(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780872
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】温度膨張弁
(51)【国際特許分類】
F25B 41/06 20060101AFI20150827BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
F25B41/06 Q
F25B1/00 396B
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-169026(P2011-169026)
(22)【出願日】2011年8月2日
(65)【公開番号】特開2013-32875(P2013-32875A)
(43)【公開日】2013年2月14日
【審査請求日】2014年4月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】関谷 到
(72)【発明者】
【氏名】澤田 治
【審査官】
関口 勇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−301420(JP,A)
【文献】
特開2008−249157(JP,A)
【文献】
特開2010−032159(JP,A)
【文献】
特開昭62−077575(JP,A)
【文献】
特開2007−010289(JP,A)
【文献】
特開平04−222364(JP,A)
【文献】
特開平01−179871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 41/06
F25B 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5としたことを特徴とする温度膨張弁。
【請求項2】
冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用いたことを特徴とする温度膨張弁。
【請求項3】
冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用い、前記吸収材としてケイ酸カルシウムを主成分とする材質を用いたことを特徴とする温度膨張弁。
【請求項4】
冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用い、前記吸収材として二酸化ケイ素を主成分とする珪藻土を用いたことを特徴とする温度膨張弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍サイクルにおいて蒸発器の出口側配管に配設した感温筒により蒸発温度を感知し、この感知温度に応じて変化する受圧室の内圧と、蒸発器から均圧室に導入される蒸発圧力との差圧により、装置冷媒を流す弁ポートの弁開度を自動調整して、冷凍サイクルの過熱度制御を行う温度膨張弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度膨張弁の感温筒、キャピラリチューブ及び受圧室部(以下、これらを単に感温筒とも言う)の内部には冷凍サイクルを流れる装置冷媒をチャージ(充填)することが一般的であるが、低温特性の向上のために種々のチャージ方式が実用化されている。特に、冷凍サイクルを流れる装置冷媒の飽和蒸気圧曲線と交差する特性を持つようにしたものは、クロスチャージ方式といわれ、高温域では過熱度を大きくし、低温域では過熱度を小さくするとか、全温度範囲内で均一な過熱度を保つような特長をもたせるのに採用されている(非特許文献1参照)。
【0003】
なお、実際の過熱度と設定過熱度(目標値)との差が過熱度偏差であるが、この過熱度偏差が一定でないと、制御蒸発温度範囲においてシステムの効率が悪化することがある。また、液バックが生じて圧縮機が破損することがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「第6版 冷凍空調便覧 II巻 機器編」、社団法人 日本冷凍空調学会、平成18年3月31日、第94頁〜第98頁、4・1・3 温度自動膨張弁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1には、感温筒の各種のチャージ方式が開示されているが、装置冷媒に対して、感温筒にチャージする冷媒(あるいはガス)あるいは吸収材の性質や、混合の仕方などを工夫しないと、適正な温度膨張弁が得られない。
【0006】
本発明は、冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁において、感温筒への封入方式を改良し、制御を行う蒸発温度域において過熱度偏差を一定にすることを課題とする。また、温度膨張弁の本体の温度が感温筒温度に比べて低下した場合でも、過熱度偏差を小さくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項
1の温度膨張弁は、冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5としたことを特徴とする。
【0011】
請求項
2の温度膨張弁は、冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用いたことを特徴とする。
【0012】
請求項
3の温度膨張弁は、冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用い、前記吸収材としてケイ酸カルシウムを主成分とする材質を用いたことを特徴とする。
【0013】
請求項
4の温度膨張弁は、冷凍サイクルの装置冷媒としてR410Aを用いた空気調和機、冷凍、冷蔵装置に使用される温度膨張弁であって、感温筒に装置冷媒と異なる冷媒と非凝縮性ガスとを充填する混合ガスクロスチャージ方式を用い、前記装置冷媒と異なる冷媒としてR125を用い、前記非凝縮性ガスとして窒素を用い、R125と窒素の体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5とし、感温筒内に吸収材を用い、前記吸収材として二酸化ケイ素を主成分とする珪藻土を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項
1乃至4の温度膨張弁によれば、装置冷媒と異なるR125に非凝縮性ガスを混合して充填することで、感温筒の温度に対し、温度膨張弁の本体の温度が低下した場合でも、温度膨張弁の弁開度が感温筒の温度に追従しやすくなるため、過熱度が温度膨張弁の本体の温度に影響され難くなり、過熱度偏差を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態の温度膨張弁を適用した冷凍サイクルの要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
次に、本発明の温度膨張弁の実施形態を説明する。
図1は実施形態の温度膨張弁を適用した冷凍サイクルの要部を示す図である。
図1において、10は実施形態の温度膨張弁、20は圧縮機、30は凝縮器、40は蒸発器であり、これらは配管で環状に接続することにより冷凍サイクルを構成している。温度膨張弁10は、弁本体部1、ダイヤフラム装置2、感温筒3及びキャピラリチューブ4を有している。弁本体部1の一次側継手管1aは凝縮器30側の一次配管aに接続され、二次側継手管1bは蒸発器40側の二次配管bに接続されて、均圧管1cは蒸発器40の出口側配管cに接続されている。
【0019】
圧縮機20は冷凍サイクルを流れる装置冷媒を圧縮し、圧縮された装置冷媒は凝縮器30で凝縮液化され、一次側継手管1aを通して弁本体部1に流入される。弁本体部1は流入される装置冷媒を減圧(膨張)して二次側継手管1bから蒸発器40に流入させる。そして、蒸発器40は装置冷媒を蒸発気化し、圧縮機20に循環させる。蒸発器40の出口側配管cには感温筒3が取り付けられている。この感温筒3には後述のガス(及び液)が封入されており、この感温筒3はキャピラリチューブ4によりダイヤフラム装置2に連結されている。
【0020】
温度膨張弁10の機械的な構成としては、広く知られている一般的なものを採用することができる。例えば、ダイヤフラム装置2は、キャピラリチューブ4によって感温筒3に接続された受圧室と、均圧管1cによって蒸発器40の出口側配管cに導通された均圧室とを、ダイヤフラムにより区画するよう構成されている。弁本体部1は、ダイヤフラムに連結された弁体により、一次配管1aと二次配管1bとの間に形成された弁ポートの弁開度を調整するよう構成されている。そして、感温筒3による感知温度に応じて変化する受圧室の内圧と、蒸発器から均圧室に導入される蒸発圧力との差圧により、装置冷媒を流す弁ポートの弁開度を制御し、冷凍サイクルの過熱度制御を行う。
【0021】
冷凍サイクルの配管を流れる装置冷媒はR410Aである。感温筒3内には、冷凍サイクルの装置冷媒であるR410A、または、R410Aと異なる冷媒と、非凝縮性ガスあるいは吸収材とが、混合されて充填されている。すなわち、この感温筒3は、混合ガスクロスチャージ方式で充填されたものである。次に、この混合ガスクロスチャージ方式による、上記R410Aと異なる冷媒と、非凝縮性ガス、吸収材の各実施例について説明する。
【0022】
第1
参考例は、感温筒3に装置冷媒を充填する例であり、R410Aと非凝縮性ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。
【0023】
第
1実施例〜第
5実施例は、感温筒3に装置冷媒と異なる冷媒を充填する例である。第
1実施例は、R410Aと異なる冷媒がR125であり、非凝縮性ガスが窒素ガスであり、R125と窒素ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。
【0024】
第
2実施例は、R410Aと異なる冷媒がR125であり、非凝縮性ガスが窒素ガスであり、R125と窒素ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。この、R125と窒素ガスとの体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5までの範囲とする。
【0025】
第
3実施例は、R410Aと異なる冷媒がR125であり、非凝縮性ガスが窒素ガスであり、R125と窒素ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。この、R125と窒素ガスとの体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5までの範囲とする。さらに、感温筒3内に吸収材を用いる。
【0026】
第
4実施例は、R410Aと異なる冷媒がR125であり、非凝縮性ガスが窒素ガスであり、R125と窒素ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。この、R125と窒素ガスとの体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5までの範囲とする。さらに、感温筒3内に吸収材としてケイ酸カルシウムを主成分とする材質を用いる。
【0027】
第
5実施例は、R410Aと異なる冷媒がR125であり、非凝縮性ガスが窒素ガスであり、R125と窒素ガスを感温筒3に混合ガスクロスチャージ方式により充填する。この、R125と窒素ガスとの体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5までの範囲とする。さらに、感温筒3内に吸収材として二酸化ケイ素を主成分とする珪藻土を用いる。
【0028】
参考例として非凝縮性ガスは窒素ガスに限らず、アルゴン、または二酸化炭素、またはヘリウムでもよい。
【0029】
以上の感温筒の構成により、温度膨張弁10が制御を行う蒸発温度範囲において、ほぼ一定の過熱度を得ることができる。例えば、−20℃〜10℃の蒸発温度範囲においては、過熱度偏差を1℃以下にすることができる。
【0030】
R125に非凝縮性ガスを混合して充填することで、感温筒3の温度に対し、温度膨張弁10の本体の温度が低下した場合でも、温度膨張弁10の弁開度が感温筒3の温度(蒸発器出口の温度)に追従しやすくなるため、過熱度が温度膨張弁10の本体の温度に影響され難くなり、過熱度偏差を一定にすることができる。
【0031】
R125と窒素との体積比率を過熱ガス状態にて80:20から95:5までの範囲で混合することで、感温筒3の温度に対し、温度膨張弁10の本体の温度が低下した場合でも、温度膨張弁10の弁開度が感温筒3の温度(蒸発器出口の温度)に追従しやすくなるため、過熱度が温度膨張弁10の本体の温度に影響され難くなり、過熱度偏差を一定にすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 弁本体部
2 ダイヤフラム装置
3 感温筒
4 キャピラリチューブ
10 温度膨張弁
20 圧縮機
30 凝縮器
40 蒸発器