【実施例】
【0045】
図1ないし
図7は第1発明に係る電気かみそりの実施例を示す。なお、以下の説明における前後・左右・上下とは、
図2および
図3に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表示した前後・左右・上下の表記に従うこととする。
図2において電気かみそりは、ヘッド部1と、ヘッド部1を支持する本体部2と、本体部2に装着される外枠3などで構成する。外枠3は装飾枠を兼ねており、本体部2と協同して電気かみそりのグリップ部を構成する。ヘッド部1の全体は、本体部2で上下移動可能に支持されて、図示していない移動ばねで押し上げ付勢してある。
【0046】
図4においてヘッド部1は、ヘッドベース5と、ヘッドベース5の上面に固定される上カバー6と、ヘッド部1の上端に設けられるメイン刃7と、メイン刃7の後側に配置される肌伸張構造と、肌伸張構造に組み込まれるトリマーユニット(長毛切断刃)8などで構成する。ヘッドベース5の下面にはモーター10が固定してあり、その回転動力はギヤ伝動構造を介してメイン刃7の内刃11に伝動される。ヘッド部1が本体部2に対して上下移動するとき、モーター10はヘッド部1に同行して上下動する。
【0047】
メイン刃7は、横軸まわりに回転するロータリー式の内刃11と、網刃からなる外刃12とで構成して、主に短毛を切断(せん断)する。以下の実施例におけるメイン刃7も同様に、主として短毛を切断するものである。外刃12は、外刃ホルダー13でアーチ形に保持してあり、外刃ホルダー13はヘッドベース5に対して着脱自在に装着してある。内刃11は、一群のスパイラル状の小刃をプラスチック製の軸体にインサート固定して構成してあり、逆門形の内刃ホルダー14で回転自在に軸支してある。
図1および
図4において、内刃11は反時計回転方向へ回転駆動される。内刃ホルダー14は、上カバー6に対して着脱できる。外刃12は、その湾曲領域の全体に一群のひげ導入穴12aが形成してある網刃からなり、湾曲壁に連続する平坦な後壁に前後方向に長いスリット状の長毛導入穴12bが形成してある。なお、ひげ導入穴12aと内刃11とで構成される切断領域の中央部分は、内刃11の中心を通る垂直平面より前側に偏寄させてある。より詳しくは、切断領域の中央部分は、時計の文字盤における10時から11時の間に位置させてある。
【0048】
本体部2の内部には、2次電池16および回路基板17などの電装品が組み付けてある(
図2参照)。ヘッド部1を水洗い洗浄可能とするために、モーター10や先の電装品を収容する本体部2とヘッドベース5との間はパッキンで封止してある。外枠3の右側の側枠部分の上部に、モーター10への通電状態を切り換えるスイッチボタン18と、発光表示部などが組み込んである。スイッチボタン18を押し込み操作する毎に、回路基板に実装したスイッチをオンからオフへ、あるいはオフからオンへ循環的に切り換えることができる。
【0049】
ギヤ伝動構造は、モーター10の回転動力を中間軸20に伝動する前段ギヤ群と、中間軸20の回転動力を内刃12に伝動する後段ギヤ群とで構成する。
図2に示すように、前段ギヤ群は、モーター10の出力軸に固定される原動ギヤ21と、原動ギヤ21に噛み合う従動ギヤ22と、従動ギヤ22の上面に設けられる駆動側のベベルギヤ23と、中間軸20に固定される従動側のベベルギヤ24とで構成する。後段ギヤ群は、中間軸20と内刃軸25との間に設けたギヤトレイン26からなり、ギヤトレイン26の第1ギヤのみが中間軸20の軸端に固定され、他の3個のギヤは内刃ホルダー15の側壁内に収容してある。
【0050】
中間軸20を利用して振動子28が左右スライド自在に支持してあり、先の原動ギヤ21の上面に設けた偏心カム29で振動子28を駆動して、モーター10の回転動力を往復動力に変換している。振動子28の往復動力は、駆動枠30を介して、トリマーユニット8の可動刃56に伝動される(
図3および
図4参照)。
【0051】
肌伸張構造は、外刃ホルダー13の後面側に配置される肌押し体35と、肌押し体35を変位付勢する肌押しばね36を要素部材にして構成してあり、肌押し体35を利用してトリマーユニット8が組み込んである。
【0052】
図4ないし
図6に示すように、肌押し体35は、トリマーユニット8の側から外刃12へ向かって連出される肌押しアーム37と、肌押しアーム37の後部に連続して下向きに伸びるアーム基部38とで断面逆L字状に形成してあり、肌押しアーム37の上面側が肌押圧部39となっている。肌押し体35は、
図4に示す待機位置と、
図1に示す作動位置との間で揺動変位できる。そのために、外刃ホルダー13の後面左右に一対のブラケット40を設け、両ブラケット40の上部対向面に固定した一対の支軸41で、肌押しアーム37の側面の前後中途部を軸支している。
【0053】
また、アーム基部38の両側面の上部に設けたばね受け座42と、左右のブラケット40の下部に設けたばね受け座43との間に、先の肌押しばね36を配置している(
図3参照)。肌押しばね36は圧縮コイルばねからなり、肌押し体35の全体を支軸41のまわりに反時計回転方向へ揺動付勢する。各ばね受け座42・43には、肌押しばね36に嵌り込むずれ止めピン42a・43aが突設してある。なお、支軸41の中心軸は、メイン刃7の内刃11の回転中心軸と平行に配置してある。
【0054】
図7に示すように肌押しアーム37の左右幅は、外刃12に設けたひげ導入穴12aの形成領域より僅かに広幅に設定してあり、ばね受け座42を含むアーム基部38の左右幅は、肌押しアーム37の左右幅より大きく設定してある。肌押しアーム37とアーム基部38との間に上下貫通状の空所Sを形成し、空所Sに臨む平坦な刃セット部45にトリマーユニット8を固定して、その切刃部分をアーム基部38側の上面に露出させている(
図4参照)。
【0055】
肌押しアーム37の前部の断面は矢尻状に尖らせてあり、肌押圧部39の上面の前端から先の切刃部分の露出部分にわたって、長毛を外刃12へ向かって梳き流す一群の櫛歯47が形成してある。また、各櫛歯47の前部上面に、鋸刃状の肌押し片48が上向きに突設してある。
図7に示すように、櫛歯47および肌押し片48は、肌押しアーム37の左右方向の全幅にわたって一定間隔おきに形成してある。トリマーユニット8の切刃部分に臨むアーム基部38側の上面にも、櫛歯49が一定間隔おきに形成してある。ただし、アーム基部38側の櫛歯49の隣接ピッチおよび歯幅は、肌押しアーム37側の櫛歯47の隣接ピッチおよび歯幅の概ね半分程度に小さく設定してあり、櫛歯49の形成領域の幅は固定刃55の左右幅に概ね一致させてある。
【0056】
図4に示すように、待機位置における肌押しアーム37は、その下面に設けた段部50が外刃ホルダー13のストッパー壁51に接当している。このようにストッパー壁51で肌押しばね36の付勢力は受け止めると、肌押しアーム37の前端下面の傾斜面52が、外刃12の平坦な後壁に強く押し付けられるのを防止できる。この状態の櫛歯47の間の歯溝53は、外刃12の長毛導入穴12bに臨んでいる。
図3および
図4に示すように肌押し体35が待機位置にあるときの肌押し片48は、肌押し体35の最上端に位置しており、肌押し片48に連続する櫛歯47の上縁は概ね水平になっている。
【0057】
トリマーユニット8は、刃セット部45に固定される固定刃55と、固定刃55に対して左右にスライド駆動される可動刃56と、可動刃56と一体に設けられる受動体57、および図示していない可動刃用の押えばねなどで構成する。可動刃56を駆動するために、振動子28に設けた駆動枠30の後端をヘッド部1の後面外方に突出させ、その突出端に装着した駆動片60の上端に駆動ピン61を固定している。この駆動ピン61に受動体57の下端に設けた連結溝62を係合することにより、振動子28の往復動力を可動刃56に伝動できる。
【0058】
トリマーユニット8は、肌押し体35が待機位置と作動位置との間で揺動するのに同行して上下に移動変位できる。このようにトリマーユニット8が移動変位する状態においても、常に往復動力を可動刃56へ伝動できるようにするために、駆動ピン61を駆動片60の前面前方へ大きく突設して、連結溝62と駆動ピン61の係合状態を維持できるようにしている。駆動枠30から受動体57に至る駆動構造の外面は、本体部2の後面に装着したカバー63で覆われている。
【0059】
以上のように構成した電気かみそりは、
図1に示すようにメイン刃7を肌面に押し付けてひげ切断を行なう。詳しくは、長毛やくせ毛をトリマーユニット8で切断し、切断された短毛をメイン刃7で仕上げ切断してコンビ剃りを行なうことができる。メイン刃7を肌面に押し付けた状態では、トリマーユニット8の切刃部分、およびアーム基部38の上面も同時に肌面の押圧反力で押される。そのため、肌押し体35は、肌押しばね36の付勢力に抗して支軸41のまわりに時計回転方向へ揺動し、実線で示す作動位置へ変位する。また、肌押し体35が揺動するのと同時に、肌押し片48が肌面に食い込んで、外刃12に臨む肌面を肌押し片48で伸張させ、伸張された肌面に倒れこんだ短毛、長毛、あるいはくせ毛などを起毛できる。メイン刃7を肌面に押し付ける過程では、トリマーユニット8が肌押し体と共に揺動するので、その固定刃55や可動刃56による肌面への刺激を軽減して、肌当りを柔らかなものとすることができる。
【0060】
このとき、肌押圧39の先端寄りに肌押し片48を設けているので、肌押し体35が作動位置へ揺動するときの肌押し片48の変位距離を大きくできる。さらに、肌押し片48が肌押圧39の上面から突出している寸法分だけ、肌面を大きく押し込むことができる。したがって、メイン刃7に臨む肌面を肌押し体35で大きく伸張させて、肌面に倒れこんでいるくせ毛や長毛を確実に起毛することができる。
【0061】
上記の肌伸張状態で、
図1に示すようにヘッド部1を矢印Mの方向へスライドさせると、起毛されたくせ毛や長毛を櫛歯47で梳きながら外刃12の長毛導入穴12bへと案内して切断できる。同時に、ひげ導入穴12aに短毛を誘い込んで切断できる。なお、肌押し体35が作動位置へ揺動する動作は、アーム基部38の上面が肌面の押圧反力で押されて、支軸41の周りに沈み込むことで実現されるが、この動作は次のように考えることができる。アーム基部38の上面にはトリマーユニット8の切刃部分が露出している。したがって、肌押し体35の揺動動作は、肌面からの押圧反力を受けてトリマーユニット8が下向きに移動変位するのに連動して行なわれるということができる。
【0062】
以下、
図8から
図21に基づいて、第2発明ないし第6発明に係る電気かみそりの実施例を示す。なお、以下の各実施例においては、先に説明した実施例と異なる部分を主に説明して、同じ部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0063】
図8および
図9に第2発明に係る電気かみそりを示しており、そこではヘッド部1に前後一対のメイン刃7・7と、センター刃(長毛切断刃)9を設け、ヘッド部1の全体を本体部2で上下移動可能に支持した。メイン刃7は、スリット刃からなる内刃65と網刃からなる外刃66とでレシプロ式の切断刃として構成してあり、各内刃65は図示していない振動子の駆動軸で互いに逆向きに往復駆動される。
【0064】
メイン刃7は、樋体状の刃支持体67に上下動自在に組み付けられて、ばね64で押し上げ付勢してあり、前後の刃支持体67は、それぞれヘッドケース68で前後スライド自在に支持してある。詳しくは、刃支持体67の下面の前後に設けたスライドピン69を、ヘッドケース68の両側壁に形成したガイド溝70でスライド自在に案内支持して、メイン刃7・7を基準位置(
図8に想像線で示す位置)と肌伸し位置(
図8に実線で示す位置)とにスライド変位できるよう支持している。また、ヘッドケース68の前後壁と各刃支持体67との間に配置した復帰ばね71で、各メイン刃7・7を基準位置へ向かって互いに接近する向きに移動付勢している。センター刃9は両メイン刃7・7の間に配置してあり、それぞれスリット刃からなる内刃73と外刃74で構成してある。センター刃9は、上下動可能に支持されてリフトばね72で押し上げ付勢してあり、その内刃73が、図示していない振動子の駆動軸で往復駆動される。ヘッドケース68は、その下部に固定した移動体76のスライドピン77を、本体部2に設けたガイド溝78でスライド案内して上下移動可能に支持されて、移動ばね79で押し上げ付勢してある。
【0065】
上記のメイン刃7・7を、ヘッド部1の移動動作に連動して基準位置から肌伸し位置へと変位操作するために、肌伸張構造をヘッド部1に設けている。肌伸張構造は、本体部2に固定される左右一対のラック80と、ヘッドケース68に軸支されて先のラック80と噛み合うピニオン81と、各ピニオン81と同行回転する一対の操作カム82とで構成する。操作カム82は長円状に形成してあり、その回転中心が両刃支持体67の中間に位置させてあって、復帰ばね71で移動付勢された各刃支持体67の対向壁をカム周面で受け止めている。
【0066】
使用状態において、メイン刃7・7を肌面に押し付けると、肌面からの押し付け反力を受けてヘッド部1の全体が、移動ばね79の付勢力に逆らって沈み込む。この沈み込み動作と同時に、ピニオン81がラック80に沿って回転駆動され、同時に操作カム82が想像線で示す状態から実線で示す状態へと回転して、各メイン刃7・7の刃支持体67を、それぞれ復帰ばね71の付勢力に抗して互いに離れる向きへ変位操作する。そのため、各メイン刃7・7の間に位置している肌面は、互いに離れる向きに移動する外刃66・66で伸張されて、肌面に倒れこんだ短毛、長毛、あるいはくせ毛などを起毛する。したがって、使用者はとくに意識してヘッド部1を移動操作する必要もなく肌面を伸張させることができる。この状態でヘッド部1を前後いずれかへスライドさせることにより、起毛されたくせ毛をスライド方向下手側のメイン刃7に導入して切断できる。なお、メイン刃7を肌面から離すと、ヘッド部1は移動ばね79の付勢力によって本体部2から進出する向きに移動するので、ピニオン81および操作カム82は上昇移動しながら回転し、各メイン刃7・7は待機位置へと復帰移動する。
【0067】
図10の電気かみそりは、
図8の電気かみそりと同様にヘッド部1に前後一対のメイン刃7・7とセンター刃9を設け、ヘッド部1の全体を本体部2で上下移動可能に支持した。前後の刃支持体67をヘッドケース68で前後スライド自在に支持し、復帰ばね71で基準位置へ向かって復帰付勢する点も同じである。この実施例における肌伸張構造は、本体部2に固定される左右一対の固定カム85と、各刃支持体67に固定される受動カム86とで構成し、ヘッド部1が移動ばね79の付勢力に抗して沈み込むとき、両受動カム86が固定カム85で同時に離れる向きへ変位操作されるようにした。固定カム85と両受動カム86とは、傾斜面からなるカム面を介して接当している。
【0068】
図11の電気かみそりは、
図8の電気かみそりと同様にヘッド部1に前後一対のメイン刃7・7とセンター刃9を設け、ヘッド部1の全体を本体部2で上下移動可能に支持した。前後の刃支持体67は、その下部に固定した揺動軸88をヘッドケース68で前後傾動自在に支持して、復帰ばね71で基準位置へ向かって復帰付勢するようにした。この実施例における肌伸張構造は、
図10の肌伸張構造と同様に、固定カム85と受動カム86とで構成するが、固定カム85の上端の操作カム面を半円状に丸める点が、
図10の肌伸張構造と異なる。
【0069】
図12の電気かみそりは、
図11の電気かみそりと同様に構成するが、その前後一対のメイン刃7を、
図1で説明したメイン刃7と同様に、横軸まわりに回転するロータリー式の内刃11と、網刃からなる外刃12とで構成する点が
図11の電気かみそりと異なる。
【0070】
図13および
図14の第3発明に係る電気かみそりは、前後一対のメイン刃7を
図11の電気かみそりと同様に構成し、ヘッドケース68で支持した肌接触体90の上下動作を利用して、肌伸張構造を基準位置から肌伸し位置へ操作できるようにした。肌接触体90は、上面にメイン刃7およびセンター刃9を露出させるための開口91を備えたキャップ体からなり、その周側壁がヘッドケース68で上下動自在に案内されて、リフトばね95で押し上げ付勢してある(
図14参照)。肌伸張構造は、肌接触体90の上壁内面に固定されて下向きに延びる左右一対のラック92と、ヘッドケース68に軸支されて先のラック92と噛み合うピニオン93と、各ピニオン93と同行回転する一対の操作カム94とで構成する。操作カム94は長円状に形成してあり、その回転中心を両刃支持体67の中間に配置して、復帰ばね71で移動付勢された各刃支持体67の対向壁をカム周面で受け止めている。
【0071】
常態における肌接触体90の上面は、
図14に想像線で示すように、外刃66の頂部の近傍位置に位置しているが、ひげ切断時には肌面からの押し付け反力によって
図14に実線で示すように押し下げられ、ラック92が同行して下降移動する。ラック92の下降動作によりピニオン93が回転操作され、同時に操作カム94が想像線で示す状態から実線で示す状態へと回転して、各メイン刃7・7の刃支持体67を、互いに離れる向きへ傾動操作する。これにより、肌面に倒れこんだ短毛、長毛、あるいはくせ毛などを起毛できる。
【0072】
図15の電気かみそりは、前後一対のメイン刃7を
図13の電気かみそりと同様に構成し、ヘッドケース68で支持した肌接触体90の上下動作を利用して、肌伸張構造を基準位置から肌伸し位置へ操作できるようにした。肌伸張構造は、肌接触体90の上壁内面に固定されて下向きに延びる左右一対の移動カム97と、各刃支持体67に固定される受動カム98とで構成し、肌接触体90がリフトばね(図示していない)の付勢力に抗して沈み込むとき、両受動カム98を移動カム97で同時に離れる向きへ変位操作して、刃支持体67を拡開揺動させるようにした。
【0073】
図16の第4発明に係る電気かみそりは、前後一対のメイン刃7を
図12の電気かみそりと同様にロータリー式の内刃11と、網刃からなる外刃12とで構成し、その間に配置したセンター刃9の上下動作を利用して、肌伸張構造を基準位置から肌伸し位置へ操作できるようにした。肌伸張構造は、センター刃9の下部に固定される左右一対のラック101と、ヘッドケース68に軸支されて先のラック101と噛み合うピニオン102と、各ピニオン102と同行回転する一対の操作カム103とで構成する。操作カム103は長円状に形成してあり、その回転中心が両刃支持体67の中間に位置させてあって、復帰ばね71で移動付勢された各刃支持体67の対向壁を受け止めている。
【0074】
常態におけるセンター刃9は、
図16に想像線で示すように、メイン刃7より上方に位置しているが、ひげ切断時には肌面からの押し付け反力によって、
図16に実線で示すように押し下げられ、ラック101が同行して下降移動する。ラック101の下降動作によりピニオン102が回転操作され、同時に操作カム103が想像線で示す状態から実線で示す状態へと回転して、各メイン刃7・7の刃支持体67を、互いに離れる向きへ傾動操作する。これにより、肌面に倒れこんだ短毛、長毛、あるいはくせ毛などを起毛できる。
【0075】
図17の電気かみそりは、前後一対のメイン刃7を
図16の電気かみそりと同様に構成し、センター刃9の上下動作を利用して、肌伸張構造を基準位置から肌伸し位置へ操作できるようにした。肌伸張構造は、センター刃9の下面に固定されて下向きに延びる左右一対の固定カム105と、各刃支持体67に固定される受動カム106とで構成し、センター刃9がリフトばね72の付勢力に抗して沈み込むとき、両受動カム98を固定カム97で同時に離れる向きへ変位操作して、刃支持体67を拡開揺動させるようにした。上記の各実施例では、前後一対のメイン刃7を肌伸張構造で同時に拡開操作したが、一対のメイン刃7の片方のみを肌伸張構造で操作して、肌面を伸張させることができる。第4発明におけるセンター刃9に換えて、断面がかまぼこ型の棒状体を上下動自在に支持し、さらにばねで押し上げ付勢しておき、棒状体が肌面からの押圧反力を受けて押し下げられる動作を利用して、メイン刃7を拡開操作することができる。その場合の棒状体は、先に説明した肌接触体90と同じ機能を発揮できる。
【0076】
図18は第2発明に係る電気かみそりの別の実施例を示しており、そこでは前後一対のメイン刃7を
図15の電気かみそりと同様に構成し、ヘッド部1を本体部2に設けた左右一対のブラケット108で、支軸109を介して前後傾動可能に支持した。肌伸張構造は、各ブラケット108に固定した操作体110からなり、ヘッド部1が前後傾動するとき、操作体110の前後に設けた突起111で一方の刃支持体67を受け止めて、刃支持体67を復帰ばね71の付勢力に抗して揺動操作できる。この実施例においては、前後いずれか一方のメイン刃7を操作体110で揺動させて、肌面を伸張することができる。
【0077】
図19および
図20は第2発明に係る電気かみそりのさらに別の実施例を示しており、そこでは前後一対のメイン刃7を
図8の電気かみそりと同様に構成し、ヘッド部1を本体部2に設けた支軸113で左右傾動可能に支持した。また、刃支持体67の下面の前後に設けたスライドピン69を、ヘッドケース68の両側壁に形成したガイド溝70でスライド自在に案内支持して、メイン刃7・7を基準位置と肌伸し位置とに変位できるよう支持している。肌伸張構造は、本体部2に設けたブラケット114の前後面に形成される半球状の固定カム115と、固定カム115を間に挟んで刃支持体67の対向面に固定される受動カム116とで構成する。受動カム116は、へ字状の凹面として形成してあり、ヘッド部1が左右いずれかへ傾動するとき、固定カム115で互いに離れる向きへ押し出される。これにより、メイン刃7のそれぞれを互いに離れる向きへ移動操作して肌面を伸張することができる。
【0078】
図21に示す電気かみそりは、前後一対のメイン刃7を
図8の電気かみそりと同様に構成し、刃支持体67の下面に固定した傾動軸119を、ヘッドケース68に形成したガイド溝120で案内して、各刃支持体67を前後に傾動できるようにした。ガイド溝120は斜め下向きに傾斜する第1溝121と、第1溝121の上端に連続して上向きに延びる垂直の第2溝122とでくの字状に形成してあり、長円状に形成した傾動軸119は、常態において第2溝122で受け止められている。各刃支持体67は、ヘッドケース68の内底と刃支持体67の底壁との間に配置したリフトばね123で押し上げ付勢してある。肌伸張構造は、ヘッドケース68の内底に突設した固定カム124と、各刃支持体67に設けた受動カム125とで構成し、各刃支持体67が肌面の押し付け反力を受けて沈み込むとき、各刃支持体67を互いに離れる向きへ傾動させて、肌面を伸張することができる。
【0079】
図22に示す電気かみそりは、ヘッド部1に1個のメイン刃7と長毛切断刃9を設け、
図8の電気かみそりと同様に、ヘッド部1の全体を本体部2で上下移動可能に支持した。メイン刃7は、スリット刃からなる内刃65と網刃からなる外刃66とでレシプロ式の切断刃として構成してある。長毛切断刃9は、スリット刃からなる内刃73と外刃74で構成してあり、全体が刃支持体126で上下動可能に支持されてリフトばね72で押し上げ付勢してあり、その内刃73が、図示していない振動子の駆動軸で往復駆動される。メイン刃7の刃支持体67と長毛切断刃9の刃支持体126は、それぞれ刃支持体67・126の下部に固定した揺動軸88をヘッドケース68で前後傾動自在に支持して、捻じりコイルばねからなる復帰ばね71で基準位置へ向かって復帰付勢するようにした。この実施例における肌伸張構造は、
図11の肌伸張構造と同様に、固定カム85と受動カム86とで構成してある。この実施例においては、長毛切断刃9とメイン刃7とが協同して肌面を伸張させる。長毛切断刃9は、
図1で説明した長毛切断刃8に置き換えることができる。
【0080】
上記の実施例以外に、肌押しばね36、復帰ばね71、リフトばね72・95は、板ばね、引っ張りばね、ねじリコイルばね、ゴムやスポンジからなるばね、あるいは気体の圧縮性を利用したばねなどに代えることができる。
図1から
図7で説明した肌伸張構造は、ヘッド部1にメイン刃7が2個以上設けてある場合にも適用できる。トリマーユニット8は、その切刃部分がアーム基部38の後面で露出するように組むことができる。また、トリマーユニット8は、必ずしも肌押し体35に配置する必要はなく、肌伸張構造とは異なる位置に配置してあってもよい。
【0081】
第2発明ないし第4発明においては、ヘッド部1に、複数のメイン刃7か、少なくともひとつのメイン刃7と少なくともひとつの長毛切断刃8とのいずれかを配置するが、その具体的な配置形態、および組み合わせ形態は以下の通りである。1個のメイン刃7と1個の長毛切断刃8、1個のメイン刃7と2個の長毛切断刃8、2個のメイン刃7、2個のメイン刃7と1個の長毛切断刃8、3個のメイン刃、3個以上のメイン刃と1個以上の長毛切断刃8等である。