(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780697
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ガスタービン機関のための燃料ランス
(51)【国際特許分類】
F23R 3/28 20060101AFI20150827BHJP
F23R 3/36 20060101ALI20150827BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F23R3/28 B
F23R3/36
F02C7/22 A
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-224157(P2009-224157)
(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公開番号】特開2010-85087(P2010-85087A)
(43)【公開日】2010年4月15日
【審査請求日】2012年7月20日
(31)【優先権主張番号】12/241223
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】マドハヴァン・ナラシンハン・ポッヤパッカム
(72)【発明者】
【氏名】アトナン・エーログル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ジョン・ケルサル
【審査官】
佐藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−180799(JP,A)
【文献】
特開2006−090326(JP,A)
【文献】
国際公開第2008/057685(WO,A2)
【文献】
特開平07−317567(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/028693(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/113074(WO,A1)
【文献】
米国特許第05393220(US,A)
【文献】
米国特許第05799872(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23R 3/00−7/00
F02C 1/00−9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続燃焼器を備えるガスタービン機関であって、
高温ガスは、第1の燃焼器で生成され、かつ、続いて、燃料ランス(7)が燃料を高温ガスに案内するために配置されている第2の燃焼器(1)に案内されるガスタービン機関において、
前記燃料ランス(7)は、燃料を第2の燃焼器(1)内の高温ガス流に直接案内するよう前記第2の燃焼器(1)の壁(4)だけに取り囲まれており、
燃料が高温ガス流に案内される燃料ランスの領域は、らせん状の形状(12)を備え、
らせん状の形状(12)は、燃料ランス(7)の外側表面に、燃料ランス(7)の軸方向に伸びるらせん状の溝(13)を備え、
燃料を高温ガス流に案内するために、少なくとも1つの燃料出口(8)が、らせん状の溝(13)の表面に配置されており、
前記少なくとも1つの燃料出口は、径方向、軸方向及び溝(13)の方向に向いていて、径方向、軸方向及び円周方向の構成要素を有していることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン機関において、
複数の燃料出口が、らせん状の溝(13)の表面に配置され、かつ、前記ランスの軸方向及び/又は円周方向及び/又は径方向に離れて配置されていることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガスタービン機関において、
燃料が高温ガス流に案内される領域で、燃料ランス(7)の直径は、前記ランスの軸方向に、一定ではないことを特徴とするガスタービン機関。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のガスタービン機関において、
らせん状の形状(12)は、燃料ランス(7)の外側表面に、ランスの軸方向に伸びる突出部(10)によって形成されることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項5】
請求項1に記載のガスタービン機関において、
燃料ランス(7)は、前記燃料と異なる燃料を高温ガス流に案内するための複数の燃料通路を備えることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項6】
請求項5に記載のガスタービン機関において、
第1の燃料通路は、第1の燃料を、溝(13)の表面の燃料出口(8)に供給し、かつ、第2の燃料通路は、第2の燃料を、燃料ランスの表面(9)の燃料出口(8)に供給することを特徴とするガスタービン機関。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載のガスタービン機関において、
燃料ランスに、燃料ランスの先端(11)に燃料を供給するための中央通路を備えることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のガスタービン機関において、
燃料出口は、穴又はスロットによって形成されることを特徴とするガスタービン機関。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のガスタービン機関において、高水素濃度の燃料が、高温ガス流に案内されることを特徴とするガスタービン機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービン機関の燃焼器、特に、連続燃焼のガスタービンで、燃料をガス流に案内するための燃焼ランスに関する。
【背景技術】
【0002】
連続燃焼のガスタービンは、ガスタービンの効率を向上することが知られている。これは、タービン入り口温度を増加することによって達成される。連続燃焼ガスタビン機関では、燃料は、第1の燃焼器で燃焼され、かつ、高温燃焼ガスが第1のタービンを通過し、続いて、燃焼が案内されるSEV燃焼器として知られている第2の燃焼器に供給される。高温ガスの燃焼は、SEV燃焼器で達成され、かつ、燃焼ガスが、続いて、第2のタービンに供給される。
【0003】
しかしながら、ガスタービンの排出物規制は、より厳しくなっており、有害な排出物を減少する一方で、ガスタービンの効率を維持するための方法が必要とされている。排出物を改善するために、燃焼室で起きる処理が非常に重要であり、特に、燃料を酸化ガスと混合することが非常に重要である。燃焼室での状況は、特に、水素高濃度燃料、例えば、短い発火遅れ時間、より高い断熱火炎温度、及び、より高い火炎速度を持つMBTUを用いる場合に、特に重要である。これらの特性は、有害な排出物、例えば、NOxを生成する傾向を増加している。これらの高H
2含有の燃焼は、天然ガスのような従来の燃焼に比べて、より低い濃度であり、それゆえ、燃焼室により大きな流率を必要としている。そのような燃料の存在する燃焼器のデザインの装置は、高濃度排出物及び安全問題に直面している。存在する燃焼器のデザインは、
燃料を高温ガス流に案内するための燃料ランスを備えている。燃料は、径方向、又は、軸方向のいずれかに案内される。特に、水素高濃度燃料の使用、より伝統的な燃料の使用でも、これらのデザインに直面している課題は、3次元領域での均一でない混合と、より高濃度排出物になる時間である。燃料ジェットは、水素高濃度燃料が、混合領域の出口上流から離れたバーナー壁に届くように配置されている。それによって、バーナー壁に近くにある燃料残留物が望まれない自動発火(例えば、早期点火)を促進する。存在するバーナーデザインは、排出物又はフラッシュバックの安全について妥協することなしに、複数の燃料注入を許容していない。
【0004】
軸方向に、MBTUのような水素高濃度燃料を近づいてくる酸化流に注入することは、燃料ジェットの妨害効果(例えば、近づいてくるエアの停滞するジェット下流の停滞領域)のため、問題であり、燃料の特定の場所での残留時間を増加し、かつ、自動点火を促進している。せん断応力は、燃料噴出が、主要な流れに対して垂直であるため、最大となり、かつ、その結果起きる乱流が、フレームの上流への伝播を許容するのみ十分なのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これらの課題を解決するためにある。本発明は、燃料とガス流との混合を改善するガスタービン機関の燃焼器で、燃料をガス流に案内すること、及び、排出物を減少する一方、効率を向上するための燃料ランスを供給することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によると、これらの課題は、請求項1の特徴を備えた燃料ランスを有することによって解決される。本発明による燃料ランスのより好ましい実施例は、従属請求項で示されている。
【0007】
本発明によると、燃料がガス流に案内される燃料ランスの領域は、らせん状の構造を備えている。
【0008】
燃料がガス流に案内されるらせん状の構造は、燃料に渦を生じさせ、それによって、燃料とガス流との混合を促進している。
【0009】
本発明のさらに好ましい実施例では、らせん状の構造は、ランスのおおよそ軸方向に延在しているランスの外側表面にらせん状の溝を備えている。複数の燃料出口は、らせん状の表面に配置され、かつ、軸、及び/又は、径方向に離れて配置されている。複数のより小さい燃料ジェットは、軸、及び/又は、径方向にに離れて配置されると共に、燃料ジェットに円周構成要素を与えるらせん状の溝が、燃料をガス流と混合するのを促進している。燃料直径は、所望の運動量とジェット力を得るために適切に選択されている。
【0010】
本発明の上記および他の目的、特徴、及び、効果は、添付している図面と共に、好ましい実施例である次の記載からより明確になるだろう。
【0011】
本発明は、図面で示された実施例を参考にして記載され、次により詳細に図面を参考にして記載する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による燃料ランスを備えたガスタービン機関の燃焼器を示している。
【
図3】本発明の第1の実施例による燃料ランスを示している。
【
図4】本発明の第2の実施例による燃料ランスを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図2は、従来の技術のガスタービン機関の燃焼室1を図式的に示している。燃焼室は、連続燃焼するガスタービンの部分を形成するSEVタービンであり、これによって、燃料は、第1の燃焼器で燃焼し、かつ、高温燃焼ガスが第1のタービンを通過し、続いて、燃料が案内されるSEV燃焼器として知られている第2の燃焼きに供給される。高温燃焼ガスは、SEV燃焼器1に、渦生成器又は生成器2を通って、SEV燃焼器1に案内される。燃焼ガスは、SEV燃焼器でのさらなる燃焼のために十分な酸化ガスを含んでいる。SEV燃焼器1は、燃料を燃焼器1に案内するために、SEV燃料器1に突出している燃料ランス7を備えている。燃料は、ランスの穴から酸化流に、径方向(矢印3で示した)に注入され、かつ、渦生成器2によって生成された渦/複数の渦と相互に作用する。特に、MBTUのような水素濃度の高い燃料を使用する場合、燃料は、点線6(点線の前方は、燃料空気混合を示し、点線の
後方は、酸化ガスのみを示している。)で示したように、燃料フロントパネル5の上流の燃焼器の壁4に到達する。壁4近傍の燃料の存在は、自動点火によって促進される(例えば、早期点火)。
【0014】
図1は、ガスタービン機関の燃焼器1を図式的に示している。燃焼室は、連続燃焼するガスタービンの一部を形成するSEV燃焼器であり、この場合、燃料は第1の燃焼器で燃焼し、
かつ、高温燃焼ガスが、第1のタービンを通過し、続いて、燃料が案内されるSEV燃焼器1として知られている第2の燃焼器に供給される。酸化ガスが、渦生成器又は生成器2を通ってSEV燃焼器1に案内される。本発明による燃料ランスは、燃焼器に燃料を案内するために備えられている。燃料ランス7は、燃料を酸化ガスとより良く混合するために設計されている。本発明の燃料ランス7は、燃料が燃焼フロントパネル5の上流の
燃焼器の壁4に到達するのを妨げ、自動点火を回避するように、形成されもしている。点線6は、酸化ガスのみの領域と下流の燃料と酸化ガスの混合領域の間の境界をもう一度示している。
【0015】
図3は、本発明による燃料ランス7の1つの実施例を示している。燃料ランスは、燃料注入器出口8を備えている。酸化ガス流に所望の燃料供給を実現するために、本発明による燃料ランス7がらせん状、又は、渦巻き状の形状12が備えられている。らせん状、又は、渦巻き状の形状12は、燃料出口8が位置するランスの領域に配置されている。
図3の実施例では、らせん状の形状が燃料ランスの外側表面9上に溝13の形状で配置されている。少なくとも1つの燃料出口8は、溝上に配置されている。好ましくは、一連の燃料出口8は、溝上に配置され、かつ、軸方向に間隔を持って配置されている。燃料出口8は、円周方向に間隔を持っても配置されている。一連のより小さい燃料注入出口8は、より大きな燃料注入出口より良好に燃料を分配可能である。
らせん状の溝13の表面に配置されている燃料注入器出口8は、径方向及び/又は軸方向に向いている。らせん状の溝13の表面に配置されている燃料注入器出口8は、溝の方向にも向いている。それらは、燃料ランス7の中心軸に対して、軸方向、径方向、及び、円周方向/
接線方向の構成要素を備えている。らせん形状は、燃料と酸化流との円周方向の混合を改善している。この渦生成器2からの酸化ガスの渦流との混合は、優れた混合効果を達成している。燃料の散らばりは、燃料に与えられる渦によって、制御もされ、フラッシュバックの安全性を改善し、かつ、有害な廃棄物を削減している。
【0016】
らせん状の形状12は、ランスの周り全部にあってはいけないことを理解すべきである。
例えば、ランス7に対して、燃料又は酸化ガスに円周状又は
接線の構成要素を与えるために、ランス7の外側表面9の周りに十分に存在するらせん状の形状が備えることが可能である。
【0017】
図4は、燃料ランス7の外側表面上の突出部10によって与えられたらせん形状の他の実施例を示している。同様の構成は、
図3の構成の参照符号と同じ参照符号で示している。
【0018】
ランスの直径は、一定に保たなければならない。
図3及び4で示されるように、燃料注入器出口8は、ランス7の表面に、中心軸から異なる径方向の距離で備えられている。燃料注入出口14から、外側領域及び他の燃料出口の上流で注入された燃料は、中心線から最も離れた主要の酸化流に達する。しかしながら、より小さい半径領域、及び、さらに下流で、注入出口15から注入された燃焼は、流れのコアにより近づいている。この達成された効果は、燃料と酸化流との改善された混合に貢献もしている。この効果を達成するために、ランスは、
図3で示された段のある形状以外にも他の形状にすることが可能である。例えば、ランスは、ほぼ円錐形状にすることも可能である。らせん状の形状は、円錐の軸方向長さに沿って設けることも可能である。
【0019】
ランス7は、例えば、石油、天然ガス、合成ガス、又は、MBTUのような水素高濃度燃料の混合物を抽出することが可能な複数のランスであってもよい。この場合、燃料ランス7に、それぞれの燃料種類のための分離した内部通路を備えている。それぞれの燃料は、
図3を参照して、上記した位置で酸化ガス流に注入される。有益には、酸化ガス流との適切な混合を達成するために、それぞれにある燃料特性に応じて、燃料ランス7上の異なる位置で、燃料注入出口を用いて、異なる燃料が供給可能である。有益には、らせん状の形状又は溝13は、天然ガス又は水素高濃度燃料抽出器の出口が供給される領域に備えられる。石油は、好ましくは、ランスの先端の出口11を通じて案内される一方で、合成ガスは、好ましくは、燃料ランス7の出口表面9(すなわち、らせん形状の領域ではない)の燃料出口16を介して、案内される。
【0020】
燃焼器の設計のために、適切な傾斜を持つらせん状の形状が選択されている。らせん状の形状の位置は、例えば、この形状は、酸化ガスの渦流の方向を引き立たせる又は妨げるために、時計方向又は半時計方向に走っている。燃料ランスの先端に、酸化ガス又は燃料の再循環を、面取りされた先端を備えることによって妨げている。
【0021】
溝上の燃料注入器出口の直径及び数は、適切な燃焼器のデザインのために選択されもする。注入出口は、穴又はスロット形状である。
【0022】
ランスの冷却は、燃料自身によって提供される。燃料を供給する通路は、それゆえ、この効果を提供するために配置されている。
【0023】
燃料ランス7は、改良された燃料ランスとして提供される。この方法では、異なる燃料ランス7に、注入要求を変化するために、異なる注入出口形状を備えることも可能である。本発明による燃料ランス7は、燃料と空気の混合は、改良されたランスに必要とされる最も短時間の滞在時間で達成することを可能としている。
【0024】
前述の燃料ランスは、燃焼器に圧縮空気が案内される従来のガスタービンの燃料器で使用されることも可能である。
【0025】
本発明による前述の実施例の記載は、図面のみの目的のためであり、本発明の範囲を限定するように解釈すべきでない。
【0026】
特に好ましい実施例の観点で、当業者は、本発明の範囲から逸脱しない限り、形状及び詳細を変更及び改良可能である。それゆえ、本発明の開示は、限定されるべきでない。本発明の開示は、次の請求項で説明する発明の範囲を明確にするために、代替的に提供されている。
【符号の説明】
【0027】
1.燃焼器
2.渦生成器
3.矢印
4.燃焼器壁
5.燃焼フロントパネル
6.点線
7.燃料ランス
8.燃料注入器出口
9.外側表面
10.突出部
11.燃料ランス先端
12.らせん状の形状
13.溝
14.出口
15.燃料注入器出口
16.燃料出口