(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一湾曲部及び第二湾曲部は、前記ベルトの近位端側の前記チューブに対して遠位端側の前記チューブを周方向に回転させ、かつ、前記ベルトの遠位端側と近位端側とを近づけることにより形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の瘻孔カテーテル。
前記内筒の前記近位端側保持部は、前記チューブ内周面を着脱可能に保持するものであり、前記翼部を伸展させた状態においては前記チューブ内周面における保持を解除する
ことを特徴とする請求項6記載の瘻孔カテーテル。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテルの留置状態を説明する図である。
瘻孔カテーテル100は、患者の腹壁81と消化管壁82とを貫通するように形成された瘻孔83に装着されるものである。
図1に示すように、瘻孔カテーテル100は、カテーテル部Aと体内固定部Bとを備える。カテーテル部Aは瘻孔83に挿入され、栄養剤等の流体を通過させる機能を有する。体内固定部Bは、瘻孔カテーテル100が患者の瘻孔83に留置されたときに胃壁等の消化管壁82内に位置し、瘻孔カテーテル100が患者の瘻孔83から抜けるのを抑制する機能を有する。瘻孔カテーテル100は、チューブ1を主要な構成要素とし、このチューブ1の一部を湾曲させて体内固定部Bが形成されている。また、体内固定部Bは、湾曲状態が解除されることで伸展可能である。
なお、以降の説明において、「遠位端」又は「先端」とは、
図1に示す瘻孔カテーテル100の図面下側の端部をいい、「近位端」又は「基端」とは、
図1に示す瘻孔カテーテル100の図面上側の端部をいうものとする。
【0023】
まず、体内固定部Bが伸展された状態の瘻孔カテーテル100について説明する。
図2は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテル100の伸展状態を示す側面模式図、
図3は実施の形態1に係る瘻孔カテーテル100の伸展状態を示す側面断面図、
図4は、
図2のA−A断面模式図である。
図2、
図3に示すように、チューブ1は、カテーテル部2と、固定部形成部3と、遠位端領域4とに区分される。カテーテル部2は、
図5、
図6に示すカテーテル部Aに相当する。固定部形成部3は、変形することにより(後述する)、体内固定部Bを形成する。遠位端領域4は、チューブ1において固定部形成部3よりも遠位端側の領域であり、軸方向の長さは例えば2mm〜10mm程度である。
【0024】
図2〜
図4に示すように、固定部形成部3の壁面には、チューブ1の内外を連通する3本のスリット5が、軸方向に平行に設けられている。本実施の形態1では、チューブ1の周壁をほぼ三等分する位置に、3本のスリット5が設けられている。スリット5は軸方向に平行であるので、チューブ1に対する加工(スリットの形成)が容易である。
【0025】
固定部形成部3に形成されたスリット5によりチューブ1の周壁が3つに分割され、分割されたことにより3本のベルト6が形成されている。スリット5は、チューブ1の遠位端及び近位端から所定距離をおいた領域である固定部形成部3にのみ設けられているので、ベルト6は、その上端部及び下端部においてチューブ1の周壁として一つにつながった状態である。
【0026】
また、チューブ1の遠位端領域4の内腔には、後述する伸展具60を係止させるための機能部として、伸展具係止部7が設けられている。本実施の形態1では、伸展具係止部7は、遠位端領域4の内腔に挿入されて固定された環状部材により構成されている。この環状部材は、ステンレス、チタン等の材料からなる。伸展具係止部7を構成する環状部材の内周面には、雌ネジ7aが形成されている。
【0027】
チューブ1は、例えばポリウレタン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂等の樹脂材料で構成され、内部に流体物を通過させるための内腔を有している。チューブ1の材料を上記材料に限定するものではないが、熱賦形が可能であり、熱賦形後においても可撓性を有する材料を用いるとよい。
【0028】
次に、体内固定部Bが形成された状態の瘻孔カテーテル100について説明する。
図5は実施の形態1に係る瘻孔カテーテル100の側面図、
図6は同じく瘻孔カテーテル100の斜視図、
図7は同じく瘻孔カテーテル100の平面図、
図8は同じく瘻孔カテーテル100の底面図である。また、
図9は、体内固定部Bの要部を説明する図である。なお、
図9では、図面の見やすさのため、
図5に示す体内固定部Bのうち翼部10を実線で描いて他を破線で描くとともに、翼部10に関連する構成のみ符号を付している。
【0029】
図5〜
図8に示すように、実施の形態1に係る体内固定部Bは、翼部10、翼部20、翼部30を備えている。翼部10、20、30は、チューブ1に対して径方向外側に張り出す形状を有している。
【0030】
図5〜
図9に示すように、翼部10は、近位端11から径方向外側に向かって延びる第一帯部12と、第一帯部12の端部から径方向内側かつ基端側方向に向かって屈曲する第一湾曲部13と、第一湾曲部13から径方向内側かつ基端側方向に向かって延びる第二帯部14と、第二帯部14の端部から遠位端領域4側に向かって屈曲する第二湾曲部15と、第二湾曲部15から遠位端17へと連なる第三帯部16とを備えている。
【0031】
第一湾曲部13についてさらに説明すると、ベルト6の幅方向の一端側13aに対し、他端側13bの湾曲角度の方が大きくなるよう(すなわち、他端側13bの方が一端側13aよりもゆるやかに)湾曲している。また、第二湾曲部15は、ベルト6の幅方向の一端側15bに対し、他端側15aの湾曲角度の方が大きくなるよう(すなわち、他端側15aの方が一端側15bよりもゆるやかに)湾曲している。このため、
図7、
図8に示すように、軸方向に対して垂直に見ると、第一帯部12、第一湾曲部13、第二帯部14で三角形を形成し、また、第二帯部14、第二湾曲部15、第三帯部16で三角形を形成しているように見える。
【0032】
翼部20、翼部30は、翼部10と同様の形状である。すなわち、翼部10の近位端11、第一帯部12、第一湾曲部13、第二帯部14、第二湾曲部15、第三帯部16、遠位端17と同様に、翼部20は近位端21、第一帯部22、第一湾曲部23、第二帯部24、第二湾曲部25、第三帯部26、遠位端27を備え、翼部30は近位端31、第一帯部32、第一湾曲部33、第二帯部34、第二湾曲部35、第三帯部36、遠位端37を備えている。
【0033】
次に、翼部10、翼部20、翼部30の相互の関係について説明する。翼部10の第一湾曲部13の径方向内側には翼部30の第二湾曲部35が入り込み、翼部20の第一湾曲部23の径方向内側には翼部10の第二湾曲部15が入り込み、翼部30の第一湾曲部33の径方向内側には翼部20の第二湾曲部25が入り込んでいる。したがって、
図7、
図8に示すように、軸方向に対して垂直に体内固定部Bを見ると、第一湾曲部13とこれを挟む第一帯部12及び第二帯部14により形成される三角形状の内側に、第二湾曲部15とこれを挟む第二帯部14及び第三帯部16により形成される三角形状が挟み込まれている。このことは、翼部20、30についても同様である。また、体内固定部Bを軸方向に対して垂直に見たときに、隣り合う3個の第一湾曲部13、23、33を結ぶと、実質的に正三角形を形成している。なお、実質的に正三角形とは、厳密な正三角形ではないものも含め、一見して正三角形に見えるものをいうものとする。
【0034】
次に、チューブ1を用いた瘻孔カテーテル100の作製過程を説明する。
図10は、実施の形態1に係る瘻孔カテーテル100の作製過程を説明する図である。ここで、チューブ1は、
図2、
図3に示すように伸展状態であるものとする。
(1)
図10Aに示すように、ベルト6の遠位端側と近位端側とを軸方向に近づけつつ、遠位端領域4を、遠位端側から軸方向を垂直に見て時計回りに回転させ、ベルト6の遠位端側を、位置P1から位置P2となるよう回転させる。
図10Bは、ベルト6の遠位端側を回転させた状態における、近位端11、21、31と、遠位端17、27、37の位置関係を示している。ベルト6の遠位端側を、位置P1から位置P2となるよう回転させると、
図10Bに示すように、1本のベルト6の遠位端部と近位端部とが、周方向に異なる位置に配置される。
図10Bでは、カテーテル部2に対して遠位端領域4を120°回転させた例を示している。
【0035】
(2)
図10Cは、翼部10の形成過程を説明する図である。なお、
図10Cでは、説明のため、翼部10のみ記載し、翼部20、30については記載を省略している。10Cに示すように、ベルト6の遠位端側と近位端側とを軸方向にさらに近づけ、ベルト6を外方に向かって湾曲させ、第一湾曲部13、23、33、第二湾曲部15、25、35を形成する。ベルト6はチューブの外壁を分割して形成されているので、容易に変形して外方に向かって張り出すことができる。
図10Cに示す工程では、ベルト6は、「Z」を左右反転させたような形状をなしている。
【0036】
(3)続けて、第一湾曲部13の内側に第二湾曲部35を入り込ませ、第一湾曲部23の内側に第二湾曲部15を入り込ませ、第一湾曲部33の内側に第二湾曲部25を入り込ませる。これにより、
図5〜
図8に示す翼部10、翼部20、翼部30が形成される。
【0037】
上記(1)〜(3)の過程で形成された翼部10、翼部20、翼部30に対して熱賦形し、体内固定部Bの形状を固定させる。
【0038】
チューブ1は、熱賦形後においても可撓性を有する材料で構成されている。したがって、チューブ1の遠位端領域4をカテーテル部2から軸方向に離すことで、チューブ1はほぼまっすぐに伸びた伸展状態となる(
図3参照)。そして、この伸展状態を解除すると、再び
図5〜
図8に示すように翼部10、翼部20、翼部30が形成された状態となる。
【0039】
次に、このように構成された瘻孔カテーテル100の、瘻孔83への留置動作について説明する。
まず、
図11を参照して、瘻孔カテーテル100の体内固定部Bを伸展させ、この体内固定部Bを胃壁や腸壁等の消化管壁82内に挿入するために用いる伸展具60について説明する。伸展具60は、遠位端側に設けられた係合部61と、係合部61とは反対側の端部に設けられた操作部62と、操作部62と係合部61との間に設けられた軸部63とを有する。係合部61及び軸部63は、チューブ1の内腔に挿入可能に構成されている。係合部61の外周には、瘻孔カテーテル100の伸展具係止部7に設けられた雌ネジ7aと螺合可能な雄ネジ61aが設けられている。操作部62は、例えば合成樹脂や金属で構成されており、術者が指をかけることができるような形状を有している。
【0040】
瘻孔カテーテル100を瘻孔83に留置する際には、術者は、
図5〜
図8に示すように体内固定部Bが形成された瘻孔カテーテル100のカテーテル部Aの内腔に、基端側から伸展具60の係合部61を挿入し、係合部61の雄ネジ61aと伸展具係止部7の雌ネジ7aとを螺合させる。このようにすると、瘻孔カテーテル100の遠位端部において瘻孔カテーテルと伸展具60とが固定される。そして、術者は、伸展具60をチューブ1の遠位端側に押し込みつつ、チューブ1の基端側を手前側に引き寄せる。この過程において、チューブ1と伸展具60とを、翼部10、翼部20、翼部30を形成する際の回転方向(
図10参照)とは逆方向に、回転させる。このようにすると、隣り合う第一湾曲部13、23、33と第二湾曲部15、25、35との係合状態が解除され、
図11に示すように固定部形成部3はほぼまっすぐの状態となる。なお、雄ネジ61aが締まる方向は、翼部10、翼部20、翼部30を解除する際の回転方向と一致させること(本実施の形態1の例であれば、雄ネジ61aは順ネジ)が好ましい。
【0041】
次に、
図11に示すように伸展具60により伸展された状態の瘻孔カテーテル100を、腹壁81と消化管壁82とに形成された瘻孔83に挿入する。瘻孔カテーテル100の径は、チューブ1の径と同じであり、瘻孔83を通過する際の抵抗が低い。このため、瘻孔83を傷つけるリスクが少ない。
【0042】
そして、適度な挿入深度となったところで、術者は、カテーテル部Aが抜けないように腹壁81側に押さえつつ、翼部10、翼部20、翼部30を形成する際の回転方向(
図10参照)に伸展具60を回転させながら、伸展具60を手前側に引っ張る。伸展具60を手前側に引っ張ることで、係合部61に固定された伸展具係止部7が引き寄せられ、チューブ1の伸展状態が解除される。このようにすると、熱賦形により形成されている翼部10、翼部20、翼部30の形状が復元され、体内固定部Bは
図1に示すような状態となる。伸展具60を回転させつつ手前側に引っ張るだけで、伸展状態の瘻孔カテーテル100を体内固定部Bが形成された状態にすることができ、手技が簡便である。そして、雌ネジ7aと雄ネジ61aの螺合を解除して、瘻孔カテーテル100から伸展具60を引き抜く。
【0043】
瘻孔83に留置された瘻孔カテーテル100のカテーテル部Aの近位端は体外に位置し、このカテーテル部Aの近位端側には、体外固定部が取り付けられる。例えば、いわゆるボタン型では、体表側にほとんど露出しない長さに形成されたカテーテル部Aの近位端に、体外固定部が取り付けられる。また、いわゆるチューブ型では、体表側に所定長さが突出するように形成されたカテーテル部Aの体表近傍に位置する部分に、体外固定部が脱着可能に取り付けられる。
【0044】
図1に示すように、体内固定部Bが形成された状態となり消化管壁内に留置された瘻孔カテーテル100は、第一帯部12、22、32にて消化管壁82に接触する。第一帯部12、22、32は、近位端11、21、31から遠位端領域4方向に傾斜しつつ、径方向外側に向かって放射状に延びている(
図1、
図2参照)。このように、第一帯部12、22、32は遠位端領域4方向に傾斜しているので、消化管壁82に対する当たりがやわらかく、消化管壁82への侵襲を低減できる。
【0045】
瘻孔83に留置された瘻孔カテーテル100に対し、体外側から引き抜く力が加えられた場合には、消化管壁82により翼部10、20、30を上方から押圧する力が働き、翼部10、20、30が縮径しようとする。しかし、第一湾曲部13、23、33の内側に第二湾曲部15、25、35が入り込んでいるため、翼部10、20、30の縮径が阻害され、翼部10、20、30の過度な縮径を抑制できる。これにより体内固定部Bによる固定状態が維持され、自己抜去等の意図しない瘻孔カテーテル100の抜去を抑制することができる。
【0046】
留置状態の瘻孔カテーテル100を瘻孔83から抜去する際には、挿入時と同様の手技により瘻孔カテーテル100の体内固定部Bを伸展させた状態にして引き抜く。
【0047】
なお、本実施の形態1では、カテーテル部2に対して遠位端領域4を120°回転させた例を示したが、回転角度はこれに限らず、隣あう翼部の第一湾曲部の内側に第二湾曲部の少なくとも一部が入り込むことができる角度であればよい。例えば、本実施の形態1のように3本のベルト6を設けた場合には、回転角度は45°以上、好ましくは60°〜240°とすることができる。回転角度を60°〜240°程度とすることで、第一湾曲部と第二湾曲部との距離がより近くなり、両者の係合状態も深くなる。このため、体内固定部Bの固定状態がより強固になる。
【0048】
また、本実施の形態1では、雌ネジ7aと雄ネジ61aとの螺合により、瘻孔カテーテル100の遠位端領域4と伸展具60とを固定する構成としたが、両者の固定手段はこれに限定されず、遠位端領域4を押し込み、また、引き寄せることのできる固定手段であればよい。
また、本実施の形態1では、伸展具60をチューブ1の遠位端領域4に係止させるための伸展具係止部7として、チューブ1とは別部材である環状部材を設ける例を示した。しかし、伸展具係止部7の具体的な構成はこれに限らず、例えば、チューブ1の遠位端をメルトして環状部材に相当する形状を形づくることもできる。
【0049】
このように、本実施の形態1の瘻孔カテーテル100の体内固定部Bは、チューブ1の周壁を、遠位端及び近位端から所定距離をおいた位置で周方向に分割して形成されたベルト6が変形した複数の翼部10、20、30を有しており、これら翼部10、20、30は、ベルト6の遠位端側と近位端側とを近づけることにより湾曲する第一湾曲部13、23、33及び第二湾曲部15、25、35を備えている。そして、第一湾曲部13、23、33の径方向内側には、両隣の翼部のうち一方の翼部の第二湾曲部15、25、35が配置されている。このため、体表側から瘻孔カテーテルが引っ張られた場合など、第一湾曲部13、23、33が縮径するような力が加えられても、第一湾曲部13、23、33の縮径を第二湾曲部15、25、35が抑制する。これにより、体内固定部Bの翼部10、20、30の形状が保持され、自己抜去等の意図しない抜去を抑制できる。
【0050】
また、瘻孔カテーテル100の体内固定部Bは、チューブ1を加工して構成されていて、伸展状態においてその外径はチューブ1の外径である。このため、一般的な合成樹脂製の消化管壁内において拡径するよう構成されたバンパーと比較して、伸展時における外径が小さい。したがって、挿入/抜去時における瘻孔に対する抵抗が少なく、瘻孔83を傷つけるリスクを低減できる。
また、瘻孔カテーテル100は、チューブ1を主要な構成要素としており、部品点数が少ない。このため、製造コストの増加を抑制できる。
【0051】
また、瘻孔カテーテル100は、遠位端側と近位端側とを引き離すことで容易に伸展状態となるので、挿入/抜去時の手技が容易であり、術者の負担を軽減できる。
【0052】
実施の形態2.
前述の実施の形態1では、固定部形成部3に3本のスリット5を形成することにより3つの翼部10、20、30を設けた例を示したが、本実施の形態2では、4つの翼部10、20、30、40を設ける例を示す。なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付す。
【0053】
図12は、実施の形態2に係る瘻孔カテーテル100Aを説明する図であり、
図12Aは平面図、
図12Bは底面図である。
図13は、実施の形態2に係る瘻孔カテーテル100Aの伸展状態を説明する図であり、
図13Aは側面図、
図13Bは固定部形成部3における水平方向断面模式図である。
【0054】
図13に示すように、固定部形成部3の壁面には、チューブ1の内外を連通する4本のスリット5が、軸方向に平行に設けられている。本実施の形態2では、チューブ1の周壁をほぼ四等分する位置に、4本のスリット5が設けられている。そして、固定部形成部3に形成されたスリット5によりチューブ1の周壁が4つに分割され、分割されたことにより4本のベルト6が形成されている。
【0055】
そして、実施の形態1と同様の作製過程により、
図12に示すような瘻孔カテーテル100Aの体内固定部Bが形成される。
図12に示すように、実施の形態2に係る体内固定部Bは、翼部10、翼部20、翼部30、翼部40を備えている。
そして、翼部10の第一湾曲部13の内側には翼部40の第二湾曲部45が入り込み、翼部20の第一湾曲部23の内側には翼部10の第二湾曲部15が入り込み、翼部30の第一湾曲部33の内側には翼部20の第二湾曲部25が入り込み、翼部40の第一湾曲部43の内側には翼部30の第二湾曲部35が入り込んでいる。したがって、
図12に示すように、軸方向に対して垂直に体内固定部Bを見ると、第一湾曲部13とこれを挟む第一帯部12及び第二帯部14により形成される三角形状の内側に、第二湾曲部15とこれを挟む第二帯部14及び第三帯部16により形成される三角形状が位置している。翼部20、30、40についても同様である。
【0056】
このように構成された体内固定部Bを軸方向に対して垂直に見たときに、隣り合う4つの第一湾曲部13、23、33、43を結ぶと、実質的に四角形状を形成している(
図12参照)。
【0057】
このように、チューブ1の固定部形成部3に4本のスリット5を設けて翼部10、20、30、40により体内固定部Bを構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0058】
実施の形態3.
前述の実施の形態1では、固定部形成部3に3本のスリット5を形成することにより3つの翼部10、20、30を設けた例を示したが、本実施の形態3では、5つの翼部10、20、30、40、50を設ける例を示す。なお、本実施の形態2では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付す。
【0059】
図14は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテル100Bを説明する図であり、
図14Aは平面図、
図14Bは底面図である。
図15は、実施の形態3に係る瘻孔カテーテル100Aの伸展状態を説明する図であり、
図15Aは側面図、
図15Bは固定部形成部3における断面模式図である。
【0060】
図15に示すように、固定部形成部3の壁面には、チューブ1の内外を連通する5本のスリット5が、軸方向に平行に設けられている。本実施の形態3では、チューブ1の周壁をほぼ五等分する位置に、5本のスリット5が設けられている。そして、固定部形成部3に形成されたスリット5によりチューブ1の周壁が5つに分割され、分割されたことにより5本のベルト6が形成されている。
【0061】
そして、実施の形態1と同様の作製過程により、
図15に示すような瘻孔カテーテル100Bの体内固定部Bが形成される。
図14に示すように、実施の形態3に係る体内固定部Bは、翼部10、翼部20、翼部30、翼部40、翼部50を備えている。
そして、翼部10の第一湾曲部13の内側には翼部50の第二湾曲部55が入り込み、翼部20の第一湾曲部23の内側には翼部10の第二湾曲部15が入り込み、翼部30の第一湾曲部33の内側には翼部20の第二湾曲部25が入り込み、翼部40の第一湾曲部43の内側には翼部30の第二湾曲部35が入り込み、翼部50の第一湾曲部53の内側には翼部40の第二湾曲部45が入り込んでいる。したがって、
図14B、Cに示すように、軸方向に対して垂直に体内固定部Bを見ると、第一湾曲部13とこれを挟む第一帯部12及び第二帯部14により形成される三角形状の内側に、第二湾曲部15とこれを挟む第二帯部14及び第三帯部16により形成される三角形状が位置している。翼部20、30、40、50についても同様である。
【0062】
このように構成された体内固定部Bを軸方向に対して垂直に見たときに、隣り合う5つの第一湾曲部13、23、33、43、53を結ぶと、実質的に五角形状を形成している(
図14参照)。
【0063】
このように、チューブ1の固定部形成部3に5本のスリット5を設けて翼部10、20、30、40、50により体内固定部Bを構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0064】
実施の形態4.
前述の実施の形態1〜3では、軸方向に平行なスリット5を設けた例を示した。本実施の形態4では、軸方向に対して斜めのスリット5Aを設ける例を示す。なお、本実施の形態4では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付す。
【0065】
図16は、実施の形態4に係るチューブ1の展開図である。
図17は、実施の形態4に係る瘻孔カテーテル100Cの側面図である。
【0066】
図16に示すように、チューブ1には軸方向に対して斜めのスリット5Aが設けられている。
図16に二点鎖線で示す直線Qは、チューブ1の軸方向に対して平行で、かつ、チューブ1の周壁を三等分する位置に設けられた同じ長さの仮想の直線である。このような直線Qを仮定すると、スリット5Aは、ある直線Qの一端とこれと隣り合う直線Qの他端とを結ぶ直線に沿って形成されており、スリット5Aの切り込み角度Xは、本実施の形態4では60°である。スリット5Aは、本実施の形態4では3本である。3本のスリット5Aにより、軸方向に対して斜めの角度の3本のベルト6Aが形成される。ベルト6Aの遠位端は、隣り合うベルト6Aの近位端と軸方向に平行に位置する。
【0067】
このようなスリット5Aが形成されたチューブ1を用いた瘻孔カテーテル100Cの作製過程を説明する。
(1)まず、実施の形態1と異なり、カテーテル部2と遠位端領域4とを周方向に回転させることなく、ベルト6Aの遠位端側と近位端側とを軸方向に近づける。
(2)(1)の過程において、ベルト6Aを外側に向かって湾曲させ、第一湾曲部13、23、33、第二湾曲部15、25、35を形成する。そして、第一湾曲部13の内側に第二湾曲部35を入り込ませ、第一湾曲部23の内側に第二湾曲部15を入り込ませ、第一湾曲部33の内側に第二湾曲部25を入り込ませる(
図17参照)。これにより、翼部10、翼部20、翼部30が形成される。
【0068】
上記(1)、(2)の過程で形成された翼部10、翼部20、翼部30に対して熱賦形し、体内固定部Bの形状を固定させる。
【0069】
このように、チューブ1の固定部形成部3に軸方向に対して斜めの角度のスリット5Aを設けて体内固定部Bを構成しても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0070】
また、ベルト6Aの遠位端が隣り合うベルト6Aの近位端と軸方向に平行に位置するような角度でスリット5Aを設けたので、翼部10、20、30を形成する作製過程において、カテーテル部2と遠位端領域4とを周方向逆向きに回転させる必要がない。すなわち、瘻孔83への取り付け/抜去時において、翼部10、20、30を伸展させるときに伸展具60を用いてカテーテル部2と遠位端領域4とを回転させることことなく、実施の形態1の翼部10、20、30の係合関係と同様の構成を得ることができる。
【0071】
なお、本実施の形態4では、ベルト6Aの遠位端が隣り合うベルト6Aの近位端と軸方向に平行に位置するような角度でスリット5Aを設ける例を示したが、スリット5Aの角度はこれに限定されない。チューブ1の外径やスリット5Aの本数にもよるが、
図16に示す切り込み角度Xは、1°〜180°、好ましくは30°〜150°とすることができる。なお、スリット5Aを3本設ける場合において、切り込み角度Xを60°以外とした場合には、翼部10、20、30を形成する作製過程において、遠位端領域4をカテーテル部2に対して時計回りあるいは反時計回りに所定角度だけ回転させることができる。
【0072】
実施の形態5.
本実施の形態5では、体内固定部Bの形状維持力を高めるための部材として、内筒70を設ける例を説明する。なお、本実施の形態5では実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一の構成には同一の符号を付す。
【0073】
図18は実施の形態5に係る瘻孔カテーテルの側面図、
図19は実施の形態5に係る瘻孔カテーテルの断面模式図、
図20は実施の形態5に係る瘻孔カテーテルの伸展状態の断面模式図である。なお、
図19では、説明の都合上、翼部の一部を省略して記載している。
【0074】
図18〜
図20に示すように、実施の形態5に係る瘻孔カテーテル100Dは、チューブ1内に挿入された内筒70を備える。内筒70は、ベルト6の遠位端側と近位端側とを軸方向に近づけた状態を保持することで、ベルト6により形成される翼部10、20、30の形状を維持させる機能を有する。
内筒70は、ステンレス、チタン等の材料で構成され、内部に流体物を通過させるための内腔を有している。
【0075】
内筒70の外壁には、遠位端係止部71、遠位端側固定部72、近位端側固定部73が設けられ、内筒70の先端側の内周面には伸展具係止部74が設けられている。遠位端係止部71は、チューブ1の遠位端領域4から突出した位置に配置され、遠位端領域4の先端面を係止する。
遠位端係止部71は、遠位端に向かって緩やかに縮径する形状を有し、挿入/抜去時や留置時に遠位端係止部71によって瘻孔83や消化管壁82、腹壁81を傷つけにくいように構成されている。
【0076】
遠位端側固定部72は、遠位端係止部71よりも基端側において、チューブ1と内筒70とを固定する機能を有する部位である。本実施の形態5に係る遠位端側固定部72は、チューブ1の内径よりもやや大きい外径のつば形状を有しており、チューブ1の遠位端領域4内に遠位端側固定部72を押し込むことでチューブ1を外方に押し広げ、遠位端側固定部72とチューブ1の内周との摩擦により両者が固定されるようになっている。なお、遠位端側固定部72におけるチューブ1の固定方法はこれに限らず、例えば、チューブ1の外側から環状部材を巻き付けてチューブ1を内筒70に締め付ける、内筒70に設けた突起をチューブ1に形成した嵌合穴に嵌合させるなど、任意の方法を採用することができる。
【0077】
近位端側固定部73は、内筒70の基端側において、チューブ1と内筒70とを着脱可能に保持する機能を有する。本実施の形態5に係る近位端側固定部73は、チューブ1の外壁が基端側に向かって縮径されたテーパー構造からなり、嵌め込み摩擦によりチューブ1と内筒70とを固定する。近位端側固定部73を適度な深度までチューブ1の内腔に挿入することで、チューブ1の内周面と近位端側固定部73の外周面との間に摩擦力が生じて両者が固定され、近位端側固定部73を引き抜くことで両者の固定が解除される。なお、近位端側固定部73におけるチューブ1の固定方法はこれに限らず、着脱可能に保持できるものであればよく、伸展具60による操作で着脱可能であればより好ましい。
【0078】
また、伸展具係止部74は、伸展具60を内筒70に係止させるための機能部である。伸展具係止部74は、本実施の形態5では、内筒70の遠位端側内周面に形成された雌ネジ74aを備えている。この雌ネジ74aと、伸展具60の雄ネジ61aとを螺合させることで、内筒70と伸展具60とが固定される。
なお、本実施の形態5に係る瘻孔カテーテル100Dは、実施の形態1において伸展具60を係止させるための機能部として設けていた伸展具係止部7を備えていない。
【0079】
次に、翼部10、20、30が形成された状態の瘻孔カテーテル100Dについて、内筒70とチューブ1との関係を中心に説明する。
図18、
図19に示すように、チューブ1の遠位端領域4の先端面は、遠位端係止部71に係止される。また、チューブ1の遠位端領域4は、遠位端側固定部72に固定される。また、翼部10、20、30の近位端11、21、31よりも基端側のカテーテル部2の内周面は、内筒70の近位端側固定部73とが固定される。このように、翼部10、20、30よりも遠位端側及び近位端側のチューブ1の内周面が、内筒70に固定されることで、翼部10、20、30の形状維持が強化される。翼部10、20、30は、基本的には、熱賦形されたチューブ1の弾性によりその形状が維持されているが、内筒70が翼部10、20、30の遠位端側及び近位端側を保持することで、翼部10、20、30が延びた状態(すなわち、ベルト6の状態)となるのを抑制することができる。
【0080】
次に、翼部10、20、30が形成されていない状態の瘻孔カテーテル100Dについて、内筒70とチューブ1との関係を中心に説明する。
図20に示すように、チューブ1の遠位端領域4は、
図18、
図19と同様に、遠位端係止部71と遠位端側固定部72により内筒70に固定されている。
そして、近位端側固定部73におけるチューブ1と内筒70との固定は解除され、近位端側固定部73はベルト6に対応する箇所に位置している。
【0081】
次に、瘻孔カテーテル100Dの伸展動作を説明する。
まず、
図18、
図19に示すように、瘻孔カテーテル100Dには翼部10、20、30が形成された状態であるものとする。このような状態で、術者は、伸展具60をチューブ1及び内筒70の内腔に挿入する。そして、伸展具60の係合部61を、内筒70の伸展具係止部74に対応する位置まで進め、係合部61の雄ネジ61aと伸展具係止部74の雌ネジ74aとを螺合させる。このようにすると、瘻孔カテーテル100Dの内筒70と、伸展具60とが固定される。そして、術者は、伸展具60をチューブ1の遠位端側に押し込みつつ、チューブ1の基端側を手前側に引き寄せる。この過程において、チューブ1と伸展具60とを、翼部10、翼部20、翼部30を形成する際の回転方向(
図10参照)とは逆方向に、回転させる。このようにすると、隣り合う第一湾曲部13、23、33と第二湾曲部15、25、35との係合状態が解除され、
図20に示すように固定部形成部3はほぼまっすぐの状態となる。また、近位端側固定部73におけるチューブ1と内筒70との固定は解除される。
【0082】
このようにすることで、瘻孔カテーテル100Dは伸展状態となり、瘻孔83への挿入/抜去が可能となる。
【0083】
伸展状態の瘻孔カテーテル100Dを瘻孔83に適度な深度で挿入した後は、術者は、カテーテル部Aが抜けないように腹壁81側に押さえつつ、翼部10、翼部20、翼部30を形成する際の回転方向(
図10参照)に伸展具60を回転させながら、伸展具60を手前側に引っ張る。伸展具60を手前側に引っ張ることで、係合部61に固定された内筒70も術者の手前側に引き寄せられる。内筒70が引き寄せられることにより、内筒70の遠位端側固定部72に固定されたチューブ1の遠位端領域4も引き寄せられ、これに伴って内筒70の近位端側固定部73はカテーテル部2の内腔へと進む。同時に、熱賦形により形成されている翼部10、翼部20、翼部30の形状が復元され、体内固定部Bは
図18、
図19に示すような状態となる。伸展具60を回転させつつ手前側に引っ張るだけで、伸展状態の瘻孔カテーテル100Dを体内固定部Bが形成された状態にすることができ、手技が簡便である。そして、雌ネジ74aと雄ネジ61aの螺合を解除して、瘻孔カテーテル100Dから伸展具60を引き抜く。
【0084】
このように、本実施の形態5によれば、チューブ1内に挿入される内筒70を備えた。そして、この内筒70は、翼部10、20、30の近位端11、21、31よりも基端側でカテーテル部2の内周面を着脱可能に固定する近位端側固定部73と、翼部10、20、30の遠位端17、27、37よりも遠位端側におけるチューブ1内周面に固定される遠位端側固定部72を備えた。翼部10、20、30が形成された状態で、遠位端側固定部72と近位端側固定部73がチューブ1内周面に固定されることで、翼部10、20、30の形状を維持することができる。このため、動きが激しく内容物や体液に晒される消化管壁82内においても、体内固定部Bの形状がより保たれやすくなる。したがって、瘻孔カテーテル100の留置状態を良好に保つことができ、自己抜去等の意図しない抜去を抑制することができる。
【0085】
なお、上記実施の形態1〜5で述べた構成のほか、以下のような応用も可能である。
【0086】
上記実施の形態では、第一湾曲部の径方向内側に、両隣の翼部のうち一方の翼部の第二湾曲部が配置されるように構成した。すなわち、実施の形態1の例では、翼部10の第一湾曲部13の径方向内側に、翼部30の第二湾曲部35が配置されるようにした。しかし、ある翼部の第一湾曲部の径方向内側に、隣の翼部ではなく、一つ以上離れた翼部の第二湾曲部を配置するようにしてもよい。このようにするためには、カテーテル部2と遠位端領域4とを周方向逆向きに回転させて翼部を形成する際に、上記実施の形態1〜3で述べたものよりもさらに回転させるようにする。
【0087】
また、スリット5は、それぞれ、チューブ1の周壁を径方向に等分する位置に設けた例を示したが、厳密に等分である必要はない。また、上記実施の形態では、スリット5の数が3〜5本である例を示したが、スリットの数はこれに限定されず、6本以上とすることもできる。
【0088】
また、上記説明では、チューブにベルトを形成するためにスリットを設けた例を示した。このスリットは、チューブに細い隙間を形成するものであるが、このようなスリットに代えて、切れ目を設け、この切れ目によりベルトを形成してもよい。