特許第5780729号(P5780729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780729
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ドライブ回路
(51)【国際特許分類】
   H02P 6/16 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   H02P6/02 371N
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-215907(P2010-215907)
(22)【出願日】2010年9月27日
(65)【公開番号】特開2012-75196(P2012-75196A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年9月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】300057230
【氏名又は名称】セミコンダクター・コンポーネンツ・インダストリーズ・リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆司
(72)【発明者】
【氏名】村田 勉
【審査官】 高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−206172(JP,A)
【文献】 特開2007−043895(JP,A)
【文献】 特開平06−153580(JP,A)
【文献】 特開2007−206018(JP,A)
【文献】 米国特許第05068582(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0012321(US,A1)
【文献】 特開2006−288056(JP,A)
【文献】 特開平08−037798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 6/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転状態を示す正弦波状の回転状態信号に基づいて、駆動制御信号を作成するドライブ回路であって、
前記回転状態信号に対しオフセット量加算されている加算信号について、最小値から基準値に向かう、1つの方向からの1回目の前記基準値のクロスを検出した際に、その時点で前記基準値から離れる方向前記オフセット量を前記回転状態信号に対し加算し、得られた加算信号について前記1つの方向の2度目の前記基準値のクロスを検出した際にはそのまま基準値を通過させ基準値を通過した加算信号について最大値から基準値に向かう、もう1つの方向からの1回目の前記基準値のクロスを検出した際に、その時点で前記基準値から離れる方向の前記オフセット量を前記回転状態信号に対し加算し、得られた加算信号について前記もう1つの方向の2度目の前記基準値のクロスを検出した際にはそのまま基準値を通過させるという処理を繰り返し、回転状態信号にオフセットを付加して加算信号を得、
得られた加算信号と、基準値との比較から、加算信号が基準値をクロスすることに応じ、その方向に応じて立ち上がり信号または立ち下がり信号を得るとともに、前記1回目の基準値のクロスの検出に応じて、その際に発生する立ち上がり信号または立ち下がり信号に対し遅れたタイミングで立ち下がり信号または立ち上がり信号を追加し、
得られた立ち上がり信号または立ち下がり信号を用いて、前記2度目の前記基準値のクロスの検出と、その次の前記基準値のクロスの検出との間で、前記回転状態信号に比べて、所定期間だけ減少された期間の駆動制御信号を作成することを特徴とするドライブ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のドライブ回路において、
前記加算信号と基準値のクロスの検出は、両者を比較するコンパレータの生出力を所定のクロックで取り込んだ取り込み信号の変化から立ち上がり信号および立ち下がり信号を生成して行うことを特徴とするドライブ回路。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドライブ回路において、
外部からの制御信号により、前記立ち上がり信号または立ち下がり信号の追加を禁止することを特徴とするドライブ回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転状態を示す正弦波状の回転状態信号に基づいて、駆動制御信号を作成するドライブ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やゲーム機器などに搭載されるバイブレーション機能において、振動素子の位置を検出するためにホール素子を用いた位置検出回路が用いられている。
【0003】
ロータをマグネットとし、ステータをコイルとした場合、ホール素子はロータの位置を検出し、ドライブ回路はホール素子の検出結果に基づいてコイルに電流を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−288056号公報
【特許文献2】特開平8−37798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、電気機器における消費電力はなるべく小さくしたいという要求がある。特に、バッテリ駆動の携帯機器などではその要求が大きい。ここで、背景技術に記載の振動素子を備えた振動モータにおいて、0度、180度近辺の電流は、モータ駆動にあまり寄与しない。そこで、モータ駆動電流の0度、180度近辺の電流をカットする通電方法が提案されている。例えば、0度、180度近辺の30度について通電をカットする通電方法は、150度通電と呼ばれている。
【0006】
このような150度通電を行うためには、そのための信号発生のための回路が必要となる。この回路もなるべく簡略化したいという要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、モータの回転状態を示す正弦波状の回転状態信号に基づいて、駆動制御信号を作成するドライブ回路であって、前記回転状態信号に対しオフセット量加算されている加算信号について、最小値から基準値に向かう、1つの方向からの1回目の前記基準値のクロスを検出した際に、その時点で前記基準値から離れる方向前記オフセット量を前記回転状態信号に対し加算し、得られた加算信号について前記1つの方向の2度目の前記基準値のクロスを検出した際にはそのまま基準値を通過させ基準値を通過した加算信号について最大値から基準値に向かう、もう1つの方向からの1回目の前記基準値のクロスを検出した際に、その時点で前記基準値から離れる方向の前記オフセット量を前記回転状態信号に対し加算し、得られた加算信号について前記もう1つの方向の2度目の前記基準値のクロスを検出した際にはそのまま基準値を通過させるという処理を繰り返し、回転状態信号にオフセットを付加して加算信号を得、得られた加算信号と、基準値との比較から、加算信号が基準値をクロスすることに応じ、その方向に応じて立ち上がり信号または立ち下がり信号を得るとともに、前記1回目の基準値のクロスの検出に応じて、その際に発生する立ち上がり信号または立ち下がり信号に対し遅れたタイミングで立ち下がり信号または立ち上がり信号を追加し、得られた立ち上がり信号または立ち下がり信号を用いて、前記2度目の前記基準値のクロスの検出と、その次の前記基準値のクロスの検出との間で、前記回転状態信号に比べて、所定期間だけ減少された期間の駆動制御信号を作成することを特徴とする。
【0008】
また、前記加算信号と基準値のクロスの検出は、両者を比較するコンパレータの生出力を所定のクロックで取り込んだ取り込み信号の変化から立ち上がり信号および立ち下がり信号を生成して行うことが好適である。
【0009】
また、外部からの制御信号により、前記立ち上がり信号または立ち下がり信号の追加を禁止することが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、比較的簡単な回路で、通電時間を減少した駆動制御信号を得ることができ、また波形が急峻な場合も確実に駆動制御信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】全体構成を示すブロック図である。
図2】出力回路の構成例を示す図である。
図3】加算信号の例を示す図である。
図4】出力制御回路の構成例を示す図である。
図5】出力制御回路の各部の信号波形を示す図である。
図6】取り込み回路の構成を示す図である。
図7】取り込み回路の各部の波形を含む各種信号の波形を示す図である。
図8】加算信号の傾きを大きな場合の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、全体構成を示す図であり、システムは、ドライバ100と、モータ200とから構成される。入力信号は、ドライバ100に入力され、ドライバ100が入力信号に応じた駆動電流をモータ200に供給する。これによって、モータ200の回転が入力信号に応じて制御される。
【0013】
ここで、ドライバ100は、コンパレータ10を有しており、モータ200に設けられたホール素子30からのロータ位置に応じた回転状態信号がオフセット制御回路32を介し、コンパレータ10の一端に供給される。すなわち、オフセット制御回路32は、回転状態信号に所定のオフセット値を加算し、上下方向に交互にシフトした加算信号を得る。そして、この加算信号がコンパレータ10の一端に供給される。コンパレータ10の他端には、基準値電圧が供給されており、コンパレータ10は加算信号が基準値に至ったことを検出する。
【0014】
コンパレータ10の出力は、出力制御回路12に供給される。出力制御回路12は、コンパレータ10の出力信号に応じて所定周波数の駆動波形(位相)を決定するとともに、駆動制御信号(OUT1,OUT2)がPWM駆動制御されることによって、駆動電流の振幅が決まる。そして、作成した駆動制御信号を出力回路14に供給する。
【0015】
出力回路14は、複数のトランジスタから構成され、これらのスイッチングによって電源からの電流を制御してモータ駆動電流を発生し、これをモータ200に供給する。
【0016】
図2には、出力回路14の一部とモータ200の1つのコイル22の構成を示す。このように、電源とアースの間に2つのトランジスタQ1,Q2の直列接続からなるアームと、2つのトランジスタQ3,Q4の直列接続からなるアームが設けられており、トランジスタQ1,Q2の中間点と、トランジスタQ3,Q4の中間点との間にコイル22が接続される。そして、トランジスタQ1,Q4をオン、トランジスタQ2,Q3をオフすることで、コイル22に一方向の電流を流し、トランジスタQ1,Q4をオフ、トランジスタQ2,Q3をオンすることで、コイル22に反対方向の電流を流し、コイル22を駆動する。
【0017】
モータ200は、コイル22とロータ26を有している。また、ロータ26には、永久磁石が設けられており、例えばN極とS極が対向する位置(互いに180度異なった位置)に配置されている。そして、コイル22からの磁界に応じて安定する位置が決定される。
【0018】
従って、コイルに交流電流を供給することで、その電流位相によりロータ26を移動させ、回転することができる。また、特定の電流位相のタイミングで、電流位相の変化を停止することで、その時の電流位相に応じた位置にロータを停止することができる。このようにして、モータ200の回転が制御される。
【0019】
モータ200には、ホール素子30が設けられており、ロータ26の永久磁石からの磁界に応じて、回転状態信号を発生する。上述のように、N,Sが1つずつの場合、ロータ26の1回転が1周期となる正弦波が回転状態信号として得られる。
【0020】
このホール素子30からの回転状態信号は、オフセット制御回路32に供給される。このオフセット制御回路32は、回転状態信号を所定のオフセット量だけずらし、2つの基準値のクロス(この例ではゼロクロス)間を例えば150度に設定するものである。
【0021】
ここで、図3には、ゼロクロス間を180度から120度に変更する例が示されている。回転状態信号は、0度で0ガウス、90度で+60ガウス、180度で0ガウス、270度で−60ガウスに相当する電圧のサイン波である。従って、回転状態信号を30ガウス相当の電圧だけゼロに近づけることで2つゼロクロス間が120度になる。そこで、−側において+30ガウス相当分加算した加算信号(回転状態信号が30ガウス分ゼロに近づけられた信号)が1回目にゼロに至った時(回転状態信号の位相−30度)に+30ガウスに代えて−30ガウスの加算(30ガウス分の減算)とする。これによって、60ガウス分加算信号が−方向にシフトする。この例の場合、−60ガウス分の加算は60度分のシフトに相当するため、回転状態信号における位相の+30度において、加算信号は−側からの2度目のゼロに至る。そして、この2回目のゼロの場合には、−30ガウス分の加算はそのままとして+側に移る。次に、+側からの1回目のゼロの時に、加算が+30ガウスに切り替えられる。このようにして、回転状態信号の位相330度(−30度)のときにオフセット量が+30ガウスから−30ガウスに切り替えられ、150度のときにオフセット量が−30ガウスから+30ガウスに切り替えられ、これを繰り返すことで、加算信号の2回目のゼロから、次のゼロの間で120度の期間の信号を得ることができる。なお、図3では、ゼロクロス間を120度とする例を示したが、加算するオフセット量を調整する(この場合には±15ガウス相当分とする)ことで、150度などの期間の信号が得られる。
【0022】
なお、コンパレータ10の他端には、ホール素子30のコモン電圧と同電位の電圧を基準として供給する構成としてもよい。このような構成にすることによって、ホール素子30とコンパレータ10とで用いられる基準値が等しくなり、コイル22への通電期間をより正確に設定することができる。
【0023】
図4には、出力制御回路12の構成例が示されており、図5には各部の信号波形が示されている。コンパレータ10の出力(コンパレータ生出力)は、回転状態信号を上述のようにして順次シフトした信号のゼロクロスを検出するものであり、この例は、図3と同様に、120度通電の例を示しており、コンパレータ生出力をフリップフロップで取り込んだ場合の取り込み出力は、回転状態信号の0〜30度がLレベル、30〜150度がHレベルになり、150〜180度がLレベル、180〜210度がHレベル、210〜330度がLレベル、330〜360度がHレベルの信号となる(図5(i))。
【0024】
このコンパレータ生出力は、取り込み回路50に入力される。この取り込み回路50の詳細構成は後述するが、基本的には1つのD型フリップフロップとして機能する。このため、ここの説明では、取り込み回路50をフリップフロップとして説明する。コンパレータ生出力は取り込み回路50のD入力端に供給される。この取り込み回路50のクロック入力端には、所定のクロックCLKが供給されており、取り込み回路50がコンパレータ10の出力を順次保持することになる。クロックCLKは、コンパレータ10の出力の変化に比べ大きな周波数を有しているため、取り込み回路50はコンパレータ10の出力を所定の期間だけ遅れてそのまま取り込むことになる。
【0025】
取り込み回路50の出力は、フリップフロップFF2のD入力端に供給されており、このフリップフロップFF2のクロック入力端にもクロックCLKが供給されている。従って、このフリップフロップFF2の出力は、取り込み回路50の出力に比べ、クロックCLKの1周期だけ遅れた信号となる。取り込み回路50の出力は反転されてアンドゲートAND1に入力され、フリップフロップFF2の出力はそのままアンドゲートAND1に入力される。従って、このアンドゲートAND1の出力は、コンパレータ10の出力が立ち下がった時に、クロックCLKの1周期分だけ立ち上がる信号となる。
【0026】
すなわち、図5(ii)立ち下がり検出信号に示すように、取り込み出力の立ち下がり時にクロックCLKの1周期だけ立ち上がる信号が、アンドゲートAND1の出力に得られる。
【0027】
また、アンドゲートAND2には、取り込み回路50の出力とフリップフロップFF2の反転出力が入力されている。従って、このアンドゲートAND2の出力には、図5(iii)立ち上がり検出信号に示すように、取り込み出力の立ち上がり時にクロックCLKの1周期だけ立ち上がる信号が得られる。
【0028】
なお、図5においては、立ち下がり検出信号(ii)、立ち上がり検出信号(iii)について、クロックCLKより短いパルスとして示してある。これは、立ち上がり及び立ち下がりの検出クロックとして、クロックCLKより周波数の高いものを用い、1クロック分のみを検出パルスとしているからであるが、全体動作としては、変わりはない。
【0029】
クロックCLKは、所定の分周された後、連続H/L検出部40に入力される。この連続H/L検出部40は、例えば、取り込み出力におけるHレベルが60度の期間連続したことでHレベル、Lレベルが60度の期間連続したときにLレベルになる。従って、この例では、回転状態信号の90度〜270度の期間がHレベル、その他の半分の期間がLレベルの信号が連続H/L検出部40の出力となる(図5(iv))。
【0030】
アンドゲートAND1の出力は、フリップフロップFF3のD入力端に供給され、アンドゲートAND2の出力は、フリップフロップFF4のD入力端に供給される。これらアンドゲートAND1,AND2のクロック入力端には、クロックCLKが供給されている。従って、これらフリップフロップFF3,FF4にアンドゲートAND1,AND2の出力が取り込まれる。フリップフロップFF3,FF4の出力は、アンドゲートAND3,AND4にそれぞれ入力される。アンドゲートAND3の他入力端には、連続H/L検出信号がそのまま入力され、アンドゲートAND4の他入力端には、連続H/L検出信号が反転して入力されている。従って、アンドゲートAND3の出力には、立ち下がり検出信号の中の回転状態信号の0度に対応するパルスが除去され、150度、210度のパルスのみが残る。また、アンドゲートAND4の出力では、立ち上がり検出信号の中の回転状態信号の180度に対応するパルスが除去され、30度、330度のパルスのみが残る。
【0031】
アンドゲートAND3の出力は、SRラッチ回路SR1のセット入力端に供給され、アンドゲートAND4の出力は、SRラッチ回路SR1のリセット入力端に供給される(図5(v))。従って、図5(vi)に示すように、回転状態信号の330度でHレベルになり、150度でLレベルになるオフセット制御信号がSRラッチSR1の出力に得られる。このSRラッチSR1の出力は、オフセット制御回路32に供給され、Hレベルの際に所定のオフセット値(30ガウス分)だけ回転状態信号に加算し、Lレベルの際に所定のオフセット値(30ガウス分)だけ回転状態信号から減算する切り替え制御に利用される。
【0032】
アンドゲートAND3,AND4の出力は、オアゲートOR1に入力される。オアゲートOR1の出力には、330度、30度、150度、210度の4つのパルスを有する両エッジ信号が得られる(図5(vii))。オフセット制御信号は、所定の遅延が施された後、フリップフロップFF5のD入力端に供給される。このフリップフロップFF5のクロック入力端には、オアゲートOR1からの両エッジ信号が供給されており、フリップフロップFF5の出力には回転状態信号の30度でHレベルになり、210度でLレベルなる信号が得られる(図5(viii))。
【0033】
このフリップフロップFF5の出力は、ノアゲートNOR1及びアンドゲートAND5に入力され、ノアゲートNOR1及びアンドゲートAND5の他入力端には、SRラッチSR1の出力が供給されている。そこで、ノアゲートNOR1の出力には、30〜150度の期間だけHレベルとなる駆動制御信号OUT1(図5(ix))、アンドゲートAND5の出力には、210〜330度の期間だけHレベルになる駆動制御信号OUT2(図5(x))が得られる。
【0034】
そこで、駆動制御信号OUT1,OUT2を出力回路14に供給することによって、図2におけるトランジスタQ1,Q4、及びトランジスタQ3,Q2のオンオフを制御することで、上述したコイル22の駆動電流制御が行われる。
【0035】
図1においては、コイル22に対向位置にホール素子30を配置したため、コイル22に同期した回転状態信号を得ることができるが、ホール素子30の取付位置は必ずしも限定されない。さらに、上述のように、回転状態信号に加減算するオフセット量を調整することで、150度通電なども容易に行うことができる。
【0036】
ここで、本実施形態の回転駆動制御では、回転状態信号のゼロクロスを確実に検出する必要がある。一方、上述したように取り込み回路50では、クロックCLKの立ち上がりにおいて、コンパレータ生出力を取り込んでいる。従って、クロックCLKの立ち上がりの間隔の間の変化はフリップフロップでは検出できない。
【0037】
例えば、図8の場合、コンパレータ10の生出力は、一旦Lレベルになり、その後オフセットの付加によってHレベルになり、次にまたLレベルになる。従って、所定のL期間、H期間を経た後連続したLレベルとなる。
【0038】
ところが、図8に示したように、コンパレータ10の生出力をフリップフロップで検出した場合で、コンパレータ生出力のLレベルの検出が比較的遅く検出した場合、オフセットの印加が遅くなり、オフセットを印加しても加算信号はあまり大きく0レベルを超えない。従って、コンパレータ生出力におけるHレベル期間が短くなり、Hレベルの間にクロックCLKが立ち上がらなかった場合に、Hレベルを検出できなくなり、図4の回路出力において、正しい出力が得られなくなる。
【0039】
そこで、本実施形態においては、取り込み回路50を図6に示す回路としている。すなわち、コンパレータ生出力は、フリップフロップFF11のD入力端に入力される。このフリップフロップFF11のクロック入力端には、クロックCLKが入力されており、これが上述した1つのフリップフロップで構成された場合の取り込み回路50に対応する。
【0040】
フリップフロップFF11のQ出力は、フリップフロップFF12のD入力端子に入力される。このフリップフロップFF12のクロック端子にはクロックCLKが入力されているため、フリップフロップFF1の出力が1クロック遅れてラッチされる。フリップフロップFF12のQ出力は、排他的論理和回路XOR11に入力され、この排他的論理和回路XOR11には、フリップフロップFF11の出力も入力されている。従って、排他的論理和回路XOR11の出力には、両入力の排他的論理和の出力が得られる。従って、フリップフロップFF11の出力が変化していた場合にのみ排他的論理和回路XOR11の出力がHレベルになる。
【0041】
排他的論理和回路XOR11の出力はフリップフロップFF13のD入力に供給される。このフリップフロップFF13のクロック端子にもクロックCLKが供給されており、排他的論理和回路XOR11の出力が1クロック遅れてラッチされる。
【0042】
そして、フリップフロップFF13の出力は、排他的論理和回路XOR12に入力される。この排他的論理和回路XOR12には、フリップフロップFF11の出力も入力されており、両入力信号の排他的論理和の結果が排他的論理和回路XOR12から出力される。すなわち、フリップフロップFF13の出力がLレベルであれば、フリップフロップFF11の出力がそのまま排他的論理和回路XOR12から出力され、フリップフロップFF13の出力がHレベルであれば、フリップフロップFF11の出力が反転されて排他的論理和回路XOR12から出力される。
【0043】
なお、フリップフロップFF13のクロック入力端には、クロックCLKがオアゲートOR11を介し、入力されている。このオアゲートOR11には、180度通電を行っている場合にHレベルとなる180度通電信号が供給されている。従って、180度通電時は、180度通電信号がHレベルとなっているため、フリップフロップFF13はリセット状態であり、オアゲートOR11の出力はLレベルに固定されている。そこで、180度通電の場合には、フリップフロップFF11の出力がそのまま排他的論理和回路XOR12から出力され、図6の回路は、取り込み回路50が1つのフリップフロップFF11のみの回路と同一となる。
【0044】
図7には、回転状態信号の波形の例と、この場合のコンパレータ10の生出力および図6の回路のA〜E点の波形が示されている。Aはフリップフロップ11の出力、BはフリップフロップFF12の出力、Cは排他的論理和回路XOR11の出力、DはフリップフロップFF13の出力、Eは排他的論理和回路XOR12の出力である。
【0045】
図7の左側のゼロクロスの場合、フリップフロップFF11の出力において、その変化がクロックCLKの1クロック分のパルスである。すなわち、Hレベルから1クロック分だけLレベルになり、Hレベルに復帰する(波形A)。フリップフロップFF12の出力は、フリップフロップFF11の出力に対し、1クロック分遅れたものになる(波形B)。排他的論理和回路XOR11の出力は、AとBの排他的論理和であり、両信号が異なる2クロックの間だけHレベルになる(波形C)。フリップフロップFF13の出力は、波形Cに対し1クロック遅れる。排他的論理和回路XOR12の出力は、波形Aと波形Dの排他的論理和であり、AがLレベルになった時点からDがLレベルなる時点までの3クロックの期間Lレベルとなる。このように、排他的論理和回路XOR12の出力は、フリップフロップFF11の出力が3クロック分に引き延ばされるだけである。
【0046】
一方、フリップフロップFF11の変化が2クロック以上続いた場合には、排他的論理和回路XOR12の出力にパルスが付加される。
【0047】
例えば、図7の2回目の上から下へのゼロクロスでは、フリップフロップFF11の出力は、HレベルからLレベルになった後、しばらくLレベルに維持される。フリップフロップ12の出力である波形Bは波形Aと比べ1クロック遅れるだけであり、排他的論理和回路XOR11の出力は、波形A,Bが異なる1クロック分だけHレベルになるだけである(波形C)。Dは、Cに対し1クロック遅れ、波形Aと波形Dの排他的論理和から、排他的論理和回路XOR12の出力は、Hレベルから、波形AのLレベルに変化に応じたLレベルになるが、1クロック後のDの1クロック分のHレベルで同じく1クロック分Hレベルとなった後Lレベルに戻る(波形E)。
【0048】
従って、図8のように、回転状態信号の傾きが急峻であって、オフセット後の逆方向の変化が小さいと、コンパレータ生出力の逆方向の変化を検出できず、フリップフロップFF11の出力が一旦変化した後そのまま固定されてしまう。図6の回路によれば、このような場合に、一旦逆極性に至ったことを示すパルスを付加することができる。従って、回転状態信号の傾きが急峻であっても、2回目のゼロクロスを確実に検出することができる。
【0049】
一方、図7からわかるように、変化後の期間がある程度長ければ、排他的論理和回路XOR12の出力であるEにおいては、フリップフロップFF11の出力に比べ、余分な1つのパルスが付加されることになる。
【0050】
しかし、連続H/L検出信号が変化しない範囲であれば、図4におけるフリップフロップSR1は同じレベルの信号をもう一度取り込むだけであり、その出力に変化はなく問題は生じない。そして、連続H/L検出信号は、回転状態信号の山または谷の部分(90度,270度)において変化し、ゼロクロス近辺では変化しないため、立ち上がり、立ち下がり検出信号が付加されても問題は生じない。
【0051】
いいかえれば、連続H/L検出回路40は、排他的論理和回路XOR12の出力が60度の期間連続したときに状態を変更する。従って、パルスが付加されるタイミングは排他的論理和回路XOR12の出力が落ち着いた後、すなわち立ち上がり、立ち下がり信号の出力が終了した後である。そこで、回転状態などが変化しても、連続H/L検出信号が変化するタイミングがゼロクロスの近辺となることはない。
【0052】
なお、上述のような制御は、回転が安定してから行うとよい。これによって、チャタリングの影響を防止し、また通電期間をほぼ所望の期間(例えば電気位相150度の期間)にできる。
【符号の説明】
【0053】
10 コンパレータ、12 出力制御回路、14 出力回路、22 コイル、26 ロータ、30 ホール素子、32 オフセット制御回路、40 連続H/L検出部、50 取り込み回路、100 ドライバ、200 モータ。
図1
図2
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図8