【文献】
Infect. Immun., 2009, 77(3), pp.1083-1090 (Epub 2008 Dec 22)
【文献】
J. Immune Based Ther. Vaccines, 2003, 1(1):2
【文献】
J. Infect. Dis., 2002, 186(1), pp.64-73
【文献】
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(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
以下の(1)〜(2)から選ばれる少なくとも1つの性質を有するPcrVに対するヒト化モノクローナル抗体またはその一部の領域であってPcrVに特異的に結合する領域:
(1)インビトロにおいて1nMから25nMの濃度で、緑膿菌の白血球細胞U937に対する細胞傷害活性の50%以上を阻害する、及び
(2)インビトロにおいて1nMから20nMの濃度で、緑膿菌のミエローマ細胞U3P1に対する細胞傷害活性の50%以上を阻害する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明が対象とする「モノクローナル抗体」とは、前述するPcrVに特異的に結合するモノクローナル抗体である。より具体的には、(1)インビトロにおいて1nMから200nMの濃度で、緑膿菌の白血球細胞に対する細胞傷害活性の50%以上を阻害する、
(2)インビトロにおいて1nMから50nMの濃度で、緑膿菌のミエローマ細胞に対する細胞傷害活性の50%以上を阻害する、および
(3)PcrVとの解離定数(Kd)が、2×10
−9(M)以下である、
から選ばれる少なくとも1つの性質を有するPcrVに対するモノクローナル抗体である、(4)配列番号1で示されるアミノ酸配列の136位から233位に、エピトープを有する。
【0012】
本発明のモノクローナル抗体は、強い細胞傷害阻害活性を有していることを一つの特徴として挙げられる。例えば、白血球細胞を用いた場合であれば緑膿菌の有する細胞傷害活性を1〜200nM、好ましくは2〜100nM、さらに好ましくは5〜25nMの範囲内の濃度で50%以上阻害する阻害(中和)活性を有している。また、ミエローマ細胞を用いた場合であれば、緑膿菌の有する細胞傷害活性を1〜50nM、好ましくは2〜30nM、さらに好ましくは4〜20nMの範囲内の濃度で50%以上阻害する阻害活性を有している。これらの値は、Dara W.Frankら(J.Infect.Disease、2002年、第186巻、64ページ)に報告されているMab166の活性値を大きく超えている。
【0013】
また、本発明のモノクローナル抗体は、PcrVの全長アミノ酸配列(配列番号1)における136位から233位の領域にそのエピトープを有することを特徴としている。この領域を認識する抗体は、その他の領域を認識する抗体よりも強い活性(細胞傷害阻害活性)を有することを本発明者らは見出した。この領域を認識する抗体は、強い細胞傷害阻害活性を有するので、感染症の治療用として有用である。
【0014】
モノクローナル抗体の認識エピトープの同定は以下のようにして行うことができる。まず、モノクローナル抗体の認識する分子の様々な部分構造を作製する。部分構造の作製にあたっては、公知のオリゴペプチド合成技術を用いてその分子の様々な部分ペプチドを作成する方法、遺伝子組換え技術を用いて目的の部分ペプチドをコードするDNA配列を好適な発現プラスミドに組み込み、大腸菌等の宿主内外で生産する方法等があるが、上記目的のためには両者を組み合わせて用いるのが一般的である。例えば、抗原タンパク質のC末端又はN末端から適当な長さで順次短くした一連のポリペプチドを当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製した後、それらに対するモノクローナル抗体の反応性を検討し、大まかな認識部位を決定する。
【0015】
その後、さらに細かく、その対応部分のオリゴペプチド、又は該ペプチドの変異体等を、当業者に周知のオリゴペプチド合成技術を用いて種々合成し、本発明の予防又は治療剤が有効成分として含有するモノクローナル抗体のそれらペプチドに対する結合性を調べるか、又は該モノクローナル抗体と抗原との結合に対するペプチドの競合阻害活性を調べることによりエピトープを限定する。多種のオリゴペプチドを得るための簡便な方法として、市販のキット(例えば、SPOTsキット(ジェノシス・バイオテクノロジーズ社製)、マルチピン合成法を用いた一連のマルチピン・ペプチド合成キット(カイロン社製)等)を利用することもできる。
【0016】
細胞傷害阻害活性は以下の手順により測定することができる。まず細胞傷害阻害活性の測定対象であるモノクローナル抗体を、2倍希釈系列によって希釈し適当な濃度に調製を行う。次に、緑膿菌の毒素などにより影響を受ける細胞(以下、ターゲット細胞とする)を細胞培養用の培地などを用いて希釈を行い、適当な数となるように調製する。具体的には、ミエローマ細胞を用いる場合であれば3×10
6〜5×10
6Cells/ml、白血球細胞を用いるのであれば1×10
6〜3×10
6Cells/mlの範囲で調製することが望ましい。同様にして、緑膿菌についても培養用の培地などで1×10
7〜1×10
8cfu/mlとなるように調製する。そして、上述したモノクローナル抗体の存在下において、緑膿菌およびターゲット細胞を、同一の試験管やウェル(例えば、マイクロプレート上のウェルなどのインビトロの条件)において適度な培養条件により培養する。このときの培養条件は細胞やバクテリアを生育させるのに良好とされる一般的な培養条件でよい。また、培養時間はターゲット細胞の種類により最適な条件は適宜変更するが、例えばミエローマ細胞を用いる場合であれば1〜3時間程度、白血球細胞を用いる場合であれば1〜3時間程度が好ましい。抗体を添加しないウェルを対照群として、対照群に対して50%を阻害する濃度(有効濃度)を算出する。ターゲット細胞の生死の判定については種々の手法が確立されているが、呈色試薬を添加した後に、適当な波長(例えば、400〜500nm)における吸光度の測定などが有用である(参考文献:Nature Medicine、1999年、vol.5、392〜395ページ)。
【0017】
本発明のモノクローナル抗体は、PcrVに対して高い親和性を有していることをひとつの特徴として挙げられる。モノクローナル抗体の抗原に対する親和性を表す指標として用いられる解離定数(Kd)は、種々の方法に従って解析することができる。例えば、各種標識剤で標識した抗原を用いたScatchard法や、市販の測定キットであるBiacoreX(アマシャムファルマシア社製)または類似のキットを用いて、当該キットに添付された取扱い説明書及び実験操作方法に従って容易に解析することができる。また、結合活性の評価には、ELISA(酵素結合免疫吸着検定法)、EIA(酵素免疫測定法)、RIA(放射免疫測定法)あるいは蛍光抗体法なども用いることができる。これらの方法を用いて求められる解離定数(Kd値)はM(モル)なる単位で表される。試験されたモノクローナル抗体は、解離定数が小さいほど強い親和性を有していることを示す。本発明にかかるモノクローナル抗体またはその一部については、PcrVとの解離定数(Kd)は、2×10
−9(M)以下、好ましくは1.5×10
−9(M)以下、さらに好ましくは1.2×10
−9(M)以下である。
【0018】
本発明のモノクローナル抗体において、好ましい態様の一つとして、免疫グロブリン重鎖可変領域(V
H)に相補性決定領域である、CDR1、CDR2およびCDR3を含み、この場合、CDR1はアミノ酸配列SFTSYWMH(配列番号15)を有し、CDR2はアミノ酸配列INPSNGRTNYNEKFNT(配列番号16)を有し、CDR3はアミノ酸配列YGNYVVYYTMDY(配列番号17)であり、免疫グロブリン軽鎖可変領域(V
L)に相補性決定領域である、CDR1、CDR2およびCDR3を含みこの場合、CDR1はアミノ酸配列 SASTSVSYME(配列番号18)を有し、CDR2はアミノ酸配列TTSKLAS(配列番号19)を有し、CDR3はアミノ酸配列HQWRNYPFT(配列番号20)を有する抗体を挙げることができる。
【0019】
上記のCDR領域の配列は、本発明の所望する生物学的活性(たとえば、親和性や細胞傷害阻害活性など)が保持される範囲内であれば、上記3つのCDRのうちの1つ以上のCDRにおいて1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなる3つのCDRを有するような改変体も本発明に含まれる。
【0020】
本発明のモノクローナル抗体の好ましい態様の一つとして、上述した特徴を有するモノクローナル抗体のヒト化モノクローナル抗体が挙げられる。ヒト化モノクローナル抗体は、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region) をヒト抗体のCDRへ移植したものである。したがって、フレームワーク領域は、ヒト由来のものである。使用に適当なフレームワーク領域は、Kabat E.A.らの文献を参照すれば選択できる。この場合のFRとしては、CDRが良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成したヒト化抗体のCDRが適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のFRのアミノ酸を置換してもよい(Sato、K.ら, Cancer Res. 1993年、第53巻、851ページ)。この場合、再度上記の工程を行えばよい。
【0021】
ヒト化モノクローナル抗体の一般的な製造方法も知られている(例えば、WO95/14041号公報、WO96/02576号公報参照)。具体的には、まずマウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(FR ; framework region)を連結するように設計した可変領域をコードするDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する(WO98/13388号公報参照)。得られたDNAを、ヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込む。または、抗体の可変領域をコードするDNAを、抗体の定常領域のDNAを含む発現ベクターへ組み込んでもよい。本発明で使用される抗体を製造するには、抗体遺伝子を発現制御領域、例えば、エンハンサー/プロモーターの制御のもとで発現するよう発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させることができる。宿主細胞としては例えば、COS細胞やCHO細胞などの脊椎動物細胞、原核細胞、酵母などが挙げられる。
【0022】
抗体遺伝子の発現は、抗体の重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)を別々に発現ベクターに組み込んで宿主を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主を形質転換させてもよい(WO94/11523参照)。
【0023】
上記で得られる所望の形質転換体は、当業者に周知の方法に従って培養することができ、該培養により、形質転換体細胞内または細胞外にPcrVのヒト化モノクローナル抗体が産生される。該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを適宜選択でき、例えば上記COS細胞の場合、RPMI−1640培地やダルベッコ修正イーグル最小必須培地(DMEM)などの培地に、必要に応じウシ胎児血清(FBS)などの血清成分を添加したものを使用できる。該形質転換体の培養の際の培養温度は、細胞内のタンパク質合成能を著しく低下せしめない温度であればいずれでもよいが、好適には32〜42℃、最も好適には37℃で培養することが好ましい。また必要に応じて、1〜10%(v/v)の炭酸ガスを含む空気中で培養することができる。
【0024】
上記により形質転換体の細胞内または細胞外に生産される本発明のPcrVのヒト化モノクローナル抗体を含む画分は、該タンパク質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種公知の分離操作法により、分離・精製することができる。かかる方法としては、具体的には例えば通常のタンパク質沈澱剤による処理、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)等の各種クロマトグラフィー、透析法、およびこれらの組み合わせ等を採用できる。
【0025】
上記方法により、容易に高収率、高純度で所望のPcrVのヒト化モノクローナル抗体を製造できる。このようにして、マウスモノクローナル抗体(1F3)をヒト化するために決定されたCDR配列全体およびFR配列の一部のアミノ酸残基を、ヒト抗体へ移植することによって最適化された抗体の可変領域のアミノ酸配列を
図15(配列番号27)および
図16(配列番号28)に示す。
【0026】
このヒト化抗体(h1F3)は、ハイブリドーマにより産生されるマウス抗体(m1F3)と比較すると、同等の強い細胞傷害阻害活性を有していた。抗体のヒト化において、通常、由来となった抗体の活性を維持したままヒト化を行うことは困難であるが、本発明においては、由来となったマウス抗体と同等の活性を有するヒト化抗体の取得に成功した。ヒト化抗体はヒト体内における抗原性が低下しているため、治療目的などでヒトに投与する場合に有用である。
【0027】
本発明のヒト化モノクローナル抗体には、ヒト抗体の定常領域が使用される。好ましいヒト抗体の定常領域としては、重鎖としてはCγが挙げられ、例えば、Cγ1,Cγ2,Cγ3,Cγ4を、軽鎖としてはCκ、Cλを使用することができる。また、抗体またはその産生の安定性を改善するために、ヒト抗体のC領域を修飾してもよい。ヒト化の際
に用いられるヒト抗体は、IgG、IgM、IgA、IgE、IgDなどいかなるアイソタイプのヒト抗体でもよいが、本発明においてはIgGを用いることが好ましく、さらにIgG1又はIgG4が好ましい。
【0028】
本発明のヒト化モノクローナル抗体は、ポリエチレングリコール(PEG)、放射性物質、トキシン等の各種分子と結合したコンジュゲート抗体でもよい。このようなコンジュゲート抗体は、得られた抗体に化学的な修飾を施すことによって得ることができる。なお、抗体の修飾方法はこの分野においてすでに確立されている。本発明におけるヒト化モノクローナル抗体にはこれらのコンジュゲート抗体も包含される。
【0029】
また本発明のヒト化モノクローナル抗体は、そのN末端あるいはC末端に他のタンパク質を融合してもよい(Clinical Cancer Research, 2004, 10, 1274-1281)。融合するタンパク質は当業者が適宜選択することができる。
【0030】
さらに、本発明のヒト化モノクローナル抗体は細胞障害阻害活性が増強された抗体でもよい。細胞障害活性が増強された抗体としては、例えば、フコースが欠損した抗体、糖鎖にバイセクティング(bisecting)N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)が付加した抗体、Fc領域のアミノ酸を置換することによりFcy受容体との結合活性を変化させた抗体などを挙げることができる。これら活性が増強された抗体は当業者に公知の方法で作製することができる。
【0031】
本発明において「モノクローナル抗体の一部」とは、前述する本発明のモノクローナル抗体の一部であって、当該モノクローナル抗体と同様にPcrVに特異的に結合性を有する領域を意味する(以下、これを単に「抗体断片」ともいう)。
【0032】
具体的には、前述するヒトPcrVに対して特異的結合性を有するFab (fragment of antigen binding)、F(ab')
2、Fab'、一本鎖抗体 (single chain Fv; 以下、scFvと表記する)、ジスルフィド安定化抗体(disulfide stabilized Fv; 以下、dsFvと表記する)、2量化体V領域断片 (以下、Diabodyと表記する)、CDRを含むペプチド等を挙げることができる(エキスパート・オピニオン・オン・テラピューティック・パテンツ、第6巻、第5号、第441〜456頁、1996年)。
【0033】
Fabは、IgGのヒンジ領域で2本のH鎖を架橋している2つのジスルフィド結合 (S−S結合) の上部のペプチド部分を酵素パパインで分解して得られる、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体で構成される、分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明で使用されるFabは、上記本発明のモノクローナル抗体をパパイン処理して得ることができる。または、上記本発明のモノクローナル抗体のFabをコードするDNAを細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを細胞へ導入することにより発現させることによってもFabを製造することができる。
【0034】
F(ab')
2は、IgGのヒンジ領域の2個のS−S結合の下部を酵素ペプシンで分解して得られる、2つのFab’領域がヒンジ部分で結合して構成される、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明で使用されるF(ab')
2は、上記本発明のモノクローナル抗体をペプシン処理して得ることができる。または、当該モノクローナル抗体のF(ab')
2をコードするDNAを細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入することにより発現させることによってもF(ab')
2を製造することができる。
【0035】
Fab'は、上記F(ab')
2のヒンジ間のS−S結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。本発明で使用されるFab'は、上記本発明のモノクローナル抗体のF(ab')
2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、当該モノクローナル抗体のFab'をコードするDNAを細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入することにより発現させることによってもFab'を製造することができる。
【0036】
scFvは、一本のVHと一本のVLとを適当なペプチドリンカー (以下、Pと表記する) を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドであり、抗原活性を有する抗体断片である。本発明で使用されるscFvに含まれるVHおよびVLは、上記本発明のモノクローナル抗体のものであればよい。本発明で使用されるscFvは、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマよりVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFv発現ベクターを構築し、大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入することにより発現させ製造することができる。
【0037】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドをS−S結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法 (Protein Engineering、 7、 697 (1994)) に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明で使用されるdsFvに含まれるVHあるいはVLは、本発明のモノクローナル抗体のものであればよい。本発明で使用されるdsFvは、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマよりVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、適当な発現ベクターに挿入してdsFv発現ベクターを構築し、該発現ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入し、発現させることにより製造することができる。
【0038】
Diabodyは、抗原結合特異性が同じ、または異なるscFvが2量体を形成した抗体断片であり、同じ抗原に対する2価の抗原結合活性、または異なる抗原に対する2種類の特異的な抗原結合活性を有する抗体断片である。例えば、本発明のモノクローナル抗体に特異的に反応する2価のDiabodyは、本発明のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、3〜10残基のペプチドリンカーを有するscFvをコードするDNAを構築し、該DNAを細胞用発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入することによりDiabodyを発現させることにより、製造することができる。
【0039】
CDRを含むペプチドは、VHまたはVLのCDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。本発明で使用されるCDRを含むペプチドは、本発明のモノクローナル抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得した後、CDRをコードするDNAを構築し、該DNAを動物細胞用発現ベクターに挿入し、該ベクターを大腸菌、酵母、あるいは動物細胞へ導入することにより発現させることにより、製造することができる。また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法 (フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法 (t−ブチルオキシカルボニル法) 等の化学合成法によって製造することもできる。
【0040】
本発明のモノクローナル抗体又はその一部は、本発明に好適に使用され得るかぎり、その修飾物であってよい。修飾物として、ポリエチレングリコール(PEG) 等の各種分子と結合した抗体を使用することができる。抗体になされる修飾とは、化学的結合を導入することによる修飾であってもよいし、抗体のアミノ酸配列になされる修飾であってもよい。本発明のモノクローナル抗体又はその一部にはこれらの抗体修飾物も包含される。このような抗体修飾物を得るには、得られた抗体に修飾を施すことによって得ることができる。これらの方法はこの分野においてすでに確立されている。
【0041】
別の観点においては、本発明は、本発明のヒト化モノクローナル抗体(h1F3)の重鎖可変領域または軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドを提供する。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号29および30のいずれかに記載の塩基配列を有する。また、該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするポリヌクレオチドも本発明の範囲内である。
【0042】
本発明のポリヌクレオチドは、本発明の抗体をコードする限り、特に限定されず、複数のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)等のヌクレオチドからなる重合体である。天然以外の塩基を含んでいてよい。本発明のポリヌクレオチドは、抗体を遺伝子工学的な手法により製造するために使用することができる。また本発明の抗体と同等な機能を有する抗体をスクリーニングするために、プローブとして用いることもできる。即ち本発明の抗体をコードするポリヌクレオチド、またはその一部をプローブとして用い、ハイブリダイゼーション、遺伝子増幅技術(例えばPCR)等の技術により、該ポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ本発明の抗体と同等の活性を有する抗体をコードするDNAを得ることができる。このようなDNAも本発明のポリヌクレオチドに含まれる。
【0043】
ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al., Molecular Cloning 2nd ed., 9.47-9.58, Cold Spring Harbor Lab. press, 1989)は当業者によく知られた技術である。ハイブリダイゼーションの条件としては、例えば、低ストリンジェントな条件が挙げられる。低ストリンジェントな条件とは、ハイブリダイゼーション後の洗浄において、例えば42℃、0.1×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、0.1×SSC 、0.1%SDSの条件で
ある。より好ましいハイブリダイゼーションの条件としては、高ストリンジェントな条件が挙げられる。高ストリンジェントな条件とは、例えば65℃、5×SSCおよび0.1%SDSの条件である。これらの条件において、温度を上げる程に高い相同性を有するポリヌクレオチドが効率的に得られることが期待できる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0044】
これらハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術により得られるポリヌクレオチドがコードする、本発明の抗体と機能的に同等な抗体は、通常、これら抗体とアミノ酸配列において高い相同性を有する。本発明の抗体には、本発明の抗体と機能的に同等であり、かつ該抗体のアミノ酸配列と高い相同性を有する抗体も含まれる。高い相同性とは、アミノ酸レベルにおいて、通常、少なくとも50%以上の同一性、好ましくは75%以上の同一性、さらに好ましくは85%以上の同一性、さらに好ましくは95%以上の同一性を指す。ポリペプチドの相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
【0045】
本発明のモノクローナル抗体又はその一部は、医薬組成物として有用である。したがって本発明のモノクローナル抗体およびその一部を含む医薬組成物は、経口的あるいは非経口的に全身あるいは局所的に投与することができる。非経口的投与としては、例えば、点滴などの静脈内注射、筋肉内注射、腹腔内注射、皮下注射、鼻腔内投与、吸入などを選択することができるが、緑膿菌は気道感染によって特に肺上皮細胞や肺胞のマクロファージに傷害を及ぼすことが知られており(T・Sawaら、Nature Medicine、1999年、第5巻、392ページ)鼻腔内投与、吸入が望ましい。
【0046】
本発明の医薬組成物は、緑膿菌による嚢胞性線維症や感染症患者の治療のために投与される。例えば、有効投与量は、一回につき体重1kgあたり0.01mgから100mgの範囲から選ばれる。あるいは、患者あたり1〜1000mg、好ましくは5〜50mgの投与量を選ぶことができる。しかしながら、本発明のモノクローナル抗体又はその一部を含む医薬組成物はこれらの投与量に制限されるものではない。また、投与期間は、患者の年齢、症状により適宜選択することができる。本発明の医薬組成物は、投与経路次第で医薬的に許容される担体や添加物を共に含むものであってもよい。
このような担体および添加物の例として、水、医薬的に許容される有機溶媒、コラーゲン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、水溶性デキストラン、ペクチン、メチルセルロース、エチルセルロース、カゼイン、ジグリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ワセリン、ヒト血清アルブミン(HSA)、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、医薬添加物として許容される界面活性剤などが挙げられる。使用される添加物は、剤型に応じて上記の中から適宜あるいは組合せて選択されるが、これらに限定されるものではない。
以下に、参考例により、PcrVに対するマウスモノクローナル抗体の作製法について説明する。
(参考例1)
【0047】
リコンビナントMab166の作製
比較実験をするために、Mab166(特願2005−500250など)をリコンビナント抗体として作製した。
まずサブクラスがIgG2aである抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを抽出し、H鎖およびL鎖の定常領域をRT−PCR法でクローニングした。PCRで増幅されたそれぞれの断片はpcDNA3.1(+)ベクター(インビトロジェン社製)にNheI、NotIサイトで挿入し、さらに可変領域部分のDNA断片を挿入できるようにマルチクローニングサイトを組み込んだ。
次にMab166可変領域部のH鎖およびL鎖の遺伝子配列をそれぞれ4分割した後、それらのセンスDNAとアンチセンスDNAを合成し、アニーリング反応した。アニーリング後の断片をDNAリガーゼによって結合させ、H鎖についてはMfeIとBlp I領域に、L鎖についてはEcoRVとBsiW I領域にクローニングを行った。
塩基配列が確認されたH鎖およびL鎖のベクターをLipofectamine2000(インビトロジェン社製)を用いて、HEK239T細胞へ導入し、48時間後、その細胞上清を回収した。回収された細胞上清からProtein−G(PIERCE社製)カラムでリコンビナントMab166を精製した。
(参考例2)
【0048】
抗原の調製
東海大より分与された緑膿菌株標準株PAO1の染色体DNAを抽出し、そのDNAを鋳型としてPCR法により、PcrVタンパク質をコードする遺伝子(配列番号:2)を増幅した。5’側プライマーに制限酵素Sph I認識部位を、3’側プライマーに制限酵素Hind III認識部位を設け(配列番号:3、4)、さらに発現ベクター挿入時に、ビオチン標識のためにヒスチジンタグと開始コドンの間にシステインが挿入されるように設計した。増幅されたPCR断片はSph IおよびHind III部位でpQE30ベクター(GEヘルスケア社製)へクローニングを行なった。塩基配列を確認後、大腸菌JM109へ本ベクターを導入し、組み換え大腸菌(PcrV−JM109)を得た。PcrV−JM109を500mlのLB/Ampicillin液体培地中に37℃で培養し、OD600が0.5になった時に0.1MのIPTGを200μl加え、PcrVの発現を誘導した。さらに、37℃で1.5時間培養後、菌体を遠心分離し、0.5%のリゾチーム(シグマ社製)を含む緩衝液A(25mM Tris−HCl(pH8.0)、0.5M NaCl、2mM MgCl
2)を15 ml加え、0℃で30分間放置後、超音波処理を行った。遠心後、可溶性画分を得、His−Bind Columns(Novagen社製)に通した後、200mM イミダゾールを含む緩衝液B(20mM リン酸緩衝液(pH7.4)、500mM NaCl)で溶出した。最終的な溶出画分は10mMリン酸緩衝液(pH7.4)に対して透析することにより緩衝液置換を行った。
【0049】
抗原のビオチン標識
上記のように、発現・精製させたPcrVタンパク質を終濃度10mM メルカプトエチルアミン溶液中で37℃、150分反応させてシステイン残基を還元した。還元されたSH基にモル比で20倍量のPEO−Maleimide activated biotin(PIERCE社製)を添加し、4℃で終夜反応後、過剰なビオチンを除去するため、透析をおこなった。
【0050】
抗原の免疫
抗原として精製したPcrV 20μgをフロイント完全アジュバントと共に4週齢Balb/c雌マウス7匹に腹腔内投与し、初回免疫とした。その後、14日後、35日後にPcrV 20μgをフロイント不完全アジュバントと共に投与し、追加免疫とした。さらに77日後にPcrV 20μgの腹腔投与とPcrV 10μgを尾静脈投与することで、最終免疫とした。
【0051】
ハイブリドーマの作製
最終免疫の3日後に脾臓を摘出し、脾臓細胞を回収した。脾臓細胞とマウスミエローマ細胞(p3×63−Ag8.U1、東京腫瘤研究所)を50%のポリエチレングリコール4000を用いて融合させ、ヒポキサンチン、アミノプテリン、及びチミジンを含む培地で選択した。
【0052】
PcrV抗体の選定
細胞融合8日後に特異抗体産生細胞のスクリーニングを行った。スクリーニングに用いたイムノアッセイは以下の通りである。96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)の各ウェルに2μgの抗マウスIgG抗体(シバヤギ社製)を含むトリス緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.5)を200μl加えて4℃で16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(0.1% Tween20を含む生理食塩水)で2回洗浄した後、ブロックエース(大日本製薬社製)を300μl加えて室温で2時間放置して、ブロッキングを行った(抗マウスIgG抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で2回洗浄した後、50μlのハイブリドーマ培養上清を150μlの緩衝液C(0.9% 塩化ナトリウム、0.05% アジ化ナトリウム、0.5% ウシ血清アルブミン、0.01% Tween80、25μM Diethylenetriamine−N,N,N’,N‘’、N’ ’−pentaacetic acidを含む50mMトリス緩衝液、pH7.6)で希釈して各ウェルに添加し、4℃で終夜反応させた。300μlの洗浄液で3回洗浄後、10ngのEu−Labelled Streptavidin(PERKIN ELMER社製)と25ng ビオチン標識化PcrVを含む200μlの緩衝液Cを加え、室温1時間反応させた。反応後、300μlの洗浄液で3回洗浄を行い、増強試薬(1.39g/l フタル酸カリウム、19.3mg/l Tri−n−octylphosphine oxide、4.59mg/l 2−naphthoyltrifluoroacetone、1.0g/l Triton−X100、6.0g/l 酢酸)を200μl添加し、その時間分解蛍光を測定した。
【0053】
スクリーニングの結果から、リコンビナントPcrVと強い親和性を示したハイブリドーマを20クローン選択し、
参考例5に従い緑膿菌による細胞傷害の阻害活性を確認した。その結果、10クローンで細胞傷害阻害活性が認められ、これらのクローンについて限外希釈法により2回クローニングをおこなうことで、PcrVを認識するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローンを獲得した。獲得した10クローンについて、細胞傷害阻害活性の高いクローンを4つ選択し、それぞれ、1F3、2A4、6F5、7A7と命名した。これらの抗体について、マウスモノクローナル抗体アイソタイピングELISAキット(BDバイオサイエンス社製)を用いて、抗体のサブクラスを決定した結果、1F3はIgG2a、2A4はIgG2b、6F5はIgG2a、7A7はIgG2aであった。
【0054】
モノクローナル抗体1F3および2A4を産生するハイブリドーマは、独立行政法人 産業技術総合研究所内 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に、平成21年1月15日付けで、それぞれ受
託番号FERM
BP-11
085およびFERM
BP-11
086として国際寄託されている。
【0055】
抗体の結合活性
抗体(1F3、2A4、6F5、7A7)の結合活性を測定するために、競合イムノアッセイを行った。96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)の各ウェルに1.5μgの抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoReseach社製)を含むトリス緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.5)を100μl加えて4℃で16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液で2回洗浄した後、10%スクロースを含むブロックエース(大日本製薬社製)溶液を300μl加えて室温で2時間放置して、ブロッキングを行った(抗マウスIgG抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で2回洗浄した後、2ng/ウェルの各抗体および未標識のPcrVを500ng/ウェルから10倍の希釈系列で5段階添加した。その後、5ng/ウェルのビオチン化PcrVを添加し終夜反応させた。300μlの洗浄液で4回洗浄し、100
μl/ウェルのEnhancement Solution(Wallac社製)を添加後、1分間の攪拌後、時間分解蛍光を測定した。その結果、Mab166と比較して、1F3、2A4、6F5、7A7はPcrVとの強い結合活性を示した(
図1)。
【0056】
次に表面プラズモン共鳴解析により、1F3、2A4、6F5、7A7、Mab166のPcrVに対する親和性を算出した。CM5センサーチップ上にMouse Antibody Capture Kit(BIACORE社製)を用いて、抗マウス抗体を固相化し、続いて各PcrV抗体をキャプチャーした。当該固相センサーチップをセットしたBICORE T100にリコンビナントPcrVをロードし、親和性を求めた。
【0057】
その結果、Mab166の親和性は、3.0×10
−9であるのに対して、1F3は3.7×10
−10、2A4は3.5×10
−10、6F5は1.1×10
−10、7A7は1.1×10
−9 であり、いずれのクローンもMab166よりも親和性が高かった(
図2)
(参考例4)
【0058】
Mab166とのサンドイッチの可否
1F3、2A4、6F5、7A7はMab166とエピトープが異なることを証明するため、当該抗体とMab166(以下、m166とも記載する)とのサンドイッチ・アッセイの可否を検討した。
最初に、Mab166のビオチン標識を行った。100μgのMab166と7.853μgのNHS−PEO4 Biotin(PIERCE社製)を0.1M PBS(pH7.4)中で混合し、氷中で2時間反応させた。その後、反応溶液から未反応のビオチンを除去するため、ゲルクロマトグラフィー(G2000SWカラム(TOSHO社製))を行った。
【0059】
次にサンドイッチ・アッセイを行った。96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンク社製)に各500μgのPcrV抗体(1F3、2A4、6F5,7A7)を含むPBS(−)溶液100μlを加えて、4℃で16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(0.01% Tween20を含む生理食塩水)で1回洗浄した後、ブロックエース(大日本製薬社製)を300μl加えて室温で2時間放置して、ブロッキングを行った。各ウェルを300μlの洗浄液で2回洗浄した後、50μgのPcrVと50ngのビオチン標識Mab166を含む100μlのAssay Buffer(Wallac社製)を添加し、4℃で終夜反応させた。洗浄液で3回洗浄後、50ngのEu−Labelled Streptavidin(Wallac社製)を含むAssay Bufferを100μl添加し、室温で1時間反応させた。洗浄液で4回洗浄し、100μlのEnhancement Solutionを添加後、1分間の撹拌を経て、その時間分解蛍光を測定した。
【0060】
その結果、1F3、2A4、6F5、7A7はMab166とサンドイッチ・アッセイが可能であり、本抗体群はMab166とエピトープが異なることが明らかとなった(
図3)。
(参考例5)
【0061】
細胞傷害阻害活性試験
1F3、2A4、6F5、7A7について、細胞傷害阻害活性試験を行った。その方法は以下の通りである。
まず1F3、2A4、6F5、7A7を、32μg/mlから2倍希釈系列で希釈し、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに10μlずつ分注した。次にミエローマ細胞P3U1(ATCCから入手)を5×10
6Cells/mlもしくは白血球細胞の一種であるU937(ATCCから入手)細胞を1×10
6Cells/mlに細胞培養用培地(炭酸水素ナトリウムを含み、L−グルタミン及びフェノール・レッド不含RPMI1640(Sigma社製))を用いて調製し、当該96ウェルマイクロプレートに各100μl添加した。さらにCation−adjusted Mueller Hinton Broth(Difco)で一晩培養したシュードモナス・アエルギノーザSR24株を細胞培養用培地を用いて1×10
8cfu/mlに調製した菌液を10μl/ウェルで添加し、37℃、5%C0
2存在下で3時間培養した。3時間経過後、WST−8(キシダ化学社製)を各10μl添加し、ミエローマ細胞P3U1を用いた場合は、37℃、5%C0
2存在下で3時間、U937細胞の場合は1時間培養した。培養終了後、450nmの波長で吸光度を測定した。
【0062】
その結果、白血球U937細胞を用いた場合、その細胞傷害阻害活性(IC50)は、Mab166が213nM以上であるのに対して、1F3は5.3nM、2A4は20.7nM、6F5は12.7nM、7A7は14.7nMであり、ミエローマ細胞U3P1を用いた場合は、Mab166が54nMであるのに対して、1F3は4.0nM、2A4は16nM、6F5は7.3nM、7A7は6.0nMであった。すなわち、1F3、2A4、6F5、7A7は、いずれの細胞に対しても、その強い活性が知られていたMab166(Frankら、The Journal of Infectious Diseases、2002年、第186巻、66ページ)と比較しても強い細胞傷害阻害活性を有していた(
図4および
図5)。
(参考例6)
【0063】
欠失変異PcrVの作製
欠失変異PcrV(136−233)は以下の方法で作製した。
PcrV抗原タンパク発現プラスミドであるpQE30―PcrVを鋳型とし、5’側プライマーGCTCGAGGATCCCAAGGCGCTGACCGC(配列番号5)、3’側プライマーGTTAAGCTTCTCGAAGGGGTACTC(配列番号6)を用いてPCRを行い、増幅したフラグメントをBamHI、HindIIIで制限酵素処理し、pET32b(Novagen社製)に挿入した。塩基配列を確認後、本ベクターを大腸菌BL21−DE3株に導入し組み換え大腸菌(欠失変異PcrV−BL21)を得た。この発現株を2mlのLB/Ampicillin液体培地で37℃、一昼夜前培養した。500mlのLB/Ampicillin液体培地中に2mLの前培養液を加えて37℃で培養し、OD600が0.5になった時に培養液を加えて氷上で30分間静置した。終濃度0.75mMとなるようにIPTGを加え、震盪培養機で15℃、160rpm、一昼夜培養してPcrVの発現を誘導した。培養液を4℃、x5000g、30minで遠心して集菌した。上清を除き、菌体に0.1%のリゾチーム(シグマ社製)を含むBuffer X(25mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、2mM MgCl2)を10 ml加えて懸濁し、氷上で1時間静置した後、氷冷しながら超音波破砕処理した。遠心により可能性画分を得、Ni−NTAアガロース(Qiagen)を充填したカラムに通した後、Buffer Y(25mM Tris−HCl(pH7.5)、150mM NaCl、200mM Imidazole)で溶出した。最終的な溶出画分は10mMリン酸緩衝液(pH7.4)に対して透析することにより緩衝液置換を行った。
【0064】
エピトープ領域の決定
96穴マイクロタイタープレート(ヌンク社製)の各ウェルに1.5μgの抗マウスIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を含むトリス緩衝液(50mM Tris−HCl、pH7.5)を150μl加えて4℃で16時間固定した。これらのウェルを300μlの洗浄液(0.1% Tween20を含む生理食塩水)で2回洗浄した後、ブロッキング溶液(50mM Tris−HCl pH7.5、2%ブロックエース(大日本製薬社製)、10%スクロース)を300μl加えて室温で2時間放置して、各ウェルをブロッキングした(抗マウスIgG抗体固相化プレート)。各ウェルを300μlの洗浄液で1回洗浄した後、緩衝液C(0.9% 塩化ナトリウム、0.05% アジ化ナトリウム、0.5% ウシ血清アルブミン、0.01% Tween80、25μM Diethylenetriamine−N,N,N’ ,N’ ’, N’ ’−pentaacetic acidを含む50mMトリス緩衝液、pH7.6)で80ng/mlに希釈したPcrV抗体溶液を50μlずつ各ウェルに添加し、Buffer Cで200ng/mlに希釈したEu−Labelled Streptavidin(PERKIN ELMER社製)溶液を各ウェルに50μlずつ、DELFIA Asssay Bufferで各濃度に希釈した欠損変異PcrVタンパクを各ウェルに100μlずつ加え4℃で終夜反応させた。300μlの洗浄液で3回洗浄後、200μlの増強試薬(1.39g/l フタル酸カリウム、19.3mg/l Tri−n−octylphosphine oxide、4.59mg/l 2−naphthoyltrifluoroacetone、1.0g/l Triton−X100、6.0g/l 酢酸)を200μl添加し、その時間分解蛍光を測定した(
図6)。
【0065】
その結果、PcrV抗体1F3、2A4、9D12、12H9、また参考例として用いたKaloBios社のm166はPcrV全長(1−294)に対して反応性を示した。他方でPcrV(136−233)に対して、1F3、2A4は反応性を示したが、m166、及び中和活性を持たない9D12、12H9は反応性を示さなかった。
またウエスタンブロット法による結合解析も行なった。精製したリコンビナントPcrVタンパクをSDS−PAGEを行った後、PVDFメンブレンに転写した。転写されたメンブレンはブロックエース(大日本製薬製)溶液で室温、2時間、振盪しながらブロッキングした。1μg/mlに希釈したPcrV抗体溶液をメンブレンに加え、4℃で終夜反応させた後、洗浄液B(10mM リン酸緩衝液(pH7.4)、0.05% Tween20)で洗浄した。2次抗体として標識した抗マウスIgG抗体(GE Healthcare社製)溶液をメンブレンに加え、室温で2時間反応後、メンブレンを洗浄液Bで洗浄し、ECL plus Western Blot Detection System(GE Healthcare社製)で発色させ、LAS−1000(FUJIFILM)で撮影した(
図7)。PcrV中和抗体1F3、2A4は全長PcrVおよび欠失変異PcrVの双方に対して反応したが、m166、及び中和活性の低い
9D12、12H9は全長PcrVに対してのみ反応し、欠失変異PcrVには反応しなかった。
【0066】
このことからPcrV中和抗体1F3、2A4のエピトープ領域は、アミノ酸残基136−233の領域であり、m166、
9D12、12H9はアミノ酸残基136−233だけをエピトープ領域とするものではなかった。
【0067】
PcrVタンパク質の特定領域と細胞傷害活性の強さの相関性
全長PcrVタンパク質(配列番号1)および欠損変異PcrVタンパク質(配列番号1における136位−233位のアミノ酸配列を有する)を用いて,1F3、2A4、m166における細胞傷害阻害活性の抑制試験を行なった。その方法は以下の通りである。
まず1F3、2A4、m166をそれぞれ200nM、200nM、400nMから2倍希釈系列で希釈し、96ウェルマイクロプレートに10μlずつ分注した。本試験における1F3、2A4、m166の試験濃度域はそれぞれ1.56−6.25nM、6.25−25nM、50−200nMとした.各試験濃度域に対して全長PcrVタンパク質および欠損変異PcrVタンパク質を30、10、3、1、0.3倍モル濃度で96ウェルプレートに10μl添加し、30分室温で放置した.次にミエローマ細胞U3P1を5×10
6cells/mlに細胞培養用培地(炭酸水素ナトリウムを含み、L−グルタミン及びフェノール・レッド不含RPMI1640(Sigma社製))を用いて調製し、当該96ウェルマイクロプレートに各70μl添加した。さらにMueller Hinton Broth(Difco)で一晩培養した緑膿菌SR24株を細胞培養用培地を用いて1×10
8cfu/mlに調製した菌液を10μl添加し、37℃、5%C0
2存在下で3時間培養した。3時間経過後、WST−8(キシダ化学社製)を各10μl添加し、37℃、5%C0
2存在下で3時間培養した。培養終了後、450nmの波長で吸光度を測定した。
【0068】
その結果、PcrVタンパク質非添加の場合、1F3、2A4はm166と比較して強い細胞傷害阻害活性を示した.一方、全長PcrVタンパク質を添加した場合は、いずれの抗体も添加した全長PcrVタンパク質の濃度依存的に細胞傷害阻害活性が抑制された(
図8)。それに対し、欠損変異PcrVタンパク質を添加した場合では、そのアミノ酸領域(136−233)にエピトープを有する1F3、2A4は添加した欠損変異タンパク質の濃度依存的に細胞傷害阻害活性が抑制されるが、エピトープを有さないm166は細胞傷害阻害活性に変化は観察されなかった(
図9)。
【0069】
以上のことから、アミノ酸残基136−233にエピトープを有する抗体(1F3および2A4)は、その領域にエピトープを有さない抗体(m166)より強い細胞傷害阻害活性を有すると考えられた。すなわち、PcrV抗体の認識する領域によって、細胞傷害阻害活性の強さが異なり、もっとも強い細胞傷害阻害活性を有するのは、アミノ酸残基136−233領域だけでPcrVタンパク質に反応性を有する抗体といえた。
(参考例8)
【0070】
ヒトPcrVに対するマウスモノクローナル抗体(1F3および2A4)のアミノ酸配列の解析
樹立されたハイブリドーマ細胞から、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いて、RNAの抽出を行った。抽出したRNAを1μgから、5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends,Version 2.0(Invitrogen社製)を用いて、DNA断片の増幅を行った。その際、cDNA合成のために使用したプライマーは、1F3がTAGAGTCACCGAGGAGCCAGTTGT(配列番号:7)であり、2A4はTCCAGAGTTCCAAGTCACAGTCAC(配列番号:8)であった。また5’RACE法に用いたプライマーは、1F3がAGGGGCCAGTGGATAGACCGATGGGGCTGT(配列番号:9)であり、2A4がAGGGGCCAGTGGATAGACTGATGGGGGTGT(配列番号:10)であった。増幅された断片は、TOPO TA Cloning Kit(Invitrogen社製)でクローニングされ、Applied Biosystems 3130 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社製)で塩基配列を解析した。1F3の解析結果を、
図10に、2A4については
図11に示した。可変領域のアミノ酸配列をKabatらにより作成された抗体のアミノ酸配列のデータベース([Sequence of Proteins of Immunological Interest」US Dept.Health and Human Services,1983)にあてはめて、相同性を調べた結果、1F3の重鎖可変領域における相補性決定領域は、SFTSYWMH(配列番号15)INPSNGRTNYNEKFNT(配列番号16)YGNYVVYYTMDY(配列番号17)であり、軽鎖可変領域における相補性決定領域は、SASTSVSYME(配列番号18)TTSKLAS(配列番号19)HQWRNYPFT(配列番号20)であった。同様にして調べた結果、2A4の重鎖可変領域における相補性決定領域は、SITSDYAWN(配列番号21)YITYNGDTSYNPSLKS(配列番号22)SRNYYGAWFAY(配列番号23)であり、軽鎖可変領域における相補性決定領域は、KASQYVGTTVA(配列番号24)RASTRHT(配列番号25)QQYCSSPLT(配列番号26)であった。
【0071】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、抗体作製手法として、特に断らない限り、Immunochemistry in Practice (Blackwell Scientific Publiations)に記載されている方法を用いた。また、遺伝子操作的手法として、特に断らない限り、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory)に記載されている方法を用いた。
【実施例1】
【0072】
(1)マウスモノクローナル抗体1F3のヒト化
上記のように作製したマウスモノクローナル抗体1F3のヒト化については、マウス抗体のCDRをヒト生殖系アクセプター配列に移植することで作製した。
具体的には、マウス抗体重鎖、軽鎖それぞれのV遺伝子領域アミノ酸配列に最もホモロジーの高いヒト生殖系アクセプター配列をIgBLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/igblast/)で検索し、J遺伝子領域についてはマウス抗体DNA配列とホモロジーの高い配列をIMGT( http://imgt.cines.fr/)から選択した。
【0073】
検索の結果、マウス抗体重鎖V遺伝子領域に最も相同性の高いヒト生殖系アクセプター配列由来抗体遺伝子配列として、IMGT gene name;IGHV1−46*01が、J遺伝子領域に最も相同性の高いヒト生殖系アクセプター配列由来抗体遺伝子配列としてIMGT gene name;IGHJ6*01が得られたため、これを重鎖移植用ヒトフレームワーク配列とした。同様に、マウス抗体軽鎖V遺伝子領域に最も相同性の高いヒト生殖系アクセプター配列由来抗体遺伝子配列として、IMGT gene name;IGKV1−9*01が、J遺伝子領域に最も相同性の高いヒト生殖系アクセプター配列由来抗体遺伝子配列として、IMGT gene name;IGKJ2*02が得られたため、これを軽鎖移植用ヒトフレームワーク配列とした。
【0074】
次に、Kabat Numbering(Wu、 T.T. and Kabat, E.A., J. Exp. Med. Aug1;132(2):211−50.(1970))に従ったアミノ酸配列番号表記により、マウス抗体重鎖CDRH1、CDRH2、CDRH3、および軽鎖CDRL1,CDRL2、CDRL3を特定し、これらのCDR領域をヒトフレームワーク配列に移植し、鋳型のヒト化抗体として設計した。設計された鋳型ヒト化抗体とマウス抗体のアミノ酸配列の違いは、Chothia Numbering(Chothia, C. and Lesk, A.M., J. Mol. Biol., 196:901−917., Chothia, C. et al., Nature,342:877−883.(1989))におけるアミノ酸配列番号、H5,H7,H11,H12,H20,H38,H40,H48,H66,H67,H69,H71,H75,H78,H81,H83,H87,H93,H94,H108,L1,L3,L9,L10,L11,L15,L17,L18,L19,L21,L40,L42,L43,L46,L70,L71,L72,L78,L79,L80,L83,L85,L100において確認された。
【0075】
マウス抗体における体細胞変異部位を同定するため、マウス抗体重鎖、軽鎖それぞれのV遺伝子領域アミノ酸配列をIgBLASTにて検索し、最も相同性の高い重鎖配列としてGene name;J558.33が、最も相同性の高い軽鎖配列としてGene name;IGKV4―80*01が得られた。マウス抗体重鎖のD遺伝子領域アミノ酸配列をIgBLASTにて検索し、最も相同性の高い重鎖配列としてGene name;IGHD2−1*01が得られた。マウス抗体重鎖、軽鎖それぞれのJ遺伝子領域DNA配列をIMGTにて検索し、最も相同性の高い重鎖配列としてIMGT gene name;IGHJ4*01が、最も相同性の高い軽鎖配列としてIMGT gene name;IGKJ4*01が得られた。これらのマウス生殖系配列とマウス抗体を比較して異なる側鎖を体細胞変異部位とし、このうちマウス抗体と鋳型ヒト化抗体とで異なる側鎖として、H93,H94,L9,L46が確認された。
マウス抗体と鋳型ヒト化抗体とで異なるCanonical側鎖(http://www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html)として、H71、H94が確認された。マウス抗体と鋳型ヒト化抗体とで異なる側鎖のうち、Vernier zone(Foote et al., J.Mol.Biol., 224.487(1992))に位置するのはH48,H67,H69,H71,H78,H93,H94,L46,L71であった。マウス抗体と鋳型ヒト化抗体とで異なるInterchain packing residueは確認されなかった。これらの結果を総合し、鋳型ヒト化抗体のH48,H67,H69,H71,H78,H93,H94,L9,L46,L71のアミノ酸側鎖をマウス抗体型の変異(Backmutation)を全て導入した変異型ヒト化抗体を設計した。設計した鋳型ヒト化抗体可変領域(
図12;Template)、および変異型ヒト化抗体可変領域(
図12;Backmutation)の重鎖の定常領域配列としてヒトIgG4Pro定常領域配列を、軽鎖の定常領域配列としてヒトIgkappa定常領域配列を接合したDNA配列を設計し、下記に記載の方法により、それぞれ鋳型ヒト化抗体重鎖発現プラスミド(
図13;HT)、鋳型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミド(
図13;LT)、変異型ヒト化抗体重鎖発現プラスミド(
図13;HB)、変異型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミド(
図13;LB)を構築した。
【0076】
(2)抗体遺伝子発現ベクターの作製
まずヒンジ部分のS−S結合が開裂するのを回避するため(Angal et al.,1993,Mol.Immunol.30(1):105−108およびSchuurman et al.,2001,Mol.Immunol.,38:1−8.)228番目のセリン配列をプロリンに変換し、IgG4の定常領域のDNAを4分割した後、それらのセンスDNAとアンチセンスDNAを合成し、アニーリング反応した。アニーリング後の断片をDNAリガーゼによって結合させ、pcDNA3.1(+)ベクター(インビトロジェン社製)にNheI、NotIサイトで挿入し、さらに可変領域部分のDNA断片を挿入できるようにマルチクローニングサイトを組み込んだ。
次にヒト化PcrV抗体の可変領域部の遺伝子配列を重鎖および軽鎖をそれぞれ4分割した後、それらのセンスDNAとアンチセンスDNAを合成し、アニーリング反応した。アニーリング後の断片をDNAリガーゼによって結合させ、重鎖についてはMfeIとBlpI領域に、軽鎖についてはEcoRVとBsiWI領域にクローニングを行い、DNA塩基配列を確認した。
【0077】
抗体ヒト化時の指標としてヒト・マウスキメラ1F3抗体を作製した。マウス抗体の重鎖可変領域に重鎖の定常領域配列としてヒトIgG4Pro定常領域配列を設計し、下記に記載の方法により発現プラスミドを構築し、マウス・ヒトキメラ抗体重鎖発現プラスミド(
図13;H chimera)とした。マウス抗体の軽鎖可変領域に軽鎖の定常領域配列としてヒトIgkappa定常領域配列を接合したDNA配列を設計し、上記記載の方法により、発現ベクターを構築し、マウス・ヒトキメラ抗体軽鎖発現プラスミド(
図13;L chimera)とした。哺乳類培養細胞にマウス・ヒトキメラ抗体重鎖発現プラスミドとマウス・ヒトキメラ抗体軽鎖発現プラスミド、鋳型ヒト化抗体重鎖発現プラスミドと鋳型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミド、鋳型ヒト化抗体重鎖発現プラスミドと変異型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミド、変異型ヒト化抗体重鎖発現プラスミドと鋳型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミド、変異型ヒト化抗体重鎖発現プラスミドと変異型ヒト化抗体軽鎖発現プラスミドの組み合わせでトランスフェクションし、その培養上清を用いて、抗原であるリコンビナントPcrVとの親和性を表面プラズモン共鳴解析(BIAcoreT−100,GE healthcare)により測定した(
図13)。
【0078】
マウス・ヒトキメラ抗体の親和性解析のKD値は2.6 x 10
−10 Mであった。また、鋳型ヒト化抗体重鎖と鋳型ヒト化抗体軽鎖の抗体のKD値は2.2 x 10
−7 M、鋳型ヒト化抗体重鎖と変異型ヒト化抗体軽鎖の抗体のKD値は6.5 x 10
−7 Mであり、大幅に親和性が低下していることが確認された。一方で、変異型ヒト化抗体重鎖と鋳型ヒト化抗体軽鎖の抗体のKD値は3.3 x 10
−10 M、変異型ヒト化抗体重鎖と変異型ヒト化抗体軽鎖の抗体のKD値は3.4 x 10
−10 Mであり、マウス・ヒトキメラ抗体に近い親和性を維持していることが示された。この結果から親和性の維持には変異型ヒト化抗体重鎖が重要であり、軽鎖は鋳型ヒト化抗体軽鎖と変異型ヒト化抗体軽鎖のどちらを用いても変わらないと判断した。そのため、軽鎖に関してはヒト生殖系由来の配列に近い鋳型ヒト化抗体軽鎖を選択した。重鎖に関してはBackmutationを導入したアミノ酸側鎖であるH48,H67,H69,H71,H78,H93,H94のそれぞれの変異をヒト生殖系由来配列に戻したヒト化抗体を作製し、抗原との親和性を表面プラズモン共鳴解析により評価した(
図14)。その結果、H93のValをAlaに変換したヒト化抗体のKD値は1.0 x 10
−9 M、H94のLeuをArgに変換したヒト化抗体のKD値は3.2 x 10
−7 Mであり、親和性が低下していたが、他の変異をヒト生殖系由来配列に戻したヒト化抗体においては大きな親和性の低下は認められなかった。
【0079】
これらの結果から、H93、H94はマウス抗体由来の配列を用い、H48,H67,H69,H71,H78に関してはヒト生殖系アミノ酸配列を用いてヒト化抗体配列を確定させた(
図15、
図16)。この配列を有する抗体を、下記(3)の方法に従って作製し、表面プラズモン共鳴解析により親和性を確認した結果、マウス抗体と同等の親和性であることが確認された(
図17)。
【0080】
(3)
リコンビナント抗体の作製
上記の方法で作製された重鎖遺伝子と軽鎖遺伝子を、Lipofectamine2000(インビトロジェン社製)を用いて、HEK293F細胞へ導入し、72時間後、その細胞上清を回収した。回収された細胞上清からProtein−G(PIERCE社製)カラムでリコンビナント抗体を精製した。
【実施例2】
【0081】
m1F3(マウス抗体)、h1F3(ヒト化抗体)およびm166の細胞傷害阻害活性試験を行った。その方法は以下の通りである。
まずm1F3、h1F3、m166をそれぞれ200nM、200nM、800nMから2倍希釈系列で希釈し、96ウェルマイクロプレートの各ウェルに10μlずつ分注した。次に細胞培養用培地(炭酸水素ナトリウムを含み、L−グルタミン及びフェノール・レッド不含RPMI1640(Sigma社製))を用いてミエローマ細胞U3P1を5×10
6Cells/mlもしくはU937細胞を1×10
6Cells/mlに調製し、当該96ウェルマイクロプレートに各70μl添加した。さらにCation−adjusted Mueller Hinton Broth(Difco)で一晩培養した緑膿菌SR24株を細胞培養用培地において1×10
8cfu/mlに調製し、10μl/ウェルで添加し、37℃、5%CO
2存在下で3時間培養した。3時間経過後、WST−8(キシダ化学社製)を各10μl添加し、37℃、5%CO
2存在下で1時間培養した。培養終了後、450nmの波長で吸光度を測定した。その結果、U937細胞を用いた場合(
図18)、その細胞傷害活性(IC50)は、m166が98.4nMであるのに対して、m1F3は1.4nM、h1F3は1.5nMであり、ミエローマ細胞を用いた場合(
図19)は、m166が85.4nMであるのに対して、1F3は1.5nM、h1F3は1.3nMであった。すなわち、m1F3とh1F3の細胞傷害阻害活性は同程度であり、m166よりも強い活性を示した。