(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記循環ベルトと前記ガイド部材との間に区画される前記湾曲搬送路へ硬貨が進入する際に、重なって進入しようとする硬貨を排除するために、前記ガイド部の前記一端には、積み重なった硬貨を分離するための分離ガイドが設けられていることを特徴とする、請求項2記載の硬貨処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明をする。
図1は、この発明の一実施形態に係る硬貨処理装置10の全体構成を示す概略構成図である。この発明の一実施形態に係る硬貨処理装置10は、略直方体形状の筐体12を備えており、この筐体12内には、当該筐体12に対して着脱自在に設けられた着脱自在収納庫20と、筐体12内に固定された4つの固定収納庫30、32、34、36とがそれぞれ設けられている。また、筐体12内には、硬貨を1枚ずつ搬送する搬送部50が設けられている。着脱自在収納庫20は、筐体12に装着されたときに搬送部50から硬貨が送られるようになっており、この搬送部50から送られた硬貨を収納するようになっている。また、着脱自在収納庫20が筐体12から外されたときには、操作者は手動で着脱自在収納庫20に硬貨を収納することができるようになっている。さらに、着脱自在収納庫20は、当該着脱自在収納庫20に収納された硬貨を後述する硬貨排出部24により下方に排出し、排出された硬貨を搬送部50に送るようになっている。また、4つの固定収納庫30、32、34、36は硬貨を金種別に収納するようになっている。より詳細には、各固定収納庫30、32、34、36は、搬送部50から硬貨が送られるようになっており、この搬送部50から送られた硬貨を収納するようになっている。また、各固定収納庫30、32、34、36は、当該固定収納庫30、32、34、36に収納された硬貨を後述する硬貨排出部24により下方に排出し、排出された硬貨を搬送部50に送るようになっている。
【0014】
硬貨処理装置10の筐体12には出金口14が設けられており、操作者はこの出金口14から硬貨を取り出すことができるようになっている。出金口14は搬送部50に接続されており、この搬送部50から出金口14に硬貨が送られるようになっている。また、出金口14には出金リジェクト部16が接続されており、出金口14に集積された硬貨を出金リジェクト部16に送ることができるようになっている。
【0015】
この発明の一実施形態に係る硬貨処理装置10は、たとえば日本円硬貨のうち50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨を出金することができるようになっている。具体的には、着脱自在収納庫20や各固定収納庫30、32、34、36には日本円硬貨のうち50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨をそれぞれ収納することができるようになっており、これらの着脱自在収納庫20や各固定収納庫30、32、34、36に収納された50円硬貨、100円硬貨および500円硬貨を搬送部50により出金口14に送ることにより、操作者は出金口14から出金硬貨を取り出すことができるようになっている。
【0016】
以下、このような硬貨処理装置10の各構成要素の詳細について説明する。
図2および
図3は、
図1に示す硬貨処理装置10における着脱自在収納庫20の構成を示す斜視図である。
図2に示すように、着脱自在収納庫20は、上部が開口した略直方体形状の枠体から構成されており、この着脱自在収納庫20には操作者が持ち運びを行うための取手22が設けられている。着脱自在収納庫20は、硬貨処理装置10の筐体12から側方に引き出すことができるようになっている。また、
図3に示すように、着脱自在収納庫20内の底部には硬貨排出部24が設けられており、着脱自在収納庫20に収納された硬貨は硬貨排出部24により1枚ずつ当該着脱自在収納庫20の下方に排出されるようになっている。
【0017】
図4は、着脱自在収納庫20における硬貨排出部の構成を示す上面図である。硬貨排出部24の構成について、
図4を用いてより詳細に説明する。硬貨排出部24は、4つの円形のディスク穴26aが設けられた円盤形状のディスク26と、ディスク26の外周縁に沿って設けられた左右一対の案内部材27a、27bとを有している。ディスク26には軸26bが設けられており、ディスク26は軸26bを中心として
図4における時計回りの方向に回転する(通常の払出し時の回転動作)ようになっている。ディスク26に設けられた4つのディスク穴26aは同一の形状となっており、各ディスク穴26aの直径は、硬貨処理装置10により処理されるべき様々な金種の硬貨のうち最もサイズの大きな硬貨の直径とほぼ同じ大きさとなっている。具体的には、各ディスク穴26aの直径は500円硬貨の直径(27.5mm)とほぼ同じ大きさである。
【0018】
前述のように、ディスク26の外周縁に沿って左右一対の案内部材27a、27bが設けられており、これらの案内部材27a、27bの間には、硬貨排出部24により排出される硬貨が通過する通路27cが形成されている。この通路27cの幅の大きさは、硬貨処理装置10により処理されるべき様々な金種の硬貨のうち最もサイズの大きな硬貨の直径(具体的には、500円硬貨の直径である27.5mm)よりも大きくなるようになっている。また、
図4に示すように、左右一対の案内部材27a、27bの間に形成された通路27cには可動ベアリング28が設けられている。この可動ベアリング28は一方の案内部材27aの近傍に設けられており、通路27cを通過する硬貨に押されることにより
図4の矢印に示す方向に移動可能となっている。可動ベアリング28と他方の案内部材27bとの間の距離は、硬貨処理装置10により処理されるべき様々な金種の硬貨のうち最もサイズの小さな硬貨の直径(具体的には、50円硬貨の直径である24mm)よりも小さくなっている。このため、ディスク26が軸26bを中心として
図4における時計回りの方向に回転し、ディスク26のディスク穴26aから通路27cに硬貨が送られると、この硬貨は可動ベアリング28に当接してこの可動ベアリング28を
図4の矢印に示す方向に押圧する。そして、可動ベアリング28と案内部材27bとの間の領域を通過した硬貨は、通路27cから
図4における下方にさらに搬送されて硬貨排出部24から排出されるようになる。
【0019】
また、硬貨排出部24において、通路27cの出口側(
図4における下側)には磁気センサ29が設けられている。この磁気センサ29は、通路27cから
図4における下方にさらに搬送されて硬貨排出部24から排出される硬貨を検出するようになっている。
図5は、
図1に示す硬貨処理装置10における搬送部50の構成を示す側面図である。
図5に示すように、筐体12に装着された時の着脱自在収納庫20の下方には、前記磁気センサ29を含む硬貨判別部40が設けられている。硬貨判別部40は、筐体12に装着された着脱自在収納庫20の硬貨排出部24から排出される硬貨の金種の判別および計数を行うようになっている。硬貨判別部40は、
図4に示すような硬貨排出部24の真下の位置に設けられており、硬貨判別部40で判別された硬貨はその下方に配置された第1の循環ベルト52上に落下する。
【0020】
次に、各固定収納庫30、32、34、36の構成について説明する。前述のように、各固定収納庫30、32、34、36には硬貨が金種別で収納されるようになっている。より詳細には、各固定収納庫30、32、34、36には搬送部50からそれぞれ硬貨が送られるようになっており、各固定収納庫30、32、34、36は搬送部50から送られた硬貨を収納するようになっている。また、各固定収納庫30、32、34、36内の底部には、着脱自在収納庫20に設けられた硬貨排出部24と同じ構成の硬貨排出部24がそれぞれ設けられており、各固定収納庫30、32、34、36に収納された硬貨は硬貨排出部24により1枚ずつ下方に排出されるようになっている。さらに、各固定収納庫30、32、34、36の下方には、着脱自在収納庫20に設けられた硬貨判別部40と同じ構成の硬貨判別部40がそれぞれ設けられており、各固定収納庫30、32、34、36の硬貨排出部24により排出された硬貨は前記磁気センサ29を含む硬貨判別部40により金種の種別および計数が行われるようになっている。そして硬貨判別部40で金種の識別が行われ計数された各硬貨は、第1の循環ベルト52上へ落下する。
【0021】
次に、筐体12内で硬貨の搬送を行う搬送部50の構成について、
図5を参照して説明する。
図5に示すように、搬送部50は、複数のプーリ51に張架され、
図5における矢印の方向に循環移動する第1の循環ベルト52と、一対のプーリ53に張架され、
図5における矢印の方向に循環移動する第2の循環ベルト54とを有している。
第1の循環ベルト52は、
図5において左右方向に延びる横方向搬送部56と、横方向搬送部56の左側につながっていて、硬貨を下から上へと搬送する縦方向搬送部57とを含んでいる。着脱自在収納庫20や各固定収納庫30、32、34、36から硬貨排出部24によりそれぞれ下方に排出された硬貨は、硬貨判別部40を通り、第1の循環ベルト52の横方向搬送部56に載るようになっている。そして横平方向搬送部56で
図5において左方向に搬送された硬貨は、縦方向搬送部57で上方へ搬送されて第2の循環ベルト54へ受け渡される。
【0022】
縦方向搬送部57には、略円弧状に湾曲した湾曲搬送路52bが含まれている。また、第1の循環ベルト52の表面には、ピン(突起)52aが第1の循環ベルト52の長さ方向に所定間隔で設けられている。第1の循環ベルト52が循環移動されることにより、硬貨はピン52aにより1〜3枚ずつ搬送される。特に、縦方向搬送路57では、ピン52aにより硬貨が1枚ずつ上方へ持ち上げられ、第2の循環ベルト54へと受け渡される。
【0023】
なお、
図5において、縦方向搬送部57に示された小径の多数個のプーリ51は、第1の循環ベルト52を略円弧状に湾曲した状態に保つために必要なプーリである。
この実施形態に係る硬貨処理装置10の特徴の1つは、湾曲搬送路52bを含む縦方向搬送部57において、第1の循環ベルト52が湾曲搬送路52bの湾曲外側を区画するように配置されている(張架されている)ことである。そして、その湾曲外側に配置された第1の循環ベルト52の表面には、湾曲内側に向かって突出するピン(突起)52aが設けられていることである。
【0024】
図6は、第1の循環ベルト52を用いた縦方向搬送部57の部分拡大図である。この
図6を参照して、縦方向搬送部57、特に湾曲搬送路52bの構成について詳細に説明をする。
図6を参照して、縦方向搬送部57における湾曲搬送路52bは、第1の循環ベルト52と、ガイド部材58とを有し、第1の循環ベルト52とガイド部材58との間で湾曲搬送路52bが区画されている。ガイド部材58は、下端59から上端60へ向かって円弧状に凸湾曲したガイド部としての凸湾曲部61を有している。他方、第1循環ベルト52は、ガイド部材58の凸湾曲部61の湾曲外側に位置するように延び、凸湾曲部61と所定の間隔をあけて対向する移動面62を備えるように配置されている。これにより、ガイド部材58の凸湾曲部61と第1の循環ベルト52の移動面62とによって湾曲搬送路52bが区画されている。そして、湾曲搬送路52bの湾曲外側を区画する第1の循環ベルト52の移動面62には、移動方向に沿って一定間隔で、ガイド部材58の凸湾曲部61に向かって突出するピン(突起)52aが備えられている。このように、第1の循環ベルト52が湾曲搬送路52bの外側を区画するようにして移動することにより、搬送される硬貨の下端が湾曲搬送路52bの凸湾曲部61から浮き上がっても、ピン52aと第1の循環ベルト52の移動面62との間に硬貨が噛み込むように挟まるといった不具合がなくなる。
【0025】
より具体的に、
図7A、7Bの模式図を用いて説明する。
図7Aは、従来の湾曲搬送路の構成例である。すなわち、湾曲搬送路の外側がガイド部材で区画され、循環ベルトが湾曲搬送路の内側に配置されている。かかる構成であれば、ピン52aで上方へ搬送される硬貨は、湾曲搬送路においてその下端が内側搬送面から浮き上がる。そして浮き上がった硬貨の下端の下にピン52aが入り込む状態になり易く、ピン52aとガイド部材との間で硬貨の下端が挟まれた噛み込み状態が生じ易い。
【0026】
一方、
図7Bに示すように、ガイド部材58が湾曲搬送路52bの湾曲内側に配置され、循環ベルト52が湾曲搬送路52bの湾曲外側に配置されている場合は、外側に配置された循環ベルト52の移動面62から突出するピン52aが、湾曲搬送路52b内で下端が浮き上がった硬貨の下方部を押し上げるように作用するため、硬貨の下端が搬送路とピン52aとの間で挟まれて噛み込むといった不具合は生じない。
【0027】
図6を再び参照して、ガイド部材58の下端59には、第1の循環ベルト52により2枚の硬貨が積み重なった状態で搬送されてくる際に、積み重なった硬貨を分離するための分離ガイド63が形成されている。この実施形態では、分離ガイド63は、具体的には湾曲搬送路52bへの硬貨の進入方向に対して硬貨をすくう「すくい面」63とされている。すなわち、分離ガイドとしてのすくい面63は、上方へ持ち上げられる硬貨の先端が接触することにより、硬貨の先端を湾曲搬送路52bの入口側へとすくうように変位させ、その結果、持ち上げられる硬貨の下端がピン52aから離れてバランスを崩し、下方へ落下させるという作用を奏する。
【0028】
この分離ガイドとしてのすくい面63は、その下端部が角のない円弧状に形成されているのが好ましい。角がなければ、硬貨の先端がぶつかっても、硬貨は丸められた円弧状部に沿ってずれ、硬貨の先端がぶつかって硬貨噛みを生じるといったことがないからである。
湾曲搬送路52bを搬送された硬貨は第2の循環ベルト54上へと受け渡される。このため、ガイド部材58の上端60に隣接して第2の循環ベルト54の先端54aが位置し、第2の循環ベルト54は後方(
図6において右方)へと回転移動するように配置されている。
【0029】
この実施形態では、湾曲搬送路52bの湾曲外側を区画する第1の循環ベルト52の移動面62が、第2の循環ベルト54の先端54aの上方に対向するように、すなわち第2の循環ベルト54の先端54aとオーバラップするように配置されている。かかる構成であれば、第1の循環ベルト52に突設されたピン52aで搬送される硬貨は確実に第2の循環ベルト54の先端54aに乗るまで搬送されるので、湾曲搬送路52bから第2の循環ベルト54への硬貨の受け渡しが安定して行える。そして硬貨が湾曲搬送路52bと第2の循環ベルト54との間で滞留したり立ったりすることがなく、硬貨搬送のための処理時間も短くなる。
【0030】
なお、この実施形態では、第2の循環ベルト54上に乗って搬送される硬貨を検知するための残留検知センサ55(
図1参照)が設けられているが、その残留検知センサ55が硬貨を検知できる位置まで、すなわち第2の循環ベルト54により硬貨が確実に搬送される状態になるまで、上述のオーバラップ状態に設けられた第1の循環ベルト52により硬貨がピン52aで強制搬送される。よって、残留検知センサで検知できない領域に硬貨が滞留するといった不具合も解消できる。
【0031】
図5を再び参照して、第2の循環ベルト54は着脱自在収納庫20や各固定収納庫30、32、34、36の上方に位置するようになっており、図示しない分岐部材により第2の循環ベルト54から硬貨が分岐して着脱自在収納庫20や各固定収納庫30、32、34、36にこの分岐した硬貨が送られるようになっている。ここで、分岐部材は、第2の循環ベルト54に沿って、着脱自在収納庫20および各固定収納庫30、32、34、36にそれぞれ対応して複数(具体的には5つ)設けられている。
【0032】
また、第2の循環ベルト54の下流側端部(
図5における右端)には、
図5において時計回りの方向に回転する逆転ローラー64が設けられていることにより、第2の循環ベルト54から出金口14に送られる硬貨を1枚ずつに分離することができるようになる。また、前述したように、第2の循環ベルト54には、この第2の循環ベルト54に硬貨が残留したときにこのことを検知する残留硬貨検出部55が設けられている(
図1参照)。この残留硬貨検出部55はたとえば磁気センサから構成されている。また、
図1に示すように、搬送部50における逆転ローラー64の下流側において、第2の循環ベルト54から出金口14に送られる硬貨を検出する検出センサ65が設けられている。この検出センサ65はたとえば光センサからなり、搬送部50の第2の搬送ベルト54から出金口14に送られる硬貨の計数を行うようになっている。
【0033】
次に、
図5に示すこの発明の一実施形態に係る搬送部50、特に第1の循環ベルト52を用いた搬送部の逆転制御について説明をする。第1の循環ベルト52は、着脱自在収納庫20または固定収納庫30、32、34、36のいずれかから硬貨判別部40を経由して落下される硬貨を受け取め、その硬貨を
図5において左方向に横方向搬送部56によって搬送し、さらにそれを縦方向搬送部57によって上方へと搬送する。
【0034】
着脱自在収納庫20および固定収納庫30、32、34、36から繰り出された硬貨は、第1の循環ベルト52上に横向きに寝た状態で乗り、左方へと搬送される。なぜなら、これら着脱自在収納庫20および固定収納庫30、32、34、36から硬貨判別部40を経由して繰り出される繰り出し部と第1の循環ベルト52との間には硬貨立ちを許容する空間はなく、繰り出される硬貨は第1の循環ベルト52上に寝た状態で受け取められる。よって、繰り出し部から繰り出される硬貨の受け取め挙動が安定で、スムーズな硬貨搬送を行うことができる。
【0035】
一方、縦方向搬送部57の下方部においては、硬貨立ちを許容する通路を確保しておく必要があり、ここに滞留した硬貨を順に縦方向搬送部57によって上方へと搬送することになる。すなわち、縦方向搬送部57の下方には、硬貨をかき上げるための空間が必要で、硬貨立ちを許容する通路が存在する。
そこで、縦方向搬送部57では、図中Aに多数の立ち回り硬貨が生じた時に、それを崩すために第1の循環ベルト52を逆転させる制御を行う必要がある。また、図中Bにおいて硬貨が詰まった時、すなわち湾曲搬送路52bの入口に硬貨が噛み込む等により詰まった時に、第1の循環ベルト52を逆転制御する必要がある。
【0036】
ところで、固定収納庫36から硬貨を繰り出して搬送している場合において、第1の循環ベルト52を逆転制御する場合、固定収納庫36の下方にある第1の循環ベルト52から左方向に向かって、第1の循環ベルト52上には硬貨が乗っていることが予測でき、かかる状態で第1の循環ベルト52を逆転させた場合、第1の循環ベルト52に乗った硬貨は
図5において右方向へ搬送され、搬送路後端66で硬貨詰まり等を生じる可能性がある。
【0037】
一方、着脱自在収納庫20から硬貨を繰り出し搬送している場合においては、第1の循環ベルト52上に乗った硬貨は着脱自在収納庫20の下から左側の領域である。このため、第1の循環ベルト52を逆転制御する場合、逆転させる移動量は、搬送路後端部66までの距離が長い分だけ長く逆転させることが可能である。
そこで、この実施形態では、図中Aの部分における立ち回り硬貨を崩したり、図中Bにおいて硬貨が詰まった場合等における第1の循環ベルト52の逆転制御につき、次のような条件を設定している。
(1)逆転制御は、1回につき、一定時間または一定距離で管理する。そして、逆転可能回数を、どの収納庫から硬貨が繰り出されている時の硬貨搬送であるかにより、変化させる。換言すれば、逆転可能回数を、繰り出される収納庫毎に設定する。
(2)また、逆転制御しても、次の正転で、逆転と同じ時間(または同じ距離)正転できた時は、逆転可能回数を減らさず、繰り返すことが出来る様に設定する。
【0038】
これを表で示すと、表1の通りとなる。
【0039】
【表1】
すなわち、着脱自在収納庫20は逆転頻度が高く、かつ搬送路終端部66までの距離が長いため、逆転制御可能な最大回数が、たとえば5回と設定されている。また、固定収納部30は、着脱自在収納庫20の次に逆転頻度が高く、搬送路終端部66までの距離も長いので、逆転制御可能な最大回数がたとえば4回と設定されている。このようにして、固定収納庫34は逆転制御可能な最大回数が3回、固定収納庫36は逆転制御可能な最大回数が2回、固定収納庫36は逆転制御可能な最大回数が1回と、順に少なくなるように設定されている。
【0040】
かかる逆転制御回数を設定しておき、延べ10回の逆転制御を行っても搬送不良が解消しない場合はエラー処理とする。
かかる制御を行うことにより、硬貨の受け渡し挙動の悪化や硬貨の立ち回りによる残留や処理時間の遅延が改善され、よりスムーズな硬貨搬送を実現することができる。
なお、この実施形態では、第1の循環ベルト52を逆転させる必要上、第1の循環ベルト52を駆動するためのモータ67はDCモータが採用されている。
【0041】
次に、この実施形態に係る硬貨処理装置のさらに別の特徴について、
図3および
図4を参照して説明する。
従来の硬貨排出部24を備えた着脱自在収納庫20には、着脱自在収納庫20内に硬貨が残っているか否かを検知するためのエンプティ検知機能は備えられていなかった。
このため、変形硬貨や異物がディスク26に挟まって硬貨が繰り出せない時は、硬貨の計算が違算となっていた。また、硬貨繰り出し動作でしかエンプティ保証ができないので、収納庫内に硬貨がある場合は必ず出金されてしまい、処理をリセットした時等には、収納庫内の硬貨の有無を確認できないという不都合があった。
【0042】
そこで、この実施形態では、
図3に示すように、着脱自在収納庫20の側面に発光素子(または受光素子)70を配置し、ディスク26の下方に受光素子(または発光素子)71を配置して、着脱自在収納庫20の側面とディスク26との間に斜め向きの光軸73が通るようにした。光軸73を斜めとしたのは、着脱自在収納庫20へ硬貨を投入する際にその妨げにならないようにしたものである。
【0043】
着脱自在収納庫20内の硬貨のエンプティ検知は、次のようにして行われる。
ディスク26を回転させるモータを逆転させ、透光時間をチェックする。ディスク26が逆転される場合は、硬貨排出部24から硬貨は排出されない。ディスク26を逆転させている場合において、
発光素子から受光素子への光軸の透光/遮光は、
図8のようになる。すなわち、
図8(A)に示すように、規則的な透光と遮光のパルス出力が得られる場合は、ディスク26による遮光であり、収納庫内に硬貨がない状態を表わしている。一方、
図8(B)に示すようにディスク穴26a内に硬貨が残っていたり、ディスク26上に硬貨がある場合には、
図8(B)に示すように光軸が遮光される時間が延びる。それゆえ、エンプティ状態における規則正しい遮光と透光とのパルス出力から遮光時間が延びたパルス出力であるか否かにより、収納庫内に硬貨が残っているか否かの検知が行える。
【0044】
次に、上記実施形態(
図1に示す硬貨処理装置10)におけるバラ硬貨の装填時の硬貨のマネーフローについて、
図9を参照して説明する。
利用者は、装填する金種を操作パネル(図示せず)で設定すると共に着脱自在収納庫20に設定した特定金種のバラ硬貨を装填する。装填すると、着脱自在収納庫20の下部から一枚ずつ硬貨が繰り出されて磁気センサ29を含む硬貨判別部40で金種判別と枚数の計数をしながら、指定した金種の収納庫、この実施の形態であれば固定収納庫30に一枚ずつ装填される。
【0045】
繰り出された硬貨が全て正常であれば、硬貨判別部40で判別されて計数された計数値を正として装填枚数が固定収納庫30の在高に計上され、装填処理が完了する。
ところで、硬貨判別部40で異金種などのリジェクト硬貨(RJ貨)を検出した場合は、その時点で硬貨の搬送先がRJ(リジェクト)排除先(出金口14)に変更され、RJ貨と共にRJ貨の前にある数枚の正常硬貨もRJ排除先(出金口14)に搬送されることになる。その際、RJ排除先(出金口14)の手前に検出センサ65が設けてあり、光の遮光によって通過する硬貨の枚数をカウントする。
【0046】
このようにすることで、硬貨判別部40で計数した合計から検出センサ65でカウントした計数値を差し引くと固定収納庫30に装填された硬貨の数が算出され、固定収納庫30の在高を確定できる。
しかし、例えば、
図9に示すように、正常硬貨とRJ貨との間に、磁気センサ29でカウントできない異物、例えば樹脂のボタンや包装硬貨の包装紙などが混入した場合、硬貨判別部40では検知しないが検出センサ65で検知してしまう。この場合、硬貨判別部40で計数した合計から検出センサ65でカウントした計数値を差し引くと固定収納庫30に装填された硬貨の数は誤った数が算出されてしまうことになる。
【0047】
そこで、本実施の形態では、装填処理で硬貨判別部40がRJ貨を検知した時、RJ貨とそれまでの数枚の硬貨はRJ排出先(出金口14)に搬送され、着脱自在収納庫20からの繰り出しを停止する。そして、RJ貨を検出するまでに固定収納庫30に装填された硬貨を着脱自在収納庫20に全て戻し、上述する装填処理を再度実行する。そして、着脱自在収納庫20内の硬貨がRJ貨を検知せずに全て固定収納庫30に装填されたら装填完了とすることで、装填数の誤差が生じることがない。
【0048】
次に、本実施の形態におけるバラ硬貨の装填時において、装填ミスが生じた場合の硬貨のマネーフローについて、
図10、11を参照して説明する。
まず、
図10に示すように、硬貨処理装置10の動作途中に着脱自在収納庫20からバラ硬貨を繰り出して固定収納庫30、32、34、36に金種別に装填する場合について説明する。このような装填は、特に、運用中、金種別に硬貨を収納した固定収納庫の在高が少なくなった場合に行われる。
【0049】
まず、着脱自在収納庫20から特定金種のバラ硬貨を装填する場合、着脱自在収納庫20から硬貨を繰り出して、例えば固定収納庫30に装填する。この際、着脱自在収納庫20から繰り出された金種が硬貨判別部40で判別され、計数されながら該当する収納庫、本実施の形態では固定収納庫30に装填されていく。
しかし、一枚目に繰り出された金種が異金種であることを判別した場合、指定した金種と装填された金種が間違っているとして、固定収納庫30には搬送せず、繰り出した着脱自在収納庫20に戻して繰り出しを終了する。
【0050】
そして、使用者には装填金種が間違っている旨の報知を行い、使用者に確認するよう促す。
このようにすることで、通常であれば、着脱自在収納庫20に装填された全ての硬貨をリジェクトするため、処理が終了するまでに時間がかかっていたが、この状態で終了することにより、早く処理を停止させることができる。また、リジェクトされた硬貨を着脱自在収納庫20に戻すことにより、異金種の入れ替えを簡単に行うことができる。
【0051】
更に、動作開始前など、各固定収納庫30、32、34、36にダイレクトに収納した場合の運用について、
図11を参照して説明する。
装填が行われると、まず最初に、各固定収納庫30、32、34、36に収納した枚数が計数される。最初に、固定収納庫30に収納された硬貨を硬貨判別部40で金種判別して全ての硬貨を繰り出し、着脱自在収納庫20に収納する。その後、着脱自在収納庫20から繰り出して元の固定収納庫30に戻すことで計数されて固定収納庫30の在高を確定する。そしてこの動作は、固定収納庫32、34、36について順番に行われる。
【0052】
しかし、
図11に示すように、装填する金種を誤った場合、固定収納庫30から繰り出した硬貨は硬貨判別部40で異金種と判断される。この場合、所定枚数、例えば5枚の異金種が連続した時に、装填金種が誤っていると判断し、全ての硬貨を着脱自在収納庫20に装填した時点で処理を終了する。それと同時に使用者には装填金種が間違っている旨の報知を行い、使用者に確認するよう促す。
【0053】
このようにすることで、誤った金種を収納した場合でも着脱自在収納庫20に硬貨が移されるため、誤った硬貨の取出しが簡単にできる。また、リジェクトであってもリジェクト口に搬送しないので、バラ硬貨の取出しが簡単に行える。
この発明は、以上説明した具体的な実施形態に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。