(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0031】
1. 第1実施形態
1.1. 放射線検出装置の構成
まず、第1実施形態に係る放射線検出装置の構成について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線検出装置100を示す機能ブロック図である。
図2は、本実施形態に係る放射線検出装置100を模式的に示す概略説明図である。なお、
図2では、半導体検出素子10、冷却素子20、放熱器60の断面の概略が示されている。
【0032】
放射線検出装置100は、
図1および
図2に示すように、半導体検出素子10と、冷却素子20と、第1温度監視部30と、第2温度監視部40と、制御部50と、を含む。さらに、放射線検出装置100は、放熱器60を含むことができる。
【0033】
半導体検出素子10は、放射線を検出する。半導体検出素子10は、例えば、エネルギー分散型X線検出素子であり、シリコンドリフト型検出器(Silicon Drift Detector、SDD)である。シリコンドリフト型検出器は、例えば、入射X線によってLiを拡散させたP型Siから発生した電子を、同心円状の電位勾配を持った電極構造により効率よくアノードに導くようにした素子である。SDDでは、Siの不純物コントロールによって、熱ノイズの減少が図られている。半導体検出素子10は、例えば、真空容器(図示しない)に収容され、真空容器に設けられたX線入射窓から入射したX線を検出する。また、ここで、放射線とは、例えば、X線であり、より具体的には、試料に電子線やX線を照射することにより発生する特性X線(蛍光X線)等である。
【0034】
半導体検出素子10は、
図2に示すように、冷却素子20の吸熱部22と接している。半導体検出素子10は、設定温度に維持されるように、冷却素子20によって冷却される。設定温度は、半導体検出素子10が所定の性能を発揮できる温度であり、例えば、−30℃以上0℃以下に設定される。半導体検出素子10の温度は、第1温度監視部30によって監視されている。
【0035】
冷却素子20は、半導体検出素子10を冷却する。冷却素子20は、例えば、ペルチエ素子である。ペルチエ素子とは、異種の金属あるいは半導体を接触させて電流を流すと接触点で熱が発生したり吸収されたりする現象(ペルチエ効果)を利用した素子である。冷却素子20は、
図2に示すように、吸熱部22と、放熱部24と、を有する。冷却素子20は、図示の例では、板状の部材であり、当該部材の1つの面が吸熱部22となり、吸熱部22と反対側の面が放熱部24となっている。
【0036】
吸熱部22は、半導体検出素子10と接しており、放熱部24は、放熱器60(ヒートパイプ62)と接している。冷却素子20は、制御部50から直流電流が供給されると、その電流量に応じた熱を吸熱部22から放熱部24に伝達する。これにより、吸熱部22に接する半導体検出素子10を冷却することができる。吸熱部22から放熱部24に伝達された熱は、放熱器60を介して、装置の外部に放出される。冷却素子20の温度は、第2温度監視部40によって監視されている。
【0037】
第1温度監視部30は、半導体検出素子10の温度を監視している。第1温度監視部30は、半導体検出素子10の温度を測定して検出素子温度情報I
10を取得する。第1温度監視部30は、取得した検出素子温度情報I
10を制御部50に出力する。第1温度監視部30は、例えば、サーミスタ(図示しない)を含んで構成された温度監視回路である。
【0038】
第2温度監視部40は、冷却素子20の温度を監視している。第2温度監視部40は、冷却素子20の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得する。第2温度監視部40は、例えば、冷却素子20の放熱部24の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得する。
図2の例では、第2温度監視部40は、放熱器60(ヒートパイプ62)を介して、冷却素子20の放熱部24の温度を測定している。すなわち、第2温度監視部40は、放熱器60(ヒートパイプ62)の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得している。第2温度監視部40は、取得した冷却素子温度情報I
20を制御部50に出力する。第2温度監視部40は、例えば、サーミスタ(図示しない)を含んで構成された温度監視回路である。
【0039】
制御部50は、半導体検出素子10が設定温度に維持されるように冷却素子20を制御する。制御部50は、設定温度を第1温度に設定し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する第1温度維持処理を行う。また、制御部50は、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行う。また、制御部50は、第1温度維持処理の実行中に、第1閾値判定処理において冷却素子20の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合、設定温度を第1温度から第1温度よりも高い第2温度に変更し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第2温度に維持されるように冷却素子20を制御する第2温度維持処理を行う。
【0040】
制御部50は、さらに、冷却素子温度情報I
20に基づいて、放熱部24の温度が第2閾値よりも低いか否かを判定する第2閾値判定処理を行う。また、制御部50は、第2温度維持処理の実行中に、第2閾値判定処理において放熱部24の温度を第2閾値よりも低いと判定した場合、設定温度を第2温度から第1温度に変更し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する第1温度復帰処理を行う。
【0041】
制御部50は、さらに、設定温度を第2温度に設定した場合、警告信号を出力する。
【0042】
なお、上述した制御部50の処理の詳細については、後述する「1.2. 放射線検出装置の動作」で説明する。
【0043】
制御部50は、専用回路により実現して上述した処理や制御を行うようにしてもよい。また、制御部50は、CPU(Central Processing Unit)が記憶部等に記憶された制御プログラムを実行することによりコンピューターとして機能し、上述した処理や各種制御を行うようにしてもよい。すなわち、制御部50は、制御プログラムにより、冷却素子20を制御する冷却素子制御手段、警告信号を出力する警告信号出力手段として機能するように構成してもよい。
【0044】
放熱器60は、冷却素子20で発生した熱を放出する。放熱器60は、
図2に示すように、ヒートパイプ62と、ペルチエ素子64と、放熱板66と、を含んで構成されている。
【0045】
ヒートパイプ62は、一方の端部が冷却素子20の放熱部24と接しており、他方の端部がペルチエ素子64と接している。ヒートパイプ62は、放熱部24の熱をペルチエ素子64に伝達することができる。
【0046】
ペルチエ素子64は、一方の面(吸熱部)がヒートポンプ62と接しており、当該一方の面とは反対側の他方の面(放熱部)が放熱板66と接している。ペルチエ素子64は、ヒートポンプ64を冷却することができる。これにより、冷却素子20の放熱部24の放熱効率を高めることができる。
【0047】
放熱板(ヒートシンク)66は、ペルチエ素子64の放熱部と接している。これにより、ペルチエ素子64の熱を効率より放出することができる。
【0048】
なお、放熱器60の構成は、図示の例に限定されず、冷却素子20で発生した熱を放出することができる構成であれば特に限定されない。例えば、放熱器60は、強制的に空気の移動量を増加させるためのファン(図示しない)を備えていてもよい。これにより、放熱効率を向上させることができる。
【0049】
1.2. 放射線検出装置の動作
次に、本実施形態に係る放射線検出装置の動作について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る放射線検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図1および
図2に示す放射線検出装置100および
図3に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、ここでは、放射線検出装置100の半導体検出素子10に対する温度制御方法について説明する。
【0050】
まず、第1温度監視部30が、検出素子温度情報I
10の取得を開始する検出素子温度情報取得処理を行う(検出素子温度情報取得工程S10)。
【0051】
第1温度監視部30は、半導体検出素子10の温度を測定して検出素子温度情報I
10を取得する。第1温度監視部30は、取得した検出素子温度情報I
10を制御部50に出力する。第1温度監視部30は、検出素子温度情報取得処理を繰り返し行う。第1温度監視部30は、例えば、放射線検出装置100が半導体検出素子10に対する温度制御を終了するまで検出素子温度情報取得処理を繰り返し行う。
【0052】
次に、第2温度監視部40が、冷却素子温度情報I
20を取得する冷却素子温度情報取得処理を開始する(冷却素子温度情報取得工程S11)。
【0053】
第2温度監視部40は、冷却素子20の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得する。具体的には、第2温度監視部40は、放熱器60(ヒートパイプ62)を介して、冷却素子20の放熱部24の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得する。すなわち、工程S11において冷却素子20の温度とは、冷却素子20の放熱部24の温度である。第2温度監視部40は、取得した冷却素子温度情報I
20を制御部50に出力する。第2温度監視部40は、冷却素子温度情報取得処理を繰り返し行う。第2温度監視部40は、例えば、放射線検出装置100が半導体検出素子10に対する温度制御を終了するまで検出素子温度情報取得処理を繰り返し行う。
【0054】
なお、検出素子温度情報取得工程S10、および冷却素子温度情報取得工程S11を行う順序は特に限定されない。また、第1温度監視部30は、制御部50の要求に応じて、適宜、検出素子温度情報取得処理を行ってもよい。同様に、第2温度監視部40は、制御部50の要求に応じて、適宜、冷却素子温度情報取得処理を行ってもよい。
【0055】
次に、制御部50が、半導体検出素子10の設定温度を第1温度に設定し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する第1温度維持処理を行う(第1温度維持工程S12)。
【0056】
制御部50は、検出素子温度情報I
10に基づいて、冷却素子20に供給する電流量を制御することにより、半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する。第1温度は、例えば、半導体検出素子10が所定の性能を発揮できる温度であり、例えば、−30℃以上0℃以下である。ここでは、第1温度を−30℃とする。制御部50は、例えば、予め記憶部(図示しない)等に記憶された設定温度情報を取得して、設定温度を設定する。
【0057】
次に、制御部50が、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行う(第1閾値判定工程S13)。
【0058】
制御部50は、冷却素子温度情報I
20から、冷却素子20の放熱部24の温度が、第1閾値よりも高いか否かを判定する。ここで、第1閾値は、制御部50の半導体検出素子10に対する温度制御が破綻するか否かの基準となる値である。放射線検出装置100では、冷却素子20の放熱部24の温度が所定の温度以上になると、冷却素子20(吸熱部22)の冷却能力が低下し、制御部50の半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する場合がある。第1閾値は、例えば、当該所定の温度である。また、第1閾値は、例えば、冷却素子10が半導体検出素子10を第1温度に維持できなくなる放熱部24の温度の下限値である。このように第1閾値判定工程S13は、半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する可能性が高いか否かを判定する工程といえる。第1閾値は、例えば、吸熱部22の温度(第1温度)が−30℃の場合、+30℃に設定される。
【0059】
制御部50は、例えば、第1閾値判定処理を、冷却素子温度情報I
20が入力されるごとに行う。また、制御部50は、第1温度維持処理の実行中にのみ、第1閾値判定処理を行ってもよい。
【0060】
第1温度維持処理の実行中に、第1閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の放熱部24の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合(工程S14でYESの場合)、制御部50が設定温度を第1温度から第1温度よりも高い第2温度に変更し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第2温度に維持されるように冷却素子20を制御する第2温度維持処理を行う(第2温度維持工程S15)。
【0061】
第1閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の放熱部24の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合、半導体検出素子10を第1温度に維持できなくなる可能性が高くなったことを意味する。すなわち、半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する恐れがある。したがって、制御部50は、設定温度を第1温度よりも高い第2温度に変更する。制御部50は、例えば、予め記憶部等に記憶された設定温度情報を取得して、設定温度を第2温度に変更する。第2温度は、第1温度よりも高い温度であれば特に限定されない。第2温度は、例えば、−25℃である。このように、制御部50が設定温度を上げることにより、吸熱部22と放熱部24との間の温度差を小さくすることができる。したがって、冷却素子20の冷却能力に余裕を持たせることができ、温度制御の破綻を防ぐことができる。
【0062】
なお、第1温度維持処理の実行中とは、制御部50が実質的に第1温度維持処理を行っている状態を意味し、具体的には、制御部50が、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御している状態を意味する。
【0063】
さらに、制御部50は、設定温度を第2温度に設定した場合に、警告信号を出力する。警告信号は、例えば、掲示部(図示しない)に入力される。掲示部は、警告信号の出力情報を、画像、音、光のうちの少なくとも1つを用いて掲示する。これにより、例えば、ユーザーが、設定温度が第2温度となったことを知ることができる。
【0064】
第2閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の放熱部24の温度を第1閾値よりも低いと判定した場合(工程S14でNOの場合)、再び、第1閾値判定処理(工程S13)を行う。すなわち、制御部50は、半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御しつつ、冷却素子温度情報I
20に基づいて冷却素子20の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する。
【0065】
工程S15の後に、制御部50が、冷却素子温度情報I
20に基づいて、放熱部24の温度が第2閾値よりも低いか否かを判定する第2閾値判定処理を行う(第2閾値判定工程S16)。
【0066】
制御部50は、冷却素子温度情報I
20から、冷却素子20の放熱部24の温度が、第2閾値よりも低いか否かを判定する。第2閾値は、例えば、半導体検出素子10を第1温度に維持することが可能と判断できる放熱部24の温度の上限値である。すなわち、放熱部24の温度が第3閾値よりも低い場合、冷却素子20の冷却能力が半導体検出素子10を第1温度に維持できる程度に回復しているといえる。第2閾値は、例えば、第1閾値よりも低い温度である。これにより、設定温度が頻繁に切り替わることを防ぐことができる。第2閾値は、例えば、25℃である。なお、第2閾値は、第1閾値と同じ値であってもよい。
【0067】
第2閾値判定処理において放熱部24の温度を第2閾値よりも低いと判定した場合(工程S17でYESの場合)、制御部50が、設定温度を第2温度から第1温度に変更し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する第1温度復帰処理を行う(第1温度復帰工程S18)。
【0068】
第2温度維持処理の実行中に、第2閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の放熱部24の温度を第2閾値よりも低いと判定した場合、冷却素子20が半導体検出素子10を第1温度に維持できる冷却能力を発揮できる状態にあるといえる。すなわち、設定温度を第1温度に戻しても半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する可能性が低くなったことを意味する。したがって、制御部50は、設定温度を第2温度から第1温度に戻す。そして、制御部50は、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する。
【0069】
なお、第2温度維持処理の実行中とは、制御部50が実質的に第2温度維持処理を行っている状態を意味し、具体的には、制御部50が、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第2温度に維持されるように冷却素子20を制御している状態を意味する。
【0070】
放射線検出装置100は、工程S13から工程S18までを、繰り返し行う。放射線検出装置100は、例えば、ユーザー等によって温度制御処理終了信号が入力されと温度制御処理を終了する。
【0071】
第2閾値判定処理において放熱部24の温度を第2閾値よりも高いと判定した場合(工程S17でNOの場合)、再び、工程S16を行う。すなわち、制御部50は、半導体検出素子10が第2温度に維持されるように冷却素子20を制御しつつ、冷却素子温度情報I
20に基づいて冷却素子20の温度が第2閾値よりも低いか否かを判定する。
【0072】
放射線検出装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0073】
放射線検出装置100では、制御部50が、第1温度維持処理の実行中に、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の放熱部24の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行い、冷却素子20の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合、設定温度を第1温度から第1温度よりも高い第2温度に変更する。これにより、外部の温度の上昇やその他の原因による熱の流入等により、冷却素子20の放熱効率が低下するような場合であっても、冷却素子20の冷却能力に余裕を持たせることが可能となり、半導体検出素子10に対する温度制御の破綻を防ぐことができる。したがって、装置の信頼性を高めることができる。
【0074】
放射線検出装置100では、第2温度監視部40が冷却素子20の放熱部24の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得し、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の放熱部24の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行う。これにより、温度制御が破綻するか否かをより早い段階で判断することができる。この理由は以下のとおりである。
【0075】
冷却素子20では、放熱部24の放熱効率が低下することにより、吸熱部22の冷却効率が低下する。そして、吸熱部22の冷却効率が低下することにより、半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する。すなわち、まず、放熱部24の温度が上昇し、その後、吸熱部22の温度が上昇し、温度制御が破綻する。したがって、放熱部24の温度に基づいて、温度制御が破綻する可能性が高いか否かを判定することにより、例えば、半導体検出素子10や吸熱部22の温度に基づいて判定を行う場合と比べて、より早い段階で温度制御が破綻するか否かを判断することができる。
【0076】
放射線検出装置100では、制御部50が、冷却素子温度情報I
20に基づいて、放熱部24の温度が第2閾値よりも低いか否かを判定し、第2温度維持処理の実行中に、第2閾値判定処理において放熱部24の温度を第2閾値よりも低いと判定した場合、設定温度を第2温度から第1温度に変更する。これにより、温度制御の破綻を防ぎつつ、設定温度を第2温度から第1温度に戻すことができる。
【0077】
放射線検出装置100によれば、第2閾値を第1閾値よりも低くすることにより、設定温度が頻繁に切り替わることを防ぐことができる。例えば、第1閾値と第2閾値とが同じ値であった場合、第1閾値および第2閾値付近で冷却素子20の温度が揺らぐことにより、設定温度が第1温度と第2温度との間で頻繁に切り替わってしまうことがある。放射線検出装置100によれば、第2閾値を第1閾値よりも低くすることにより、このような問題が生じない。
【0078】
放射線検出装置100では、放熱器60を含むため、冷却素子20の放熱効率を高めることができる。
【0079】
放射線検出装置100では、制御部50が、設定温度を第2温度に設定した場合に、警告信号を出力する。警告信号は、例えば、掲示部に入力され、掲示部は、蛍光信号の出力情報を画像、音、光のうちの少なくとも1つを用いて掲示することができる。これにより、例えば、ユーザーが、設定温度が第2温度となったことを知ることができる。そのため、例えば、ユーザーは、冷却素子20の放熱効率を上げるために室温をさげたり、測定を中断したりすることができる。
【0080】
2. 第2実施形態
2.1. 放射線検出装置の構成
次に、第2実施形態に係る放射線検出装置の構成について図面を参照しながら説明する。
図4は、本実施形態に係る放射線検出装置200を示す機能ブロック図である。
図5は、本実施形態に係る放射線検出装置200を模式的に示す概略説明図である。なお、
図5では、半導体検出素子10、冷却素子20、放熱器60の断面の概略が示されている。以下、放射線検出装置200において、第1実施形態に係る放射線検出装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0081】
放射線検出装置100の例では、第2温度監視部40は、冷却素子20の放熱部24の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得していた。
【0082】
これに対し、放射線検出装置200では、第2温度監視部40は、冷却素子20の吸熱部22の温度を測定して冷却素子温度情報I
20を取得する。
【0083】
また、放射線検出装置100の例では、制御部50は、冷却素子温度情報I
20に基づいて、放熱部24の温度が第2閾値よりも低いか否かを判定する第2閾値判定処理を行った。
【0084】
これに対し、放射線検出装置200では、制御部50は、冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいか否かを判定する第3閾値判定処理を行う。
【0085】
2.2. 放射線検出装置の動作
次に、第2実施形態に係る放射線検出装置の動作について、図面を参照しながら説明する。
図6は、第2実施形態に係る放射線検出装置の動作の一例を示すフローチャートである。以下、
図4および
図5に示す放射線検出装置200および
図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお、上述した第1実施形態に係る放射線検出装置100の動作と異なる点について説明し、同様の点については説明を省略する。
【0086】
放射線検出装置200は、検出素子温度情報取得工程S10の後に、第2温度監視部40が、冷却素子温度情報I
20を取得する冷却素子温度情報取得処理を開始する(冷却素子温度情報取得工程S21)。第2温度監視部40は、冷却素子20の吸熱部22の温度を測定して、冷却素子温度情報I
20を取得する。
【0087】
次に、制御部50が、第1温度維持処理を行う(工程S12)。
【0088】
次に、制御部50が、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行う(第1閾値判定工程S23)。
【0089】
制御部50は、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の吸熱部22の温度が、第1閾値よりも高いか否かを判定する。ここで、第1閾値は、制御部50の温度制御が破綻するか否かの基準となる値である。例えば、第1閾値は、半導体検出素子20を第1温度に維持できなくなる吸熱部22の温度の下限値である。第1閾値は、例えば、−10℃に設定される。このように第1閾値判定工程S23は、半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する可能性が高いか否かを判定する工程といえる。
【0090】
第1温度維持処理の実行中に、第1閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の吸熱部22の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合(工程S24でYESの場合)、制御部50は、第2温度維持処理を行う(第2温度維持工程S15)。
【0091】
第2閾値判定処理において制御部50が冷却素子20の吸熱部22の温度を第1閾値よりも低いと判定した場合(工程S24でNOの場合)、再び、第1閾値判定処理(工程S23)を行う。
【0092】
次に、冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいか否かを判定する第3閾値判定処理を行う。(第3閾値判定工程S26)。
【0093】
制御部50は、冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいか否かを判定する。制御部50が冷却素子20に供給する電流量は、検出素子温度情報I
10に基づいて決定される。第3閾値は、例えば、半導体検出素子10を第1温度に維持できることが可能と判断できる冷却素子20の電流量の上限値である。すなわち、冷却素子20に供給する電流値が第3閾値よりも小さい場合、冷却素子20の冷却能力が半導体検出素子10を第1温度に維持できる程度に回復しているといえる。
【0094】
第2温度維持処理の実行中に、第3閾値判定処理において、制御部50が冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいと判定した場合(工程S27でYESの場合)、制御部50が設定温度を第2温度から第1温度に変更し、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する第1温度復帰処理を行う(第1温度復帰工程S18)。
【0095】
第2温度維持処理の実行中に、第3閾値判定処理において制御部50が冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいと判定した場合、冷却素子20が半導体検出素子10を第1温度に維持できる冷却能力を発揮できる状態にあるといえる。すなわち、設定温度を第1温度に戻しても半導体検出素子10に対する温度制御が破綻する可能性が低くなったことを意味する。したがって、制御部50は、設定温度を第2温度から第1温度に戻す。そして、制御部50は、検出素子温度情報I
10に基づいて半導体検出素子10が第1温度に維持されるように冷却素子20を制御する。
【0096】
放射線検出装置200は、例えば、以下の特徴を有する。
【0097】
放射線検出装置200では、制御部50が、第1温度維持処理の実行中に、冷却素子温度情報I
20に基づいて、冷却素子20の吸熱部22の温度が第1閾値よりも高いか否かを判定する第1閾値判定処理を行い、冷却素子20の吸熱部22の温度を第1閾値よりも高いと判定した場合、設定温度を第1温度から第1温度よりも高い第2温度に変更する。これにより、放射線検出装置100と同様に、装置の信頼性を高めることができる。
【0098】
放射線検出装置200では、制御部50が、冷却素子20に供給する電流量が第3閾値よりも小さいか否かを判定する第3閾値判定処理と、第2温度維持処理の実行中に、第3閾値判定処理において冷却素子20に供給する電流量を第3閾値よりも小さいと判定した場合、設定温度を第2温度から第1温度に変更する。これにより、温度制御の破綻を防ぎつつ、設定温度を第2温度から第1温度に戻すことができる。
【0099】
3. 第3実施形態
次に、第3実施形態に係る放射線分析装置について図面を参照しながら説明する。
図7は、第3実施形態に係る放射線分析装置300の構成を示すブロック図である。第3実施形態に係る放射線分析装置300は、本願発明に係る放射線検出装置を含む。ここでは、本願発明に係る放射線検出装置として、放射線検出装置100を用いた例について説明する。
【0100】
放射線分析装置300は、例えば、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDXRF)である。EDXRFは、試料にX線を照射して発生する蛍光X線のエネルギー(波長)や強度を解析することにより試料を構成する元素の種類や含有量を調べる装置である。
【0101】
放射線分析装置300は、
図7に示すように、X線管用高圧電源310と、X線管320と、放射線検出器100と、パルスプロセッサ330と、ADC(アナログ−デジタル変換器)340と、データメモリー350と、コンピューターシステムスペクトルデータ処理360と、を含む。
【0102】
放射線分析装置300は、X線管用高圧電源310からX線管320を構成する金属ターゲットに電子を衝突させ、発生した1次X線を試料Sに照射する。このとき発生するX線のエネルギー分布は、ターゲットの材質に応じた特性X線が連続X線に重畳した分布となる。
【0103】
ここで、X線を試料Sに照射することにより、試料Sからは、様々は蛍光X線が発生する。放射線分析装置300は、この蛍光X線を放射線検出装置100で検出する。放射線検出装置100からの出力信号は、階段波状になり、各段の高さがX線の波長、すなわちエネルギーを表している。
【0104】
パルスプロセッサ330では、放射線検出装置100の出力信号の各段の高さをその高さに比例したパルスに変換する。
【0105】
ADC340では、1つのパルスごとにその高さをデジタルデータに変換する。1つのパルスが変換されると、データメモリー350でパルスの高さに応じたメモリアドレスのデータに1を加算する。その結果、横軸に蛍光X線エネルギー、縦軸に量を表すスペクトラム波形が生成され、コンピューター360でその内容を読み出すことにより定性分析、定量分析を行い表示する。
【0106】
放射線分析装置300によれば、信頼性の高い放射線検出装置100を含むため、信頼性が高い。
【0107】
なお、本発明に係る放射線分析装置の一例として、エネルギー分散型蛍光X線分析装置を説明したが、本発明に係る放射線分析装置は、例示したエネルギー分散型蛍光X線分析装置以外にも、例えば、試料に電子線を照射することにより、試料から発生した特性X線を放射線検出装置で検出するエネルギー分散型X線分析装置であってもよい。また、本発明に係る放射線分析装置は、走査電子顕微鏡、透過電子顕微鏡、走査透過電子顕微鏡に組み込まれていてもよい。
【0108】
なお、上述した実施形態は一例であって、これらに限定されるわけではない。
【0109】
例えば、上述した放射線検出装置100,200では、制御部50が、
図3および
図6に示すように、半導体検出素子10の設定温度を、第1温度から第2温度に変更する第2温度維持処理(第2温度維持工程S15)を行ったが、この第2温度維持処理において、制御部50は、例えば、半導体検出素子10の設定温度を、第1温度から第3温度を介して第2温度に変更してもよい。ここで、第3温度は、第1温度よりも高く第2温度よりも低い温度である。これにより、より安定した温度制御が可能となる。
【0110】
また、放射線検出装置100,200では、制御部50が、半導体検出素子10の設定温度を、第2温度から第1温度に戻す第1温度復帰処理(第1温度復帰工程S18)を行ったが、この第1温度復帰処理において、制御部50は、設定温度を第2温度から第3温度を介して第1温度に戻してもよい。これにより安定した温度制御が可能となる。
【0111】
なお、ここでは、設定温度を第1温度、第3温度、および第2温度と3段階に設定したが、設定温度を3段階よりも多く設定してもよい。
【0112】
また、例えば、放射線検出装置100,200では、
図3および
図6に示すように、制御部50が、半導体検出素子10の設定温度を、第1温度から第2温度に変更する第2温度維持処理(第2温度維持工程S15)を行い、そして、半導体検出素子10の設定温度を、第2温度から第1温度に戻す第1温度復帰処理(第1温度復帰工程S18)を行ったが、制御部50は、第1温度復帰処理を行わずに、半導体検出素子10の設定温度を、第2温度に設定したままであってもよい。すなわち、放射線検出装置100は、
図3に示す、工程S10、工程S11、工程S12、工程S13、工程S14、工程S15のみを行ってもよい。また、放射線検出装置200は、
図6に示す、工程S10、工程S21、工程S12、工程S23、工程S24、工程S15のみを行ってもよい。
【0113】
なお、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。