特許第5780662号(P5780662)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780662
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】連続フロー重合処理
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/04 20060101AFI20150827BHJP
   C08F 2/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   C08F2/04
   C08F2/00 A
【請求項の数】12
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-529509(P2013-529509)
(86)(22)【出願日】2011年8月12日
(65)【公表番号】特表2013-543021(P2013-543021A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】AU2011001035
(87)【国際公開番号】WO2012037596
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2014年7月4日
(31)【優先権主張番号】2010904286
(32)【優先日】2010年9月22日
(33)【優先権主張国】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】590003283
【氏名又は名称】コモンウェルス サイエンティフィック アンド インダストリアル リサーチ オーガナイゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100089196
【弁理士】
【氏名又は名称】梶 良之
(74)【代理人】
【識別番号】100104226
【弁理士】
【氏名又は名称】須原 誠
(72)【発明者】
【氏名】チーファリ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホーナン クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ソバーン サイモン
【審査官】 久保田 英樹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−511657(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/000065(WO,A1)
【文献】 特開2005−307097(JP,A)
【文献】 特表2012−515809(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/023919(WO,A1)
【文献】 特表2011−519990(JP,A)
【文献】 特表2008−516017(JP,A)
【文献】 特表2009−532534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00− 2/60
C08F 12/00− 34/04
C08F 255/00−289/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを、RAFT溶液重合によって連続的に生成する生成方法であって、
管状フロー反応器である第1のフロー反応器を構成する束ねられた複数のフローライン又はコイル状に巻かれたフローラインに、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー、RAFT剤、非反応性の溶媒、及び、フリーラジカル開始剤を含む反応液を導入する工程と、
前記第1のフロー反応器において前記単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT重合を促進させることによってポリマー溶液を生成し、生成されたポリマー溶液を前記第1のフロー反応器から排出する工程とを備えていることを特徴とする生成方法。
【請求項2】
前記第1のフロー反応器は、毛細管状フロー反応器であることを特徴とする請求項に記載の生成方法。
【請求項3】
前記第1のフロー反応器を構成する前記フローラインの内径はmm以下であることを特徴とする請求項1に記載の生成方法。
【請求項4】
前記第1のフロー反応器を構成する前記フローラインの内径は1mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の生成方法。
【請求項5】
前記第1のフロー反応器を構成する前記フローラインは金属製であることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項6】
前記第1のフロー反応器から排出されたポリマー溶液を、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーとフリーラジカル開始剤とを含む反応液とともに、第2のフロー反応器、又は、第2のフロー反応器の一領域に導入する工程と、
前記第2のフロー反応器において前記単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT重合を促進させることによってブロックコポリマー溶液を生成し、生成されたブロックポリマー溶液を前記第2のフロー反応器から排出る工程とをさらに備えていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項7】
第2のフロー反応器、又は、前記第2のフロー反応器の前記一領域は、前第1のフロー反応器に接続されていることを特徴とする請求項に記載の生成方法。
【請求項8】
RAFT重合は、前記第1のフロー反応器に熱を加えることによって促進されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法。
【請求項9】
RAFT剤は以下の一般式(II)又は(III)で表されることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法:
【化3】
上記式において、Z及びRは基であり、R*及びZ*はそれぞれ、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合させる際に、RAFT剤として機能するように選択されたX価及びY価の基であり、Xは1以上の整数であり、Yは2以上の整数である。
【請求項10】
Rは、任意選択の置換がされている(R*の場合は任意選択の置換がされているX価の)アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアルケニル、アルキルアルキニル、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキニルオキシアルキル、アリーロキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロアリーロキシ、アルキルチオアルキル、アルケニルチオアルキル、アルキニルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアルケニルアルキル、アルキルアルキニルアルキル、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアルケニルアリール、アリールアルキニルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アルケニルオキシアリール、アルキニルオキシアリール、アリーロキシアリール、アルキルチオアリール、アルケニルチオアリール、アルキニルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオ、及び、ポリマー鎖から選ばれることを特徴とする請求項に記載の生成方法。
【請求項11】
Zは、任意選択の置換がされている(Z*の場合は任意選択の置換がされているY価の)F、Cl、Br、I、アルキル、アリール、アシル、アミノ、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アリーロキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、カルボシクリルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アリーロキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロアリーロキシ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アリーロキシアリール、アリールアシルオキシ、アリールカルボシクリルオキシ、アリールヘテロシクリルオキシ、アリールヘテロアリーロキシ、アルキルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオ、diアルキルオキシ−、ジヘテロシクリルオキシ−、又は、ジアリーロキシ−ホスフィニル、diアルキル−、ジヘテロシクリル−、又は、ジアリール−ホスフィニル、シアノ(即ち、−CN)、及び、−S−Rから選択され、Rは請求項又は1に定義されるとおりであることを特徴とする請求項に記載の生成方法。
【請求項12】
前記反応液は、重合を促進させる前に、脱気させることによって酸素を除去されていることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的に連続的なフロー重合の処理に関し、特に、可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT;Reversible Addition-Fragmentation chain Transfer)によって連続的にポリマーを製造する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開WO98/01478、WO99/31144、及び、WO10/83569に記載されるように、RAFT重合はリビング重合に伴う特徴を表す重合方法である。リビング重合は、当技術分野では一般的に不可逆的な連鎖の停止が実質的に存在しない連鎖重合の形態とみなされる。リビング重合の重要な特徴は、重合を支持するモノマーおよび反応条件が提供される間、ポリマー鎖が成長し続けることである。RAFT重合によって生成されたポリマーの優れた点としては、十分に定義された分子構造、所定の分子量、および狭い分子量分布または低い多分散性が挙げられる。
【0003】
RAFT重合は、以下のスキーム1に単純化して例示する機構に従って、RAFT剤の制御下で進行すると考えられる。
【0004】
【化1】
【0005】
スキーム1:RAFT重合に提案される機構(式中、Mはモノマーを表し、Pnは重合したモノマーを表し、ZおよびRは以下に定義の通りである)。
【0006】
スキーム1に関して、Rは、使用される重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能し、さらにはフリーラジカル脱離基として重合を再開する能力を保持する基を表す。Zは、重合が過度に遅延する程度までRAFT付加物ラジカルの開裂速度を減速することなく、フリーラジカル付加に対するRAFT剤のC=S部分の適切な反応性を伝えるように機能する基を表す。
【0007】
RAFT重合は、大量のモノマーの配列、水溶液等の溶媒を用いることが出来るため、少なくとも部分的には最も汎用性の高い制御ラジカル重合方法の一つである。
【0008】
RAFT重合の有用性にも関わらず、所謂RAFTポリマー(即ち、RAFT重合によって生成されるポリマー)の商業ベースでの製造工程については、研究開発がこれまで限定的であった。従って、商業ベースでRAFTポリマーを生産するための工程を発展させるための良い機会であり、少なくとも、RAFTポリマーを生産するための最先端の工程とは別の方法を発展させるための良い機会である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、RAFT溶液重合によって連続的にポリマーを生成する生成方法を提供し、前記生成方法は、
管状フロー反応器である第1のフロー反応器を構成する束ねられた複数のフローライン又はコイル状に巻かれたフローラインに、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー(ethylenically unsaturated monomer)、RAFT剤、非反応性の溶媒、及び、フリーラジカル開始剤を含む反応液を導入する工程と、
第1のフロー反応器において単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT重合を促進させることによってポリマー溶液を生成し、生成されたポリマー溶液を第1のフロー反応器から排出する工程とを備えている。
【0010】
本発明によれば、第1のフロー反応器に反応液を連続的に導入し、ポリマー溶液に変換させて、その後第1のフロー反応器から連続的に排出させることが可能となる。上記生成方法の連続的な特性が、RAFTポリマーの商業ベースでの生産を可能とする。上記生成方法は、再現性があり、多分散性が低くかつ高純度のポリマーを確実に生産することができる。
【0011】
本発明の参考例において、前記第1のフロー反応器は、連続槽型反応器である(CSTR)。
【0013】
本発明の実施形態において、前記第1のフロー反応器は、ミクロ流体フロー反応器である。
【0014】
本発明の別の実施形態において、前記第1のフロー反応器は、毛細管状フロー反応器(マイクロ毛細フロー反応器とも称す)である。
【0015】
フロー反応器が「ミクロ規模」であるにも関わらず、複数のフローラインを使って簡単に作業が行えるので、比較的容易に大生産量にスケールアップが可能となる。特に、任意の量のポリマーの生産において、このようなマイクローフローラインを「ナンバーアップ」(即ち、繰り返し、又は、複製によるスケールアップ)するほうが、同じ量のポリマーを生産するための単一のマクローフローラインを開発する場合と比較して、より効果的で効率的である。例えば、0.0gのポリマーを生産するミクロ流体フロー反応器を、簡単に2g、20g、200g、2kg等のポリマー生産用にナンバーアップすることが可能である。
【0016】
本発明の一実施形態において、前記第1のフロー反応器は、ステンレス鋼等の金属で構成された管状フロー反応器である。
【0017】
本発明のさらなる側面は以下に詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の説明において、さらに以下の非限定的な図面も参照する。
図1図1は、本発明による処理の概略図である。
図2図2は、本発明による処理の概略図である。
図3図3は、RAFT重合用の二つの異なる反応器の性能を比較するものであり、比較例としてのバッチマイクロ波反応器(縞模様)とスチール配管反応器(ブラック)とについて、図中左側のグラフは変換率を示し、中央のグラフは平均分子量を示し、右側のグラフは多分散指数を示す。重合材料、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、連続フロー反応器について、行った全てのフロー実験で、ポリマー製品を得ることが出来なかった。
図4図4は、バッチで合成された(比較例)RAFTポリマーと2時間の反応後連続フローによって合成されたRAFTポリマーのデータを示すものであり、70〜100℃で重合された1〜4の、4種類の異なるモノマーについて、連続フローで生成されたもの(左側カラムーF)とバッチで生成されたもの(右側カラムーB)とを比較しており、図中上段のグラフは変換率を示し、中央のグラフは平均分子量(カラムー実験値/ ブラック・ダイアモンドー理論値)を示し、下段のグラフは多分散指数を示す。
図5図5は、三つの異なる反応器における連続RAFT重合処理に対する、配管直径の影響を示すもので有り、バッチマイクロ波反応器(ブラック)と、2x10mlの反応器を有する、内径=1mmのスチール配管反応器(黒と灰色の縞模様)と、1x20ml反応器を有する内径=2.2mmスチール配管反応器(縞模様)とを比較するものであり, 図中上段のグラフは変換率を示し、中央のグラフは平均分子量を示し、下段のグラフは多分散性指数を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に従って、RAFT溶液重合でポリマーを生成した。ここで、「溶液重合」とは、非反応性の溶媒に溶解したモノマーを重合させて、非反応性の溶媒に溶解した状態のポリマー(ポリマー溶液)を生成する重合方法を意味する。このようにして、生成されたポリマー溶液は、そのポリマー溶液そのものを使用することも可能であり、ポリマーを非反応性の溶媒から分離させて使用することも可能である。
【0020】
当業者であれば、溶液重合が、乳化重合や懸濁重合とは異なる重合方法であることを認識出来るであろう。後者二つの重合方法は、一般的にモノマーを含む不連続有機相が分散した状態の連続水相を利用する。分散状態にあるモノマーの重合を促進させ、分散状態のポリマー粒子又は乳液を生成する。溶液重合とは異なり、乳化重合や懸濁重合で生成されたポリマーは、液体反応媒質に溶解しない。
【0021】
一定の条件下では有用であるとしても、乳化重合や懸濁重合方法は、界面活性剤やその他の重合補助物質を必要とし、得られたポリマーに残存するこれら物質を除去するのは困難である。また、得られたポリマーを水性分散液から隔離できたとしても、ポリマーから水分を分離させるには、膨大なエネルギーを要することになる。
【0022】
これに対して、溶液重合は界面活性剤や重合補助物質を必要とせず、必要に応じて、非反応性の溶媒として、得られたポリマーから分離させやすいものを選択することが可能である。
【0023】
しかしながら、溶液重合方法を用いて、商業ベースの量のポリマーを生産するには課題がある。例えば、バッチ式で溶液重合を行うと、反応物質の充分な混合が困難になり、反応液の温度調整も困難になる。バッチ式の方法では、容量に限界があり、柔軟性に乏しく、変換と生産を良好に行うには、混合、熱伝導を効率よく行う必要がある。「バッチ式」の重合とは、必要な試薬を含む反応液を反応槽に供給し、ポリマー溶液を生成するためにモノマーの重合を促進させ、反応槽からポリマー溶液を取り除くことを意味する。その後、反応槽に反応液を供給するなどして上記処理が繰り返される。
【0024】
一方、本発明ではフロー反応器を使用する。「フロー反応器」とは、(1)反応液を連続的に反応器へ供給し、前記反応器内で連続的に重合させ、(2)前記反応器から生成されたポリマー溶液を流出させるのに適した構造を有する反応器を意味する。本技術分野では、このような反応器を「連続フロー反応器(continuous flow reactors)」と呼ぶ場合もある。
【0025】
本発明で使用されるフロー反応器の種類については、第1のフロー反応器が管状フロー反応器である限り、特に限定されない。
【0026】
本発明の参考例では、前記第1のフロー反応器として、例えば連続槽型反応器(CSTR、連続フロー槽型反応器(continuous flow stirred tank reactor)と呼ぶ場合もある)を用いることができる。本参考例では、反応液は、反応液を撹拌するための槽(又は、反応器)へ連続的に導入される。その後、前記槽内で重合が促進される。前記槽は、ポリマー溶液が前記槽から流出可能な構造を有している。
【0027】
本発明の実施形態において、前記第1のフロー反応器は、単一の又は複数の所謂「フローライン」を有する。ここで、「フローライン」とは、反応液が流動可能な経路、毛細管、又は、配管を意味する。
【0028】
所謂「ミクロ流体の」フロー反応器とは、一般的に反応器を構成するフローラインの内のり幅又は内径が、約10μm以上、1000μm未満のものを言う。
【0029】
しかし、反応器のフローラインの寸法については、溶液重合が可能であれば、特に限定されるものではない。
【0030】
別の一実施形態では、フロー反応器はミクロ流体フロー反応器である。
【0031】
本実施形態では、フロー反応器は連続フローチップ型反応器である。この場合、好適な基板(例:ガラス、金属、又は、ポリマー)の表面に、単一の又は複数の経路が形成され(例:エッチングされる)、前記経路を好適な基板(例:ガラス、金属、又は、ポリマー)で覆うことによって反応器のフローラインが形成される。前記フローラインに、反応液が連続的に導入される。その後、前記反応器を構成するフローライン内において重合を促進させる。尚、チップはポリマー溶液が反応器から流出可能なように構成されている。
【0032】
ロー反応器管状フロー反応器の場合、好適な基板(例:ガラス、金属、又は、ポリマー)の、単一又は複数の配管が反応器のフローラインを形成する。この前記フローラインに反応液が連続的に導入される。その後、前記反応器を構成するフローライン内において重合を促進させる。尚、前記配管はポリマー溶液が反応器から流出可能なように構成されている。
【0033】
前記管状フロー反応器は、毛細管状フロー反応器であってもよい。このようなフロー反応器を形成する流動管の内径は、例えば10〜1,000μmである。上記フロー反応器の具体的な利点は、表面積に対する容量の比率が高いことであり、約10,000〜50,000m/mの範囲であることが挙げられる。これは、表面積に対する容量の比率が約100m/mであり、1,000m/mを超えることのない、従来のバッチ反応器とは対照的である。上記フロー反応器は、表面積に対する容量の比率が高いため、フローライン壁全体の熱伝導性に優れ、発熱反応に対して素早く効率的な冷却が可能になり、多少の発熱又は吸熱を伴う低速度の反応に対して、準等温工程制御を行うことが可能となる。
【0034】
一実施形態において、前記管状フロー反応器は、単一又は複数のフローラインを有しており、各フローラインの内径は、大体2mm以下であり、例えば、約1.1mm以下、又は、1mm以下である。別の実施形態では、前記管状フロー反応器は、単一又は複数のフローラインを有しており、各フローラインの内径は、大体0.0mm〜1.1mm、又は、0.0mm〜1.1mmの範囲である。更に別の実施形態では、前記管状フロー反応器は、単一又は複数のフローラインを有しており、各フローラインの内径は、大体1mmである。
【0035】
更に、幅広い化学製造産業において使用される、従来のフロー反応器も本発明で好適に使用することが可能である。
【0036】
本発明に好適なフロー反応器に関する詳細については、以下の文献を参照されたい。Hessel V.,Hardt S.,Lo:we H.,2004,Chemical Micro Process Engineering (1),Fundamentals,Modelling and Reactions,Wiley−VCH,Weinheim,Germany,及び、T.Wirth,2008,Microreactors in Organic Synthesis and Catalysis,Wiley−VCH,Weinheim。
【0037】
前記フロー反応器に設けられるフローラインは単数であっても複数であってもよい。ミクロ流体式フロー反応器の場合、所望のスループットを実現するために、複数のフローラインが使用されることが一般的である。例えば、管状フロー反応器の場合、複数のフローラインは、束ねられたりコイル状に巻かれたりしている。チップ状のフロー反応器の場合、複数のフローラインが基板の上に形成され、このような基板が複数積層されている。単に、コイル、フローライン、平行に積層される複数の経路等を追加するだけで処理の拡大を図ることが出来るので、フローケミストリを溶液重合に取り入れることが、商業的観点から魅力的なものとなる。
【0038】
フロー反応器のフローラインを構成する材料は、特に限定されず、フロー反応器内で重合反応を行うことが出来るものであればよい。一般的には、フロー反応器のフローラインは、ポリマー、金属、ガラス(例:融解石英)、又は、これらの組合せからなる。
【0039】
フローライン、フロー反応器を構成するポリマーとしては、例えば、パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)、フッ化エチレンプロピレン(FEP)、テフロン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエチレン(PE)が挙げられる。
【0040】
フローライン、フロー反応器に適した金属としては、例えば、ステンレス鋼,市販されるHastelloy(登録商標)等の、その他の耐食金属合金が挙げられる。
【0041】
当業者であれば、RAFT重合は酸素の存在によって悪影響を受けることを認識出来るであろう。従って、本発明の処理は、全体的に反応液を出来るだけ酸素に晒すことの内容に行われる。このため、フローライン、フロー反応器を構成する材料は、充分な酸素遮断特性を有することが望まれる。
【0042】
従って、反応器の種類によっては、材質、製造工程、構成が原因で、本発明に適さないものもある。例えば、薄壁PFA配管(1.1mmOD/1.1mmID)は、その高い酸素浸透性によって、RAFTポリマーの生成を阻害することがわかっており、一方、同じ内径(1.1mm)で、同様の壁厚のステンレススチール配管では、効果的に重合を行うことが可能である。
【0043】
言うまでも無く、アルゴンや窒素等の不活性雰囲気下で、重合を行うことによっても酸素への接触は最小限に抑えることが可能である。このように不活性雰囲気を利用することによって、酸素遮断特性が比較的低いフローラインを用いることが可能である。
【0044】
また、反応液の酸素への接触は、ミクロ流体反応器を用いる本発明によって、効果的に且つ効率的に最小限に抑えることが可能であることがわかっている。特に、反応液の酸素への接触を最小限に抑えるミクロ流体反応器は簡単に設置できる。
【0045】
本技術分野の技術を用いれば、フローラインの酸素浸透性を考慮するまでもなく、本発明で使用する反応液の酸素を簡単に低減させることが可能である。例えば、反応液(又は、反応液の生成のために、合成される溶液)に、窒素やアルゴンのような不活性ガスを注入してもよい。また、反応液(又は、反応液の生成のために、合成される溶液)を、脱気ユニットに通してもよい。この場合、反応液が重合の前に脱気ユニットを通るように、前記脱気ユニットを配置してもよい。本発明において、脱気ユニットは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の応用に使用されるもの等、従来の物を適宜採用することができる。
【0046】
毛細管状フロー反応器で使用するフローラインは、所謂「ミクロ流体配管」である。このようなミクロ流体配管は、フローラインについて上述したポリマーや金属、ガラス(例:融解石英)、又は、これらの組合せから作成することができる。
【0047】
本発明を更に詳述するために、以下では図1を参照して説明する。
【0048】
図1は、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー(M)、RAFT剤(RAFT)、非反応性の溶媒(S)、フリーラジカル開始剤(I)を含む反応液が反応器(1)に貯留されている様子を示す。言うまでも無く、これら、単一の又は複数の試薬(M、RAFT、S、I)は、別々の反応器に貯留され、複数のフローラインを通ってフロー反応器へ供給されることによって、反応液となるようにしてもよい。例えば、反応液を、3つの槽(M、S)、(RAFT、S)、(I、S)から延びる3本の個別フローラインを介して供給し、フロー反応器直接へ繋がる単一の主フローラインで合流させてもよい。反応液のさらなる詳細については以下に示す。
【0049】
反応液は、フローライン(2)を通って、フロー反応器(3)(第1のフロー反応器)に供給される。ここでは、フローライン(2)は管状であり、実際にはコイル状に構成されることによってフロー反応器(3)を形成する。フローライン(2)とフロー反応器(3)との違いは、フロー反応器(3)が、反応液の重合を行うために指定されたフローライン(2)の一部であることである。重合反応を促進させるための手段については後述するが、例えば図1では、フロー反応器(3)に熱を加えることによって重合反応を促進させている場合が示されている。
【0050】
前記フローライン(2)は、コイル状に巻回することによって、フロー反応器(3)とすることが出来る。これにより、フローライン(2)のコイル部分は、簡単にフロー反応器(3)として区分することが出来る。
【0051】
フロー反応器(3)内で反応液の重合を促進させると、ポリマー溶液が生成され、このポリマー溶液がフロー反応器(3)から流出する。
【0052】
反応液をフロー反応器(3)へ導入するために、好適な手段を使用するが、通常ポンプ(4)が利用される。当業者であれば、反応器(1)からフローライン(2)を介して、フロー反応器(3)に反応液を供給するポンプ(4)として、適切なものを選択出来るであろう。
【0053】
図1に示す処理は、反応器(1)に反応液がある限り、連続的に行うことが可能であることが分かる。言うまでも無く、反応器(1)からより多くの反応液を供給し、より多くのポリマー溶液が生産可能となるように、フロー反応器(3)を複数のフローラインで構成することも可能である。
【0054】
反応条件の研究や最適化のために、比較的少量のポリマーを生成する際にも、本発明は、少ない(分析用の)量の別個の反応液「プラグ(plugs)」を用いる、所謂「分割」流動態様(分割型フローモード)によって行うことができる。図2に、この態様の処理を図示する。図2に示すように、反応器(1)、フローライン(2)、フロー反応器(3)、及び、ポンプ(4)は、図1を参照して上述したものと同じである。しかし、この場合反応器(1)には、非反応性の溶媒(S)のみが貯留されている。この処理では、まずフロー反応器(3)に非反応性の溶媒(S)のみを導入する。単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー(M)、RAFT剤(RAFT)、開始剤(I)、及び適宜非反応性の溶媒(S)を含む反応液は、反応液ループ(5)に供給され、フロー反応器(3)へと繋がるフローライン(2)とは隔離された状態にある。所定のタイミングで、反応液ループ(5)が切り替えられて、ループ内の反応液をフローライン(2)へと開放し、反応液の「セグメント」又は「プラグ」がフロー反応器(3)へ導入される。反応液のプラグは、その後フロー反応器(3)で重合され、ポリマー溶液プラグ(6)を生成し、フロー反応器(3)から排出される。
【0055】
当業者であれば、本発明での使用について熟考されたフロー反応器、特にミクロ流体フロー反応器では、フローラインの粘度が高くなると、圧力が高くなる傾向にありシステムの故障の原因となる可能性に気づくはずである。このことから、フロー反応器、特にミクロ流体フロー反応器で生成される反応液の粘は、水の粘度と比較してあまり高くないことが望まれる。溶液重合で生成されるポリマー溶液の粘は非常に高いため、フロー反応器、特にミクロ流体フロー反応器はこのような種類の重合反応で広く用いられることはなかった。
【0056】
驚くことに、RAFT溶液重合は、フロー反応系で効果的、効率的に行えることが判明した。
【0057】
本発明の処理において、反応液を重合させてポリマー溶液を生成する際にフロー反応器での圧力の上昇が確認された。しかし、反応液のモノマー濃度や重合率など、処理における流量によって制御しやすいプロセス変量の制御によって、圧力の上昇を管理することができる。
【0058】
ここで提案する反応液を用いて本発明を初めて実施する場合、まず少量の反応液でバッチ式重合を行うことによって得られたポリマー溶液の粘等のデータを集め、集められたデータに基づいて、必要に応じて、本発明で使用する反応液の組成および/または流量を調整することが望ましい。例えば、バッチ式溶液重合で得られたポリマー溶液の粘が高過ぎる場合、これに応じて反応液のモノマー濃度を下げることによって、本発明に適した状態にすることができる。
【0059】
本発明の一実施形態では、バッチ式重合を行うことによって得られたデータに基いて、反応液の組成が決定される。
【0060】
本発明での使用に提案する反応液をバッチ式で、テスト重合する場合は、研究室で使用される反応器を使って比較的少量(例:2ml)の反応液を、マイクロ波照射によって過熱すればよい。
【0061】
RAFT重合によって生成されたポリマーには、明確な分子構造を確認することができる。また、RAFT重合反応を複数回続けて行うことによって、明確な構造を有するブロックコポリマーを生成することが可能となる。本発明による処理を、上記RAFT重合の利点が得られるように構成してもよい。例えば、第1のフロー反応器(又は、第1のフロー反応器の一領域)から排出されるポリマー溶液を、(通常、第1のフロー反応器(又は、第1のフロー反応器の一領域)で重合されるものとは別の)エチレン性不飽和モノマーと、フリーラジカル開始剤と共に、第2のフロー反応器(又は、第2のフロー反応器の一領域)へ導入する。その後、第2のフロー反応器(又は、第2のフロー反応器の一領域)内で、重合を促進させてブロックコポリマー溶液を生成し、このブロックコポリマー溶液を第2のフロー反応器(又は、第2のフロー反応器の一領域)から排出するようにしてもよい。
【0062】
本発明によって得られたポリマー溶液が、マクロRAFT剤として機能するRAFTポリマーを含んでいることが、当業者であれば理解できるであろう。従って、上記ポリマー溶液を、「第2の」モノマー(second charge of monomer)の重合を促進させるマクロRAFT剤の原料として使用可能であり、これによってブロックコポリマーが生成しやすくなる。本発明による処理は、このようにブロックコポリマーの生成に特に好適である。
【0063】
ここで、ブロックコポリマーを生成する上で、(a)ポリマー溶液を第2のフロー反応器に導入するということは、前記ポリマー溶液を生成した第1のフロー反応器とは別の、第2の重合が行われる第2のフロー反応器に導入するという意味であり、(b)ポリマー溶液を第2のフロー反応器の一領域に導入するということは、第1のフロー反応器前記ポリマー溶液を生成し、得られたポリマー溶液を同一反応器の、第2の重合が行われる部分まで搬送するという意味である。一般的には、ポリマー溶液導入され第2のフロー反応器、又は、第2のフロー反応器の一領域は、反応液が導入される第1のフロー反応器に接続されている。つまり、所謂「第2段階の」重合は、「第1段階の」の重合が行われる第1のフロー反応器の、後段又は下流側の一領域で行われる。
【0064】
一実施形態において、前記処理は、第1のフロー反応器から排出されたポリマー溶液を、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー、及び、フリーラジカル開始剤を含む反応液と共に、第2のフロー反応器、又は、第2のフロー反応器の一領域へ供給する工程と、
前記第2のフロー反応器において前記単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT重合を促進させることによってブロックコポリマー溶液を生成し、生成されたブロックポリマー溶液を第2のフロー反応器から排出る工程とを有している。
【0065】
本発明の処理において、反応器で生成されたポリマー溶液を精製してもよい。最終製品としてのポリマーに、望まれない、不要な反応物質又は生産物としては、非反応モノマー、非反応開始剤、副産物が挙げられる。要求される、最終製品としてのポリマーの純度によっては、これら物質をポリマーから取り除く必要がある。前記精製は、ポリマー溶液を、インライン精製技術によって行うことができる(即ち、精製工程が前記処理に統合されている)。
【0066】
本発明で使用される反応液は、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー、RAFT剤、非反応性の溶媒、及び、フリーラジカル開始剤を含んでいてもよい。
【0067】
RAFT重合には、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーがフリーラジカル処理によって重合できるタイプでなければならないことは、当業者であれば理解できるであろう。必要であれば、前記モノマーは、他のモノマーと重合できるものであってもよい。本技術分野において、各種モノマーの共重合性を決定する要因については、各種参考文献が存在する。例えば、以下の文献を参照されたい:Greenlee, R.Z., in polymer Handbook 第3rd版(Brandup, J.、及び、Immergut.E.H. Eds)Wiley: New York, 1989 p II/53。
【0068】
本発明で好適に使用可能なエチレン性不飽和モノマーには、例えば以下の、式(I)に示されるものがある。
【0069】
【化2】
【0070】
上記式において、U及びWは、−COH、−CO、−COR、−CSR、−CSOR、−COSR、−CONH、−CONHR、−CONR、水素、ハロゲン、及び。任意選択の置換がされているC−Cアルキルの中から選択されるもの、又は、U及びWが共に、任意の置換基で置換可能な、ラクトン、無水物、又は、イミド環を形成し、前記任意の置換基は、ヒドロキシ、−COH、−CO、−COR、−CSR、−CSOR、−COSR、−CN、−CONH、−CONHR、−CONR、−OR、−SR、−OCR、−SCOR、及び、−OCSRから選択され、
Vは、水素、R、−COH、−CO、−COR、−CSR、−CSOR、−COSR、−CONH、−CONHR、−CONR、−OR、−SR、−OCR、−SCOR、及び、−OCSRから選択され、
上記Rは、それぞれ、任意選択の置換がされているアルキル、任意選択の置換がされているアルケニル、任意選択の置換がされているアルキニル、任意選択の置換がされているアリール、任意選択の置換がされているヘテロアリール、任意選択の置換がされているカルボシクリル、任意選択の置換がされているヘテロシクリル、任意選択の置換がされているアリールアルキル、任意選択の置換がされているヘテロアリールアルキル、任意選択の置換がされているアルキルアリール、任意選択の置換がされているアルキルヘテロアリール、及び、任意選択の置換がされているポリマー鎖から選択される。
【0071】
また、上記Rは、それぞれ、任意選択の置換がされているC−C22アルキル、任意選択の置換がされているC−C22アルケニル、任意選択の置換がされているC−C22アルキニル、任意選択の置換がされているC−C18アリール、任意選択の置換がされているC−C18ヘテロアリール、任意選択の置換がされているC−C18カルボシクリル、任意選択の置換がされているC−C18ヘテロシクリル、任意選択の置換がされているC−C24アリールアルキル、任意選択の置換がされているC−C18ヘテロアリールアルキル、任意選択の置換がされているC−C24アルキルアリール、任意選択の置換がされているC−C18アルキルヘテロアリール、及び、任意選択の置換がされているポリマー鎖から選択することもできる。
【0072】
は、任意選択の置換がされているC−C18アルキル、任意選択の置換がされているC−C18アルケニル、任意選択の置換がされているアリール、任意選択の置換がされているヘテロアリール、任意選択の置換がされているカルボシクリル、任意選択の置換がされているヘテロシクリル、任意選択の置換がされているアラルキル、任意選択の置換がされているヘテロアリールアルキル、任意選択の置換がされているアルカリル、任意選択の置換がされているアルキルヘテロアリール、及び、ポリマー鎖から選択してもよい。
【0073】
一実施形態では、Rは、任意選択の置換がされているC−Cアルキルから選択してもよい。
【0074】
の任意の置換基は、例えば、アルキレンオキシジル(エポキシ)、ヒドロキシ、アルコキシ、アシル、アシルオキシ、ホルミル、アルキルカルボニル、カルボキシ、スルホン酸、アルコキシ−、又は、アリーロキシ−カルボニル、イソシアナート、シアノ、シリル、ハロ、アミノ、又は、これらの塩及び誘導体から選ばれる。ポリマー鎖は、例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリアリーレンエーテル、及び、ポリアルキレンエーテルから選ばれる。
【0075】
式(I)のモノマーは、例えば、無水マレイン酸、N−アルキルマレイミド、N−アリールマレイミド、ジアルキルフマル酸塩及び環化重合可能なモノマー、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、アクリル酸及びメタクリル酸、スチレン、アクリルアミド、メタクリルアミド、及び、メタクリロニトリル、これらモノマーの混合物、及び、これらモノマーとその他のモノマーとの混合物が挙げられる。
【0076】
式(I)のモノマーは、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル(全て異性体)、メタクリル酸ブチル(全て異性体)、メタクリル酸2ーエチルヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニル、メタクリロニトリル、アルファ−メチルスチレン、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(全て異性体)、アクリル酸ブチル(全て異性体)、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニル、アクリロニトリル、スチレン;メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル(全て異性体)、メタクリル酸ヒドロキシブチル(全て異性体)、メタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、メタクリル酸トリエチレングリコール、イタコン酸無水物、イタコン酸、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル(全て異性体)、アクリル酸ヒドロキシブチル(全て異性体)、アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、アクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、トリエチレングリコールアクリル酸、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−tertーブチルメタクリルアミド、N−n−ブチルメタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−エチロールメタクリルアミド、N−tertーブチルアクリルアミド、N−n−ブチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−エチロールアクリルアミド、安息香酸ビニル(全て異性体)、ジエチルアミノスチレン(全て異性体)、アルファ−メチル安息香酸ビニル(全て異性体)、ジエチルアミノアルファ−メチルスチレン(全て異性体)、p−ビニルベンゼンスルホン酸、p−ビニルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、メタクリル酸トリメトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル、メタクリル酸トリブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、メタクリル酸ジメトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジエトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジブトキシシリルプロピル、メタクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、アクリル酸トリエトキシシリルプロピル、アクリル酸トリブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシメチルシリルプロピル、アクリル酸ジメトキシシリルプロピル、アクリル酸ジエトキシシリルプロピル、アクリル酸ジブトキシシリルプロピル、アクリル酸ジイソプロポキシシリルプロピル、酢酸ビニル、酪酸ブチル、安息香酸ビニル、塩化ビニル、フッ化ビニル、臭化ビニル、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールから選択されるメタクリル酸官能基、アクリル酸官能基、及び、スチレン官能基、ブタジエン、エチレン、及び、クロロプレンが挙げられる。しかし、ここで挙げたものに限定されない。
【0077】
本発明での使用に適したRAFT剤は、チオカルボニルチオ基(−C(S)S−で表される二価部分)を含んでいる。RAFT剤の例については、Moad G.; Rizzardo, E; Thang S, H. ポリmer 2008, 49, 1079−1131に記載されており(ここに当該文献の内容全体を参照によって援用する)、WO 10/83569に記載の、キサンテート,ジチオエステル,ジチオ炭酸塩,ジチオカルボネート、及び、トリチオ炭酸塩の化合物、マクロRAFT剤、並びに、切り替え可能なRAFT剤が挙げられる。
【0078】
本発明での使用に適したRAFT剤は、以下の一般式(II)又は、(III)で表される。
【化3】
【0079】
上記式において、Z及びRは基であり、R*及びZ*はそれぞれ、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーを重合させる際に、RAFT剤として機能するように選択されたX価及びY価の基であり、Xは1以上の整数であり、Yは2以上の整数である。
【0080】
単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーの重合において、RAFT剤として機能させるためには、R及びR*が一般的に、採用された重合条件下でフリーラジカル脱離基として機能し、且つ、フリーラジカル脱離基として重合を再開させる能力を保持する、任意選択の置換がされている有機基であることが、当業者であれば理解できるであろう。また、Z及びZ*が、一般的に、重合を過度に遅らせる程にRAFT付加ラジカルの細分化速度を低下させることなく、フリーラジカル付加に向けたRAFT剤のC=S部分の適度に高い反応性を与える有機基であることを当業者であれば理解できるであろう。
【0081】
式(II)において、R*はX価の基であり、Xは1以上の整数である。従って、R*は、一価、二価、三価、又は、それ以上の原子価であってもよい。例えば、R*は、式(II)に、ポリマー鎖からの複数の懸垂基として表されるRAFT剤の残余物がある、任意選択の置換がされたポリマー鎖である。一般的には、xは1〜約20の範囲の整数であり、例えば、約2〜約10、又は、約1〜約5の範囲である。
【0082】
同様に、式(III)において、Z*は、Y価の基であり、Yは2以上の整数である。従って、Z* 二価、三価、又は、それ以上の原子価であってもよい。一般的には、Yは2〜約20の範囲の整数であり、例えば、約2〜約10、又は、約2〜約5の範囲である。
【0083】
本発明で使用されるRAFT剤におけるRの例としては、任意選択の置換がされた(R*の場合には、X価の任意選択の置換がされた)アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アシル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアルケニル、アルキルアルキニル、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アルケニルオキシアルキル、アルキニルオキシアルキル、アリーロキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロアリーロキシ、アルキルチオアルキル、アルケニルチオアルキル、アルキニルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアルケニルアルキル、アルキルアルキニルアルキル、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアルケニルアリール、アリールアルキニルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アルケニルオキシアリール、アルキニルオキシアリール、アリーロキシアリール、アルキルチオアリール、アルケニルチオアリール、アルキニルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオ、及び、ポリマー鎖が挙げられる。
【0084】
本発明におけるRAFT剤のRのより詳細な例としては、任意選択の置換がされた(Rの場合には、X価の任意選択の置換がされた)、C−C18アルキル、C−C18アルケニル、C−C18アルキニル、C−C18アリール、C−C18アシル、C−C18カルボシクリル、C−C18ヘテロシクリル、C−C18ヘテロアリール、C−C18アルキルチオ、C−C18アルケニルチオ、C−C18アルキニルチオ、C−C18アリールチオ、C−C18アシルチオ、C−C18カルボシクリルチオ、C−C18ヘテロシクリルチオ、C−C18ヘテロアリールチオ、C−C18アルキルアルケニル、C−C18アルキルアルキニル、C−C24アルキルアリール、C−C18アルキルアシル、C−C18アルキルカルボシクリル、C−C18アルキルヘテロシクリル、C−C18アルキルヘテロアリール、C−C18アルキルオキシアルキル、C−C18アルケニルオキシアルキル、C−C18アルキニルオキシアルキル、C−C24アリーロキシアルキル、C−C18アルキルアシルオキシ、C−C18アルキルチオアルキル、C−C18アルケニルチオアルキル、C−C18アルキニルチオアルキル、C−C24アリールチオアルキル、C−C18アルキルアシルチオ、C−C18アルキルカルボシクリルチオ、C−C18アルキルヘテロシクリルチオ、C−C18アルキルヘテロアリールチオ、C−C18アルキルアルケニルアルキル、C−C18アルキルアルキニルアルキル、C−C24アルキルアリールアルキル、C−C18アルキルアシルアルキル、C13−C24アリールアルキルアリール、C14−C24アリールアルケニルアリール、C14−C24アリールアルキニルアリール、C13−C24アリールアシルアリール、C−C18アリールアシル、C−C18アリールカルボシクリル、C−C18アリールヘテロシクリル、C−C18アリールヘテロアリール、C−C18アルケニルオキシアリール、C−C18アルキニルオキシアリール、C12−C24アリーロキシアリール、アルキルチオアリール、C−C18アルケニルチオアリール、C−C18アルキニルチオアリール、C12−C24アリールチオアリール、C−C18アリールアシルチオ、C−C18アリールカルボシクリルチオ、C−C18アリールヘテロシクリルチオ、C−C18アリールヘテロアリールチオ、及び、数平均分子量が約500〜約80、000の範囲、例えば約500〜約30、000の範囲、のポリマー鎖が挙げられる。
【0085】
本発明におけるRAFT剤のRは(R*の場合はX価の)、任意選択の置換がされたポリマー鎖を含んでおり、前記ポリマー鎖は、ラジカル重合、イオン重合、配位重合、段階成長重合、又は、縮合重合等の、任意の適切な重合処理によって精製されている。前記ポリマー鎖は、ホモポリマー鎖, ブロックポリマー鎖、マルチブロックポリマー鎖、グラジエントコポリマー鎖、又は、ランダム(統計)コポリマー鎖を含んでいてもよく、線型構造、星型構造、分岐型構造、グラフト型構造、ブラシ型構造等の、各種構造を有していてもよい。
【0086】
本発明で使用されるRAFT剤におけるZの例としては、任意選択の置換がされた(Z*の場合には、Y価の任意選択の置換がされた):F、Cl、Br、I、アルキル、アリール、アシル、アミノ、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アルキルオキシ、アリーロキシ、アシルオキシ、アシルアミノ、カルボシクリルオキシ、ヘテロシクリルオキシ、ヘテロアリーロキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アルキルアリール、アルキルアシル、アルキルカルボシクリル、アルキルヘテロシクリル、アルキルヘテロアリール、アルキルオキシアルキル、アリーロキシアルキル、アルキルアシルオキシ、アルキルカルボシクリルオキシ、アルキルヘテロシクリルオキシ、アルキルヘテロアリーロキシ、アルキルチオアルキル、アリールチオアルキル、アルキルアシルチオ、アルキルカルボシクリルチオ、アルキルヘテロシクリルチオ、アルキルヘテロアリールチオ、アルキルアリールアルキル、アルキルアシルアルキル、アリールアルキルアリール、アリールアシルアリール、アリールアシル、アリールカルボシクリル、アリールヘテロシクリル、アリールヘテロアリール、アリーロキシアリール、アリールアシルオキシ、アリールカルボシクリルオキシ、アリールヘテロシクリルオキシ、アリールヘテロアリーロキシ、アルキルチオアリール、アリールチオアリール、アリールアシルチオ、アリールカルボシクリルチオ、アリールヘテロシクリルチオ、アリールヘテロアリールチオ、ジアルキルオキシ−,ジヘテロシクリルオキシ−又はジアリーロキシ−ホスフィニル、ジアルキル−,ジヘテロシクリル−、又は、ジアリール−ホスフィニル、シアノ(即ち、−CN)、及び、−S−R(Rは、式(III)において定義される)が挙げられる。
【0087】
本発明におけるRAFT剤のZのより詳細な例としては、任意選択の置換がされた(Z*の場合には、Y価の任意選択の置換がされた):F、Cl、C−C18アルキル、C−C18アリール、C−C18アシル、アミノ、C−C18カルボシクリル、C−C18ヘテロシクリル、C−C18ヘテロアリール、C−C18アルキルオキシ、C−C18アリーロキシ、C−C18アシルオキシ、C−C18カルボシクリルオキシ、C−C18ヘテロシクリルオキシ、C−C18ヘテロアリーロキシ、C−C18アルキルチオ、C−C18アリールチオ、C−C18アシルチオ、C−C18カルボシクリルチオ、C−C18ヘテロシクリルチオ、C−C18ヘテロアリールチオ、C−C24アルキルアリール、C−C18アルキルアシル、C−C18アルキルカルボシクリル、C−C18アルキルヘテロシクリル、C−C18アルキルヘテロアリール、C−C18アルキルオキシアルキル、C−C24アリーロキシアルキル、C−C18アルキルアシルオキシ、C−C18アルキルカルボシクリルオキシ、C−C18アルキルヘテロシクリルオキシ、C−C18アルキルヘテロアリーロキシ、C−C18アルキルチオアルキル、C−C24アリールチオアルキル、C−C18アルキルアシルチオ、C−C18アルキルカルボシクリルチオ、C−C18アルキルヘテロシクリルチオ、C−C18アルキルヘテロアリールチオ、C−C24アルキルアリールアルキル、C−C18アルキルアシルアルキル、C13−C24アリールアルキルアリール、C13−C24アリールアシルアリール、C−C18アリールアシル、C−C18アリールカルボシクリル、C−C18アリールヘテロシクリル、C−C18アリールヘテロアリール、C12−C24アリーロキシアリール、C−C18アリールアシルオキシ、C−C18アリールカルボシクリルオキシ、C−C18アリールヘテロシクリルオキシ、C−C18アリールヘテロアリーロキシ、C−C18アルキルチオアリール、C12−C24アリールチオアリール、C−C18アリールアシルチオ、C−C18アリールカルボシクリルチオ、C−C18アリールヘテロシクリルチオ、C−C18アリールヘテロアリールチオ、ジアルキルオキシ−,ジヘテロシクリルオキシ−、又は、ジアリーロキシ−ホスフィニル(即ち、−P(=O)OR)、ジアルキル−,ジヘテロシクリル−、又は、ジアリール−ホスフィニル(即ち、−P(=O)R)が挙げられ、前記Rは、任意選択の置換がされているC−C18アルキル、任意選択の置換がされているC−C18アリール、任意選択の置換がされているC−C18ヘテロシクリル、及び択の置換がされているC−C24アルキルアリール、シアノ(即ち、−CN)、及び−S−R(Rは、式(III)において定義される)から選択される。
【0088】
一実施形態において、本発明で使用されるRAFT剤は、トリチオ炭酸塩のRAFT剤であり、Z又はZ*が任意選択の置換がされているアルキルチオ基である。
【0089】
本明細書で挙げられた、Z、Z*、R、及び、R*として選択し得る基(例:アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、及びポリマー鎖の一部)は、それぞれ任意選択の置換がされてもよい。より明確には、Z、Z*、R、又は、R*に、このような部分が2箇所以上ある場合(例:アルキルアリール)、各部分が、上述の置換基のうち、1〜3、又はそれ以上で任意選択の置換がされていてもよい。
【0090】
本明細書で挙げられた、Z、Z*、R、及び、R*として選択し得る基のうち、Z、Z*、R、又は、R*が、2箇所以上のサブ基(例:[基A][基B])を含む場合、これらサブ基の順序はここに挙げられた順序には限定されない。従って、二つのサブ基[基A][基B](例:アルキルアリール)を含むZ、Z*、R、又は、R*とは、二つのサブ基[基B][基A](例:アリールアルキル)を含むZ、Z*、R、又は、R*と定義することも可能である。
【0091】
Z、Z*、R、又は、R*は、分岐、および/または、任意選択の置換がされている。Z、Z*、R、又は、R*が、任意選択の置換がされているアルキル部を有しており、アルキル鎖における、−CH−基が、−O−,−S−,−NR−から選択された基で置換されている場合、任意選択の置換基は、−C(O)−(即ち、カルボニル)、−C(O)O−(即ち、エステル)、及び、−C(O)NR−(即ち、アミド)を含んでいる。ここで、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールアルキル、及び、アシルから選択される。
【0092】
ここで、X価、Y価、多価、又は、二価「の・・・。」とは、特定の基がそれぞれ、X価、Y価、多価、又は、二価ラジカルであることを意味する。例えば、X又はYが2である場合、前記特定の基が二価ラジカルであることを意味する。この場合、二価アルキル基は、実際にはアルキレン基である(例:−CH−)。同様に、二価の基のアルキルアリールは、例えば、−(C)−CH−と表してもよく、二価アルキルアリールアルキル基は、例えば、−CH−(C)−CH−と表すこともでき、二価アルキルオキシ基は、例えば、−CH−O−、二価アルキルオキシアルキル基は、例えば、−CH−O−CH−と表すこともできる。上記表現の「任意選択の置換がされている」がX価、Y価、多価、又は、二価の基と組み合わせて用いられている場合、ここで当該基は結合・置換されていても、されていなくてもよい。X価、Y価、多価、二価の基が、例えば[基A][基B][基C](例:アルキルアリールアルキル)のように、2個以上のサブ基を有する場合、単一の又は複数のサブ基が任意選択の置換がされている。当業者であれば、この理論的根拠を、より高い原子価の場合にどう適用すればよいか理解できるであろう。
【0093】
本発明で使用される非反応性の溶媒は、主に不活性液体キャリアとして機能する。「非反応性の」溶媒とは、当該溶媒が重合処理において化学反応を起こさない、換言すると、当該溶媒が重合処理において能動的な役割を担ったり反応に関ることが無いという意味である。また、重合反応において非反応性であるという条件に加えて、少なくとも単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマー及び得られたポリマーを溶解できることも、溶媒の選択条件となる。当業者であれば、非反応性と保全特性(salvation properties)に基づいて簡単に溶媒を選択することができるであろう。
【0094】
本発明で使用できる非反応性の溶媒には多くの種類がある。このような溶媒の非限定的な例としては、アセトン、アセトニトリル、ベンゼン、1−ブタノール、2−ブタノール、2−ブタノン、t−ブチルアルコール、四塩化炭素、クロロベンゼン、クロロホルム、シクロヘキサン、1,2−ジクロロエタン、ジエチルエーテル、ジエチレングリコール、ダイグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、1,2−ジメトキシ−エタン(グライム、DME)、ジメチルエーテル、ジメチル−ホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジオキサン、エタノール、エチル酢酸塩、エチレングリコール、グリセリン、ヘプタン、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPT)、ヘキサン、メタノール、メチルt−ブチルエーテル(MTBE)、塩化メチレン、N−メチル−2−ピロリジノン(NMP)、ニトロメタン、ペンタン、石油エーテル、1−プロパノール、2−プロパノール、ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、トリエチルアミン、水、重水、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、及び、これらの組合せが挙げられる。
【0095】
重合を行わせるためには、フリーラジカルがフロー反応器内で生成されなければならない。ラジカルの生成は、例えば、熱によって誘発される、好適な化合物のホモリティック分離(過酸化物、過オキシエステル、アゾ化合物等の熱開始剤),モノマー(例: スチレン)からの自然発生,酸化還元開始システム,光化学開始システム、又は、電子線、X線、ガンマ線等の高エネルギー放射線等のフリーラジカル生成用の適切な手段を使って行うことができる。開始システムは、反応条件下で、開始剤又は開始ラジカルと、反応液の化合物との間で不利な相互作用が実質無いことを条件に選択される。開始ラジカルが、本発明で使用されるモノマーから生成される場合、モノマーがフリーラジカル開始剤であると理解できる。換言すると、必要なフリーラジカルが生成されれば、本発明は、専用の又は主要のフリーラジカル開始剤を使用する場合に限定されることはない。開始剤は、非反応性の溶媒に対して、必要な溶解性を有するものを選択するべきである。
【0096】
熱開始剤は、一般的に、重合温度において適切な半減期を有するものが選択される。このような開始剤は、以下に挙げる化合物のうち1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。
【0097】
即ち、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−シアノブタン)、ジメチル2,2’−アゾビス(イソブチレート)、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2−(t−ブチルアゾ)−2−シアノプロパン、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−bis(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−bis(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−bis(ヒドロキシメチル)−2−エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、2,2’−アゾビス(2,2,4−triメチルペンタン)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロパン)、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルperオキシイソブチレート、t−amylパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジシクロヘキシルパーオキシジカーボネート、ジクミルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジラウロリルパーオキサイド、カリウムパーオキシジスルフェート、アンモニウムパーオキシジスルフェート、ジ−t−ブチル次亜硝酸塩、ジクミル次亜硝酸塩の1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。但し、前記化合物はここで挙げたものに限定されない。
【0098】
光化学開始剤システムは、一般的に重合の条件下において、ラジカル生成のための適切な量子収率を有するものが選択される。例えば、ベンゼン誘導体、ベンゾフェノン、アシルホスフィンオキシド、及び、光酸化還元システムが選択される。
【0099】
酸化還元開始剤システムは、一般的に重合条件下において適切なラジカル生産率を有するものが選択される。これら開始システムの非限定的な例としては、以下の酸化体及び還元体の組合せが挙げられる。
【0100】
酸化体:カリウム、パーオキシジスルフェート、過酸化水素、t‐ブチルヒドロパーオキサイド。
【0101】
還元体:鉄(II)、チタン(III)、チオ硫酸カリウム、亜硫酸水素カリウム。
【0102】
その他の好適な開始システムとしては、一般的に入手可能な文献に記載されている。例えば、Moad and Solomon ”the Chemistry of Free Radical Polymerisation”, Pergamon, London, 1995, pp 53−95を参照されたい。
【0103】
親水性媒体により溶解しやすい開始剤としては、4,4−アゾビス(シアノバレリアン酸)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−bis(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N、N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(N、N’−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−bis(ヒドロキシメチル)−2−エチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(イソブチルアミド)二水和物、及び、これらの誘導体が挙げられるが、これに限られるものではない。
【0104】
疎水性媒体に、より溶解しやすい開始剤としては、アゾ化合物があり、例えば公知の物質2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。その他の好適な開始剤化合物としては、アシルパーオキサイドクラスのアセチル、過酸化ベンゾイル、及び、クミル、t−ブチルパーオキサイド等のアルキルパーオキサイドが挙げられる。t−ブチルやクミルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイドも広く使用されている。
【0105】
フロー反応器については、一般的にフリーラジカルが生成されるものを選択する必要がある。例えば、フリーラジカルが好適な化合物の熱によって誘発されるホモリティック分離で生成される場合、反応液が必要な温度まで加熱されるように、前記化合物に熱が加えられるフロー反応器を選択する必要がある。また、フリーラジカルが光化学手段によって生成される場合は、光学開始手段に対して適度な透明性を有するフロー反応器を選択する必要がある。当業者であれば、フロー反応系で使用するフリーラジカル開始システムとして、適切なものを選択できるであろう。
【0106】
従って、本発明において、反応器内で、単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT重合を「促進」させるということは、RAFT剤によってモノマーの重合が行えるように、反応液においてフリーラジカルを生成することである。重合を「促進」させる手段は、ラジカルがどのように生成されるかによって変わってくる。例えば、熱開始剤が採用された場合、フロー反応器に熱を加える事で重合が行われる。また、光学開始剤が採用された場合には、適度な透明性を有するフロー反応器に対して適切な波長の光を照射することによって重合が促進される。
【0107】
一実施形態では、RAFT重合は、フロー反応器に熱を加える事によって促進される。
【0108】
反応器において単一の又は複数のエチレン性不飽和モノマーのRAFT溶液重合が促進されると、ポリマー溶液が生成され反応器から排出される。ここで、「ポリマー溶液」とは、RAFT重合によって生成され、非反応性の溶媒に溶解した状態のポリマーを意味する。
【0109】
ポリマー溶液は、そのまま使用されるか、非反応性の溶媒を蒸発させるなどして溶液から除去し、ポリマーのみを分離して使用される。
【0110】
ここで「アルキル」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、アルキル直鎖、分岐状アルキル、又は、環式アルキルを意味し、C1−20アルキル(例:C1−10又は、C1−6)であることが好ましい。例えば、アルキル直鎖及び分岐状アルキルとしては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1,2−ジメチルプロピル、1,1−ジメチル−プロピル、ヘキシル、4−メチルペンチル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、l,l−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、1,2−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、1,2、2−トリメチルプロピル、1,1、2−トリメチルプロピル、ヘプチル、5−メチルヘキシル、1−メチルヘキシル、2,2−ジメチルペンチル、3,3−ジメチルペンチル、4,4−ジメチルペンチル、1,2−ジメチルペンチル、1,3−ジメチルペンチル、1,4−ジメチルペンチル、1,2、3−トリメチルブチル、1,1、2−トリメチルブチル、1,1、3−トリメチルブチル、オクチル、6−メチルヘプチル、1−メチルヘプチル、1,1、3,3−テトラメチルブチル、ノニル、1−,2−,3−,4−,5−,6−、又は、7−メチルオクチル、1−,2−,3−,4−、又は、5−エチルヘプチル、1−,2−、又は、3−プロピルヘキシル、デシル、1−,2−,3−,4−,5−,6−,7−、及び、8−メチルノニル、1−,2−,3−,4−,5−、又は、6−エチルオクチル、1−,2−,3−、又は、4−プロピルヘプチル、ウンデシル、1−,2−,3−,4−,5−,6−,7−,8−、又は、9−メチルデシル、1−,2−,3−,4−,5−,6−、又は、7−エチルノニル、1−,2−,3−,4−、又は、5−プロピルオクチル、1−,2−、又は、3−ブチルヘプチル、1−ペンチルヘキシル、ドデシル、1−,2−,3−,4−,5−,6−,7−,8−,9−、又は、10−メチルウンデシル、1−,2−,3−,4−,5−,6−,7−、又は、8−エチルデシル、1−,2−,3−,4−,5−、又は、6−プロピルノニル、1−,2−,3−、又は、4−ブチルオクチル、1−2−ペンチルヘプチル、等が挙げられる。また、例えば、環式アルキルとしては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル等のモノ−、又は、ポリ環式アルキル基が挙げられる。アルキル基が、一般的に「プロピル」、「ブチル」等と称される場合は、適宜、直鎖、分岐状、環式の異性体として理解される。アルキル基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。
【0111】
ここで、「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素同士の二重結合を有する、直鎖、分岐状、又は、環式の炭化水素残留物(hydrocarbon residues)から形成される基であって、前述のエチレン性モノ−、ジ−、若しくは、多価不飽和のアルキル基、又は、シクロアルキル基を含んでおり、好ましくは、C2−20アルケニル(例:C2−10orC2−6)などの基を意味する。例えば、アルケニルとしては、ビニル、アリル、1−メチルビニル、ブテニル、イソ−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、シクロペンテニル、1−メチル−シクロペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、シクロヘキセニル、1−ヘプテニル、3−ヘプテニル、1−オクテニル、シクロオクテニル、1−ノネニル、2−ノネニル、3−ノネニル、1−デセニル、3−デセニル、1、3−ブタジエニル、1、4−ペンタジエニル、1、3−シクロペンタジエニル、1、3−ヘキサジエニル、1、4−ヘキサジエニル、1、3−シクロヘキサジエニル、1、4−シクロヘキサジエニル、1、3−シクロヘプタジエニル、1、3、5−シクロヘプタトリエニルand1、3、5、7−シクロオクタテトラエニルが挙げられる。アルケニル基、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。
【0112】
ここで、「アルキニル」とは、少なくとも一つの炭素同士の三重結合を有する、直鎖、分岐状、又は、環式の炭化水素残留物から形成される基であって、前述のエチレン性モノ−、ジ−、若しくは、多価不飽和のアルキル基、又は、シクロアルキル基などの基を意味する。炭素原子の数が特定されない限り、前記用語は、好ましくは、C2−20アルキニル(例:C2−10またはC2−6)を意味する。例えば、エチニル,1−プロピニル,2−プロピニル,及び、ブチニル異性体,及び、ペンチニル異性体が挙げられる。アルキニル基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。
【0113】
「ハロゲン」(”ハロ”)は、フッ素、塩素、臭素、又は、ヨウ素(フルオロ、クロロ、ブロモ、又は、ヨード)を意味する。
【0114】
「アリール」(又は、「カルボアリール」)は、芳香族炭化水素環系(例:C6−24orC6−18)の、単一、多核、複合(conjugated)、及び、縮合残留物の何れかを意味する。アリールの例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、クアテルフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、アントラセニル、ジヒドロアントラセニル、ベンズアントラセニル、ジベンズアントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、ピレニル、イデニル、アズレニル、クリセニルが挙げられる。アリールは、フェニル及びナフチルを含んでいることが好ましい。アリール基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよいし、置換されていなくてもよい。尚、「アリレン」は、二価のアリールを意味する。
【0115】
「カルボシクリル」は、非芳香族の一環式、多環式、融合した、又は、共役の炭化水素残基のいずれかであって、好ましくは、C3−20(例:C3−10またはC3−8)を意味する。前記環は、飽和状態であっても良く(例:シクロアルキル)、又は、単一の又は複数の二重結合(シクロアルケニル)、および/または、単一の又は複数の三重結合(シクロアルキニル)を有することが好ましい。カルボシクリル部分の特に好ましい形態は、5−6−員環、又は、9−10員環系。好適な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル、シクロオクタテトラエニル、インダニル、デカリニル及びインデニル。カルボシクリル基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。尚、「カルボシクリレン」とは、二価のカルボシクリルを意味する。
【0116】
「ヘテロ原子」又は「ヘテロ」とは、広義では、環状有機基のメンバとなりうる炭素原子以外の原子を意味する。具体的には、ヘテロ原子の例としては、窒素、酸素、硫黄、亜リン酸、ホウ素、シリコン、セレン、及び、テルルが挙げられ、より具体的には窒素、酸素、及び、硫黄である。
【0117】
「ヘテロシクリル」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、一環式、多環式、融合された、又は、共役の炭化水素残基を意味し、好ましくは、非芳香族残基となるように単一の又は複数の炭素原子が、ヘテロ原子に置換されたC3−20(例:C3−10又はC3−8)である。好適なヘテロ原子は、O、N、S、P、及び、Seが挙げられ、特にO、N、及び、Sである。二つ以上の炭素原子が置換されている場合、二つ以上の同じヘテロ原子、又は、異なるヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロシクリル基は飽和状態、又は、部分的に不飽和状態であってもよい。つまり、単一の又は複数の二重結合を有していてもよい。特に好ましいヘテロシクリルとしては、5−6、及び、9−10員ヘテロシクリルが挙げられる。ヘテロシクリル基の好適な例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、2H−ピロリル、ピロリジニル、ピロリニル、ピペリジル、ピペラジニル、モルホリニル、インドリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、チオモルホリニル、ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロピロリル、テトラヒドロチオフェニル、ピラゾリニル、ジオキソラニル、チアゾリジニル、イソキサゾリジニル、ジヒドロピラニル、オキサジニル、チアジニル、チオモルホリニル、オキサチアニル、ジチアニル、トリオキサニル、チアジアジニル、ジチアジニル、トリチアニル、アゼピニル、オキセピニル、チエピニル、インデニル、インダニル、3H−インドリル、イソインドリニル、4H−キノラジニル、クロムニル、クロマニル、イソクロマニル、ピラニル、及び、ジヒドロピラニル。ヘテロシクリル基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。尚、「ヘテロシクリレン」とは、二価のヘテロシクリルを意味する。
【0118】
「ヘテロアリール」とは、芳香族残基となるように単一の又は複数の炭素原子がヘテロ原子で置換された、一環式の、多環式の、融合した、又は、共役の炭化水素残基を意味する。ヘテロアリールは、好ましくは3−20環原子を有している(例:3−10)。特に好ましくは、ヘテロアリールは、5−6及び9−10員二環式系である。好適なヘテロ原子としては、O,N,S,P、及び、Se、特に、O,N、及び、Sが挙げられる。二つ以上の炭素原子が置換されている場合、二つ以上の同じヘテロ原子、又は、異なるヘテロ原子で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例としては、ピリジル、ピロリル、チエニル、イミダゾリル、フラニル、ベンゾチエニル、イソベンゾチエニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、ピラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、キノリル、イソキノリル、フタラジニル、1,5−ナフチリジニル、キノザリニル、キナゾリニル、キノリニル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、オキサジアルゾリル、オキサトリアゾリル、トリアジニル、及び、フラザニル。ヘテロアリール基は、ここで定義されるように、単一の又は複数の任意の置換基によって置換がされていてもよい。尚、「ヘテロアリレン」とは、二価のヘテロアリールを意味する。
【0119】
「アシル」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、C=O部分を含む基を意味する(カルボン酸、エステル、アミドではない)。好ましいアシルとしては、C(O)−Rが挙げられ、Rが、水素、又は、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、カルボシクリル、又は、ヘテロシクリル残基のものが挙げられる。アシルの例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、2、2−ジメチルプロパノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ペンタデカノイル、ヘキサデカノイル、ヘプタデカノイル、オクタデカノイル、ノナデカノイル、及び、イコサノイル等の直鎖状の、又は、分岐状のアルカノイル(例:C1−20);シクロプロピルカルボニルシクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、及び、シクロヘキシルカルボニル等のシクロアルキルカルボニル;ベンゾイル、トルオイル、及び、ナフトイル等のアロイル;フェニルアルカノイル(例:フェニルアセチル、フェニルプロパノイル、フェニルブタノイル、フェニルイソブチリル、フェニルペンタノイル、及び、フェニルヘキサノイル)、及び、ナフチルアルカノイル(例:ナフチルアセチル、ナフチルプロパノイル、及び、ナフチルブタノイル]等のアラルカノイル;フェニルアルケノイル(例:フェニルプロペノイル、フェニルブテノイル、フェニルメタクリロイル、フェニルペンテノイル、及び、フェニルヘキセノイル、及び、ナフチルアルケノイル(例:ナフチルプロペノイル、ナフチルブテノイル、及び、ナフチルペンテノイル)等のアラルケノイル;フェノキシアセチル、及び、フェノキシプロピオニル等のアリーロキシアルカノイル;フェニルチオカルバモイル等のアリールチオカルバモイル;フェニルグリオキシロイル、及び、ナフチルグリオキシロイル等のアリールグリオキシロイル;フェニルスルホニル、及び、ナフチルスルホニル等のアリールスルホニル;ヘテロ環状カルボニル;チエニルアセチル、チエニルプロパノイル、チエニルブタノイル、チエニルペンタノイル、チエニルヘキサノイル、チアゾリルアセチル、チアジアゾリルアセチル、及び、テトラゾリルアセチル等のヘテロ環状アルカノイル;ヘテロ環状プロペノイル、ヘテロ環状ブテノイル、ヘテロ環状ペンテノイル、及び、ヘテロ環状ヘキセノイル等のヘテロ環状アルケノイル;及び、チアゾリグリオキシロイル、及び、チエニルグリオキシロイル等のヘテロ環状グリオキシロイルが挙げられる。尚、R残基は、ここに記載されるように任意選択の置換がされていてもよい。
【0120】
「スルホキシド」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、−S(O)R基を意味し、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、及び、アラルキルから選択される。好適なRの例としては、C1−20アルキル、フェニル、及び、ベンジルが挙げられる。
【0121】
「スルホニル」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、S(O)−R基を意味し、Rが水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、及び、アラルキルから選択される。好適なRとしては、C1−20アルキル、フェニル、及び、ベンジルが挙げられる。
【0122】
「スルホンアミド」とは、単独で使用された場合でも、化合物名で使用されたものも、S(O)NR基を意味し、各Rがそれぞれ水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、カルボシクリル、及び、アラルキルから選択される。好適なRとしては、C1−20アルキル、フェニル、及び、ベンジルが挙げられる。一実施形態では、Rの少なくとも一つが水素である。別の実施形態では、両方のRが水素である。
【0123】
「アミノ」は、本技術分野にて理解される最も広義的な意味で使用されており、式NRの基を意味しており、R及びRは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アリールアルキル、及び、アシルから独立して選択される。R及びRは、結合先の窒素とともに、一環式、又は、多環式の環系を形成してもよい(例:3−10員環、特に5−6、及び、9−10員系)。「アミノ」の例としては、NH、NHアルキル(例:C1−20アルキル)、NHアリール(例:NHフェニル)、NHアラルキル(例:NHベンジル)、NHアシル(例:NHC(O)C1−20アルキル、NHC(O)フェニル)、Nアルキルアルキル(各アルキルが、例えば、同一の又は異なるC1−20であってもよい)、及び5又は6員環、任意で単一の又は複数の同じ又は異なるヘテロ原子を含む(例:O、N、及び、S)。
【0124】
「アミド」は、本技術分野にて理解される最も広義的な意味で使用されており、式C(O)NRを有する基を意味し、R及びRは上で定義されたものである。アミドの例としては、任意の単一の又は複数の同じ又は異なるヘテロ原子(例:O、N、及び、S)を含むC(O)NH、C(O)NHアルキル(例:C1−20アルキル)、C(O)NHアリール(例:C(O)NHフェニル)、C(O)NHアラルキル(例:C(O)NHベンジル)、C(O)NHアシル(例:C(O)NHC(O)C1−20アルキル、C(O)NHC(O)フェニル)、C(O)Nアルキルアルキル(各アルキル、例えば、C1−20が、同じであっても異なっていてもよい)、及び、5又は6員環が挙げられる。
【0125】
「カルボキシエステル」は、本技術分野にて理解される最も広義的な意味で使用されており、式COを有する基を意味し、Rがアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、カルボシクリル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、アラルキル、及び、アシルの基から選択される。カルボキシエステルの例としてはCO1−20アルキル、COアリール(例:。COフェニル)、COアラルキル(例:COベンジル)が挙げられる。
【0126】
ここで言う「アリーロキシ」とは、酸素橋を介して結合された「アリール」基である。アリーロキシ置換基としては、フェノキシ,ビフェニルオキシ,ナフチルオキシ等が挙げられる。
【0127】
ここで言う「アシルオキシ」とは、酸素原子に結合する「アシル」基である。「アシルオキシ」の例としては、ヘキシルカルボニルオキシ(ヘプタノイルオキシ)、シクロペンチルカルボニルオキシ、ベンゾイルオキシ、4−クロロベンゾイルオキシ、デシルカルボニルオキシ(ウンデカノイルオキシ)、プロピルカルボニルオキシ(ブタノイルオキシ)、オクチルカルボニルオキシ(ノナノイルオキシ)、ビフェニルカルボニルオキシ(eg4−フェニルベンゾイルオキシ)、ナフチルカルボニルオキシ(例1−ナフトイルオキシ)等が挙げられる。
【0128】
ここで言う「アルキルオキシカルボニル」とは、カルボニル基を介して結合する「アルキルオキシ」基のことである。「アルキルオキシカルボニル」基の例としては、ブチルホルメート,sec−ブチルホルメート,ヘキシルホルメート,オクチルホルメート,デシルホルメート,シクロペンチルホルメート等が挙げられる。
【0129】
ここで言う「アリールアルキル」とは、芳香環で置換された直鎖又は分岐鎖アルケンで形成される基のことである。アリールアルキルの例としては、フェニルメチル(ベンジル),フェニルエチル、及び、フェニルプロピルが挙げられる。
【0130】
ここで言う「アルキルアリール」とは、直鎖又は分岐鎖アルケンで置換されたアリール基で形成された基のことである。アルキルアリールの例としては、メチルフェニル、イソプロピルフェニルが挙げられる。
【0131】
本明細書で「任意選択の置換がされている」とは、基が(縮合多環基を形成するように)1〜4,又はそれ以上の有機基、無機基で置換又は融合されていてもされていなくてもよいという意味である。前記有機基、無機基は、アルキル、アルケニル、アルキニル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、アシル、アラルキル、アルカリル、アルクヘテロシクリル、アルクヘテロアリール、アルクカルボシクリル、ハロ、ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルキニル、ハロアリール、ハロカルボシクリル、ハロヘテロシクリル、ハロヘテロアリール、ハロアシル、ハロアリアルキル、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、ヒドロキシアルキニル、ヒドロキシカルボシクリル、ヒドロキシアリール、ヒドロキシヘテロシクリル、ヒドロキシヘテロアリール、ヒドロキシアシル、ヒドロキシアラルキル、アルコキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルコキシアルキニル、アルコキシカルボシクリル、アルコキシアリール、アルコキシヘテロシクリル、アルコキシヘテロアリール、アルコキシアシル、アルコキシアラルキル、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリーロキシ、カルボシクリルオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリーロキシ、ヘテロシクリルオキシ、アシルオキシ、ハロアルコキシ、ハロアルケニルオキシ、ハロアルキニルオキシ、ハロアリーロキシ、ハロカルボシクリルオキシ、ハロアラルキルオキシ、ハロヘテロアリーロキシ、ハロヘテロシクリルオキシ、ハロアシルオキシ、ニトロ、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、ニトロヘテロアリル、ニトロカルボシクリル、ニトロアシル、ニトロアラルキル、アミノ(NH)、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルケニルアミノ、アルキニルアミノ、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アラルキルアミノ、ジアラルキルアミノ、アシルアミノ、ジアシルアミノ、ヘテロシクロアミノ、ヘテロアリールアミノ、カルボキシ、カルボキシエステル、アミド、アルキルスルホニルオキシ、アリールスルフェニルオキシ、アルキルスルフェニル、アリールスルフェニル、チオ、アルキルチオ、アルケニルチオ、アルキニルチオ、アリールチオ、アラルキルチオ、カルボシクリルチオ、ヘテロシクリルチオ、ヘテロアリールチオ、アシルチオ、スルホキシド、スルホニル、スルホンアミド、アミノアルキル、アミノアルケニル、アミノアルキニル、アミノカルボシクリル、アミノアリール、アミノヘテロシクリル、アミノヘテロアリール、アミノアシル、アミノアラルキル、チオアルキル、チオアルケニル、チオアルキニル、チオカルボシクリル、チオアリール、チオヘテロシクリル、チオヘテロアリール、チオアシル、チオアラルキル、カルボキシアルキル、カルボキシアルケニル、カルボキシアルキニル、カルボキシカルボシクリル、カルボキシアリール、カルボキシヘテロシクリル、カルボキシヘテロアリール、カルボキシアシル、カルボキシアラルキル、カルボキシエステルアルキル、カルボキシエステルアルケニル、カルボキシエステルアルキニル、カルボキシエステルカルボシクリル、カルボキシエステルアリール、カルボキシエステルヘテロシクリル、カルボキシエステルヘテロアリール、カルボキシエステルアシル、カルボキシエステルアラルキル、アミドアルキル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、アミドカルボシクリル、アミドアリール、アミドヘテロシクリル、アミドヘテロアリール、アミドアシル、アミドアラルキル、ホルミルアルキル、ホルミルアルケニル、ホルミルアルキニル、ホルミルカルボシクリル、ホルミルアリール、ホルミルヘテロシクリル、ホルミルヘテロアリール、ホルミルアシル、ホルミルアラルキル、アシルアルキル、アシルアルケニル、アシルアルキニル、アシルカルボシクリル、アシルアリール、アシルヘテロシクリル、アシルヘテロアリール、アシルアシル、アシルアラルキル、スルホキシドアルキル、スルホキシドアルケニル、スルホキシドアルキニル、スルホキシドカルボシクリル、スルホキシドアリール、スルホキシドヘテロシクリル、スルホキシドヘテロアリール、スルホキシドアシル、スルホキシドアラルキル、スルホニルアルキル、スルホニルアルケニル、スルホニルアルキニル、スルホニルカルボシクリル、スルホニルアリール、スルホニルヘテロシクリル、スルホニルヘテロアリール、スルホニルアシル、スルホニルアラルキル、スルホンアミドアルキル、スルホンアミドアルケニル、スルホンアミドアルキニル、スルホンアミドカルボシクリル、スルホンアミドアリール、スルホンアミドヘテロシクリル、スルホンアミドヘテロアリール、スルホンアミドアシル、スルホンアミドアラルキル、ニトロアルキル、ニトロアルケニル、ニトロアルキニル、ニトロカルボシクリル、ニトロアリール、ニトロヘテロシクリル、ニトロヘテロアリール、ニトロアシル、ニトロアラルキル、シアノ、硫酸塩、リン酸塩、トリアリールメチル、トリアリールアミノ、オキサジアゾール、及び、カルバゾール基から選択される。また、任意選択の置換は、鎖又は環における−CH−基が、O−、−S−、−NR−、−C(O)−(即ち、カルボニル)、−C(O)O−(即ち、エステル)、及び、−C(O)NR−(即ち、アミド)から選択される基(Rは、ここに定義される通り)によって置換されると解釈してもよい。
【0132】
好ましい任意の置換基としては、アルキル、(例:メチル、エチル、プロピル、ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、又は、シクロヘキシル等のC1−6アルキル)、ヒドロキシアルキル(例:ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル)、アルコキシアルキル(例:メスオキシメチル、メスオキシエチル、メスオキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、等)アルコキシ(例:メスオキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ等のC1−6アルコキシ)、ハロ、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、ヒドロキシ、フェニル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、更に置換されていてもよい)、
【0133】
ベンジル(例えば、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、ベンジル自体が更に置換されていてもよい)、
【0134】
フェノキシ(例えば、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、フェニル自体が更に置換されていてもよい)、
【0135】
ベンジルオキシ(例えば、C1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、ベンジル自体が更に置換されていてもよい)、
【0136】
アミノ、アルキルアミノ(例:メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ等のC1−6アルキル)、ジアルキルアミノ(例:ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ等のC1−6アルキル)、アシルアミノ(例:NHC(O)CH)、フェニルアミノ(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、フェニル自体が更に置換されていてもよい)、ニトロ、ホルミル、−C(O)−アルキル(例:アセチル等のC1−6アルキル),O−C(O)−アルキル(例:アセチルオキシ等のC1−6アルキル)、ベンゾイル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシヒドロキシC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、フェニル基自体が更に置換されていてもよい)、C=OによるCHの置換、COH、COアルキル(例:メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルエステル等のC1−6アルキル)、COフェニル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシlC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、フェニル自体が更に置換されていてもよい)、CONH、CONHフェニル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシ、ヒドロキシlC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、フェニル自体が更に置換されていてもよい)、CONHベンジル(例えばC1−6アルキル、ハロ、ヒドロキシヒドロキシlC1−6アルキル、C1−6アルコキシ、ハロC1−6アルキル、シアノ、ニトロOC(O)C1−6アルキル、及び、アミノによって、ベンジル自体が更に置換されていてもよい)、CONHアルキル(例:メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、ブチルアミド等のC1−6アルキル)CONHジアルキル(例:C1−6アルキル)アミノアルキル(例:HNC1−6アルキル−、C1−6アルキルHN−C1−6アルキル−and(C1−6アルキル)N−C1−6アルキル−)、チオアルキル(例:HSC1−6アルキル−)、カルボキシアルキル(例:HOCC1−6アルキル−)、カルボキシエステルアルキル(例:C1−6アルキルOCC1−6アルキル−)、アミドアルキル(例:HN(O)CC1−6アルキル−、H(C1−6アルキル)N(O)CC1−6アルキル−)、ホルミルアルキル(例:OHCC1−6アルキル−)、アシルアルキル(例:C1−6アルキル(O)CC1−6アルキル−)、ニトロアルキル(例:ONC1−6アルキル−)、スルホキシドアルキル(例:C1−6アルキル(O)SC1−6アルキル−等のR(O)SC1−6アルキル)、スルホニルアルキル(例:C1−6アルキル(O)SC1−6アルキル−等のR(O)SC1−6アルキル−)、スルホンアミドアルキル(例:HRN(O)SC16アルキル、H(C1−6アルキル)N(O)SC1−6アルキル−)、トリアリールメチル、トリアリールアミノ、オキサジアゾール、及び、カルバゾールが挙げられる。
【0137】
以下に、非限定的な実施例に基いて本発明を説明する。
【実施例】
【0138】
材料、機材、及び、作業方法
【0139】
250℃までの連続フロー処理が可能な、市販の管状フロー反応器(VapourtecR2/R4反応器ヒータ)で重合を行った。パーフルオロアルコキシポリマー(PFA)配管からなるポリマーコイル、及び、ステンレス鋼コイルとの二つの異なるフロー反応系について調査した。共に内径は1mm、合計容積10mlであった。
【0140】
フロー反応は、二つの態様のうちの一つで行った。ライブラリ合成には、少量の出発原料(モノマー,開始剤、及び、RAFT剤)を、一連のプラグとして、サンプルループを介して一定の溶媒の流れに注入することによって処理を行った。本態様はここでは「分割型フロー」称し、順次少量のサンプルを処理して、実用的な分析量のサンプルを合成するのに適している。本作業では2ml/サンプルの規模で分割型フローを使用した。
【0141】
管状反応器におけるRAFT重合の第2の態様は、溶媒、モノマー、開始剤、及び、RAFT剤を連続してフロー反応器に導入し、数グラムのポリマーを生成するというものである。ここで、安定した条件下で、全体的にサンプル10ml以上の処理を行った。
【0142】
いずれの態様においても、出発材料溶液は予め混合されており脱気されている。温度、70℃〜100℃、流量、0.08〜0.03ml/minで反応を行った。反応時間は、30min〜120minであった。バッチ、フロー重合には、一連の異なるモノマー(以下に示す化合物1−4)、開始剤(以下に示す化合物5−6)、及び、RAFT剤(以下に示す化合物7−8)を使用した。
【化4】
【0143】
マイクロ波の照射(Biotage社製の開始剤)によって加熱された実験用の反応器において、フロー実験と同じ生成、脱気手順で、2mlの規模のバッチ試験を行った。
【0144】
開始剤5及び6は、それぞれAcros社製、及び、Dupont社製のものを使用した。RAFT剤7は、自社で生成し、RAFT剤8は、Sigma・Aldrich社製のものを使用した。モノマー2〜4は、重合阻害剤を除去するために、ポリマー樹脂(Sigma・Aldrich社製の阻害剤除去剤)で前処理を行った。溶媒は、商用品製造業社から購入し、更に精製すること無くそのまま使用した。
【0145】
1,3,5−トリオキサンを内部標準として、H−NMRスペクトルから、変換率の計測を行った。重水素化クロロホルム(内部基準の溶媒残留量:δ=7.76ppm)を用い、Bruker・AC400型分光計で、H NMR スペクトルを記録した。ポリマーの平均分子量、
【数3】
、及び、多分散性指数、PDIはゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で計測した。PDIは、実験データを元に下記式1を使って計算した。
【数1】
【0146】
ここで
【数2】
は量平均分子量、
【数3】
は数平均分子量、w、n、及び、Mはそれぞれ、長さiの鎖の重量、数量、及び、分子量を表す。Waters590HPLCポンプ、及び、3×WatersStyragelカラム(HT2、HT3、HT4、それぞれ300mm×7.7mm、有効分子量範囲:100〜600000)を備えたWaters410屈折率検出器を有する系で、ポリマー1、及び、2からGPCを行った。溶離液としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(0.05%w/vのLiBrを含む)を80℃(流量:1ml/min)で使用した。ポリマー3、4のGPCについては、Waters社の2695Separation Moduleを用いた系で行った。溶離液としては、テトラヒドロフラン(1.1ml/min)を使用した。GPCは、狭分散性ポリスチレン標準を使用して較正し、分子量はポリスチレン同等のものとして記載している。Waters・Millenniumのソフトウェアを使って、
【数3】
及び
【数2】
を評価した。分子量範囲全体に直線的なログMvs.時間の較正曲線に合わせるために多項式が用いられた。
【0147】
実施例1−連続RAFT重合処理用の異なる反応器材料(ポリマー、スチール配管)の評価:
【0148】
バッチ(比較例)、及び、PFAポリマー又はスチールフロー反応器コイルを用いた連続フローにおける、N、N−ジメチルアクリルアミド、2、のRAFT重合
【0149】
8mlのエチル酢酸塩(EtOAc)に、1630mgのモノマー、2、の出発材料溶液、18mgの開始剤、5、44mgのRAFT剤、7を予め混合し、3回のポンプ凍結融解サイクルで脱気を行った。連続フローの設定で使用する処理溶媒は、窒素パージによって脱気した。80℃で、反応時間2時間の条件で重合が行われた。バッチ処理では,実験用のマイクロ波反応器(Biotage開始剤)で、2mlの出発材料溶液が処理された。連続フローでは、PFAポリマーコイル、又は、ステンレス鋼コイル(それぞれ10ml)を用いて、VapourtecR2/R4反応器ヒータで、2mlの出発材料溶液を0.08ml/minの一定の溶媒の流れ(EtOAc)に注入した。反応後、黄色の粘性のポリマー溶液を得ることができた。ポリマーの構造は、NMRを使って確認した。バッチガラス反応器と、スチールフロー反応器との比較は図3に示す。PFAフロー反応器で行われた実験ではポリマーを生成することができなかった。これは、PFA配管の酸素浸透性に起因している可能性がある(酸素の介在がラジカルの活動を止める)。
【0150】
実施例2−一連の異なるモノマー、RAFT剤、及び、溶媒に対するフロー処理の評価、及び、バッチ処理との比較:
【0151】
バッチ(比較例)、及び、スチールフロー反応コイルを用いた連続フローによる、N−イソプロピルアクリルアミド,1のRAFT重合
【0152】
10mlのEtOAcに、2037mgのモノマー,1,の出発材料溶液、8.8mgの開始剤,5、及び、37mgのRAFT剤,7を予め混合し、窒素パージによって脱気を行った。連続フロー態様で使用する洗浄・処理用溶媒もまた窒素を用いて脱気を行った。温度80℃、反応時間2時間の条件で重合が行われた。バッチ処理では、実験用のマイクロ波反応炉(Biotage開始剤)で、2mlの出発材料溶液を処理した。連続フロー実験では、10mlのステンレス鋼コイルを使って、VapourtecR2/R4反応炉ヒータで、残りの出発材料溶液を、流量0.08ml/minで処理した。反応後、黄色の粘性のポリマー溶液を得ることができた。ポリマーの構造は、NMRを使って確認した。全般的な処理は、モノマー1〜4と、開始剤5又は6と、RAFT剤7又は8との組合せに対し、使用されるモノマー、RAFT剤、及び、開始剤に応じ、処理条件(温度、処理流量)を変更して行った。(図4)。
【0153】
実施例3−連続RAFT重合処理に対する配管直径の影響:
【0154】
バッチ(比較例)、又は、二つの10mlスチールフロー反応コイル(ID=1mm)を直列につないだ場合、又は、一本の20mlスチールフロー反応コイル(ID=2.2mm)の何れかを用いた連続フローによるN、N−ジメチルアクリルアミド、2のRAFT重合
【0155】
13mlのアセトニトリル(MeCN)に8723mgのモノマーの出発材料溶液、2、43mgの開始剤、5、426mgのRAFT剤、7を予め混合し、窒素パージによって脱気を行った。連続フロー態様用の洗浄溶媒に対しても、窒素を使って脱気を行った。温度80℃、反応時間1時間の条件で重合を行った。バッチ処理では、実験用のマイクロ波反応炉(Biotage開始剤)で、2mlの出発材料溶液を処理した。連続フローでは、前記二つのうちのいずれかの構成において(2x10mlコイル、1x20mlコイル)、VapourtecR2/R4反応炉ヒータで、流量0.03ml/minで合計10mlの出発材料溶液の処理を行った。反応後、黄色の粘性のポリマー溶液を得ることができた。全般的な処理は、図5に示すもの全てに対して、記載の通り処理条件を変更して行った。
【0156】
実施例4−連続RAFT重合処理のスケールアップ:
【0157】
直列の3本の10mlスチールフロー反応コイル(ID=1mm)、及び、1本の20mlスチールフロー反応コイル(ID=2.2mm)(合計反応炉容積=50ml)を用いた連続フローによる、N、N−ジメチルアクリルアミド、2のRAFT重合
【0158】
153mlのMeCNに237.71gのモノマーの出発材料溶液、2、394mgの開始剤、5、12.295gのRAFT剤、7を予め混合し、窒素パージによって脱気を行った。VapourtecR2/R4反応炉ヒータを用いて、温度75℃、反応時間30分、流量1.17ml/minの条件で重合を行った。反応後、黄色の高粘性のポリマー溶液を得ることができた。変換率は94%であり、ポリマーの平均分子量は、9360g/mol、PDIは1.14であった。
【0159】
本明細書及び以下請求項をとおして使用される「備える(comprise)」、及び、「備える(comprises)」と「備える(comprising)」等の変化は、特に文脈において指定されない限り、記述された整数、ステップ、又は、整数群や、ステップ群を含み、その他の整数、ステップ、整数群やステップ群を除外するものではない。
【0160】
本明細書において引用されるいかなる公報(又は、そこから得られる情報),又は、公知の事項は、先行文献(又は、そこから得られる情報)、又は、公知の事項が、本明細書が関わる努力傾注分野における常識を部分的に形成すると、承認又は自認、又は暗示するものではなく、またそのように解釈されるべきでは無い。
【0161】
本発明の範囲を逸出すすることのない多くの変形例が当業者にとって明確であろう。
図1
図2
図3
図4
図5