(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記特許文献1に記載の記録ヘッドでは、近接場光発生素子が平坦な薄膜状に形成されており、その平面方向が伝播される光の光軸方向に対して平行となるように導波路内に形成されている。そのため、導波路によって伝播されてきた光のうち、第1機能部の側面に入射した一部の光しか表面プラズモンの励起に寄与しないので、表面プラズモンを効率良く発生させることが困難であると思われる。
【0007】
そこで、近接場光発生素子の膜厚を厚くすることで、第1機能部の側面に光をより多く入射させ易くし、効率良く表面プラズモンを発生させることも考えられる。しかしながら、この場合には、第2機能部の膜厚も厚くなってしまうので、該第2機能部の先端面の面積が増大化してしまい、近接場光の局在化の妨げになってしまうものであった。そのため、ディスクを局所的に加熱し難くなり、高密度記録化が困難になってしまう不都合があった。
また、近接場光発生素子の全体の膜厚を厚くするのではなく、第1機能部だけを膜厚に形成することも考えられる。しかしながらこの場合には、第1機能部と第2機能部との膜厚をそれぞれ変える必要があるので、作製工程が複雑化してしまい、容易に製造することが難しくなってしまう不都合があった。
【0008】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、近接場光を効率良く局所的に発生させて、高密度で且つ高い信頼性で記録を行うことができると共に、容易に製造することが可能な記録ヘッド、及びこれを備えた情報記録再生装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係る記録ヘッドは、一定方向に回転する磁気記録媒体の表面に、該磁気記録媒体の回転方向下流側に流出端面が向いた状態で対向配置されるスライダと、該スライダの前記流出端面側に配設され、入射された光束を前記磁気記録媒体の表面に対向する端面側に向けて伝播させる伝播部と、前記スライダの流出端面側に配設され、主磁極及び補助磁極を有し、両磁極の間に記録磁界を発生させる記録素子と、前記伝播部の内部に埋設され、該伝播部によって伝播される前記光束から近接場光を発生させる薄膜状の近接場光発生素子と、を備え、前記近接場光発生素子は、前記光束の入射によって、前記入射側の表面、及び前記入射側の表面とは反対側の表面に表面プラズモンを発生させるプラズモン発生部と、前記表面プラズモンを出射端面に向けて伝播させると共に該出射端面から近接場光として発生させる近接場光発生部と、を備え、前記プラズモン発生部と前記近接場光発生部とは、同材質で一体的に形成され、前記プラズモン発生部は、前記伝播部の内部を伝播されてくる前記光束の光軸に対して傾斜して
おり、前記プラズモン発生部および前記近接場光発生部は、前記近接場光発生素子を前記スライダの流出端面側から見たときに、前記磁気記録媒体の表面に対して平行な方向に延びる横幅が、前記光束の光軸に沿う方向でそれぞれ一定となるように形成され、前記プラズモン発生部の横幅は、前記近接場光発生部の横幅よりも幅広とされていることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る記録ヘッドによれば、伝播部内に入射された光束を磁気記録媒体の表面に対向する端面側に向けて確実に伝播させることができると共に、この伝播部内に埋設された近接場光発生素子のプラズモン発生部に効率良く入射させることができる。すると、プラズモン発生部が、入射した光束によって表面プラズモンを励起させる。表面プラズモンが励起されると、近接場光発生部がこの表面プラズモンを出射端面に向けて伝播させると共に、その表面プラズモンのエネルギーを近接場光に変換して出射端面から外部に局在化させた状態で発生させる。
そのため、この出射端面に局在化した近接場光と記録素子で発生された記録磁界とを協働させて、磁気記録媒体に各種の情報の書き込みを行うことができる。
【0011】
特に、近接場光発生素子のプラズモン発生部は、従来のものとは異なり伝播部内を伝播されてくる光束の光軸に対して傾斜している。そのため、光束と相互作用する面積を大きく確保することができ、伝播されてくる光束を効率良くプラズモン発生部に入射させて、表面プラズモンの発生効率を向上させることができる。従って、近接場光発生部の出射端面に近接場光を効率良く、しかも局所的に発生させることができ、高密度な記録を行うことができる。
また、上記したように伝播されてくる光束を効率良くプラズモン発生部に入射させることができるので、その分、近接場光の発生に寄与しない漏れ光を低減させることができる。そのため、この漏れ光に起因する誤記録を抑制することができ、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0012】
更に、近接場光発生素子は伝播部内に埋設されており、この伝播部によって周囲が覆われた状態となっている。そのため、プラズモン発生部において光束が入射する入射面だけでなく、その入射面とは反対側の表面を含めた外表面全体に効率良く表面プラズモンが励起する。そのうえ、プラズモン発生部の外表面は全て同じ伝播部に接する面であるので、上記表面プラズモンを同じ条件で近接場光発生部に伝播させることができ、損失を抑制し易い。これらの点においても、近接場光を効率良く発生させ易い。
更に、プラズモン発生部及び近接場光発生部は、共に同じ材料からなる同一媒体であるので、両者の接続部分に段差や界面等が生じ難い。従って、表面プラズモンの損失を抑制しながらプラズモン発生部から近接場光発生部に伝播することができ、この点においても近接場光を効率良く発生させ易い。
【0013】
更に、プラズモン発生部と近接場光発生部との膜厚を変化させる必要がなく、近接場光発生部と同じ膜厚のプラズモン発生部を光軸に対して傾斜させれば良いので、例えば伝播部の一部をエッチング等で除去して斜面を形成しておき、その上に薄膜状にパターニングを行うだけでプラズモン発生部及び近接場光発生部を具備する近接場光発生素子を製造することが可能である。
従って、特別な手法を用いることなく、通常のフォトリソグラフィ技術等の半導体製造技術を利用しながら、従来の製造プロセスの流れの中で伝播部及び近接場光発生素子をスライダの流出端面側に同時に作り込むことができる。そのため、容易且つ精度良く、しかも効率良く製造することができ、低コスト化及び量産化に繋げることができる。
【0015】
また、光束と相互作用する面積をより大きく確保することができ、多くの光束をプラズモン発生部に入射させることができる。従って、漏れ光のさらなる低減化を図ると同時に、表面プラズモンをより効率良く発生させることができる。しかもその一方、近接場光発生部の横幅をできるだけ幅狭にできるので、出射端面をより小さくすることが可能である。従って、近接場光のさらなる局在化を図ることができる。
このように、表面プラズモンの発生効率の向上化と、近接場光のさらなる局在化と、を同時に図ることができるので、光束の入射エネルギーを有効に利用して高密度な記録を効果的に行うことができる。
【0016】
(
2)上記本発明に係る記録ヘッドにおいて、前記プラズモン発生部が、前記傾斜状態を維持しながら前記伝播部を途中で閉塞するように該伝播部内を横断していても良い。
【0017】
この場合には、プラズモン発生部が伝播部内を横断して該伝播部を途中で閉塞しているので、光束の光路に対してプラズモン発生部が完全に交差する。そのため、伝播されてきた光束を全てプラズモン発生部に入射させることができる。従って、漏れ光を最少限に抑えつつ、高強度の近接場光を発生させることができ、さらなる高密度記録化を図ることができると共に、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0018】
(
3)上記本発明に係る記録ヘッドにおいて、前記近接場光発生部が、前記伝播部の内部を伝播されてくる前記光束の光軸に対して傾斜していても良い。
【0019】
この場合には、近接場光を発生させる出射端面の位置を変更することが可能であるので、設計の自由度を向上することができる。特に、記録磁界の磁場スポットに対してできるだけ近い位置に近接場光を発生させることが可能であるので、光束の入射エネルギーが弱い場合であっても対象とする記録トラックの磁区に対して信頼性高く記録を行うことができると。
【0020】
(
4)本発明に係る情報記録再生装置は、上記本発明に係る記録ヘッドと、前記磁気記録媒体の表面に平行な方向に移動可能とされ、該磁気記録媒体の表面に平行で且つ互いに直交する2軸回りに回動自在な状態で前記記録ヘッドを支持するサスペンションと、前記伝播部に前記光束を入射させる光源と、前記磁気記録媒体の外側に配置されたピボット軸と、該ピボット軸の回りを回転可能に形成されると共に、前記サスペンションを支持するアーム部を有するキャリッジと、を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る情報記録再生装置によれば、上記記録ヘッドを備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る記録ヘッドによれば、容易且つ低コストで精度良く近接場光発生素子を製造することが可能であるうえ、近接場光を効率良く局所的に発生させて、高い信頼性で高密度な記録を行うことができる。
また、本発明に係る情報記録再生装置によれば、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る情報記録再生装置の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態の情報記録再生装置は、垂直記録層を有するディスク(磁気記録媒体)に対して、垂直記録方式で書き込みを行う装置である。
【0025】
(情報記録再生装置)
図1に示すように、本実施形態の情報記録再生装置1は、キャリッジ11と、キャリッジ11の基端側から光電気複合配線33を介して光束L(
図6参照)を供給するレーザ光源20と、キャリッジ11の先端側に支持されたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)12と、ヘッドジンバルアセンブリ12をディスク面D1(ディスクDの表面)に平行なXY方向に向けてスキャン移動させるアクチュエータ6と、ディスクDを所定の方向に向けて回転させるスピンドルモータ7と、情報に応じて変調した電流をヘッドジンバルアセンブリ12の記録ヘッド2に対して供給する制御部5と、これら各構成品を内部に収容するハウジング9と、を備えている。
【0026】
ハウジング9は、アルミニウム等の金属材料からなる上部開口部を有する箱型形状のものであり、上面視四角形状の底部9aと、底部9aの周縁において底部9aに対して鉛直方向に立設する周壁(不図示)とで構成されている。そして、周壁に囲まれた内側には、上述した各構成品を収容する凹部が形成される。
なお、
図1においては、説明を分かりやすくするため、ハウジング9の周囲を取り囲む周壁を省略している。
【0027】
ハウジング9には、該ハウジング9の上部開口部を塞ぐように図示しない蓋が着脱可能に固定されるようになっている。底部9aの略中心には、上記スピンドルモータ7が取り付けられており、該スピンドルモータ7に中心孔を嵌め込むことでディスクDが着脱自在に固定されている。
【0028】
ディスクDの外側で、底部9aの一つの隅角部には、上述したアクチュエータ6が取り付けられている。このアクチュエータ6には、ピボット軸10を中心に水平面(XY方向)内で回動可能なキャリッジ11が取り付けられている。
このキャリッジ11は、基端部から先端部に向けて(ディスクD方向に向けて)延設されたアーム部14と、基端部を介してアーム部14を片持ち状に支持する基部15とが、削り出し加工等により一体形成されたものである。
基部15は、略直方体形状に形成されたものであり、ピボット軸10回りに回動可能に支持されている。つまり、基部15はピボット軸10を介してアクチュエータ6に連結されており、このピボット軸10がキャリッジ11の回転中心となっている。
【0029】
アーム部14は、基部15におけるアクチュエータ6が取り付けられた側面15aと反対側の側面(隅角部の反対側の側面)15bにおいて、基部15の上面の面方向(XY方向)と平行に延出する平板状のものであり、基部15の高さ方向(Z方向)に沿って3枚延出している。
具体的には、アーム部14は、基端部から先端部に向かうにしたがって先細るテーパ形状に形成されており、各アーム部14間に、ディスクDが挟み込まれるように配置されている。つまり、アーム部14とディスクDとが、交互に配置可能に構成されており、アクチュエータ6の駆動によってアーム部14がディスク面D1に平行な方向(XY方向)に移動可能とされている。
なお、キャリッジ11及びヘッドジンバルアセンブリ12は、ディスクDの回転停止時にアクチュエータ6の駆動によって、ディスクD上から退避可能とされている。
【0030】
ヘッドジンバルアセンブリ12は、後述する記録ヘッド2にレーザ光源20からの光束Lを導いて近接場光S(
図6参照)を発生させ、該近接場光Sを利用してディスクDに各種情報を記録再生させるものである。
図2から
図5に示すように、本実施形態のヘッドジンバルアセンブリ12は、上記記録ヘッド2をディスクDから浮上させる機能を有しており、該記録ヘッド2と、金属性材料により薄い板状に形成され、ディスク面D1に平行なXY方向に移動可能なサスペンション3と、記録ヘッド2をディスク面D1に平行で且つ互いに直交する2軸(X軸、Y軸)回りに回動自在な状態、即ち2軸を中心として捻れることができるようにサスペンション3の下面に固定させるジンバル手段16と、を備えている。
【0031】
記録ヘッド2は、ディスクDとサスペンション3との間に配置された状態で、サスペンション3の下面に後述するジンバル17を挟んで支持されている。
図5及び
図6に示すように、この記録ヘッド2は、ディスク面D1から所定距離だけ浮上した状態でディスクDに対向配置され、ディスク面D1に対向する浮上面2aを有するスライダ60と、スライダ60の流出端面(先端面)60a側に配設された、光伝播素子40、記録素子41、再生素子42と、を備えている。
【0032】
なお、上記スライダ60は、該スライダ60からディスクDを見たときに、ディスクDの回転方向下流側に流出端面60aが位置するように、ディスクDに対向配置されている。また、この流出端面60aに対して向かい合う面は、ディスクDの回転方向上流側に位置する流入端面として機能する。よって、ディスクDの回転時、回転するディスクDによって発生した空気は、流入端面側から浮上面2aに沿って流れた後、流出端面60a側から抜けるように流動する。
なお、記録ヘッド2は、スライダ60の流出端面60a側が最もディスク面D1に近接した状態でディスクD上を浮上する。従って、スライダ60の流出端面60a側に上記各構成品が配置されていることで、これらを可能な限りディスク面D1に近づけることができ、ディスクDの保磁力を効率良く低下させてディスクDへの書き込みが容易とされている。
【0033】
ところで、本実施形態においては、スライダ60の流出端面60aに光伝播素子40が固定されており、記録素子41及び再生素子42が光伝播素子40の後述するクラッド51内に組み込まれた状態で配設されている。具体的には、記録素子41及び再生素子42は、スライダ60の流出端面60aと光伝播素子40の後述する伝播部50との間に位置するようにクラッド51内に組み込まれている。この際、再生素子42がスライダ60の流出端面60aに固定され、この再生素子42に隣接して並ぶように記録素子41が固定されている。
【0034】
スライダ60は、石英ガラス等の光透過性材料や、AlTiC(アルチック)等のセラミック等によって直方体状に形成されている。また、スライダ60は、浮上面2aをディスクD側に向けた状態で、ジンバル17(
図3参照)を介してサスペンション3(
図3参照)の先端にぶら下がるように支持されている。
【0035】
再生素子42は、ディスクDから漏れ出ている磁界の大きさに応じて電気抵抗が変換する磁気抵抗効果膜である。この再生素子42には、後述する電気配線31を介して制御部5(
図1参照)からバイアス電流が供給されている。これにより制御部5は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができ、この電圧の変化から信号の再生を行うことが可能とされている。
【0036】
記録素子41は、スライダ60の流出端面60a側に位置する補助磁極45と、磁気回路46を介して補助磁極45に接続され、ディスクDに対して垂直な記録磁界を補助磁極45との間で発生させる主磁極47と、磁気回路46を中心として該磁気回路46の周囲を渦巻状に巻回されたコイル48と、を備えている。
【0037】
両磁極45、47及び磁気回路46は、磁束密度が高い高飽和磁束密度(Bs)材料(例えば、CoNiFe合金、CoFe合金等)により形成されている。また、コイル48は、ショートしないように、隣り合うコイル線間、磁気回路46との間、両磁極45、47との間に隙間が空くように配置されており、この状態で絶縁層49によってモールドされている。つまり、両磁極45、47、磁気回路46及びコイル48は、絶縁層49によって支持された状態となっている。また、コイル48には情報に応じて変調された電流が制御部5から供給される。
なお、主磁極47及び補助磁極45は、ディスクDに対向する端面がスライダ60の浮上面と面一となるように設計されている。
【0038】
光伝播素子40は、後述する光導波路32から入射された光束Lをディスク面D1に対向する端面側に向けて伝播させる伝播部50と、該伝播部50を内部に閉じ込めるクラッド51と、で構成される略板状の素子であって、上記したようにスライダ60の流出端面60aに固定されている。
伝播部50は、スライダ60の流出端面60aに沿って延在しており、一端側がスライダ60の上方に向き、他端側がディスクDに向いた状態で主磁極47の近傍に隣接している。伝播部50の他端側における端面50aは、スライダ60の浮上面2aに対して面一とされている。そして、この伝播部50の他端側における内部には、伝播部50によって伝播される光束Lから近接場光Sを発生させる近接場光発生素子70が埋設されている。
【0039】
なお、本実施形態の伝播部50は、クラッド51の屈折率よりも高い屈折率の材料からなり、クラッド51との屈折率の違いから光束Lを全反射条件で導くコアとされている。クラッド51は、コアである伝播部50に密着して該伝播部50を内部に閉じ込めている。
【0040】
また、クラッド51及びコアとして使用される材料の組み合わせの一例を記載すると、例えば、石英(SiO
2)でコアを形成し、フッ素をドープした石英でクラッド51を形成する組み合わせが考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コアの屈折率が1.47となり、クラッド51の屈折率が1.47未満となるので好ましい組み合わせである。また、ゲルマニウムをドープした石英でコアを形成し、石英(SiO
2)でクラッド51を形成する組み合わせも考えられる。この場合には、光束Lの波長が400nmのときに、コアの屈折率が1.47より大きくなり、クラッド51の屈折率が1.47となるのでやはり好ましい組み合わせである。
【0041】
特に、コアとクラッド51との屈折率差が大きいほど、コア内に光束Lを閉じ込める力が大きくなるので、コアに酸化タンタル(Ta
2O
5:波長が550nmのときに屈折率が2.16)を用い、クラッド51に石英等を用いて、両者の屈折率差を大きくすることがより好ましい。また、赤外領域の光束Lを利用する場合には、赤外光に対して透明な材料であるシリコン(Si:屈折率が約4)でコアを形成することも有効である。
【0042】
上記近接場光発生素子70は、
図6から
図8に示すように、伝播部50によって伝播される光束Lから近接場光Sを発生させる素子であり、金等の導電性材料からなる薄膜とされている。
この近接場光発生素子70は、光束Lの入射によって表面プラズモンを発生させるプラズモン発生部71と、伝播部50の端面50aと面一とされた出射端面72aを有し、上記表面プラズモンを出射端面72aに向けて伝播させると共に該出射端面72aから近接場光Sとして発生させる近接場光発生部72と、を備えている。
【0043】
プラズモン発生部71は、伝播部50の内部を伝播されてくる光束Lの光軸M(
図6参照)に対して傾斜している。これに対して、近接場光発生部72は、光軸Mに対して平行に延在しており、上記したように伝播部50の端面50aに露出する面が出射端面72aとされている。
これらプラズモン発生部71及び近接場光発生部72は、同材質(上記導電性材料)により一体的に形成されている。
【0044】
ところで、
図7に示すように、本実施形態では近接場光発生素子70をスライダ60の流出端面60a側から見たときに、プラズモン発生部71の横幅W1(ディスク面D1に対して平行な方向に延びる幅)が、近接場光発生部72の横幅W2よりも幅広とされている。図示の例では、近接場光発生部72の横幅W2は厚みと略同じとされ、プラズモン発生部71の横幅W1がそれよりも略6〜8倍程度大きな幅とされている。
【0045】
また、
図2から
図5に示すように、スライダ60の下面は上述したようにディスク面D1に対向する浮上面2aとされ、回転するディスクDによって生じた空気流の粘性から浮上するための圧力を発生させる面であり、ABS(Air Bearing Surface)と呼ばれている。具体的には、スライダ60をディスク面D1から離そうとする正圧とスライダ60をディスク面D1に引き付けようとする負圧とを調整して、スライダ60を最適な状態で浮上させるように設計されている。
スライダ60は、この浮上面2aによってディスク面D1から浮上する力を受けていると共に、サスペンション3によってディスクD側に押さえ付けられる力を受けている。そしてスライダ60は、この両者の力のバランスによって、ディスク面D1から浮上している。
【0046】
図2及び
図3に示すように、サスペンション3は、上面視略四角状に形成されたベースプレート22と、ベースプレート22の先端側にヒンジ板23を介して連結された平面視略三角状のロードビーム24と、で構成されている。
【0047】
ベースプレート22は、ステンレス等の厚みの薄い金属材料によって構成されており、基端側には厚さ方向に貫通する開口22aが形成されている。そして、この開口22aを介してベースプレート22がアーム部14の先端に固定されている。
ベースプレート22の下面には、ステンレス等の金属材料により構成されたシート状の上記ヒンジ板23が配置されている。このヒンジ板23は、ベースプレート22の下面の全面に亘って形成された平板状の板材であり、その先端部分はベースプレート22の先端からベースプレート22の長手方向に沿って延出する延出部23aとして形成されている。この延出部23aは、ヒンジ板23の幅方向両端部から2本延出しており、その先端部分にロードビーム24が連結されている。
【0048】
ロードビーム24は、ベースプレート22と同様にステンレス等の厚みの薄い金属材料によって形成されており、その基端がベースプレート22の先端との間に間隙を有した状態でヒンジ板23に連結されている。
これにより、サスペンション3は、ベースプレート22とロードビーム24との間を中心に屈曲して、ディスク面D1に垂直なZ方向に向けて撓み易くなっている。
【0049】
また、サスペンション3上には、フレクシャ25が設けられている。
このフレクシャ25は、ステンレス等の金属材料により形成されたシート状のものであり、シート状に形成されることで厚さ方向に撓み変形可能に構成されている。また、このフレクシャ25は、ロードビーム24の先端側に固定され、外形が上面視略五角形状に形成されたジンバル17と、ジンバル17より幅狭に形成され、ジンバル17の基端からサスペンション3上に沿って延在する支持体18とで構成されている。
【0050】
ジンバル17は、中間付近から先端にかけてディスク面D1に向けて厚さ方向に僅かながら反るように形成されている。そして、この反りが加わった先端側がロードビーム24に接触しないように、基端側から略中間付近にかけてロードビーム24に固定されている。また、この浮いた状態のジンバル17の先端側には、周囲がコ形状に刳り貫かれた切欠部26が形成されており、この切欠部26に囲まれた部分には連結部17aによって片持ち状に支持されたパッド部17bが形成されている。
つまり、このパッド部17bは、連結部17aによってジンバル17の先端側から基端側に向けて張出し形成されており、その周囲に切欠部26を備えている。
【0051】
これにより、パッド部17bはジンバル17の厚さ方向に撓み易くなっており、このパッド部17bのみがサスペンション3の下面と平行になるように角度調整されている。そして、このパッド部17b上に上述した記録ヘッド2が載置固定されている。つまり、記録ヘッド2は、パッド部17bを介してロードビーム24にぶら下がった状態となっている。
【0052】
また、
図3及び
図4に示すように、ロードビーム24の先端には、パッド部17b及び記録ヘッド2の略中心に向かって突出する突起部19が形成されている。この突起部19の先端は、丸みを帯びた状態となっている。そして突起部19は、記録ヘッド2がディスクDから受ける風圧によりロードビーム24側に浮上したときに、パッド部17bの表面(上面)に点接触するようになっている。
つまり、突起部19は、ジンバル17のパッド部17bを介して、記録ヘッド2を支持すると共に、ディスク面D1に向けて(Z方向に向けて)記録ヘッド2に荷重を付与する。そして、突起部19とパッド部17bとの接触点(支持点)が、突起部19による記録ヘッド2の荷重点とされている。
なお、これら突起部19とパッド部17bを有するジンバル17とが、ジンバル手段16を構成している。
【0053】
図2に示す支持体18は、ジンバル17に一体形成されたシート状のものであり、サスペンション3上をアーム部14に向かって延設されている。つまり、支持体18は、サスペンション3が変形した際にサスペンション3の変形に追従するように構成されている。また、この支持体18は、アーム部14上から側面に回りこんで、キャリッジ11の基部15に至るまで引き回されている。
【0054】
図1及び
図9に示すように、キャリッジ11の基部15における側面15cには、ターミナル基板30が配置されている。このターミナル基板30は、ハウジング9に設けられた制御部5と記録ヘッド2とを電気的に接続する際の中継点となるものであり、その表面には、各種制御回路(不図示)が形成されている。
制御部5とターミナル基板30とは、可撓性を有するフラットケーブル4により電気的に接続されている一方、ターミナル基板30と記録ヘッド2とは、電気配線31により接続されている。この電気配線31は、各キャリッジ11に設けられた記録ヘッド2に対応して3組設けられており、フラットケーブル4を介して制御部5から出力された信号が、電気配線31を介して記録ヘッド2に出力される。
【0055】
ターミナル基板30上には、記録ヘッド2の光伝播素子40に向けて光束Lを供給する上記レーザ光源20が配置されている。レーザ光源20は、フラットケーブル4を介して制御部5から出力された信号を受信し、この信号に基づいて光束Lを出射するものであり、各アーム部14に設けられた記録ヘッド2に対応して基部15の高さ方向(Z方向)に沿って3個配列されている。各レーザ光源20の出射側には、出射された光束Lを記録ヘッド2まで導く光導波路32が接続されている。
【0056】
図2及び
図3に示すように、光導波路32と電気配線31とは、レーザ光源20と記録ヘッド2との間において、その基端側から先端に至るまで一体的に形成された光電気複合配線33として構成されている。
この光電気複合配線33は、ターミナル基板30の表面からアーム部14の側面を通って、アーム部14上に引き回されている。具体的には、光電気複合配線33は、アーム部14及びサスペンション3上において、フレクシャ25の支持体18上に配置されており、該支持体18を間に挟んだ状態でサスペンション3の先端まで引き回されている。
【0057】
そして、光電気複合配線33は、サスペンション3の先端、即ちジンバル17の中間位置において電気配線31と光導波路32とに分岐している。
具体的には、光導波路32は、光電気複合配線33の先端側における分岐地点からジンバル17の長手方向に沿って延在しており、ジンバル17の切欠部26を跨いで記録ヘッド2の流入端側に直接接続されている。光導波路32は、光電気複合配線33の分岐地点においてジンバル17の下面から離間されており、分岐地点から記録ヘッド2の流入端側に向かうにつれ、パッド部17bとジンバル17との間を架け渡すように僅かながら浮いた状態で延在している。
つまり、ジンバル17の下面において、光導波路32は略直線的(曲率半径が略無限大)に延在した状態で、記録ヘッド2の幅方向(X方向)中央部から記録ヘッド2の流入端側に引き回されている。
【0058】
一方、上記分岐地点において、電気配線31はジンバル17の外周部分に向けて屈曲されており、ジンバル17の外周部分、つまり切欠部26の外側から引き回されている。そして、切欠部26の外側から引き回された電気配線31は、連結部17a上を通って記録ヘッド2の流出端面60a側に接続されている。即ち、電気配線31は、スライダ60の流出端面60a側に設けられた再生素子42と記録素子41とのそれぞれに対して、記録ヘッド2の外部から直接接続されている。
【0059】
なお、光導波路32の構成材料は、上記した光伝播素子40のコア(伝播部50)及びクラッド51と同様の材料を用いることも可能であるが、本実施形態では以下に示すような樹脂材料が好適に用いられている。
例えばPMMA(メタクリル酸メチル樹脂)により、厚さが3〜10μmでコア32aを形成し、フッ素含有重合体により、厚さが数十μmでクラッド32bを形成する組み合わせが考えられる。また、コア32a及びクラッド32bをともにエポキシ樹脂(例えば、コア屈折率1.522〜1.523、クラッド屈折率1.518〜1.519)で構成したり、フッ素化ポリイミドで構成したりすることも可能である。この場合、コア32aとクラッド32bとを構成する樹脂材料の配合等を調整して、両者の屈折率差を大きくすることが好ましい。例えば、フッ素化ポリイミドの場合、フッ素含有量を調整したり、放射光等のエネルギー照射によって、屈折率を制御したりすることができる。このように、光導波路32の構成材料に樹脂材料を用いることで、光電気複合配線33を半導体プロセスにより製造することが可能である。
【0060】
ところで、
図6に示すように、光導波路32の先端面は斜めにカットされたミラー面35とされており、レーザ光源20によって導入された光束Lを、該光束Lの向きが略90度変わるように反射させている。これにより、ミラー面35で反射された光束Lが、記録ヘッド2の光伝播素子40を構成する伝播部50内に導入可能とされている。なお、ミラー面35は、少なくともコア32aを含む領域にアルミ等からなる反射板を蒸着法等により形成するような構成としても構わない。
【0061】
(情報記録再生方法)
次に、このように構成された情報記録再生装置1により、ディスクDに各種の情報を記録再生する手順について説明する。
【0062】
まず、スピンドルモータ7を駆動させてディスクDを所定方向に回転させる。次いで、アクチュエータ6を作動させて、ピボット軸10を回転中心としてキャリッジ11を回動させ、キャリッジ11を介してヘッドジンバルアセンブリ12をXY方向にスキャンさせる。これにより、
図1に示すように、ディスクD上の所望する位置に記録ヘッド2を位置させることができる。
【0063】
この際、記録ヘッド2は、サスペンション3によって支持されていると共に所定の力でディスクD側に押さえ付けられている。また、これと同時に記録ヘッド2は、浮上面2aを利用して、回転するディスクDによって生じる風圧の影響を受けて浮上する力を受けている。この両者の力のバランスによって、記録ヘッド2はディスクD上から離間した位置に浮上している。
しかも記録ヘッド2は、風圧を受けてサスペンション3側に押されるので、記録ヘッド2を固定するジンバル17のパッド部17bとサスペンション3に形成された突起部19とが、点接触した状態となる。そして、この浮上する力は、突起部19を介してサスペンション3に伝わり、該サスペンション3をディスク面D1に垂直なZ方向に向けて撓ませるように作用する。これにより、上記したように記録ヘッド2は浮上する。
【0064】
ここで、情報の記録を行う場合、制御部5はレーザ光源20を作動させると共に、情報に応じて変調した電流をコイル48に供給して記録素子41を作動させる。
レーザ光源20が作動すると、光導波路32に光束Lを入射させる。すると、この光束Lは、光導波路32のコア32a内を先端側に向かって進んだ後、
図6に示すように、ミラー面35で反射されて光伝播素子40の伝播部50内に導入される。伝播部50内に導入された光束Lは、ディスクD側に位置する端面50a側に向かって例えばクラッド51との界面との間で反射を繰り返しながら伝播部50内を確実に伝播する。
【0065】
そして、この伝播部50内を伝播してきた光束Lは、その一部が近接場光発生素子70のプラズモン発生部71に入射する。すると、プラズモン発生部71が入射した光束Lによって表面プラズモンを励起させる。この表面プラズモンが励起されると、近接場光発生部72が該表面プラズモンを出射端面72aに向けて伝播させると共に、その表面プラズモンのエネルギーを近接場光Sに変換して出射端面72aから外部に局在化させた状態で発生させる。これにより、ディスクDはこの近接場光Sによって局所的に加熱されて一時的に保磁力が低下する。
【0066】
一方、制御部5によってコイル48に電流が供給されると、電磁石の原理により電流磁界が磁気回路46内に磁界を発生させるので、主磁極47と補助磁極45との間にディスクDに対して垂直方向の記録磁界を発生させることができる。
【0067】
その結果、近接場光発生部72の出射端面72aに局在化した状態で発生された近接場光Sと、記録素子41で発生された記録磁界とを協働させたハイブリッド磁気記録方式により情報の記録を行うことができる。しかも垂直記録方式で記録を行うので、熱揺らぎ現象等の影響を受け難く、安定した記録を行うことができる。よって、書き込みの信頼性を高めることができる。
【0068】
次に、ディスクDに記録された情報を再生する場合には、再生素子42がディスクDから漏れ出ている磁界を受けて、その大きさに応じて電気抵抗が変化する。よって、再生素子42の電圧が変化する。これにより制御部5は、ディスクDから漏れ出た磁界の変化を電圧の変化として検出することができる。そして制御部5は、この電圧の変化から信号の再生を行うことで、情報の再生を行うことができる。
上述したように、記録ヘッド2を利用してディスクDに対して各種の情報を記録再生することができる。
【0069】
特に、本実施形態の記録ヘッド2によれば、近接場光発生素子70のプラズモン発生部71が、従来のものとは異なり伝播部50内を伝播されてくる光束Lの光軸Mに対して傾斜している。そのため、光束Lと相互作用する面積を大きく確保することができ、伝播されてくる光束Lを効率良くプラズモン発生部71に入射させて、表面プラズモンの発生効率を向上させることができる。
従って、近接場光発生部72の出射端面72aに近接場光Sを効率良く、しかも局所的に発生させることができ、高密度な記録を行うことができる。
【0070】
また、上記したように伝播されてくる光束Lを効率良くプラズモン発生部71に入射させることができるので、プラズモン発生部71に入射しない光束Lの量を抑えることができる。そのため、近接場光Sの発生に寄与しない漏れ光を低減させることができるので、漏れ光に起因する誤記録を抑制することができ書き込みの信頼性を高めることができる。
【0071】
更に、近接場光発生素子70は伝播部50内に埋設されており、この伝播部50によって周囲が覆われた状態となっている。そのため、プラズモン発生部71において光束Lが入射する入射面だけでなく、その入射面とは反対側の表面も含めた外表面全体に効率良く表面プラズモンが励起させ易い。そのうえ、プラズモン発生部71の外表面は全て同じ伝播部50に接する面であるので、表面プラズモンを同じ条件で近接場光発生部72に伝播させることができ損失を抑制し易い。これらの点においても、近接場光Sを効率良く発生させ易い。
また、プラズモン発生部71及び近接場光発生部72は、共に同じ材料からなる同一媒体であるので、両者の接続部分に段差や界面等が生じ難い。従って、表面プラズモンの損失を抑制しながらプラズモン発生部71から近接場光発生部72に伝播することができ、この点においても近接場光Sを効率良く発生させ易い。
【0072】
しかも、本実施形態では、プラズモン発生部71の横幅W1が近接場光発生部72の横幅W2よりも遥かに大きいので、光束Lと相互作用する面積をより大きく確保することができ、多くの光束Lをプラズモン発生部71に入射させることができる。従って、上記作用効果を顕著に奏効することができる。また、その一方で近接場光発生部72の横幅W2をできるだけ幅狭にできるので、出射端面72aを極力小さくし易い(
図8参照)。従って、近接場光Sのさらなる局在化を図ることができ、高密度記録化を図り易い。
つまり、本実施形態による近接場光発生素子70によれば、表面プラズモンを効率良く発生させることができる点と、近接場光Sを極力小さなスポットで発生させることができる点と、を同時に果すことができる。
【0073】
また、プラズモン発生部71と近接場光発生部72との膜厚を変化させる必要がなく、近接場光発生部72と同じ膜厚のプラズモン発生部71を光軸Mに対して傾斜させれば良いので、例えば伝播部50の一部をエッチング等で除去して斜面を形成しておき、その上に薄膜状にパターニングを行うだけで、プラズモン発生部71及び近接場光発生部72を具備する近接場光発生素子70を製造することが可能である。
従って、特別な手法を用いることなく、通常のフォトリソグラフィ技術等の半導体製造技術を利用しながら、従来の製造プロセスの流れの中で伝播部50及び近接場光発生素子70をスライダ60の流出端面60a側に同時に作り込むことができる。そのため、容易に精度良くしかも効率良く製造することができ、低コスト化及び量産化に繋げることができる。
【0074】
ここで、具体的に光伝播素子40及び近接場光発生素子70の製造について簡単に説明する。
まず、
図10(a)に示すように、後にスライダ60となるスライダ基板80の流出端面60a上に半導体技術を利用して再生素子42及び記録素子41を作り込むと共に、光伝播素子40のクラッド層81及び後に伝播部50となるコア層82を順に積層する。次いで、
図10(b)に示すように、半導体技術を利用してコア層82を加工して、傾斜面83aを有する膨出部83を形成すると共に、それ以外のコア層82の部分を除去する。
【0075】
次いで、
図10(c)に示すように、上記膨出部83を覆うように金等の導電性材料を被膜させて、近接場光発生素子70を形成する。なお、膨出部83のうち傾斜面83a上に被膜されている部分がプラズモン発生部71となり、その他の部分に被膜されている部分が近接場光発生部72となる。
【0076】
次いで、
図10(d)に示すように、近接場光発生素子70及び露出しているクラッド層81を覆うように、コア層82を再度積層する。次いで、
図11(a)に示すように、再積層したコア層82のうち、上記膨出部83に倣って膨らんだ部分を研磨し、コア層82の全体を平坦に形成する。次いで、
図11(b)に示すように、このコア層82を覆うように再度クラッド層81を積層する。最後に
図11(b)に示すように、これら積層体を点線部分まで研磨加工することで、伝播部50の内部に近接場光発生素子70が配設された記録ヘッド2を製造することができる。
【0077】
特に、スライダ60の流出端面60a側から順に各構成品を作り込む途中で、近接場光発生素子70の製造工程を一工程追加するだけの簡便な方法で、伝播部50及びクラッド51からなる光伝播素子40と、プラズモン発生部71及び近接場光発生部72からなる近接場光発生素子70と、を同時に作り込むことができるので、製造が容易である。
【0078】
そして、本実施形態の情報記録再生装置1は、上述した記録ヘッド2を備えているので、書き込みの信頼性が高く、高密度記録化に対応した高品質な装置にすることができる。また、上述したように、光軸Mに対して傾斜したプラズモン発生部71を利用して効率良く表面プラズモンを発生させることができるので、レーザ光源20に必要なレーザパワーを下げることができ、消費電力の低減化を図ることができる。
【0079】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、スライダ60を浮上させた空気浮上タイプの情報記録再生装置1を例に挙げて説明したが、この場合に限られず、ディスク面D1に対向配置されていればディスクDとスライダ60とが接触していても構わない。つまり、本発明の記録ヘッド2は、コンタクトスライダタイプのヘッドであっても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏することができる。
【0081】
また、上記実施形態では、アーム部14の片面側のみにヘッドジンバルアセンブリ12が設けられている構成について説明したが、各ディスクD間に差し入れられるアーム部14の両面に、各ディスクDに対向するようにそれぞれヘッドジンバルアセンブリ12を設けるような構成も可能である。
この場合には、アーム部14の両面側に設けられたヘッドジンバルアセンブリ12の各記録ヘッド2により、各記録ヘッド2に対向するディスク面D1の情報の記録再生を行うことができる。つまり、1つのアーム部14により2枚のディスクDの情報を記録再生することができるため、情報記録再生装置1の記録容量の増加及び装置の小型化を図ることができる。
【0082】
また、上記実施形態では、光伝播素子40に光束Lを導入するレーザ光源20をキャリッジ11の基部15に取り付けられたターミナル基板30に配設させた構成としたが、この位置に限定されるものではない。例えば、スライダ60の上面に配設し、記録ヘッド2に一体的に搭載させても構わない。こうすることで、光導波路32をキャリッジ11から引き回す必要がないうえ、浮上時におけるスライダ60の動きが光導波路32によって阻害され難いので、より好ましい。
【0083】
また、上記実施形態では、伝播部50をストレート状に形成したが、この形状に限定されるものではない。例えば、端面50a側に向かうにしたがって漸次先細り形状となるように形成しても構わない。いずれにしても、光束Lを伝播できれば良い。
【0084】
また、上記実施形態において、
図12から
図14に示すように、伝播部50を途中で閉塞するようにプラズモン発生部71を形成しても構わない。即ち、光軸Mに対する傾斜状態を維持した状態で伝播部50内を横断するようにプラズモン発生部71を延在させ、伝播部を途中で閉塞させるように形成しても構わない。
【0085】
この場合には、プラズモン発生部71が伝播部50を途中で閉塞しているので、伝播される光束Lの光路に対してプラズモン発生部71が完全に交差する。そのため、伝播されてきた光束Lを全てプラズモン発生部71に入射させることができる。従って、漏れ光を最少限に抑えつつ、高強度の近接場光Sを発生させることができ、さらなる高密度記録化を図ることができると共に、書き込みの信頼性をさらに高めることができる。
【0086】
また、上記実施形態において、プラズモン発生部71だけでなく近接場光発生部72についても、光束Lの光軸Mに対して傾斜するように形成しても構わない。
例えば、
図15から
図17に示すように、近接場光発生部72の一部をスライダ60の流出端面60a側に接近するように傾斜させても構わない。
このように、近接場光発生部72の少なくとも一部を光軸Mに対して傾斜させることで、近接場光Sを発生させる出射端面72aの位置を変更することが可能であるので、設計の自由度を向上することができる。
特に、図示の例では、近接場光発生部72の出射端面72aが主磁極47に極力近づいているので、記録磁界の磁場スポットに対してできるだけ近い位置に近接場光Sを発生させることが可能であり、光束Lの入射エネルギーが弱い場合であっても、対象とする記録トラックの磁区に対して信頼性高く記録を行うことができる。
【0087】
また、上記実施形態において、
図18に示すように、できるだけ角部を生じさせることなく丸みを帯びた外形形状となるように近接場光発生素子70を形成することが好ましい。このようにすることで、励起させた表面プラズモンを途中でロスさせることなく、近接場光発生部72の出射端面72aまで導き、近接場光Sに変換することができる。