(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
装着部材の装着面に形成された、環状で底部から開口に向かってストレート形状のシール溝内に装着され、前記装着部材の装着面と当接部材の当接面とを対向させた後、前記シール溝の底部から流体を導入することで前記当接面に押し付けられ、これにより前記装着部材と前記当接部材との間を封止する環状シール材であって、
前記環状シール材は、前記ストレート形状のシール溝内に装着された際その断面において、
前記シール溝内の開口側寄りに位置するよう配設された胴部と、
前記胴部から連続して延出され、前記装着面よりも当接面側に膨出してなる膨出部と、
前記シール溝の底部側に位置するよう配設され、前記シール溝の径内側面および径外側面に沿うように前記胴部から連続してそれぞれ延出された第1リップ部および第2リップ部と、
を少なくとも備えた本体部を有し、
前記本体部は、
前記胴部の径外周側と径内周側が、前記ストレート形状のシール溝の径外側面と径内側面に合わせてストレート状に形成されるとともに、前記ストレート状に形成された径外周側と径内周側の側面に、前記径外周側と径内周側にそれぞれ突設された凸部が形成され、
さらに前記第1リップ部および第2リップ部は、
前記胴部と連続された側を先端、前記先端とは逆側を後端とした際、前記先端から後端にかけて、略同肉厚となるように構成され、前記当接面と当接される膨出部の端面から前記第1リップ部の後端までの高さと、前記当接面と当接される膨出部の端面から前記第2リップ部の後端までの高さとが、同高さであることを特徴とする環状シール材。
前記はみ出し防止用バックアップリングが配設された隅角部分とは逆側の隅角部分に、はみ出し防止用面取り部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の環状シール材。
【背景技術】
【0002】
従来より処理釜を用いて、例えば薫蒸処理などが行われている。このような処理釜は、略円筒状の収容部と、この収容部の両端を密封するために設けられた一方と他方の蓋体と、を備えており、例えば蓋体側にシール溝が形成され、このシール溝内に環状シール材を装着し、蓋体と収容部とを対向させて環状シール材を収容部と当接させることで、環状シール材が蓋体と収容部との間を封止するようになっている。
【0003】
ところで封止に用いられる環状シール材100は、
図13に示したように、その断面形状が略U字型であって、膨出部102と、膨出部102から連続的に延出された第1リップ部104および第2リップ部106と、を備える本体部108から構成され、第1リップ部104と第2リップ部106との間で凹部114が形成されたものであって、環状シール材100の幅が、装着されるシール溝の幅と略同程度の大きさに設定されたものである。
【0004】
この環状シール材100を、
図14に示したように例えば処理釜200の蓋体220に設けられたシール溝230内に装着する際には、まず環状シール材100の第1リップ部104と第2リップ部106側が、シール溝230の底部232側に位置し、開口240側に膨出部102が位置するように装着され、膨出部102は開口240よりも若干外側に膨出するように装着される。
【0005】
なお環状シール材100がシール溝230に装着された時点では、シール溝230の径内側面236と環状シール材100の径内周側110との間、およびシール溝230の径外側面238と環状シール材100の径外周側112との間が封止されている。
【0006】
次いで、この状態で蓋体220と収容部210とを対向させ、蓋体220に形成されたシール溝230の底部232側の流体導入孔234から流体300をシール溝230内に導入する。
【0007】
すると環状シール材100の凹部114がこの流体300を受け、環状シール材100が対向する収容部210側に押圧され、膨出部102が収容部210に当接されて、膨出部102と収容部210との間が封止されることとなる。
【0008】
この3か所を封止することで、収容部210と蓋体220との間が環状シール材100で完全に封止された状態とすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、このように収容部210と蓋体220との間を環状シール材100で封止する際、シール溝230の底部232側から導入される流体300の圧力を上げて行くと、環状シール材100は、
図15(a)に示したようにシール溝230の底部232側から導入された流体300の圧力により収容部210側に強く押され、特に膨出部102全体が収容部210の当接面212に押し付けられて変形されることとなる。
【0010】
このとき、膨出部102の隅角部分116,118は、蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にはみ出してしまう場合がある。
そして、はみ出しが生じた状態で収容部210と蓋体220との間が封止された後、
図15(b)に示したように収容部210の内部に炭酸ガスなどの流体302が導入されて、収容部210の内方から外方に向かって圧力が生ずると、今後は膨出部102の径内周側110の隅角部分116が径外周側112に向かって押圧され、径外周側112の隅角部分118は蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にさらにはみ出しを生ずるようになる。
【0011】
このように膨出部102の隅角部分118のみが蓋体220の装着面222と収容部210の当接面212との間にはみ出してしまうと、環状シール材100の姿勢がシール溝230内で傾いてしまう。
【0012】
特に
図15(b)に示した状態のように、環状シール材100がシール溝230の底部232から導入される流体300による圧力と、収容部210の内部から生ずる流体302による圧力との両方の圧力を受ける場合、環状シール材100全体がこのはみ出しを生じている方向(
図15(b)では左下の方向)に引っ張られて、環状シール材100の径内周側110とシール溝230の径内側面236との間におけるシール性が悪くなり、この環状シール材100の径内周側110とシール溝230の径内側面236との間から、シール溝230の底部232側から導入された流体300が漏れ出してしまう場合があった。
【0013】
このような流体300の漏れ出しは、所望のシール性能を得られない原因にもなるため、特に重大な問題である。
また、環状シール材100のはみ出しが生じた部分には、局部的に大きな負荷がかかっているため、製品寿命を短命化させてしまう要因でもあり、また収容部210と蓋体220との間で擦れているため、パーティクルが発生したり千切れたりする場合もあり、これらの問題解決が求められているのが現状である。
【0014】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであって、シール溝の底部側から導入された流体が、シール溝から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することのできる環状シール材を提供することを目的とする。
【0015】
さらに本発明は、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出すことがなく、これによりシール溝内で傾きを生ずることがなく、パーティクルの発生や千切れを抑え、装着部材と当接部材との間を確実に封止することのできる環状シール材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、前述したような従来技術における問題点を解決するために発明されたものであって、
本発明の環状シール材は、
装着部材の装着面に形成された
、環状
で底部から開口に向かってストレート形状のシール溝内に装着され、前記装着部材の装着面と当接部材の当接面とを対向させた後、前記シール溝の底部から流体を導入することで前記当接面に押し付けられ、これにより前記装着部材と前記当接部材との間を封止する環状シール材であって、
前記環状シール材は、前記
ストレート形状のシール溝内に装着された際その断面において、
前記シール溝の開口側に位置するよう配設されるとともに、その前記装着面よりも当接面側に膨出してなる膨出部と、
前記シール溝の底部側に位置するよう配設され、前記シール溝の径内側面および径外側面に沿うように前記膨出部から連続してそれぞれ延出された第1リップ部および第2リップ部と、
を少なくとも備えた本体部を有し、
前記本体部は、
前記膨出部の径外周側と径内周側が、前記ストレート形状のシール溝の径外側面と径内側面に合わせてストレート状に形成されるとともに、前記ストレート状に形成された径外周側と径内周側の側面に、前記径外周側と径内周側にそれぞれ突設された凸部が形成され、
さらに前記第1リップ部および第2リップ部は、
線対称形状であることを特徴とする。
【0017】
このように凸部が形成されていれば、シール溝内で環状シール材が傾きを生じても、この凸部がシール溝の径内側面と径外側面とにしっかりと当接するため、シール溝の底部側から導入された流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0018】
また、本発明の環状シール材は、
前記本体部は、
前記膨出部の径内周側および/または径外周側に位置する隅角部分に、はみ出し防止用面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0019】
このようなはみ出し防止用面取り部が設けられた状態は、従来はみ出しが生じていた隅角部分が無くなった状態であるため、結果として膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出すことがなく、シール溝内で環状シール材が傾きを生ずることがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0020】
またはみ出しが生じないということは、環状シール材に局部的に大きな負荷が加わることが無いため、製品寿命の短命化を防止でき、さらにパーティクルの発生や千切れを防止することにもなる。
【0021】
また、本発明の環状シール材は、
前記本体部は、
前記膨出部の径内周側および/または径外周側に位置する隅角部分に、前記本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリングが配設されていることを特徴とする。
【0022】
このようにはみ出し防止用バックアップリングが配設されていれば、本体部よりもはみ出し防止用バックアップリングが硬質であるため、膨出部の隅角部分が変形しにくくなり装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことを防止できる。また、これによりシール溝内で環状シール材が傾いてしまうことも防止できる。
【0023】
したがって環状シール材の製品寿命の短命化を防止でき、さらにパーティクルの発生や千切れを防止できるとともに、シール溝の底部側から導入された流体が、装着部材と当接部材との間から漏れ出してしまうことも防止できる。
【0024】
また、本発明の環状シール材は、
前記はみ出し防止用バックアップリングが配設された隅角部分とは逆側の隅角部分に、はみ出し防止用面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0025】
このように隅角部分の一方側にはみ出し防止用バックアップリングを設け、他方側にはみ出し防止用面取り部が形成されていれば、はみ出し防止用バックアップリングのみが設けられていた場合よりも、さらに膨出部の隅角部分が変形しにくくなり装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことを防止でき、これによりシール溝内で環状シール材が傾いてしまうことをさらに防止できる。
【0026】
また、本発明の環状シール材は、
前記第1リップ部および第2リップ部が、
前記膨出部と連続された側を先端、この逆側を後端とした際、
前記先端から後端に向かうにしたがって、前記膨出部の幅よりも外方に拡開するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
このように第1リップ部と第2リップ部が構成されていれば、シール溝内に環状シール材を装着した際、両リップ部がシール溝の径内側面と径外側面とに対し常に突っ張った状態であるため、シール溝の底部側からシール溝内に導入される流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出してしまうことを確実に防止することができる。
【0028】
また、本発明の環状シール材は、
前記第1リップ部および第2リップ部が、
その先端から後端にかけて、略同肉厚となるように構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように第1リップ部と第2リップ部が略同肉厚であれば、シール溝の底部側から流体がシール溝内に導入された際に、両リップ部がシール溝の内側に向かってめくれてしまうことがない。
【0030】
したがって、シール溝の底部側からシール溝内に導入される流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出してしまうことを確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の環状シール材によれば、環状シール材の
胴部に凸部を設けたので、シール溝内に環状シール材を装着した際、シール溝の底部側から導入された流体がシール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0032】
さらに本発明の環状シール材によれば、
本体部の開口側に位置する隅角部にはみ出し防止用面取り部を設けたので、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0033】
また本発明の環状シール材によれば、
本体部の開口側に位置する隅角部に本体部よりも硬質な材料からなるはみ出し防止用バックアップリングを配設したので、膨出部の隅角部分が装着部材と当接部材との間からはみ出してしまうことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【0034】
さらに本発明の環状シール材によれば、上記の構成に加えて、第1リップ部と第2リップ部が
胴部の幅よりも外方に拡開するように構成されているので、さらにシール溝の底部側から導入された流体が、シール溝の径内側面と環状シール材の径内周側およびシール溝の径外側面と環状シール材の径外周側の間から漏れ出すことがなく、装着部材と当接部材との間を確実に封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態における環状シール材の断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態における環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【
図3】
図3は、流体により膨出部が変形した本発明の第1の実施形態における環状シール材の説明図であって、
図3(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、
図3(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の第2の実施形態における環状シール材の断面図である。
【
図5】
図5は、本発明の第2の実施形態における環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【
図6】
図6は、流体により膨出部が変形した本発明の第2の実施形態における環状シール材の説明図であって、
図6(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、
図6(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3の実施形態における環状シール材の断面図である。
【
図8】
図8は、分割体から成るはみ出し防止用バックアップリングの概略図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3の実施形態における環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【
図10】
図10は、流体により膨出部が変形した本発明の第3の実施形態における環状シール材の説明図であって、
図10(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、
図10(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の環状シール材が装着されるシール溝の他の形態を示した説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の第2と第3の実施形態とを組み合わせた環状シール材の断面図である。
【
図14】
図14は、従来の環状シール材をシール溝に装着した状況を説明するための断面図である。
【
図15】
図15は、流体により膨出部が変形した従来の環状シール材の説明図であって、
図15(a)はシール溝から流体を導入した状態の環状シール材の説明図、
図15(b)はシール溝から流体を導入するとともに、収容部の内方から外方に向かって流体が生じた状態の環状シール材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について、図面に基づいてより詳細に説明する。
本発明の環状シール材は、例えば薫蒸処理などに用いられる処理釜の収容部と蓋体との間を封止するために用いられるものである。
【0037】
<第1の実施形態>
まず本発明の第1の実施形態における環状シール材10aは、
図1に示したように、その断面形状が略Y字型であって、当接面と当接される膨出部12
と、この膨出部12から連続して延出された胴部13と、径内周側20と径外周側22にそれぞれ形成され、
胴部13から連続的に延出された第1リップ部14および第2リップ部16と
、を備えた本体部18を有し、第1リップ部14と第2リップ部16との間で凹部24が形成されている。
【0038】
そして特に特徴的な構成として本体部18の外周には、後述するシール溝60内に環状シール材10aが装着された際において、シール溝60の径内側面66および/または径外側面68と当接される箇所に、凸部26,28が形成されている。
【0039】
この凸部26,28は、
図1において径内周側20と径外周側22にそれぞれ1つずつ設けられた状態であるが、これに限定されることはなく、複数であっても、また径内周側20と径外周側22とで数が異なっていたり、位置が径内周側20と径外周側22とで上下方向に多少ずれていても良いものである。
【0040】
このような凸部26,28を含めた
胴部13の幅T2は、
胴部13の幅T1の1.15〜1.30倍程度であることが好ましい。
また第1リップ部14と第2リップ部16とは、
胴部13と連続された側を先端、この逆側を後端とした際、先端から後端に向かうにしたがって、
胴部13の幅よりも外方に拡開するように構成されている。
【0041】
このような第1リップ部14と第2リップ部16との拡開幅T3は、
胴部13の幅T1の1.30〜1.40倍程度であることが好ましい。
なお第1リップ部14および第2リップ部16は、その先端から後端にかけて、肉厚T4が略同じとなるように設定されている。
【0042】
このような環状シール材10aの材質は、通常のシール材に用いられるもので有れば特に限定されないが、例えばニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などの各種合成ゴム材料を用いることができる。
【0043】
中でもシール性能と形状保持性の両方に優れるシリコーンゴムまたはエチレンプロピレンゴム(EPDM)を用いることが好ましい。
そして、このようにして構成された本発明の環状シール材10aを、
図2に示したように、処理釜80の蓋体50に設けられたシール溝60内に装着した際には、まず環状シール材10aの第1リップ部14と第2リップ部16側が、シール溝60の底部62側に位置し、膨出部12が開口63側に位置するように装着される。
【0044】
シール溝60の幅T5は、
胴部13の幅T1の0.90〜1.05倍程度であることが好ましい。このような幅T5に設定することで、シール溝60内への環状シール材10aの装着を容易にし、またシール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20との間、およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22との間におけるシール性能を確保することができる。
【0045】
そして
図3(a)に示したように、蓋体50に形成されたシール溝60の底部62側の流体導入孔64より流体70をシール溝60内に導入すると、環状シール材10aの凹部24がこの流体70を受け、環状シール材10aが対向する収容部40側に移動し膨出部12が収容部40の当接面42に当接され、膨出部12と収容部40との間が封止されることとなる。
【0046】
ここでシール溝60内に導入される流体70としては特に限定されるものではないが、気体が好ましく、中でも窒素ガスは取り扱いが容易であるため好適である。
次いで
図3(b)に示したように、収容部40の内部に炭酸ガスなどの流体72が導入されて、収容部40の内方から外方に向かって圧力が生ずると、今後は膨出部12の径内周側20の隅角部分30が径外周側22に押しつぶされるとともに、径外周側22の隅角部分32が蓋体50の装着面52と収容部40の当接面42との隙間の方に向かって押圧されることとなる。
【0047】
これにより、通常であれば環状シール材10a全体がこの隅角部分32の方向(
図3(b)では左下の方向)に引っ張られて、径内周側20のシール力が径外周側22のシール力よりも減少してしまう状態が生ずる。
【0048】
しかしながら本実施形態の環状シール材10aでは、径内周側20と径外周側22に凸部26,28が設けられているため、シール溝60内で環状シール材10aが傾きを生じても、この凸部26,28がシール溝60の径内側面66と径外側面68とにしっかりと当接し、シール溝60の底部62側から導入された流体70が、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことがなく、蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができるようになっている。
【0049】
加えて、第1リップ部14と第2リップ部16とが
胴部13の幅T1よりも外方に拡開するように構成されているため、シール溝60内に環状シール材10aを装着した際、この第1リップ部14と第2リップ部16とがシール溝60の径内側面66と径外側面68とにしっかりと当接することとなる。
【0050】
そしてシール溝60の底部62側より流体70をシール溝60内に導入しても、この第1リップ部14と第2リップ部16とが流体70を食い止め、流体70がシール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことを確実に防止できるようになっている。
【0051】
なお、第1リップ部14と第2リップ部16とは、その先端から後端にかけて略同肉厚T4となるように設定されているため、後端がこの流体70によってめくれを生じることもなく、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から流体70が漏れ出すおそれもないものである。
【0052】
第1の実施形態における環状シール材10aによれば、上記したような構成を有するため、シール溝60の底部62側から導入された流体70が、シール溝60の径内側面66と環状シール材10aの径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10aの径外周側22の間から漏れ出すことがなく、蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができる。
【0053】
<第2の実施形態>
次に本発明の第2の実施形態における環状シール材10bについて
図4〜
図6を用いて説明する。
【0054】
図4〜
図6に示した環状シール材10bは、基本的には、
図1〜
図3に示した第1の実施形態における環状シール材10aと同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0055】
図4に示した環状シール材10bは、径外周側22の隅角部分32に、はみ出し防止用面取り部90が形成されている点で第1の実施形態の環状シール材10aと異なっている。
【0056】
このような環状シール材10bは、シール溝60に装着されると
図5に示したように径外周側22の隅角部分32が、蓋体50と収容部40との隙間から離れた状態となる。
このため、
図6(a)に示したように、シール溝60の底部62側より流体70を導入しても、環状シール材10bの隅角部分32が蓋体50と収容部40との間から、はみ出しを生じないようになっている。
【0057】
そして
図6(b)に示したように、収容部40の内部に炭酸ガスなどの流体72が導入されて、収容部40の内方から外方に向かって圧力が生じた場合にも、膨出部12の径内周側20の隅角部分30が径外周側22に押しつぶされ、径外周側22の隅角部分32は蓋体50と収容部40との間にはみ出しを生じないため、その結果、シール溝60内で環状シール材10bが傾きを生ずることがなく、パーティクルの発生や千切れを防止することができる。
【0058】
なお
図4〜
図6では、はみ出し防止用面取り部90の面取り形状は45度のC面取りであるが、例えばR面取りであっても良く、要は従来であればはみ出しが生じていた隅角部分32が無くなるようにこの部分が面取りされていれば、如何なる形状であっても良く、特に形状は限定されないものである。
【0059】
また、はみ出し防止用面取り部90を設ける範囲を必要以上に大きくしすぎると、膨出部12の当接面42と当接する箇所が小さくなりすぎて膨出部12と当接面42との間のシール性能が落ちてしまうため、所望のシール性能がどの程度であるかを考慮し、はみ出し防止用面取り部90をどの程度の大きさで設定するか決めると良い。
【0060】
したがって、第2の実施形態における環状シール材10bは、第1の実施形態の環状シール材10aよりもさらに確実に蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができる。
【0061】
<第3の実施形態>
次に本発明の第3の実施形態における環状シール材10cについて
図7〜
図10を用いて説明する。
【0062】
図7〜
図10に示した環状シール材10cは、基本的には、
図4〜
図6に示した第2の実施形態における環状シール材10bと同じ構成であるので、同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0063】
図7に示した環状シール材10cは、径外周側22の隅角部分32に、はみ出し防止用面取り部90を形成する替わりに、ここにはみ出し防止用バックアップリング92を配設した点で第2の実施形態における環状シール材10bと異なっている。
【0064】
このはみ出し防止用バックアップリング92は、本体部18よりも硬質な材料であれば如何なる材質でも構わないが、例えば高密度ポリエステル、ポリアセタールを用いることが好ましい。
【0065】
なお、はみ出し防止用バックアップリング92は、本体部18とともにシール溝60に装着された際、抜け落ちが生じないように、本体部18に対して引っ掛かることのできる形態を有することが好ましい。
【0066】
このような形態として特に限定されるものではないが、例えば
図7〜
図10に示したような逆テーパー形状としたり、パズルのように相互に嵌め合わせ可能な形状(図示せず)としたりすることができ、加工のし易さを考慮して決定すれば良いものである。
【0067】
また、はみ出し防止用バックアップリング92は環状でなくても良く、例えば
図8に示したように環状シール材10cの外周長さに合わせて形成された複数の直線状の分割体98とし、この複数の分割体98を互いに重ね合わせてシール溝60内へ装着するようにしても良いものである。
【0068】
このような環状シール材10cはシール溝60に装着されると、
図9に示したように隅角部分32が蓋体50と収容部40との隙間を塞ぐように配置されることになる。
このため、
図10(a)に示したように、シール溝60の底部62側より流体70を導入しても、蓋体50と収容部40との隙間を塞ぐように、変形が生じ難いはみ出し防止用バックアップリング92が位置するため、環状シール材10cの一部が、確実に蓋体50と収容部40との隙間にはみ出しを生じないようになっている。
【0069】
そして
図10(b)に示したように、収容部40の内部に炭酸ガスなどの流体72が導入されて、収容部40の内方から外方に向かって圧力が生じた場合にも、径外周側22の隅角部分32を塞ぐようにはみ出し防止用バックアップリング92が位置するため、環状シール材10cの一部が、蓋体50と収容部40との間にはみ出しを生ずることがなく、これによりシール溝60内で環状シール材10cが傾きを生じないようになっている。
【0070】
したがって、第3の実施形態における環状シール材10cは、第2の実施形態の環状シール材10bと同様、第1の実施形態の環状シール材10aよりもさらに確実に蓋体50と収容部40との間を封止することができる。
【0071】
上記したように第1の実施形態〜第3の実施形態における環状シール材10は、上記したような形態を有することで、シール溝60の底部62側から導入された流体70がシール溝60の径内側面66と環状シール材10の径内周側20およびシール溝60の径外側面68と環状シール材10の径外周側22の間から漏れ出すことがなく、蓋体50と収容部40との間を確実に封止することができるものであるが、この環状シール材10が装着されるシール溝60の形態については、上記説明に用いたものに限定されるものではないものである。
【0072】
例えば実施形態1〜3ではストレート形状のシール溝60を想定して図示されているが、他にも
図11に示したように、シール溝60の径内側面66と径外側面68に切り欠き部94,96を設け、この切り欠き部94,96よりも当接面42側に環状シール材10の凸部26,28が位置するように構成しても良いものである。
【0073】
なおこの切り欠き部94,96は、処理釜80を開けて流体70,72による負荷が無くなった際に、シール溝60から環状シール材10が落下しないようにするためのものである。
【0074】
また、実施形態1〜3では、環状シール材10の径外周側22の隅角部分32に、はみ出し防止用面取り部90を形成したり、はみ出し防止用バックアップリング92を配設したりしたが、径内周側20であっても両側20,22であっても良く、要は環状シール材10が圧力を受けて変形する方向に合わせてこれらの位置を設定すれば良いものである。
【0075】
さらに実施例2と実施例3とを組み合わせ、
図12に示したような隅角部分30にはみ出し防止用面取り部90を設け、逆側の隅角部分32にはみ出し防止用バックアップリング92を設けてなる環状シール材10dとしても良く、本発明の環状シール材10は、本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能なものである。