(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
交流電力を整流および平滑して直流入力電力を生成する整流平滑回路と、前記直流入力電力をスイッチ手段でスイッチングして直流出力電力に変換するDC/DCコンバータ回路と、前記交流電力の極性が反転するタイミングで同期信号を出力する同期検出回路と、前記スイッチ手段のデューティ比を制御する制御回路とを備え、前記直流出力電力でバッテリーを充電する充電装置であって、
前記DC/DCコンバータ回路内の温度を検出する温度センサをさらに備え、
前記制御回路は、
フィードバック制御により前記スイッチ手段のオン/オフ制御量を算出する制御量算出部と、
前記DC/DCコンバータ回路から出力されるリプル補正処理前の出力波形を正弦波で近似した補正パターンに基づいて第1補正量を決定する第1補正量決定部と、
前記同期信号が出力されてから次の同期信号が出力されるまでの周期が複数の位相区間に分割されているものとみなされ、前記位相区間ごとに設定された歪み補正量を格納する記憶部と、
前記記憶部に格納された前記歪み補正量から、前記同期信号を基準に特定した現在の位相が含まれる位相区間の歪み補正量を選択し、該歪み補正量により前記第1補正量を調整して第2補正量を決定する第2補正量決定部と、
を有し、
リプル補正処理として、前記第2補正量により前記オン/オフ制御量を調整して前記デューティ比を算出し、
前記記憶部には、前記位相区間および前記温度に対応する前記歪み補正量が示された歪み補正量決定テーブルが格納されており、
前記第2補正量決定部は、前記歪み補正量決定テーブルを参照して前記歪み補正量を選択することを特徴とする充電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法は、直流入力電圧のリプル量に応じてスイッチ手段のデューティ比を制御しているので、直流入力電圧に現れないリプル量の増減、例えば、高温時のDC/DCコンバータ回路の応答性や負荷変動に起因するリプル量の増減には対応することができず、直流出力電力が不安定になってしまうという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、リプル量の低減を図るとともに、バッテリーに安定した直流出力電力を供給することができる充電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電装置は、交流電力を整流および平滑して直流入力電力を生成する整流平滑回路と、直流入力電力をスイッチ手段でスイッチングして直流出力電力に変換するDC/DCコンバータ回路と、交流電力の極性が反転するタイミングで同期信号を出力する同期検出回路と、スイッチ手段のデューティ比を制御する制御回路とを備え、直流出力電力でバッテリーを充電する充電装置であって、
DC/DCコンバータ回路内の温度を検出する温度センサをさらに備え、
制御回路は、
フィードバック制御によりスイッチ手段のオン/オフ制御量を算出する制御量算出部と、
DC/DCコンバータ回路から出力されるリプル補正処理前の出力波形を正弦波で近似した補正パターンに基づいて第1補正量を決定する第1補正量決定部と、
同期信号が出力されてから次の同期信号が出力されるまでの周期が複数の位相区間に分割されているものとみなされ、位相区間ごとに設定された歪み補正量を格納する記憶部と、
記憶部に格納された歪み補正量から、同期信号を基準に特定した現在の位相が含まれる位相区間の歪み補正量を選択し、該歪み補正量により第1補正量を調整して第2補正量を決定する第2補正量決定部と、
を有し、
リプル補正処理として、第2補正量によりオン/オフ制御量を調整してデューティ比を算出
し、
記憶部には、位相区間および温度に対応する歪み補正量が示された歪み補正量決定テーブルが格納されており、
第2補正量決定部は、歪み補正量決定テーブルを参照して歪み補正量を選択することを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、DC/DCコンバータ回路の出力波形に含まれるリプル量をキャンセルするために、正弦波状の補正パターンに基づいて第1補正量を決定し、正弦波状の補正パターンでキャンセルしきれないリプル量をキャンセルするために、第1補正量を歪み補正量により調整して第2補正量を決定している。そして、該第2補正量により、制御量算出部で算出したオン/オフ制御量を調整している。
したがって、この構成によれば、確実にリプル量の低減を図ることができ、その結果、バッテリーに安定した直流出力電力を供給することができる。
また、一般に、正弦波状の補正パターンでキャンセルしきれないリプル量は、位相区間や温度によって異なる。しかしながら、この構成によれば、位相区間および温度に対応する歪み補正量が示された歪み補正量決定テーブルを参照して適切な歪み補正量を選択することができるので、より確実にリプル量の低減を図ることができる。
【0012】
なお、本明細書における「正弦波」は、いわゆるsin波だけでなく、cos波も含むものとする。
【0015】
上記第2補正量決定部は、温度センサにより検出された温度が予め設定された閾値よりも低い場合、歪み補正量により調整することなく、第1補正量を第2補正量とすることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、温度センサにより検出された温度が予め設定された閾値よりも低い場合には、歪み補正量を選択する処理と、選択した歪み補正量により第1補正量を調整する処理とを省くことができるので、第2補正量決定部にかかる処理負荷の増大を防ぐことができる。
【0017】
また、上記充電装置におけるDC/DCコンバータ回路は、
スイッチ手段で構成され、直流入力電力から1次側交流電力を生成するインバータ部と、
1次側交流電力を2次側交流電力に変換するトランスと、
2次側交流電力を整流および平滑して直流出力電力を生成する出力部と、
を有し、
上記複数の位相区間に、少なくとも、トランスの2次側交流電流において発生する歪みが顕著に現れる位相区間と、歪みが顕著に現れない位相区間とが含まれることが好ましい。
【0018】
高温時には、トランスの応答性が悪化して、トランスの2次側交流電流に歪みが生じる場合がある。この場合、直流出力電流にも歪みが生じてしまい、正弦波状の補正パターンでキャンセルしきれないリプル量が増加してしまう。
しかしながら、この構成によれば、トランスの2次側交流電流において発生する歪みが顕著に現れる位相区間と、歪みが顕著に現れない位相区間とでそれぞれ適切な歪み補正量を設定することができるので、確実にリプル量の低減を図ることができる。
【0019】
上記周期は、8〜16個に等分割された複数位相区間からなることが好ましい。
【0020】
分割数が8よりも小さい場合、第2補正量決定部にかかる処理負荷の増大は防止できるが、リプル量の低減効果は小さくなる。一方、分割数が16よりも大きい場合、リプル量の低減効果は大きくなるが、第2補正量決定部にかかる処理負荷が増大してしまう。
この構成によれば、分割数が8〜16であるため、リプル量の低減効果と第2補正量決定部にかかる処理負荷の増大防止との両立を図ることができる。
【0021】
また、上記充電装置における第1補正量決定部は、
補正パターンの振幅を1に正規化した補正基本パターンを格納する補正基本パターン格納手段と、
直流出力電力の電力値を算出する電力値算出手段と、
リプル補正処理前の直流出力電力の電力値と正弦波の振幅に相当するリプル量との相互関係を示す相互関係データに基づいて、電力値算出手段で算出された電力値に対応したリプル量から補正ゲインを決定する補正ゲイン決定手段と、
を有し、
補正ゲインを補正基本パターンに乗算することにより補正パターンを算出する構成とすることができる。
【0022】
この構成によれば、直流出力電力の電力値に対応した正確な補正パターンを算出することができるので、該補正パターンに基づいてより正確な第1補正量を決定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、リプル量の低減を図るとともに、バッテリーに安定した直流出力電力を供給することができる充電装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態について説明する。
【0026】
[充電装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る充電装置1のブロック図である。
同図に示すように、充電装置1は、商用交流電源(AC100V、50Hz/60Hz)等の交流電源2Aから供給された交流電力を整流および平滑して直流入力電力を生成する整流平滑回路3と、直流入力電力をスイッチ手段5a〜5dでスイッチングしてバッテリー2Bに供給すべき直流出力電力に変換するDC/DCコンバータ回路4と、直流出力電力の電力値が予め設定された目標電力値となるようにスイッチ手段5a〜5dのデューティ比を制御する制御回路8とを備えている。
【0027】
整流平滑回路3は、ダイオードブリッジ9と、静電容量が数100μF〜数1000μFの電解コンデンサ(平滑コンデンサ)10と、不図示の力率改善部とを有している。
【0028】
DC/DCコンバータ回路4は、IGBTやMOSFET等の4つのスイッチ手段5a〜5dからなるインバータ部5と、インバータ部5に1次側が接続されたトランス6と、トランス6の2次側に接続された出力部7とを有している。出力部7は、ダイオードブリッジ11と、コイル12および平滑コンデンサ13からなるLCローパスフィルタと、数mΩのシャント抵抗14とを有している。
【0029】
DC/DCコンバータ回路4では、インバータ部5で直流入力電力から1次側交流電力が生成され、トランス6で1次側交流電力が昇圧されて2次側交流電力に変換され、出力部7で2次側交流電力から直流出力電力が生成される。
【0030】
また、本実施形態に係る充電装置1は、交流電源2Aから供給された交流電力(交流電圧)の極性が反転するタイミングで同期信号を出力する同期検出回路15と、シャント抵抗14に流れる直流出力電流を検出する電流検出回路16と、LCローパスフィルタ経由後の直流出力電圧を検出する電圧検出回路17と、直流出力電力の目標電力値を設定する目標電力値設定回路18と、DC/DCコンバータ回路4内の温度(特に、トランス6近傍の温度)を検出する温度センサ19とを備えている。
【0031】
同期検出回路15から出力された同期信号、電流検出回路16で検出された電流値、電圧検出回路17で検出された電圧値、目標電力値設定回路18で設定された目標電力値、および温度センサ19で検出された温度は、制御回路8に入力される。
【0032】
[制御回路の構成]
図2は、制御回路8のブロック図である。
同図に示すように、制御回路8は、例えばマイクロコンピュータとその上で実行されるプログラムとからなり、スイッチ手段5a〜5dのオン/オフ制御量を算出する制御量算出部21と、第1補正量を決定する第1補正量決定部22と、記憶部24に格納された歪み補正量により第1補正量を調整して第2補正量を決定する第2補正量決定部23とを有し、第2補正量によりオン/オフ制御量を調整してデューティ比を算出するリプル補正処理を行う。なお、第1補正量、歪み補正量および第2補正量の詳細については、後述する。
【0033】
また、制御回路8は、直流出力電流の目標電流値を算出する目標電流値算出手段20と、デューティ比を算出するデューティ比算出手段25と、デューティ比算出手段25で算出されたデューティ比に基づいてPWM信号を生成するPWM信号生成手段26と、電流検出回路16で検出された電流値、電圧検出回路17で検出された電圧値等のアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換手段27a、27bとを有している。
【0034】
目標電流値算出手段20は、目標電力値設定回路18で設定された目標電力値と、AD変換手段27bでデジタル化された電圧値とに基づいて、目標電流値を算出する。
【0035】
制御量算出部21は、目標電流値算出手段20で算出された目標電流値とAD変換手段27aでデジタル化された電流値との偏差を算出する偏差演算手段21aと、算出された偏差を積分する積分演算手段21bと、積分された偏差に予め実験やシミュレーションによって求めた比例定数を乗算する積分ゲイン演算手段21cと、偏差演算手段21aで算出された偏差に別の比例定数を乗算する比例ゲイン演算手段21dと、積分ゲイン演算手段21cの演算結果に比例ゲイン演算手段21dの演算結果を加算する第1制御量演算手段21eと、第1制御量演算手段21eの演算結果にAD変換手段27aでデジタル化された電流値を加算してオン/オフ制御量を算出する第2制御量演算手段21fとを有している。
【0036】
オン/オフ制御量は、DC/DCコンバータ回路4の出力波形(例えば、直流出力電流波形)に含まれるリプル量(例えば、リプル電流量)を考慮しない場合のスイッチ手段5a〜5dのデューティ比である。
【0037】
第1補正量決定部22は、補正基本パターン格納手段22aと、電力値算出手段22bと、補正ゲイン決定手段22cと、第1補正量演算手段22dとを有している。
【0038】
補正基本パターン格納手段22aは、少なくともリプル周期の1周期分の補正基本パターンが予め格納された不揮発性メモリである。補正基本パターン格納手段22aには、交流電源2Aから供給される交流電力の周波数に応じた複数の補正基本パターンが格納されている。
補正基本パターンは、DC/DCコンバータ回路4から出力されるリプル補正処理前の出力波形を正弦波で近似し(
図3(b)参照)、極性を上下反転させた補正パターン(
図3(c)参照)を、振幅が1になるように正規化したものである。
補正パターンおよび補正基本パターンのリプル周期は、ダイオードブリッジ回路9により全波整流された電圧波形(
図3(a)参照)の周期と同じである。
【0039】
電力値算出手段22bは、電流検出回路16および電圧検出回路17で検出された電流値および電圧値に基づいて、バッテリー2Bに供給される直流出力電力の現在の電力値を算出する。
【0040】
補正ゲイン決定手段22cは、リプル補正処理前の直流出力電力の電力値と、
図3(b)の正弦波の振幅に相当するリプル量(リプル電流値)との相互関係を一次式で示した相互関係データ(
図4参照)に基づいて、充電開始時に、現在の電力値に対するリプル量を予測し、該予測したリプル量に基づいて補正ゲインを決定する。
補正ゲイン決定手段22cには、交流電源2Aから供給される交流電力の周波数や温度等の条件に応じて異なる複数の相互関係データが予め格納されている。
【0041】
第1補正量演算手段22dは、同期検出回路15から同期信号が出力される度に、補正基本パターン格納手段22aに格納された補正基本パターンに、補正ゲイン決定手段22cで決定された補正ゲインを乗算することで補正パターン(
図3(c)参照)を算出し、該補正パターンに基づいて第1補正量を決定する。決定された第1補正量は、第2補正量決定部23に出力される。
【0042】
第2補正量決定部23は、位相特定手段23aと、歪み補正処理手段23bとを有している。
【0043】
高温時(例えば、80℃以上)には、DC/DCコンバータ回路4を構成するトランス6の応答性が悪化し、トランス6の2次側交流電流に位相が遅れる方向に歪みが生じる場合がある(
図5参照)。この場合、同図に示すように、直流出力電流にも歪みが生じ、リプル量が増加してしまう。
歪み補正量は、この増加したリプル量をキャンセルするためのものであり、正弦波状の補正パターンでキャンセルしきれないリプル量に応じて第1補正量を調整するためのものである。
【0044】
記憶部24は、歪み補正量決定テーブルを格納するための不揮発性メモリである。
【0045】
歪み補正量決定テーブルは、
図6(B)に示すように、温度センサ19で検出される温度および位相区間(同期信号が出力されてから次の同期信号が出力されるまでの周期を分割したもの)に対応する歪み補正量が示されたものである。
本実施形態では、
図6(A)に示すよう、リプル周期1周期分を0〜π/4、π/4〜π/2、π/2〜3π/4、3π/4〜π、π〜5π/4、5π/4〜3π/2、3π/2〜7π/4、および7π/4〜2πの位相区間1〜8に8等分し、それぞれ温度に応じて異なる歪み補正量を持たせている。
【0046】
位相特定手段23aは、同期検出回路15から出力された同期信号を基準にして、現在の位相を特定する。具体的には、位相特定手段23aでは、同期信号を受信する度にリセットされるカウンタが設けられており、同期信号を受信してから現在の時間に至るまでの間に、カウントしたカウント値に基づいて現在の位相が特定される。特定された現在の位相は、歪み補正処理手段23bに出力される。
また、位相特定手段23aは、同期信号を受信してから次の同期信号を受信するまでの間に、カウントしたカウント値に基づいて、2次側交流電流の周波数を特定することもできる。
【0047】
歪み補正処理手段23bは、温度センサ19で検出された温度と、位相特定手段23aにより特定された現在の位相を含む位相区間とに基づいて、記憶部24に格納されている歪み補正量決定テーブルから歪み補正量を選択する。
また、歪み補正処理手段23bは、選択した歪み補正量を第1補正量に加算して第2補正量を決定し、該第2補正量をデューティ比算出手段25に出力する。
【0048】
デューティ比算出手段25は、歪み補正処理手段23bから出力された第2補正量を、制御量算出部21から出力されたオン/オフ制御量に加算するリプル補正処理を行ってデューティ比を算出し、該デューティ比をPWM信号生成手段26に出力する。
【0049】
PWM信号生成手段26は、デューティ比算出手段25から出力されたデューティ比に基づいてPWM信号を生成し、該PWM信号をDC/DCコンバータ回路4のインバータ部5に出力する。
【0050】
上記のように、本実施形態に係る充電装置1では、DC/DCコンバータ回路4の出力波形に含まれるリプル量をキャンセルするために正弦波状の補正パターンに基づいて第1補正量を決定し、正弦波状の補正パターンでキャンセルしきれないリプル量をキャンセルするために第1補正量を歪み補正量により調整して第2補正量を決定している。そして、該第2補正量によりオン/オフ制御量を調整してデューティ比を算出するリプル補正処理を行っている。
したがって、本実施形態に係る充電装置1によれば、上記リプル補正処理により確実にリプル量の低減を図ることができ、その結果、バッテリー2Bに安定した直流出力電力を供給することができる。
【0051】
[充電装置の制御方法]
次に、本実施形態に係る充電装置1の制御方法について説明する。
なお、本実施形態に係る制御方法では、トランス6近傍の温度が80℃であるものとし、制御量算出部21で算出されたオン/オフ制御量は50%であるものとする。
【0052】
充電装置1では、交流電源2Aから供給された交流電圧(
図7(a)参照)が、ダイオードブリッジ9により全波整流され(
図7(b)参照)、かつ電解コンデンサ10により平滑されることで、直流入力電圧に変換されてDC/DCコンバータ回路4に出力される。
【0053】
DC/DCコンバータ回路4に出力された直流入力電圧は、インバータ回路5により、交流電圧の周波数よりも高周波(数10kHz)の1次側交流電圧に変換された後に、トランス6で昇圧されて2次側交流電圧として出力部7に出力される。
【0054】
出力部7に出力された2次側交流電圧は、ダイオードブリッジ11により再び直流電圧に変換された後、LCローパスフィルタによりインバータ回路5のスイッチ手段5a〜5dで発生したスイッチングノイズが除去され、直流出力電圧としてバッテリー2Bに供給される。
【0055】
ここで、バッテリー2Bに供給されるリプル補正処理前の直流出力電流には、振幅がKのリプル量(以下、正弦波リプル量)および2次側交流電流の歪みに起因するリプル量(以下、歪みリプル量)が含まれている(
図8参照)。
【0056】
第1補正量決定部22では、補正ゲイン決定手段22cにより、電力値算出手段22bで算出された現在の電力値と、
図4に示す相互関係データとに基づいて正弦波リプル量(リプル電流値)が算出され、補正ゲインKが決定される。現在の電力値が1.5kWの場合、正弦波リプル量(リプル電流値)は0.9(App)なので、補正ゲインKは0.9となる。
【0057】
補正ゲイン決定手段22cにより補正ゲインKが決定されると、第1補正量演算手段22dにより、同期信号(
図7(c)参照)に同期して、補正基本パターン(
図7(e)参照)に補正ゲインKを乗算した補正パターンが刻々と算出され、該補正パターンから第1補正量(
図7(f)参照)が決定される。
【0058】
第1補正量が決定されると、第2補正量決定部23では、温度センサ19で検出された温度および位相特定手段23aで特定された現在の位相に基づいて、歪み補正処理手段23bにより、記憶部24に格納されている歪み補正量決定テーブル(
図6(B)参照)から歪みリプル量をキャンセルするための歪み補正量が選択される。
本実施形態では、温度センサ19で検出される温度が80℃であるため、位相特定手段23aにより特定された現在の位相が位相区間1、2に含まれている場合には、歪み補正量3%が選択され、現在の位相が位相区間3〜8に含まれている場合には、歪み補正量0%が選択される。
【0059】
例えば、第1補正量が10%であり、歪み補正量が3%であるとすると、歪み補正処理手段23bにより、歪み補正量(3%)が第1補正量(10%)に加算されて第2補正量(13%)が決定される(
図7(g)参照)。決定された第2補正量は、デューティ比算出手段25に出力される。
【0060】
デューティ比算出手段25では、歪み補正処理手段23bから出力された第2補正量(13%)が制御量算出部21から出力されたオン/オフ制御量(50%)に加算されて、デューティ比(63%)が算出される。
【0061】
算出されたデューティ比はPWM信号生成手段26に出力され、PWM信号生成手段26では、該デューティ比に基づいてPWM信号が生成される。
これにより、スイッチ手段5a〜5dのデューティ比が変更され、直流出力電流に含まれる全てのリプル量が低減される(
図7(h)参照)。
【0062】
結局、本実施形態に係る充電装置1によれば、フィードバック制御により算出されるオン/オフ制御量に、正弦波リプル量をキャンセルするための第1補正量と歪みリプル量をキャンセルするための歪み補正量とを加算した第2補正量が加算されてデューティ比が算出されるので、DC/DCコンバータ回路4の出力波形に含まれる全てのリプル量の低減を図ることができ、その結果、バッテリー2Bに安定した直流出力電力を供給することができる。
【0063】
[制御方法の変形例]
次に、本実施形態に係る充電装置1の制御方法の変形例について、
図9を参照して説明する。
【0064】
本変形例における制御方法は、歪み補正処理手段23bで行われる処理が、上記実施形態と異なる。
すなわち、本変形例における制御方法は、歪み補正処理手段23bにより、第1補正量決定部22で決定された第1補正量が読み込まれ(S1)、温度センサ19で検出された温度が読み込まれて(S2)、該温度が予め設定された閾値以上かどうかが判定される(S3)。閾値は、DC/DCコンバータ回路4の出力波形に歪みが発生し始める温度、例えば80℃に設定される。
【0065】
温度センサ19で検出された温度が閾値(80℃)以上の場合(S3でYES)、上記実施形態と同様に、温度センサ19で検出された温度と、位相特定手段23aにより特定された現在の位相を含む位相区間とに基づいて、記憶部24に格納されている歪み補正量決定テーブルから歪み補正量が選択され(S4)、該歪み補正量が第1補正量に加算されて第2補正量が決定される(S5)。
【0066】
一方、温度センサ19で検出された温度が閾値(80℃)未満の場合(S3でNO)、歪み補正量は選択されず、第1補正量が第2補正量となる(S6)。
【0067】
本変形例における制御方法によれば、温度センサ19で検出された温度が予め設定された閾値未満の場合には、歪み補正量決定テーブルを参照したり、歪み補正量を第1補正量に加算したりする処理を省くことができるので、歪み補正処理手段23bの処理回数を減らすことができ、制御回路8にかかる処理負荷の増大を防ぐことができる。
【0068】
なお、本変形例における制御方法のその他の処理および充電装置の構成については、上記実施形態に係る充電装置1と同様なので、説明を省略する。
【0069】
以上、本発明に係る充電装置の好ましい実施形態および変形例について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば、位相区間の数は、任意に変更することができるが、リプル量の低減効果と第2補正量決定部23にかかる処理負荷の増大防止との両立を図る観点から、8〜16が好ましい。位相区間の数が8よりも小さい場合、第2補正量決定部23にかかる処理負荷の増大を防止できるが、リプル量の低減効果は小さくなる。一方、位相区間の数が16よりも大きい場合、リプル量の低減効果は大きくなるが、第2補正量決定部23にかかる処理負荷は増大するため好ましくない。
【0071】
また、上記実施形態では、補正ゲインK=正弦波リプル量とし、該補正ゲインKを補正基本パターンに乗算して第1補正量を決定しているが、補正ゲインK=正弦波リプル量とすると正弦波リプル量を完全にキャンセルすることができない場合は、電力値算出手段22bで算出された現在の電力値における正弦波リプル量が最小となるような定数K’(=正弦波リプル量×比例定数)を補正ゲインとして用いてもよい。
上記比例定数は、例えば、補正ゲインK=正弦波リプル量として算出した第1補正量と、現在の電力値における正弦波リプル量との差に基づいて算出することができる。
定数K’を補正ゲインとして用いる場合、電力値算出手段22bで予め求めていた電力値と定数K’との相互関係を一次式で示した相互関係データを補正ゲイン決定手段22cに格納しておき、上記相互関係データから現在の電力値に対応した定数K’を補正ゲインとして決定することが好ましい。
【0072】
さらに、上記実施形態では、補正パターンが、DC/DCコンバータ回路4から出力されるリプル補正処理前の出力波形を正弦波で近似し、極性を上下反転させたものであるため、デューティ比算出手段25では、オン/オフ制御量に第2補正量を加算しているが、補正パターンが極性を上下反転させたものでない場合(極性が同じ場合)は、デューティ比算出手段25では、オン/オフ制御量から第2補正量を減算する必要がある。
【0073】
なお、本発明は、電気自動車に搭載される車載型の充電装置だけでなく、他の分野の充電装置にも適用することができる。