(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780774
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】ロッド状部材を支持体に対して締結するための締結機構
(51)【国際特許分類】
F16B 7/14 20060101AFI20150827BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F16B7/14 E
F16B35/00 B
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-32210(P2011-32210)
(22)【出願日】2011年2月17日
(65)【公開番号】特開2012-172695(P2012-172695A)
(43)【公開日】2012年9月10日
【審査請求日】2014年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】511043389
【氏名又は名称】東京テックウェイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和資
【審査官】
岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】
英国特許出願公開第00751364(GB,A)
【文献】
実開平04−048565(JP,U)
【文献】
特開平09−190155(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 7/14
F16B 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
U字状ボルトと該U字状ボルトの2つのネジ部に各々螺合するナットとを用いて、ロッド状部材を支持体に対して締結するための締結機構であって、
前記支持体には、前記U字状ボルトを挿通させるための貫通孔対が設けられており、
前記U字状ボルトを前記貫通孔対に挿通させた状態において、前記U字状ボルトのブリッジ部と前記支持体の表面とで囲まれた領域としてロッド状部材の挿通が可能な挿通口が形成され得るようになっており、且つ、
前記ロッド状部材の前記支持体に対する締結は、前記ロッド状部材の一端側の少なくとも一部を前記挿通口に差し込んで通過させた状態において、前記ナット対を前記ネジ部に螺合させることで行われるようになっており、
更に、前記ロッド状部材は、その長手方向に沿った少なくとも一部区間において、前記螺合時において前記支持体から遠い側の面は凹部が連続して繰り返し形成された波形の凹部繰り返し形成面となっていることを特徴とする、前記締結機構。
【請求項2】
前記U字状ボルトと前記ナットの組み合わせが複数組用いられており、それら組の夫々に対応して、前記支持体に前記貫通孔対が前記長手方向に沿って間隔をおいて設けられていることを特徴とする、請求項1に記載された締結機構。
【請求項3】
前記支持体が複数個配置され、各支持体に対してロッド状部材が1つづつ締結されることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載された締結機構。
【請求項4】
前記ロッド状部材は、設置物の脚を構成していることを特徴とする、請求項3に記載された締結機構。
【請求項5】
前記複数の支持体は、斜面上に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載された締結機構。
【請求項6】
前記斜面は鉄道用高架の床面であり、前記複数の支持体は、前記床面に固定された柱状支持体であり、前記設置物は鉄道点検作業用通路の構成部材であることを特徴とする、請求項5に記載された締結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロッド状部材を支持体に対して締結するための締結機構に関し、更に詳しく言えば、ロッド状部材の支持体に対する締結位置の租調整を容易にする手段を備えた同締結機構に関する。
【背景技術】
【0002】
掲示物体、広告板、作業台、フェンス、壁状建材等何らかの設置物を地面あるいは室内外の設置面上に設置する場合、設置面上に支持体(一般に、設置ベース乃至支持ベースなどと呼ばれる)を固定し、同支持体上に設置物を取り付ける方式が広く採用されている。その際、1本または複数本のロッド状部材をなす脚を設置物に取り付けたり、あるいは設置物と一体で設けておき、同脚(1本または複数本)を支持体に対して固定する形態が簡便な取り付け方式として知られている。また、例えば国旗掲揚等のケースなどで見られるように、設置物自身の一部(根元部等)がロッド状部材を構成している場合には、同ロッド状部材を支持体に対して固定することも行われている。
【0003】
このようになんらかのロッド状部材を介して設置物を支持体に対して固定する場合に、その固定や固定の解除(取り外し)に要する作業は簡便であることが望まれることは言うまでもない。特に、設置物の頻繁な着脱、交換等が予想されるような場合には、着脱が簡便で短時間で行えることは大きなメリットとなる。例えば、設置物が仮設性の高いもの(後述する高架鉄道線路点検用の仮設作業台や、イベント用の案内板など)であるケースでは、着脱作業が簡便に行えることは重要な事である。
【0004】
更に、上記のロッド状部材を用いた固定作業に際して頻繁に要求される事項として、支持体に対するロッド状部材の固定位置(ロッド状部材の長手方向(軸方向)に沿った相対位置)の調整可能性がある。この固定位置の調整可能性は、支持体に対する設置物の相対的な位置、あるいは位置と姿勢の調整可能性を保証するもので、種々のケースで必要となる。
【0005】
図1はそのような調整可能性が望まれる一例について説明する図で、ここでは設置物は板状のもの(例えば仮設のイベント案内板、フェンス部材等)であり、これを傾斜地に設置する例が示されている。
図1において、符号1は板状設置物を表し、傾斜地の斜面SL上に水平姿勢で設置された状態が描かれている。板状設置物1は4つのコーナー1A〜1Dを持つ長方形でその下辺1C1Dの両端近くに脚(ロッド状部材)3A、3Bが装備(固定具で固定または板状設置物1と一体構成)されている。
【0006】
一方、斜面SL上には脚(ロッド状部材)3A、3Bの間隔に合わせて柱状の支持体2A、2Bが固設されており、これら支持体2A、2Bに脚3A、3Bを各々取り付けることで板状設置物1が斜面SL上に設置されることになる。符号4A、4Bはこの取り付けのために用いられる締結部(締結機構の要部)を表している。締結部4A、4Bとしては種々のタイプのものが利用可能と考えられるが、従来より最も一般的に利用されているのは、
図2に示したようなボルト−ナット機構を用いるタイプのものである。
【0007】
図2は、この機構を締結部4A、4Bに用いた場合について、
図1中の矢印AR1方向から見た拡大概略図である。図示されているように、脚3A(3B)及び支持体2A(2B)に、夫々締結に用いるボルトBLの外径に見合った貫通孔5A(5B)、6A(6B)が予め設けられている。設置作業に際しては、両貫通孔5A(5B)と6A(6B)を位置合わせした状態でボルトBLを両貫通孔5A(5B)に挿通させ(矢印AR2参照)、ナットNTを工具を用いて締めることで、脚3A(3B)及び支持体2A(2B)に夫々締結される。
【0008】
なお、締結の緩みを防止するために慣用されるワッシャについては図示を省略した。また、言うまでもないことであるが、設置物1の重量等に応じてこのようなボルト−ナット機構を各脚−支持体の組み合わせ毎に、上下に適当な間隔をおいて2個所(場合によっては3個所以上)設けることが通例となっている。更に、そのように上下2個所で締結を行う際に、
図3に示したようなU字状ボルトを用いることも出来る。U字状ボルトは、
図3中に示したように、ナット(図示省略)が螺合されるネジ部Aと同ネジ部Aを先端付近に持つ2つの直線状部分を繋ぐブリッジ部Bとを持つ公知の締結要素で、例えば下記特許文献1、2中に開示されている。
【0009】
さて、ここで問題となるのは、板状設置物1の設置高さや設置姿勢を調整したいという要請がある場合にどうするかである。例えば、板状設置物1を水平姿勢、即ち、上辺1A1B及び下辺1C1Dが水平面に略平行になる姿勢で設置したい場合には、次のような案が考えられる。
(1)脚3A、3Bの貫通孔5A、5Bあるいは支持体2A、2Bの貫通孔6A、6Bの形成個所を複数として、どの貫通孔を使用するかを選択できるようにする。
(2)脚3Aと3B、あるいは支持体2Aと2Bの寸法、貫通孔の形成位置等を、斜面SLの傾斜角度θ、脚3Aと3Bの間の距離を予め考慮して異ならせる。
(3)上記(1)と(2)を適宜組み合わせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】実公昭48−30512号公報
【特許文献2】特公昭48−25639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながらこのような従来手法では、次のような問題が生じる。
(イ)上記(1)の手法では、選択可能な締結位置が貫通孔の数と形成間隔で決まる故、締結位置の調整範囲と調整ピッチについての制約がきつくなる。小間隔で貫通孔を多数設けるのは機械強度、加工コスト等から考えて現実的ではない。
【0012】
(ロ)また、上記(1)の手法では、ボルトBLを実際に挿通する脚と支持体の各貫通孔を位置合わせする作業に手間がかかる(脚(ロッド状部材)の貫通孔と支持体の貫通孔がぴったり位置合わせできないと、ボルトBLが挿通できない)。
(ハ)上記(2)の手法では、脚を構成するロッド状部材あるいは支持体を構成する柱状部材の少なくとも一方について、2種類以上の寸法、貫通孔形成位置を持つ部材を用意する必要がある。また、設置高さ、姿勢について調整の自由度は小さくなり、設置現場の状況(例えば傾斜角度θの大小)に応じたフレクシブルな調整が困難となる。
【0013】
このように、
図1で例示したような設置物の設置に際して、設置高さや設置姿勢を大まかに調整すること(即ち、租調整を行うこと)さえ、これを簡素な機構でフレクシブルに行うことは簡単でない。その大きな原因は、ロッド状部材(脚)を支持体に対して締結する位置のフレクシブルな租調整が、思いの外用意でないことにある。
【0014】
そこで本発明の基本的な目的は、ロッド状部材を支持体に対して締結するに際して、ロッド状部材の支持体に対する締結位置の租調整が容易で、構造が簡素な締結機構を提供することにある。また、本発明はこの締結機構を各種設置物の設置に際して適用することを企図するものでもある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明は、U字状ボルトと該U字状ボルトの2つのネジ部に各々螺合するナットとを用いて、ロッド状部材を支持体に対して締結するための締結機構を提供する。
【0016】
この締結機構においては、前記支持体に、前記U字状ボルトを挿通させるための貫通孔対が設けられており、前記U字状ボルトを前記貫通孔対に挿通させた状態において、前記U字状ボルトのブリッジ部と前記支持体の表面とで囲まれた領域としてロッド状部材の挿通が可能な挿通口が形成され得るようになっている。また、前記ロッド状部材の前記支持体に対する締結は、前記ロッド状部材の一端側の少なくとも一部を前記挿通口に差し込んで通過させた状態において、前記ナット対を前記ネジ部に螺合させることで達成されるようになっている。
【0017】
そして、前記ロッド状部材は、その長手方向に沿った少なくとも一部区間において、前記螺合時において前記支持体から遠い側の面が
凹部を連続して繰り返し形成した波形の凹部繰り返し形成面となっている。
ここで、前記U字状ボルトと前記ナットの組み合わせを複数組用い、それら組の夫々に対応して、前記支持体に前記貫通孔対が前記長手方向に沿って間隔をおいて設けられるようにしても良い。
【0018】
また、前記支持体が複数個配置され、各支持体に対してロッド状部材が1つづつ締結されていても良い。更に、前記ロッド状部材は、設置物の脚を構成する部材であって良い。なお、本明細書及び特許請求の範囲の記載において、この「設置物の脚」を構成する“ロッド状部材”という呼称は、設置物に対して任意の取り付け手段(例えばネジ止め、接着剤による接着など)を用いて取り付けられたものに対しては勿論のこと、元々一体構成の設置物(例えば4脚付きテーブル状一体成形物)の脚部分に対しても用い得るものとする。更に、“ロッド状部材”としてパイプ状(中空管状)が採用されることもあり得る。
【0019】
また更に、前記複数の支持体は、斜面上に配置されているものであって良い。そして、この斜面は鉄道用高架の床面とし、前記複数の支持体を、前記床面に固定された柱状支持体とし、前記設置物を鉄道点検作業用通路の構成部材とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る締結機構によれば、U字状ボルトを支持体に設けた貫通孔対に挿通させることで形成される挿通口にロッド状部材を希望する長さ部分だけ差込み、その状態でナットを締めることにより、略希望する位置で締結を行うことができる。即ち、締結位置の租調整が極めて簡単且つ迅速に実行できるようになる。また、締結解除についても、ナットをゆるめてロッド状部材を挿通口から引き抜くだけで済み、非常に簡単である。締結位置の租調整のために必要な加工も、ロッド状部材の背面(U字状ボルトのブリッジ部)に凹部を長手方向に沿って繰り返す形で波形とするだけ良く、非常に簡単である。そして、同波形加工部の区間に対応した締結位置可調整レンジを実現できる。
【0021】
設置物の脚のように一般に複数本のロッド状部材を夫々に対応する支持体に締結する場合においても、各締結部で締結位置の租調整が簡単に行えるので、設置物の高さ調整や姿勢調整が簡単に行えるようになる。例えば、斜面上に設置物を水平姿勢で設置したい場合に、斜面の急緩や脚の間隔などに対してフレクシブルな対応が可能である。この特性は、斜面が鉄道用高架の床面であり、複数の支持体が同床面に固定された柱状支持体であり、設置物が鉄道点検作業用通路の構成部材であるケース等で大きなメリットを与える。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】斜面上で板状設置物の設置を行うケースについて説明する図である。
【
図2】
図1に示したケースで慣用される締結機構について説明する図である。
【
図4】
図1に示したケース及び
図7〜
図13に示したケースで適用可能な本発明の締結機構の一例(第1の実施形態)を示した図で、(a)は−Y方向から見た側断面図、(b)は+Z方向(上方)から見た上面図である。
【
図5】
図1に示したケース及び
図7〜
図13に示したケースで適用可能な本発明の締結機構の別の一例(第2の実施形態)を示した図で、(a)は−Y方向から見た側断面図、(b)は+Z方向(上方)から見た上面図である。
【
図6】第1の実施形態を例にとって、ロッド状部材の背面に形成された波形形状部の機能について説明するための部分拡大図である。
【
図7】鉄道用高架の床面が斜面の繰り返しからなっており、同床面に鉄道点検作業用通路設置用の柱状支持体が間隔をおいて固定されていることを説明する概念図である。
【
図8】鉄道用高架の床面付近を線路をまたぐ方向に沿った面で切った断面を描いた概略図で、鉄道点検作業用通路設置作業開始前の状態を表している。
【
図9】
図8と同様に、鉄道用高架の床面付近を線路をまたぐ方向に沿った面で切った断面を描いた概略図で、鉄道点検作業用通路設置作業開始のために柱状支持体が露出された状態を表している。
【
図10】第1または第2の実施形態で示した締結機構を適用して、鉄道点検作業用通路を仮設するケースについて説明するための上面図で、通路板の図示を省略して描かれている。
【
図11】
図10において、ラインA−Aに沿った断面構造を通路板の図示を付加して説明する図である。
【
図12】
図10において、ラインB−Bに沿った断面構造を通路板の図示を付加して説明する図である。
【
図13】
図10において、ラインC−Cに沿った断面構造を通路板の図示を付加して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る締結機構の2つの実施形態とそれらの適用例について
図4〜
図13を参照図に加えて説明する。
先ず、
図4は、前述した
図1に示したケース及び
図7以下に示したケースで適用可能な本発明の締結機構の一例(第1の実施形態)を示した図であり、(a)は、併記した直交座標系の−Y方向から見た側断面図、(b)は+Z方向(上方)から見た上面図である。両図において、符号10は支持体で上下方向(Z軸方向)に沿って適当な間隔をとって2個所に各々U字状ボルトU1を挿通させるための貫通孔対(対をなす2つの貫通孔)11、11が設けられている。U字状ボルトU1はここでは
図3に例示したものと同様のもので、ブリッジ部は円弧状で、両端部付近にネジ部が設けられている。
【0024】
各U字状ボルトU1は、対応する貫通孔対11、11に、
図4(a)中で右側からネジ部を差し込むことで簡単に挿通される。そして、これにより各U字状ボルトU1のブリッジ部と支持体10の背面(ブリッジ部に近い側の面)とで囲まれた領域が生まれる。この領域を「ロッド状部材挿通口」と呼ぶことにする。支持体10にロッド状部材20を締結する場合、ロッド状部材20をその一端(先端)21側からこれら挿通口を通過するように差し込み、上下位置を調整し、希望する位置に保った上で、各ナットNを各ネジ部に螺合する(工具で回転してナットを締める)。なお、必要に応じてワッシャW(ゆるみ防止用)が使用される。
【0025】
ここで、ロッド状部材20は略円形断面形状を有する丸棒状であり、その背面(支持体10から遠い側の面)には、波形加工部22Aが設けられている。波形加工部22Aは、締結位置の調整希望範囲に応じた区間(本例では先端21から符号22Cで示した位置までの間)に設けられており、符号22Bで示した部分には波形加工はなされていない。波形加工部22Aの詳細の一例を
図6に示した。
図6に示したように、波形加工部22Aは多数の凹部(凹面)22Eの
連続した繰り返しをロッド状部材20の長手方向に沿って形成したものとなっている。隣り合う凹部の境界は符号22Dで示されている。
【0026】
各凹部22Eの表面形状は使用するU字状ボルトU1のブリッジ部の内側面50にできるだけ整合したものであることが好ましい。また、凹部22Eの形成ピッチは、締結時の位置調整(租調整)の単位になる長さである。何故ならば、ナットNを締め付けて締結を行う際には、U字状ボルトU1のブリッジ部の内側面50が最も近い凹部22Eに接するように誘導されるからである。従って、凹部22Eの形成ピッチが小さい程、細かい位置調整が可能になる。但し、凹部22Eの形成ピッチを小さくすると締結の安定性は低下するので、設置物の重量、要求される調整の細かさ等々を考慮して設計的に定められることが好ましい。
【0027】
図4に示した例(第1の実施形態)ではU字ボルトとして円弧状のブリッジ部を備えたものを使用し、丸棒状のロッド状部材と組み合わせて機構を構成したが、
図5(a)、(b)に示すように、大半が直線状のブリッジ部を備えたU字ボルトU2を使用することもできる。この場合、組み合わせて用いられるロッド状部材の断面形状も、角棒状のものに変更することが好ましい。
【0028】
この第2の実施形態は、上記の変更点を除けば、第1の実施形態と構造、機能共にほぼ同様である。即ち、
図5は、前述した
図1に示したケース及び
図7以下に示したケースで適用可能な本発明の締結機構の別の一例(第2の実施形態)であり、(a)は−Y方向から見た側断面図、(b)は+Z方向(上方)から見た上面図である。両図において、符号30は支持体で上下方向(Z軸方向)に沿って適当な間隔をとって2個所に各々U字状ボルトU2を挿通させるための貫通孔対31、31が設けられている。U字状ボルトU2は上述した通り、ブリッジ部の大半は直線状で、両端部付近にネジ部が設けられている。
【0029】
各U字状ボルトU2は、対応する貫通孔対(対をなす2つの貫通孔)31、31に、
図5(a)中で右側からネジ部を差し込むことで簡単に挿通される。そして、これにより各U字状ボルトU2のブリッジ部と支持体30の背面(ブリッジ部に近い側)とで囲まれた領域が生まれる。この領域を「ロッド状部材挿通口」と呼ぶことは既述した通りである。支持体30にロッド状部材40を締結する場合、ロッド状部材40をその一端(先端)41側からこれら挿通口を通過するように差し込み、上下位置を調整し、希望する位置に保った上で、各ナットNを各ネジ部に螺合する(工具で回転してナットを締める)。なお、必要に応じてワッシャ(ゆるみ防止用)が使用されることは第1の実施形態と同様である。
【0030】
ここで、ロッド状部材40の背面(支持体30から遠い側の面)には、波形加工部42Aが設けられている。波形加工部42Aは、締結位置の調整希望範囲に応じた区間(本例では先端41から符号42Cで示した位置までの間)に設けられており、符号4Bで示した部分には波形加工はなされていない。波形加工部42Aも、多数の凹部(凹面)の
連続した繰り返しをロッド状部材40の長手方向に沿って形成したものとなっている。
【0031】
第1の実施形態の場合と同様に、各凹部の表面形状は使用するU字状ボルトU2のブリッジ部の内側面にできるだけ整合したものであることが好ましい。また、凹部の形成ピッチは、締結時の位置調整(租調整)の単位になる長さである。第2の実施形態においても、U字状ボルトU2のブリッジ部の内側面が最も近い凹部に接するように誘導される。従って、凹部の形成ピッチが小さい程、細かい位置調整が可能になるが、締結の安定性は低下するので、設置物の重量、要求される調整の細かさ等を考慮して設計的に定められることが好ましい。
【0032】
なお、第1、第2の実施形態のいずれにおいても、上下2個所に設けられる貫通孔対11、11あるいは31、31の間の距離は、波形加工部の凹部繰り返しピッチの整数倍となるように設計されることが好ましい。何故ならば、そうすることで、U字状ボルトのブリッジ部とロッド状部材の背面の密着度が高められるからである。
【0033】
さて、既述の通り、以上説明した締結機構の2例はいずれも、
図1に示したケースに適用可能である。その場合、
図1中に示した支持体2A、2Bが支持体10または30に対応し、脚3A、3Bがロッド状部材20または40に対応することになる。そして、脚3A、3B(ロッド状部材20または40)の上下位置を調整して締結を行えば、斜面SLにおける設置物1の水平姿勢設置や、設置位置高さの調整も簡単に実行可能となる。支持体2Aと2Bは同形同寸とし、ロッド状部材3Aと3Bも同形同寸とすることができる。
【0034】
更に、上記2例で説明した締結機構の応用として、鉄道用高架上における転々用作業通路部材の仮設作業時への適用について、主として
図7〜
図13を用いて説明する。先ず
図7を参照すると、鉄道用高架の床面が符号BSで示されており、この床面BSは、主として雨水排水のために、電車の走行方向(X方向)に沿って登り下りの斜面の繰り返しを形成している。斜面の傾斜は誇張して描かれており、排水に支障のないように設計されている。傾斜が下りから登りに転換する部分には排水用のドレインDR1〜DR3が設けられている。
【0035】
符号PL1以下で示した柱状物は、同床面BS上に仮設される鉄道点検作業用通路のための支持体で、X方向に沿い略等間隔で床面BS上に多数固定されている。
図7ではそれらの一部(8本)が例示されている。各支持体PL1〜PL8は同形同寸の柱状体でそれぞれアンカーにより床面BSに固定されている。なお、K1、K2は支持体PL1以下の頂部の高さの推移を表した線で、傾斜した床面BSと平行となる。また、符号HZは水平面を表している。
【0036】
次に、
図8は
図7に概念的に示した鉄道用高架の床面BS付近を線路をまたぐ方向の面で切った断面を描いた概略図で、鉄道点検作業用通路設置作業開始前の状態(平常状態)を表している。図示されているように、コンクリート製の床面BS上には所定の厚さで砂利SDが敷き詰められており、その上に枕木M1、M2を介してレールRLが敷設されている。符号SPは線路脇に確保された点検作業通路仮設用スペースで、その両側部に柱状の支持体PL(概念
図7中ではPL1〜PL8で描示)が固設されている。符号60は各支持体PLをアンカー留めするための支持体固定ベースを表している。各支持体PLは同形同寸で良く、図示されているように、平常時は砂利SD中に埋もれた状態にある。
【0037】
例えば夜間の終電と始電の間を利用して、鉄道点検作業が行われる場合には、点検作業通路仮設用スペースSPに点検作業通路が仮設される。その際には、
図9に示したように、支持体PLの大半が露出するように砂利SDが除去される。本発明では、これら支持体PLとして、前述した支持体10あるいは30を適用することができる。
【0038】
図10〜
図13は点検作業通路の仮設について説明する上面図で、通路板の図示を省略して描かれている。また、
図11は
図10において、ラインA−A、に沿った断面構造を説明するための図で、本発明の締結機構が利用されている締結部70の存在する位置での断面を通路板の図示を加えて省示している。
【0039】
また、
図12は
図10において、ラインB−B、に沿った断面構造を説明するための図で、各支持体PL近傍の作業通路用の枕木M12(
図8、
図9では不図示)が存在する位置での断面を示している。更に、
図13は
図10において、ラインC−Cに沿った断面構造を説明するための図で、支持体PL間の中間位置での断面を示している。これら
図12、
図13においても、通路板の図示が追加されている。
【0040】
特に
図11に描かれているように、支持体PLは固定ベース60上に対して直立状態で固定されており、固定ベース60がアンカーACで床面BSに強固に固定されている。そして、各支持体PLに対してロッド状部材Sが締結されている。符号70はこの締結を行う締結部を表し、その構造としては、前述した第1の実施形態(
図4)あるいは第2の実施形態(
図5)を採用することができる。従って、締結に際しては、互いに同形同寸の各ロッド状部材Sの高さ位置の租調整を行い、各締結部70で使用されている各U字状ボルトとナットを工具で締めることで支持体PLに対してロッド状部材Sが固定される。
【0041】
各ロッド状部材Sは、例えば金属製の枠体(フレーム)FRの脚部となっている。また、符号M11〜M14は、作業通路用の枕木で、作業通路両サイドの枠体(フレーム)FR部分を繋ぐ部材となっている。本例では、3本の枕木でM11〜M13が1セットで、作業通路両サイドの枠体FR部分をつなぎ、はしご状の枠体を構成している。従って、この枠体1個の全長(
図10において左右方向)は、枕木M11と枕木M13の間隔(支持体PLの配置ピッチの略2倍)と略等しい。枕木M14は、枕木M11と枕木M13を有する枠体FRの隣(
図10中で右隣)の枠体FR(一部のみ図示)の1つ(
図10中で左端)の枕木である。なお、支持体PLの配置ピッチの数値例を挙げれば、180cmで、その場合、枠体FR1個の全長は、約360cmとなる。
【0042】
結局、本例では4本のロッド状部材Sが、1つの枠体(フレーム)FR(3本の枕木付き)の4本の脚を構成することになる。従って、各ロッド状部材Sの締結位置の租調整は、水準器を用いて枠体(フレーム)FRが水辺になるように行えば良い。手すり80は必要に応じて設置されるもので、例えば
図13に示すように、枠体(フレーム)FR上に手すり取り付け部FFを介して取りつけられる。
【0043】
作業員が歩く通路板CH(
図10では不図示)は、各支持体PLへの各ロッド状部材Sの締結が完了した時点で、枠体(フレーム)FR上に敷き詰められる。
図11〜
図13の描示から理解されるように、通路板CHの幅は作業通路両サイドの枠体(フレーム)FRのL字及び逆L字状断面部分に安定して支持されるように設計される(両サイドの手すり80で邪魔されない幅を選択)。また、各路板CHの長さは、例えば支持体形成ピッチより僅かに短くすることができ、線路の延在方向に沿って順次敷設されることで必要な長さの通路が仮設される。
【0044】
ここで、各枠体(フレーム)FRは前述した締結位置調整で略水平に、且つ、高さ位置を調整して順次設置されているので、通路板CHも略水平で、且つ、高さも略揃える(大きな段差を生じずに)順次敷設できる。また、このようにして仮設された点検作業用通路を解体除去するには、通路板CHを退けてから、各締結部のナットをゆるめ、ロッド状部材Sごと諸部材を上方に持ち上げれば良い。以上の如く、本発明に従った締結機構を利用することで、傾斜のある高架床面上に略水平に点検用通路を仮設する作業が、仮設の解除を含めて非常に簡単になる。
【符号の説明】
【0045】
1 板状設置物
1A〜1D コーナー
2A、2B、10、30、PL、PL1〜PL8 支持体
3A、3B、20、40、S ロッド状部材(脚)
4A、4B 締結部
5A、5B、6A、6B 貫通孔
11、31 U字状ボルトの貫通孔(対)
21、41 ロッド状部材の一端(先端)
22A、42A 波形加工部
22B、42B 波形非加工部
22C、42C 波形加工部と波形非加工部の境界
22D 隣接凹部の境界
22E 凹部(凹面)
50 ブリッジ部の内側面
60 支持体固定ベース
70 締結部
80 手すり
A U字状ボルトのネジ部
AC アンカー
AR1、AR2 矢印
B U字状ボルトのブリッジ部
BL ボルト
BS 床面
CH 通路板
DR1〜DR3 排水用ドレイン
FF 手すり取り付け部
FR 枠体(フレーム)
HZ 水平面
M1、M2、M11〜M14 枕木
N、NT ナット
RL レール
SD 砂利
SL 斜面
SP 点検作業通路仮設用スペース
U1、U2 U字状ボルト
W ワッシャ