特許第5780760号(P5780760)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780760
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ブリッジにおけるGMRセンサの整合
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/09 20060101AFI20150827BHJP
【FI】
   G01R33/06 R
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-530006(P2010-530006)
(86)(22)【出願日】2008年9月8日
(65)【公表番号】特表2011-501153(P2011-501153A)
(43)【公表日】2011年1月6日
(86)【国際出願番号】US2008075556
(87)【国際公開番号】WO2009055151
(87)【国際公開日】20090430
【審査請求日】2011年4月15日
(31)【優先権主張番号】11/876,048
(32)【優先日】2007年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105602
【氏名又は名称】アレグロ・マイクロシステムズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100107696
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 文俊
(72)【発明者】
【氏名】ドゥーグ,マイケル・シー
(72)【発明者】
【氏名】テイラー,ウィリアム・ピー
【審査官】 荒井 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−031019(JP,A)
【文献】 特開平03−296616(JP,A)
【文献】 実開昭62−158306(JP,U)
【文献】 特開2004−117367(JP,A)
【文献】 実開平03−032451(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/00−33/26
G01D 5/00− 5/252
G01D 5/39− 5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブリッジ回路を形成するために電気的に接続された磁気抵抗(MR)素子と、
1つまたは複数のダミーMR素子と、を含み、各当該ダミーMR素子は、前記ブリッジ回路の前記MR素子の選択された1つの近くに配置され、
前記MR素子の前記選択された1つは、隣接素子として前記ブリッジ回路の前記MR素子のもう1つと前記ダミーMR素子とを有し、各前記隣接素子は、前記MR素子の前記選択された1つの対向する両側に配置され、構造に関して類似し、
前記隣接素子は、前記MR素子の選択された1つに対して類似するように配置され、前記ダミーMR素子は電圧源に結合され、センサの動作中、各前記隣接素子は同様の大きさの電流を通す、
センサ。
【請求項2】
前記ブリッジ回路は、全ブリッジ回路を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記隣接素子は、遮蔽されたMR素子である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記ブリッジ回路の前記MR素子はすべて、能動MR素子である、請求項1に記載のセンサ。
【請求項5】
前記ブリッジ回路は、半ブリッジ回路を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項6】
前記ブリッジ回路の出力端子に接続される増幅器と、
電流が供給されて通る導体と、をさらに含み、
前記増幅器は、出力として前記供給電流に比例する出力電圧を提供する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項7】
第2のブリッジ回路を形成するように電気的に接続された磁気抵抗(MR)素子であって、前記ブリッジ回路の前記MR素子から所定の角度だけオフセットする前記第2のブリッジ回路の前記MR素子と、
第2のダミーMR素子と、をさらに含み、
前記第2のブリッジ回路の前記MR素子の1つは、能動MR素子であり、隣接素子として前記第2のブリッジ回路の別の前記MR素子と前記第2のダミーMR素子とを有し、各前記隣接素子は、前記第2のブリッジ回路の前記能動MR素子の対向する両側に配置され、構造に関して類似し、
前記第2のブリッジ回路の前記能動MR素子の前記隣接素子は、前記能動MR素子に対して類似するように配置され、前記第2のダミーMR素子は電圧源に結合され、センサの動作中、前記能動MR素子の各前記隣接素子は同様の大きさの電流を通す、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項8】
前記ブリッジ回路および前記第2のブリッジ回路は、半ブリッジ回路である、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記所定の角度は、前記ブリッジ回路によって生成される出力信号が所定の電気的位相シフトを示すように選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
前記MR素子および前記ダミーMR素子は、巨大磁気抵抗(GMR)素子を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項11】
前記MR素子および前記1つまたは複数のダミーMR素子は、磁気トンネル接合(MTJ)素子を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項12】
前記MR素子および前記1つまたは複数のダミーMR素子は、トンネル磁気抵抗(TMR)素子を含む、請求項1に記載のセンサ。
【請求項13】
第1の検出デバイスと、
第2の検出デバイスと、を含む角度測定デバイスであって、
前記第1および第2の検出デバイスの各々は、
各ブリッジ回路を形成するように電気的に接続された磁気抵抗(MR)素子と、
1つまたは複数の各ダミーMR素子と、を含み、各当該ダミーMR素子は、前記MR素子の選択された1つの近くに配置され、
前記MR素子の各選択された1つは、隣接素子として前記各ブリッジ回路の前記MR素子のもう1つと前記各ダミーMR素子とを有し、各前記隣接素子は、前記MR素子の前記選択された1つの対向する両側に配置され、構造に関して類似し、
前記MR素子の各選択された1つの前記隣接素子は、前記MR素子の各選択された1つに対して類似するように配置され、前記1つまたは複数のダミーMR素子は各電圧源に結合され、センサの動作中、前記MR素子の各選択された1つの前記隣接素子は同様の大きさの各電流を通し、
前記第2の検出デバイスの前記MR素子と前記1つまたは複数のダミーMR素子は、前記第1の検出デバイスの前記MR素子と前記1つまたは複数のダミーMR素子に対して所定のオフセット角度で提供される、
角度測定デバイス。
【請求項14】
前記第1および第2の検出デバイスによって生成される出力信号から角度を決定するために、前記第1および第2の検出デバイスに結合されるデバイスをさらに含む、請求項13に記載の角度測定デバイス。
【請求項15】
前記第1および第2の検出デバイスの前記MR素子は、GMR素子を含む、請求項13に記載の角度測定デバイス。
【請求項16】
前記第1および第2の検出デバイスの前記MR素子は、MTJ素子を含む、請求項13に記載の角度測定デバイス。
【請求項17】
前記第1および第2の検出デバイスの前記MR素子は、TMR素子を含む、請求項13に記載の角度測定デバイス。
【請求項18】
ブリッジ回路を形成するように電気的に接続された磁気抵抗(MR)素子と、
ダミーMR素子と、を含む検出デバイスであって、
前記ブリッジ回路の前記MR素子の1つは、能動MR素子であり、隣接素子として前記ブリッジ回路の別の前記MR素子と前記ダミーMR素子とを有し、前記隣接素子は、前記能動MR素子の対向する両側に配置され、構造に関して類似し、
記隣接素子は、前記能動MR素子について類似するように配置され、前記ダミーMR素子は電圧源に結合され、センサの動作中、各前記隣接素子は同様の大きさの電流を通す、
検出デバイス。
【請求項19】
磁場を検出する単一のMR素子と、
一対のダミーMR素子と、を含み、前記対のダミーMR素子は前記単一のMR素子の対抗する両側に配置され、構造に関して類似し、
前記一対のダミーMR素子は、前記単一のMR素子に対して類似するように配置され、前記ダミーMR素子は電圧源に結合され、センサの動作中、前記一対のダミーMR素子はそれぞれ同様の大きさの電流を通す、
センサデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は一般に、磁場センサに関し、さらに詳細には、外部磁場を検出するために磁気抵抗(MR)素子を使用する磁場センサの設計に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ集積回路(IC)設計では、高精度の回路性能を達成するために、整合デバイス、すなわち、同じ電気特性を有するように設計されたデバイスを使用することが重要である。このため、重大な設計課題は、IC上に構築される個々のデバイスの変動を含む。不整合のもとは、幾何学的形状の変動、質の悪いレイアウトならびに製造プロセスおよび動作環境の不均一性を含む。製造プロセスの不均一性は、例えば、マスク位置合わせのずれおよび不均一なエッチングによって導入される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ある種のデバイスは、隣接したデバイスに対して非常に敏感である。隣接の相互作用がまた、デバイス不整合に大きく寄与することがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一般に、一態様では、本発明は、1つまたは複数の磁気抵抗(MR)素子と1つまたは複数のダミーMR素子とを含むセンサに向けられる。それぞれのそのようなダミーMR素子は、1つまたは複数のMR素子の選択された1つの近くに配置される。
【0005】
本発明の実施形態は、次の特徴の1つまたは複数を含んでもよい。1つまたは複数のMR素子および1つまたは複数のダミーMR素子は、巨大磁気抵抗(GMR)素子、磁気トンネル接合(MTJ)素子、トンネル磁気抵抗(TMR)素子または異方性磁気抵抗(AMR)素子であってもよい。1つまたは複数のMR素子は、ブリッジ回路を形成するように電気的に接続されたMR素子であってもよく、それぞれのダミーMR素子は、ブリッジ回路のMR素子の選択された1つの近くに配置されてもよい。MR素子の選択された1つは、隣接MR素子としてブリッジ回路のMR素子のもう1つとダミーMR素子とを有してもよく、ここで隣接素子は、MR素子の選択された1つの対向する両側に配置され、MR素子の選択された1つに対して構造および位置に関して対称的である。ブリッジ回路は、全ブリッジ回路または半ブリッジ回路であってもよい。隣接素子は、遮蔽されたMR素子であってもよい。ダミーMR素子は、センサ動作中に、隣接素子が同様の大きさの電流を通すように、電圧源に接続されてもよい。ブリッジ回路のMR素子はすべて、能動MR素子であってもよい。センサはさらに、ブリッジ回路の出力に接続される増幅器と電流が貫通して印加される導体とを含んでもよく、ここで増幅器は、出力として印加電流に比例する出力電圧を提供する。
【0006】
別の態様では、本発明は、角度測定デバイスに向けられる。角度測定デバイスは、第1の検出デバイスと第2の検出デバイスとを含む。第1および第2の検出デバイスの各々は、ブリッジ回路を形成するように電気的に接続されたMR素子と1つまたは複数のダミーMR素子とを含む。それぞれのそのようなダミーMR素子は、MR素子の選択された1つの近くに配置される。第2の検出デバイスのMR素子は、第1の検出デバイスのMR素子に対して所定の角度で提供される。
【0007】
さらに別の態様では、本発明は、ブリッジ回路を形成するように電気的に接続されたMR素子とダミーMR素子とを含む検出デバイスに向けられる。ブリッジ回路のMR素子の1つは、能動MR素子であり、隣接素子としてブリッジ回路のMR素子のもう1つとダミーMR素子とを有する。隣接素子は、能動MR素子の対向する両側に配置され、能動MR素子に対して構造および位置に関して対称的である。
【0008】
本発明の特定の実施は、次の利点の1つまたは複数を提供してもよい。ダミーMR素子は、ブリッジ回路レイアウトに対称性を提供することができ、さもなければそのような対称性が欠けていることもあり得る。能動MR素子に近いMR素子の対称性は、最隣接の誘導磁場効果に起因する変動を低減する働きをする。加えて、ダミーMR素子は、ブリッジMR素子が均一にパターン形成できるように、ブリッジ回路レイアウトの最も外側のエッジに提供されてもよい。
【0009】
本発明の先の特徴、ならびに本発明それ自体は、図面の次の詳細な説明からより完全に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】全ブリッジ(4つのMR素子の)および2つのダミーMR素子を含む、例示の磁気抵抗(MR)検出デバイスを示す図である。
図2】全ブリッジおよび2つの通電ダミーMR素子を含む、例示のMR検出デバイスを示す図である。
図3】2つのダミーMR素子、およびブリッジMR素子がすべて検出素子である全ブリッジを含む、例示のMR検出デバイスを示す図である。
図4】半ブリッジ(2つのMR素子の)および2つのダミーMR素子を含む、MR検出デバイス例を示す図である。
図5図2のMR検出デバイスを用いる、例示の電流センサを示す図である。
図6A図1〜4で示されるそれらに類似するMR検出デバイスを用いる、例示の角度センサを示す図である。
図6B図1〜4で示されるそれらに類似するMR検出デバイスを用いる、例示の角度センサを示す図である。
図7図6Aで示される角度センサを利用する、例示の角度測定デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
抵抗器不整合は、ブリッジ内の抵抗器に同じ値をもつことを要求する抵抗ブリッジ回路の設計で重大な問題となることがある。これは特に、磁気抵抗(MR)センサで使用されるブリッジ回路の場合に当てはまる。MRセンサは、MR効果、すなわち外部磁場の存在下でその抵抗を変える導電材料の特性を使用する磁場センサである。本明細書ではMR素子と呼ばれる、センサのブリッジ回路のMR型抵抗器または「磁気抵抗器」は、隣接MR素子の浮遊磁場効果に非常に敏感である。隣接相互作用は、MR素子の電気的挙動の変動をもたらす。全ての変動は、どんなに小さくても、MRセンサの感度および全体的な精度を制限することがあり得る。MRセンサの回路はまた、他の種類の回路と同様に、デバイス製造中に特定のプロセスによって導入される不均一性によっても影響を受ける。プロセスに関連する不均一性はしばしば、回路レイアウトの外縁で生じ、それ故に外側の素子に影響を及ぼす。例えば、外側の素子は、外側の素子ではないそれらの素子よりも、回路レイアウトの外縁におけるより高い濃度の腐食液に起因してより速い速度でエッチングされ得る(従ってより高い抵抗を有する)。
【0012】
従って、センサ回路構成におけるレイアウトに依存する感度および/またはプロセスに関連する不均一性の影響を軽減するために、本発明は、ブリッジ回路の選択されたMR素子の近くに配置された「ダミーMR素子」の使用を特色とする。ダミーMR素子は、非機能素子、すなわちブリッジ回路の一部分ではないまたはブリッジ回路の動作に必要とされない素子である。ダミーMR素子は、以下で述べられるように、各種の場所(ブリッジレイアウト内の)でおよび各種の理由のために使用されてもよい。
【0013】
本明細書で参照されるMR素子は、異方性磁気抵抗(AMR)デバイス;ピン止めされないサンドイッチ、反強磁性多層およびスピンバルブを含む巨大磁気抵抗(GMR)デバイス;磁気トンネル接合(MTJ、またスピン依存トンネルすなわち「SDT」としても周知である)デバイス;トンネル磁気抵抗(TMR)デバイスを含むが、それらには限定されない、任意の種類のMRデバイスから製造されてもよい。
【0014】
図1を参照すると、全(または「ホイートストン」)ブリッジ回路20を形成するように接続されたMR素子12、14、16、18を含むMR検出デバイス10が示される。ラベル「VCC」および「GND」はそれぞれ、電圧源および接地端子を表示する。ブリッジ回路の一方の側では、MR素子12および14が、VCCとGNDとの間で直列に接続される。ブリッジ回路のもう一方の側では、MR素子16および18が、VCCとGNDとの間で直列に接続される。第1の出力(Vout1)22は、ノード「a」においてMR素子12、14間に提供される。第2の出力(Vout2)24は、ノード「b」においてMR素子16、18間に提供される。
【0015】
図1で示される実施形態では、4つのMR素子のうちの2つ、MR素子14およびMR素子16は、当該素子を印加磁場から分離し、それらが基準素子として働くことを可能にする磁気シールドによって覆われる。MR素子14、16はそれぞれ、磁気シールド26、28によって覆われる。磁気シールドを備えるMR素子14、16はそれぞれ、遮蔽されたMR素子30、32として示される。残りの2つのMR素子、MR素子12および18は、磁場にさらされ、そのため能動(または検出)素子として動作する。磁気遮蔽は、MR素子をNiFeなどの高透磁率材料で囲むことによって達成されてもよい。磁気遮蔽は、多層遮蔽であってもよい。
【0016】
動作中に、差動出力電圧が、ブリッジ回路出力22、24間で利用できる。さらに詳細には、電力がブリッジ回路に供給された状態で、磁場の存在は、ブリッジMR素子に抵抗の変化を引き起こし、抵抗の変化は、ブリッジ出力22、24間に対応する電圧の変化を生成する。MR素子は、それぞれの素子の感受性軸(矢印によって概略的に表示される)が、他の素子の感受性軸と平行であるように向きを合わせられる。出力22、24間の電圧は、感受性軸の方向における磁場が増加するときに増加する。
【0017】
検出デバイス10はまた、少なくとも1つのダミーMR素子も含む。図1に示される実施形態では、ダミーMR素子34およびダミーMR素子36として示される、2つのダミー素子がある。磁気シールド37は、ダミーMR素子36に提供され、それ故に磁気シールド37およびダミーMR素子36は、遮蔽されたダミーMR素子38を形成する。この特定の実施形態では、ダミーMR素子の各々は、図示されるように、両端でGNDに接続される。
【0018】
検出デバイス10は、概略図によって例示されるものの、この図(ならびに後で述べられる他の図)におけるMR素子の配置は、ダミーMR素子がどのように使用されるかをできるだけ単純化して伝えるために実際のレイアウト(平面図から)の配置を提示することを意図されている。それ故に、検出デバイス10のMRおよびダミーMR素子は、順序34、30、12、32、18、38で水平に(左から右へ)配置された、対応するMRパターンを表すために示される。ダミーMR素子34は、遮蔽されたMR素子30の左側に配置され、遮蔽されたダミーMR素子38は、MR素子18の右側に配置される。それぞれのダミーMR素子は、外側のブリッジMR素子が類似素子の側に配置されるように、そのブリッジMR素子の隣に置かれる。ダミーMR素子34の、寸法、形状、構成および向きによって定義される構造、ならびに配置(遮蔽されたMR素子30に対して)は、MR素子12に類似するように選択される。同様に、遮蔽されたダミーMR素子38の構造および配置(MR素子18に対して)は、遮蔽されたMR素子32に類似するように選択される。それ故に、遮蔽されたMR素子32は、遮蔽されたダミーMR素子38の類似MR素子として参照されてもよく、MR素子12は、ダミーMR素子34の類似MR素子として参照されてもよい。それらは、同じ材料から製造され、同じ薄膜プロセスステップで処理されるので、ダミー素子およびブリッジ回路内の対応する類似MR素子は、非常に類似する特性(電気的、磁気的、熱的および機械的特性などの、各種の特性に関して)を示すことになる。上で述べられたように、ブリッジおよびダミーMR素子の構造は、GMR、MTJ、TMRおよびAMRなどの、任意の種類のMR技術を利用してもよい。
【0019】
「類似」構造は、もし対応するブリッジ素子が遮蔽されるならば、磁気遮蔽を含むことができる。それ故に、図1で示される例では、ブリッジMR素子32は、遮蔽されたMR素子であるので、類似ダミーMR素子38はまた、遮蔽されたMR素子として提供される。ダミーMR素子の追加により、外側のMR素子30および18はそれぞれ現在、内側のMR素子12および32が挙動する同じ方法でその隣接素子に対称性を「見る」。結果として、ブリッジ回路の4つのMR素子のより最適な整合が、達成される。
【0020】
少なくとも、対称性を達成するために必要に応じて(能動ブリッジ素子が2つの隣接ブリッジ素子をすでにもたないとき)ダミーMR素子を使用して、それぞれの「能動」ブリッジ素子が対称的に平衡になることは、望ましい。隣接素子相互作用に敏感であるのは、能動MR素子である。不均一性がブリッジ素子の代わりにダミーMR素子(ブリッジ回路の一部分ではない)に強い影響を及ぼすので、ブリッジ回路レイアウトの外縁で生じる、プロセス処理に関連する不均一性が特に関係しているときには、遮蔽された(またはさもなければ非検出)MR素子に近いダミーMR素子の使用はまた、有利でもある。しかしながら、ただ1つのダミーMR素子の使用は、もし可能であれば、設計の簡略化およびセンサの寸法の減少を可能にする。
【0021】
ダミーMR素子の構造および配置は、外側のブリッジMR素子の対向する側に置かれる類似ブリッジMR素子、すなわち、外側のブリッジMR素子に最も近い隣接ブリッジMR素子の配置に(できるだけ密接に)整合するように選択される。結果として生じるレイアウトでは、外側のブリッジMR素子は、両側で同じ環境(磁気効果)を見ることになる。ブリッジMR素子に対するダミーMR素子の配置は、改善された抵抗器整合のためのMRブリッジ回路において外側のMR素子に対称性および均一性の特性を提供する働きをする。
【0022】
実際のレイアウトでは、ブリッジ回路のMR素子、特にGMRおよびMJT素子は、水平および/または垂直軸に沿って、他のMR素子の1つまたは複数と整列させられる傾向があることは、理解されよう。MR素子はまた、近似的に半円の、交互配置のまたはある他のパターンで配置されてもよい。
【0023】
代替実施形態では、ダミーMR素子は、図2で示されるように、一端で電圧源に接続されてもよい。図2を参照すると、検出デバイス40は、図1で示されるのと同じ全ブリッジ回路20を含む。しかしながら、図2で例示される実施形態では、ダミーMR素子34、36は、各々がその対応する類似ブリッジMR素子と同様の大きさの電流を通すことができる導電ダミーMR素子42、44によってそれぞれ置き換えられる。図1におけるダミーMR素子36に類似するダミーMR素子44は、磁気シールド(磁気シールド46として示される)によって覆われる。磁気シールド46を備えるダミーMR素子44は、遮蔽されたダミーMR素子48として示される。ダミーMR素子42によって導電される電流の大きさは、類似ブリッジMR素子12によって導電される電流の大きさと同様であり、遮蔽されたダミーMR素子48によって導電される電流の大きさは、類似の遮蔽されたブリッジMR素子32によって導電される電流の大きさと同様である。ダミーMR素子42の一端は、端子50において電圧源(VCC/2)に結合される。ダミーMR素子42の他端は、GNDに接続される。同様に、遮蔽されたダミーMR素子48の一端は、端子52においてVCC/2に結合され、他端は、GNDに接続される。この種の構成は、ダミーMR素子およびその対応する類似MRブリッジ素子がまた、同様の熱プロフィール(熱対称のために)も有することを保証する。
【0024】
図1〜2で示されるブリッジ構成では、2つの能動MR素子12および18は、ブリッジ回路の対向する側にあり、類似の応答を有する−それらは両方とも、値が増加するまたは値が減少する。代替構成では、2つの能動MR素子は、ブリッジの同じ側にあり(すなわち、直列に接続されている)、反対方向に変化する抵抗を有してもよい。
【0025】
遮蔽されたデバイスは、磁束集中器として働くことができるので、ある設計では遮蔽されないデバイスだけを使用することが望ましいこともある。図1および2の検出デバイスの4つのブリッジMR素子の2つは、遮蔽されたデバイスとして示されるけれども、本明細書で述べられるようなダミーMR素子を備える検出デバイスは、どんな遮蔽された素子も含む必要がない。例えば、2つの遮蔽されたブリッジMR素子はそれぞれ、外部磁場に応答しないある種の遮蔽されないMR素子、例えば、発明者William P.TaylorおよびMichael C.Doogueにより2004年10月12日に出願され、従属出願の譲受人、Allegro Microsystems、Inc.に譲渡された「Resistor Having a Predetermined Temperature Coefficient(所定の温度係数を有する抵抗器)」という名称の米国特許出願第10/962889号で述べられる種類の構造によって置き換えられてもよい。そのような素子はなお、ブリッジ回路における参照素子として働くことになる。ダミーMR素子の1つはまた、そのような方法で製造される必要もあることになることが留意されるべきである。他の構成では、ブリッジ回路を形成するMR素子はすべて、能動素子であってもよい。
【0026】
図3は、MR素子62、64、66、68として示されるブリッジMR素子がすべて能動素子である検出デバイス60を例示する。MR素子62、64、66、68は、第1のブリッジ出力72および第2のブリッジ出力74を有する全ブリッジ回路70を形成するように接続される。ブリッジMR素子がすべてアクティブであるので、通電ダミーMR素子76、78として示されるダミーMR素子は、遮蔽されず、能動ブリッジ素子のように製造される。ブリッジ素子がすべて能動素子であるこの種のブリッジ回路構成では、ブリッジ素子は、MR素子62および66の抵抗が減少する間にMR素子64および68の抵抗が増加する(検出されるべき外部磁場の増加とともに)ように、磁気的に向きを合わせられる。異なる向きを持つ能動ブリッジMR素子を構成するために任意の技術が、使用されてもよい。一例は、「Bridge Circuit Magnetic Field Sensor Having Spin Valve Magnetoresistive Elements Formed on Common Substrate(共通基板上に形成されたスピンバルブ磁気抵抗素子を有するブリッジ回路磁場センサ)」という名称のDovekその他への米国特許第5561368号で述べられる。
【0027】
さらに別の代替実施形態では、および図4を次に参照すると、ブリッジ回路は、半ブリッジ回路として実施されてもよい。半ブリッジ回路はまた、抵抗器(または電圧)除算回路としても周知である。図4は、半ブリッジ回路82を含む検出デバイス80を示す。検出デバイス80はまた、磁気シールド86を有するダミーMR素子84(遮蔽されたダミーMR素子88)およびダミーMR素子90も含む。半ブリッジ回路82は、2つのブリッジMR素子、磁気シールド94を有するブリッジMR素子92(遮蔽されたMR素子96)およびブリッジMR素子98を含む。遮蔽されたMR素子96およびMR素子98は、VCCとGNDとの間で直列に接続され、遮蔽されたMR素子96がVCCに接続され、MR素子98がGNDに接続される。シングルエンドの出力電圧は、ブリッジ出力Vout99において提供される。ダミーMR素子88、90はそれぞれ、VCC/2およびGNDに接続される。別法として、ダミーMR素子88、90の各々は、両端でGNDに接続されてもよい(図1で示される全ブリッジ実施のダミーMR素子34、38のように)。検出デバイス80は、遮蔽されたMR素子を含むように示されるけれども、ブリッジ回路の全ブリッジ実現を参照して先に論じられたように、それは、磁気的に遮蔽されたMR素子なしで実施されてもよいことが理解されよう。すなわち、基準ブリッジ素子は、遮蔽されない基準ブリッジ素子として構成されてもよい。類似ダミーMR素子は、同様に構成されてもよい。また先にも述べられたように、ブリッジ回路は、両方のダミーMR素子を含む必要はない。それ故に、図4の半ブリッジ実施形態では、ダミーMR素子90は、省略されてもよい。
【0028】
磁場検出は、制御および測定の目的−例えば、近接検出、線形および回転位置検出、電流検出および角度位置検出のために利用される。それ故に、その例が上の図1〜4で例示され、上の図1〜4を参照して述べられる、少なくとも1つのダミー素子を備えるMR検出デバイスは、数例を挙げると、電流センサまたは角度センサなどの、各種の種類のMRセンサ応用で使用されてもよい。図5は、例示の電流センサを示す。図6A〜6Bは、角度センサの異なる例を示す。
【0029】
図5を参照すると、電流センサ100は、図2で示されるものに類似するまたは同様の全ブリッジ構成に基づくMR検出デバイスを含む。図5の全ブリッジ構成では、能動ブリッジMR素子12、18の各々は、類似構造によって対称的に平衡を保たれている。遮蔽されたダミーMR素子48および遮蔽されたブリッジMR素子32は、能動ブリッジMR素子18の対向する両側に配置される。遮蔽されたブリッジMR素子30および遮蔽されたダミーMR素子101は、能動ブリッジMR素子12の対向する両側に配置される。MR検出デバイスのブリッジ出力、ブリッジ出力22および24は、増幅器102に結合される。電流センサ100はまた、伝導経路104も含む。測定されるべき電流は、矢印106によって表示される方向で伝導経路に印加されることになる。動作中に、伝導経路104を貫流する印加電流は、能動ブリッジMR素子12および18によって検出される磁場を発生する。検出磁場は、ブリッジ出力22、24間の比例電圧に変換される。ブリッジ出力22は、増幅器102の負入力に接続される。もう一方のブリッジ出力24は、増幅器102の正入力に接続される。増幅器の出力は、電流センサ電圧出力(Vout)108として提供され、また抵抗器110を通じてGNDに接続される。電流は、Voutで利用できる電圧および抵抗器110から決定できる。例示される設計は、簡単な、開ループ電流センサのそれであるが、他の電流センサ設計(例えば、他の種類の開ループまたは閉ループ設計)がまた、考えられる。
【0030】
図6Aを参照すると、角度センサ120は、互いにオフセット角90°で位置決めされた2つの検出デバイス(半ブリッジとして示されるブリッジを備える)122および124を含む。それぞれの検出デバイスは、検出デバイス122、124内でそれぞれ抵抗器126a、126bとして示され、VCCに接続される固定値抵抗器、および検出デバイス122、124内でそれぞれMR素子128a、128bとして示され、GNDにもまた接続される能動MR素子を含む。それぞれの検出デバイス内で、固定値抵抗器は、ハーフブリッジ回路を形成するように能動MR素子に接続される。それぞれの検出デバイス内でMR素子の両側に配置されるのは、VCCにおよびGNDに接続されるダミーMR素子である。検出デバイス122内のダミーMR素子は、ダミーMR素子130aおよび132aとして示される。検出デバイス124内のダミーMR素子は、ダミーMR素子130bおよび132bとして示される。この実施では、それぞれの検出デバイス内のダミーMR素子は、類似素子である。ブリッジ出力は、ブリッジ出力134a(検出デバイス122のための)およびブリッジ出力134b(検出デバイス124のための)として示される。
【0031】
図6Bでは、角度センサ140は、互いにオフセット角90度で位置決めされた2つの検出デバイス(再び、半ブリッジとして示されるブリッジを備える)142および144を含む。それぞれの検出デバイス内で、ブリッジ抵抗器は両方とも、MR素子であり、1つはアクティブで、1つは遮蔽されている。検出デバイス142は、VCCにおよび能動MR素子148aに接続された、遮蔽されたMR素子146aを含み、能動MR素子148aはまた、GNDにも接続される。検出デバイス142はまた、単一の遮蔽されたダミーMR素子150aも含む。検出デバイス144は、VCCにおよび能動MR素子148bに接続された、遮蔽されたMR素子146bを含み、能動MR素子148bはまた、GNDにも接続される。検出デバイス144は、単一の遮蔽されたダミーMR素子150bを含む。それぞれの検出デバイス内で、能動MR素子および遮蔽されたMR素子は、ハーフブリッジ回路を形成するように接続される。それぞれの検出デバイス内で、遮蔽されたダミーMR素子は、それぞれの能動MR素子の一方の側に配置されて、能動MR素子の反対側の遮蔽されたブリッジ素子と平衡を保つ。検出デバイス142、144の出力はそれぞれ、出力152a、152bとして示される。
【0032】
これらの両方の構成(図6Aおよび6Bの)では、ブリッジ出力Vout1およびVout2における出力信号は、90°の電気的位相シフトを示すことになる。他の角度のオフセットおよび位相シフトが選択されてもよいことは、理解されよう。また、2つの半ブリッジが示されるけれども、角度センサは、代わりに2つの全ブリッジで実現されてもよい。
【0033】
一例示の角度位置検出応用では、角度センサは、静止しており、永久磁石が、角度センサの近くの回転軸(ローター)に取り付けられる。磁石は、角度センサの平面内にあり、回転磁石/ローター組立て体とともに回転する磁場を生成する。従って、供給電圧がブリッジに印加されるとき、永久磁石に対するセンサの素子の空間位置に起因して、1つのブリッジ出力電圧は、正弦関数であってもよく、もう一方のブリッジ出力電圧は、余弦関数であってもよい。
【0034】
図7は、角度値を決定するために角度センサの出力を利用する角度測定デバイス160を示す。角度測定デバイス160は、角度センサ、例えば、図6Aからの角度センサ120(図示されるように)または図6Bからの角度センサ140、およびセンサ信号調整ユニット162を含む。信号調整ユニット162は、角度計算を行う。それは、角度センサ120からの2つの出力信号を1つのデジタル出力信号に組み合わせる。信号調整ユニット162は、代わりにアナログ出力を提供するように設計されてもよいけれど、デジタル出力を提供する。センサのブリッジ出力134a、134bに提供される出力信号は、標本化され、次いでアナログデジタル変換器(ADC)164によってデジタル領域に変換される。プロセッサ(またはマイクロコントローラ)166は、ADC出力168a、168bとして示される、センサ出力信号のデジタル表現を受け取り、それらから角度値を決定する。各種の周知のアルゴリズム、例えば、CORDICアルゴリズムが、角度計算を行うために使用されてもよい。クロックおよび制御信号は、クロック発生および制御回路169によってADC164およびプロセッサ166に提供される。いったん角度が決定されると、それは、外部コントローラまたはユーザー(図示されず)によってアクセス可能な出力170(信号調整ユニット162の)においてデジタル角度値として表される。
【0035】
センサならびに増幅および信号調整などの関連する電子回路は、別個の集積回路チップ内に詰め込まれてもよい。別法として、センサおよび信号処理電子回路の両方を同じチップ上に組み込むデバイスが、製造されてもよい。
【0036】
例示される実施形態は、ブリッジ回路を備えるセンサを描くけれども、ダミーMR素子の使用は、磁場検出のために単一MR素子(ブリッジ回路の代わりに)を使用するように実施されるセンサに同等に応用できることが理解されよう。例えば、プロセスに関連するまたは他の理由のためにそのような実施で、単一MR素子のそれぞれの側に1つが配置される(能動ブリッジMR素子128aまたは128bに対して図6Aで示されるのと同様に)、一対の類似ダミーMR素子を含むことが、望ましいこともある。
【0037】
本明細書で挙げられたすべての参考文献は、これによって全体として参照により本明細書に組み込まれる。
本発明の好ましい実施形態を述べたが、それらの概念を組み込む他の実施形態が使用されてもよいことは、当業者には今では明らかになるであろう。従って、これらの実施形態は、開示された実施形態に限定されるべきではなく、むしろ添付の特許請求の範囲の精神および範囲によってのみ限定されるべきであると感じられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7