【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の無電解メッキパターン形成用組成物は、表面を有機物で修飾されるとともに、前記表面に触媒金属微粒子を担持した金属化合物粒子を含むことを特徴とする。
本発明の無電解メッキパターン形成用組成物を用いれば、無電解メッキパターンから成るパターン化金属微細線を正確に、短時間で形成することができる。
【0008】
前記金属化合物粒子としては、例えば、金属酸化物ナノ粒子が挙げられる。この金属酸化物ナノ粒子は、現像液、メッキ液中で溶解や変性をしないものであることが好ましい。金属酸化物ナノ粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化ハフニウム、酸化セリウム等のナノ粒子が挙げられる。また、金属化合物粒子としては、光触媒活性を持つもの(例えば酸化チタン粒子)が好ましい。
【0009】
金属化合物粒子の形状は特に限定されないが、塗布液における金属化合物粒子の分散性の点から、粒子の短径が5〜50nm程度のものが好ましい。
前記触媒金属としては、例えば、無電解メッキで用いられる公知の触媒金属を用いることができる。具体的には、パラジウム、銀、金、白金、ニッケル、銅等が挙げられる。中でも無電解メッキで用いられる多くの還元剤に対して良好な酸化触媒となり得るパラジウムが好ましい。
【0010】
触媒金属微粒子の金属化合物粒子への担持は、例えば、次のように行うことができる。すなわち、触媒金属イオンを光触媒的に還元可能な金属化合物粒子を用いる場合は、正孔犠牲試薬と触媒金属イオンとを含む溶液に懸濁した金属化合物粒子に紫線照射して、触媒金属微粒子を金属化合物粒子の表面上に光還元析出させることができる。
【0011】
また、光触媒的に触媒金属イオンを還元できない金属化合物粒子を用いる場合は、溶液に懸濁した金属化合物粒子に触媒金属イオンを添加し、これに触媒金属イオンを還元し得る適切な還元剤を添加する化学還元法で触媒金属微粒子の担持を行うこともできる。触媒金属微粒子の担持に用いる触媒金属イオン濃度は、金属化合物粒子中の金属原子濃度の0.01%〜10%とすることが好ましく、0.1%〜2%の濃度にすることが、より好ましい。
【0012】
前記有機物としては、例えば、特開2010−214290号公報に記載のものを用いることができるが、金属化合物粒子の分散性、配位子の分解しやすさ等を考慮すると、エチルマルトール等の3-ヒドロキシ-4-ピロン誘導体や、1,2-オクタンジオール等の1,2-ジオールが好ましい。
【0013】
有機物(配位子)による修飾は、例えば、金属化合物粒子の懸濁液に、金属化合物粒子の金属原子濃度に対して1/50〜10当量の有機物を添加し、しばらく攪拌したのち、表面修飾金属化合物粒子(表面を有機物で修飾された金属化合物粒子)を遠心処理等で回収することで行う。攪拌は、加熱しながら行ってもよい。有機物の配位量は、金属化合物粒子の金属原子濃度に対して1/10〜1当量であることが好ましい。
【0014】
有機物による修飾は、触媒金属微粒子の担持を光還元析出法で行う場合は、光還元析出の際に光触媒反応で有機物が分解するのを避けるために、触媒金属微粒子を金属化合物粒子に担持した後で行うことが好ましい。化学還元法で触媒金属微粒子の担持を行う場合は、有機物による修飾は、触媒金属微粒子の担持の前後、どちらで行ってもよい。
【0015】
本発明の無電解メッキパターン形成用組成物は、例えば、金属アルコキシドに化学式1〜3のいずれかで表される配位子が配位して成る感光性金属アルコキシドを含むことが好ましい。
【0016】
【化1】
【0017】
【化2】
【0018】
【化3】
【0019】
化学式1〜3におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、炭化水素又は水素である。化学式2、3におけるXは、O、S、N−C
nH
2n+1(nは整数)、CH
2のいずれかであり、Yは、OH、ONa、OKのいずれかである。
【0020】
化学式1〜3におけるR
1、R
2、R
3、R
4は、直鎖、分岐、環状のいずれでもよく、鎖中に、化学量論的に取り得る最大数以下の数の多重結合が含まれてもよい。化学式1のR
3は、R
1またはR
2と結合して環を成してもよい。配位子としては、特に、化学式1において、R
1=CH
3, R
2=H, R
3=C
2H
5である乳酸エチルを用いることが望ましい。
【0021】
感光性金属アルコキシドを含むことにより、触媒金属微粒子を担持した金属化合物粒子、及び基体が相互により強固に密着する。そのため、無電解メッキ液が強アルカリ性であったり、強力なキレート剤を含むものであったりしても、無電解メッキパターンを正確に、短時間で形成することができる。なお、感光性金属アルコキシドは、表面を有機物で修飾されるとともに、表面に触媒金属微粒子を担持した金属化合物粒子(以下、表面修飾触媒金属微粒子担持金属化合物粒子とする)と同様に、露光によって現像液に対する溶解性が変化する。そのため、感光性金属アルコキシドを含む場合も、それを含まない場合と同様に、露光、現像の工程により、無電解メッキパターンを形成することができる。
【0022】
感光性金属アルコキシドを構成する金属アルコキシドとしては、例えば、チタンのアルコキシドである、チタン(IV)テトライソプロポキシド、チタン(IV)テトラブトキシドの部分加水分解物が望ましく、チタン(IV)テトラブトキシドを部分的に加水分解・縮合して得られるチタン(IV)ブトキシドポリマーを用いることが最も望ましい。部分加水分解・縮合の方法は、公知の方法で行うことができる。金属アルコキシドとして、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、アルミニウム、及びケイ素のいずれかのアルコキシドの部分加水分解・縮合産物を単独で、あるいは、複数種混合して用いることができる。
【0023】
金属アルコキシドに配位する配位子としては、例えば、化学式1で表わされるα-ヒドロキシカルボン酸、又はそのエステル、化学式2〜3で表されるα-ヒドロキシケトン等が挙げられる。
【0024】
化学式1で表わされるα-ヒドロキシカルボン酸、又はそのエステルとしては、例えば、表1に示すものが挙げられる。
【0025】
【表1】
【0026】
また、化学式2で表される化合物としては、例えば、表2に示すものが挙げられる。
【0027】
【表2】
【0028】
また、化学式3で表される化合物としては、例えば、表3に示すものが挙げられる。
【0029】
【表3】
【0030】
感光性金属アルコキシドは、表面修飾触媒金属微粒子担持金属化合物粒子と混合して用いる。この表面修飾触媒金属微粒子担持金属化合物粒子と感光性金属アルコキシドとの混合比として、M/m比が95/5〜40/60の範囲が好ましく、90/10〜70/30の範囲が一層好ましい。ここで、Mとは、表面修飾触媒金属微粒子担持金属化合物粒子における金属化合物中の金属モル濃度であり、mとは、感光性金属アルコキシド中の金属モル濃度である。M/m比が上記の範囲における下限値より大きいと、無電解メッキ時の金属析出が短時間で済む。また、M/m比が上記の範囲における上限値より小さいと、無電解メッキ液中で、基体の表面における触媒金属微粒子担持金属化合物粒子のパターンが崩壊し難い。
【0031】
感光性金属アルコキシドを構成する配位子は、上述した金属アルコキシドと錯体を形成し、感光性金属アルコキシドとなる。感光性金属アルコキシドは、溶媒に溶解した金属アルコキシドに、配位子を添加し、攪拌することで得ることができる。溶媒としては、金属アルコキシドと配位子の両方を溶解できれば、何を用いてもよい。乳酸エチル、乳酸ブチル等、配位子であると同時に基板への塗布性に優れる溶媒になりうるものを用いる場合は、これら配位子そのものを溶媒とし、これに金属アルコキシドを溶解して感光性金属アルコキシドとしてもよい。感光性金属アルコキシドの合成は室温で行えるが、加熱して行ってもよい。乳酸エチルとチタンブトキシドポリマーの場合は、チタンブトキシドの1-メトキシ-2-プロパノール溶液に乳酸エチルを添加し、数秒攪拌するだけで、黄色の感光性チタンアルコキシドが得られる。
【0032】
感光性金属アルコキシドとは、紫外線照射によって配位子が脱離するものである。配位子の脱離によって、金属アルコキシド間で水酸基の重合が進行し、金属アルコキシドの膜は現像液に対して不溶化し、ネガ型パターンが形成される。
【0033】
本発明の塗布液は、上述した無電解メッキパターン形成用組成物を含むことを特徴とする。本発明の塗布液を用いれば、無電解メッキパターンから成るパターン化金属微細線を正確に、短時間で形成することができる。
【0034】
本発明の無電解メッキパターン形成方法は、上述した塗布液を基体に塗布して膜を形成する工程と、前記基体に対し露光及び現像を行う工程と、前記基体に対し無電解メッキを行う工程と、を含むことを特徴とする。
【0035】
本発明の無電解メッキパターン形成方法では、
図1の(a)、(b)に示すように、基体1に塗布液を塗布して膜3を形成する。膜3には、表面を有機物103で修飾されるとともに、表面に触媒金属微粒子105を担持した金属化合物粒子101が含まれる。
【0036】
次に、
図1の(c)に示すように、膜3を、例えば、フォトマスク4を通して紫外線で露光する。このとき、露光した部分のみにおいて、有機物103が分解し、金属化合物粒子101が凝集する。露光されない部分では、有機物103は分解されず、金属化合物粒子101は凝集しない。
【0037】
次に、
図1の(d)に示すように、現像を行う。このとき、膜3のうち、露光した部分(有機物103が分解し、金属化合物粒子101が凝集した部分)は現像液に溶解せずに残り、露光しなかった部分は溶解して、パターン化された膜3が形成される。ここで、膜3は、表面に触媒金属微粒子105を担持した金属化合物粒子101を含んでいるので、ここまでの工程により、触媒金属のパターンが形成されたことになる。
【0038】
次に、
図1(e)に示すように、無電解メッキを行うと、膜3のパターンに沿って、パターン化された無電解メッキ膜5(すなわちパターン化金属細線)が形成される。
本発明の無電解メッキパターン形成方法によれば、無電解メッキパターンから成るパターン化金属微細線を正確に、短時間で形成することができる。
【0039】
前記基体としては、例えば、基板が挙げられる。この基板としては、塗布液、現像において用いる現像液、無電解メッキにおいて用いるメッキ液で、溶解や変性をしないものが好ましい。基板として、低耐熱性のポリマー基板を用いることができる。
【0040】
塗布液の塗布には、例えば、スピンコート、ディップコート、フローコート、スプレーコート等を用いることができる。
本発明の無電解メッキパターン形成方法では、例えば、基体に直接塗布液を塗布してもよいし、基体上にバインダーを塗布し、そのバインダーの乾燥後に塗布液を塗布して、2層膜を形成してもよい。バインダーを塗布することで、塗布液により形成される膜と基体との密着性がより向上する。
【0041】
バインダーとしては、例えば、金属アルコキシド溶液を用いることができる。特に、チタンアルコキシド溶液、又はジルコニウムアルコキシド溶液を用いることにより、パターン化膜(塗布液により形成された膜であって、露光、現像によりパターン化されたもの)の強アルカリ性メッキ液への耐性がより高くなる。なお、バインダーにより形成される膜は、塗布液で形成される膜とともに、露光及び現像を行う工程において、パターン化される。
【0042】
前記露光の光源としては、金属化合物粒子(例えば金属酸化物ナノ粒子)のバンドギャップ、有機物(表面配位子)の吸収帯、表面配位子‐金属酸化物ナノ粒子の表面錯体の吸収帯の何れか、及び感光性金属アルコキシドの吸収帯を励起可能な光を発する光源を用いることができる。具体的には、超高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、エキシマーランプ、エキシマーレーザー、Nd:YAGレーザー、発光ダイオード、ブラックライト蛍光管などを用いることができる。
【0043】
露光においては、例えば、パターン化用のフォトマスクを用いることができる。このフォトマスクとしては、上記の光を透過可能な基板の上に製膜したクロムマスクや、金属メッシュを用いることができる。フォトマスクを用いずに、レーザー光のスポットで基板上を走査する、あるいは、複数のレーザー光線から生成される干渉パターンを基板に投影して露光してもよい。
【0044】
パターン化は光ではなく、金属メッシュ等からなるマスクで基板を覆い、これを大気圧プラズマなどの反応性プラズマに暴露する、あるいは、大気圧プラズマジェットのスポットで基板上を走査するなどの方法で、有機物(表面配位子)を分解して行ってもよい。
【0045】
露光後は、露光後ベイクを行うことが好ましい。露光後ベイクとしては、例えば、露光後に、100〜150 ℃で数分間ベイクする処理が挙げられる。露光後ベイクにより、有機物(表面配位子)の分解産物が脱離する。その結果、金属化合物粒子間の衝突頻度が上がり、有機物(表面配位子)が分解された金属化合物粒子の凝集が促進される、配位子が脱離した金属アルコキシドの重合が促進される等の効果により、金属化合物粒子のパターンが得やすくなる。
【0046】
前記現像では、光照射部、未照射部の間で溶解性の差異を生じるものなら、どのような現像液を用いてもよいが、アルカリ性水溶液を用いることが好ましい。アルカリ性水溶液としては、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム等の水酸化四級アンモニウム塩の水溶液を用いることが望ましい。TMAH水溶液を用いる際は、その濃度が0.025〜10wt%であることが好ましく、0.25〜2.5wt%であることが最も好ましい。TMAH水溶液には、照射部/未照射部のコントラストをさらに向上させるため、界面活性剤などの添加剤が含まれてもよい。
【0047】
現像後に、さらに100〜500 ℃で現像後ベイクを行うことで、金属アルコキシドの重合がさらに進行し、メッキ液中でのパターン化膜の安定性がさらに向上する。現像後ベイク温度は、担持した触媒金属微粒子が著しく酸化されない温度で行うことが好ましい。
【0048】
無電解メッキ溶液としては、公知のものを用いることができる。無電解銅メッキの場合は、還元剤としてホルムアルデヒド、配位子として、エチレンジアミン四酢酸、酒石酸ナトリウムカリウム、トリエタノールアミン、クエン酸ナトリウム等を含む、強アルカリ性の、硫酸銅などの銅塩含有水溶液を用いて行うことができる。無電解ニッケルメッキの場合は、還元剤として、ジメチルアミン‐ボラン、次亜リン酸、ヒドラジン等、配位子として、種々の有機酸を含む、酸性〜アルカリ性のニッケル塩含有水溶液を用いて行うことができる。この溶液には、ニッケル塩以外に、例えば、モリブデン、タングステン、スズ、等の塩が共存してもよい。無電解メッキ液としては、その他、コバルト、スズ、銀、パラジウム、金、白金等のメッキ液も用いることができる。