特許第5780901号(P5780901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5780901
(24)【登録日】2015年7月24日
(45)【発行日】2015年9月16日
(54)【発明の名称】食品切断装置
(51)【国際特許分類】
   B26D 3/28 20060101AFI20150827BHJP
   A23L 1/10 20060101ALI20150827BHJP
【FI】
   B26D3/28 620P
   A23L1/10 G
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-209460(P2011-209460)
(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公開番号】特開2013-71184(P2013-71184A)
(43)【公開日】2013年4月22日
【審査請求日】2014年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000128566
【氏名又は名称】株式会社オーディオテクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 淳也
【審査官】 矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−342863(JP,A)
【文献】 特開平7−31392(JP,A)
【文献】 実開昭52−142983(JP,U)
【文献】 特開平8−257982(JP,A)
【文献】 特開昭63−232996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 3/28
A23L 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断対象食品を載置する食品載置台と、
上記食品載置台を移動させる第1の駆動機構と、
上記第1の駆動機構によって上記食品載置台とともに移動させられる対象食品の移動軌跡内に配置されていることによって対象食品を輪切り状に切断する切断刃と、
切断後の食品を斜め下方に向かって案内する固定の傾斜案内部材と、
切断後の食品を受け取り上記傾斜案内部材に案内されて上下動する受け部材と、
上記受け部材を対象食品の受け取り位置と対象食品の取り出し位置との間で上下方向に駆動する第2の駆動機構と、を有し、
上記第2の駆動機構は、上記受け部材に所定の駆動力を伝達するとともに、上記受け部材の余分なストロークを吸収する滑り機構を備えている食品切断装置。
【請求項2】
上記受け部材は、切断後の上記食品を支持して上記対象食品の取り出し部まで下降する請求項1記載の食品切断装置。
【請求項3】
上記第2の駆動機構の駆動力は、上記第1の駆動機構から連携機構を介して供給される請求項1または2記載の食品切断装置。
【請求項4】
上記連携機構は、上記第1の駆動機構を構成する駆動アームと、上記駆動アームの動作によって回転するギヤ列を有してなる請求項3記載の食品切断装置。
【請求項5】
上記ギヤ列は、上記駆動アームの動作によって回転する大ギヤとこれに噛み合う小ギヤを有してなる請求項4記載の食品切断装置。
【請求項6】
上記小ギヤは上記第2の駆動機構の一部を構成していて、上記小ギヤの回転駆動力が上記滑り機構を介して受け部材に伝達される請求項5記載の食品切断装置。
【請求項7】
上記第2の駆動機構は、上記小ギヤの回転駆動力が上記滑り機構を介して伝達されるアームと、上記アームに連携し案内レールに沿って上下動する摺動部材を有し、上記摺動部材に上記受け部材が結合されている請求項5または6記載の食品切断装置。
【請求項8】
上記第1の駆動機構と上記第2の駆動機構は、駆動源を個別に有している請求項1または2記載の食品切断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻き寿司などの棒状の食品を所定の幅に輪切り状に切断する食品切断装置に関するもので、特に、切断後の食品の取り出し作業性を向上させるための構成に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーマーケット、コンビニエンスストア、回転寿司店などで提供される例えば巻き寿司などは、自動機によって棒状に成形され、さらに、所定の幅に輪切り状に切断される。棒状の巻き寿司などを包丁によって手作業で輪切りにしていたのでは多大の労力と時間を要するとともに、輪切りの幅寸法がばらつくので、食品切断装置が用いられている。食品切断装置には、固定した切断対象食品に対し切断刃を移動させて切断するものと、固定した切断刃に対し切断対象食品を移動させて切断するものがある。また、切断刃の支持形態によって、片持ち形式のもの、両持ち形式のものに分類することができる。以下、従来の食品切断装置の例について説明する。
【0003】
特許文献1には、固定した切断対象食品に対し切断刃を回転させながら当てることにより切断対象食品を輪切りにする食品切断装置が記載されている。上記切断刃は、回転軸に対し直交させて固着された複数の切断刃からなり、回転軸に片持ち状に固着された構造、すなわち回転刃になっている。
【0004】
特許文献2には、固定した切断対象食品である海苔巻寿司等に、切断刃を移動させながら当てることにより海苔巻寿司等を輪切りにする海苔巻寿司等の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、刃物枠を複数の切断刃とともにリンク機構により移動させて海苔巻寿司等を切断する構成になっている。
【0005】
特許文献3には、固定した切断刃に対し切断対象食品である巻き寿司を移動させて切断する巻き寿司の切断装置が記載されている。上記切断刃は、刃物枠に複数平行に配置して長さ方向両端を保持したものすなわち両持ち状にしたもので、上記刃物枠をフレームに固定している。上記巻き寿司はこれを受け台に載せ、この受け台を上方に移動させることにより巻き寿司に切断刃を徐々に食い込ませながら巻き寿司を輪切り状に切断する構成になっている。切断刃を固定し、切断刃に対し対象食品を相対移動させることによって対象食品を輪切り状に切断する食品切断装置は、特許文献4にも記載されている。
【0006】
特許文献1記載の発明によれば、切断対象食品を載置台に載せ、その場で回転刃の回転により切断する形式になっているから、切断対象食品のセットと切断後の食品の取り出しを同じ位置で行うことができ、作業性は良い。しかし、載置台に載せられた切断対象食品を回転刃が横切るため、切断対象食品を回転刃が横切るときは載置台の周辺に手を差し入れることができないように安全機構を設けて安全性を確保する必要がある。また、切断刃は回転軸に片持ち的に固着されるため、刃の厚みを大きくして所定の強度を持たせる必要があり、切断対象食品に対する切れ味が、両持ち型の切断刃を用いる場合と比較すると若干劣る。したがった、海苔巻き寿司のような柔らかい切断対象食品の場合、切断時に加わる圧力で型崩れを生じることがある。この点、両持ち型の切断刃は、長さ方向両端部で支持されるため、切断刃の厚みを薄くして切れ味を高めることができ、切断対象食品の型崩れを少なくすることができる。
【0007】
特許文献2記載の発明は、切断対象食品を載置台に載せ、次に切断刃を一方向に移動させることにより切断対象食品を切断し、そのあと切断刃は原位置に向かって復動するようになっている。したがって、切断刃が復動するとき、切断された対象食品が残っていると切断刃が復動する途中で上記対象食品に当たるため、切断した対象食品を載置台から取り出す必要がある。よって、特許文献2記載の発明によれば、切断刃の移動によって切断対象食品を切断した後、対象食品の取り出し操作を行い、次に切断刃の復帰操作を行う必要があり、操作が面倒になる難点がある。
【0008】
特許文献3および特許文献4記載の発明によれば、切断対象食品である巻き寿司を載せた受け台を移動させて切断刃により巻き寿司を切断したあと、受け台を原位置まで復帰させるためには、その前に、切断された巻き寿司を受け台から取り出す必要がある。そうしなければ、切断された巻き寿司が原位置に戻ってしまい、また、戻る途中で、切断された巻き寿司に切断刃が当たるからである。したがって、巻き寿司を切断した後、巻き寿司の取り出し操作を行い、次に切断刃の復帰操作を行う必要があり、操作が面倒になる。また、装置を稼働させるためのスイッチ操作は、巻き寿司を切断するために受け台を移動させるためのスイッチ操作と、受け台を原位置に復帰させるためのスイッチ操作の2回の操作が必要であり、この点からも操作が面倒になる難点がある。また、装置の下側にある受け台に巻き寿司を載せる操作は、装置の下側にある受け台に対して行うので、操作性の問題はないが、切断された巻き寿司は装置上部の奥側に移動しているため、複数に分離された巻き寿司を取り出すときの作業性が悪いという難点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−244496号公報
【特許文献2】特開平7−31392号公報
【特許文献3】特許第4368024号公報
【特許文献4】特開2006−68848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明に係る食品切断装置は、両持ち状に固定した切断刃に対し、対象食品を載せた食品載置台を移動させて対象食品を切断する形式の食品切断装置である。かかる形式の食品切断装置によれば、上に述べたような技術課題があるため、本出願人は、食品の切断後、復帰操作をしなくても自動的に食品載置台を原位置に復帰させることができ、切断後の食品の取り出しも容易な食品切断装置に関して先に出願した(特願2011−20830参照)。この先願の明細書および図面に記載されている食品切断装置によれば、切断された食品は自然に食品載置台から放出されるように構成されているため、食品の切断後、復帰操作をしなくても食品載置台を原位置に復帰させることができ、切断後の食品の取り出しも容易になる。
【0011】
本発明は、上記先願の明細書および図面に記載されている食品切断装置をさらに改良したものである。すなわち、本発明は、切断後の食品を自然落下させるのではなく、所定の姿勢を保ったまま受け取って下降する構成にして、切断後の食品取り出しの作業性をより一層向上させることができる食品切断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る食品切断装置は、
切断対象食品を載置する食品載置台と、
上記食品載置台を移動させる第1の駆動機構と、
上記第1の駆動機構によって上記食品載置台とともに移動させられる対象食品の移動軌跡内に配置されていることによって対象食品を輪切り状に切断する切断刃と、
切断後の食品を斜め下方に向かって案内する固定の傾斜案内部材と、
切断後の食品を受け取り上記傾斜案内部材に案内されて上下動する受け部材と、
上記受け部材を対象食品の受け取り位置と対象食品の取り出し位置との間で上下方向に駆動する第2の駆動機構と、を有し、
上記第2の駆動機構は、上記受け部材に所定の駆動力を伝達するとともに、上記受け部材の余分なストロークを吸収する滑り機構を備えていることを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る食品切断装置によれば、受け部材を、第2の駆動機構によって対象食品の受け取り部まで移動させ、切断済みの食品を受け部材で受け取る。切断済みの食品を受け取った受け部材は対象食品の取り出し位置まで移動する。切断済みの食品は、傾斜案内部材と受け部材とによって姿勢が維持されたまま取り出し位置まで移動するため、取り出し作業が円滑に行われる。第2の駆動機構は、受け部材の余分なストロークを吸収する滑り機構を備えているため、切断対象食品のサイズが異なることによる受け部材のストローク差を吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る食品切断装置の実施例を示す外観斜視図である。
図2】側面カバーおよび前カバーを除去した状態の上記実施例を右前方から俯瞰して示す斜視図である。
図3】側面カバーを除去した状態の上記実施例を示す正面図である。
図4】前カバーおよび右側の側板を除去した状態の上記実施例の初期位置を示す左側面図である。
図5図4に示す動作態様に続く別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図6図5に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図7図6に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図8図7に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図9図8に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図10図9に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図11図10に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図12図11に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図13図12に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図14図13に示す動作態様に続くさらに別の動作態様を図4に準じて示す左側面図である。
図15】本発明に係る食品切断装置の別の実施例を図4に準じて示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0015】
以下、本発明に係る食品切断装置の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0016】
図1乃至図3において、食品切断装置は、上端部が切断対象食品(以下、単に「食品」という)の供給部、前面下部が食品の取り出し部8となっていて、前面は上記供給部と取り出し部8を除き前面パネル15で覆われ、左右両側面はそれぞれ側面カバー14で覆われている。この装置の動作開始前の初期位置では上記供給部に食品載置台5があり、この食品載置台5に、食品10、例えば、寿司飯が海苔で巻かれた柱状の海苔巻きを、長手方向を水平方向に向けた姿勢で載置するように構成されている。食品載置台5に食品10を載置し、スタートスイッチを押すと、食品載置台5が駆動機構によって装置の前側下部に向かって移動させられ、この移動の途中で食品10が切断刃によって輪切り状に切断され、上記取り出し部8に受け渡されるように構成されている。食品載置台5から取り出し部8に受け渡された食品10は、固定された傾斜案内部材81と、傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82で受け取られ、受け部材82が斜め下方にスライドし、食品載置台5は駆動機構によって原位置に復帰するように構成されている。
【0017】
次に、上記食品切断装置の内部構造を詳細に説明する。図1乃至図4において、食品切断装置は、ベース1と、ベース1の左右両端部に結合されて互いに平行に垂直方向に立ち上がった左右の側板4と、各側板4の後端部を連結する背板を有していて、これらベース1、左右の側板4および背板で食品切断装置の骨格をなしている。装置の前寄りの位置に切断刃固定枠2(図2図3参照)がほぼ垂直方向に立った姿勢で配置されている。切断刃固定枠2は、左右の両端縁部が、左右の側板4に上下方向に固定された一対のガイドレールに沿って落とし込まれ、上記ガイドレールにより左右の側板4間に実質的に固定されている。
【0018】
図3に示すように、切断刃固定枠2は、高さが装置の高さよりも僅かに低い四角形の枠形で、上下の桟によって複数の切断刃3の長さ方向両端部が保持され、各切断刃3は互いに平行に配置されている。図示の例では7本の切断刃3が一定間隔で配置されていて、食品10を8等分するようになっている。各切断刃3は細長い薄板状の部材で、その幅方向が装置の前後方向に向くように、かつ、刃の形成縁が背面側を向くように配置されている。各切断刃3の表面は食品10に対する滑りをよくするために例えばフッ素樹脂などでコーティングされている。各切断刃3は長さ方向の両端部が切断刃固定枠2の上記上下の桟に固定された両持ち形式であるため、上記のように細長い薄板状の部材であっても、十分大きな機械的強度を保つことができる。
【0019】
前記食品載置台5は、図4に示すように、上側のほぼ半分の側面形状がL字形に形成されることにより、L字の水平辺と垂直辺からなる角隅部に切断前の食品10を載置することができるようになっている。より具体的には、上記L字の水平方向に延びる部分が食品10の底面受け51、上記L字の垂直方向に延びる部分が食品10の背面受け52となっている。食品載置台5によって受けられる海苔巻きのような食品には幾種類かのサイズがあり、食品のサイズが異なっても、これに対応してこれを食品載置台5に保持することを可能にした機構が設けられる。ただし、かかる機構は本願発明に直接関係するものではないから、説明は省略する。
【0020】
図2図3に示すように、食品載置台5に載置されている食品10を前記切断刃3で切断するために、食品載置台5には切断刃3が進入することができるスリット58が形成されている。スリット58は切断刃固定枠2に固定される切断刃3の数および設置位置に対応した数と位置に設けられる。図示の実施例では、食品10の分割数を4個、6個または8個というように選択することができるように、左右方向の中央のスリットを中心にして上記の分割数にそれぞれ対応した位置にスリット58が形成されている。各スリット58は、切断刃3を迎え入れて食品10を確実に切断することができるように、前記底面受け51および背面受け52を含む広い範囲にまたがって深く切り込まれている。
【0021】
図3図16などに示すように、食品載置台5には、載置される食品10の長さ方向両端位置を規制する規制板56が背面受け52の両端部に設けられている。規制板56は金属板を折り曲げて成形したもので、背面受け52に固定ねじで取り付けられる。食品10が例えば海苔巻き寿司であるとすれば、海苔の寸法は205mm×185mmに規格化されているため、海苔を横長にして巻くか、縦長にして巻くかによって切断前の海苔巻き寿司の長さが変わる。そこで、一対の規制板56の間隔を海苔巻き寿司の長さに合致するように調整する。
【0022】
次に、図2ないし図4に符号6で示す食品載置台の駆動機構について詳細に説明する。食品載置台の駆動機構6を第1の駆動機構とし、後述の受け部材82の駆動機構を第2の駆動機構として両者を区別する。図2ないし図4において、左の側板4の内側面には駆動源としてのモータ61が固定され、モータ61の出力軸に固着されたギヤ62は、軸64に固着されたギヤ63と噛み合っている。軸64は左右の側板4にまたがって回転可能に支持されていて、左右の側板4を貫通した軸64の両端部にはそれぞれ駆動アーム65が固着されている。モータ61の回転駆動力は、ギヤ62,63を介して軸64に伝達され、軸64と一体の各駆動アーム65を各側板4の外側面と平行をなす面内において回転駆動するように構成されている。各駆動アーム65は軸64の回転中心を通る直線に沿って長孔66を有している。
【0023】
図4に示すように、食品載置台5の底部には、この底部を左右方向にかつ水平に貫通して2本の軸53,54が取り付けられている。軸53,54は互いに平行で、軸53は食品載置台5の前後方向中央部に、軸54は食品載置台5の前後方向後部に配置されている。これら2本の軸53,54のうち前側(食品載置台5の前後方向中央部)の軸53の両端部はそれぞれ両側の上記駆動アーム65の長孔66に嵌っている。したがって、各駆動アーム65が軸64とともに軸64を中心に回転駆動されると、長孔66の壁面で軸53が押され、各駆動アーム65の回転に伴い、後述のカム溝91に規制されながら、食品載置台5も移動させられるようになっている。この食品載置台5とともに食品10も移動し、この移動の途中で、食品10が切断刃3の位置を通り、食品10が切断されるようになっている。ギヤ63、駆動アーム65、軸53を含む機構部分が、食品載置台を駆動する第1の駆動機構6を構成している。これら一連の食品切断動作については後で詳細に説明する。
【0024】
左右の各側板4には、側面から見て互いに重なり合うカム溝91が形成されている。これらのカム溝91に、食品載置台5に取り付けられている2本の軸53,54の両端部が嵌っていて、2本の軸53,54は、各カム溝91の側壁面で支持されるとともに、カム溝91に対する食品載置台5のカムフォロワとしても機能するようになっている。食品載置台5の高さ位置および姿勢は2本の軸53,54の高さ位置および相対的な高さの違いによって決まり、2本の軸53,54の相対的な高さ位置関係はカム溝91の形によって決まる。
【0025】
図2乃至図4は、一連の食品切断動作開始前の初期位置を示している。この初期位置では、各駆動アーム65がほぼ垂直近くまで最大に立ち上がった姿勢になっている。この態様では、図4に示すように、食品載置台5が最も高い位置になるように、上記2本の軸53,54がカム溝91の上端部に嵌っている。また、図5乃至図13に示すように、カム溝91の上端部は緩やかな円弧部92となっていて、この円弧部92は後ろ側が徐々に低くなっている。そして、上記のように食品載置台5が最も高い位置にあるとき、2本の軸53,54は上記円弧部92にあり、よって、食品載置台5は、後方に僅かに反ったような姿勢をとる。
【0026】
上記カム溝91はまた、図2図6乃至図12などに示すように、上記円弧部92から斜め下方に向かう円弧部93に連続しており、円弧部93はさらに斜め下方に延びた直線部94に連続している。食品載置台5が上記初期位置から移動を開始し、食品載置台5とともに食品10が移動して切断刃3に接触し始めると、上記2本の軸53,54が円弧部93に至る。2本の軸53,54が円弧部93を通るとき、食品載置台5は下方に移動しながら姿勢が徐々に下向きになる。すなわち、食品載置台5と食品10の伏角が徐々に大きくなり、食品10に対する切断刃3の進入角度が連続的に変化し、食品10の切断刃3に対する相対速度が早くなるように、カム溝91の上記円弧部93の下側の面が凸面になっている。
【0027】
ここで、上記2本の軸53,54がカム溝91に沿って移動するときの食品載置台5の姿勢および位置の変化について改めて説明しておく。前述のように、食品10の受け入れ姿勢をとっている食品載置台5に食品10を載置し、第1の駆動機構6を作動させると、2本の軸53,54がカム溝91の円弧部92から円弧部93に移動し、さらに直線部94に移動する。軸53,54が上記円弧部93を通るとき、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置よりも徐々に低くなり、食品載置台5の姿勢が前傾姿勢となるとともに前傾角度が徐々に大きくなる。
【0028】
このようにして食品載置台5が姿勢を変化させているとき、食品載置台5に載置されている食品10が切断刃3に接触し始めるように、切断刃3、食品載置台5、軸53,54、カム溝91相互の位置関係が設定されている。軸53,54は、上記円弧部93を通過した後はカム溝91の直線部94に導かれ、食品載置台5は上記の前傾姿勢のままで前述のように上から斜め下に向かって直線状に移動し、切断刃3で食品が切断される。切断された食品10は次に説明する取り出し部材8に移動し、続いて第1の駆動機構6が逆向きに作動して食品載置台5を原位置に復帰させる。
【0029】
このような第1の駆動機構6の往復動作は、例えば、スタートボタンを押すだけで行わせることができる。スタートボタンが押されると、前記モータ61が正転方向に駆動されて駆動アーム65が図4において時計方向に回転駆動される。この駆動アーム65の回転方向は往動方向であり、往動方向の移動限界を検出するまで前記モータ61が正転方向に駆動される。駆動アーム65が往動方向の限界位置に達すると、モータの駆動方向が逆転方向に切り換えられ、駆動アーム65は復動方向に駆動され、復動方向の移動限界を検出するとモータ61の駆動を停止する。このようにして駆動アーム65が往復動することにより、食品載置台5が前述のように姿勢を変えながら下降し、食品載置台5で保持していた食品10が切断刃3で切断された後、食品載置台5のみが原位置に復帰する。
【0030】
次に、前記食品の受け取り部の構成について詳細に説明する。図1乃至図4に示すように、装置の前側下部に、切断後の食品10の取り出し部8が設けられている。取り出し部8は、下側が装置の前側に突出する向きに傾斜させて固定された傾斜案内部材81と、この傾斜案内部材81に案内されて上下動する受け部材82を有してなる。傾斜案内部材81の前面には、切断された食品10を傾斜案内部材81に沿って円滑に下降させることができるように、複数のリブ85が縦方向に平行に形成され、食品10との滑り抵抗を低減している。
【0031】
受け部材82は、傾斜案内部材81の前面に対し直角方向に、したがって斜め前上に向かって突出している。受け部材82は折り曲げ成形によって製作されていて、その基部は傾斜案内部材81の前面に案内されて斜めに上下動する摺動部86となっている。この摺動部86の左右方向両端部には折り曲げ部88が形成されている。各折り曲げ部88は、傾斜案内部材81の両端部に上下方向に形成されている案内溝87を貫いて傾斜案内部材81の背面側に潜り、さらに傾斜案内部材81の両側方に突出し、摺動部材89の前面にねじ止めされている。各摺動部材89は直方体状の部材で、横断面がU字形の案内レール90に案内されて摺動するようになっている。案内レール90は、左右の側板4の外側面に、傾斜案内部材81と平行になるように、かつ、U字形断面の開放端を側方に向けて固定されている。各案内レール90には、受け部材82の上記折り曲げ部88が摺動部材89とともに摺動するときの障害にならないように、上記折り曲げ部88に対する逃げ孔91が形成されている。
【0032】
受け部材82は、左右一対のリンクアーム30が回転することによって駆動されるようになっている。各リンクアーム30は、左右の側板4の外側面下方寄りの位置に、共通の軸31を中心にして側板4と平行をなす垂直面内で回転可能に取り付けられている。本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左側の側板4に取り付けられているリンクアーム30の基端部には、軸31と同心円をなす小ギヤ32が固着されている。各リンクアーム30の先端部には軸31の中心を通る線に沿った長孔33が形成され、各長孔33には、各摺動部材89の側面に植えられているピン34が嵌っている。したがって、リンクアーム30が回転駆動されると、その長孔33の側壁によってピン34が押され、ピン34とともに受け部材82が案内レール90に案内されながら斜め上下方向に上昇し下降するように構成されている。
【0033】
この実施例では、リンクアーム30の駆動源はモータ61で、以下のような連携機構および第2の駆動機構を介してモータ61の駆動力がリンクアーム30に伝達されるようになっている。前記各駆動アーム65の長さ方向中央付近の外側面にはピン68が植えられている。駆動アーム65の回転中心である前記軸64によって扇形の大ギヤ20が保持されている。大ギヤ20は、扇の中心に相当する位置に軸64があり、軸64を中心とした円弧に沿ってギヤが形成されている。大ギヤ20は、軸64に対しては相対回転自在となっており、ギヤ形成部分は上記小ギヤ32と噛み合っている。
【0034】
扇形をなす大ギヤ20には、図4において上側の側面に、三角形状の連携板40が固着されている。連携板40は、駆動アーム65の長さ方向に対し略直交する方向に長孔41を有している。この長孔41には駆動アーム65のピン68が嵌っている。ただし、ピン68の外径に対して長孔41の幅は十分に大きく、ピン68が長孔41の長さ方向の範囲内で移動するときは長孔41を画する壁面に接することはなく、ピン68が長孔41の長さ方向両端に至ったとき、大ギヤ20を駆動するようになっている。
【0035】
図4に示す態様では、駆動アーム65が反時計方向に最大限回転し、前述のように食品載置台5が最上位まで移動して食品10を受け入れる姿勢をとっている。この態様では、上記ピン68が連携板40の長孔41の一端にあって連携板40を引き上げ、連携板40と一体の大ギヤ20を、軸64を中心に反時計方向に回転させている。大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を回転させる。図4に示す態様では、小ギヤ32が時計方向に最大限回転させられ、小ギヤ32と一体的に時計方向に回転したリンクアーム30によって摺動部材89が限界位置まで下降している。摺動部材89は下降限界位置で下部のストッパ35に当たって移動が制限され、摺動部材89と一体の受け部材82とともに下降位置が安定に保持されるようになっている。
【0036】
駆動アーム65が、図4に示す位置から時計方向に回転駆動され、図6に示すようにピン68が大ギヤ20の上縁に当たるまでは、ピン68は連携板40の長孔41内を、円弧を描きながら移動するだけで、ピン68に連動する部材はない。図6に示す動作態様は食品10が切断刃3で約半分切断された態様にある。図6に示す動作態様からさらに駆動アーム65が時計方向に回転するにしたがい、ピン68が大ギヤ20の上縁を押し、大ギヤ20を時計方向に回転させる。この大ギヤ20の回転力は小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32は反時計方向に回転駆動され、この回転力がリンクアーム30に伝達されてリンクアーム30が軸31を中心に反時計方向に回転駆動される。図7乃至図9は大ギヤ20の時計方向回転による小ギヤ32およびリンクアーム30の反時計方向回転を示している。このリンクアーム30の反時計方向への回転により長孔33とピン34を介して摺動部材89およびこれと実質一体の受け部材82が、傾斜案内部材81に案内されて斜め上方に押し上げられるようになっている。駆動アーム65のピン68、連携板40、ギヤ列20,32を含む構成部分は、第1の駆動機構6から、後述の受け部材82を駆動する第2の駆動機構に駆動力を伝達する連携機構を構成している。
【0037】
リンクアーム30の長さと食品載置台5の上下方向の移動距離との比に対して、大ギヤ20と小ギヤ32のギヤ比を大きくし、大ギヤ20の回転角度の割には小ギヤ32の回転角度が十分に大きくなるように設計されている。しかし、摺動部材89および食品載置台5が実際に移動することができるストロークは限られているので、小ギヤ32が食品載置台5の必要なストローク分を越えて回転駆動されるときは、小ギヤ32とリンクアーム30との間で滑りが生じるように、滑り機構が設けられている。滑り機構はトルクリミッタともいわれている。滑り機構の具体的な構成は図示していないが、周知の構成を適宜選択して採用すればよい。例えば、小ギヤ32とリンクアーム30との間に反発コイルばねを介在させることにより滑り機構を構成してもよい。
【0038】
図8に示す態様では、摺動部材89が上部のストッパ36に当たり、摺動部材89および食品受け台5が上昇限界位置にある。摺動部材89がストッパ36に当たってもなお図9図10に示すように大ギヤ20が時計方向に回転し、小ギヤ32が反時計方向に回転駆動される。しかし、摺動部材89が移動限界に達しているので、リンクアーム30は回転することができず、上記滑り機構で駆動部材89の余分な移動ストロークを吸収するようになっている。
【0039】
リンクアーム30は、本実施例に係る食品切断装置を正面から見て左右両側に設けられて食品載置台5を左右両側から駆動するようになっている。これに対して、一対のリンクアーム30に駆動力を伝達する連携板40、大ギヤ20、小ギヤ32および前記滑り機構は、本装置の左側にのみ設けられている。一対のリンクアーム30は共通の軸31で一体に結合されて一対のリンクアーム30が一体として駆動されるようになっている。上記ピン68から、連携板40、ギヤ列20、32を含む構成部分が前述のように連携機構を構成しており、小ギヤ32、リンクアーム30、摺動部材89の軸34に至る機構は、受け部材82を上下方向に駆動するための第2の機構を構成している。この第2の駆動機構内に上記滑り機構が組み込まれている。
【0040】
次に、以上のように構成されている実施例の一連の動作を説明する。図2乃至図4は動作開始前の初期状態を示している。駆動アーム65は図4において反時計方向への回転限界位置にあって、最も立ち上がった姿勢になっている。食品載置台5は2本の軸53,54がカム溝91の上側終端部の円弧部92にあって切断前の食品10の載置姿勢をとっている。駆動アーム65のピン68が連携板40長孔41の一端に当たり、連携板40とともに大ギヤ20を図4において反時計方向に回転させている。この大ギヤ20の回転により小ギヤ30は図4において時計方向に回転し、摺動部材89、受け部材82が下方への移動限界位置にある。
【0041】
上記初期状態において、食品載置台5に食品10を載置し、スタートボタンを操作すると、モータ61が起動され、第1の駆動機構6が作動を開始する。ギヤ列62,63、軸64を経て第1の駆動機構6の駆動アーム65が図5に示すように時計方向に回転駆動され、その長孔66に嵌っている食品載置台5の軸53がカム溝91に沿って移動させられる。軸53とともに軸54もカム溝91に沿って移動する。食品載置台5の高さ位置と姿勢は2本の軸53、54の高さ位置および相互の高さ位置の違いによって定まる。軸53、54がカム溝91の円弧部93の位置にさしかかると、軸53の高さ位置が軸54の高さ位置に対して連続的に低くなり、もって、食品載置台5が前傾姿勢をとるとともに前傾姿勢が徐々に深くなる。
【0042】
上記のように、食品載置台5が前傾姿勢をとり始める位置は、食品10が切断刃3に接触し始めるときである。食品10と切断刃3の接触開始当初は、食品10に対する切断刃3の進入角度を連続的に変化させて切断刃3と食品10の相対速度を速めるようになっている。図5はこのときの動作態様示している。こうして切断開始当初の食品10への切断刃3の進入を容易にし、食品10の切断が円滑に行われるように工夫されている。
【0043】
食品載置台5の軸53、54がカム溝91の直線部94に至ると、食品載置台5は最大の傾斜角度を保ったまま上記直線部94に沿って斜め下方に移動する。この間、垂直方向に両持ち状に固定された切断刃3と交差しながら、食品載置台5とともに食品10が斜め下方に一定の相対速度で移動し、食品10が輪切り状に切断される。図6乃至図10はこの作動態様を示しており、図10は切断完了直後の状態を示している。食品載置台5には、前述の通り、切断歯3に対する逃げ溝が形成されている。
【0044】
図6は、食品10の切断工程の途中であって食品10が約半分切断され、駆動アーム65のピン68が大ギヤ20に当たり始めた動作態様を示している。駆動アーム65がさらに回転することにより、前記連携機構が機能し始め、前記第2の駆動機構に駆動力を伝達する。すなわち、ピン68が大ギヤ20を下に向かって押し、大ギヤ20を、図7図8図9に示すように時計方向に回転させる。大ギヤ20の回転力は第2の駆動機構の一部を構成している小ギヤ32に伝達され、小ギヤ32を反時計方向に回転させる。小ギヤ32の回転力は、前記滑り機構を介してリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30は反時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89および受け部材82が、傾斜案内部材81および案内レール90に案内されて斜め上方に押し上げられる。図7は受け部材82が斜め上方に上昇している途中の態様を、図8は受け部材82が上側のストッパ36に当たる限界位置まで上昇した態様を示している。
【0045】
前記カム溝91の直線部94の傾斜角度と案内レール90の傾斜角度は同じ角度になっていて、上記直線部94に沿った食品載置台5の上下移動方向と案内レール90に沿った受け部材82の上下移動方向は平行になっている。そして、図8に示すように、上側の限界位置まで上昇した受け部材82は、食品載置台5に載置されて食品載置台5とともに斜めに下降してくる食品10の移動方向前方に位置して、食品10を受け取る態勢をとっている。
【0046】
受け部材82が上側の限界位置まで上昇したのちもなお駆動アーム65が図9に示すように時計方向に回転駆動され、駆動アーム65は軸53を下降させる。軸53は軸54とともにカム溝91の直線部94に沿って下降し、食品載置台5は食品10を保持しかつ前傾姿勢を保ったまま斜め下方に向かって移動する。図9は、食品載置台5で保持されている食品10の切断完了直前の動作態様を示している。この動作態様では、食品載置台5が上記のように移動し、食品載置台5に保持されている食品10が受け部材82に接している。
【0047】
食品10の太さが図示のものより大きい場合は、上昇限界にある受け部材82に対する食品10の接触タイミングが早く、受け部材82は下降してくる食品10で押し下げられる。この押し下げ力で摺動部材65と受け部材82が下方に押し下げられ、リンクアーム30が図9において時計方向に強制的に押し戻される。このリンクアーム30の強制的な時計方向への回転は、リンクアーム30と小ギヤ32との間の前記滑り機構が滑ることによって許容される。
【0048】
切断歯3による食品10の切断が完了したのちも駆動アーム65は時計方向に回転駆動され、図10に示す時計方向への回転限界に至る。図9に示す動作態様から図10に示す動作態様に至る間、駆動アーム65の長孔66と軸53の嵌り合いによって食品載置台5はなおも斜め下方に下降する。食品載置台5とともに食品10も下降するため、食品10の切断が完了するとともに、受け部材82も食品10に押されて下降する。上記駆動アーム65が時計方向に回転すると、ピン68によって大ギヤ20が時計方向に回転させられ、小ギヤ32が反時計方向に回転させられる。しかし、小ギヤ32とリンクアーム30との間に上記滑り機構が介在しているため、小ギヤ32の回転力はリンクアーム30に伝達されず、上記強制的な受け部材82の下降によるリンクアーム30の時計方向への回転が許容される。
【0049】
このようにして食品10の切断が完了し、食品10の受け部材82への受け渡しが完了した動作態様に至ると、前記モータ61の回転方向が逆向きに切り換えられる。図11は、モータ61が逆転し始め、駆動アーム65が反時計方向に回転して初期位置の方に向かい戻っている途中の状態を示している。駆動アーム65の戻し動作に伴い、食品載置台65の軸53と駆動アーム65の長孔66の嵌り合いにより食品載置台65がカム溝91に沿って上昇する。駆動アーム65の戻り動作の途中までは、駆動アーム65が有するピン68は連携板40の長孔41の幅と長さの範囲内で円弧を描いて移動するだけで、連携板40には作用しない。よって、大ギヤ20は回転せず、リンクアーム30、受け部材82も動かない。
【0050】
駆動アーム65が反時計方向に回転し、食品載置台5が初期位置に戻る途中で、駆動アーム65のピン68が連携板40の長孔41の一端に至ると、前記第2の駆動機構が逆向きに動作する。すなわち、図13に示すようにピン68と連携板40を介して大ギヤ20が反時計方向に回転駆動される。この大ギヤ20の回転により小ギヤ32が時計方向に回転駆動され、前記滑り機構を介して駆動力がリンクアーム30に伝達され、リンクアーム30が時計方向に回転駆動される。このリンクアーム30の回転により摺動部材89とともに受け部材82が斜め下方に下降し、摺動部材89がストッパ35に当たり、摺動部材89および受け部材82の下降限界位置に至る。この受け部材82の下降限界位置において、受け部材82で支持されている切断済みの食品10が取り出し部8にあり、食品10を取り出すことができる。
【0051】
受け部材82が下降限界位置に至った後も、駆動アーム65は図13において反時計方向に駆動され、食品載置台5が図14に示す初期位置に戻ることによりモータ61の駆動が停止して一連の動作が停止する。図13に示す復帰動作の途中から図14に示す初期位置への復帰までの間、ピン68によって大ギヤ20が反時計方向に、小ギヤ32が時計方向に回転駆動されリンクアーム30に時計方向の回転トルクがかかる。しかし、リンクアーム30はストッパ35によって回転が制限され、前記滑り機構によって小ギヤ32とリンクアーム32が滑り、受け部材82は取り出し部8に位置したままである。
【0052】
取り出し部8にある受け部材82から切断済みの食品10を取り出し、装置の上部の食品供給部に移動している食品載置台5に食品10を載せ、再びスタートスイッチを押すと、上に述べた一連の動作を経て食品10が切断され、切断された食品10は取り出し部8に至る。
【0053】
以上説明した実施例に係る食品切断装置は、切断後の食品10をその重力で落下させるのではなく、受け部材82で受け取りに行き、食品10を受け取った受け部材82を取り出し部8まで下降させるように構成されている。したがって、切断後の食品10は所定の姿勢を保ったまま取り出し部8に至るため、切断後の食品取り出しの作業性をより一層向上させることができる。また、取り出し部8に至った食品10の姿勢がそろっているため、見た目もきれいである。
【0054】
上記実施例によれば、切断後の食品10を受け取る受け部材82は、第2の駆動機構を構成するリンクアーム30の回転によって駆動されるようになっており、リンクアーム30とこれに駆動力を伝達する小ギヤ32との間には滑り機構が介在している。そして、小ギヤ32はリンクアーム30を十分大きな回転角度で回転駆動することができるようにし、リンクアーム30の余分な回転角度は、滑り機構を滑らせることによって吸収するように構成されている。したがって、受け部材82の移動ストロークを長くし、小さいサイズの食品を受けることができるようにしておけば、食品サイズの大小に対応することができる。また、大きいサイズの食品を受ける場合のように、受け部材82の移動ストロークが短くて済む場合は、上記滑り機構を滑らせながら大きいサイズの食品で受け部材82を押し戻すため、大きいサイズの切断後の食品を、食品載置台10と受け部材82との間で押し潰すことなく、形が整ったまま取り出すことができる。また、受け部材82の移動ストロークは機械的なストッパで規制すればよく、電気的なセンサの類および複雑な電気的制御回路は不要であるから、操作性の良い食品切断装置を低コストで提供することができる。
【0055】
食品載置台5の駆動源と切断後の食品10を受け取る受け部材82の駆動源は共通のモータ61でありコストの低減を図っている。そして、駆動減の共通化を図るために、食品載置台5の駆動機構6と受け部材82を駆動する第2の駆動機構とを、連携機構を介して連携させ、食品載置台5の駆動による食品切断行程の途中から、受け部材82を食品受け取り位置まで上昇させるように構成されている。さらに、第1の駆動機構6と受け部材82を駆動する第2の駆動機構との移動ストロークの差を吸収するために、第2の駆動機構内に滑り機構を設けている。このような食品受け取り機構を設けることにより、前述のように、切断後の食品取り出しの作業性をより一層向上させることができる。
【実施例2】
【0056】
図15は、本発明に係る食品切断装置の第2の実施例を示す。この実施例は、食品載置台5の駆動機構すなわち第1の駆動機構6と、切断後の食品10の受け部材82の駆動機構すなわち第2の駆動機構とを連携する連携機構がなく、上記第1の駆動機構と第2の駆動機構が個別に駆動源を備えていることが第1の実施例と異なっている。なお、図15に示す実施例では、前記第1の実施例の構成部分と同じ構成部分には同じ符号を付し、同じ構成部分の説明は簡略化する。
【0057】
図15において、食品載置台5の駆動機構6、すなわち第1の駆動機構は、前記実施例と同様に、駆動源としてのモータ61、ギヤ62,63、駆動アーム65、食品載置台5を貫く2本の軸53,54、側板4に形成されているカム溝91を有している。駆動アーム65の回転による食品載置台5の動作および切断刃3による食品10の切断動作は、第1の実施例と同じである。
【0058】
切断後の食品10の受け部材82を駆動する第2の駆動機構の駆動源として、上記モータ61とは別のモータ101を備えている。モータ101の出力軸にはギヤ102が固着されていて、ギヤ102はギヤ32と噛み合っている。ギヤ32は前記実施例と同様に軸31を回転中心としており、軸31にはまた、この軸31を回転中心とするリンクアーム30が嵌められている。リンクアーム30とギヤ32との間には、前記実施例と同様に滑り機構が設けられている。リンクアーム30は、前記実施例と同様に摺動部材89と、長孔とピンによって連携され、摺動部材89は受け部材82と実質一体に結合されている。モータ101からリンクアーム30に至る駆動機構が第2の駆動機構を構成している。
【0059】
モータ101を駆動源とするリンクアーム30の回転範囲は、下側のストッパ35と上側のストッパ36で規制される摺動部材89の摺動範囲よりも十分大きな摺動範囲を得ることができる回転範囲に設定され、摺動部材89が上下のストッパ36,35に当接してもなおリンクアーム30に加えられる回転駆動力は、上記滑り機構によって逃がされるようになっている。
【0060】
図15に示す実施例において、図示の初期位置にある食品載置台5に巻き寿司のような食品10を載置してスタートボタンを押すと、モータ61が起動されて食品載置台5が食品10とともに姿勢を変えながら斜め下方に向かって移動する。その間、切断刃3によって食品10が複数個に切断される。この切断行程の途中からモータ101が起動され、ギヤ102,32を経てリンクアーム30が反時計方向に駆動され、摺動部材89がストッパ36に当接する位置まで移動してモータ101が停止する。摺動部材89と一体の受け部材82も斜め上方に移動して、切断される食品10を受け取る態勢をとる。
【0061】
食品10の切断が完了した時点では、食品10が受け部材82に食品10が受け渡され、食品10のサイズの大小に応じて受け部材82が下方に押される。この押し下げ力により上記滑り機構が滑り、リンクアーム30、摺動部材89および受け部材82が押し戻される。
【0062】
駆動アーム65が食品10を切断するに必要な角度回転駆動されると、次にモータ61の回転方向が逆向きに切り換えられ、食品載置台10は初期位置に復帰する。また、モータ101も逆向きに回転駆動され、摺動部材89がストッパ35に当接するまでリンクアーム30が時計方向に回転駆動され、モータ61の駆動が停止する。このとき、受け部材82は食品の取り出し部8にあり、受け部材82の上に所定の姿勢を保って支持されている切断済みの食品10を能率よく取り出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る食品切断装置は、主として海苔巻きなどの巻き寿司を主な対象食品として想定しているが、円柱状、角柱状、あるいは棒状の食品を輪切り状に切断することができる。したがって、切断対象となる食品は、巻き寿司のほか、蒲鉾、竹輪などの練り製品、その他の食品の切断にも使用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 ベース
2 切断刃固定枠
3 切断刃
4 側板
5 食品載置台
6 駆動機構
8 取り出し部
10 食品
20 大ギヤ
30 リンクアーム
32 小ギヤ
35 ストッパ
36 ストッパ
53 軸
54 軸
65 駆動アーム
66 長孔
81 傾斜案内部材
82 受け部材
89 摺動部材
90 案内レール
91 カム溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15