の添加剤が添加される。
【0021】
水ベースの冷却潤滑剤に、水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加されることにより、超微細濾過能力を得ることができるので、過剰な冷却潤滑剤は、摩擦学的有効性の損失なく超微細濾過を受けさせることができる。このようにして、過剰な冷却潤滑剤を再使用することができ、冷却潤滑剤回路に再び供給することができる。ロール摩耗片が適切な方法で除去され、冷却潤滑剤回路から排出されるので、超微細濾過により、圧延される圧延材の高い表面品質を同時に得ることができる。
【0022】
冷却潤滑剤における高い水分量に基づいて、火災の危険は、油をベースにした冷却潤滑剤又はオイルを含有したエマルジョンの使用と比べて明らかに軽減されている。更に、水溶性の摩擦学的活性添加剤の使用により、相応の冷却潤滑剤の潤滑活性作用を、冷却潤滑剤をロール表面もしくは圧延材表面に塗布した後、比較的短期間で得ることができる。それは、エマルジョン又はディスパージョンの場合には変形工程の作用面に入る前に行なわれる相分離よる時間的遅延が生じないからである。
【0023】
更に、水溶性の摩擦学的活性添加剤の使用により、油ベースの冷却潤滑剤の使用と比べて、所定の適用のため、例えばアルミニウムの高速圧延のために、油ベースの冷却潤滑剤を使用する場合には使用可能でない又は工業的製造条件下で実用的でない粘度領域も利用することができる。これには、特に40℃で1.8mm/s以下の動粘度を有する物質が該当する。
【0024】
水溶性の摩擦学的活性添加剤の適切な選択により、冷却潤滑剤は、相応にそれぞれの工業的圧延ケースに、即ち、例えば処理した圧延材もしくは圧延材量並びにロールギャップ内での圧延条件に適合させることができる。
【0025】
水溶性の摩擦学的活性添加剤の適切な選択により、更に、ロールギャップ内での摩擦学的特性の適切なロールケースに依存した調整を得ることができる。
【0026】
好ましくは塗布条件の調整により、特に好ましくは供給温度、塗布圧力、塗布の形式及び塗布の場所の変更により、水ベースの冷却潤滑剤が、水溶性の摩擦学的活性添加剤と共に圧延ケースに依存して圧延材及び/又はロールギャップを形成するロールに塗布されることは好ましい。相応に、ロールギャップ内での相応の摩擦学的特性を調整できるように、所定の濃度もしくは層厚さの水溶性の摩擦学的活性添加剤が圧延材及び/又は相応のロール上に得られる。
【0027】
冷却潤滑剤回路を効果的に形成するため、圧延材及び/又はロールに塗布した後の過剰な冷却潤滑剤が捕集され、次に超微細濾過を受けさせられ、次に、超微細濾過を受けた冷却潤滑剤が、新たに圧延材及び/又はロールに塗布するための冷却潤滑剤として使用される。超微細濾過により、相応にロール摩耗片と他の異物が冷却潤滑剤から除去され、冷却潤滑剤は、新たに品質損失なく使用することができる。このようにして、冷却潤滑剤の効率的な使用を行なうことができる。
【0028】
この関係で、圧延材及び/又はロールに新たに塗布する前の超微細濾過を受けた冷却潤滑剤に、少なくとも1つの水溶性の摩擦学的活性添加剤が、冷却潤滑剤内での当初の所望の添加剤濃度を再び達成するために供給される。これは、好ましくはこの添加剤の希釈又は濃縮の決定に基づいて行なわれ、希釈は、好ましくは、捕集された冷却潤滑剤の相対的な誘電率及び/又は固有の電気伝導率を連続的に測定することによって決定される。
【0029】
好ましい形成では、圧延材及び/又は少なくとも1つのロールでの添加剤の蓄積量が、適切な摩擦学的プロセスモデルを考慮した測定された圧延プロセスデータの評価を介して決定され、所望の添加剤蓄積量が得られるように、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加が制御される。このようにして、冷却潤滑剤内での必要な添加剤濃度を決定することができ、相応に水溶性の摩擦学的活性添加剤を冷却潤滑剤に添加することができる。
【0030】
ロールギャップから出る圧延材上の添加剤蓄積量が、圧延材上に残っている添加剤層を介して決定され、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加が相応に調整又は制御されるので、所望の残留添加剤蓄積量が得られる。
【0031】
方法の別の形成では、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加が、捕集されたた冷却潤滑剤内の粒状のロール摩耗片の連続的な測定に基づいて行なわれる。好ましくは、これは、ロール材料、ロール表面粗さ、ロール種類、圧延材、合金、パス計画及び適切な摩擦学的プロセスモデルを考慮し、相応に冷却潤滑剤の組成を制御又は調整するデータベースを比較利用した連続的にオンラインで行なわれる粒子測定、即ちロールに関連した大きさクラスへのクラス分けの形態で行なわれる。
【0032】
別の有利な形成では、特に、例えば輝度、表面粗さ、色調又は組織によって決定まる、得られる所望の表面外観に依存して、好ましくは洗浄作用と潤滑作用の間で冷却潤滑剤の作用のバランス取りをするため少なくとも1つの別の水溶性の添加剤が冷却潤滑剤内に再配量される。この場合、所定の水溶性の添加剤の濃度は、好ましくは分光測定法及び/又は冷却潤滑剤の相対的な誘電率及び/又は固有の電気伝導率の連続的な測定を介して、適切に連続的に決定される。
【0033】
方法の別の形成では、圧延材の上面及び/又は上のロールに塗布される冷却潤滑剤に、圧延材の下面及び/又は下のロールに塗布される冷却潤滑剤とは異なった量の水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加される。このようにして、圧延される圧延材の異なった表面外観が得られるので、上面と下面は、例えば異なった表面外観のような異なった特性を備える。
【0034】
別の発展形では、添加された水溶性の摩擦学的活性添加剤の量が、時間にわたって変更される。連続的に圧延される唯一の圧延材内に異なった材料特性と特に異なった表面性状が得られるいわゆる“テーラードブランク”を製造することができる。
【0035】
上で提起した課題は、請求項11の特徴を有する装置によっても解決される。有利な発展形は、従属請求項12に記載されている。
【0036】
相応に、水ベースの冷却潤滑剤が、圧延材及び/又はロールギャップを形成する少なくとも1つのロールに塗布される、ロールによって形成されるロールギャップ内で圧延材を圧延するための装置を提案する。本発明によれば、水ベースの冷却潤滑剤に、水溶性の摩擦学的活性添加剤が添加されている。
【0037】
本発明の好ましい別の実施形態及び形成を、後続の図の説明によって詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】冷間圧延ラインの概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下で好ましい実施例を図に基づいて説明する。この場合、同じ、同様の又は同じ作用の要素は、同一の符号で指示され、これら要素の繰返しの説明は、説明における重複を回避するために部分的に省略する。
【0040】
この場合、圧延材1は、概略的に示した2つのロールスタンド2,3を通過するが、これらロールスタンドは、それぞれ上のロール20,30と下のロール22,32を備え、これらロールは、それぞれバックアップロール24,34,26,36によって支持される。それぞれの上と下のロール20,22,30,32の間に、本来のロールギャップ200,300が形成され、このロールギャップ内で、圧延材1の変形が行なわれる。
【0041】
ロールスタンドの示した形成とロールの配置は、単に概略的であると理解すべきであり、個々のロールスタンドのロールのそれぞれの圧延ケースのために適したどのような違った配置も可能である。
【0042】
圧延方向Wに配置された第1のロールスタンド2は、相応に第1のパスを実施し、その後にロールスタンド3もしくは後続のパスが続く。
【0043】
冷却潤滑剤は、ロールスタンド2,3のそれぞれのロールギャップ200,300に入る前の圧延材1に塗布される。この場合、冷却潤滑剤は、圧延材1の上側では、圧延材1にわたって横に延在するスプレーバー4によって圧延材1に塗布される。それぞれのスプレーバー4に、冷却潤滑剤は、冷却潤滑剤のための供給ライン40を介して冷却潤滑剤リザーバ42から供給される。
【0044】
圧延材1の下の下側の領域には、同様にスプレーバー5が設けられ、これらスプレーバーは、同様に冷却潤滑剤のための供給ライン50を介して冷却潤滑剤リザーバ52から供給され、圧延材1に冷却潤滑剤を塗布するために形成されている。
【0045】
冷却潤滑剤は、圧延材1と接触するロール20,22に直接的に塗布することもできる。このための相応の装置は、図1では概略的にスプレーバー44,54の形態で示され、これらスプレーバーは、相応にロールギャップ200の前でロール20,22の上に配置されている。
【0046】
ロールスタンド2,3の下及び/又はスプレーバー4,44,5,54の下に、捕集槽28,38を設けることができ、これら捕集槽は、圧延材1及び又はロール20,22から再び流出した過剰な冷却潤滑剤を捕集する。捕集槽28,38により、相応に過剰な冷却潤滑剤を再び捕集し、次に冷却潤滑剤回路に再び供給することができる。このようにして、冷却潤滑剤は、再使用することができ、このようにして圧延工程を効率的に行なうことができる。
【0047】
図1において、上に位置する冷却バー4と下に位置する冷却バー5への冷却潤滑剤の供給は、独立して実施されているので、ここでは、圧延されるストリップ1の上側及び下側のそれぞれの表面が異なった表面外観を得られるように、冷却潤滑剤の非対称の塗布を行なうことができる。
【0048】
異なった特性の水溶性の摩擦学的活性添加剤を、概略的に配量装置6を介して図示したように冷却潤滑剤に可変に添加することができる。
【0049】
冷却バー4,5を介して塗布される冷却潤滑剤に水溶性の添加剤を配量するための配量装置6は、圧延材1及び/又は圧延材と接触するロールに塗布される冷却潤滑剤の特性の正確な調整を可能にする。
【0050】
例えば、水ベースの冷却潤滑剤への水溶性の摩擦学的活性添加剤の適切な配量により、ロールギャップ内での所望の摩擦学的特性を達成することができる。更に、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加の相応の調整により、例えば冷却潤滑剤の得ようとした洗浄作用と得ようとした潤滑作用の間に、得ようとした表面外観に応じて、また、圧延材1から圧延されたストリップを生じさせる時に得ようとしたリダクションに応じて、バランスを形成することができる。
【0051】
更に、冷却潤滑剤内での添加物組成を制御するための適切な摩擦学的プロセスモデルを考慮したロールギャップの監視及び分析からの圧延プロセスデータを使用することができる。
【0052】
概略的に図示したセンサ70を介して、ロールギャップ200を通過した後の圧延材1から圧延されたストリップ上の、ロールギャップ200の後の添加剤蓄積量を測定することができる。このパラメータも、水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加の調整時に考慮することができる。相応に配量装置6を介してそれぞれの水溶性の摩擦学的活性添加剤の混合が調整される。
【0053】
例えば概略的にセンサ72によって図示したような電気伝導率センサもしくは冷却潤滑剤の相対的な誘電率を測定するセンサにより、冷却潤滑剤回路内での個々の添加剤希釈を決定し、相応に希釈された水溶性の添加剤の添加を制御することができる。
【0054】
別の有利な形成では、粒状のロール摩耗片を同様に概略的に図示したセンサ74によって及びロール材料、ロール表面、圧延材、合金、圧延条件及び適切なプロセスモデルを考慮するデータベースを比較利用した粒子測定によって、測定することができ、このようにして、相応に圧延プロセスを監視する摩耗片マップを作成することができる。このようにして、配量装置6による水溶性の添加剤の相応の制御を同様に行なうことができる。
【0055】
例えば概略的に図示した両捕集槽28,38を介する捕集した冷却潤滑剤のリターン回路の冷却潤滑剤は、相応のセンサ72,74の通過後、フィルタ8内での超微細濾過によって濾過される。この場合、使用されるフィルタ装置8は、好ましくは、5μm以下の大きさを有する粒子も捕集した冷却潤滑剤から除去するような超微細濾過装置であるので、この冷却潤滑剤は、圧延材1の変形時に品質損失なく再び冷却潤滑剤回路に添加することができる。
【0056】
ストリップの上のスプレーバー4とストリップの下のスプレーバー5の形成により、一方で、ストリップ1の上と下で非対称の添加剤噴射を行なうことができ、これにより、異なった表面外観を発生させることができる。
【0057】
更に、配量装置6の提供は、水溶性の摩擦学的活性添加剤を選択的及び時間的に変更可能に圧延材に塗布することを可能にする。このようにして、柔軟な圧延計画を遵守することができ、幅、長さ及び時間に依存して変更可能な圧延材の特性を有するオーダーメイドの製品を製造することができる。このようにして、例えば、ストリップ厚さ、表面外観、表面粗さ、濡れ性、被覆性が変更可能である。
【0058】
使用される冷却潤滑剤は、相応に、特に、十分な流体動力学的潤滑膜形成、良好な冷却特性及び5μm以下の領域の必要な超微細濾過を可能にする、並びに、同時に冷却潤滑剤の生物学的分解に対する安定性を保証する粘度増強剤を有する水ベースの添加剤を使用した水ベースの冷却潤滑剤として形成されている。水ベースの冷却潤滑剤への水溶性の摩擦学的活性添加剤の添加を介して、相応の圧延課題に合わせたロールギャップ内での摩擦学的状況を得ることができる。
【0059】
この場合、粘度は、典型的な圧延課題をカバーする領域内で調整される粘度増強剤を介して調整することができる。このため、ここでは、圧延油の使用と比べて有利には、所定の適用のために、例えばアルミニウムの高速圧延のために必要な粘度を調整することができるが、これは、今日慣用の冷却潤滑剤の場合には可能でない。
【0060】
ロールギャップ内の限界摩擦は、ロール表面及び/又は圧延材、特にストリップ1上の、圧延による変形のために適した特殊な水溶性の摩擦学的活性添加剤の蓄積量によって得られる。このため相応に、水溶性の摩擦学的活性添加剤が、圧延課題に適合するように、即ち特にロールギャップ内の材料及び圧延条件に適合するように調整され、ロール、ロール表面及びストリップでの添加剤蓄積量は、相応の塗布条件の調整及び/又は変更によって、例えば冷却剤の供給温度、塗布圧力並びに塗布の形式及び場所の変更もしくは調整によって、調整することができる。
【0061】
粘度増強剤を有する水ベースの冷却潤滑剤は、例えば機械加工の領域から知られている。
【0062】
適用可能である限り、個々の実施例で図示した個々の全ての特徴は、発明の範囲を出ないで、互いに組み合わせること及び/又は交換することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 圧延材
2 ロールスタンド
20 上のロール
22 下のロール
24,26 バックアップロール
28 過剰の冷却潤滑剤のための捕集槽
200 ロールギャップ
3 ロールスタンド
30 上のロール
32 下のロール
34,36 バックアップロール
38 過剰な冷却潤滑剤のための捕集槽
300 ロールギャップ
4 圧延材のための上のスプレーバー
40 冷却潤滑剤のための供給ライン
42 上の冷却潤滑剤リザーバ
44 上のロールのためのスプレーバー
5 圧延材のための下のスプレーバー
50 冷却潤滑剤のための供給ライン
52 下の冷却潤滑剤リザーバ
54 下のロールのためのスプレーバー
6 1つ又は複数の水溶性の摩擦学的活性添加剤のための配量装置
70 添加剤貯留のためのセンサ
72 電気伝導率を測定するためのセンサ
74 粒状のロール摩耗片のためのセンサ
8 フィルタ装置
W 圧延方向
図1